(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】機械式駐車場システム、駐車場制御装置、および駐車場制御方法
(51)【国際特許分類】
E04H 6/18 20060101AFI20240104BHJP
E04H 6/40 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
E04H6/18 601F
E04H6/40 A
(21)【出願番号】P 2019232711
(22)【出願日】2019-12-24
【審査請求日】2022-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 博美
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 公基
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-253902(JP,A)
【文献】特開平10-238153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/00-6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を積載して機械式駐車場内を搬送する搬器と、前記搬器を旋回させる旋回装置と、
所定の監視エリア内の異物を検知する複数の異物検知センサと、前記搬器、前記旋回装置、および前記異物検知センサに通信接続された駐車場制御装置とを備え、
前記
複数の異物検知センサは、
各異物検知センサの監視エリアを足し合わせたエリアが、前記旋回装置による旋回動作で移動する前記搬器の移動エリアを含むように前記搬器の外縁に設置され、
前記駐車場制御装置は、
前記旋回装置による前記搬器の旋回動作中に、前記異物検知センサで前記移動エリア内の異物が検知されると、
当該異物に前記搬器または前記搬器上の車両が接触するまでの推定時間を算出し、算出した推定時間が、予め設定された第1閾値以下であり且つ、前記第1閾値よりも短い第2閾値を超える場合には、前記旋回装置による旋回速度を減速させ、前記第2閾値以下である場合には、前記旋回装置による旋回動作を停止させる動作制御部を有することを特徴とする機械式駐車場システム。
【請求項2】
前記駐車場制御装置の動作制御部は、前記異物検知センサで前記移動エリア内の異物が検知され、算出した推定時間が予め設定された第1閾値以下であり且つ、前記第1閾値よりも短い第2閾値を超える場合には、算出された推定時間が短い程、旋回速度が遅くなるように、前記旋回装置による旋回速度を減速させることを特徴とする請求項
1に記載の機械式駐車場システム。
【請求項3】
車両を積載して機械式駐車場内を搬送する搬器と、前記搬器を旋回させる旋回装置と、
所定の監視エリア内の異物を検知する複数の異物検知センサを含み、各異物検知センサの監視エリアを足し合わせたエリアが、前記旋回装置による旋回動作で移動する前記搬器の移動エリアを含むように前記搬器の外縁に設置された異物検知センサ群とに通信接続され、
前記旋回装置による前記搬器の旋回動作中に、前記異物検知センサで前記移動エリア内の異物が検知されると、
当該異物に前記搬器または前記搬器上の車両が接触するまでの推定時間を算出し、算出した推定時間が、予め設定された第1閾値以下であり且つ、前記第1閾値よりも短い第2閾値を超える場合には、前記旋回装置による旋回速度を減速させ、前記第2閾値以下である場合には、前記旋回装置による旋回動作を停止させる動作制御部を有することを特徴とする駐車場制御装置。
【請求項4】
車両を積載して機械式駐車場内を搬送する搬器と、前記搬器を旋回させる旋回装置と、
所定の監視エリア内の異物を検知する複数の異物検知センサを含み、各異物検知センサの監視エリアを足し合わせたエリアが、前記旋回装置による旋回動作で移動する前記搬器の移動エリアを含むように前記搬器の外縁に設置された異物検知センサ群と、前記搬器、前記旋回装置、および前記異物検知センサ群に通信接続された駐車場制御装置と
、を備えた機械式駐車場システムの駐車場制御方法であって、
前記駐車場制御装置が、
前記旋回装置による前記搬器の旋回動作中に、前記異物検知センサで前記移動エリア内の異物が検知されると、
当該異物に前記搬器または前記搬器上の車両が接触するまでの推定時間を算出し、算出した推定時間が、予め設定された第1閾値以下であり且つ、前記第1閾値よりも短い第2閾値を超える場合には、前記旋回装置による旋回速度を減速させ、前記第2閾値以下である場合には、前記旋回装置による旋回動作を停止させることを特徴とする駐車場制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式駐車場システム、駐車場制御装置、および駐車場制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、普及している機械式駐車場には、建物内部の入出庫扉近くの入出庫エリアに、車両を積載して旋回させる旋回装置が設置されているものがある。この旋回装置を用いることにより、駐車場内でスムーズに入庫動作が実行できるように車両の向きを変更することができる。また、駐車場から出庫させる車両の向きを、車両の発車方向に自動で合わせて、利用者の利便性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した旋回装置に車両を積載して旋回させる際に、旋回装置の移動エリア内に人や荷物等の異物の存在があると、当該異物と、旋回装置や車両とが接触して、怪我や破損が発生するおそれがある。
【0005】
これを回避するため、入出庫エリアの壁や床面等にカメラ装置を固定的に設置し、当該カメラ装置で撮影した撮像情報を解析することで、旋回装置の移動エリア内を監視して異物を検知する技術がある。しかし、旋回装置の移動エリア内で監視対象とする部分は、旋回装置の動作により刻一刻と変化するため、上述した技術を用いても、死角の発生等により異物を検知できない場合があるという問題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、機械式駐車場内に設置された車両の旋回装置を安全に動作させることが可能な、機械式駐車場システム、駐車場制御装置、および駐車場制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の機械式駐車場システムは、車両を積載して機械式駐車場内を搬送する搬器と、前記搬器を旋回させる旋回装置と、前記搬器の外縁に設置された異物検知センサと、前記搬器、前記旋回装置、および前記異物検知センサに通信接続された駐車場制御装置とを備え、前記異物検知センサは、前記旋回装置による旋回動作で移動する移動エリア内の異物を検知する検知部を有し、前記駐車場制御装置は、前記旋回装置による前記搬器の旋回動作中に、前記異物検知センサで前記移動エリア内の異物が検知されると、前記旋回装置による前記搬器の旋回速度を減速させるかまたは停止させる動作制御部を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の駐車場制御装置は、車両を積載して機械式駐車場内を搬送する搬器と、前記搬器を旋回させる旋回装置と、前記搬器の外縁に設置され、前記旋回装置による旋回動作で移動する前記搬器の移動エリア内の異物を検知する異物検知センサと、前記搬器、前記旋回装置、および前記異物検知センサに通信接続され、前記旋回装置による前記搬器の旋回動作中に、前記異物検知センサで前記移動エリア内の異物が検知されると、前記旋回装置による前記搬器の旋回速度を減速させるかまたは停止させる動作制御部を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の駐車場制御方法は、車両を積載して機械式駐車場内を搬送する搬器と、前記搬器を旋回させる旋回装置と、前記搬器の外縁に設置され、前記旋回装置による旋回動作で移動する前記搬器の移動エリア内の異物を検知する異物検知センサと、前記搬器、前記旋回装置、および前記異物検知センサに通信接続された駐車場制御装置が、前記旋回装置による前記搬器の旋回動作中に、前記異物検知センサで前記移動エリア内の異物が検知されると、前記旋回装置による前記搬器の旋回速度を減速させるかまたは停止させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の機械式駐車場システム、駐車場制御装置、および駐車場制御方法によれば、機械式駐車場内に設置された車両の旋回装置を安全に動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態による機械式駐車場システムの構成を示す全体図である。
【
図2】一実施形態による機械式駐車場システムに用いる駐車場制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〈一実施形態による機械式駐車場システムの構成〉
本発明の一実施形態による機械式駐車場システムの構成について、
図1を参照して説明する。本実施形態による機械式駐車場システム1は、エレベータパーキング等の機械式駐車場2内の入出庫扉3付近に設置された旋回装置4と、車両を積載して機械式駐車場2内で搬送する搬器であるパレット5と、パレット5の外縁に設置された複数の異物検知センサ6-1~6-6と、旋回装置4、パレット5の動作を駆動する駆動機構(図示せず)、および異物検知センサ6-1~6-6に通信接続された駐車場制御装置7とを備える。
【0013】
旋回装置4は、パレット5を載せた状態で、その重心Pを支点として所定方向(例えば時計回り)に旋回させる駆動部41を有する。
図1内において、パレット5が旋回装置4の旋回動作により移動するパレット移動エリアAを、一点鎖線で示す。
【0014】
旋回装置4でパレット5を旋回させることにより、機械式駐車場2内でスムーズに車両の入庫動作が実行できるようにパレット5の向きを変更することができる。また、機械式駐車場2から出庫させる車両の向きを、車両の発車方向に自動で合わせて、利用者の利便性が高めることができる。
【0015】
異物検知センサ6-1~6-6はカメラ装置または光センサ等で構成され、それぞれ所定の監視エリアB1~B6内にある異物を検知する。異物検知センサ6-1~6-6は、その監視エリアB1~B6を足し合わせたエリアが、パレット移動エリアAを含むように、設置されている。
【0016】
駐車場制御装置7は、監視エリア記憶部71と、操作情報取得部72と、動作制御部73と、センサ情報取得部74と、移動エリア内異物判定部75と、動作指令生成部76とを有する。
【0017】
監視エリア記憶部71は、パレット移動エリアAおよび、異物検知センサ6-1~6-6の監視エリアB1~B6の位置情報を記憶する。操作情報取得部72は、機械式駐車場2の利用者により機械式駐車場2の操作盤(図示せず)で行われた入庫指示操作および出庫指示操作の情報を取得する。
【0018】
動作制御部73は、操作情報取得部72で取得された操作情報、および後述する動作指令生成部76で生成される指令に基づいて、駆動部41およびパレット5の駆動機構を含む、機械式駐車場2内の各機器の動作を制御する。センサ情報取得部74は、異物検知センサ6-1~6-6による異物の検知情報を取得する。
【0019】
移動エリア内異物判定部75は、監視エリア記憶部71に記憶された各エリアの位置情報、操作情報取得部72で取得された操作情報、およびセンサ情報取得部74で取得された情報に基づいて、パレット移動エリアA内に異物があるか否かを判定する。
【0020】
動作指令生成部76は、旋回装置4によるパレット5の旋回動作中に移動エリア内異物判定部75でパレット移動エリアA内に異物があると判定されると、当該異物にパレット5またはパレット5上の車両が接触するまでの推定時間を算出する。そして、算出した推定時間が、予め設定された第1閾値以下であり且つ、第1閾値よりも短い第2閾値を超える場合には旋回速度の減速指令を生成し、第2閾値以下である場合には旋回動作の停止指令を生成する。
【0021】
〈一実施形態による機械式駐車場システムの動作〉
次に、本実施形態による機械式駐車場システムの動作について、
図2のフローチャートを参照して説明する。機械式駐車場2を利用する車両Xが入出庫扉3から入場して旋回装置4上にあるパレット5に停止し(S1の「YES」)、利用者により操作盤で行われた入庫指示操作の情報が操作情報取得部72で取得されると(S2の「YES」)、駐車場制御装置7の動作制御部73の制御により、異物検知センサ6-1~6-6での異物検知処理が開始される(S2)。
【0022】
異物検知センサ6-1~6-6による検知情報は駐車場制御装置7に送信され、センサ情報取得部74で取得される。そして、移動エリア内異物判定部75において、パレット移動エリアA内に異物がないと判定されれば(S4の「NO」)、動作制御部73により旋回装置4の駆動部41が駆動され、所定速度で所定方向にパレット5の旋回動作が開始される(S5)。
【0023】
パレットの旋回動作中に(S6の「NO」)、異物検知センサ6-1~6-6のいずれかにより異物が検知されると、当該異物の位置情報を含む検知情報が駐車場制御装置7に送信され、センサ情報取得部74で取得される。そして、センサ情報取得部74で取得された当該異物の位置情報と、監視エリア記憶部71に記憶されたパレット移動エリアAの位置情報とに基づいて、移動エリア内異物判定部75において、当該異物がパレット移動エリアA内にあるか否かが判定される(S7)。
【0024】
この処理により、例えば、パレット5の旋回動作中に車両Xからパレット移動エリアA内に降りた利用者や落下した荷物等が、異物として検知される。
【0025】
移動エリア内異物判定部75において、当該異物がパレット移動エリアA内にあると判定されると(S7の「YES」)、動作指令生成部76により、当該異物の位置情報と、動作制御部73によるパレット5の旋回動作状況(パレット5の移動角度および移動速度)とに基づいて、当該異物にパレット5が接触するまでの推定時間が算出される。
【0026】
ここで、算出された推定時間が、予め設定された第1閾値以下であり且つ、第1閾値よりも短い第2閾値を超える場合には(S8の「YES」→S9の「NO」)、動作指令生成部76により、旋回速度の減速指令が生成される。生成された減速指令は動作制御部73に送出され、駆動部41による旋回動作の速度が減速される(S10)。
【0027】
また、算出された推定時間が、第2閾値以下である場合には(S8の「YES」→S9の「YES」)、動作指令生成部76により、旋回動作の停止指令が生成される。生成された停止指令は動作制御部73に送出され、駆動部41による旋回動作が停止される(S11)。
【0028】
上述した処理において、パレット5の旋回動作中に、パレット移動エリアA内に異物が検知されずに旋回動作が終了したとき(S7の「NO」→S6の「YES」)、パレット移動エリアA内に異物が検知されたが、接触までの時間が第1閾値以下になる前に旋回動作が終了したとき(S7の「YES」→S8の「NO」→S6の「YES」)、または、パレット移動エリアA内に異物が検知され、接触までの時間が第1閾値以下になり旋回速度を減速したが、第2閾値以下になる前に旋回動作が終了したとき(S7の「YES」→S8の「YES」→S9の「NO」→S10→S6の「YES」)には、処理が終了される。旋回動作が終了すると、車両Xを積載したパレット5が駐車対象の駐車スペースに搬送される。
【0029】
また、利用者により操作盤で行われた出庫指示操作の情報が操作情報取得部72で取得され、出庫対象の車両Xを積載したパレット5が旋回装置4上に停止したときにも、上述したステップS3~S11の処理が実行される。
【0030】
以上の実施形態によれば、機械式駐車場の旋回装置を動作させる際に、旋回するパレットの移動エリア内にある異物を精度良く検知し、検知した異物にパレットが接触するまでの時間が予め設定された第1閾値以下であり且つ、第1閾値よりも短い第2閾値を超える場合には、旋回速度を減速し、第2閾値以下である場合には旋回動作を停止するように段階的に動作状態を変えることで、安全に動作させることができるとともに、異物の誤検出による停止を防止することができる。
【0031】
上述した実施形態において、異物検知センサ6-1~6-6のいずれかでパレット移動エリアA内の異物が検知され、算出された推定時間が予め設定された第1閾値以下であり且つ、第1閾値よりも短い第2閾値を超える場合には、動作制御部73が、算出された推定時間が短い程、旋回装置4の旋回速度が遅くなるように減速させてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 機械式駐車場システム
2 機械式駐車場
3 入出庫扉
4 旋回装置
5 パレット
6-1~6-6 異物検知センサ
7 駐車場制御装置
41 駆動部
71 監視エリア記憶部
72 操作情報取得部
73 動作制御部
74 センサ情報取得部
75 移動エリア内異物判定部
76 動作指令生成部