(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】グラインダ
(51)【国際特許分類】
B24B 23/00 20060101AFI20240104BHJP
B25F 5/02 20060101ALI20240104BHJP
B24B 47/12 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
B24B23/00 Z
B25F5/02
B24B47/12
(21)【出願番号】P 2020003071
(22)【出願日】2020-01-10
【審査請求日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2019108151
(32)【優先日】2019-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】沼田 文年
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-144539(JP,A)
【文献】特開2017-144541(JP,A)
【文献】特開昭62-074564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00 - 5/02
B24B 23/00
B24B 47/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを収容するインナハウジングと、
前記モータの前方に配置される最終出力軸と、
前記インナハウジングを内側に配置してハンドルが一体に設けられるアウタハウジングと、を含み、
前記インナハウジングと前記アウタハウジングとは、前記最終出力軸と平行な連結軸を介して相対回転可能に連結される一方、
前記インナハウジングは、前記連結軸の前方に配置した前側弾性体を介して前記アウタハウジングに保持されていることを特徴とするグラインダ。
【請求項2】
前記インナハウジングと前記連結軸とは、後側弾性体を介して結合されていることを特徴とする請求項1に記載のグラインダ。
【請求項3】
前記連結軸は、前記アウタハウジングに直接保持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のグラインダ。
【請求項4】
前記インナハウジングと前記前側弾性体との何れか一方に第1の係合部が、他方に、前後方向を軸とする回転方向で前記第1の係合部と係合する第1の被係合部がそれぞれ設けられ、
前記前側弾性体と前記アウタハウジングとの何れか一方に第2の係合部が、他方に、前記回転方向で前記第2の係合部と係合する第2の被係合部がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のグラインダ。
【請求項5】
前記インナハウジングの外面に、前記第1の係合部となる突起が設けられ、
前記前側弾性体に、前記突起が係合する前記第1の被係合部が設けられていると共に、前記第1の被係合部を含む部位が、前記前側弾性体の外面側へ突出する第2の係合部に形成されており、
前記アウタハウジングの内面に、前記第2の被係合部となる凹部が形成されていることを特徴とする請求項4に記載のグラインダ。
【請求項6】
前記連結軸は、前記アウタハウジング内で後側弾性体を介して保持されていることを特徴とする請求項1に記載のグラインダ。
【請求項7】
前記アウタハウジングに、サイドハンドルの取付部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のグラインダ。
【請求項8】
前記アウタハウジングは、左右一対の半割ハウジングを組み付けてなり、各前記半割ハウジングが、前記インナハウジングに前記前側弾性体を介して外装されるリングに固定されていることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載のグラインダ。
【請求項9】
前記インナハウジングにおける前記連結軸との連結部分は金属製であることを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載のグラインダ。
【請求項10】
前記インナハウジングにおける前記モータの収容部は筒状であることを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載のグラインダ。
【請求項11】
前記モータ以外の電材部品は前記アウタハウジング内に収容されていることを特徴とする請求項1乃至10の何れかに記載のグラインダ。
【請求項12】
前記アウタハウジングに電源となるバッテリーが設けられていることを特徴とする請求項1乃至11の何れかに記載のグラインダ。
【請求項13】
前記後側弾性体の方が、前記前側弾性体よりも硬度が低いことを特徴とする請求項
2又は6に記載のグラインダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前後方向に延びるハウジングの前部に、先端工具を下端に装着可能な最終出力軸を下向きに設けたグラインダに関する。
【背景技術】
【0002】
グラインダは、特許文献1にも開示されているように、前後方向に延びるハウジングの前部に、最終出力軸となるスピンドルを下向きに設け、スピンドルの下端に円盤状砥石等の先端工具を装着して、先端工具の回転によって研磨作業等が行えるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなグラインダにおいては、高速回転するモータのアンバランスとスピンドルに取り付けられた先端工具のアンバランスとに起因して振動が発生する場合がある。この振動がモータを収容するハウジングやハウジングに取り付けられたサイドハンドルを介して作業者の手に伝わることで、不快感を与えたり操作性に影響を与えたりするおそれがあった。
また、モータの起動時や先端工具に負荷が加わったりした際には、反力によってハウジングが先端工具の回転方向と反対方向に振られるため、これも操作性を悪くする原因となっていた。
【0005】
そこで、本発明は、振動や反力が作業者に伝わることを効果的に低減でき、使用感や操作性が良好となるグラインダを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、モータを収容するインナハウジングと、モータの前方に配置される最終出力軸と、インナハウジングを内側に配置してハンドルが一体に設けられるアウタハウジングと、を含み、インナハウジングとアウタハウジングとは、最終出力軸と平行な連結軸を介して相対回転可能に連結される一方、インナハウジングは、連結軸の前方に配置した前側弾性体を介してアウタハウジングに保持されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、インナハウジングと連結軸とは、後側弾性体を介して結合されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2の構成において、連結軸は、アウタハウジングに直接保持されていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れかの構成において、インナハウジングと前側弾性体との何れか一方に第1の係合部が、他方に、前後方向を軸とする回転方向で第1の係合部と係合する第1の被係合部がそれぞれ設けられ、前側弾性体とアウタハウジングとの何れか一方に第2の係合部が、他方に、回転方向で第2の係合部と係合する第2の被係合部がそれぞれ設けられていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項4の構成において、インナハウジングの外面に、第1の係合部となる突起が設けられ、前側弾性体に、突起が係合する第1の被係合部が設けられていると共に、第1の被係合部を含む部位が、前側弾性体の外面側へ突出する第2の係合部に形成されており、アウタハウジングの内面に、第2の被係合部となる凹部が形成されていることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1の構成において、連結軸は、アウタハウジング内で後側弾性体を介して保持されていることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6の何れかの構成において、又は2の構成において、アウタハウジングに、サイドハンドルの取付部が設けられていることを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7の何れかの構成において、アウタハウジングは、左右一対の半割ハウジングを組み付けてなり、各半割ハウジングが、インナハウジングに前側弾性体を介して外装されるリングに固定されていることを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至8の何れかの構成において、インナハウジングにおける連結軸との連結部分は金属製であることを特徴とする。
請求項10に記載の発明は、請求項1乃至9の何れかの構成において、インナハウジングにおけるモータの収容部は筒状であることを特徴とする。
請求項11に記載の発明は、請求項1乃至10の何れかの構成において、モータ以外の電材部品はアウタハウジング内に収容されていることを特徴とする。
請求項12に記載の発明は、請求項1乃至11の何れかの構成において、アウタハウジングに電源となるバッテリーが設けられていることを特徴とする。
請求項13に記載の発明は、請求項2又は6の構成において、後側弾性体の方が、前側弾性体よりも硬度が低いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、インナハウジングとアウタハウジングとを最終出力軸と平行な連結軸を介して相対回転可能に連結すると共に、インナハウジングを、連結軸の前方に配置した前側弾性体を介してアウタハウジングに保持させているので、振動や反力が作業者に伝わることを効果的に低減でき、使用感や操作性が良好となる。
請求項2に記載の発明によれば、上記効果に加えて、インナハウジングと連結軸とが後側弾性体を介して結合されるので、連結軸は傾くことなくアウタハウジングにより適正な位置で支持される。このため、インナハウジングにも傾き等が生じなくなり、最終出力軸が適正な位置で支持される。
請求項3に記載の発明によれば、上記効果に加えて、連結軸は、アウタハウジングに直接保持されているので、アウタハウジングへの連結軸の組み付けと同時に連結軸が適正な位置で支持される。
請求項4に記載の発明によれば、上記効果に加えて、インナハウジングと前側弾性体との何れか一方に第1の係合部が、他方に第1の被係合部がそれぞれ設けられ、前側弾性体とアウタハウジングとの何れか一方に第2の係合部が、他方に第2の被係合部がそれぞれ設けられているので、前側弾性体の回転方向でアウタハウジングとインナハウジングとの相対的ながたつきが規制されて信頼性の高い位置決めが可能となる。
請求項5に記載の発明によれば、上記効果に加えて、インナハウジングの外面に、第1の係合部となる突起が設けられ、前側弾性体に、突起が係合する第1の被係合部が設けられていると共に、第1の被係合部を含む部位が、前側弾性体の外面側へ突出する第2の係合部に形成されており、アウタハウジングの内面に、第2の被係合部となる凹部が形成されている。よって、前側弾性体を介したアウタハウジングとインナハウジングとの回転方向の位置決めが効果的に行える。
請求項6に記載の発明によれば、上記効果に加えて、連結軸を、アウタハウジング内で後側弾性体を介して保持させているので、連結軸からアウタハウジングへ伝わる振動も効果的に低減可能となる。
請求項7に記載の発明によれば、上記効果に加えて、アウタハウジングにサイドハンドルの取付部が設けられているので、サイドハンドルに対しても振動や反力の伝達が効果的に防止可能となる。
請求項8に記載の発明によれば、上記効果に加えて、アウタハウジングの半割ハウジングを、インナハウジングに前側弾性体を介して外装されるリングに固定しているので、半割ハウジング同士がリングを介して強固に連結可能となる。
請求項9に記載の発明によれば、上記効果に加えて、インナハウジングにおける連結軸との連結部分を金属製としているので、連結部分の強度が確保できる。
請求項10に記載の発明によれば、上記効果に加えて、インナハウジングにおけるモータの収容部を筒状としているので、前側弾性体による振動絶縁が全周に亘って効果的に行える。
請求項11に記載の発明によれば、上記効果に加えて、モータ以外の電材部品をアウタハウジング内に収容しているので、電材部品を振動源であるモータや先端工具から離れた位置で且つ振動が絶縁された状態で配置でき、振動からの電材部品の保護に繋がる。
請求項12に記載の発明によれば、上記効果に加えて、アウタハウジングに電源となるバッテリーが設けられているので、アウタハウジングの質量が増加し、振動低減に効果的となる。
請求項13に記載の発明によれば、上記効果に加えて、後側弾性体の方が前側弾性体よりも硬度が低くなっているので、反力の伝達防止に効果的となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図6】(A)は
図4のB-B線拡大断面図、(B)はC-C線拡大断面図である。
【
図7】(A)は
図4のD-D線拡大断面図、(B)はE-E線拡大断面図である。
【
図8】(A)は
図4のF-F線拡大断面図、(B)は
図5のG-G線拡大断面図である。
【
図9】インナハウジング及びブラシレスモータの保持構造を示す分解斜視図である。
【
図11】インナハウジングの弾性保持構造の変更例を示すグラインダの一部中央拡大縦断面図である。
【
図13】インナハウジングの弾性保持構造の変更例を示す分解斜視図である。
【
図15】(A)は
図11のJ-J線断面図、(B)はK-K線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、動力工具の一例でもある充電式のグラインダの斜視図で、
図2はその平面図、
図3はその左側面図、
図4はその中央縦断面図である。
グラインダ1は、ハウジングとして、前後方向に延びる筒状のアウタハウジング2と、アウタハウジング2内でブラシレスモータ4を保持して前方に突出する筒状のインナハウジング3と、インナハウジング3の前側に連結されてスピンドル6を下向きに突出させるギヤハウジング5とを備えている。
アウタハウジング2は、インナハウジング3を保持する大径の前筒部7と、その後方で上方へ偏心した位置に形成される小径の後筒部8と、後筒部8の後端に形成されるバッテリー装着部9とを一体形成した樹脂製で、左右一対の半割ハウジング2a,2bをネジによって組み付けて形成される。但し、前筒部7の前端は、前方へ向けてさらに拡開した大径部10となっている。バッテリー装着部9には、電源となるバッテリーパック11が上方からスライド装着可能となっている。
【0010】
アウタハウジング2の後筒部8には、ON動作によって後述する端子台24から制御回路基板21まで導通させる機械的接点で、下向きにプランジャ13を突出させたメインスイッチ12が配置されている。また、メインスイッチ12の前側で後筒部8には、ON動作によって制御回路基板21からブラシレスモータ4まで導通させる電気的接点で、下向きにボタン部15を突出させたマイクロスイッチ14が配置されている。アウタハウジング2の下側には、前端が支点となって前筒部7から後筒部8の下面形状に合わせて折曲しながら後方に延びるスイッチレバー16が、上下方向へ揺動可能に設けられて、スイッチレバー16の後部と後筒部8の下面との間に設けられたコイルバネ17により、常態では下方への突出位置に付勢されている。
【0011】
スイッチレバー16には、上方への押し込み操作によってメインスイッチ12のプランジャ13を押し込む押圧板18が設けられると共に、押圧板18の前方には、常態では
図4の縦向き姿勢に回転付勢されてスイッチレバー16の押し込みを規制し、同図で左回転させることでスイッチレバー16の押し込みを許容するロックオフレバー19が設けられている。ここでは後筒部8がメインハンドルとして使用され、後筒部8を把持した手指でロックオフレバー19を左回転させてからスイッチレバー16を握り込むと、スイッチレバー16の押圧板18がメインスイッチ12のプランジャ13を押し込み、その後ロックオフレバー19がマイクロスイッチ14のボタン部15を押し込むことになる。
【0012】
メインスイッチ12の後方には、ブラシレスモータ4の各コイル37に対応する6つのFET(図示略)や、コンデンサ、マイコン(図示略)等を搭載した制御回路基板21を、アルミ製で皿状のケース22に収容してなるコントローラ20が、アウタハウジング2の後筒部8の軸線に対して、下端が上端よりも前方に位置する傾斜姿勢で支持されている。コントローラ20の後方でバッテリー装着部9の左右には、スリット状の吸気口23,23・・が形成されている。吸気口23の後方には、バッテリーパック11を上方からスライド装着することで電気的に接続される端子台24が縦向き姿勢で保持されている。
このように、ブラシレスモータ4を除く電材部品は、インナハウジング3の後方でアウタハウジング2内に収容されている。
【0013】
一方、インナハウジング3は、アウタハウジング2の前筒部7よりも小径となって前筒部7内に収まる樹脂製で、
図5にも示すように、アウタハウジング2から前方へ突出する前端には、前方へ行くに従って大径となるテーパ部30と、テーパ部30の前端から前方へ延び、前筒部7の大径部10と略同じ外径を有する拡開部31とが形成されている。
ブラシレスモータ4は、円筒状のステータ32とその内側を貫通するロータ33とからなるインナロータ型で、ステータ32は、複数の積層鋼板から形成される筒状のステータコア34と、ステータコア34の軸方向前後の端面に設けられる前インシュレータ35及び後インシュレータ36と、前後インシュレータ35,36を介してステータコア34に巻回されるコイル37,37・・と、を有する。後インシュレータ36には、ロータコアに挿入された永久磁石67の位置を検出するセンサ回路基板38と、各コイル37をヒュージング端子39を介して結線する端子金具41を備えた結線部材40が取り付けられている。
【0014】
インナハウジング3の前部内面には、
図6及び
図9に示すように、軸心側へ突出する4つの凸部42,42・・が、周方向に等間隔をおいて前後方向に形成されている。この凸部42の前部は、インナハウジング3の前方へ行くに従って内面からの突出量(肉厚)が段階的に大きくなる第1突出部43と第2突出部44とを備えている。
前インシュレータ35には、上下の凸部42,42の位相に合わせて、第2突出部44まで嵌合する上下一対の嵌合凹部45,45と、左右の凸部42,42の位相に合わせて、第2突出部44まで干渉しない左右一対の面取部46,46とが形成されている。
【0015】
よって、ステータ32を、嵌合凹部45,45を上下の凸部42,42に、面取部46,46を左右の凸部42,42にそれぞれ位相を合わせてインナハウジング3の後方から挿入すると、上下の凸部42,42の第2突出部44,44と嵌合凹部45,45との嵌合によりステータ32が回り止めされると共に、ステータコア34が、各凸部42の第1突出部43に当接して前進位置が規定される。この状態で第1、第2突出部43,44を除く各凸部42の内面は、
図6(B)に示すようにステータコア34の外面に当接してステータコア34を保持する。
各凸部42の前側でインナハウジング3内には、リング状のバッフルプレート47が前方から嵌合されている。このバッフルプレート47は、
図5,6に示すように、左右に設けたフック片48,48を、前インシュレータ35の面取部46,46の外側で左右の凸部42,42の第2突出部44,44にそれぞれ係止させることで位置決めされている。
【0016】
インナハウジング3の後端には、金属製のベアリングリテーナ50が後方から嵌合されている。このベアリングリテーナ50は、前方へ開口する軸受保持部51を中心に備え、その周囲に、
図7(A)及び
図9に示すように複数の円弧状の透孔52,52・・を形成した円盤状で、軸受保持部51の後部には、後方へ突出して上下方向に貫通孔54を備えた連結部53が設けられている。
また、ベアリングリテーナ50の前面には、根元部56を大径としたピン55,55・・が、同心円上に等間隔をおいて4本突設されている。
一方、インナハウジング3の後部内面には、ベアリングリテーナ50が嵌合可能な内径を有する厚肉部58が突設されている。後インシュレータ36の外周には、
図7(B)に示すように、周方向に等間隔をおいて4つのV字状の切欠き59,59・・が形成されている。
【0017】
よって、ベアリングリテーナ50は、各ピン55を後インシュレータ36の各切欠き59に位相を合わせてインナハウジング3の後方から厚肉部58に挿入すると、
図7(B)に示すように各ピン55が各切欠き59に係合してステータコア34の後面に当接し、各根元部56を後インシュレータ36の後面に近接させる。
ベアリングリテーナ50の後端内周には、雌ネジ部60が形成されており、厚肉部58にベアリングリテーナ50が挿入された状態で、雌ネジ部60に樹脂製のロックリング61を螺合させることで、ベアリングリテーナ50は後方からロックリング61に押圧されて抜け止めされる。この状態で連結部53は、ロックリング61の中央を貫通してインナハウジング3の後方へ突出している。
【0018】
ロータ33は、軸心に位置する回転軸65と、回転軸65の周囲に配置され、複数の鋼板を積層してなる略円筒状のロータコア66と、ロータコア66の内部に固定される4つの板状の永久磁石67,67・・とを有する。
回転軸65の後端は、ベアリングリテーナ50の軸受保持部51に保持された軸受68によって軸支され、回転軸65の前端は、ギヤハウジング5とインナハウジング3の拡開部31との間に組み付けられる仕切板69に保持された軸受70に軸支されて、先端をギヤハウジング5内に突出させている。仕切板69の後方で回転軸65には遠心ファン71が取り付けられて、バッフルプレート47の前側でインナハウジング3のテーパ部30から拡開部31に跨がって収容されている。
【0019】
(インナハウジングの弾性保持構造の説明)
こうしてブラシレスモータ4を保持するインナハウジング3は、アウタハウジング2によって弾性的に保持されている。以下、この弾性保持構造について詳述する。
まず、ベアリングリテーナ50において、インナハウジング3から後方へ突出する連結部53の貫通孔54には、上下方向に金属製の連結ロッド75が貫通している。この連結ロッド75は、
図8(A)及び
図9に示すように、アウタハウジング2の半割ハウジング2a,2bにそれぞれ形成された半割部分を合わせて形成される上下一対の角筒状のロッド受け部76,76に上下両端が支持されるもので、各ロッド受け部76は、互いの合わせ面に連結ロッド75の挿入孔77を形成し、内部には、挿入孔77を貫通した連結ロッド75の端部が挿入するラバーキャップ78が保持されている。このラバーキャップ78は左右へ延びる一対の端部79,79を有し、各端部79はロッド受け部76の各半割部分に挿入して支持されている。
よって、インナハウジング3は、ベアリングリテーナ50の連結部53を貫通する連結ロッド75がロッド受け部76,76に支持されることで、連結ロッド75を中心に左右へ揺動可能に保持される。支点となる連結ロッド75は、上下両端がラバーキャップ78,78を介してロッド受け部76,76へ弾性的に保持されることになる。
【0020】
一方、インナハウジング3の外周には、テーパ部30から後方部分に掛けて筒状ラバー80が外装されて、アウタハウジング2の大径部10とインナハウジング3との間に筒状ラバー80を介在させている。筒状ラバー80の左右は、テーパ部30の後面に沿った円弧状のフランジ部80a,80aとなっている。よって、ラバーキャップ78で弾性保持される連結ロッド75を中心に左右へ揺動可能なインナハウジング3は、前部全周が筒状ラバー80を介してアウタハウジング2に弾性保持されることになる。ここではラバーキャップ78の方が筒状ラバー80よりも硬度が低くなっている。
また、テーパ部30と大径部10との間で筒状ラバー80には、大径部10と同じ外径を有する金属製の固定リング81が外装されている。固定リング81の左右両側面には、上下方向に一対の平面部82,82が形成されている。
【0021】
アウタハウジング2の前端で左右の側面には、
図2,
図5等に示すように、左右外側へ張り出してインナハウジング3及び仕切板69の外面と非接触でギヤハウジング5の外側まで前方へ延びる一対のハンドル取付部83,83が一体に形成されている。このハンドル取付部83は、サイドハンドル25(
図1,2等)の取付用で、上下及び前後方向で規定される平面に沿った板状に形成され、
図8(B)に示すように、各内面が固定リング81の平面部82,82に当接した状態で、左右外側から上下一対のネジ84,84によって固定リング81にネジ止めされている。こうしてアウタハウジング2の左右の半割ハウジング2a,2bは、互いのネジ止め連結の他、ハンドル取付部83を介して固定リング81にもネジ止め連結されることになる。
【0022】
(ハンドル検知機構の説明)
また、各ハンドル取付部83の前後上下の中央部には、
図5及び
図9に示すように、サイドハンドル25の先端に設けたネジ部26をねじ込んで固定するためのネジ孔85が左右方向に貫通形成されており、各ハンドル取付部83には、ネジ孔85にサイドハンドル25が装着されたことを検知するためのハンドル検知機構86が設けられている。
このハンドル検知機構86は、
図10にも示すように、サイドハンドル25の装着の有無に応じて位置を変化させる検知プレート87と、サイドハンドル25の装着時の検知プレート87の位置を検知して検知信号をコントローラ20へ出力するフォトインタラプタ88とを含んでなり、サイドハンドル25の検知信号を得た場合にのみコントローラ20はブラシレスモータ4の駆動を許容するようになっている。
【0023】
まず、検知プレート87は、ハンドル取付部83の外面に突設した枠部89内で上下方向に支持される支点ピン90によって前端が回転可能に取り付けられて、後端が左右方向へ揺動可能となっている。支点ピン90の後方で検知プレート87には、ネジ孔85の外側に位置する透孔91が形成されて、サイドハンドル25のネジ部26の挿入を許容している。
また、検知プレート87の後端は、ハンドル取付部83の内部側へ折曲して、ハンドル取付部83に設けたフォトインタラプタ88の収容部92内に挿入され、挿入端には遮光板93が設けられている。収容部92の入口側でハンドル取付部83には、検知プレート87の外側への揺動時に遮光板93と当接して揺動位置を規制するストッパ部94が設けられている。検知プレート87の透孔91よりも後方でハンドル取付部83には、検知プレート87をストッパ部94と当接する外側位置へ付勢するコイルバネ95が収容されている。
【0024】
フォトインタラプタ88は、収容部92内の後側で左右方向に保持される基板96の前面に受光部97を設けてなり、収容部92内に挿入する検知プレート87の遮光板93を受光部97によって非接触で検知可能となっている。ここでは検知プレート87の外側位置では、遮光板93が受光部97の外側に位置して受光部97の光を遮らないため、検知信号が出力されない非検知状態となる。一方、検知プレート87がコイルバネ95の付勢に抗して内側へ揺動し、ハンドル取付部83の外面に形成されたサイドハンドル25の受け部98に当接する内側位置では、遮光板93が受光部97の光を遮るため、検知信号が出力される検知状態となる。フォトインタラプタ88には、遮光板93が通過するスリット88bを除いて受光部97と基板96の一部とを覆う防塵カバー88aが設けられている。
【0025】
一方、ギヤハウジング5は、正面視の四隅において前方から貫通させた4本のネジ100,100を、仕切板69を介してインナハウジング3にねじ込むことで固定される。ギヤハウジング5内へ突出する回転軸65の前端には、ベベルギヤ101が固着されて、
図4に示すようにスピンドル6の上端に固着したベベルギヤ102と噛合している。ギヤハウジング5の前面には排気口103,103・・が形成され、仕切板69に設けた図示しない透孔を介してインナハウジング3内と連通している。排気口103の前方には、押し込み操作によってベベルギヤ102を介してスピンドル6の回転をロック可能なシャフトロック104が設けられている。
スピンドル6は、ギヤハウジング5と、ギヤハウジング5の下部に組み付けられたベアリングボックス105とに保持される上下の軸受106,106に軸支されて下方へ突出し、その下端に円盤状砥石等の先端工具107(
図4)が装着可能となっている。ベアリングボックス105の外周には、先端工具107の後半部を覆うホイールカバー(図示略)が装着可能となっている。
【0026】
(グラインダの動作の説明)
以上の如く構成されたグラインダ1においては、左右のハンドル取付部83,83の何れか一方にサイドハンドル25を、検知プレート87の透孔91を介してネジ部26をネジ孔85にねじ込むと、ネジ部26を保持するサイドハンドル25の先端部27が検知プレート87を内側へ押し込んでコイルバネ95の付勢に抗して受け部98に押し付ける。このサイドハンドル25の装着と共に検知プレート87は内側位置へ揺動して遮光板93がフォトインタラプタ88の受光部97の光を遮る。
そして、後筒部8を把持した指でロックオフレバー19を回転させてロックを解除した状態でスイッチレバー16を握り込むと、前述のように押圧板18がプランジャ13を押し込んでメインスイッチ12を先にON動作させる。これによりバッテリーパック11からの電源がコントローラ20の制御回路基板21に供給される。ここで制御回路基板21は、フォトインタラプタ88からの検知信号の有無を確認する。
【0027】
さらにスイッチレバー16が握り込まれると、今度はロックオフレバー19がマイクロスイッチ14のボタン部15を押圧し、マイクロスイッチ14をON動作させる。すると、フォトインタラプタ88からの検知信号とマイクロスイッチ14のON信号とを得た制御回路基板21がバッテリーパック11の電源をブラシレスモータ4に供給してブラシレスモータ4を起動させる。すなわち、制御回路基板21のマイコンが、センサ回路基板38の回転検出素子から出力されるロータ33の永久磁石67の位置を示す回転検出信号を得てロータ33の回転状態を取得し、取得した回転状態に応じて各FETのON/OFFを制御し、ステータ32の各コイル37に対し順番に電流を流すことでロータ33を回転させる。よって、回転軸65が回転してベベルギヤ101,102を介してスピンドル6を回転(上方から見て右回転)させるため、先端工具107による研磨作業等が可能となる。
【0028】
ここで、高速回転するブラシレスモータ4のロータ33と、スピンドル6に取り付けられた先端工具107とにはそれぞれアンバランスが存在するため、これが振動源となってインナハウジング3やギヤハウジング5に振動が伝わる。
しかし、インナハウジング3とアウタハウジング2との間には筒状ラバー80が介在されているため、振動が効果的に絶縁され、アウタハウジング2への振動が低減される。よって、メインハンドルである後筒部8を把持する作業者の手に振動が伝わりにくくなる。また、サイドハンドル25も、振動が絶縁されるアウタハウジング2のハンドル取付部83に装着されているため、サイドハンドル25を把持する作業者の手に振動が伝わりにくくなり、低振動化が達成できる。
【0029】
さらに、ブラシレスモータ4の起動時や、回転中の先端工具107に負荷が加わったりしたときには、連結ロッド75を中心にインナハウジング3が平面視で左回転方向(反力方向)に回転しようとする。しかし、インナハウジング3とアウタハウジング2との間には筒状ラバー80が介在されているため、インナハウジング3の回転が筒状ラバー80で緩衝され、アウタハウジング2及びこれに装着されるサイドハンドル25に反動が伝わりにくくなる。
【0030】
一方、回転軸65の回転に伴って遠心ファン71が回転すると、後方の吸気口23から外気が吸い込まれて、コントローラ20を下方から回り込んでアウタハウジング2内を前進する。これにより、コントローラ20及び端子台24が冷却される。
アウタハウジング2内の空気流は、メインスイッチ12及びマイクロスイッチ14を通過してそれぞれ冷却した後、ベアリングリテーナ50に設けた透孔52を介してインナハウジング3内に進入し、ブラシレスモータ4のステータ32とロータ33との間を通ってブラシレスモータ4を冷却する。その後、テーパ部30から拡開部31を通って仕切板69を介してギヤハウジング5に至り、排気口103から外部へ排出される。
【0031】
(インナハウジングの弾性保持構造に係る発明の効果)
このように、上記形態のグラインダ1においては、ブラシレスモータ4(モータ)を収容するインナハウジング3と、ブラシレスモータ4の前方に配置されるスピンドル6(最終出力軸)と、インナハウジング3を内側に配置して後筒部8(ハンドル)が一体に設けられるアウタハウジング2と、を含み、インナハウジング3とアウタハウジング2とは、スピンドル6と平行な連結ロッド75(連結軸)を介して相対回転可能に連結される一方、インナハウジング3は、連結ロッド75の前方に配置した筒状ラバー80(前側弾性体)を介してアウタハウジング2に保持されている。よって、振動や反力が作業者に伝わることを効果的に低減でき、使用感や操作性が良好となる。
【0032】
特にここでは、連結ロッド75は、アウタハウジング2内でラバーキャップ78(後側弾性体)を介して保持されているので、連結ロッド75からアウタハウジング2へ伝わる振動も効果的に低減可能となる。
また、アウタハウジング2に、ハンドル取付部83(サイドハンドルの取付部)が設けられているので、サイドハンドル25に対しても振動や反力の伝達が効果的に防止可能となる。
さらに、アウタハウジング2は、左右一対の半割ハウジング2a,2bを組み付けてなるものとして、各半割ハウジング2a,2bを、インナハウジング3に筒状ラバー80を介して外装される固定リング81(リング)に固定しているので、半割ハウジング2a,2b同士が固定リング81を介して強固に連結可能となる。
【0033】
一方、インナハウジング3における連結部53(連結軸との連結部分)を金属製としているので、連結部53の強度が確保できる。
また、インナハウジング3におけるブラシレスモータ4の収容部を筒状としているので、筒状ラバー80による振動絶縁が全周に亘って効果的に行える。
さらに、ブラシレスモータ4以外のメインスイッチ12、マイクロスイッチ14、コントローラ20、端子台24といった電材部品をアウタハウジング2内に収容しているので、これらの電材部品を、振動源であるブラシレスモータ4や先端工具107から離れた位置で且つ振動が絶縁された状態で配置でき、振動からの電材部品の保護に繋がる。
加えて、アウタハウジング2に電源となるバッテリーパック11(バッテリー)が設けられているので、アウタハウジング2の質量が増加し、振動低減に効果的となる。
そして、ラバーキャップ78の方が筒状ラバー80よりも硬度が低い設定となっているので、反力の伝達防止に効果的となる。
【0034】
なお、弾性保持構造に係る発明において、連結軸は、上記形態の連結ロッドのようにベアリングリテーナと別部品とせず、ベアリングリテーナの連結部へ一体に形成してもよい。また、連結軸はベアリングリテーナ等の別部品に限らず、インナハウジングに直接設けることもできる。連結軸を弾性保持する後側弾性体の省略も可能である。
また、この発明では、ハンドル取付部をアウタハウジングに設ける構成は必須ではなく、従来のようにギヤハウジングにサイドハンドルを設けるものであっても、インナハウジングの弾性保持による一定の振動低減効果は得られる。
さらに、アウタハウジングは、上記形態のように半割構造でなく、インナハウジングと同様に一体の筒状であっても差し支えない。バッテリーを利用しないACグラインダであってもよいし、ブラシレス以外のモータを使用してもよい。
【0035】
(ハンドル検知機構に係る発明の効果)
このように、上記形態のグラインダ1(動力工具)においては、ブラシレスモータ4(モータ)を収容するインナハウジング3と、ブラシレスモータ4によって駆動するスピンドル6(最終出力軸)と、インナハウジング3を内側に配置して後筒部8(ハンドル)が一体に設けられるアウタハウジング2と、を含み、インナハウジング3は、筒状ラバー80(弾性体)を介してアウタハウジング2に保持される一方、アウタハウジング2に、ハンドル取付部83(サイドハンドルの取付部)と、サイドハンドル25の取付を検知するハンドル検知機構86とが設けられている。すなわち、ハンドル検知機構86は、振動源であるブラシレスモータ4及びスピンドル6(先端工具107)とは筒状ラバー80によって振動が絶縁されたアウタハウジング2に設けられることになる。よって、振動の影響を受けることなく耐久性及び信頼性の高いハンドル検知機構86を備えたグラインダ1を得ることができる。
【0036】
特にここでは、ハンドル検知機構86は、サイドハンドル25の取付動作に連動してサイドハンドル25の取付を検知するので、ハンドル検知機構86を設けても検知に係る余計な操作が不要となる。
また、ハンドル検知機構86は、複数箇所(ここでは2箇所)に設けられているので、複数のハンドル取付部83ごとに独立してサイドハンドル25の取付が検知可能となる。
さらに、ハンドル検知機構86は、アウタハウジング2の左右に設けられているので、左右のハンドル取付部83に合わせてサイドハンドル25の取付が検知可能となる。
加えて、インナハウジング3は、スピンドル6と平行な連結ロッド75(連結軸)を介してアウタハウジング2に連結されるので、ブラシレスモータ4の起動時や先端工具107に負荷が加わった際の反力が作業者に伝わることを効果的に低減できる。
【0037】
一方、ハンドル検知機構86は非接触式であるので、粉塵等の異物による故障や誤検知が生じにくくなり、耐久性や信頼性の向上が期待できる。
また、ハンドル検知機構86は、サイドハンドル25の取付時にサイドハンドル25が当接する検知プレート87(検知部材)を前側の支点ピン90(支点)で揺動可能に有し、検知プレート87の後部に、サイドハンドル25が当接して揺動する検知プレート87を検知するフォトインタラプタ88(検知部)が設けられ、支点ピン90とフォトインタラプタ88との間に、サイドハンドル25の受け部98が設けられているので、サイドハンドル25の取付動作と共に検知プレート87を確実に揺動させてフォトインタラプタ88で検知させることができる。
さらに、フォトインタラプタ88は、防塵カバー88aで覆われているので、粉塵等の異物の侵入を効果的に防止して検知の信頼性を高めることができる。
【0038】
なお、ハンドル検知機構に係る発明において、支点ピンとフォトインタラプタとの位置関係は上記形態に限らず、前後逆にしたり、上下方向に配置したり等、動力工具の形態に合わせて適宜変更可能である。
また、検知部としてはフォトインタラプタに限らず、磁石を用いた近接センサ等の他の非接触式のセンサを用いてもよいし、マイクロスイッチや圧力スイッチ等の接触式のセンサを用いてもよい。
さらに、上記形態ではハンドル取付部ごとにそれぞれハンドル検知機構を設けているが、ハンドル検知機構の構成によって複数のハンドル取付部を1つのハンドル検知機構でそれぞれ検知させることも可能である。
そして、この発明は、グラインダに限らず、サイドハンドルの取付部を備えたものであれば、アングルドリルやサンダ等の他の動力工具にも適用可能である。よって、インナハウジングとアウタハウジングとを連結軸で連結する構造を採用する場合、最終出力軸が下向きでなければそれに合わせて連結軸の向きを平行にすればよい。
その他、バッテリーを用いないAC工具であってもよいし、ブラシレス以外のモータを使用してもよい。
【0039】
(インナハウジングの弾性保持構造の変更例の説明)
上記形態では、連結ロッド75の上下両端をラバーキャップ78,78を介してロッド受け部76,76へ弾性的に保持させている。この場合、ラバーキャップ78,78をロッド受け部76,76に押し込む際に連結ロッド75に上下方向に対する傾きが生じ、インナハウジング3が傾いたまま組み付けられてしまうおそれがある。このようにインナハウジング3が傾くと、後筒部8に対してスピンドル6も傾くため、振動や反力の低減効果が十分に得られない。そこで、このような組み付け誤差をなくすための変更例を以下に説明する。なお、上記形態と同じ構成部には同じ符号を付して重複する説明は省略し、主に上記形態と異なる構造について説明する。
まず、ステータ32の組み付け構造から説明する。
図11及び
図12に示すグラインダ1Aにおいて、ステータ32は、インナハウジング3の前方から挿入される。インナハウジング3の内面には、
図13及び
図15(A)に示すように、軸心側へ突出する4つの受け面部110,110・・が形成されている。各受け面部110は、周方向に等間隔をおいて前後方向に形成されている。各受け面部110の後部には、
図15(B)に示すように、前部よりも軸心側への突出量が大きくなる横断面三角形状の係止部111がそれぞれ形成されている。
【0040】
インナハウジング3の後部内には、軸受保持部51が、インナハウジング3の内面と連結する放射状の4つの連結板51a,51a・・によってインナハウジング3の軸心で一体に形成されている。
ここではステータ32を、4つの切欠き59をそれぞれ4つの係止部111に位相を合わせてインナハウジング3の前方から挿入する。すると、
図15(B)に示すように、各切欠き59に各係止部111が係止してステータ32が回り止めされると共に、後退が規制される。この状態で係止部111を除く各受け面部110の内面は、ステータコア34の外面に当接してステータ32を保持する。
【0041】
インナハウジング3において、軸線を中心とする上下の点対称位置には、一対のスリット112,112が形成されている。各スリット112は、テーパ部30から前端が切り込まれて後方へ延びている。各スリット112の後方でスリット112の前端の延長上には、インナハウジング3の外面へ突出するネジボス部113がそれぞれ形成されている。
また、インナハウジング3の左側面には、嵌合凸部114が形成されている。嵌合凸部114は、上下に所定幅を有する帯状で、テーパ部30からインナハウジング3の後端まで前後方向に形成されている。インナハウジング3の左右の外面には、前後方向に延びる一対のインナ側突起115,115が形成されている。
ステータ32の前側に組み付けられるバッフルプレート47の上下には、一対の小筒部116,116が、径方向外側へ向けて形成されている。小筒部116,116は、インナハウジング3のスリット112,112に嵌合してネジボス部113,113に前方から当接する。各小筒部116の径方向内側には、インナハウジング3の内周面よりも径方向内側へ突出する横断面円弧状の前押さえ部117,117が一体に形成されている。
【0042】
バッフルプレート47は、上下の小筒部116,116をスリット112,112を介してネジボス部113,113の前側に位置させて後方へ押し込む。すると、
図11に示すように、前押さえ部117,117が前インシュレータ35の嵌合凹部45,45に嵌合してステータコア34の前面に当接し、ステータ32を前方から位置決めする。
この位置決め状態でテーパ部30とバッフルプレート47とは、遠心ファン71の後側で、インナハウジング3の径方向外側に位置するテーパ部30と、径方向内側に位置するバッフルプレート47とからなるすり鉢状の整流部118を形成する。
【0043】
整流部118において、テーパ部30とバッフルプレート47とに跨がる位置で、ネジボス部113,113及び前押さえ部117,117の前方には、円形孔119,119が形成されている。円形孔119,119は、テーパ部30に切欠き形成されるスリット112,112の正面視半円状の前端と、バッフルプレート47の外周面に設けた正面視半円状の切欠部120,120とにより形成される。バッフルプレート47の前端左側には、嵌合凸部114によってテーパ部30の前面に形成される切欠きを塞ぐ突起121が形成されている。
この状態で円形孔119,119を介して前方から小筒部116,116を貫通させたネジ122,122をネジボス部113,113にねじ込む。すると、バッフルプレート47は、前面がテーパ部30の前面と連続状に繋がって整流部118を形成する位置で固定される。同時にバッフルプレート47は、係止部111との間でステータ32を挟持固定する。
【0044】
次に、インナハウジング3の弾性保持構造を説明する。インナハウジング3の後部において、連結ロッド75Aは、ラバーキャップを介さずにロッド受け部76A,76Aに直接保持されている。連結ロッド75Aは、中間の細径部125と、上下両端の太径部126,126とからなる2段径を有する。細径部125は、インナハウジング3の連結部53の貫通孔54を貫通する。太径部126,126は、連結部53から上下に突出する。ロッド受け部76A,76Aの互いの対向面には、太径部126を左右から保持する半円状の受け凹部127,127が形成されている。
【0045】
細径部125には、ラバースリーブ128が外装されている。細径部125としたことでラバースリーブ128の径方向の肉厚が確保できる。
ラバースリーブ128は、
図13に示すように、両端部の外周に、互いの対向側へ向けて拡開する返し部129,129をそれぞれ備えている。各返し部129の外周には、周方向に等間隔で複数の切除部130,130・・が設けられている。
ラバースリーブ128は、連結部53の貫通孔54に連結ロッド75Aと共に挿入される。このとき挿入側の返し部129は、貫通孔54にラバースリーブ128を挿入する際のガイドとなる。そして、連結ロッド75Aが連結部53を貫通すると、
図14にも示すように、ラバースリーブ128は、両端の返し部129,129がそれぞれ連結部53の上下に係止して位置決めされる。よって、インナハウジング3と連結ロッド75Aとは、ラバースリーブ128を介して弾性的に連結される。
【0046】
筒状ラバー80において、上下の内周面には、
図15(A)にも示すように、インナハウジング3への外装状態でネジボス部113,113が嵌合する一対の溝部131,131が前後方向に形成されている。
筒状ラバー80の左側の内面には、インナハウジング3への外装状態で嵌合凸部114が嵌合する位置決め溝132が前後方向に形成されている。
筒状ラバー80の左右の後部には、径方向外側へ膨出する一対の膨出部133,133が形成されている。膨出部133,133の中央には、インナハウジング3への外装状態でインナ側突起115,115が係合する一対の中スリット134,134が、それぞれ筒状ラバー80の後端から切込み形成されている。各膨出部133の上下には、中スリット134と平行な一対の外スリット135,135が、それぞれ筒状ラバー80の後端から切込み形成されている。
筒状ラバー80の上下の内周面で前端寄りの位置には、一対の位置決め突起136,136が形成されている。位置決め突起136,136は、整流部118に設けた円形孔119,119に嵌合して円形孔119を閉塞する。
【0047】
アウタハウジング2において、左右の内面には、
図13及び
図15(A)に示すように、筒状ラバー80の膨出部133,133が係合する一対の凹部140,140が形成されている。各凹部140の上下には、外スリット135,135に係止する上下一対のアウタ側突起141,141が、前後方向に形成されている。
各凹部140の前方でハンドル取付部83には、受け孔142がそれぞれ左右方向に貫通形成されている。受け孔142,142には、固定リング81の左右の平面部82,82へそれぞれ外向きに突設されたネジ筒143,143が嵌合する。このネジ筒143にサイドハンドル25のネジ部26が螺合される(
図12)。
【0048】
この変更例では、インナハウジング3と連結ロッド75Aとがラバースリーブ128(後側弾性体)を介して結合されている。よって、連結ロッド75Aは傾くことなくロッド受け部76A,76Aにより適正な位置で支持される。このため、インナハウジング3にも傾き等が生じなくなり、スピンドル6が適正な位置で支持される。
特に、連結ロッド75Aは、アウタハウジング2のロッド受け部76Aに直接保持されている。よって、ロッド受け部76A,76Aへの連結ロッド75Aの組み付けと同時に連結ロッド75Aが適正な位置で支持される。
【0049】
また、インナハウジング3にインナ側突起115(第1の係合部)が、筒状ラバー80に、前後方向を軸とする回転方向でインナ側突起115と係合する中スリット134(第1の被係合部)がそれぞれ設けられ、筒状ラバー80に膨出部133(第2の係合部)が、アウタハウジング2に、回転方向で膨出部133と係合する凹部140(第2の被係合部)がそれぞれ設けられている。よって、筒状ラバー80の周方向(回転方向)でアウタハウジング2とインナハウジング3との相対的ながたつきが規制されて信頼性の高い位置決めが可能となる。
さらに、インナハウジング3の外面に、第1の係合部となるインナ側突起115(突起)が設けられ、筒状ラバー80に、インナ側突起115が係合する中スリット134が設けられている。加えて、中スリット134を含む部位が、筒状ラバー80の外面側へ突出する膨出部133(第2の係合部)に形成されている。そして、アウタハウジング2の内面に、第2の被係合部となる凹部140が形成されている。よって、筒状ラバー80を介したアウタハウジング2とインナハウジング3との回転方向の位置決めが効果的に行える。
【0050】
なお、この変更例において、連結ロッドを2段径とせず、全長に亘って等径としたり、ラバースリーブの返し部を省略したりする等の変更は可能である。ラバースリーブは1つに限らず、全長が短いものを複数用いる等してもよい。
インナハウジングと筒状ラバーとの係合構造も、インナ側突起の数や形状、配置を変更したり、膨出部の数や形状、配置を変更したりしてもよい。中スリット及び外スリットの数や形状、配置も変更可能で、スリットでなく透孔や凹部としてもよい。凹部やアウタ側突起も同様に変更できる。
また、上記変更例では、インナハウジングに突起(第1の係合部)を、筒状ラバーに中スリット(第1の被係合部)をそれぞれ設けているが、これを逆にして、筒状ラバーの内面に突起等の第1の係合部を、インナハウジングに凹部や透孔等の第1の被係合部を設けることもできる。同様に、筒状ラバーに膨出部(第2の係合部)を、アウタハウジングに凹部(第2の被係合部)をそれぞれ設けているが、これを逆にして、アウタハウジングの内面に突起等の第2の係合部を、筒状ラバーに凹部や透孔等の第2の被係合部を設けることもできる。
【符号の説明】
【0051】
1,1A・・充電式グラインダ、2・・アウタハウジング、3・・インナハウジング、4・・ブラシレスモータ、5・・ギヤハウジング、6・・スピンドル、7・・前筒部、8・・後筒部、9・・バッテリー装着部、10・・大径部、11・・バッテリーパック、20・・コントローラ、25・・サイドハンドル、26・・ネジ部、30・・テーパ部、31・・拡開部、32・・ステータ、33・・ロータ、50・・ベアリングリテーナ、51・・軸受保持部、53・・連結部、61・・ロックリング、65・・回転軸、75,75A・連結ロッド、76,76A・・ロッド受け部、78・・ラバーキャップ、80・・筒状ラバー、81・・固定リング、83・・ハンドル取付部、86・・ハンドル検知機構、87・・検知プレート、88・・フォトインタラプタ、93・・遮光板、97・・受光部、98・・受け部、107・・先端工具、115・・インナ側突起、125・・細径部、126・・太径部、128・・ラバースリーブ、133・・膨出部、134・・中スリット、135・・外スリット、140・・凹部、141・・アウタ側突起。