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特許7412123寿命性能が改善された水素生産用ナノ複合材料及びその製造方法
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  • 特許-寿命性能が改善された水素生産用ナノ複合材料及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】寿命性能が改善された水素生産用ナノ複合材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/10 20060101AFI20240104BHJP
   B01J 35/45 20240101ALI20240104BHJP
   B01J 35/60 20240101ALI20240104BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20240104BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20240104BHJP
   C01B 3/02 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
B01J23/10 M
B01J35/02 H
B01J35/10 301G
B01J37/04 102
B01J37/08
C01B3/02 B
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019189335
(22)【出願日】2019-10-16
(65)【公開番号】P2020131188
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】10-2019-0019163
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA CORPORATION
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】519371862
【氏名又は名称】インダストリー-ユニバーシティ、コーオペレイション、ファウンデーション、ハニャン、ユニバーシティ、エリカ、キャンパス
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRY-UNIVERSITY COOPERATION FOUNDATION HANYANG UNIVERSITY ERICA CAMPUS
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(72)【発明者】
【氏名】チェ、スンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イ、キョンムン
(72)【発明者】
【氏名】ナム、トンフン
(72)【発明者】
【氏名】パク、フンモ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジミン
(72)【発明者】
【氏名】チョア、ヨンホ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジュヒョン
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-534440(JP,A)
【文献】特開2017-128818(JP,A)
【文献】特開2008-155198(JP,A)
【文献】特開2018-038990(JP,A)
【文献】特開2011-092825(JP,A)
【文献】特開昭48-086789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C01B 3/00 - 3/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ムライト(Al・SiO)を含む多孔性支持体と、 前記多孔性支持体の気孔の上に担持された(embedded)粒子状触媒物質と、を含む、水素生産用ナノ複合材料(nanocomposite)であって、
前記ナノ複合材料は、ナノ複合材料の総重量を基準として、前記触媒物質2~20重量%及び前記多孔性支持体80~98重量%を含み、
前記触媒物質は酸化セリウム(CeO )を含む、ナノ複合材料
【請求項2】
前記多孔性支持体の構造は塊状構造、球状構造及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の水素生産用ナノ複合材料。
【請求項3】
前記触媒物質はランタニド系の元素をさらに含む、請求項に記載の水素生産用ナノ複合材料。
【請求項4】
前記触媒物質は、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)及びこれらの組合せからなる群から選択された1種をさらに含む、請求項に記載の水素生産用ナノ複合材料。
【請求項5】
前記触媒物質の平均直径は5~50nmであり、
前記多孔性支持体の平均直径は100~50,000nmである、請求項1に記載の水素生産用ナノ複合材料。
【請求項6】
前記ナノ複合材料の比表面積は5~50m/g、気孔の大きさは50~500Å、気孔の比体積は0.02~0.09cm/gである、請求項1に記載の水素生産用ナノ複合材料。
【請求項7】
前記ナノ複合材料は1000℃以上で酸化-還元による水分解工程に使われる、請求項1に記載の水素生産用ナノ複合材料。
【請求項8】
触媒物質粒子及び支持体粒子を含む原料を準備する段階と、
前記触媒物質粒子及び支持体粒子を混合して混合物を製造する段階と、
前記混合物を湿式粉砕して複合物を製造する段階と、
前記複合物をか焼してナノ複合材料を製造する段階と、を含み、
前記触媒物質粒子は酸化セリウム(CeO)を含み、
前記支持体粒子はムライト(Al・SiO)を含む、水素生産用ナノ複合材料の製造方法。
【請求項9】
前記原料は、触媒物質粒子2~20重量%及び支持体粒子80~98重量%を含む、請求項に記載の水素生産用ナノ複合材料の製造方法。
【請求項10】
前記触媒物質粒子及び支持体粒子を溶媒とともに混合して混合物を製造し、
前記溶媒は、無水エタノール、無水メタノール、アセトン及びこれらの組合せからなる群から選択されたしずれか1種を含む、請求項に記載の水素生産用ナノ複合材料の製造方法。
【請求項11】
触媒物質粒子、支持体粒子及び酸化ジルコニウム(ZrO)ボール(ball)を混合して混合物を製造し、
前記酸化ジルコニウムボールの大きさは1~5mmであり、
前記酸化ジルコニウムボールは前記原料100重量部を基準に500~800重量部混合される、請求項に記載の水素生産用ナノ複合材料の製造方法。
【請求項12】
前記湿式粉砕はアトリッションミリング(Attrition milling)によって200~500rpmで0.5~24時間行う、請求項に記載の水素生産用ナノ複合材料の製造方法。
【請求項13】
前記か焼は700℃以上で1~10時間行う、請求項に記載の水素生産用ナノ複合材料の製造方法。
【請求項14】
ナノ複合材料を製造する前、前記複合物を高分子と混合して高分子混合物を製造する段階と、
前記高分子混合物を成形する段階と、をさらに含む、請求項に記載の水素生産用ナノ複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は触媒物質、及び球状構造、塊状構造及びこれらの組合せからなる群から選択された一つの構造を有する多孔性支持体を含むナノ複合材料及びその製造方法に係り、より詳しくは高温の酸化-還元反応に適用され、寿命性能が改善されたナノ複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、水素は水を電気分解して得るかあるいは化石燃料を水蒸気改質又は部分酸化して得ることができる。また、バイオマスをガス化あるいは炭化させて得ることができる。このように多様な方式で製造される水素は効率的なエネルギー変換媒体であり、化学工業及び電子工業などの広範囲な分野で使われる基礎原料物質でありながら燃料である。
【0003】
水素は自然状態で混合物又は化合物として存在する。水素の製造は、水、石油、石炭、天然ガス及び可燃性廃棄物から多様に出発することができる。水素への転換工程は、電気、熱及び微生物などを使うことによってのみ可能であり、水素を製造することができる多くの技術は基礎研究乃至技術開発の段階にあるものが大部分である。現在商用化した水素の製造方法はほとんど石油又は天然ガスを水蒸気に改質したものである。
【0004】
他の方法として、水素は熱化学的技術又は光触媒を活用する技術又は生物学的技術で製造することができる。
【0005】
図1には熱化学的技術による水素の製造方法が簡単に示されている。前記熱化学的技術は、具体的に触媒及び熱エネルギーを用いた酸化-還元反応のサイクルで水素を製造することになる。図1を参照すると、供給された水と触媒が外部の熱エネルギーによって酸化反応及び還元反応を進める過程中に水素気体が製造される。ここで、前記触媒は前記高温で維持される反応空間で連続的に酸化及び還元反応を進めることになる。この場合、前記触媒は部分的に焼結されるか相分離を引き起こし、結果として酸化及び還元反応の効率が低下して水素気体製造の収率が悪くなる。
【0006】
前記のように高温の環境に露出された状態で継続的に酸化及び還元反応する触媒にはセリア触媒がある。
【0007】
韓国特許登録第10-1302192号は合成ガス及び水素の製造方法及びこのための装置に関するもので、約700~1000℃の温度でセリア触媒を使って合成ガス及び水素を製造することになる。しかし、この場合、副産物であるカーボン及び一酸化炭素ガスの発生によって炭素が沈積し、サイクルの繰り返しによる触媒粒子の凝集及び焼結が進む問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国特許登録第10-1302192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は高温の環境に露出された状態でも粒子が凝集及び焼結されないナノ複合材料を提供することに目的がある。
【0010】
本発明は希土類系元素を含むセリア触媒物質の含量を減らしながらも触媒効率を向上させることができるナノ複合材料を提供することに目的がある。
【0011】
本発明は従来より多い反応領域を提供することができる触媒を提供することに目的がある。
【0012】
本発明の目的は以上で言及した目的に制限されない。本発明の目的は以下の説明によってより明らかになり、特許請求範囲に記載した手段及びその組合せによって実現可能であろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、ムライト(Al・SiO)を含む多孔性支持体と、前記多孔性支持体に担持された(embedded)触媒物質と、含む水素生産用ナノ複合材料(nanocomposite)を提供する。
【0014】
前記多孔性支持体の構造は塊状構造、球状構造及びこれらの組合せからなる群から選択されることができる。
【0015】
前記触媒物質は酸化セリウム(CeO)を含むことができる。
【0016】
前記触媒物質はランタニド系の元素をさらに含むことができる。
【0017】
前記触媒物質は、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)及びこれらの組合せからなる群から選択された1種をさらに含むことができる。
【0018】
前記触媒物質の平均直径は5~50nm、前記多孔性支持体の平均直径は100~50,000nmであってもよい。
【0019】
前記触媒物質2~20重量%及び前記多孔性支持体80~98重量%を含むことができる。
【0020】
前記ナノ複合材料の比表面積は5~50m/g、気孔の大きさは50~500Å、気孔の比体積は0.02~0.09cm/gであってもよい。
【0021】
前記ナノ複合材料は1000℃以上で酸化-還元による水分解工程に使われることができる。
【0022】
本発明は、触媒物質粒子及び支持体粒子を含む原料を準備する段階と、前記触媒物質粒子及び支持体粒子を混合して混合物を製造する段階と、前記混合物を湿式粉砕して複合物を製造する段階と、前記複合物をか焼してナノ複合材料を製造する段階と、を含み、前記触媒物質粒子は酸化セリウム(CeO)を含み、前記支持体粒子はムライト(Al・SiO)を含む、水素生産用ナノ複合材料の製造方法を提供する。
【0023】
前記原料は、触媒物質粒子2~20重量%及び支持体粒子80~98重量%を含むことができる。
【0024】
前記触媒物質粒子及び支持体粒子を溶媒とともに混合して混合物を製造することができ、前記溶媒は、無水エタノール、無水メタノール、アセトン及びこれらの組合せからなる群から選択されたしずれか1種を含むことができる。
【0025】
触媒物質粒子、支持体粒子及び酸化ジルコニウム(ZrO)ボール(ball)を混合して混合物を製造し、前記酸化ジルコニウムボールの大きさは1~5mmであり、前記酸化ジルコニウムボールは前記原料100重量部を基準に500~800重量部混合されることができる。
【0026】
前記湿式粉砕はアトリッションミリング(Attrition milling)によって200~500rpmで0.5~24時間行うことができる。
【0027】
前記か焼は700℃以上で1~10時間行うことができる。
【0028】
ナノ複合材料を製造する前、前記複合物を高分子と混合して高分子混合物を製造する段階と、前記高分子混合物を成形する段階とをさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、高温の環境に露出された状態でも粒子が凝集及び焼結されない触媒を提供することができる。
【0030】
本発明によれば、希土類系元素を含むセリア触媒物質の含量を減らして経済性を向上させながら触媒の効率を既存より向上させることができる。
【0031】
本発明によれば、従来より多い反応領域を提供することができる触媒を提供することができる。
【0032】
本発明の効果は以上で言及した効果に限定されない。本発明の効果は以下の説明から推論可能な全ての効果を含むものと理解されなければならないであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】熱化学的技術による水素の製造方法を簡単に示した図である。
図2】本発明のナノ複合材料を示した図である。
図3】ナノ複合材料製造工程を簡略に示したフローチャートである。
図4】特定の形状に成形されたナノ複合材料を示した図である。
図5】製造例2~製造例7で製造された収得物の電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)写真を示した図である。
図6】ナノ複合材料に対する電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)写真を示した図である。
図7】ナノ複合材料のX線スペクトロメータ(EDS)分析写真を示した図である。
図8】比較例1の触媒物質である酸化セリウム(CeO)粒子をか焼した後の電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)写真を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以上の本発明の目的、他の目的、特徴及び利点は添付図面に基づく以下の好適な実施例によって易しく理解可能であろう。しかし、本発明はここで説明する実施例に限定されず、他の形態に具体化することもできる。むしろ、ここで紹介する実施例は開示の内容が徹底的で完全になるように、かつ通常の技術者に本発明の思想が充分に伝達されるようにするために提供するものである。
【0035】
本明細書で、“含む”又は“有する”などの用語は明細書上に記載した特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つ又はそれ以上の他の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部分品又はこれらを組み合わせたものなどの存在又は付加の可能性を予め排除しないものと理解されなければならない。また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分“上に”あると言う場合、これは他の部分の“すぐ上に”ある場合だけではなく、その中間に他の部分がある場合も含む。反対に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の“下に”あると言う場合、これは他の部分の“すぐ下に”ある場合だけではなく、その中間に他の部分がある場合も含む。
【0036】
他に明示しない限り、本明細書で使用した成分、反応条件、ポリマー組成物及び配合物の量を表現する全ての数字、値及び/又は表現は、このような数字が本質的に他のものの中でこのような値を得るのに発生する測定の多様な不確実性が反映された近似値であるので、全ての場合に“約”という用語で修飾されるものと理解されなければならない。また、以下の記載で数値範囲を開示する場合、このような範囲は連続的であり、他に指示しない限り、このような範囲の最小値から最大値が含まれた前記最大値までの全ての値を含む。さらに、このような範囲が整数を指示する場合、他に指示しない限り、最小値から最大値が含まれた前記最大値までを含む全ての整数が含まれる。
【0037】
本発明はムライト(Al・SiO)を含む多孔性支持体及び前記多孔性支持体に担持された(embedded)触媒物質を含む水素生産用ナノ複合材料(nanocomposite)及びその製造方法に関する。
【0038】
ナノ複合材料物質及びナノ複合材料の製造方法についてそれぞれ区分して説明する。
【0039】
ナノ複合材料
本発明のナノ複合材料は熱エネルギーによって水を分解するときに使われる触媒であり、酸化及び還元反応を繰り返し遂行しながら水素及び酸素気体を生成することが主要機能である。
【0040】
前記ナノ複合材料は多孔性支持体及び触媒物質を含むことが特徴であり、具体的に前記触媒物質は前記多孔性支持体に担持されて含まれる。
【0041】
本発明の触媒物質は水の熱分解反応が円滑に進むことができるようにする目的で使われ、好ましくは酸化セリウム(CeO)を含む。
【0042】
前記触媒物質は粒子状のもので多孔性支持体上に担持されており、前記触媒物質は多孔性支持体上で外部から供給された水及び酸素と接触して酸化及び還元反応を引き起こすことになる。
【0043】
前記触媒物質の平均直径は5~50nm、好ましくは20~30nmである。
【0044】
本発明の触媒物質はランタニド系の元素をさらに含むことができる。より正確には、ランタニド系の元素がドーピングされることができる。具体的に、ドーピングに使われる前記元素は、タンタル(Ta)、ランタン(La)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)及びこれらの組合せからなる群から選択されたいずれか1種を含む。ここで、ランタニド系の元素含量は全体触媒物質100重量部を基準に10重量部未満である。
【0045】
本発明の触媒物質は、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)及びこれらの組合せからなる群から選択された1種をさらに含むことができる。より具体的に、本発明の触媒物質は下記の式1の形態を有する酸化物をさらに含むことができる。
【0046】
[化1]
(式1)
前記化学式1で、MはMn、Fe、Ni、Cu、Zr及びこれらの組合せからなる群から選択された1種であり、xは0~5の整数の一つであり、yは0~5の整数の一つである。
【0047】
ここで、前記酸化物は全体触媒物質100重量部を基準に50重量部未満で含まれる。
【0048】
前記触媒物質の含量はナノ複合材料に2~20重量%含まれる。ここで、前記触媒物質の平均直径及び含量が前記範囲未満の場合、多孔性支持体上に十分な反応領域を提供することができないから酸化及び還元反応が円滑に起こらないこともあり、前記範囲を超える場合、高温で触媒物質間の凝集が発生して触媒効率及びナノ複合材料の耐久性が落ちることがある。
【0049】
本発明の多孔性支持体はムライト(mullite、Al・SiO)を含んでいる。前記多孔性支持体は高温の熱に対する抵抗力が高いから、高温の環境に露出されても形態の変形及び耐久性の低下が起こらないことが特徴である。
【0050】
前記多孔性支持体は、高温で前記触媒物質間の凝集が発生しないように各触媒物質が一定の間隔を維持したままで固定できるようにする役割をする。また、前記多孔性支持体はその内部及び外部に多数の気孔を含んでいるから、より多い反応領域を提供することになる。
【0051】
前記多孔性支持体の構造は、塊状構造、球状構造及びこれらの組合せからなる群から選択された一つであってもよい。具体的に、前記塊状構造は角をなした塊又は角が立った塊構造のいずれも含むことができる。また、前記球状構造は球形を有する塊構造を含む。
【0052】
前記多孔性支持体は支持体粒子であるムライト粒子が塊状に固まっている形態であり、前記支持体粒子が固まるときに部分的に生じた間隙によって前記多孔性支持体が気孔及び隙間を有する。
【0053】
図2には本発明のナノ複合材料の一実施例が示されている。これを参照すると、前記多孔性支持体(b)が球状構造を有するとき、触媒物質(a)が前記多孔性支持体(b)に粒子状として担持されていることが分かる。
【0054】
本発明の多孔性支持体は前記のように様々な構造を持っているが、普遍的にその平均直径は100~50,000nmである。ここで、多孔性支持体の平均直径が100nm未満の場合、前記多孔性支持体の大きさと触媒物質の大きさ間の差がほとんどないから前記触媒物質が完全に前記多孔性支持体に担持されないこともある。
【0055】
前記多孔性支持体はナノ複合材料に80~98重量%含まれる。
【0056】
前記触媒物質及び多孔性支持体を含む本発明のナノ複合材料は、比表面積が5~50m/gであり、気孔の大きさが50~500Åであり、気孔の比体積は0.02~0.09cm/gである。
【0057】
本発明のナノ複合材料は1000℃以上の環境で酸化-還元を繰り返す水分解及び水素生産工程に使われることが特徴である。好ましくは、前記ナノ複合材料は1300℃以上の環境で使うことができる。
【0058】
ナノ複合材料の製造方法
本発明のナノ複合材料の製造方法は、触媒物質粒子及び支持体粒子を準備する段階、前記触媒物質粒子及び支持体粒子を混合して混合物を製造する段階、前記混合物を湿式粉砕して複合物を製造する段階、及び前記複合物をか焼してナノ複合材料を製造する段階を含む。
【0059】
図3には本発明のナノ複合材料製造工程のフローチャートが示されている。これを参照して各段階について具体的に説明する。
【0060】
準備段階(S1)
触媒物質粒子及び支持体粒子を含む原料を準備する段階である。前記触媒物質粒子はナノ複合材料の触媒物質を形成し、前記支持体粒子はナノ複合材料の多孔性支持体を形成する原料である。
【0061】
前記触媒物質粒子は2~20重量%、支持体粒子は80~98重量%準備する。
【0062】
混合物の製造段階(S2)
原料である触媒物質粒子及び支持体粒子を混合して混合物を製造する段階である。具体的に、前記一定の比率で準備した触媒物質粒子及び支持体粒子を準備した溶媒に投入して混合する段階であり、前記溶媒は、好ましくは無水エタノール、無水メタノール、アセトン及びこれらの組合せからなる群から選択されたいずれか1種を含む。
【0063】
前記溶媒は原料100重量部を基準に300~500重量部含むことができる。
【0064】
ここで、前記溶媒には、湿式粉砕のためにボール(ball)がさらに投入されることができる。本発明では、前記ボール(ball)として、好ましくは酸化ジルコニウム(ZrO)ボール(ball)を含むことができる。
【0065】
前記酸化ジルコニウムボールは原料である触媒物質粒子と支持体粒子が湿式粉砕装置内でよく粉砕されて混合及び混練されるようにする目的で投入され、好ましくは1~5mmの大きさを有してもよい。
【0066】
前記酸化ジルコニウムボールは原料100重量部を基準に500~800重量部投入されることができる。
【0067】
複合物の製造段階(S3)
混合物を湿式粉砕して複合物を製造する段階である。前記湿式粉砕はアトリッションミリング(Attrition milling)によって行うことが特徴である。
【0068】
前記アトリッションミリングは、具体的にアトリッションミル(Attrition mill)装置によって行われる。これは一般的なボールミル(ball mill)、サンドミル(sand mill)及びバイブレーションミル(vibration mill)より粉砕及び分散時間がずっと短く、前記羅列した既存のミルより粒子を微細に粉砕することができることが特徴である。すなわち、本発明のアトリッションミリングは既存の方式より粉砕時間が短くて粉砕効率が高く、粉砕正確度が高くて所望の特性を有する材料を得ることができる利点がある。また、粉砕された粒子が互いに凝集するか固まる現象が著しく減少するので、支持体上に触媒物質が均一に分散されたナノ複合材料を得ることができるという利点がある。
【0069】
前記アトリッションミリングは、アトリッションミル装置の回転力を混合物に伝達して粉砕、混合及び混練させ、200~500rpmの回転速度で0.5~24時間行う。好ましくは3~24時間行うことができ、より好ましくは6~24時間行う。
【0070】
前記混合物に含まれる原料である触媒物質と支持体はアトリッションミリングによってもっと小さな粒子状に均一に粉砕されることができ、さらに前記原料が溶媒内に均一に分散される効果を得ることができる。
【0071】
前記アトリッションミルによって粉砕、混合及び混練された混合物は乾燥によって最終的に複合物を形成することになる。ここで、前記乾燥の温度及び時間は溶媒を除去することができる環境であれば十分であり、本発明では特に限定しない。
【0072】
高分子混合物の製造段階(S3’)
複合物の製造段階後、か焼段階前に前記複合物を高分子と混合して高分子混合物を製造する段階である。この段階は目的及び必要によって工程から排除することができる。
【0073】
具体的に、この段階は本発明のナノ複合材料を特定の形状を有するようにするために付け加えられた段階であり、前記複合物の製造段階(S3)で得た複合物を高分子と混合して成形の可能な高分子混合物を製造することになる。このとき、混合される高分子としては好ましくはポリエチレンオキシド(PEO)が含まれる。
【0074】
成形段階(S3”)
高分子混合物の製造段階後、前記高分子混合物を成形する段階である。この段階は目的及び必要によって工程から排除することができる。
【0075】
具体的に、製造された高分子混合物に圧力及び熱を加えて目的とする形状の成形物を得ることになる。このときに加わる圧力及び熱は特に限定されなく、目的によって変わることができ、前記成形物の形状も本発明で限定しない。
【0076】
図4には成形段階によってディスク状に製造された成形物(c)が示されている。これを参照すると、前記成形物(c)はナノ複合材料が圧縮されて形成され、前記ナノ複合材料は触媒物質(a)が担持された塊状構造の多孔性支持体(b)を含んでいる。
【0077】
か焼段階(S4)
複合物をか焼してナノ複合材料を製造する段階である。この段階は複合物の製造段階(S3)後、高分子混合物の製造段階(S3’)及び成形段階(S3”)を省略し、前記生成された複合物を対象として行うことができ、あるいは高分子混合物の製造段階(S3’)及び成形段階(S3”)を省略せず、前記生成された成形物を対象として行うことができる。
【0078】
前記か焼は700℃以上で1~10時間行うことができ、好ましくは1000℃以上で行う。
【0079】
前記か焼によってナノ複合材料内の不純物及び溶媒残余物などを全く除去することができ、触媒物質及び多孔性支持体の結合力をもっと高めてナノ複合材料の結晶性を向上させることができる。
【0080】
以下、本発明を具体的な実施例に基づいてより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は本発明を例示するためのもので、本発明の範囲がこれらによって限定されるものではない。
【0081】
製造例1
平均25nmの粒径を有する触媒物質であるセリア粒子と平均30μmの粒径を有する支持体であるムライト粒子を重量比20:80となるようにして原料を準備し、3mmの粒径を有するジルコニアボールを前記原料に対して600重量部となるように準備した。その後、前記原料及びジルコニアボールを無水エタノールに投入し、400rpmで12時間常温でアトリッションミリング工程を行った。前記アトリッションミリング工程によって得た収得物を遠心分離して固相物質を分離した後、前記固相物質を70℃のオーブンで24時間乾燥し、16meshの篩を用いて粉末状の複合物を得た。
【0082】
製造例2~7
平均30μmの粒径を有する支持体であるムライト粒子と3mmの粒径を有するジルコニアボールを前記ムライトに対して500重量部となるように準備した。その後、前記ムライトとジルコニアボールを無水エタノールに投入し、300rpmで表1のような時間の間に常温でアトリッションミリング工程を行って収得物を得た。
【0083】
【表1】
【0084】
図5には前記製造例2~製造例7によって製造された収得物の電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)写真が示されている。これを参照すると、ミリング時間によってナノ複合材料の多孔性支持体の大きさが20μmから500nmまで多様に製造されることを確認することができる。
【0085】
実施例1
前記製造例1で得た複合物を大気雰囲気で1,300℃の温度で2時間か焼を行ってナノ複合材料を製造した。
図6には前記製造されたナノ複合材料に対する電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)写真が示されている。これを参照すると、触媒物質である酸化セリウム(CeO)がナノサイズの粒子状として多孔性支持体であるムライト上に分散されて担持されていることを確認することができる。また、前記ナノ複合材料のX線スペクトロメータ(EDS)分析を行い、これを図7に示した。これを参照すると、前記ナノ複合材料にアルミニウム(Al)、セリウム(Ce)、珪素(Si)及び酸素(O)が含まれていることを確認することができる。
【0086】
実施例2
前記製造例4で得た複合物に対して大気雰囲気で1,300℃の温度で2時間か焼を行って複合材料を製造した。
【0087】
比較例1
平均25nmの粒径を有する触媒物質である酸化セリウム(CeO)粒子に対して1,300℃の温度で2時間か焼を行い、これに対する結果物を図8に示した。図8は電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)写真であり、これを参照すると、か焼前(a)平均25nmの粒径を有する酸化セリウム粒子の分布を確認することができるが、か焼後(b)前記ナノサイズの酸化セリウム粒子が部分的に凝集及び焼結されて巨大化が進んだことを確認することができる。
【0088】
比較例2
アトリッションミリング(Attrition milling)方法ではなくてボールミリング(Ball milling)方法によって粉砕したことを除き、残りの環境を前記実施例2と同様にして進めることによってナノ複合材料を製造した。
【0089】
比較例3
支持体としてムライトではなくてコーディエライト((Mg、Fe2+)2AlSi18)を使ったことを除き、残りの環境を前記実施例1と同様にして進めることによってナノ複合材料を製造した。
【0090】
実験例1
前記実施例2及び比較例2のナノ複合材料に対する比表面積分析(BET)を実施し、その結果を下記の表2に示した。前記分析はナノ複合材料粉末の表面に窒素ガスを吸着させ、吸着された窒素量を測定する方式で進めた。
【0091】
【表2】
【0092】
前記結果を見れば、実施例2の場合、比較例2と比較してより広い比表面積を示し、気孔の大きさ及び気孔の体積も比較例より大きな値を示していることを確認することができる。したがって、高エネルギーのアトリッションミリングによって高い気孔度及び比表面積を有する多孔性支持体を得ることができ、これに触媒を担持して触媒反応が起こり得るサイト(site)を充分に確保することによって触媒能を高めることができる。
【0093】
実験例2
前記実施例1及び比較例3のナノ複合材料を用いて水分解による水素発生有無に対して測定し、その結果を下記の表3に示した。
【0094】
具体的に、500mlの反応器を準備し、前記反応器内に前記実施例1及び比較例3のナノ複合材料をそれぞれ3.0gずつ入れ、前記反応器を非活性アルゴン(argon)雰囲気で1400℃の温度に加熱しながら10mlの水を流すことによって気化させた。ナノ複合材料が酸化しながら水の熱分解反応が起こり、反応が終わった後ごとに注射器で反応器内から1ccの空気を採取し、前記採取した空気をガスクロマトグラフィー質量分析器(Gas chromatography-mass spectrometry)に入れて水素の発生量を測定した。反応が終わった後、非活性雰囲気でナノ複合材料が十分に還元するようにし、また10mlの水を注入して触媒反応を引き起こした。前記過程を5回繰り返し遂行し、各サイクルで得られた水素発生量を下記の表3に示した。
【0095】
【表3】
【0096】
前記表3の結果を参照すると、1回の測定で比較例3の水素発生量が実施例1より高かったが、実験が繰り返されるほど比較例3の水素発生量が著しく減少することを確認することができる。これに対し、実施例1の水素発生量の場合は5回まで実験が進んでも水素発生量の変化がほとんどないことを確認することができる。
【0097】
これから、本発明のナノ複合材料は高温の環境に持続的に露出されても触媒としての効率の低下がほとんどないことが分かる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8