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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】空調機のショートサーキット評価装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/38 20180101AFI20240104BHJP
   F24F 11/46 20180101ALI20240104BHJP
   F24F 11/47 20180101ALI20240104BHJP
   F24F 11/49 20180101ALI20240104BHJP
   F24F 11/58 20180101ALI20240104BHJP
   F24F 11/61 20180101ALI20240104BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20240104BHJP
   F24F 11/74 20180101ALI20240104BHJP
   F24F 11/871 20180101ALI20240104BHJP
   F24F 11/89 20180101ALI20240104BHJP
   F24F 110/12 20180101ALN20240104BHJP
   F24F 130/10 20180101ALN20240104BHJP
   F24F 140/00 20180101ALN20240104BHJP
【FI】
F24F11/38
F24F11/46
F24F11/47
F24F11/49
F24F11/58
F24F11/61
F24F11/64
F24F11/74
F24F11/871
F24F11/89
F24F110:12
F24F130:10
F24F140:00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019211669
(22)【出願日】2019-11-22
(65)【公開番号】P2021081167
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124420
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 博之
(72)【発明者】
【氏名】中山 浩
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-043256(JP,A)
【文献】特開2011-043255(JP,A)
【文献】特開2008-057818(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0030395(US,A1)
【文献】国際公開第2019/097822(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象となる空調機の設置箇所における外気の温度である外気温度、及び室外機に吸い込んだ外気の温度である吸込温度の入力を受け付ける入力手段と、
入力された前記外気温度及び入力された前記吸込温度から、前記空調機における前記外気温度と前記吸込温度との関係式であって前記空調機における前記吸込温度をIとし前記空調機における前記外気温度をAとしてI=αA+βで示される外気吸込関係式におけるα及びβを算出すると共に、前記空調機の負荷率を算出する制御手段と、
前記設置箇所に属する地域における過去の所定期間内の複数の外気温度の集合である期間外気温度を、前記外気温度が蓄積される外気温度情報サーバから受信する通信手段と、
前記負荷率毎の温度条件と消費電力の関係を示す温度条件-消費電力分布、及び前記負荷率毎の温度条件とCOPの関係を示す温度条件-COP分布の少なくとも一方を記憶している記憶手段と、
を備えており、
前記制御手段は、前記期間外気温度を前記外気吸込関係式における前記外気温度Aに順次当てはめて、前記所定期間内における複数の前記吸込温度の集合である期間吸込温度を算出すると共に、前記温度条件-消費電力分布及び前記温度条件-COP分布の少なくとも一方に対し、前記期間吸込温度及び前記負荷率を当てはめることで、前記空調機に係る消費電力及びCOPの少なくとも一方を算出する
ことを特徴とする空調機のショートサーキット評価装置。
【請求項2】
前記入力手段は、前記室外機から出される排気の温度である吹出温度の入力を受け付け、
前記制御手段は、前記吹出温度と前記負荷率との関係を示す吹出負荷率関係式を参照可能であり、前記吹出温度を前記吹出負荷率関係式に当てはめて、前記負荷率を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の空調機のショートサーキット評価装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記消費電力、並びに電力料金の単価である料金単価、及び評価期間から、前記空調機に係るランニングコストを算出する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空調機のショートサーキット評価装置。
【請求項4】
評価対象となる空調機の設置箇所における外気の温度である外気温度、及び室外機に吸い込んだ外気の温度である吸込温度の入力を受け付ける入力手段と、
入力された前記外気温度及び入力された前記吸込温度から、前記空調機における前記外気温度と前記吸込温度との関係式であって前記空調機における前記吸込温度をIとし前記空調機における前記外気温度をAとしてI=αA+βで示される外気吸込関係式におけるα及びβを算出する制御手段と、
前記設置箇所に属する地域における過去の所定期間内の複数の外気温度の集合である期間外気温度を、前記外気温度が蓄積される外気温度情報サーバから受信する通信手段と、
各種の情報を表示可能である表示手段と、
を備えており、
前記制御手段は、前記期間外気温度を前記外気吸込関係式における前記外気温度Aに順次当てはめて、前記所定期間内における複数の前記吸込温度の集合である期間吸込温度を算出すると共に、前記期間吸込温度における何れかの前記吸込温度Iが前記空調機の停止温度下限以上となることを判断した場合に、前記空調機が停止し得る旨の警告メッセージを前記表示手段に表示させる
ことを特徴とする空調機のショートサーキット評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調機の運転時にショートサーキットが起きているか否かを評価可能である空調機のショートサーキット評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2002-349926号公報(特許文献1)には、ショートサーキットの検出が開示されている。
この検出では、気象データから得た外気温度から、室外機の温度計から得た吸い込み温度を差し引いて得た温度差分が蓄積される。そして、温度差分の最大値と最小値を差し引いて得られる乖離値と、所定の閾値とが比較され、乖離値が当該閾値以上であると、ショートサーキットが発生していると判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-349926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のショートサーキットの検出では、ショートサーキット発生の有無しか分からず、検出までに多くの時間及び手間が必要となる。又、空調機の負荷率の現場での計測が困難である。
そこで、本発明の第1の主な目的は、ショートサーキット発生の有無だけでなく、ショートサーキットの度合に基づく消費電力の上昇及び能力の低下の少なくとも一方まで分かる空調機のショートサーキット評価装置を提供することである。
又、本発明の第2の主な目的は、解析に必要な時間及び手間がより小さい空調機のショートサーキット評価装置を提供することである。
更に、本発明の第3の主な目的は、ショートサーキットの影響で空調機が運転停止し、空調が効かなくなる可能性を事前に把握することができる空調機のショートサーキット評価装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記第1の主な目的及び上記第2の主な目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、評価対象となる空調機の設置箇所における外気の温度である外気温度、及び室外機に吸い込んだ外気の温度である吸込温度の入力を受け付ける入力手段と、入力された前記外気温度及び入力された前記吸込温度から、前記空調機における前記外気温度と前記吸込温度との関係式であって前記空調機における前記吸込温度をIとし前記空調機における前記外気温度をAとしてI=αA+βで示される外気吸込関係式におけるα及びβを算出すると共に、前記空調機の負荷率を算出する制御手段と、前記設置箇所に属する地域における過去の所定期間内の複数の外気温度の集合である期間外気温度を、前記外気温度が蓄積される外気温度情報サーバから受信する通信手段と、前記負荷率毎の温度条件と消費電力の関係を示す温度条件-消費電力分布、及び前記負荷率毎の温度条件とCOPの関係を示す温度条件-COP分布の少なくとも一方を記憶している記憶手段と、を備えており、前記制御手段は、前記期間外気温度を前記外気吸込関係式における前記外気温度Aに順次当てはめて、前記所定期間内における複数の前記吸込温度の集合である期間吸込温度を算出すると共に、前記温度条件-消費電力分布及び前記温度条件-COP分布の少なくとも一方に対し、前記期間吸込温度及び前記負荷率を当てはめることで、前記空調機に係る消費電力及びCOPの少なくとも一方を算出することを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、上記発明において、前記入力手段は、前記室外機から出される排気の温度である吹出温度の入力を受け付け、前記制御手段は、前記吹出温度と前記負荷率との関係を示す吹出負荷率関係式を参照可能であり、前記吹出温度を前記吹出負荷率関係式に当てはめて、前記負荷率を算出することを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、前記制御手段は、前記消費電力、並びに電力料金の単価である料金単価、及び評価期間から、前記空調機に係るランニングコストを算出することを特徴とするものである。
上記第2の主な目的及び第3の主な目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、評価対象となる空調機の設置箇所における外気の温度である外気温度、及び室外機に吸い込んだ外気の温度である吸込温度の入力を受け付ける入力手段と、入力された前記外気温度及び入力された前記吸込温度から、前記空調機における前記外気温度と前記吸込温度との関係式であって前記空調機における前記吸込温度をIとし前記空調機における前記外気温度をAとしてI=αA+βで示される外気吸込関係式におけるα及びβを算出する制御手段と、前記設置箇所に属する地域における過去の所定期間内の複数の外気温度の集合である期間外気温度を、前記外気温度が蓄積される外気温度情報サーバから受信する通信手段と、各種の情報を表示可能である表示手段と、を備えており、前記制御手段は、前記期間外気温度を前記外気吸込関係式における前記外気温度Aに順次当てはめて、前記所定期間内における複数の前記吸込温度Iの集合である期間吸込温度を算出すると共に、前記期間吸込温度における何れかの前記吸込温度Iが前記空調機の停止温度下限以上となることを判断した場合に、前記空調機が停止し得る旨の警告メッセージを前記表示手段に表示させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の第1の主な効果は、ショートサーキット発生の有無だけでなく、ショートサーキットの度合に基づく消費電力の上昇及び能力の低下の少なくとも一方まで分かる空調機のショートサーキット評価装置が提供されることである。
又、本発明の第2の主な効果は、解析に必要な時間及び手間がより小さい空調機のショートサーキット評価装置が提供されることである。
更に、本発明の第3の主な効果は、ショートサーキットの影響で空調機が運転停止し、空調が効かなくなる可能性を事前に把握することができる空調機のショートサーキット評価装置が提供されることである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の空調機のショートサーキット評価装置(SC評価装置)のブロック図である。
図2】本発明のSC評価装置の動作に係る第1の事例のフローチャートである。
図3】第1の事例に係る室外機の設置状況が示される斜視図である。
図4図3の側面図である。
図5】第1の事例における日間外気温度分布が示されるグラフである。
図6】第1の事例における吹出平均温度と負荷率の関係を示す吹出負荷率関係式に係るグラフである。
図7】第1の事例における8月の「店舗」の日間における時刻と負荷率の関係が示される負荷パターンに係るグラフである。
図8】第1の事例における冷房に係る負荷率毎の温度条件-COP分布のグラフである。
図9】第1の事例における暖房に係る負荷率毎の温度条件-COP分布のグラフである。
図10】第1の事例における最高気温日に係る外気温度の日間分布及び5種類の室外機の吸込温度の日間分布が示されるグラフである。
図11】第2の事例に係る室外機の設置状況が示される斜視図である。
図12】第2の事例における最高気温日に係る外気温度の日間分布及び5種類の室外機の吸込温度の日間分布が示されるグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態及びその変更例が、適宜図面に基づいて説明される。本発明は、下記の形態及び変更例に限定されない。
【0009】
[構成等]
図1は、本発明に係る空調機のショートサーキット評価装置(SC評価装置1)のブロック図である。
SC評価装置1は、SC解析機2を備えている。
SC解析機2は、表示手段3と、入力手段4と、記憶手段6と、通信手段7と、制御手段8と、を備えている。
SC解析機2は、例えば持ち運び可能なコンピュータにより形成される。
【0010】
表示手段3は、各種の情報を表示可能な手段である。
表示手段3は、例えば、液晶ディスプレイを始めとするフラットディスプレイ、及びプリンタの少なくとも一方である。
【0011】
入力手段4は、各種の情報を入力可能な手段である。
入力手段4は、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、ボタン及びスイッチの少なくとも何れかである。
表示手段3及び入力手段4は、タッチセンサ付きディスプレイ、即ちタッチパネルにより形成されても良い。
【0012】
記憶手段6は、各種の情報を記憶可能な手段である。
記憶手段6は、例えば、ハードディスク、メモリ、及び光学ディスクの少なくとも何れかである。
記憶手段6には、SC評価プログラムEP、空調機データベースCD、及び負荷パターンデータベースLDが記憶されている。
空調機データベースCDは、空調機CRのメーカー及び型式毎に、空調機CRの機器情報を有している。空調機CRの機器情報は、ここでは定格消費電力、定格能力、及び設備容量、並びに負荷率R毎の温度条件(外気温度A,吸込温度I)に対する消費電力Pの分布、及び負荷率R毎の温度条件に対するエネルギー消費効率COP(Coefficient Of Performance)の分布(図8図9参照)である。尚、空調機CRの機器情報の少なくとも何れかは、冷房と暖房とで分けられていても良く、他の情報等においても同様である。
負荷パターンデータベースLDは、空調機CRが設置される建物についての情報である建物情報BIの種別(業種)毎及び月毎に、時刻(横軸)に対する負荷率(縦軸)の関係である負荷パターンLPを有している。建物情報BIの種別が「店舗」である8月の負荷パターンLPは、図7に点線で示されている(後に詳述)。尚、建物情報BIの種別における「店舗」以外のものとして、例えば「オフィス」、「工場」、「家屋」、「病院」、「ホテル」等がある。
【0013】
通信手段7は、各種の情報を通信可能な手段である。
通信手段7は、例えばインターフェイス、及びモデムの少なくとも一方である。
【0014】
通信手段7には、インターネットNETを介して、外気温度情報サーバAISが通信可能に接続されている。尚、外気温度情報サーバAISは、専用線等により通信手段7と接続されても良い。
外気温度情報サーバAISは、地域毎、日時毎の外気温度Aを蓄積しており、当該外気温度Aを、地域及び日時の指定に応じて出力可能である。
外気温度情報サーバAISは、外気温度Aのみ蓄積していても良いし、気象情報サーバ(AMeDAS等)のように外気温度Aを各種の気象情報と共に蓄積していても良い。
【0015】
又、通信手段7には、外気温度センサASと、吹出温度センサOSと、吸込温度センサISとが、通信可能に接続されている。
外気温度センサASは、空調機CRの室外機OUから離れた箇所に設置される。外気温度センサASは、当該箇所の温度である外気温度Aを検知して出力可能である。尚、外気温度Aは、外気温度情報サーバAISから得られても良い。この場合、外気温度センサASは、省略されても良い。
吹出温度センサOSは、空調機CRの室外機OUの吹出口あるいはその隣接箇所に設置される。吹出温度センサOSは、当該箇所の温度、即ち室外機OUの吹出口から吹き出す風の温度である吹出温度Oを検知して出力可能である。尚、吹出温度Oは、室外機OUに内蔵された温度センサから得られても良い。この場合、吹出温度センサOSは、省略されても良い。
吸込温度センサISは、空調機CRの室外機OUの吸込口あるいはその隣接箇所に設置される。吸込温度センサISは、当該箇所の温度、即ち室外機OUの吸込口から吸い込まれる風の温度である吸込温度Iを検知して出力可能である。尚、吸込温度Iは、室外機OUに内蔵された温度センサから得られても良い。この場合、吸込温度センサISは、省略されても良い。
尚、外気温度A、吹出温度O、及び吸込温度Iのうちの少なくとも何れかは、温度計により使用者に認識され、使用者によって入力手段4から入力されても良い。
【0016】
制御手段8は、各種の手段を制御する手段である。
制御手段8は、例えばCPUである。
制御手段8は、記憶手段6を参照してSC評価プログラムEPを実行することにより、各種の手段を制御する。
【0017】
[第1の事例]
以下、SC評価装置1の動作に係る第1の事例及び第2の事例が、第1の事例を中心に説明される。
図2は、SC評価装置1の動作に係る第1の事例のフローチャートである。
第1の事例は、図3図4に示されるように、名古屋市にある床面積3000m(平方メートル)の1階建て店舗SH1における、屋外の屋根ROの下に10台の室外機OU1(室外機OU1-1~OU1-10)が外壁EW沿いに一列に設置された空調機CR1を対象とする。室外機OU1-1~OU1-10は直方体状であり、それらの吸込口は背面(外壁EW側の面)に配置され、吹出口は上面に配置される(上吹き)。よって、吹出風OBは屋根ROに向かって吹かれる。又、ショートサーキットSC1が発生する可能性がある。
店舗SH1の営業時間及び作業時間、即ち店舗SH1における空調機CR1の稼働時間は、午前8時から午後10時までである。
【0018】
まず、SC解析機2の制御手段8は、外気温度センサAS、吹出温度センサOS、及び吸込温度センサISから、空調機CR1の設置箇所としての店舗SH1における外気の温度である外気温度A、並びに室外機OU1から出た排気の温度である吹出温度O、及び室外機OU1に吸い込んだ外気の温度である吸込温度Iを通信手段7において受信して、記憶手段6に記憶する(温度計測に係るステップS1-1)。
ここでは、これらの温度は、次の表1の左半部に示されるように、室外機OU1-1~OU1-10毎に把握される(n=1~10即ち外気温度A~A10,吹出温度O~O10,吸込温度I~I10)。これらの温度は、8月の午前11時に計測されたものである。
又、これらの温度は、ここでは、外気温度センサAS、吹出温度センサOS、及び吸込温度センサISが安定した後に一度で計測される。温度計測の所要時間は、各センサの安定化時間を含め、室外機OU1-1~OU1-10毎に各1分間程度である。尚、外気温度A、吹出温度O、及び吸込温度Iの少なくとも何れかは、複数の計測値の平均値等とされても良い。
【0019】
【表1】
【0020】
次いで、制御手段8は、地域情報LI、建物情報BI、及び空調機情報CIの入力を、表示手段3及び入力手段4において受け付け、記憶手段6に記憶する(現況確認に係るステップS1-2)。
地域情報LIは、空調機CR1が属する地域についての情報で、ここでは「名古屋市」が選択入力される。
建物情報BIは、空調機CR1が設置される建物についての情報で、ここでは種別として「店舗」が選択入力され、稼働時間として「午前8時から午後10時まで」が入力される。尚、建物情報BIの空調面積として「3000m」が合わせて入力されても良い。又、稼働時間及び空調面積の少なくとも一方は、建物情報BI以外の情報として扱われても良い。他の情報についても、項目、名称及び関連づけの少なくとも何れかが適宜変更されて良い。
空調機情報CIは、空調機CR1についての情報であり、ここでは、室外機OU1-1~OU1-10について、メーカーとして「M社」が選択入力され、型式として「PU」が選択入力される。空調機データベースCDにおいて、「M社」の「PU」の機器情報は、冷房能力56kWとされている。
ステップS1-1,S1-2は、合わせて、入力に係るステップS1と捉えることができる。
【0021】
続いて、制御手段8は、取得した外気温度Aと吸込温度Iとから、対象店舗SH1におけるこれらの温度の関係式である外気吸込関係式を、室外機OU1-1~OU1-10についてそれぞれ算出する(ステップS2-1)。
別途行われた多数の事例解析により、吸込温度Iは外気温度Aの一次関数となることが分かっている。即ち、外気吸込関係式は、一般に次の式(1)で表される。
I=αA+β (1)
【0022】
外気吸込関係式(1)は、SCの全く無い理想的な場合では、吸込温度I=外気温度Aであるため、α=1となる。
又、ここでは、中間季等で室外機OU1が動作しない温度を25℃として、外気吸込関係式(1)は、外気温度Aを横軸とし、吸込温度Iを縦軸としたグラフにおいて、吸込温度I=外気温度Aの直線と、吸込温度I=外気温度A=25℃の点で交わるものとされている(初期設定)。尚、この25℃の温度は、建物形態及び実態の少なくとも一方に適宜応じて、変更することができる。例えば、この25℃の温度は、5℃以上30℃以下の範囲内の値に変更することができる。
よって、室外機OU1-1~OU1-10毎の外気吸込関係式(1)は、一つの(外気温度A,吸込温度I)の点が分かれば、この点と(25,25)の点を結ぶ直線で表されることとなり、外気吸込関係式(1)のα,βがそれぞれ算出される。
尚、別日に計測された各種温度を合わせて用いて算出する等、外気吸込関係式(1)は、実態に合わせて変更されても良い。外気吸込関係式(1)は、同日あるいは異なる日に計測された複数の(外気温度A,吸込温度I)の点を用い、例えば各温度の平均値の点と(25,25)の点とを結ぶ直線により、あるいは複数の(外気温度A,吸込温度I)の点及び(25,25)の点を考慮した最小二乗法で決定される直線により定められても良い。外気吸込関係式(1)は、複数の(外気温度A,吸込温度I)の点のみから算出され、算出に当たり(25,25)の点が考慮されなくても良い。
【0023】
次いで、制御手段8は、空調機CR1の設置箇所に属する地域における過去の所定期間内の複数の外気温度Aの集合(分布)である、日間外気温度AD、月間外気温度AM、年間外気温度AYを確定する(ステップS2-2)。
即ち、図5に示されるように、制御手段8は、通信手段7及びインターネットNETを介して、外気温度情報サーバAISに対し、地域情報LI及び同じ月日(1年前の日)の1日の外気温度Aの分布である日間外気温度分布ADDを問い合わせる。日間外気温度分布ADDは、例えば1時間毎の当該地域及び日の外気温度の集合である。尚、単位(間隔)となる時間は、更に短い時間(5分間等)であっても良いし、長い時間(2時間等)であっても良い。又、制御手段8は、同じ月日以外の1日の日間外気温度分布ADDを問い合わせても良い。
この問合せに応じ、外気温度情報サーバAISは、インターネットNETを介して、日間外気温度分布ADDをSC解析機2へ送信する。
制御手段8は、通信手段7において日間外気温度分布ADDを受信して、日間外気温度ADとして記憶手段6に記憶する。
同様に、制御手段8は、地域情報LI及び同じ月を指定して、前年同月の外気温度Aの分布である月間外気温度分布を問い合わせ、外気温度情報サーバAISから月間外気温度分布を得て、月間外気温度AMとして記憶手段6に記憶する。尚、単位(間隔)となる時間は、日間外気温度分布ADDと同じ(1時間)であっても異なっていても良い。又、月間外気温度分布は、日間平均気温、日中平均気温あるいは日中最高気温等、又は週間平均気温等の集合であっても良い。
更に同様に、制御手段8は、地域情報LIを指定して、1年の外気温度Aの分布である年間外気温度分布を問い合わせ、外気温度情報サーバAISから年間外気温度分布を得て、年間外気温度AYとして記憶手段6に記憶する。尚、単位(間隔)となる時間は、日間外気温度分布ADD及び月間外気温度分布の少なくとも一方と同じであっても異なっていても良い。又、年間外気温度分布は、月間平均気温等の集合であっても良い。
【0024】
続いて、制御手段8は、外気吸込関係式(1)により、日間外気温度ADから、日間吸込温度IDを算出する(図5の両矢印AA1参照,ステップS2-3)。即ち、制御手段8は、室外機OU1-1~OU1-10毎に、日間外気温度分布ADDに属する外気温度Aを次々に外気吸込関係式(1)に当てはめて、日間吸込温度IDに相当する日間吸込温度分布IDDを算出する。
同様に、制御手段8は、月間外気温度AMから、室外機OU1-1~OU1-10毎に月間吸込温度IMを算出する。
更に同様に、制御手段8は、年間外気温度AYから、室外機OU1-1~OU1-10毎に年間吸込温度IYを算出する。
ステップS2-1~S2-3は、合わせて、各種の温度を計測し、問い合わせ、算出する温度取得に係るステップS2と捉えることができる。
【0025】
そして、制御手段8は、SCによる影響の度合を示す指標となるショートサーキット割合SCR(Short Circuit Ratio)を、室外機OU1-1~OU1-10毎に算出する(SCR,ステップS3)。
ここでは、制御手段8は、上記表1の右半部に示されるように、各吸込温度Iから対応する外気温度Aを減じて得られる吸込外気温度差ΔTiを合わせて算出する。尚、ΔTiの算出は、省略されても良い。
SCRは、次の式(2)で表される。
SCR=(吸込温度I-外気温度A)/(吹出温度O-外気温度A) (2)
=ΔTi/(O-A)
SCRは、上記表1の右半部におけるΔTiの右隣に示される。
【0026】
続いて、制御手段8は、空調機CR1に係る負荷率Rを算出する(ステップS4-1)。
制御手段8は、次の2種類の負荷率算出手法に係る選択入力を入力手段4において受け付け、入力された手法において負荷率Rを算出する。尚、負荷率Rの算出の手法は、情報の記憶の状況等に応じて自動的に選択されても良いし、何れか一方の手法に限定されても良いし、他の手法とされても良い。
【0027】
第1の手法として、図6に示されるように、予め、空調機CR1の種類に応じて、複数の実例(「全体」)から、吹出温度O(「吹出平均温度」)と負荷率Rの関係を示す吹出負荷率関係式(多項式(全体))が得られていて空調機データベースCDに記憶されており、制御手段8が、全ての吹出温度Oの平均である吹出平均温度を吹出負荷率関係式に当てはめることで、空調機CR1の負荷率Rを算出する。吹出負荷率関係式の各実例からの取得は、最小二乗法等によりなされる。
例えば、制御手段8は、吹出平均温度が47.9℃であると、吹出平均温度をxとし負荷率をyとした吹出負荷率関係式であるy=0.0009x-0.0251x+0.2015に当てはめて、負荷率を100%と算出する。
【0028】
第2の手法として、空調機CR1の電源回路に電力計を挿入すること等により実際の消費電力が計測されている場合、制御手段8は、その計測消費電力の入力を入力手段4により受け付けて、空調機データベースCDの参照により得た空調機CR1の定格消費電力、定格能力と合わせて演算することで、空調機CR1の負荷率Rを算出する。
即ち、制御手段8は、計測消費電力を定格消費電力で除して得た電力率と、外気温度A又は吸込温度Iとから、空調機CR1の負荷率R(能力率)を算出する。この算出は、どのようなものであっても良く、例えば、本出願人に係る特許第5318519号公報に記載されたデータベースを用いるものであって良い。
【0029】
次いで、制御手段8は、空調機CR1に係る負荷Lを算出する(ステップS4-2)。
制御手段8は、ステップS4-1において第1の手法で負荷率Rを算出した場合、次の通り負荷Lを日間及び月間において算出する。
即ち、制御手段8は、建物情報BIを参照し、空調機CR1が「店舗」に設置されていることを把握する。又、制御手段8は、現在の月を「8月」と把握する。
制御手段8は、負荷パターンデータベースLDを参照し、図7において点線で示される「店舗」の「8月」の日間における負荷パターンLPを把握する。この負荷パターンLPは、横軸が時刻で縦軸が負荷率のグラフにおいて、早い時刻の立ち上がりと遅い時刻の立ち下がりとを有する正規分布状の基本形状を持ち、更に中央の時刻において極小値を持つ窪み部を有するものとなっていて、「店舗」の8月中の1日における典型的(代表的)な負荷率の推移を表すものとなっている。
【0030】
そして、制御手段8は、この日間の負荷パターンLPを補正して、日間の補正後負荷パターンLPRを得る(図7の両矢印AA2,AA3参照)。
即ち、現在(8月の午前11時)において、負荷パターンLPでの負荷率が80%であるところ、実際の算出(ステップS4-1)では、負荷率は100%と計測されている。そこで、制御手段8は、補正後負荷パターンLPRの算出において、午前11時における負荷率が100%となるように、負荷パターンLPを縦軸方向で調整する(持ち上げる,両矢印AA2)。負荷パターンLPの持ち上げは、ここでは各時刻で同じ倍率(100/80=1.25倍)となるようになされるところ、平行移動等によりなされても良い。
又、制御手段8は、補正後負荷パターンLPRの算出において、負荷パターンLPにおける時刻の範囲と、建物情報BIにおける稼働時間である「午前8時から午後10時まで」とがずれている場合、「午前8時から午後10時まで」に合致するように負荷パターンLPを横軸方向で伸縮する(両矢印AA3)。負荷パターンLPの伸縮は、ここでは各時刻で同じ倍率となるようになされるところ、立ち上がり形状、立ち下がり形状及び窪み形状の少なくとも何れかが保持された状態でなされても良い。
【0031】
更に、制御手段8は、日間の補正後負荷パターンLPRで表された負荷率Rに、空調機データベースCDから得た設備容量を乗じて、空調機CR1における現状の日間の負荷Lを算出する。
又、制御手段8は、日間の負荷Lに当該月の日数(8月では31)を乗算して、月間の負荷Lを算出する。
【0032】
他方、制御手段8は、ステップS4-1において第2の手法で負荷率Rを算出した場合、負荷率Rに対し、空調機情報CIに係る定格能力を乗ずることで、負荷L(能力)を算出する。
尚、ステップS4-1,S4-2を合わせたものは、負荷の想定に係るステップS4と捉えられる。
【0033】
続いて、制御手段8は、消費電力P及びCOPを算出する(ステップS5-1,S5-2)。ステップS5-1,S5-2は、合わせて能力、電力、環境性の計算に係るステップS5と捉えられる。
制御手段8は、消費電力P及びCOPについて、同様に算出する。以下、COPの算出が説明される。尚、COP=負荷L/消費電力Pである。又、COPに代えて、あるいはCOPと共に、他のエネルギー効率に係る指標が算出されても良い。
【0034】
制御手段8は、図8に示される、空調機データベースCDにおける冷房時の負荷率R毎の温度条件-COP分布を参照し、温度条件が外気温度AでありSCが発生していない場合のCOPであるSC無COPと、温度条件が吸込温度Iであり外気温度Aより高い場合にはSCが発生していると推定される場合のCOPであるSC有COPとを、該当する負荷率Rの分布において求める(図8の各太点線矢印参照)。負荷率R毎の温度条件-COP分布は、予め得ておく。例えば、実験室内で空調機CR1を運転し、負荷率R及び温度条件を順次変えて、COPをそれぞれ実測する。
尚、温度条件-COP分布は、空調機データベースCDにおいて、どのような形式で記憶されていても良く、例えばテーブル形式で記憶されていても良いし、関数形式で記憶されていても良い。他の分布等についても、同様である。又、暖房時の負荷率R毎の温度条件-COP分布について、図9に示す。
【0035】
次いで、制御手段8は、ランニングコストRCを、消費電力P、料金単価UP(例えば20円/キロワット時)、及び評価期間ET(例えば6月から10月まで)から算出する(ステップS6)。
記憶手段6は、料金単価UPを記憶している。尚、制御手段8は、料金単価の入力を、入力手段4において受け付けても良い。
制御手段8は、評価期間ETの入力を、入力手段4において、例えば始期及び終期の各選択入力により受け付ける。制御手段8は、入力された評価期間ETを、記憶手段6に記憶する。
制御手段8は、消費電力Pと料金単価UPとの積を、評価期間ETにわたり積算して、空調機CR1の電気料金に係るランニングコストRCを算出する。
【0036】
そして、制御手段8は、表示する情報の種類に関する入力手段4からの入力に応じ、各種の情報を表示手段3において表示させる(ステップS7)。尚、制御手段8は、入力手段4からの入力の有無にかかわらず、各種の情報の少なくとも何れかを表示させても良い。
即ち、制御手段8は、上記表1のSCRを表示させる。尚、SCRの表示形式はどのようなものであっても良く、例えば表形式及びグラフ形式の少なくとも一方であっても良い。他の情報の表示形式についても、SCRの表示形式と同様に変更可能である。又、制御手段8は、SCRと合わせて、外気温度A、吹出温度O、吸込温度I、及び吸込外気温度差ΔTの少なくとも何れかを表示させても良い。
又、制御手段8は、次の表2に示される、COPの低下割合を表示させる。尚、制御手段8は、COPの低下割合と合わせて、基準COP、算出COP、及びこれらの差の少なくとも何れかを表示させても良い。又、制御手段8は、COPと同様に算出される消費電力の低下割合等についても、COPの低下割合等と同様に表示させる。
更に、制御手段8は、次の表3~表4に示される、各種の消費電力量、コストの増加の割合を表示させる。表3は、室外機OU1-1~OU1-5に関する平均値のもの及び最高気温日(年)のものであり、表4は、室外機OU1-6~OU1-10に関する平均値のもの及び最高気温日(年)のものである。尚、制御手段8は、各種の割合と合わせて、基準値、算出値、及びこれらの差の少なくとも何れかを表示させても良い。又、室外機OU1のまとめ方は、5機ずつではなく、4機ずつ、あるいは6機ずつ等とされても良い。
【0037】
【表2】
【表3】
【表4】
【0038】
このようにして、使用者は、各種の情報の表示を参照することにより、空調機CR1(室外機OU1)におけるSCの度合及びSCに起因するコストアップ(経済損失)を具体的に把握することができる。
又、使用者は、SCに対して整流壁の設置等の対策を行う前後においてSCの度合及びSCに起因するコストを把握すれば、その対策の効果を把握することができる。
しかも、SCの度合及びSCに起因するコストの算出は、SC解析機2並びに外気温度センサAS、吹出温度センサOS、及び吸込温度センサISを空調機CR1の設置箇所に持っていき、外気温度A、吹出温度O、及び吸込温度Iを一度計測するだけで簡単に行える。
【0039】
又、外気温度A、吹出温度O、及び吸込温度Iの計測が真夏以外であっても、制御手段8は、外気温度情報サーバAISから最高気温日に係る外気温度Aを取得し、その最高の外気温度Aにおける吸込温度Iを算出すれば、吸込温度Iの上昇による空調機CR1の停止を予測することができる。
図10は、最高気温日に係る外気温度Aの日間分布及び室外機OU1-1~OU1-5の吸込温度I~Iの日間分布が示されるグラフである。
制御手段8は、最高気温日に係る外気温度Aの日間分布を、外気温度情報サーバAISから取得し、空調機CR1の稼働時間内における吸込温度I~Iの日間分布を、当該外気温度Aの日間分布から、外気吸込関係式(1)により算出する。又、制御手段8は、図10のグラフを、表示手段3において適宜表示する。尚、制御手段8は、「外気温度に対する吸込温度の上昇幅は、最大7.1℃、平均4.6℃でした。」というメッセージを、表示手段3に適宜表示させても良い。又、制御手段8は、「室外機OU1-5における外気温度に対する吸込温度の上昇幅は、最大10.3℃、平均6.7℃でした。」というメッセージを、表示手段3に適宜表示させても良く、他の室外機OU1についても同様である。
使用者は、室外機OU1-5における吸込温度Iが13時(午後1時)頃に50℃を超えること等を、図10のグラフ等により把握可能である。一般に、空調機は、吸込温度Iが所定の停止温度下限(例えば43℃)以上となると、能力抑制のために運転停止する。よって、使用者は、空調機CR1が真夏にSCの影響で運転停止し、冷房が効かなくなる可能性を事前に把握することができる。尚、制御手段8は、何れかの吸込温度I~Iが停止温度下限以上となることを判断した場合、空調機CR1が停止し得る旨の警告メッセージを表示手段3に表示させても良い。
【0040】
[第2の事例]
次に、SC評価装置1の動作に係る第2の事例が説明される。
第2の事例は、第1の事例と、空調機の能力及び設置状況を除いて同様である。第1の事例と同様の事項については、適宜説明が省略される。尚、第2の事例は、第1の事例と同様の変更例を適宜有する。
【0041】
第2の事例は、図11に示されるように、岐阜市にある床面積1500mの1階建て店舗SH2における、屋上に14台の室外機OU2(室外機OU2-1~OU2-14)が7台ずつ二列に向かい合わせで設置された空調機CR2を対象とする。室外機OU2-1~OU2-14は直方体状であり、それらの吸込口は背面に配置され、吹出口は向かい合う面に配置される(横吹き)。よって、吹出風OBは、他の列の室外機に向かって吹かれる。又、ショートサーキットSC2が発生する可能性がある。
【0042】
まず、制御手段8は、店舗SH2において、外気温度A、吹出温度O、及び吸込温度Iを得る(ステップS1-1)。
これらの温度は、次の表5の左半部に示されるように、室外機OU2-1~OU2-14毎に把握される。これらの温度は、8月の午前11時に計測されたものである。
【0043】
【表5】
【0044】
次いで、制御手段8は、地域情報LI、建物情報BI、及び空調機情報CIを得る(ステップS1-2)。ここでは、地域情報LIは「岐阜市」であり、建物情報BIの種別、稼働時間は順に「店舗」、「午前8時から午後10時まで」であり、空調機情報CIはデフォルト値である。空調機情報CI(n=1~14)のデフォルト値は、空調機CR2(室外機OU2-1~OU2-14)の機種が空調機データベースCDに無いために選択される。デフォルト値として、ここでは複数の機種における容量及び能力の各実測値の平均値(冷房能力14kW)が使用される。尚、デフォルト値は、上吹きあるいは横吹き等の種類に応じて、複数用意されていても良い。又、デフォルト値は、複数の機種におけるカタログ値の平均値等であっても良い。
【0045】
続いて、制御手段8は、取得した外気温度Aと吸込温度Iとから、対象店舗SH2における外気吸込関係式(1)を、室外機OU1-1~OU1-10についてそれぞれ算出する(ステップS2-1)。
又、制御手段8は、日間外気温度AD、月間外気温度AM、年間外気温度AYを確定する(ステップS2-2)。
更に、制御手段8は、外気吸込関係式(1)により、日間外気温度AD,月間外気温度AM,年間外気温度AYから、日間吸込温度ID,月間吸込温度IM,年間吸込温度IYを算出する(ステップS2-3)。
【0046】
又、制御手段8は、室外機OU2-1~OU2-10毎にSCRを算出する(ステップS3)。
加えて、制御手段8は、空調機CR1に係る負荷率R,負荷Lを算出する(ステップS4-1,S4-2)。
続いて、制御手段8は、消費電力P及びCOPを算出する(ステップS5-1,S5-2)。
次いで、制御手段8は、ランニングコストRCを算出する(ステップS6)。
【0047】
そして、制御手段8は、各種の情報を表示手段3において表示させる(ステップS7)。
即ち、制御手段8は、上記表5のSCRを表示させる。
又、制御手段8は、次の表6に示される、COPの低下割合を表示させる。又、制御手段8は、COPと同様に算出される消費電力の低下割合についても、COPの低下割合と同様に表示させる。
更に、制御手段8は、次の表7~表9に示される、各種の消費電力量、コストの増加の割合を表示させる。表7は、室外機OU2-1~OU2-5に関する平均値のもの及び最高気温日(年)のものであり、表8は、室外機OU2-6~OU2-10に関する平均値のもの及び最高気温日(年)のものであり、表9は、室外機OU2-11~OU2-14に関する平均値のもの及び最高気温日(年)のものである。
【0048】
【表6】
【0049】
【表7】
【表8】
【表9】
【0050】
使用者は、第2の事例においても、各種の情報の表示を参照することにより、空調機CR2(室外機OU2)におけるSCの度合及びコストを具体的に把握することができる。
又、使用者は、SCへの対策の前後においてSCの度合及びコストを把握すれば、その対策の効果を把握することができる。
しかも、SCの度合及びコストの算出は、SC解析機2並びに外気温度センサAS、吹出温度センサOS、及び吸込温度センサISを空調機CR2の設置箇所に持っていき、外気温度A、吹出温度O、及び吸込温度Iを一度計測するだけで簡単に行える。
【0051】
又、外気温度A、吹出温度O、及び吸込温度Iの計測が真夏以外であっても、制御手段8は、吸込温度Iの上昇による空調機CR1の停止を予測することができる。
図12は、最高気温日に係る外気温度Aの日間分布及び室外機OU2-1~OU2-5の吸込温度I~Iの日間分布が示されるグラフである。
制御手段8は、最高気温日に係る外気温度Aの日間分布を、外気温度情報サーバAISから取得し、空調機CR1の稼働時間内における吸込温度I~Iの日間分布を、当該外気温度Aの日間分布から、外気吸込関係式(1)により算出する。又、制御手段8は、図10のグラフを、表示手段3において適宜表示する。尚、制御手段8は、「外気温度に対する吸込温度の上昇幅は、最大8.2℃、平均5.8℃でした。」というメッセージを、表示手段3に適宜表示させても良い。又、制御手段8は、「室外機OU2-1における外気温度に対する吸込温度の上昇幅は、最大10.4℃、平均7.3℃でした。」というメッセージを、表示手段3に適宜表示させても良く、他の室外機OU2についても同様である。
使用者は、室外機OU2-1における吸込温度Iが14時(午後2時)頃に50℃に迫ること等を、図12のグラフ等により把握可能である。よって、使用者は、空調機CR2が真夏にSCの影響で運転停止し、冷房が効かなくなる可能性を事前に把握することができる。
【0052】
[作用効果等]
以上のSC評価装置1は、評価対象となる空調機CRの設置箇所における外気の温度である外気温度A、及び室外機OUに吸い込んだ外気の温度である吸込温度Iの入力を受け付ける入力手段4と、外気温度A及び吸込温度Iから、空調機CRにおける外気温度Aと吸込温度Iとの関係式である外気吸込関係式(1)を算出する制御手段8と、空調機CRの設置箇所に属する地域(地域情報LI)における過去の所定期間(日間,月間,年間)内の複数の外気温度の集合である期間外気温度(日間外気温度AD,月間外気温度AM,年間外気温度AY)を、外気温度Aが蓄積される外気温度情報サーバAISから受信する通信手段7と、を備えている。制御手段8は、期間外気温度を外気吸込関係式(1)に順次当てはめて、所定期間内における複数の吸込温度Iの集合である期間吸込温度(日間吸込温度ID,月間吸込温度IM,年間吸込温度IY)を算出する。
よって、所定期間にわたる期間吸込温度が参照されて、SC発生の有無だけでなく程度まで分かるSC評価装置1が提供される。又、空調機CR1,CR2の設置箇所における現況の外気温度A及び吸込温度Iが短時間で計測されて入力されればSCについて解析されるため、解析に必要な時間及び手間がより小さいSC評価装置1が提供される。
【0053】
又、入力手段4は、室外機OUから出される排気の温度である吹出温度Oの入力を受け付け、制御手段8は、吹出温度Oと空調機CRの負荷率Rとの関係を示す吹出負荷率関係式を参照可能であり、吹出温度Oを吹出負荷率関係式に当てはめて、前記負荷率を算出する。よって、負荷率Rを加味した解析が行えるSC評価装置1が提供される。
更に、制御手段8は、期間吸込温度及び負荷率Rから、空調機CRに係る消費電力P及びCOPを算出する。よって、SCの発生ないし度合に基づく消費電力Pの上昇、及び能力の低下が、具体的に評価される。
加えて、制御手段8は、消費電力P、並びに電力料金の単価である料金単価UP、及び評価期間ETから、空調機CR1,CR2に係るランニングコストRCを算出する。よって、SCの発生ないし度合に基づくランニングコストRCの上昇が、具体的に評価される。
【0054】
[変更例等]
尚、本発明の形態は、上記の形態及び変更例に限定されず、次に示すような更なる変更例を適宜有する。
上記の形態は、主に冷房について説明されているところ、暖房についても、冷房の場合と同様にして、SC評価装置1でSCを評価することができる。
【符号の説明】
【0055】
1・・空調機のショートサーキット評価装置(SC評価装置)、(1)・・外気吸込関係式、4・・入力手段、7・・通信手段、8・・制御手段、A・・外気温度、AD・・日間外気温度(期間外気温度)、AIS・・外気温度情報サーバ、AM・・月間外気温度(期間外気温度)、AY・・年間外気温度(期間外気温度)、COP・・COP、CR1,CR2・・空調機、ET・・評価期間、I・・吸込温度、LI・・地域情報、O・・吹出温度、OU1,OU2・・室外機、P・・消費電力、R・・負荷率、RC・・ランニングコスト、UP・・料金単価。
図1
図2
図3
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図5
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図10
図11
図12