(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】継手管、弁付き継手管
(51)【国際特許分類】
E03F 7/04 20060101AFI20240104BHJP
E03C 1/12 20060101ALI20240104BHJP
F16L 55/00 20060101ALI20240104BHJP
F16K 27/00 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
E03F7/04
E03C1/12 E
F16L55/00 N
F16K27/00 C
(21)【出願番号】P 2020000715
(22)【出願日】2020-01-07
【審査請求日】2022-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2019078371
(32)【優先日】2019-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000201582
【氏名又は名称】前澤化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【氏名又は名称】山崎 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【氏名又は名称】細川 文広
(72)【発明者】
【氏名】岩原 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】大島 ゆかり
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-228319(JP,A)
【文献】実開昭51-131049(JP,U)
【文献】特開2000-303531(JP,A)
【文献】特開2011-220012(JP,A)
【文献】特開2008-261222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 1/00-11/00
E03C 1/12- 1/33
F16L 51/00-55/48
F16K 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形を成す第1の排水管と第2の排水管とを接続する管状の継手管であって、
前記第1の排水管の外周面と係合する第1係合部と、前記第2の排水管の内周面と係合する第2係合部と、を有し、
前記第1の排水管は一端側から差し込まれることにより前記第1係合部と係合可能であり、
前記第2の排水管は他端側から差し込まれることにより前記第2係合部と係合可能であり、
前記他端側の内径は、前記第1の排水管の内径と同じかそれよりも大きく、かつ、前記第2係合部の外径よりも小さく、
管路を開閉させる弁体を着脱可能
かつ回動可能に支持する弁取付部を前記他端側に有
し、
前記第1の排水管は前記第2の排水管よりも排水の流出方向の上流側に配され、前記第1係合部よりも前記他端側の内径は、前記第2の排水管の内径よりも小さいことを特徴とする継手管。
【請求項2】
前記第1係合部よりも他端側の内周面は、前記第1の排水管の内周面と少なくとも底部同士が互いに連続した面を構成することが可能であることを特徴とする請求項1に記載の継手管。
【請求項3】
前記第2の排水管は、二手に分岐する分岐排水管であり、前記第2係合部は、前記分岐排水管の分岐部分において、分岐先のいずれか一方に接続されることを特徴とする請求項1に記載の継手管。
【請求項4】
前記弁取付部は、前記他端側の外周面の外側に形成された、前記外周面に沿って湾曲したスリット状の差し込み溝を有することを特徴とする請求項1に記載の継手管。
【請求項5】
請求項1に記載された継手管と、前記弁取付部に取り付けられた弁体と、を有することを特徴とする弁付き継手管。
【請求項6】
前記弁体の前記弁取付部と係合する挿入片には三角形のガイド片が形成され、また、前記弁取付部には前記ガイド片を受け入れる三角形のガイド溝が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の弁付き継手管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水管どうしを接続する継手管、および弁付き継手管に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化などに起因する異常気象によって、短時間に多量の降水が生じる、いわゆるゲリラ豪雨が発生しやすくなっている。こうしたゲリラ豪雨などが生じると、多量の雨水が排水管に流入し、排水可能な水量を上回った排水が逆流することがある。排水管内を排水が逆流すると、例えば、一般家屋など建築物のトイレや浴室から排水を行うことが困難になる懸念がある。
【0003】
こうした排水管内を逆流した排水が、建築物の排水設備まで達することを防ぐために、建築物の排水管の通水部に逆流防止弁が設けられる。例えば、特許文献1には、管路にゴム弾性を有するバルブを設けた逆流防止装置が開示されている。
また、特許文献2には、弁体の取り付けが可能な専用の排水マスである逆流防止弁付き桝が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-199943号公報
【文献】特開2010-126888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された逆流防止装置は、排水が流れる筒状の本体の内周面に、弁体の縁部を受け止める段差(有害段差)が形成されているため、この段差部分に排水に含まれる固形分等の汚物が堆積し、排水の流通を妨げる原因になる可能性があった。更に、堆積した汚物の固着により、弁が駆動しなくなる恐れがあった。また、堆積し固着した汚物により、逆流時において弁が閉まりきらない恐れもあった。
また、この逆流防止装置は、弁体が筒状の本体に固着されているので、弁体を取り外しにくいため、弁体のメンテナンスが困難であるという課題もあった。
【0006】
一方、特許文献2に開示された逆流防止弁付き桝は、弁が容易に着脱可能な構成ではないので、通常使用時の水理性能に応じて最適な弁を選択して取り付け、交換を行うことができず、弁の損傷等による交換も困難であった。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、排水中の固形分の堆積を防止し、かつ、弁体のメンテナンスを容易にする継手管、弁付き継手管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
即ち、本発明の継手管は、円筒形を成す第1の排水管と第2の排水管とを接続する管状の継手管であって、前記第1の排水管の外周面と係合する第1係合部と、前記第2の排水管の内周面と係合する第2係合部と、を有し、前記第1の排水管は一端側から差し込まれることにより前記第1係合部と係合可能であり、前記第2の排水管は他端側から差し込まれることにより前記第2係合部と係合可能であり、前記他端側の内径は、前記第1の排水管の内径と同じかそれよりも大きく、かつ、前記第2係合部の外径よりも小さく、管路を開閉させる弁体を着脱可能かつ回動可能に支持する弁取付部を前記他端側に有し、前記第1の排水管は前記第2の排水管よりも排水の流出方向の上流側に配され、前記第1係合部よりも他端側の内径は、前記第2の排水管の内径よりも小さいことを特徴とする。
【0009】
また、本発明では、前記第1係合部よりも他端側の内周面は、前記第1の排水管の内周面と少なくとも底部同士が互いに連続した面を構成することが可能であってもよい。
【0010】
また、本発明では、前記第1係合部よりも他端側の内周面と前記第1の排水管の内周面とは、全周に渡って互いに連続した面を構成していてもよい。
【0011】
また、本発明では、前記第1の排水管は前記第2の排水管よりも排水の流出方向の上流側に配され、前記第1係合部よりも他端側の内径は、前記第2の排水管の内径より小さくてもよい。
【0012】
また、本発明では、前記開口端部は、直径方向に対して傾斜して形成されていてもよい。
【0013】
また、本発明では、前記第2係合部には前記第2の排水管の内周面と接するパッキンが形成されていてもよい。
【0014】
また、本発明では、前記第2の排水管は、二手に分岐する分岐排水管であり、前記第2係合部は、前記分岐排水管の分岐部分において、分岐先のいずれか一方に接続されていてもよい。
【0015】
本発明の弁付き継手管は、前記各項に記載された継手管と、前記弁取付部に取り付けられた弁体と、を有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明では、前記弁体は、前記弁取付部に前記弁体を取り付ける際に保持する把手が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、排水中の固形分の堆積を防止し、かつ、弁体のメンテナンスを容易にする継手管、弁付き継手管を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態である弁付き継手管を示す外観斜視図である。
【
図2】
図1に示す弁付き継手管の長手方向に沿った断面を示す断面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態である弁付き継手管を示す断面図である。
【
図4】本発明の第3実施形態である弁付き継手管を示す断面図である。
【
図5】本発明の第4実施形態である弁付き継手管を示す断面図である。
【
図6】本発明の第5実施形態である弁付き継手管を示す断面図である。
【
図7】第5実施形態である弁付き継手管を上から見た時の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態の継手管、弁付き継手管について説明する。なお、以下に示す各実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態である弁付き継手管(弁体を離脱)を示す外観斜視図である。また、
図2は、
図1に示す弁付き継手管の長手方向に沿った断面を示す断面図である。
なお、以下の説明では、上流側となる円筒形の第1の排水管31と、下流側となる円筒形の第2の排水管32との間に、本実施形態の弁付き継手管10を設けた例を挙げて説明する。
【0021】
本実施形態の弁付き継手管10は、継手管11と、この継手管11に着脱自在にされる弁体21とを有する。
継手管11は、外形が略円筒形を成し、一端11a側と他端11b側とを貫通する断面略円形の貫通穴12が形成されている。この貫通穴12には、第1の排水管31の外周面31uに接するように、貫通穴12の一端11a側を成す開口端部12aから、第1の排水管31が差し込まれる第1係合部13が形成されている。
【0022】
第1係合部13は、貫通穴12の一部を第1の排水管31の肉厚t1分だけ拡径した内径φ1となる部分である。即ち、貫通穴12は、他端11b側を成す開口端部12bの内径をφ2とすると、一端11a側を成す開口端部12aの内径φ1は、φ2+(t1×2)と同じか、これよりも僅かに大きい。
【0023】
以下の説明では、貫通穴12のうち、第1係合部13の奥側の端部(段差部分)よりも開口端部12b側の領域を他端領域Eと称する。
【0024】
こうした構成により、貫通穴12の他端領域Eの内径(即ち、開口端部12bの内径)φ2は、第1の排水管31の内径φ3と同一になる。よって、第1の排水管31の内周面31nと、貫通穴12の他端領域Eの内周面Enとは、互いに連続した段差(有害段差)のない同一周面を構成する。
【0025】
なお、本実施形態のように貫通穴12の第1係合部13よりも他端側(他端領域E)の内周面Enと第1の排水管31の内周面31nとは、全周に渡って互いに連続した面を構成している以外にも、例えば、貫通穴12の第1係合部13よりも他端側(他端領域E)の内周面Enと第1の排水管31の内周面31nとは、底部において連続した面を構成し、それ以外の部分は内径の差による段差が存在する構成であってもよい。
【0026】
継手管11には、外周面11uと第2の排水管32の内周面32nとが接するように、他端11b側から第2の排水管32が差し込まれる第2係合部14が形成されている。この第2係合部14における継手管11の外径φ4は、第2の排水管32の内径φ5と同じか、それよりも僅かに小さい。そして、貫通穴12の他端領域Eの内径φ2は、第2の排水管32の内径φ5よりも小さい。
【0027】
よって、貫通穴12の他端領域Eから第2の排水管32に向かうと、開口端部12bで内径が広がる方向に段差が生じる。こうした第2係合部14は、中心軸C方向において、第1係合部13と形成領域が重なっている。
【0028】
また、継手管11の第2係合部14における外周面11uには、パッキン25が形成されている。このパッキン25は、例えば、耐水性の合成ゴムなどから形成された、リング状の弾性体である。継手管11の外周面11uには、パッキン25を保持する溝を形成することが好ましい。
【0029】
こうしたパッキン25は、例えば、第2係合部14において、継手管11の外周面11uと、第2の排水管32の内周面32nとの隙間から、継手管11および第2の排水管32を流れる排水やその臭気が漏洩することを防止する。
【0030】
また、継手管11の第2係合部14の一端11a寄りの端部には、第2の排水管32の端縁部分を巻き込むように折り返されたリブ24を形成することもできる。こうしたリブ24によって、例えば、目視において弁体の天地(上下)が把握できる。加えて、リブ24が引っ掛かるため、継手管11の第2係合部14と第2の排水管32とで傾きなく係合させることができる。
【0031】
継手管11の他端11b側には、弁体21を着脱自在に支持する弁取付部22が形成されている。この弁取付部22は、例えば、継手管11の他端11bから互いに離間して突出した2枚の突出板22a,22aにそれぞれ開口22b,22bを形成したものからなる。
【0032】
弁体21は、継手管11の他端11b側の開口端部12bを開閉させるものであり、貫通穴12を閉塞可能な略円板状を成す部材である。この弁体21には、互いに離間して外方に突出する2枚の突出板21a,21aと、この突出板21a,21aの先端部分にそれぞれ形成された円筒形の係合ピン21b,21bとが形成されている。
【0033】
こうした弁体21は、2つの突出板21a,21aどうしを互いに接近させるように湾曲させて、係合ピン21b,21bを継手管11の突出板22a,22aに形成された開口22b,22bに嵌め込むことにより、継手管11の開口端部12bに対して開閉自在に係合される。
【0034】
なお、弁体21と弁取付部22との係合形態は上述した形状に限られるものではない。例えば、弁取付部を矩形や円形状の凹みとしても良い。この場合、弁体の係合ピンを断面視コの字状とすることで、弁体の係合ピンを弁取付部に引っ掛けるようにして、弁体を設置することもできる。このような構成では、弁体をより容易に取り付けることができる。
【0035】
以上のような、本発明の第1実施形態の継手管11を備えた弁付き継手管10によれば、弁体21が取り付け可能な継手管11において、貫通穴12の第1係合部13よりも他端11b側である他端領域Eの内径φ2と第1の排水管31の内径φ3とを互いに同一にして、第1の排水管31の内周面31nと、貫通穴12の他端領域Eの内周面Enとが、互いに連続した段差(有害段差)のない同一周面を構成するようにした。
【0036】
これにより、上流側である第1の排水管31から継手管11に流入した排水は、開口端部12bに向けて抵抗なく滑らかに流れ、排水に含まれる固形分が、段差等の存在によって堆積することがない。よって、長期間に渡って、継手管11内の堆積物を除去する必要がなく、排水管のメンテナンスコストを低減することができる。
【0037】
また、本発明の第1実施形態の継手管11を備えた弁付き継手管10によれば、弁体21は、継手管11に対して容易に着脱することができるので、弁体21を取り外してクリーニングを行ったり、弁体21を交換することが容易であり、弁体のメンテナンスに係る手間とコストを低減することができる。
【0038】
また、弁体21を継手管11に対して容易に着脱することができるので、継手管11の設置時点では弁体21を設けずに、その後、必要に応じて弁体21を追加して設けることも容易であり、排水管の設置に係る初期コストを低減することもできる。
【0039】
また、弁体21の直径を第1の排水管31の内径φ3とほぼ同一の小径にすることにより、開放時であっても第2の排水管32に接続される本管(図示略)まで弁体21がはみ出ることがない。特に、弁体21を回動自在に支持するヒンジ位置である弁取付部22が、第2の排水管32の内周面32nよりも中心側、即ち上下方向に沿って低い位置にできるので、弁体21のストロークを小さくすることができる。更に、弁体21を第1の排水管31の長手方向に対して90°以下の角度に倒して取り付けることにより、一方の流路から逆止弁設置側の流路への排水の侵入を防止できることから、弁体21を排水の整流板として用いることもできる。
【0040】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態である弁付き継手管を示す断面図である。なお、本実施形態では、第1実施形態と同一の構成には同一の番号を付し、重複する説明を省略する。
本実施形態の弁付き継手管40は、継手管41と、この継手管41に着脱自在にされる弁体21とを有する。
継手管41は、他端41b側を成す貫通穴42の開口端部42aが、鉛直方向に対して傾斜するように形成されている。具体的には、貫通穴42の開口端部42aの鉛直方向上側よりも下側のほうが、一端41a側との間の長さが短くなるように形成されている。
【0041】
こうした構成によって、弁取付部22に対して回動自在に取り付けられた弁体21は、通常時は鉛直方向に向けて垂直に吊り下がる形態になるので、開口端部42aの鉛直方向下側においては、弁体21との間で常に一定の隙間Gが形成される。こうした隙間Gによって、上流側である第1の排水管31から少量の排水が流れる際には、弁体21に排水が殆ど触れずにこの隙間Gから第2の排水管32に向けて排水が流出する。これにより、弁体21に排水中の固形分等が堆積することを抑制し、弁体21のメンテナンスを容易にすることができる。
【0042】
また、開口端部42aと弁体21との間で隙間Gを形成することで、通常の使用時において、弁体21を境に一方の側である第1の排水管31と他方の側である第2の排水管32との間で内圧差が生じることを防止できる。
【0043】
なお、開口端部42aの傾斜を本実施形態とは逆に、貫通穴42の開口端部42aの鉛直方向上側よりも下側のほうが、一端41a側との間の長さが長くなるように形成することもできる。この場合、開口端部42aは常時、弁体21によって確実に閉塞されるので、下流側である第2の排水管32から上流側である第2の排水管32に向けて臭気等が逆流することを防止できる。
【0044】
(第3実施形態)
図4は、本発明の第3実施形態である弁付き継手管を示す断面図である。なお、本実施形態では、第1実施形態と同一の構成には同一の番号を付し、重複する説明を省略する。
本実施形態では、継手管11の下流側となる第2の排水管として、一端側が2つに分岐した第2の排水管35を接続している。この第2の排水管35は、互いに一線L1上に配された第1開口35Aと第2開口35B、及びこの一線L1に対して直角な方向L2上に配された第3開口35Cとを有する。
【0045】
そして、継手管11は、第2の排水管35の第2開口35Bに接続されている。このような実施形態では、第3開口35Cから継手管11に容易にアプローチすることができるので、例えば、継手管11に後から弁体21を追加して取り付けたり、あるいは、弁体21を取り外して洗浄するなどのメンテナンスを容易に行うことができる。
【0046】
(第4実施形態)
図5は、本発明の第4実施形態である弁付き継手管を示す断面図である。なお、本実施形態では、第1実施形態と同一の構成には同一の番号を付し、重複する説明を省略する。
本実施形態では、継手管11の下流側となる第2の排水管として、一端側が2つに分岐した第2の排水管35を接続している。この第2の排水管35は、互いに一線L3上に配された第1開口35Aと第2開口35B、及びこの一線L3に対して直角な方向L4上に配された第3開口35Cとを有する。
【0047】
また、継手管11は、第2の排水管35の第2開口35Bに接続されている。この継手管11を構成する第1の排水管31の内径φ3は、第2の排水管35の第2開口35B側の内径φ5とほぼ同一にされ、同径の接続形態となっている。
【0048】
このような実施形態でも、第3開口35Cから継手管11に容易にアプローチすることができるので、例えば、継手管11に後から弁体21を追加して取り付けたり、あるいは、弁体21を取り外して洗浄するなどのメンテナンスを容易に行うことができる。また、下流側に向かって内径が狭まるような段差(有害段差)が生じないので、継手管11と第2の排水管35との間に、排水中の固形分等が堆積することを抑制し、メンテナンスを容易にすることができる。
【0049】
また、第1の排水管31と第2の排水管35との間に継手管11だけを設けておき、必要に応じて後付けで弁体21を設置するようにすれば、初期コストを抑えて、弁体が取り付け可能な排水管を構成することができる。
【0050】
(第5実施形態)
図6は、本発明の第5実施形態である弁付き継手管を示す断面図である。また、
図7は、第5実施形態である弁付き継手管を上から見た時の斜視図である。
本実施形態の弁付き継手管60を構成する継手管61の下流側を成す他端61bには、一端側が2つに分岐した第2の排水管71を接続している。
【0051】
本実施形態の弁付き継手管60は、継手管61の他端61b側に、弁体51を着脱自在に支持する弁取付部62が形成されている。この弁取付部62は、例えば、継手管61の他端61b側の外周面61uの外側に一体に形成された、外周面61uに沿った湾曲したスリット状の差し込み溝を有する。
【0052】
一方、本実施形態の弁体51は、継手管61の他端61b側の開口端部を開閉可能に閉塞する弁本体52と、この弁本体52を回動自在に支持する弁体基部53とを有する。弁体基部53は、継手管61の他端61b側に形成された弁取付部62のスリット状の差し込み溝に挿入可能な、湾曲した板状の挿入片からなる係合部54と、取付状態で上方に突出するように形成された中空筒状の把手55とが、それぞれ一体に形成されている。これら弁取付部62および係合部54には、互いに係合した状態で固定される係合爪とこの係合爪が入り込む孔部が形成されていることが好ましい。
【0053】
図6に示すように、係合部54を構成する湾曲した板状の挿入片の上面には、三角形のガイド片54aが一体に形成されている。また、係合部54が挿入される継手管61の弁取付部62には、この三角形のガイド片54aを受け入れ可能な三角形のガイド溝62aが形成されている。
【0054】
中空筒状に形成された把手55には、一般的なパイプPを差し込むことができる。また、この把手55の上端部には、開口55aが形成されている。こうした開口55aには、例えば、鎖や紐などを係着することができる。
【0055】
このような構成の第5実施形態の弁付き継手管60によれば、既に継手管61だけが設けられている状態から、新たに弁体51を継手管61の他端61b側に取り付ける際の作業を容易にできる。即ち、作業者は、弁体基部53の把手55を把持して、第2の排水管71のうち垂直に延びる分岐管の第3開口71C側から、弁体51を第2の排水管71内に導入し、継手管61の弁取付部62に弁体51の係合部54を容易に差し込んで取り付けることができる。
【0056】
こうした弁体51の取付時に、共に三角形のガイド片54aとガイド溝62aによって弁体51が継手管61に対して正しい取付位置に誘導され、内部が暗くて狭い排水管内であっても、弁体51の位置合わせなど手間のかかる作業をせずに、容易に正しい位置に取り付けることができる。また、取り付け後に三角形のガイド片54aとガイド溝62aとの間の隙間の有無を目視で確認することにより、弁体51の係合部54が弁取付部62の奥まで正しく差し込まれているかを確認することができる。
【0057】
また、弁取付部62および係合部54に、係合爪とこの係合爪が入り込む孔部を形成しておけば、これらが互いに係合した際の音によって、弁体51の係合部54が弁取付部62の奥まで正しく差し込まれたことが目視で確認しなくても把握することができる。
【0058】
また、弁体51の把手55が中空筒状に形成されているので、弁体51の把手55に一般的な中空のパイプPを差し込むことにより、把手55の長さを容易に長くすることができる。これにより、例えば、第2の排水管71や継手管61が地表から深い位置に埋設されている場合であっても、把手55の長さを延長したパイプPを把持して、継手管61の弁取付部62に弁体51の係合部54を容易に差し込んで取り付けることができる。
【0059】
更に、把手55の上端部に形成された開口55aに鎖や紐の一端側を係着し、他端側を第2の排水管71の第3開口71C側に設けた蓋部材の内側などに係着しておくことにより、大雨等で大きな水圧によって弁体51が弁取付部62から外れてしまっても、弁体51が流出してしまうことを防止できる。
【0060】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0061】
例えば、上述した実施形態では、継手管に接続する第1の排水管および第2の排水管をともに直管にしたり、あるいは第2の排水管を2方向の分岐管にした例を示しているが、継手管に接続する排水管の形状は、上流側、下流側とも限定されるものではなく、任意の形状の排水管を接続して用いることができる。
【符号の説明】
【0062】
10…弁付き継手管
11…継手管
12…貫通穴
13…第1係合部
14…第2係合部
21…弁体
31…第1の排水管
32…第2の排水管