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特許7412159変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/26 20060101AFI20240104BHJP
   C08L 23/02 20060101ALI20240104BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20240104BHJP
   C09J 123/26 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
C08L23/26
C08L23/02
C08L23/16
C09J123/26
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019230730
(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公開番号】P2021098790
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 勇
(72)【発明者】
【氏名】木村 浩司
(72)【発明者】
【氏名】竹中 天斗
(72)【発明者】
【氏名】関口 俊司
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-136705(JP,A)
【文献】特開2011-068912(JP,A)
【文献】特開平09-235319(JP,A)
【文献】特開平04-183739(JP,A)
【文献】特開2003-192855(JP,A)
【文献】特開平09-176391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K
C08L
C09D
C09J123/26
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A):ポリオレフィン樹脂と、
成分(B):エチレンプロピレンゴムと、
を少なくとも含む成分(C):原料成分が、
成分(D):α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体を含む変性成分
で変性された成分(E):変性ポリオレフィン樹脂
を少なくとも含み、粒子径が0.1~50μmであり、
前記成分(B)の含有量が、前記成分(A)及び前記成分(B)の合計量に対し10~70重量%である変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物。
【請求項2】
前記変性成分が、(メタ)アクリル酸エステルをさらに含む、請求項1に記載の変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物。
【請求項3】
前記成分(B)の曲げ弾性率が20~200MPaである、請求項1または2に記載の変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物。
【請求項4】
前記成分(B)の測定温度230℃、測定荷重2.16kgのメルトフローレート(MFR)が0.1~8.0g/10分である、請求項1~3のいずれか1項に記載の変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物を含む、塗料。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物を含む、プライマー。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載の変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物を含む、バインダー。
【請求項8】
成分(A):ポリオレフィン樹脂と、
成分(B):エチレンプロピレンゴムと、
を少なくとも含む成分(C):原料成分が、
成分(D):α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体を含む変性成分
で変性された成分(E):変性ポリオレフィン樹脂
を少なくとも含み、粒子径が0.1~50μmである変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物を含む、接着剤。
【請求項9】
バッチ式ビーズミル装置により、
成分(A):ポリオレフィン樹脂と、
成分(B):エチレンプロピレンゴムと、
を少なくとも含む成分(C):原料成分が、
成分(D):α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体を含む変性成分
で変性された成分(E):変性ポリオレフィン樹脂
の粉砕と溶剤分散を同時に行う工程を含む、変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンやポリエチレンといったポリオレフィン樹脂は、引張強さ、引裂強さ、衝撃強さ等の機械的性質や、耐水性、耐薬品性に優れている。また、軽量かつ安価であり、成形し易いといった多くの優れた性質も有しており、シート、フィルム、成形物等様々な用途に用いられている。但し、アクリル系樹脂やポリエステル系樹脂とは異なり、非極性かつ結晶性が良好であるため、塗装や接着が困難であるという欠点を有している。
【0003】
非極性樹脂基材に対する付着性を向上させたポリオレフィン樹脂として、塩素化ポリオレフィン樹脂が広く用いられている。但し、塩素化ポリオレフィン樹脂は脱塩酸の問題があるので、ポリオレフィン樹脂と金属との接着には不適であるとされている。
従って、ポリオレフィン樹脂と金属との接着には、非水系ディスパーションタイプの酸変性したポリオレフィン系樹脂をベースとしたものが一般的に使用されている。
【0004】
さらに近年では、耐熱性が求められる用途が増加しつつあり、この問題の解決のために比較的融点の高い樹脂を用いることが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の技術では、高融点樹脂を含有することにより耐熱性が向上するけれども、溶液安定性が低下する場合がある。そこで、良好な溶液性状を有し、且つ耐熱性を有する変性ポリオレフィン樹脂が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-210842号公報
【文献】特開2018-150482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載の変性ポリオレフィン樹脂は、良好な溶液性状を有し、且つ耐熱性を有するものの、柔軟性が劣っており、使用用途が限られていた。
【0007】
本発明の課題は、柔軟性や耐熱性、及び溶液安定性を具備し、付着性にも優れる変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、エチレンプロピレンゴムを少なくとも含む原料成分をα,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体を含む変性成分で変性した変性ポリオレフィン樹脂を少なくとも含み、粒子径を0.1~50μmに調整した分散体組成物によって、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明者らは、下記の〔1〕~〔9〕を提供する。
〔1〕成分(A):ポリオレフィン樹脂と、成分(B):エチレンプロピレンゴムと、を少なくとも含む成分(C):原料成分が、成分(D):α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体を含む変性成分で変性された成分(E):変性ポリオレフィン樹脂を少なくとも含み、粒子径が0.1~50μmである変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物。
〔2〕前記成分(B)の含有量が、前記成分(A)及び前記成分(B)の合計量に対し10~70重量%である上記〔1〕に記載の変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物。
〔3〕前記成分(B)の曲げ弾性率が20~200MPaである、上記〔1〕または〔2〕に記載の変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物。
〔4〕前記成分(B)の測定温度230℃、測定荷重2.16kgのメルトフローレート(MFR)が0.1~8.0g/10分である、上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物。
〔5〕上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物を含む、塗料。
〔6〕上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物を含む、プライマー。
〔7〕上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物を含む、バインダー。
〔8〕上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物を含む、接着剤。
〔9〕バッチ式ビーズミル装置により、成分(A):ポリオレフィン樹脂と、
成分(B):エチレンプロピレンゴムと、を少なくとも含む成分(C):原料成分が、成分(D):α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体を含む変性成分
で変性された成分(E):変性ポリオレフィン樹脂の粉砕と溶剤分散を同時に行う工程を含む、変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、柔軟性と耐熱性、及び溶液安定性を具備し、付着性にも優れる変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
なお、本明細書中、「AA~BB」と表記する場合、AA以上BB以下を表す。
【0012】
[1.変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物]
本発明の変性ポリオレフィン樹脂の溶剤分散体は、成分(A):ポリオレフィン樹脂と、成分(B):エチレンプロピレンゴムと、を少なくとも含む成分(C):原料成分が、成分(D):α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体を含む変性成分で変性された成分(E):変性ポリオレフィン樹脂を少なくとも含み、粒子径が0.1μm~50μmである変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物である。
【0013】
成分(A)に成分(B)を混ぜることにより、耐熱性と柔軟性を具備したポリオレフィン樹脂を製造する事ができる。
また、成分(C)を成分(D)でグラフト変性することで、ポリオレフィン樹脂の非極性樹脂基材に対する付着性を向上させる事ができる。
さらに、成分(E)を含む分散体組成物における粒子径を0.1~50μmに調整することにより、溶液安定性を向上し得る。
【0014】
本発明の変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物は、上記の変性ポリオレフィン樹脂と溶剤を含むものである。他の成分として、乳化剤、安定剤、及び中和剤等の成分をさらに含んでもよい。
【0015】
溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶剤;メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、エチルシクロヘキサン等のケトン溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ノナン、デカン等の脂肪族又は脂環式炭化水素溶剤が挙げられる。これら有機溶剤は1種単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として分散体組成物に含まれていてよい。環境問題の観点から、有機溶剤として、芳香族溶剤以外の溶剤を使用することが好ましく、脂環式炭化水素溶剤とエステル溶剤又はケトン溶剤との混合溶剤を使用することがより好ましい。
【0016】
本発明の変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物における粒子径は、0.1~50μmであることが好ましく、0.3~30μmであることがより好ましい。粒子径が斯かる範囲にあることで、溶液安定性と適度な粘性を両立し得る。
なお、粒子径は、通常メジアン径であり、粒度分布測定装置にて測定することができる。
【0017】
本発明の変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物の固形分は、10~30%であることが好ましい。固形分が斯かる範囲にあることで、溶液安定性が良好となり得る。
【0018】
(成分(A):ポリオレフィン樹脂)
成分(A)は、その共重合体の構成について特に限定されるものではない。但し、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、及びエチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の共重合体であることが好ましい。なお、これら共重合体に占めるプロピレン成分の割合は、共重合体全体の50モル%以上が好ましく、55モル%以上がより好ましい。
なお、プロピレン成分等の成分(A)の構成成分の割合は、共重合体を調製する際の各単量体の仕込み量で算出することができる。
【0019】
成分(A)の重量平均分子量は、10,000~200,000の範囲であることが好ましく、15,000~150,000の範囲であることがより好ましい。
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準物質:ポリスチレン)により測定することができる。
【0020】
成分(A)の融点は、40~120℃が好ましく、より好ましくは40~100℃であり、さらに好ましくは50~90℃である。成分(A)の融点が斯かる範囲にあることで、得られる変性ポリオレフィン樹脂の溶液安定性を向上し得る。
DSCによる融点の測定は、例えば以下の条件で行うことができる。JIS K7121-1987に準拠し、DSC測定装置(セイコー電子工業製)を用い、約5mgの試料を200℃で10分間加熱融解状態を保持した後、10℃/分の速度で降温して-50℃で安定保持する。その後、更に10℃/分で200℃まで昇温して融解した時の融解ピーク温度を測定し、該温度を融点として評価する。尚、後述の実施例における融点は斯かる条件で測定されたものである。
【0021】
(成分(B):エチレンプロピレンゴム)
成分(B)は、エチレンプロピレンゴムである。成分(B)がエチレンプロピレンゴムであると、成分(A)との相溶性が良好となる。成分(B)のエチレンプロピレンゴムは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
成分(B)の曲げ弾性率は、20~200MPaが好ましく、30~150MPaがより好ましく、40~110MPaが更に好ましい。成分(B)の弾性率が斯かる範囲にあることで、得られる変性ポリオレフィン樹脂の柔軟性を向上し得る。
なお、曲げ弾性率は、JIS K 7203:9 5に則って測定することができる。
【0023】
成分(B)の測定温度230℃、測定荷重2.16kgにおけるメルトフローレートは0.1~8.0g/10分が好ましく、0.3~5.0g/10分がより好ましく、0.5~3.0g/10分が更に好ましい。成分(B)のメルトフローレートが斯かる範囲にあることで、得られる変性ポリオレフィン溶液安定性が向上し得る。
なお、メルトフローレートは、ASTM D1238に則って測定することができる。
【0024】
成分(B)の融点は、100~200℃が好ましく、より好ましくは100~180℃であり、さらに好ましくは100~170℃である。成分(B)の融点が斯かる範囲にあることで、得られる変性ポリオレフィン樹脂の耐熱性を向上し得る。
DSCによる融点の測定は、例えば以下の条件で行うことができる。JIS K7121-1987に準拠し、DSC測定装置(セイコー電子工業製)を用い、約5mgの試料を200℃で10分間加熱融解状態を保持した後、10℃/分の速度で降温して-50℃で安定保持する。その後、更に10℃/分で200℃まで昇温して融解した時の融解ピーク温度を測定し、該温度を融点として評価する。尚、後述の実施例における融点は斯かる条件で測定されたものである。
【0025】
(成分(C):原料成分)
成分(B)の含有量は、成分(A)及び成分(B)の合計量に対し10~70重量%が好ましく、20~50重量%がより好ましい。成分(B)の含有量が斯かる範囲にあることにより、良好な溶液安定性を有し、かつ耐熱性と耐衝撃性を具備したポリオレフィン樹脂を製造し得る。
なお、成分(C)における成分(A)と成分(B)の割合は、成分(C)又は変性ポリオレフィンを製造する際の成分(A)と成分(B)の仕込み量で算出することができる。
【0026】
成分(C)を調製するにあたり、成分(A)及び成分(B)は、いずれも変性されていてもよく、いずれか一方が変性されていてもよい。
【0027】
(成分(D):α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体を含む変性成分)
成分(D)は、α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体を含む変性成分である。α,β-不飽和カルボン酸及びその誘導体としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。中でも、無水マレイン酸、無水アコニット酸、無水イタコン酸が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
成分(D)は、α,β-不飽和カルボン酸及びその誘導体から選ばれる1種以上の化合物であればよく、α,β-不飽和カルボン酸1種以上とその誘導体1種以上の組み合わせ、α,β-不飽和カルボン酸2種以上の組み合わせ、α,β-不飽和カルボン酸の誘導体2種以上の組み合わせであってもよい。
【0028】
変性ポリオレフィン樹脂中の成分(D)のグラフト重量は、変性ポリオレフィン樹脂を100重量%とした場合に、好ましくは0.1~20重量%であり、より好ましくは0.5~15重量%であり、さらに好ましくは1~10重量%である。グラフト重量が0.1重量%以上であることにより、得られる変性ポリオレフィン系樹脂の、金属被着体に対する接着性を保つことができる。グラフト重量が20重量%以下であることにより、グラフト未反応物の発生を防止することができ、樹脂被着体に対する十分な接着性を得ることができる。
【0029】
α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体のグラフト重量%は、公知の方法で測定することができる。例えば、アルカリ滴定法やフーリエ変換赤外分光法によって求めることができる。尚、後述の実施例におけるグラフト重量%は、アルカリ滴定法で測定されたものである。
【0030】
α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体以外の変性成分として、(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルは、一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。一般式(1)で表される化合物を用いて変性すると、変性ポリオレフィン樹脂の分子量分布を狭くすることができ、溶液の低温安定性、他樹脂との相溶性、接着性を向上させることができる。一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステルは、1種単独で用いてもよく、複数種を任意の割合で混合して用いてもよい。
【0031】
CH2=C(R1)COOR2・・・(1)
【0032】
一般式(1)中、Rは、H又はCHを表し、CHが好ましい。Rは、CnH2n+1を表す。nは、8~18の整数を表し、8~15が好ましく、8~14がより好ましく、8~13がさらに好ましい。式(1)で表される化合物としては、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレートが好ましく、ラウリルメタクリレート、オクチルメタクリレート、トリデシルメタクリレートがより好ましい。
【0033】
用途や目的に応じて、本発明の特性を損なわない範囲で、上述したもの以外の他のグラフト成分を併用することができる。他のグラフト成分は、1種単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて併用してもよい。但し、合計のグラフト重量が成分(D)の合計のグラフト重量を超えないことが好ましい。
【0034】
(成分(E):変性ポリオレフィン樹脂)
成分(E)の変性ポリオレフィン樹脂は、上記の成分(C)を成分(D)でグラフト変性したものである。成分(C)を成分(D)でグラフト変性することにより、ポリオレフィン樹脂の非極性樹脂基材に対する付着性を向上し得る。
【0035】
(成分(F):ラジカル発生剤)
成分(C)の成分(D)によるグラフト変性は、成分(F)としてラジカル発生剤を用いて行うことができる。成分(F)は、公知のラジカル発生剤の中より適宜選択することができ、有機過酸化物系化合物が好ましい。有機過酸化物系化合物としては、例えば、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、1,4-ビス[(t-ブチルパーオキシ)イソプロピル]ベンゼン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-シクロヘキサン、シクロヘキサノンパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクトエートが挙げられる。中でも、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド及びジラウリルパーオキサイドが好ましい。成分(F)は、1種単独のラジカル発生剤でもよいし、複数種のラジカル発生剤の組み合わせであってもよい。
【0036】
グラフト変性反応における成分(F)の添加量は、成分(D)の添加量に対し、好ましくは1~100重量%であり、より好ましくは10~50重量%である。1重量%以上であることにより、十分なグラフト効率を保持することができる。100重量%以下であることにより、変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量の低下を防止することができる。
【0037】
(物性)
成分(E)の変性ポリオレフィン樹脂のDSCによる融点は、その融点ピークが成分(B)に由来する100℃~200℃の範囲及び成分(A)に由来する40~120℃の範囲の2つあることが好ましく、成分(B)に由来する100℃~170℃の範囲及び成分(A)に由来する50~90℃の範囲の2つあることがより好ましい。変性ポリオレフィン樹脂の融点が斯かる範囲にあることで、本発明の効果をより優れて発揮し得る。
【0038】
一般的に、ゴム成分を含有させることで柔軟性や耐熱性に優れることは知られているが、融点が高くなるにつれて結晶性が高まるため、溶液安定性が悪くなる。
本発明は、変性ポリオレフィン樹脂を溶剤に溶かすのではなく、溶剤に分散させることによって、柔軟性や耐熱性を具備しながら長期の溶液安定性に優れることを発明し得たものである。
【0039】
(用途)
本発明の変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物は、付着性(接着性)が低く、塗料等の塗工が困難な基材のための中間媒体として有用であり、例えば、付着性(接着性)の乏しいポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系基材同士の接着剤として使用し得る。この際、基材がプラズマ、コロナ等により表面処理されているか否かを問わず用いることができる。また、ポリオレフィン系基材の表面に本発明の変性ポリオレフィン樹脂をホットメルト方式で積層し、更にその上に塗料等を塗工することにより、塗料の付着安定性等を向上させることもできる。
また、本発明の変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物は、金属と樹脂との優れた接着性をも発揮し得る。金属としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスが挙げられる。樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂等の非極性樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂が挙げられる。従って、本発明の変性ポリオレフィン樹脂は、接着剤、プライマー、塗料用バインダー及びインキ用バインダーとして、又はこれらの成分として、用いることができる。
【0040】
本発明の変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物は、他の成分と混合し、樹脂組成物としてよい。他の成分として、溶液、硬化剤、及び接着成分からなる群より選択される少なくとも1種の成分を含むものが好ましい。
【0041】
(溶液)
本発明の分散体組成物の一実施態様は、上記変性ポリオレフィン樹脂と溶液を含むものである。溶液としては、有機溶剤が挙げられる。有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶剤;メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、エチルシクロヘキサン等のケトン溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ノナン、デカン等の脂肪族又は脂環式炭化水素溶剤が挙げられる。これら有機溶剤は1種単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として樹脂組成物に含まれていてよい。環境問題の観点から、有機溶剤として、芳香族溶剤以外の溶剤を使用することが好ましく、脂環式炭化水素溶剤とエステル溶剤又はケトン溶剤との混合溶剤を使用することがより好ましい。
【0042】
また、分散体組成物の保存安定性を高めるために、アルコール(例、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール)、プロピレン系グリコールエーテル(例、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコール-t-ブチルエーテル)を、1種単独で、又は2種以上混合して用いてもよい。この場合、上記有機溶剤に対して、1~20重量%添加することが好ましい。
【0043】
(硬化剤)
本発明の組成物の他の実施態様は、上記の変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物と硬化剤を含む組成物である。硬化剤としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、ポリアミン化合物、ポリオール化合物、或いはそれらの官能基が保護基でブロックされた架橋剤が例示される。硬化剤は1種単独であってもよいし、複数種の組み合わせであってもよい。
【0044】
硬化剤の配合量は、成分(E)の変性ポリオレフィン樹脂中の成分(D)の含有量により適宜選択できる。また、硬化剤を配合する場合は、目的に応じて有機スズ化合物、第三級アミン化合物等の触媒を併用することができる。
【0045】
(接着成分)
本発明の組成物の更に他の実施態様は、上記の変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物と接着成分を含む組成物である。接着成分としては、所望の効果を阻害しない範囲でポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤等の公知の接着成分を用いることができる。
【0046】
本発明の組成物は、ポリオレフィン系基材等の非極性樹脂同士や非極性樹脂と金属の接着に優れるので、接着剤、プライマー、塗料用バインダー及びインキ用バインダーとして用いることができ、例えば、アルミラミネートフィルム等のラミネートフィルムにおける接着剤として有用である。
【0047】
(プライマー、バインダー)
本発明の変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物又は上記記載の樹脂組成物は、プライマー、塗料用バインダー又はインキ用バインダーに用いることができる。本発明の変性ポリオレフィン樹脂又は上記記載の樹脂組成物は、接着性、溶液安定性、耐熱性に優れており、自動車のバンパー等ポリオレフィン基材への上塗り塗装時のプライマー、上塗り塗料やクリアーとの付着性に優れる塗料用バインダーとして好適に利用することができる。
【0048】
本発明の変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物又は樹脂組成物を含むプライマー、塗料用バインダー又はインキ用バインダーは、溶液、粉末、シート等、用途に応じた形態で使用できる。また、その際に必要に応じて添加剤、例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、無機充填剤等を配合できる。
【0049】
(積層体)
本発明の変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物又は上記記載の樹脂組成物は、積層体に用いることができる。積層体における層の配置は特に限定されないが、金属層及び樹脂層が変性ポリオレフィン樹脂又は組成物を含む層を挟んで位置する態様、金属層を挟んで第1の樹脂層と第2の樹脂層が存在し、金属層と各樹脂層の間に変性ポリオレフィン樹脂又は組成物を含む層が挟持されている態様が例示される。本発明の積層体は、リチウムイオン二次電池、コンデンサー、電気二重層キャパシター等の外装材として用いられるものであってもよい。
【0050】
[2.変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物の製造方法]
本発明の変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物の製造方法は、成分(A):ポリオレフィン樹脂と、成分(B):エチレンプロピレンゴムと、を少なくとも含む成分(C):原料成分が、成分(D):α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体を含む変性成分で変性された成分(E):変性ポリオレフィン樹脂を少なくとも含み、粒子径が0.1~50μmである変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物を製造する方法である。
各成分の詳細は、[1.変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物]に記載した内容と同様である。
【0051】
成分(E)の変性ポリオレフィン樹脂を得る方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。成分(A)と成分(B)をそれらが反応する程度に溶解する有機溶剤(例えば、トルエン等)に加熱溶解し、成分(C)を得た後、成分(D)及び他のグラフト成分を加え反応させることで本発明の変性ポリオレフィン樹脂を得ることができる。また、成分(A)、成分(B)、成分(D)、及び他のグラフト成分を予めそれらが反応する程度に溶解する有機溶剤に加熱溶解して反応させる溶液法や、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機等を使用して、成分(A)、成分(B)、成分(D)及び他のグラフト成分を加え反応させる溶融混練法等でも成分(E)の変性ポリオレフィン樹脂を得ることができる。
【0052】
本発明の分散体組成物を得る方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。上記成分(E)の変性ポリオレフィン樹脂を溶剤に浸し膨潤させた後、該膨潤樹脂を該溶剤ごとバッチ式ビーズミル装置にて微粉砕しつつ、装置内を循環させることで本発明の変性ポリオレフィン樹脂の溶剤分散体を得ることができる。
【0053】
溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶剤;メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、エチルシクロヘキサン等のケトン溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ノナン、デカン等の脂肪族又は脂環式炭化水素溶剤が挙げられる。これら有機溶剤は1種単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として樹脂組成物に含まれていてよい。環境問題の観点から、有機溶剤として、芳香族溶剤以外の溶剤を使用することが好ましく、脂環式炭化水素溶剤とエステル溶剤又はケトン溶剤との混合溶剤を使用することがより好ましい。
【0054】
成分(E)である変性ポリオレフィン樹脂の微粉砕、および溶剤へ分散させるために、バッチ式ビーズミル装置を用いることが好ましい。該装置を用いることで、変性ポリオレフィン樹脂の微粉砕と溶剤分散を同時に行うことができ、作業効率が向上し得る。
【0055】
バッチ式ビーズミル装置としては、例えば、バスケットミル、リングミル、ADミル等が挙げられる。中でも、バスケットミルを用いることが好ましい。バスケットミルとしては、例えば浅田鉄工製のものを使用することができる。
【0056】
バッチ式ビーズミル装置内に充填するビーズとしては、例えばガラス、アルミナ、スチール、ジルコン、ジルコニアが挙げられる。これらビーズは1種単独で用いてもよく、2種以上含まれていてよい。分散体の平均粒子径をより小さくし、かつビーズ同士の衝突によるビーズの摩耗を軽減するため、ジルコニアビーズを用いることが好ましい。
ビーズ径に特に指定は無いが、0.1mm~100mmが好ましく、0.5mm~50mmがより好ましく、1mm~10mmが更に好ましい。ビーズ径が0.1mm~100mmだと、微粉砕にかかる時間も短く、微粉砕後の変性ポリオレフィン樹脂が分散に適した粒子径となる。
【0057】
バッチ式ビーズミル装置内下部の攪拌羽根の攪拌速度は、扱う樹脂や溶剤、及びそれらの添加量によって適宜調節し得る。
【実施例
【0058】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を好適に説明するためのものであって、本発明を限定するものではない。なお、成分(A)、成分(B)及び変性ポリオレフィン樹脂の物性値並びに変性ポリオレフィン樹脂の評価は、下記に記載した方法で行う。また、「部」は別途記載がない限り重量部を示す。
【0059】
[曲げ弾性率(MPa)]
JIS K 7203:9 5に準拠して測定した。
【0060】
[メルトフローレート(g/10分)]
ASTM D1238に準拠し、230℃の測定温度、測定荷重2.16kgの条件でメルトフローレート試験機(安田精機製作所製)にて算出した。
【0061】
[平均粒子径(nm)]
実施例及び比較例で得られる変性ポリオレフィン樹脂の分散体を、レーザー回折式粒度分布測定装置(Malvern Instruments製、マスターサイザー3000)の分散媒が循環する試料循環装置中に滴下して測定し、得られた粒度分布の体積累積50%粒子径(メジアン径)を平均粒子径とした。
【0062】
[粘度(mPa・s)]
実施例及び比較例で得られる変性ポリオレフィン樹脂の分散体または溶液をガラス瓶内に密閉し、恒温槽にて25℃に調温し、B型粘度計(東機産業社製、BMII型粘度計)を用いて、回転速度60rpmの条件で測定した。
【0063】
[溶液安定性]
溶液試料を密閉したガラス瓶に入れ、5℃で7日間静置保管した後、目視にて外観を評価した。
○:組成物溶液の流動性が保たれている。
△:組成物溶液の流動性が若干低下するが、実用上問題はない。
×:組成物溶液の流動性が低下している。
【0064】
[ピール適性]
実施例及び比較例で得られる変性ポリオレフィン樹脂の分散体または溶液を、イソプロピルアルコールで脱脂した超高剛性ポリプロピレン基材表面へ10μmの膜厚となる様スプレー塗装し、室温で10分間乾燥後、さらに上塗り塗料を100μmとなる様にスプレー塗装し、室温で10分間乾燥後、80℃で30分間焼付を行った。恒温恒湿環境下(23℃、50%RH)にて3日間静置後、引張試験機にてピール強度を測定し、下記の基準にて評価を行った。
なお、ピール適性は、樹脂の柔軟性の指標として用いることができる。
○:500gf/cm以上であり、ピール適性良好。
△:400gf/cm以上500gf/cm未満であり、ややピール適性に劣るものの、実用上問題無い。
×:400gf/cm未満であり、ピール適性に劣る。
【0065】
[耐熱性]
調製した変性ポリオレフィン樹脂塗料組成物を、ポリオレフィン系基材としてポリプロピレン(OPP)にスプレー塗工した。該塗工面に表面処理がされていない超高剛性PP板を貼り合わせた後、ヒートシール(接着幅10mm、0.2MPa、160℃、10秒)し、試験片を得た。試験片のOPPフィルム側に100gのおもりを取り付け、OPPフィルム側を下にし、100℃に設定した乾燥機の中に入れ、2時間後にOPPの剥離状態を目視確認し、下記評価基準で評価した。
○:OPPフィルムの剥がれが無い。
×:OPPフィルムが超高剛性PP板から剥離している。
【0066】
[付着性]
アルミ箔上に樹脂乾燥膜厚2μmとなるように#16のマイヤーバーで調製した変性ポリオレフィン樹脂塗料組成物の溶液試料を接着剤として塗布し、180℃で10秒間乾燥した。塗布済みのアルミ箔を無延伸ポリプロピレン(CPP)シートと貼合し、120℃で3秒間、200kPaの条件で熱圧着を行った後、15mm幅に切り出して試験片を作製した。試験片を23℃、相対湿度50%で24時間恒温恒湿に保管した後、180度方向剥離、剥離速度100mm/minの条件でラミネート接着強度を測定し、下記の基準にて評価を行った。
○:接着強度が500g/15mm以上であり、接着性良好。
△:接着強度が300g/15mm以上500g/15mm未満であり、やや接着性に劣るものの、実用上問題無い。
×:接着強度が300g/15mm未満であり、接着性に劣る。
【0067】
[成分:(E)変性ポリオレフィン樹脂]
(製造例1)
攪拌機、冷却管、及び滴下漏斗を取り付けた四つ口フラスコ中で、成分(A-1)としてプロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体(プロピレン成分60モル%、エチレン成分10モル%、1-ブテン成分30モル%、Tm=65℃)50部、及び成分(B-1)としてプロピレンエチレンゴム(エチレン成分34モル%、曲げ弾性率55MPa、MFR2.0g/10分(230℃)、Tm=153℃)50部を、トルエン400gに加熱溶解した。系内の温度を110℃に保持して撹拌しながら、成分(D)として無水マレイン酸7.0部、その他成分としてラウリルメタクリレート7.0部、および成分(F)としてジ-t-ブチルパーオキサイド4.0部をそれぞれ3時間かけて滴下し、さらに1時間反応させた。反応後、室温まで冷却した反応物を大過剰のアセトン中に投入して精製し、無水マレイン酸のグラフト重量が5.7重量%、ラウリルメタクリレートのグラフト重量が6.2重量%の変性ポリオレフィン樹脂(成分(E-1))を得た。得られた変性ポリオレフィン樹脂のDSCで測定した融点ピークは63℃および146℃であった。
【0068】
(製造例2)
攪拌機、冷却管、及び滴下漏斗を取り付けた四つ口フラスコ中で、成分(A-2)としてプロピレン-エチレン共重合体(プロピレン成分89モル%、エチレン成分11モル%、Tm=65℃)80部、及び成分(B-1)としてプロピレンエチレンゴム(エチレン成分34モル%、曲げ弾性率55MPa、MFR2.0g/10分(230℃)、Tm=153℃)20部を、トルエン400gに加熱溶解した。系内の温度を110℃に保持して撹拌しながら、成分(D)として無水マレイン酸5.0部、その他成分としてオクチルメタクリレート5.0部、および成分(F)としてジ-t-ブチルパーオキサイド1.0部をそれぞれ3時間かけて滴下し、さらに1時間反応させた。反応後、室温まで冷却した反応物を大過剰のアセトン中に投入して精製し、無水マレイン酸のグラフト重量が3.7重量%、オクチルメタクリレートのグラフト重量が3.2重量%の変性ポリオレフィン樹脂(成分(E-2))を得た。得られた変性ポリオレフィン樹脂のDSCで測定した融点ピークは65℃および150℃であった。
【0069】
(製造例3)
成分(B-1)の代わりに成分(B-2)としてプロピレンエチレンゴム(エチレン成分40モル%、曲げ弾性率100MPa、MFR0.6g/10分(230℃)、Tm=142℃)を用いた以外は、製造例2と同様に反応した。反応後、室温まで冷却した反応物を大過剰のアセトン中に投入して精製し、無水マレイン酸のグラフト重量が5.5重量%、ラウリルメタクリレートのグラフト重量が6.0重量%の変性ポリオレフィン樹脂(成分(E-3))を得た。得られた変性ポリオレフィン樹脂のDSCで測定した融点ピークは63℃および143℃であった。
【0070】
(製造例4)
成分(A-2)を25部、成分(B-1)を75部とした以外は、製造例2と同様に反応した。反応後、室温まで冷却した反応物を大過剰のアセトン中に投入して精製し、無水マレイン酸のグラフト重量が5.6重量%、ラウリルメタクリレートのグラフト重量が5.9重量%の変性ポリオレフィン樹脂(成分(E-4))を得た。得られた変性ポリオレフィン樹脂のDSCで測定した融点ピークは65℃および150℃であった。
【0071】
(製造例5)
攪拌機、冷却管、及び滴下漏斗を取り付けた四つ口フラスコ中で、成分(A-1)としてプロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体(プロピレン成分60モル%、エチレン成分10モル%、1-ブテン成分30モル%、Tm=65℃)50部、及び成分(B-3)としてプロピレンエチレンゴム(エチレン成分4モル%、曲げ弾性率280MPa、MFR10.0g/10分(230℃)、Tm=130℃)50部を、トルエン400gに加熱溶解した。系内の温度を110℃に保持して撹拌しながら、成分(D)として無水マレイン酸6.0部、その他成分としてオクチルメタクリレート6.0部、および成分(F)としてジ-t-ブチルパーオキサイド1.0部をそれぞれ3時間かけて滴下し、さらに1時間反応させた。反応後、室温まで冷却した反応物を大過剰のアセトン中に投入して精製し、無水マレイン酸のグラフト重量が3.6重量%、オクチルメタクリレートのグラフト重量が3.3重量%の変性ポリオレフィン樹脂(成分(E-5))を得た。得られた変性ポリオレフィン樹脂のDSCで測定した融点ピークは63℃および131℃であった。
【0072】
(製造例6)
攪拌機、冷却管、及び滴下漏斗を取り付けた四つ口フラスコ中で、成分(A-1)としてプロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体(プロピレン成分60モル%、エチレン成分10モル%、1-ブテン成分30モル%、Tm=65℃)100部を、トルエン400gに加熱溶解した。系内の温度を110℃に保持して撹拌しながら、成分(D)として無水マレイン酸7.0部、その他成分としてオクチルメタクリレート7.0部、および成分(F)としてジ-t-ブチルパーオキサイド1.0部をそれぞれ3時間かけて滴下し、さらに1時間反応させた。反応後、室温まで冷却した反応物を大過剰のアセトン中に投入して精製し、無水マレイン酸のグラフト重量が5.6重量%、オクチルメタクリレートのグラフト重量が5.3重量%の変性ポリオレフィン樹脂(成分(E-6))を得た。得られた変性ポリオレフィン樹脂の融点は63℃であった。
【0073】
(実施例1)
5Lのステンレス製ビーカー中に製造例1で得た変性ポリオレフィン樹脂(成分(E-1))を300g取り、メチルシクロヘキサン1360gおよびメチルエチルケトン340gを添加して蓋をし、20℃に調温した恒温槽中に2時間静置して該ペレットを膨潤させた。該膨潤ペレットを該溶剤ごとバスケットミル分散装置(浅田鉄工製)の釜に移し、ジルコニアビーズ(1.5mm径)が充填された分散バスケットを下ろして、1分間窒素パージを行い、酸素濃度を爆発限界以下とした。その後、該バスケット内部ローターおよび該ローターに連動した下部撹拌羽の回転数を徐々に上げ、該膨潤ペレットを含む溶剤が該バスケットを循環、すなわち、該バスケット上部から内部に吸引され該バスケット側面および底部のスリットから排出され、再び該バスケット上部から吸引されるという流れが発生している事を確認した。その後、900rpmで、液温が30℃前後となる様適宜調整しながら、3時間該膨潤ペレットを該バスケット内に循環させ、微粉砕と溶剤への分散を行った。分散後、釜底部バルブからフェルト製ろ布を通して排出し、分散体を得た。得られた分散体の固形分は14.9%、粘度は50mPa・s、粒子径(メジアン径)は0.60μmであった。
【0074】
(実施例2)
製造例2で得た変性ポリオレフィン樹脂(成分(E-2))を用いた以外は、実施例1と同様に製造した。得られた分散体の固形分は15.1%、粘度は37mPa・s、粒子径(メジアン径)は0.57μmであった。
【0075】
(実施例3)
製造例3で得た変性ポリオレフィン樹脂(成分(E-3))を用いた以外は、実施例1と同様に製造した。得られた分散体の固形分は15.0%、粘度は90mPa・s、粒子径(メジアン径)は20.00μmであった。
【0076】
(実施例4)
製造例4で得た変性ポリオレフィン樹脂(成分(E-4))を用いた以外は、実施例1と同様に製造した。得られた分散体の固形分は15.2%、粘度は225mPa・s、粒子径(メジアン径)は0.89μmであった。
【0077】
(実施例5)
製造例5で得た変性ポリオレフィン樹脂(成分(E-5))を用いた以外は、実施例1と同様に製造した。得られた分散体の固形分は15.1%、粘度は70mPa・s、粒子径は30.10μmであった。
【0078】
(比較例1)
ガラス瓶内にて、製造例1で得た変性ポリオレフィン樹脂(成分(E-1))を、メチルシクロヘキサン/メチルエチルケトン溶液(混合比80/20)に溶解して、15重量%の濃度の変性ポリオレフィン樹脂溶液を調製した。得られた溶液の固形分は15.0%、粘度は300mPa・sであった。
【0079】
(比較例2)
製造例2で得た変性ポリオレフィン樹脂(成分(E-2))を用いた以外は、比較例1と同様に溶液を調製した。得られた溶液の固形分は15.0%、粘度は40mPa・sであった。
【0080】
(比較例3)
製造例6で得た変性ポリオレフィン樹脂(成分(E-6))を用いた以外は、比較例1と同様に溶液を調製した。得られた溶液の固形分は15.0%、粘度は40mPa・sであった。
【0081】
【表1】
【0082】
表1の実施例1~5から明らかなように、本発明の変性ポリオレフィン樹脂分散体組成物は溶液安定性、ピール適性、耐熱性および付着性をバランスよく有していた。
一方、比較例1および2のような溶剤に溶解させた形態では、溶液安定性が劣る。また、比較例3のように、成分(B)を配合しない場合、ピール適性や耐熱性が劣ることとなる。