(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】集中管理装置、および、当該集中管理装置を備えた発電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/32 20060101AFI20240104BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240104BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240104BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38 160
H02J3/38 110
H02J7/00 X
H02J7/00 303B
H02J7/34 D
(21)【出願番号】P 2020005888
(22)【出願日】2020-01-17
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】福見 渉
(72)【発明者】
【氏名】大堀 彰大
(72)【発明者】
【氏名】三田 慎一
(72)【発明者】
【氏名】北村 高嗣
(72)【発明者】
【氏名】花尾 隆史
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-327080(JP,A)
【文献】特開2018-170901(JP,A)
【文献】特開2016-082860(JP,A)
【文献】特開2012-100487(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104377717(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J3/00-5/00
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
F03D7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギーによる発電設備と、前記発電設備が発電した電力を充電され、また、自身に蓄電された電力を放電する蓄電池、および、前記蓄電池の充電および放電を制御するパワーコンディショナを有する蓄電設備と、を備える発電システムにおいて、前記パワーコンディショナを管理する集中管理装置であって、
前記発電設備が出力する電力と、前記蓄電設備が入出力する電力とを合成した合成出力値を検出する検出部と、
前記合成出力値の目標値である合成出力目標値の基準値である基準目標値を設定する基準目標値設定部と、
前記蓄電設備の現在の充電率と当該充電率の目標値である目標充電率との差に
補正ゲインを乗算した値を、前記基準目標値から減算することで、前記合成出力目標値を算出する算出式と、要求仕様に応じた制約条件とに基づいて、前記合成出力目標値を設定する目標値設定部と、
前記合成出力値と前記合成出力目標値とに基づいて制御指令値を算出する指令値算出部と、
を備え、
前記制御指令値を前記パワーコンディショナに出力し、
前記目標値設定部は、前記要求仕様に応じて、前記目標充電率を変更する、
ことを特徴とする集中管理装置。
【請求項2】
前記目標値設定部に設定される前記制約条件には、設定される前記合成出力目標値は、所定期間において、当該所定期間の開始時の前記合成出力値以上とする制約が含まれている、
請求項
1に記載の集中管理装置。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の集中管理装置と、前記発電設備と、前記蓄電設備と、を備える発電システムであって、
前記蓄電設備は、
前記発電設備が発電した電力を充電され、また、自身に蓄電された電力を放電する第2の蓄電池と、
前記第2の蓄電池の充電および放電を制御する第2のパワーコンディショナと、
をさらに備え、
前記集中管理装置は、
前記指令値算出部に代えて、前記合成出力値を前記合成出力目標値に制御するための誘導指標を算出する指標算出部を備え、
前記制御指令値に代えて、共通する前記誘導指標を前記パワーコンディショナおよび前記第2のパワーコンディショナに出力し、
前記パワーコンディショナおよび前記第2のパワーコンディショナは、それぞれ、入力された前記誘導指標に基づいて、自装置の出力電力の目標値である個別目標値を算出する目標電力算出部を備えている、
ことを特徴とする発電システム。
【請求項4】
前記発電設備は、風力発電装置を備えている、
請求項
3に記載の発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電システムを管理する集中管理装置、および、当該集中管理装置を備えた発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生可能エネルギーによる発電設備(以下では、単に「発電設備」と省略する)の導入が促進されている。しかし、当該発電設備の発電電力は、季節、時刻、および天候などによる変化が大きいので、安定した供給が困難である。電力供給の安定化のために、発電設備には、複数の蓄電池を有する蓄電設備と、蓄電設備を管理する集中管理装置とが併設される。集中管理装置は、蓄電設備に充電および放電をさせることで、発電設備の出力を平滑化させる。具体的には、集中管理装置は、発電設備および蓄電設備の合成出力電力を目標値である合成出力目標値に追従させることで平滑化するようにフィードバック制御を行う。
【0003】
特許文献1には、太陽光による発電設備を備え、当該発電設備の発電電力の長周期変動を数式化した発電モデルを備える発電システムが開示されている。当該発電システムは、当該発電モデルを用いて発電電力の短周期変動を抽出し、抽出した短周期変動を平滑化したものを発電モデルに合成し、さらに、充放電のためのオフセットを加えて、合成出力目標値を設定する。これにより、発電電力の短周期変動を平滑化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、昼夜を問わず複雑に変動する風力発電に対して発電モデルを設定することは困難である。したがって、発電モデルを必要としない発電システムが望まれる。発電モデルを用いない場合、長周期変動も含めて発電電力を平滑化するので、容量の大きな蓄電設備が必要になる。しかし、蓄電設備の容量をできるだけ抑制して、蓄電設備にかかるコストを抑制したいという要求がある。
【0006】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、発電モデルを用いることなく蓄電設備の充放電を行い、かつ、蓄電設備の容量を抑制できる集中管理装置、および、当該集中管理装置を備えた発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面によって提供される集中管理装置は、再生可能エネルギーによる発電設備と、前記発電設備が発電した電力を充電され、また、自身に蓄電された電力を放電する蓄電池、および、前記蓄電池の充電および放電を制御するパワーコンディショナを有する蓄電設備とを備える発電システムにおいて、前記パワーコンディショナを管理する集中管理装置であって、前記発電設備が出力する電力と、前記蓄電設備が入出力する電力とを合成した合成出力値を検出する検出部と、前記蓄電設備の現在の充電率と当該充電率の目標値である目標充電率との差に応じて前記合成出力値の目標値である合成出力目標値を算出する算出式と、要求仕様に応じた制約条件とに基づいて、前記合成出力目標値を設定する目標値設定部と、前記合成出力値と前記合成出力目標値とに基づいて制御指令値を算出する指令値算出部とを備え、前記制御指令値を前記パワーコンディショナに出力し、前記目標値設定部は、前記要求仕様に応じて、前記目標充電率を変更することを特徴とする。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記目標値設定部は、前記合成出力目標値の基準値である基準目標値をP
t、前記蓄電設備の現在の充電率をSOC、前記目標充電率をSOC
t、補正ゲインをK
cとすると、下記式に基づいて、前記合成出力目標値P
refを算出する。
【数1】
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記目標値設定部に設定される前記制約条件には、設定される前記合成出力目標値は、所定期間において、当該所定期間の開始時の前記合成出力値以上とする制約が含まれている。
【0010】
本発明の第2の側面によって提供される発電システムは、本発明の第1の側面によって提供される集中管理装置と、前記発電設備と、前記蓄電設備とを備える発電システムであって、前記蓄電設備は、前記発電設備が発電した電力を充電され、また、自身に蓄電された電力を放電する第2の蓄電池と、前記第2の蓄電池の充電および放電を制御する第2のパワーコンディショナとをさらに備え、前記集中管理装置は、前記指令値算出部に代えて、前記合成出力値を前記合成出力目標値に制御するための誘導指標を算出する指標算出部を備え、前記制御指令値に代えて、共通する前記誘導指標を前記パワーコンディショナおよび前記第2のパワーコンディショナに出力し、前記パワーコンディショナおよび前記第2のパワーコンディショナは、それぞれ、入力された前記誘導指標に基づいて、自装置の出力電力の目標値である個別目標値を算出する目標電力算出部を備えている。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記発電設備は、風力発電装置を備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、目標値設定部は、蓄電設備の現在の充電率と目標充電率との差に応じて合成出力目標値を算出する算出式と、要求仕様に応じた制約条件とに基づいて、合成出力目標値を設定する。つまり、目標値設定部は、発電モデルを用いることなく、合成出力目標値を設定する。パワーコンディショナは、検出された合成出力値と合成出力目標値とに基づいて算出された制御指令値に応じて蓄電設備の充放電を行う。これにより、本発明は、発電モデルを用いることなく蓄電設備の充放電を行うことができる。また、目標値設定部は、蓄電設備の現在の充電率と目標充電率との差に応じて合成出力目標値を算出するので、蓄電設備の充電率は目標充電率に追従する。したがって、要求仕様に応じることにより、蓄電設備が放電する傾向が高い場合には、事前に目標充電率に高い値を設定することで、充電率をあらかじめ上げておくことができる。逆に、蓄電設備が充電される傾向が高い場合には、事前に目標充電率に低い値を設定することで、充電率をあらかじめ下げておくことができる。これにより、集中管理装置は、目標充電率を固定値とした場合と比較して、充電率の変化範囲を狭くすることができる。したがって、集中管理装置は、蓄電設備の容量を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係る発電システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図2】充電率が目標充電率に追従することを説明するための図である。
【
図3】仕様1~5が要求されている場合の、目標値設定部において設定される目標充電率の一例を示す図である。
【
図4】目標値設定部が行う目標値設定処理を説明するためのフローチャートである。
【
図5】発電システムの合成出力電力のシミュレーション結果を示す波形図であり、目標値設定部が充電率による補正を行って合成出力目標値を算出した場合のものである。
【
図6】発電システムの合成出力電力のシミュレーション結果を示す波形図であり、目標値設定部が合成出力目標値を固定値とした場合のものである。
【
図7】第2実施形態に係る発電システムの全体構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、添付図面を参照して具体的に説明する。
【0015】
図1は、第1実施形態に係る発電システムの全体構成を示すブロック図である。発電システムA1は、電力系統Bに連系しており、電力系統Bに電力を供給する。発電システムA1は、発電設備1、複数の蓄電池2、複数のパワーコンディショナ3、および集中管理装置4を備えている。発電システムA1において、発電設備1は出力電力を抑制せず、集中管理装置4が、各パワーコンディショナ3を介して各蓄電池2の充電および放電を管理することで、発電システムA1が電力系統Bに出力する電力を制御する。なお、発電システムA1は、図示しない負荷を備えてもよい。
【0016】
本実施形態では、発電システムA1は、自律分散協調制御方式により、出力電力を制御する。具体的には、集中管理装置4は、発電システムA1全体の出力電力を目標電力に制御するための誘導指標を算出する。各パワーコンディショナ3は、集中管理装置4が算出した共通の誘導指標を用いて、それぞれに設定されている最適化問題に基づいて、自装置の出力電力の個別目標値を算出する。そして、自装置の出力電力が当該個別目標値となるように、自装置の出力電力を制御する。各パワーコンディショナ3が、誘導指標に基づいて自律的に出力電力を制御することで、発電システムA1全体の出力電力が目標電力に制御される。なお、以下の説明において、電力系統Bに向かう電力の電力値を正の値とし、逆向きに向かう電力の電力値を負の値とする。したがって、蓄電池2が放電する場合、電力値が正の値になり、蓄電池2が充電する場合、電力値が負の値になる。
【0017】
発電設備1は、風力による発電設備であり、複数の風力発電装置を備えている。なお、風力発電装置の数、および、各風力発電装置の規模は限定されない。風力発電装置は1台であってもよい。発電設備1は、各風力発電装置が発電した電力を合成して出力する。本実施形態では、発電設備1は、出力電力を抑制せず、発電した電力をすべて出力する。
【0018】
複数の蓄電池2は、それぞれ、繰り返し、充電により電力を蓄えることができる電池である。蓄電池2は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、および鉛蓄電池などの二次電池である。また、蓄電池2は、電気二重層コンデンサなどのコンデンサを用いてもよい。蓄電池2は、発電設備1が発電した電力を充電され、また、自身に蓄電された電力を放電する。
【0019】
複数のパワーコンディショナ3は、それぞれ、蓄電池2が接続されている。なお、各パワーコンディショナ3に接続される蓄電池2の数は限定されない。パワーコンディショナ3は、蓄電池2が放電した直流電力を交流電力に変換して出力する。また、パワーコンディショナ3は、発電設備1が出力した交流電力を直流電力へ変換して、蓄電池2に出力する。これにより、蓄電池2は充電される。つまり、パワーコンディショナ3は、自装置から出力される出力電力を制御することで、蓄電池2の充電および放電を制御する。すべての蓄電池2およびすべてのパワーコンディショナ3をまとめたものが蓄電設備である。各パワーコンディショナ3は、それぞれ、目標電力算出部31、出力制御部32、およびSOC推定部33を備えている。
【0020】
目標電力算出部31は、集中管理装置4から受信した誘導指標prを用いて、あらかじめ設定されている制約条件付き最適化問題に基づいて、自装置の出力電力の目標値である個別目標値P*を算出する。なお、目標電力算出部31に設定されている最適化問題および制約条件の詳細についての説明は省略する。
【0021】
出力制御部32は、目標電力算出部31が算出した個別目標値P*に基づいて、出力電力の制御を行う。具体的には、出力制御部32は、パワーコンディショナ3の出力電力をセンサによって検出した検出値と、個別目標値P*との差に基づいて、図示しないインバータ回路のスイッチングを調整することで、パワーコンディショナ3の出力電力を個別目標値P*に制御する。
【0022】
SOC推定部33は、パワーコンディショナ3に接続されている蓄電池2の充電率(複数の蓄電池2が接続されている場合は、接続された蓄電池2全体での充電率)を推定する。充電率は、充電状態およびSOC(State Of Charge)とも呼ばれ、完全充電された状態から放電した電気量を除いた残りの割合である。SOC推定部33は、例えば電流積算法またはOCV法などの周知の方法で、充電率を推定する。なお、SOC推定部33による充電率の推定方法は限定されない。SOC推定部33は、推定した充電率を集中管理装置4に出力する。
【0023】
集中管理装置4は、発電システムA1全体を管理し、発電システムA1が電力系統Bに出力する電力(以下では、「合成出力電力」とする)をフィードバック制御する。集中管理装置4は、合成出力電力を目標電力に制御するための誘導指標prを算出する。本実施形態では、集中管理装置4は、発電システムA1と電力系統Bとの接続点でセンサによって検出した電力値である合成出力値P(t)を用いる。なお、集中管理装置4は、各パワーコンディショナ3、および、発電設備1がそれぞれ検出した個別の出力電力の検出値を受信して、これらの検出値から算出した値を合成出力値P(t)としてもよい。集中管理装置4は、検出した合成出力値P(t)と設定された合成出力目標値Prefとの差に基づいて誘導指標prを算出し、各パワーコンディショナ3に送信する。なお、通信方法は限定されず、有線通信であってもよいし、無線通信であってもよい。
【0024】
各パワーコンディショナ3が、集中管理装置4から受信した共通の誘導指標prに基づいて自律的に入出力電力を制御することで、発電システムA1全体の合成出力電力(合成出力値P(t))が合成出力目標値Prefに制御される。本実施形態においては、集中管理装置4は、合成出力値P(t)が合成出力目標値Prefより大きい場合に誘導指標prを大きくし、合成出力値P(t)が合成出力目標値Prefより小さい場合に誘導指標prを小さくする。各パワーコンディショナ3は、集中管理装置4から受信した誘導指標prが大きいほど、合成出力値P(t)を小さくするように動作し(蓄電池2の放電量を小さくする、または、充電量を大きくする)、誘導指標prが小さいほど、合成出力値P(t)を大きくするように動作する(蓄電池2の放電量を大きくする、または、充電量を小さくする)。
【0025】
発電システムA1は、時間帯における電力需要に基づいて、また、同じ電力系統Bに接続される他の火力発電所等の応答速度等を考慮して、要求仕様を満たすことが求められる。長周期変動に対する要求仕様の例として、(i)所定期間において合成出力電力を基準値から増減させない、(ii)所定期間において合成出力電力を基準値から減少させない、(iii)所定期間において合成出力電力を基準値から増加させない、などがある。基準値は、所定期間の開始時の合成出力電力である。また、短周期変動に対する要求仕様の例として、合成出力電力の変化速度を所定の範囲内に抑える、などがある。
【0026】
要求仕様の具体的な一例を以下に説明する。長周期変動に対する要求仕様として以下の仕様が要求される。
仕様1 7:00から10:00の時間帯(以下、「第1減少禁止時間帯」とする)において、合成出力電力を基準値から減少させない。
仕様2 11:30から13:30の時間帯(以下、「増減禁止時間帯」とする)において、合成出力電力を基準値から増減させない。
仕様3 16:00から19:00の時間帯(以下、「第2減少禁止時間帯」とする)において、合成出力電力を基準値から減少させない。
仕様4 20:00から23:00の時間帯(以下、「増加禁止時間帯」とする)において、合成出力電力を基準値から増加させない。
また、短周期変動に対する要求仕様として以下の仕様が要求される。
仕様5 合成出力電力の変化速度を、発電システムA1の定格出力の±1%/分以内に抑える。
【0027】
集中管理装置4は、上記要求仕様を満たすように、制御を行う。また、集中管理装置4は、蓄電設備の容量をできるだけ小さく抑えるために、蓄電設備全体の充電率を、要求仕様に応じて操作する。集中管理装置4は、SOC算出部41、目標値設定部42、指標算出部43、および検出部44を備えている。
【0028】
SOC算出部41は、蓄電設備全体の充電率を算出する。SOC算出部41は、各パワーコンディショナ3のSOC推定部33から、当該パワーコンディショナ3に接続された蓄電池2の充電率を入力される。SOC算出部41は、各パワーコンディショナ3に接続された蓄電池2の満充電容量と、各SOC推定部33から入力された充電率に基づいて、蓄電設備全体の充電率SOCを算出する。なお、SOC算出部41は、他の方法で、蓄電設備全体の充電率SOCを算出してもよい。例えば、SOC算出部41は、蓄電設備からの充放電電流を検出して積算することで、充電率SOCを算出してもよい。SOC算出部41は、算出した充電率SOCを、目標値設定部42に出力する。
【0029】
検出部44は、発電システムA1と電力系統Bとの接続点に配置された電力センサを備えており、発電設備1が出力する電力と、蓄電設備が入出力する電力とを合成した合成電力を検出する。検出部44は、検出した合成出力値P(t)を目標値設定部42および指標算出部43に出力する。
【0030】
目標値設定部42は、合成出力目標値P
refを設定する。目標値設定部42は、SOC算出部41から入力される充電率SOC、および、下記(1)式に基づいて、合成出力目標値P
refを算出する。基準目標値P
t、目標充電率SOC
t、およびゲインK
cは、あらかじめ設定されている。基準目標値P
tは、合成出力目標値P
refの基準となる値であり、固定された電力値が設定されている。目標充電率SOC
tは、充電率SOCの目標値であり、時間帯によって異なる値が設定されている。目標充電率SOC
tは、要求仕様に応じて設定される。具体的には、目標充電率SOC
tは、蓄電設備が放電する傾向が高い場合には事前に高い値が設定され、蓄電設備が充電される傾向が高い場合には事前に低い値が設定される。ゲインK
cは補正ゲインであり、所定の値が設定されている。下記(1)式に示すように、合成出力目標値P
refは、充電率SOCが目標充電率SOC
tに等しくなるまで、基準目標値P
tに対して補正を掛けたものになる。
【数1】
【0031】
図2は、上記(1)式により、充電率SOCが目標充電率SOC
tに追従することを説明するための図である。
図2においては、合成出力目標値P
refと、発電設備1の出力電力の変動を示す波形Xとが、模式的に表されている。波形X(発電設備1の出力電力)が合成出力目標値P
refを上回っている場合、余剰分の電力が蓄電設備で充電される。つまり、波形Xと合成出力目標値P
refとで囲まれた領域(図において点描を付した領域)の面積が、蓄電設備に充電された充電量を示す。一方、波形X(発電設備1の出力電力)が合成出力目標値P
refを下回っている場合、不足分の電力が蓄電設備から放電される。つまり、波形Xと合成出力目標値P
refとで囲まれた領域(図においてハッチングを付した領域)の面積が、蓄電設備から放電された放電量を示す。
【0032】
図2(a)においては、蓄電設備に充電される充電量と蓄電設備から放電される放電量とが釣り合っている状態を示している。この場合、図に示す時間帯の前後で充電率SOCは同様の値になる。充電率SOCが目標充電率SOC
tより小さい場合、上記(1)式より、合成出力目標値P
refが、基準目標値P
tより引き下げられる。したがって、
図2(b)に示すように、蓄電設備に充電される充電量が増加し、蓄電設備から放電される放電量が減少する。これにより、充電率SOCが増加する。一方、充電率SOCが目標充電率SOC
tより大きい場合、上記(1)式より、合成出力目標値P
refが、基準目標値P
tより引き上げられる。したがって、
図2(c)に示すように、蓄電設備に充電される充電量が減少し、蓄電設備から放電される放電量が増加する。これにより、充電率SOCが減少する。このように、上記(1)式より、充電率SOCが目標充電率SOC
tに近づくように合成出力目標値P
refが補正されることで、充電率SOCが目標充電率SOC
tに追従する。
【0033】
目標値設定部42は、放電が増える可能性が高い場合には、事前に目標充電率SOCtとして高い値を設定することにより、放電に備えて、あらかじめ充電率SOCを増加させておく。一方、目標値設定部42は、充電が増える可能性が高い場合には、事前に目標充電率SOCtとして低い値を設定することにより、あらかじめ充電率SOCを減少させておく。これにより、蓄電設備の容量が比較的小さい場合でも、発電システムA1は、蓄電設備の充電率SOCを運用範囲内(充電率SOCの下限から上限の範囲)に留めておくことができる。目標充電率SOCt(どの時間帯でどの設定値にするか)は、実験やシミュレーション結果などに応じて、適宜設定される。
【0034】
図3は、上記仕様1~5が要求されている場合の、目標値設定部42において設定される目標充電率SOC
tの一例を示している。
図3に示す例では、蓄電設備が放電する傾向が高い第1減少禁止時間帯および第2減少禁止時間帯に対しては、各時間帯が開始する前から開始後30分経過まで、目標充電率SOC
tとして高い値SOC
1(例えば60~80%)が設定されている。一方、蓄電設備が充電される傾向が高い増加禁止時間帯に対しては、増加禁止時間帯が開始する前から終了後30分経過まで、目標充電率SOC
tとして低い値SOC
2(例えば40~60%)が設定されている。また、本実施形態では、増減禁止時間帯に対しては、その前後も含めて、目標充電率SOC
tとして低い値SOC
2が設定されている。なお、
図3は、一例であって、設定される目標充電率SOC
tは限定されない。目標充電率SOC
tは2段階に限定されず、より多段階で変化してもよい。また、目標充電率SOC
tの変更のタイミングは限定されない。
【0035】
また、目標値設定部42は、算出された合成出力目標値Prefを、要求仕様に応じた制約条件に合わせる。目標値設定部42には、仕様1に対応するために、第1減少禁止時間帯においては、第1減少禁止時間帯の開始時刻t1(7:00)での合成出力値P(t1)を基準値とし、算出された合成出力目標値Prefに対して、(Pref≧P(t1))の制約条件が設定されている。また、目標値設定部42には、仕様2に対応するために、増減禁止時間帯においては、増減禁止時間帯の開始時刻t2(11:30)での合成出力値P(t2)を基準値とし、算出された合成出力目標値Prefに対して、(Pref=P(t2))の制約条件が設定されている。また、目標値設定部42には、仕様3に対応するために、第2減少禁止時間帯においては、第2減少禁止時間帯の開始時刻t3(16:00)での合成出力値P(t3)を基準値とし、算出された合成出力目標値Prefに対して、(Pref≧P(t3))の制約条件が設定されている。また、目標値設定部42には、仕様4に対応するために、増加禁止時間帯においては、増加禁止時間帯の開始時刻t4(20:00)での合成出力値P(t4)を基準値とし、算出された合成出力目標値Prefに対して、(Pref≦P(t4))の制約条件が設定されている。
【0036】
さらに、目標値設定部42には、仕様5に対応するために、全時間帯において、設定される合成出力目標値Prefの変化速度が発電システムA1の定格出力の±1%/分以内との制約条件が設定されている。本実施形態では、合成出力目標値Prefの設定が1分周期で行われる。したがって、目標値設定部42は、今回設定する合成出力目標値Prefと前回設定された合成出力目標値Prefとの差が、前回設定された合成出力目標値Prefの±1%以内となるように、合成出力目標値Prefを調整して設定する。また、目標値設定部42は、全時間帯において、合成出力目標値Prefを、「0」以上で、発電システムA1の定格出力の95%以内になるように設定する。これらの制約条件は、一例であって、各制約条件は、要求仕様に応じて設定される。目標値設定部42は、算出された合成出力目標値Prefを、設定された制約条件に合わせて、指標算出部43に出力する。
【0037】
図4は、目標値設定部42が行う目標値設定処理を説明するためのフローチャートである。当該目標値設定処理は、所定周期(例えば1分周期)で実行される。
【0038】
まず、現在の時刻が取得され(S1)、時刻に応じた目標充電率SOCtが設定される(S2)。次に、現在の充電率SOCが取得される(S3)。目標値設定部42は、SOC算出部41から現在の充電率SOCを取得する。次に、合成出力目標値Prefが算出される(S4)。目標値設定部42は、上記(1)式に基づいて、合成出力目標値Prefを算出する。
【0039】
次に、現在の時刻が、上記仕様1~4で指定された時間帯(第1減少禁止時間帯、第2減少禁止時間帯、増加禁止時間帯、および増減禁止時間帯)に含まれるか否かが判別される(S5)。含まれる場合(S5:YES)、当該時間帯に最初に該当したか否かが判別される(S6)。最初に該当した場合(S6:YES)、現在の合成出力値P(t)が基準値に設定され(S7)、ステップS9に進む。一方、最初に該当しない場合(S6:NO)、合成出力目標値Prefが基準値に基づいて調整され(S8)、ステップS9に進む。当該時間帯に最初に該当したか否かは、例えばフラグを設定するなどして判別される。現在の時刻が、上記仕様1~4で指定された時間帯に含まれない場合(S5:NO)、ステップS9に進む。
【0040】
次に、合成出力目標値P
refの変化速度の制限(仕様5)に応じて、合成出力目標値P
refが調整される(S9)。具体的には、目標値設定部42は、今回設定する合成出力目標値P
refと前回設定された合成出力目標値P
refとの差が、前回設定された合成出力目標値P
refの±1%以内となるように、合成出力目標値P
refを調整する。また、目標値設定部42は、合成出力目標値P
refを、「0」以上で、発電システムA1の定格出力の95%以内になるように調整する。次に、合成出力目標値P
refが指標算出部43に出力され(S10)、目標値設定処理は終了する。なお、
図4のフローチャートに示す処理は一例であって、目標値設定部42が行う目標値設定処理は上述したものに限定されない。
【0041】
指標算出部43は、目標値設定部42から入力される合成出力目標値Prefと、検出部44から入力される合成出力値P(t)とに基づいて、合成出力値P(t)を合成出力目標値Prefに制御するための誘導指標prを算出する。なお、指標算出部43での誘導指標prの算出方法の詳細についての説明は省略する。指標算出部43は、算出した誘導指標prを、各パワーコンディショナ3に送信する。
【0042】
次に、発電システムA1の合成出力電力のシミュレーションについて説明する。本シミュレーションでは、発電システムA1の定格出力を100MW、発電設備1の定格出力を87.2MW、蓄電設備の定格出力を100MW、蓄電設備の容量を250.9MWhとし、蓄電設備全体の充電率SOCの運用範囲を1~96%としている。また、本シミュレーションでは、上記した要求仕様の具体的な一例に応じて、目標値設定部42が合成出力目標値P
refを設定した。また、目標値設定部42は、上記(1)式に基づく合成出力目標値P
refの算出において、目標充電率SOC
tを
図3に示すように設定した。なお、高い値SOC
1として75%が設定され、低い値SOC
2として50%が設定されている。また、目標値設定部42は、基準目標値P
tを52.5MWの固定値とし、ゲインK
cを1250の固定値としている。
【0043】
図5は、当該シミュレーションの結果を示している。
図5の上段には、蓄電設備の出力電力(図における波形a)、発電設備1の出力電力(図における波形b)、発電システムA1の合成出力電力を検出した合成出力値P(t)(図における波形c)、および合成出力目標値P
ref(図における波形d)の時間変化が示されている。なお、
図5においては、波形cと波形dとがほとんど一致している。各電力は、左側の縦軸に示すように、発電システムA1の定格出力に対する百分率で示している。
図5の下段には、SOC算出部41が算出した蓄電設備全体の充電率SOC(図における波形e)、および、指標算出部43が算出した誘導指標pr(図における波形f)のそれぞれの時間変化が示されている。なお、誘導指標prは、右側の縦軸に示すように、-100から100までの範囲で変化するように設定されている。また、充電率SOCは、左側の縦軸に示すように、百分率で示している。
【0044】
図5に示すように、第1減少禁止時間帯においては、合成出力値P(t)(波形c参照)が当該時間帯の開始時刻での合成出力値P(t)より減少していない。したがって、仕様1を満たしている。また、増減禁止時間帯においては、合成出力値P(t)が当該時間帯の開始時刻での合成出力値P(t)から増減していない。したがって、仕様2を満たしている。第2減少禁止時間帯においては、合成出力値P(t)が当該時間帯の開始時刻での合成出力値P(t)より減少していない。したがって、仕様3を満たしている。また、増加禁止時間帯においては、合成出力値P(t)が当該時間帯の開始時刻での合成出力値P(t)より増加していない。したがって、仕様4を満たしている。また、合成出力値P(t)の変化速度(波形cの傾き)が最も大きいとき(
図5においては14:30頃)でも、発電システムA1の定格出力の1%/分以内になっている。したがって、仕様5を満たしている。さらに、充電率SOC(波形e参照)は、1日を通して、20~70%の範囲で変化している。したがって、設定された容量では余裕を持って運用可能であり、蓄電設備の容量をもっと小さいものとすることが可能である。また、23:00以降の充電率SOC(波形e参照)の減少に伴い、合成出力目標値P
ref(波形d参照)の減少が確認できる。これは上記(1)式における、充電率SOCによる合成出力目標値P
refの補正の効果である。
【0045】
図6は、
図5におけるシミュレーションと同様の設定で、目標値設定部42が合成出力目標値P
refを、基準目標値P
tに固定した、すなわち、上記(1)式において、ゲインK
cを「0」として、充電率SOCによる補正項を削除した場合のシミュレーションの結果である。
【0046】
図6に示すように、本シミュレーションでも、仕様1~5を満たすことができる。しかし、充電率SOC(波形e参照)が、運用範囲に収まっていない。すなわち、22:00頃から発電設備1の出力電力(波形b参照)が低下し、これに応じて、蓄電設備の出力電力(波形a参照)が上昇している。そして、22:30頃に、充電率SOC(波形e参照)が、運用範囲の下限に達している。これにより、蓄電設備による放電が停止され(波形a参照)、合成出力値P(t)(波形c参照)が合成出力目標値P
ref(波形d参照)を大きく下回っている。つまり、設定された容量では運用できず、蓄電設備の容量をもっと大きいものとする必要がある。以上のように、上記(1)式を用いて、目標充電率SOC
tを適切に設定して、基準目標値P
tを算出することで、蓄電設備の容量を抑制可能であることが確認できた。
【0047】
次に、本実施形態に係る集中管理装置4、および、発電システムA1の作用および効果について説明する。
【0048】
本実施形態によると、目標値設定部42は、上記(1)式に基づいて合成出力目標値Prefを算出し、算出された合成出力目標値Prefを要求仕様に応じた制約条件に合わせて設定する。つまり、目標値設定部42は、発電モデルを用いることなく、合成出力目標値Prefを設定する。指標算出部43は、目標値設定部42から入力される合成出力目標値Prefと、検出部44から入力される合成出力値P(t)とに基づいて、合成出力値P(t)を合成出力目標値Prefに制御するための誘導指標prを算出して、各パワーコンディショナ3に送信する。各パワーコンディショナ3は、集中管理装置4から受信した誘導指標prを用いて個別目標値P*を算出し、算出した個別目標値P*に基づいて、出力電力の制御を行う。これにより、パワーコンディショナ3に接続された蓄電池2は、充電および放電を制御される。つまり、集中管理装置4は、発電モデルを用いることなく蓄電設備の充放電を行うことができる。また、目標値設定部42は上記(1)式により合成出力目標値Prefを算出するので、充電率SOCが目標充電率SOCtに追従する。したがって、目標値設定部42は、要求仕様に応じることにより、蓄電設備が放電する傾向が高い場合には、事前に目標充電率SOCtに高い値を設定することで、充電率SOCをあらかじめ上げておくことができる。逆に、蓄電設備が充電される傾向が高い場合には、事前に目標充電率SOCtに低い値を設定することで、充電率SOCをあらかじめ下げておくことができる。これにより、集中管理装置4は、目標充電率SOCtを固定した場合と比較して、充電率SOCの変化範囲を狭くすることができる。したがって、集中管理装置4は、蓄電設備の容量を抑制できる。
【0049】
また、本実施形態によると、発電システムA1は、自律分散協調制御方式により、合成出力電力を制御する。すなわち、集中管理装置4は、合成出力値P(t)と合成出力目標値Prefとに基づいて、合成出力値P(t)を合成出力目標値Prefに制御するための誘導指標prを算出する。各パワーコンディショナ3は、集中管理装置4が算出した共通の誘導指標prを用いて自装置の出力電力の個別目標値P*を算出し、自装置の出力電力を制御する。各パワーコンディショナ3が、誘導指標prに基づいて自律的に出力電力を制御することで、発電システムA1全体の合成出力値P(t)が合成出力目標値Prefに制御される。集中管理装置4は、パワーコンディショナ3および蓄電池2の個別の状態などを把握することなく、誘導指標prを算出して送信するだけなので、演算や通信の負担が小さい。集中管理装置4は高性能で高価な装置である必要がないので、初期導入費用が軽減される。また、発電システムA1を拡張する場合に、集中管理装置4の大きな改修が必要にならない。
【0050】
また、本実施形態によると、目標値設定部42は、上記(1)式により合成出力目標値Prefを算出する。充電率SOCが目標充電率SOCtより小さい場合、合成出力目標値Prefが、基準目標値Ptより引き下げられる。したがって、蓄電設備に充電される充電量が増加し、蓄電設備から放電される放電量が減少する。これにより、充電率SOCが増加する。一方、充電率SOCが目標充電率SOCtより大きい場合、合成出力目標値Prefが、基準目標値Ptより引き上げられる。したがって、蓄電設備に充電される充電量が減少し、蓄電設備から放電される放電量が増加する。これにより、充電率SOCが減少する。したがって、目標値設定部42は、充電率SOCを目標充電率SOCtに適切に追従させることができる。
【0051】
また、本実施形態によると、目標値設定部42には、第1減少禁止時間帯においては、第1減少禁止時間帯の開始時刻t1での合成出力値P(t1)を基準値とし、算出された合成出力目標値Prefに対して、(Pref≧P(t1))の制約条件が設定されている。したがって、仕様1を満たすことができる。また、目標値設定部42には、増減禁止時間帯においては、増減禁止時間帯の開始時刻t2での合成出力値P(t2)を基準値とし、算出された合成出力目標値Prefに対して、(Pref=P(t2))の制約条件が設定されている。したがって、仕様2を満たすことができる。また、目標値設定部42には、第2減少禁止時間帯においては、第2減少禁止時間帯の開始時刻t3での合成出力値P(t3)を基準値とし、算出された合成出力目標値Prefに対して、(Pref≧P(t3))の制約条件が設定されている。したがって、仕様3を満たすことができる。また、目標値設定部42には、増加禁止時間帯においては、増加禁止時間帯の開始時刻t4での合成出力値P(t4)を基準値とし、算出された合成出力目標値Prefに対して、(Pref≦P(t4))の制約条件が設定されている。したがって、仕様4を満たすことができる。また、本実施形態によると、目標値設定部42には、全時間帯において、設定される合成出力目標値Prefの変化速度が発電システムA1の定格出力の±1%/分以内との制約条件が設定されている。したがって、仕様5を満たすことができる。
【0052】
なお、本実施形態においては、目標値設定部42が上記(1)式により合成出力目標値P
refを算出する場合について説明したが、これに限られない。合成出力目標値P
refを算出するための式は、上記(1)式における、充電率SOCによる補正項が、SOC
t>SOCであれば正になり、SOC
t<SOCであれば負になり、SOC
t=SOCであれば「0」になる関数であればよい。例えば、上記(1)式に代えて、下記(2)式や下記(3)式が用いられてもよい。
【数2】
【0053】
また、本実施形態においては、上記(1)式において、基準目標値Ptを固定値とした場合について説明したが、これに限られない。基準目標値Ptは、時間帯や季節などによって異なる値が設定されてもよい。また、基準目標値Ptは、例えば風況予測などに応じて、変化させてもよい。
【0054】
図7は、第2実施形態に係る発電システムの全体構成を示すブロック図である。
図7において、第1実施形態に係る発電システムA1と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。本実施形態に係る発電システムA2は、自律分散協調制御方式ではなく、集中管理装置4が各パワーコンディショナ3にそれぞれ個別の制御指令値を出力する点で、第1実施形態に係る発電システムA1とは異なる。
【0055】
第2実施形態に係る集中管理装置4は、指標算出部43に代えて、指令値算出部45を備えている。指令値算出部45は、各パワーコンディショナ3から、SOC推定部33が推定した蓄電池2の充電率、パワーコンディショナ3の出力電力の検出値、および蓄電池2の容量などの情報を入力される。指令値算出部45は、目標値設定部42から入力される合成出力目標値Prefと、検出部44から入力される合成出力値P(t)と、各パワーコンディショナ3から入力された情報とに基づいて、各パワーコンディショナ3に対する制御指令値を算出する。指令値算出部45は、算出した各制御指令値を、それぞれ対応するパワーコンディショナ3に送信する。
【0056】
第2実施形態に係る各パワーコンディショナ3は、目標電力算出部31を備えておらず、集中管理装置4から入力される個別の制御指令値を個別目標値P*として、出力制御部32に入力する。出力制御部32は、個別目標値P*に基づいて、出力電力の制御を行う。
【0057】
本実施形態においても、目標値設定部42は、上記(1)式に基づいて合成出力目標値Prefを算出し、算出された合成出力目標値Prefを要求仕様に応じた制約条件に合わせて設定する。したがって、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0058】
なお、第1および第2実施形態においては、発電システムA1,A2が、電力系統Bに連系している場合について説明したが、これに限られない。発電システムA1,A2は、オフグリッドで、所定の負荷装置に電力を供給するシステムであってもよい。
【0059】
また、第1および第2実施形態においては、発電設備1が風力発電装置を備えている場合について説明したが、これに限られない。発電設備1は、風力発電装置に代えて、太陽光発電装置、地熱発電装置、波力発電装置、およびマイクロ水力発電装置などの、他の再生可能エネルギーを利用した発電装置を備えてもよい。また、発電設備1は、複数種類の発電装置を備えてもよいし、さらに、再生可能エネルギーを利用しない発電装置も併設してもよい。
【0060】
本発明に係る集中管理装置および発電システムは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る集中管理装置および発電システムの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0061】
A1,A2:発電システム、1:発電設備、2:蓄電池、3:パワーコンディショナ、4:集中管理装置、42:目標値設定部、43:指標算出部、44:検出部、45:指令値算出部