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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】建物天井とその施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/24 20060101AFI20240104BHJP
   E04B 9/26 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
E04B9/24 B
E04B9/26 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020011177
(22)【出願日】2020-01-27
(65)【公開番号】P2021116615
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2023-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】秋竹 教行
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-068099(JP,A)
【文献】特開昭48-095016(JP,A)
【文献】特開平04-153444(JP,A)
【文献】実開昭55-035189(JP,U)
【文献】実開昭51-143312(JP,U)
【文献】実開平06-018518(JP,U)
【文献】実開昭54-016112(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第107407089(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/00-9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第二の方向に延設する複数の野縁が、第一の方向に間隔を置いて配設されている天井下地に対して、複数の前記野縁に亘る幅を有していて平面視矩形の天井面材が取り付けられている、建物天井の施工方法であって、
前記天井面材は、前記第一の方向に延設する対向する一対の第一端辺と、前記第二の方向に延設する対向する一対の第二端辺とを備え、該一対の第一端辺のうち、一方の該第一端辺に少なくとも一つの切り欠きを備え、他方の該第一端辺の近傍に少なくとも一つの孔を備えており、
複数の前記天井面材の端部同士を重ね合わせながら、複数の該天井面材を前記第二の方向に並べて前記野縁に固定することにより、一列目の先行天井面材群を施工するA工程と、
前記先行天井面材群の側方に二列目以降の後行天井面材群を施工するB工程と、を有し、
前記A工程と前記B工程では、
前記先行天井面材群と前記後行天井面材群の双方において、最初に前記野縁に取り付けられる第一天井面材を、前記切り欠きと前記孔を介して固定手段により該野縁に固定し、
二つ目以降に前記野縁に取り付けられる第二天井面材は、該第二天井面材の備える前記切り欠きを、先行して前記野縁に固定されている前記第一天井面材もしくは前記第二天井面材の上方において前記固定手段に差し込み、該第二天井面材の備える前記孔を介して別途の前記固定手段にて前記野縁に固定することを特徴とする、建物天井の施工方法。
【請求項2】
第二の方向に延設する複数の野縁が、第一の方向に間隔を置いて配設されている天井下地に対して、複数の前記野縁に亘る幅を有していて平面視矩形の天井面材が取り付けられている、建物天井の施工方法であって、
前記天井面材は、前記第一の方向に延設する対向する一対の第一端辺と、前記第二の方向に延設する対向する一対の第二端辺とを備え、二つの該第一端辺にはいずれも少なくとも一つの切り欠きが備えてあり、
複数の前記天井面材の端部同士を重ね合わせながら、複数の該天井面材を前記第二の方向に並べて前記野縁に固定することにより、一列目の先行天井面材群を施工するA工程と、
前記先行天井面材群の側方に二列目以降の後行天井面材群を施工するB工程と、を有し、
前記A工程と前記B工程では、
前記先行天井面材群と前記後行天井面材群の双方において、最初に前記野縁に取り付けられる第一天井面材を、少なくとも二つの前記切り欠きを介して固定手段により該野縁に固定し、
二つ目以降に前記野縁に取り付けられる第二天井面材は、該第二天井面材の備える一方の前記切り欠きを、先行して前記野縁に固定されている前記第一天井面材もしくは前記第二天井面材の上方において前記固定手段に差し込み、該第二天井面材の備える他方の前記切り欠きを介して別途の前記固定手段にて前記野縁に固定することを特徴とする、建物天井の施工方法。
【請求項3】
前記天井面材は、一つの前記切り欠きを一方の前記第一端辺の中央に備え、七つの前記孔を、四つの隅角部と、他方の前記第一端辺の中央と、二つの前記第二端辺の中央とに備え、該天井面材は三本の前記野縁に亘る幅を有しており、
前記B工程では、
隣接する前記先行天井面材群と前記後行天井面材群の備える前記天井面材の第二端辺同士、もしくは、隣接する前記後行天井面材群の備える前記天井面材の第二端辺同士を重ね合わせ、対応する前記孔を位置合わせして連通孔を形成し、該連通孔を介して前記固定手段にて前記野縁に固定することを特徴とする、請求項1に記載の建物天井の施工方法。
【請求項4】
前記天井面材は、八つの前記切り欠きを、二つの前記第一端辺の中央と、二つの前記第二端辺の中央と、四つの隅角部とに備え、該天井面材は三本の前記野縁に亘る幅を有しており、
前記B工程では、
隣接する前記先行天井面材群と前記後行天井面材群の備える前記天井面材の第二端辺同士、もしくは、隣接する前記後行天井面材群の備える前記天井面材の第二端辺同士を重ね合わせ、対応する前記切り欠きを位置合わせして連通切り欠きを形成し、該連通切り欠きを介して前記固定手段にて前記野縁に固定することを特徴とする、請求項2に記載の建物天井の施工方法。
【請求項5】
前記B工程では、
隣接する前記先行天井面材群と前記後行天井面材群の備える前記天井面材の第一端辺、もしくは、隣接する前記後行天井面材群の備える前記天井面材の第一端辺を、前記第二の方向において相互にずらして前記野縁に固定することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の建物天井の施工方法。
【請求項6】
第二の方向に延設する複数の野縁が、第一の方向に間隔を置いて配設されている天井下地に対して、複数の前記野縁に亘る幅を有していて平面視矩形の天井面材が取り付けられている、建物天井であって、
前記天井面材は、前記第一の方向に延設する対向する一対の第一端辺と、前記第二の方向に延設する対向する一対の第二端辺とを備え、該一対の第一端辺のうち、一方の該第一端辺に少なくとも一つの切り欠きを備え、他方の該第一端辺の近傍に少なくとも一つの孔を備えており、
複数の前記天井面材の端部同士が重ね合わされ、複数の該天井面材が前記第二の方向に並べられて前記野縁に固定されることにより、一列目の先行天井面材群が形成され、
前記先行天井面材群の側方に二列目以降の後行天井面材群が形成されており、
前記先行天井面材群と前記後行天井面材群の双方において、最初に前記野縁に取り付けられている第一天井面材は、前記切り欠きと前記孔を介して固定手段により該野縁に固定されており、
二つ目以降に前記野縁に取り付けられている第二天井面材は、該第二天井面材の備える前記切り欠きが、先行して前記野縁に固定されている前記第一天井面材もしくは前記第二天井面材の上方において前記固定手段に差し込まれ、該第二天井面材の備える前記孔を介して別途の前記固定手段にて前記野縁に固定されていることを特徴とする、建物天井。
【請求項7】
第二の方向に延設する複数の野縁が、第一の方向に間隔を置いて配設されている天井下地に対して、複数の前記野縁に亘る幅を有していて平面視矩形の天井面材が取り付けられている、建物天井であって、
前記天井面材は、前記第一の方向に延設する対向する一対の第一端辺と、前記第二の方向に延設する対向する一対の第二端辺とを備え、二つの該第一端辺にはいずれも少なくとも一つの切り欠きが備えてあり、
複数の前記天井面材の端部同士が重ね合わされ、複数の該天井面材が前記第二の方向に並べられて前記野縁に固定されることにより、一列目の先行天井面材群が形成され、
前記先行天井面材群の側方に二列目以降の後行天井面材群が形成されており、
前記先行天井面材群と前記後行天井面材群の双方において、最初に前記野縁に取り付けられている第一天井面材は、少なくとも二つの前記切り欠きを介して固定手段により該野縁に固定されており、
二つ目以降に前記野縁に取り付けられている第二天井面材は、該第二天井面材の備える一方の前記切り欠きが、先行して前記野縁に固定されている前記第一天井面材もしくは前記第二天井面材の上方において前記固定手段に差し込まれ、該第二天井面材の備える他方の前記切り欠きを介して別途の前記固定手段にて前記野縁に固定されていることを特徴とする、建物天井。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物天井とその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物天井の施工においては、上向き作業にて、専用工具を用いた固定手段(ビス、ネジ等)により、野縁等の天井下地材に対して天井面材の取り付けが行われている。この天井面材の取り付けには経験や技能を要し、誰でも行える作業ではない。労働力不足が叫ばれ、省人化技術が切望される昨今、誰でも簡単に建物天井を施工できる技術の開発が課題となっている。
【0003】
一方、石膏ボード等の天井面材は一般に突付けにより施工されるが、突付け施工では隣接する天井面材間に隙間が生じた場合に、隙間が目立つといった課題がある。隙間の発生を解消するべく、天井面材間にジョイント材を介在させる等の措置が講じられるが、ジョイント材の施工においても上記するように経験や技術が必要となり、施工期間の長期化や資材コストの増加といった新たな課題が生じる。
【0004】
ここで、省力化を達成して廃材の発生を無くし、簡便できれいな仕上がりの素地を与える吊式天井施工法が提案されている。具体的には、野縁と野縁の天井材取り付け面に少なくとも天井材取り付け代を確保する大きさで結合された下地基材片とからなる吊式天井下地材を構成し、この吊式天井下地材を吊部材に適宜の間隔で配設して天井材敷設用下地骨組を構成した後、隣接する下地基材片面に天井材を取り付ける方法である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-27942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の吊式天井施工法により施工される天井は、隣接する天井材同士を突付けにより施工することから、上記する課題、すなわち、天井面材間に隙間が生じ易いといった課題を解消できるものではない。
【0007】
本発明は上記する課題に鑑みてなされたものであり、隣接する天井面材間に隙間が無い建物天井と、この建物天井を誰でも簡単に施工できる建物天井の施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成すべく、本発明による建物天井の施工方法の一態様は、
第二の方向に延設する複数の野縁が、第一の方向に間隔を置いて配設されている天井下地に対して、複数の前記野縁に亘る幅を有していて平面視矩形の天井面材が取り付けられている、建物天井の施工方法であって、
前記天井面材は、前記第一の方向に延設する対向する一対の第一端辺と、前記第二の方向に延設する対向する一対の第二端辺とを備え、該一対の第一端辺のうち、一方の該第一端辺に少なくとも一つの切り欠きを備え、他方の該第一端辺の近傍に少なくとも一つの孔を備えており、
複数の前記天井面材の端部同士を重ね合わせながら、複数の該天井面材を前記第二の方向に並べて前記野縁に固定することにより、一列目の先行天井面材群を施工するA工程と、
前記先行天井面材群の側方に二列目以降の後行天井面材群を施工するB工程と、を有し、
前記A工程と前記B工程では、
前記先行天井面材群と前記後行天井面材群の双方において、最初に前記野縁に取り付けられる第一天井面材を、前記切り欠きと前記孔を介して固定手段により該野縁に固定し、
二つ目以降に前記野縁に取り付けられる第二天井面材は、該第二天井面材の備える前記切り欠きを、先行して前記野縁に固定されている前記第一天井面材もしくは前記第二天井面材の上方において前記固定手段に差し込み、該第二天井面材の備える前記孔を介して別途の前記固定手段にて前記野縁に固定することを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、平面視矩形の天井面材の有する一対の第一端辺がそれぞれ切り欠きと孔を備え、最初に野縁に取り付けられる第一天井面材を、切り欠きと孔を介して固定手段により野縁に固定し、二つ目以降に野縁に取り付けられる第二天井面材は、その切り欠きを先行して野縁に固定されている第一天井面材もしくは第二天井面材の上方において固定手段に差し込んだ後、第二天井面材の備える孔を介して別途の固定手段にて野縁に固定するようにして一列目の先行天井面材群と二列目以降の後行天井面材群を施工するものである。この施工方法により、固定手段にて二つの天井面材が重ね合わされて野縁に固定されている箇所においては、先行して固定されている一方の天井面材がその自重にて下方に位置する固定手段側に落ち込んで支持され、後施工にて差し込まれた他方の天井面材が同様に自重にて落ち込んで一方の天井面材の上方に重ね合されることになる。そのため、簡単な施工方法にて、隣接する天井面材の端部同士を隙間なく重ね合わせながら建物天井を施工することができる。
【0010】
ここで、施工される建物天井は、一列目の先行天井面材群と、その左右いずれか一方もしくは双方の後行天井面材群により構成される形態(すなわち、二列もしくは三列の天井面材群により構成される)や、一列目の先行天井面材群と、その左右いずれか一方もしくは双方における二列以上の後行天井面材群により構成される形態(すなわち三列以上の天井面材群により構成される)などがある。
【0011】
また、固定手段としては、雄型スナップボタンと、雄型スナップボタンに勘合される雌型スナップボタンからなる形態や、雄型スナップボタンと、雄型スナップボタンに勘合される中継スナップボタンと、中継スナップボタンに勘合される雌型スナップボタンからなる形態、リベット孔とリベットからなる形態、螺子孔と螺子からなる形態、垂れ片と、垂れ片の下端において側方に張り出す張り出し片とにより形成され、張り出し片の上に天井面材を差し込んで取り付ける、差し込み材からなる形態などがある。
【0012】
また、野縁に天井面材取り付け具がスライド自在に取り付けられ、天井面材取り付け具の下方に上記する各種形態の固定手段が取り付けられている形態であってもよい。この天井面材取り付け具は、断面形状が上方に開いた略コの字状を有し、底片に貫通孔を備えていて、天井下地材にスライド自在に係止される、係止材と、底片の上方から貫通孔に遊嵌される遊嵌体と、遊嵌体の上方にあって底片の上面に載置される載置片とを備える、取り付け材とを有し、遊嵌体の底面において天井面材が取り付けられる固定手段が設けられている。
【0013】
ここで、この天井面材取り付け具において、貫通孔の断面寸法に比べて遊嵌体の断面寸法を小さく設定しておくのが好ましい。係止材の底片にある貫通孔に対して、取り付け材の遊嵌体が遊びを有した状態で遊嵌していることにより、例えば、野縁が施工誤差を有した状態で設置されている場合であっても、係止材に対して取り付け材を上記遊びの範囲でスライドさせることにより、取り付け材の有する固定手段に対して天井面材を容易に取り付けることが可能になる。例えば、野縁を一度組み付けてしまうと、仮に野縁が施工誤差を有した態様で取り付けられている場合に、この施工誤差を有する野縁に対して、天状面材を取り付けるためには、野縁の取り付け位置を変更する施工を行った後に、あらためて野縁に対して天井面材を取り付けることが必要となり、調整に手間と時間を要する。しかしながら、貫通孔の断面寸法に比べて遊嵌体の断面寸法が小さく設定されていることにより、往々にして施工誤差を有した状態で設置され得る野縁に対して、野縁の取り付け位置を変更することなく、固定手段に対して天井面材を容易に取り付けることができる。
【0014】
さらに、天井面材取り付け具において、底片の上面には座ぐり溝が設けられ、座ぐり溝の中央には貫通孔が設けられ、取り付け材のうち、載置片が座ぐり溝に収容され、遊嵌体が貫通孔に遊嵌するように構成されているのがより好ましい。この形態によれば、取り付け材の載置片が座ぐり溝に収容されることにより、係止材の底片の上面のうち、座ぐり溝の周囲の領域を天井下地材の底面に当接させることができ、従って、野縁に対して天井面材取り付け具を安定的に固定することができる。
【0015】
また、天井面材取り付け具を介して野縁に取り付けられる天井面材は、例えば軽量で薄厚の板材により形成されている。
【0016】
また、本発明による建物天井の施工方法の他の態様は、
第二の方向に延設する複数の野縁が、第一の方向に間隔を置いて配設されている天井下地に対して、複数の前記野縁に亘る幅を有していて平面視矩形の天井面材が取り付けられている、建物天井の施工方法であって、
前記天井面材は、前記第一の方向に延設する対向する一対の第一端辺と、前記第二の方向に延設する対向する一対の第二端辺とを備え、二つの該第一端辺にはいずれも少なくとも一つの切り欠きが備えてあり、
複数の前記天井面材の端部同士を重ね合わせながら、複数の該天井面材を前記第二の方向に並べて前記野縁に固定することにより、一列目の先行天井面材群を施工するA工程と、
前記先行天井面材群の側方に二列目以降の後行天井面材群を施工するB工程と、を有し、
前記A工程と前記B工程では、
前記先行天井面材群と前記後行天井面材群の双方において、最初に前記野縁に取り付けられる第一天井面材を、少なくとも二つの前記切り欠きを介して固定手段により該野縁に固定し、
二つ目以降に前記野縁に取り付けられる第二天井面材は、該第二天井面材の備える一方の前記切り欠きを、先行して前記野縁に固定されている前記第一天井面材もしくは前記第二天井面材の上方において前記固定手段に差し込み、該第二天井面材の備える他方の前記切り欠きを介して別途の前記固定手段にて前記野縁に固定することを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、平面視矩形の天井面材の有する一対の第一端辺がいずれも切り欠きを備え、最初に野縁に取り付けられる第一天井面材を、二つの切り欠きを介して固定手段により野縁に固定し、二つ目以降に野縁に取り付けられる第二天井面材は、一方の切り欠きを先行して野縁に固定されている第一天井面材もしくは第二天井面材の上方において固定手段に差し込んだ後、第二天井面材の備える他方の切り欠きを介して別途の固定手段にて野縁に固定するようにして一列目の先行天井面材群と二列目以降の後行天井面材群を施工するものである。この施工方法によっても、固定手段にて二つの天井面材が重ね合わされて野縁に固定されている箇所においては、先行して固定されている一方の天井面材がその自重にて下方に位置する固定手段側に落ち込んで支持され、後施工にて差し込まれた他方の天井面材が同様に自重にて落ち込んで一方の天井面材の上方に重ね合されることになる。そのため、簡単な施工方法にて、隣接する天井面材の端部同士を隙間なく重ね合わせながら建物天井を施工することができる。
【0018】
また、本態様の施工方法では、天井面材が切り欠きのみを有することから、天井面材の製作性が良好になる。
【0019】
また、本発明による建物天井の施工方法の他の態様において、
前記天井面材は、一つの前記切り欠きを一方の前記第一端辺の中央に備え、七つの前記孔を、四つの隅角部と、他方の前記第一端辺の中央と、二つの前記第二端辺の中央とに備え、該天井面材は三本の前記野縁に亘る幅を有しており、
前記B工程では、
隣接する前記先行天井面材群と前記後行天井面材群の備える前記天井面材の第二端辺同士、もしくは、隣接する前記後行天井面材群の備える前記天井面材の第二端辺同士を重ね合わせ、対応する前記孔を位置合わせして連通孔を形成し、該連通孔を介して前記固定手段にて前記野縁に固定することを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、平面視矩形の天井面材が、一方の第一端辺の中央にのみ切り欠きを備え、他方の第一端辺と一対の第二端辺の中央、さらに四つの隅角部の計七箇所に孔を備え、各天井面材が一対の第二端辺に沿う二本の野縁と一対の第一端辺の中央を通る一本の野縁の計三本の野縁に固定されるとともに、隣接する天井面材群の備える各天井面材の第二端辺同士を重ね合わせ、対応する孔が位置合わせされてできる連通孔を介して固定手段にて野縁に固定することにより、各天井面材をより安定的に野縁に固定することができる。ここで、「第一端辺の中央や第二端辺の中央」には、第一端辺の中央の近傍や第二端辺の中央の近傍も含まれる。
【0021】
また、本発明による建物天井の施工方法の他の態様において、
前記天井面材は、八つの前記切り欠きを、二つの前記第一端辺の中央と、二つの前記第二端辺の中央と、四つの隅角部とに備え、該天井面材は三本の前記野縁に亘る幅を有しており、
前記B工程では、
隣接する前記先行天井面材群と前記後行天井面材群の備える前記天井面材の第二端辺同士、もしくは、隣接する前記後行天井面材群の備える前記天井面材の第二端辺同士を重ね合わせ、対応する前記切り欠きを位置合わせして連通切り欠きを形成し、該連通切り欠きを介して前記固定手段にて前記野縁に固定することを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、平面視矩形の天井面材が、一対の第一端辺の中央と一対の第二端辺の中央、さらに四つの隅角部の計八箇所に切り欠きを備え、各天井面材が一対の第二端辺に沿う二本の野縁と一対の第一端辺の中央を通る一本の野縁の計三本の野縁に固定されるとともに、隣接する天井面材群の備える各天井面材の第二端辺同士を重ね合わせ、対応する切り欠きが位置合わせされてできる連通切り欠きを介して固定手段にて野縁に固定することにより、各天井面材をより安定的に野縁に固定することができる。
【0023】
また、本発明による建物天井の施工方法の他の態様において、
前記B工程では、
隣接する前記先行天井面材群と前記後行天井面材群の備える前記天井面材の第一端辺、もしくは、隣接する前記後行天井面材群の備える前記天井面材の第一端辺を、前記第二の方向において相互にずらして前記野縁に固定することを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、隣接する天井面材群のうち、一方の天井面材群を構成する二つの天井面材の隅角部同士と、他方の天井面材群を構成する一つの天井面材の第二端辺の中央の、計三箇所を共通の固定手段により固定することができる。仮に、隣接する天井面材群の備える天井面材の第一端辺をずらさない場合、四つの天井面材の隅角部、すなわち四箇所を共通の固定手段により固定することとなり、四枚の天井面材が重なることで固定箇所の厚みが厚くなるが、本態様のように三枚の天井面材の重なりで済むことから、固定箇所の厚みが厚くなり過ぎることを解消できる。
【0025】
また、本発明による建物天井の一態様は、
第二の方向に延設する複数の野縁が、第一の方向に間隔を置いて配設されている天井下地に対して、複数の前記野縁に亘る幅を有していて平面視矩形の天井面材が取り付けられている、建物天井であって、
前記天井面材は、前記第一の方向に延設する対向する一対の第一端辺と、前記第二の方向に延設する対向する一対の第二端辺とを備え、該一対の第一端辺のうち、一方の該第一端辺に少なくとも一つの切り欠きを備え、他方の該第一端辺の近傍に少なくとも一つの孔を備えており、
複数の前記天井面材の端部同士が重ね合わされ、複数の該天井面材が前記第二の方向に並べられて前記野縁に固定されることにより、一列目の先行天井面材群が形成され、
前記先行天井面材群の側方に二列目以降の後行天井面材群が形成されており、
前記先行天井面材群と前記後行天井面材群の双方において、最初に前記野縁に取り付けられている第一天井面材は、前記切り欠きと前記孔を介して固定手段により該野縁に固定されており、
二つ目以降に前記野縁に取り付けられている第二天井面材は、該第二天井面材の備える前記切り欠きが、先行して前記野縁に固定されている前記第一天井面材もしくは前記第二天井面材の上方において前記固定手段に差し込まれ、該第二天井面材の備える前記孔を介して別途の前記固定手段にて前記野縁に固定されていることを特徴とする。
【0026】
本態様によれば、面視矩形の天井面材の有する一対の第一端辺がそれぞれ切り欠きと孔を備え、最初に野縁に取り付けられる第一天井面材を、切り欠きと孔を介して固定手段により野縁に固定され、二つ目以降に野縁に取り付けられる第二天井面材は、その切り欠きを先行して野縁に固定されている第一天井面材もしくは第二天井面材の上方において固定手段に差し込まれた後、第二天井面材の備える孔を介して別途の固定手段にて野縁に固定されて一列目の先行天井面材群と二列目以降の後行天井面材群が形成されている。そのため、固定手段にて二つの天井面材が重ね合わされて野縁に固定されている箇所においては、先行して固定されている一方の天井面材がその自重にて下方に位置する固定手段側に落ち込んで支持され、後施工にて差し込まれた他方の天井面材が同様に自重にて落ち込んで一方の天井面材の上方に重ね合されていることから、隣接する天井面材の端部同士が隙間なく重ね合わされた建物天井が形成されている。
【0027】
尚、本態様においても、天井面材は、一つの切り欠きを一方の第一端辺の中央に備え、七つの孔を、四つの隅角部と、他方の第一端辺の中央と、二つの第二端辺の中央とに備え、天井面材が三本の野縁に亘る幅を有していて、隣接する先行天井面材群と後行天井面材群の備える天井面材の第二端辺同士、もしくは、隣接する後行天井面材群の備える天井面材の第二端辺同士が重ね合わされ、対応する孔が位置合わせされて連通孔が形成され、連通孔を介して固定手段にて野縁に固定されていることにより、各天井面材がより安定的に野縁に固定されることから好ましい。
【0028】
また、本発明による建物天井の他の態様は、
第二の方向に延設する複数の野縁が、第一の方向に間隔を置いて配設されている天井下地に対して、複数の前記野縁に亘る幅を有していて平面視矩形の天井面材が取り付けられている、建物天井であって、
前記天井面材は、前記第一の方向に延設する対向する一対の第一端辺と、前記第二の方向に延設する対向する一対の第二端辺とを備え、二つの該第一端辺にはいずれも少なくとも一つの切り欠きが備えてあり、
複数の前記天井面材の端部同士が重ね合わされ、複数の該天井面材が前記第二の方向に並べられて前記野縁に固定されることにより、一列目の先行天井面材群が形成され、
前記先行天井面材群の側方に二列目以降の後行天井面材群が形成されており、
前記先行天井面材群と前記後行天井面材群の双方において、最初に前記野縁に取り付けられている第一天井面材は、少なくとも二つの前記切り欠きを介して固定手段により該野縁に固定されており、
二つ目以降に前記野縁に取り付けられている第二天井面材は、該第二天井面材の備える一方の前記切り欠きが、先行して前記野縁に固定されている前記第一天井面材もしくは前記第二天井面材の上方において前記固定手段に差し込まれ、該第二天井面材の備える他方の前記切り欠きを介して別途の前記固定手段にて前記野縁に固定されていることを特徴とする。
【0029】
本態様によれば、平面視矩形の天井面材の有する一対の第一端辺がいずれも切り欠きを備え、最初に野縁に取り付けられる第一天井面材が、二つの切り欠きを介して固定手段により野縁に固定され、二つ目以降に野縁に取り付けられる第二天井面材は、一方の切り欠きを先行して野縁に固定されている第一天井面材もしくは第二天井面材の上方において固定手段に差し込まれた後、第二天井面材の備える他方の切り欠きを介して別途の固定手段にて野縁に固定されて一列目の先行天井面材群と二列目以降の後行天井面材群が形成されている。そのため、固定手段にて二つの天井面材が重ね合わされて野縁に固定されている箇所においては、先行して固定されている一方の天井面材がその自重にて下方に位置する固定手段側に落ち込んで支持され、後施工にて差し込まれた他方の天井面材も同様に自重にて落ち込んで一方の天井面材の上方に重ね合されていることから、隣接する天井面材の端部同士が隙間なく重ね合わされた建物天井が形成されている。
【発明の効果】
【0030】
以上の説明から理解できるように、本発明の建物天井とその施工方法によれば、隣接する天井面材間に隙間が無い建物天井と、この建物天井を誰でも簡単に施工できる建物天井の施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】実施形態に係る建物天井の施工方法において適用される天井面材取り付け具の一例を構成する係止材を、斜め下方から見た斜視図である。
図2】天井面材取り付け具の一例を構成する係止材を、斜め上方から見た斜視図である。
図3】天井面材取り付け具の一例を構成する取り付け材及び固定手段を、斜め下方から見た斜視図である。
図4】天井面材取り付け具の一例を、斜め下方から見た斜視図である。
図5】天井面材取り付け具の一例を、斜め上方から見た斜視図である。
図6図5のVI-VI矢視図であって、天井面材取り付け具の一例の縦断面図である。
図7】実施形態に係る建物天井の施工方法の一例を示す工程図である。
図8】(a)、(b)はいずれも、天井面材の一例の平面図である。
図9図7に続いて、建物天井の施工方法の一例を示す工程図である。
図10図9に続いて、建物天井の施工方法の一例を示す工程図である。
図11図10に続いて、建物天井の施工方法の一例を示す工程図である。
図12図11に続いて、建物天井の施工方法の一例を示す工程図である。
図13図12に続いて、建物天井の施工方法の一例を示す工程図である。
図14図13に続いて、建物天井の施工方法の一例を示す工程図である。
図15図14に続いて、建物天井の施工方法の一例を示す工程図であって、かつ、実施形態に係る建物天井の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、実施形態に係る建物天井とその施工方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0033】
[実施形態]
<天井面材取り付け具>
はじめに、図1乃至図5を参照して、実施形態に係る建物天井の施工方法において適用される天井面材取り付け具の一例について説明する。ここで、図1は、実施形態に係る建物天井の施工方法において適用される天井面材取り付け具の一例を構成する係止材を、斜め下方から見た斜視図であり、図2は、天井面材取り付け具の一例を構成する係止材を、斜め上方から見た斜視図である。また、図3は、天井面材取り付け具の一例を構成する取り付け材及び固定手段を、斜め下方から見た斜視図である。また、図4は、天井面材取り付け具の一例を、斜め下方から見た斜視図であり、図5は、天井面材取り付け具の一例を、斜め上方から見た斜視図であり、図6は、図5のVI-VI矢視図であって、天井面材取り付け具の一例の縦断面図である。
【0034】
図1及び図2に示すように、天井面材取り付け具を構成する係止材10Aは、二つの垂れ片11と、双方の垂れ片11を繋ぐ底片12とを有する断面形状が上方に開いた略コの字状を呈しており、双方の垂れ片11の上端はコの字の内側に折り曲げられて係止爪13を形成している。尚、図示例の係止爪13は、垂れ片11に対して上方に傾斜した態様で折り曲げられているが、垂れ片11に対して垂直に折り曲げられている形態であってもよい。
【0035】
係止材10Aは、軽量鉄骨の溝形鋼を用いて、その端部を折り曲げ加工して係止爪13を形成してもよいし、軽量鉄骨の平鋼を折り曲げ加工してコの字状の断面及び係止爪13を形成してもよい。また、係止材10Aは、硬質の樹脂を成形することにより形成してもよい。
【0036】
係止材10Aの底片12の中央には、平面視円形の貫通孔15が設けられており、底片12の上面14には平面視円形の座ぐり溝16が設けられ、座ぐり溝16の中央に貫通孔15が位置している。
【0037】
一方、図3に示す取り付け材10Bは、係止材10Aの底片12の上方から貫通孔に遊嵌される平面視円形の遊嵌体18と、遊嵌体18の上方にあって底片12の上面14に載置される平面視円形の載置片17とを備える。より詳細には、載置片17は、係止材10Aの底片12のうち、座ぐり溝16に収容され、載置片17が座ぐり溝16に収容された状態において、底片12の上面14と載置片17の上面が面一となるように設定されている。取り付け材10Bは、平鋼や、硬質の樹脂を成形することにより形成される。
【0038】
遊嵌体18の底面には、天井部材が取り付けられる固定手段21が固定されている。
【0039】
ここで、図3に示す固定手段21はスナップボタンからなる形態であり、より具体的には、雄型スナップボタン22と、雌型スナップボタン23とを有する。雄型スナップボタン22は雄部22aを備え、雌型スナップボタン23は雄部22aに対してX1方向に勘合する雌部23aを備える。
【0040】
雄型スナップボタンと22と雌型スナップボタン23は、鋼やアルミニウム等の金属、硬質の樹脂などにより形成される。尚、図3では、雄型スナップボタン22と雌型スナップボタン23が取り付けられていない状態として示している。
【0041】
遊嵌体18の底面の例えば中央位置に、雄型スナップボタン22の底部(雄部22aと反対側の端部)が、嵌合や溶接、接着等により固定される。
【0042】
尚、図示を省略するが、他の固定手段としては、雄型スナップボタン22と、雌型スナップボタン23に加えて、中継スナップボタンを有する形態であってもよい。中継スナップボタンは雌部と雄部を備え、雄型スナップボタン22の雄部22aに対して中継スナップボタンの雌部が勘合し、中継スナップボタンの雄部に対して雌型スナップボタン23の雌部23aが勘合するものである。
【0043】
また、図示を省略するが、図3に示す形態と異なり、遊嵌体18の底面に雌型スナップボタンの底部が固定され、雌型スナップボタンに対して雄型スナップボタンが勘合する形態であってもよい。また、同様に図示を省略するが、図1及び図2に示す係止材10Aの底片12が貫通孔15を具備しないフラットな面を有し、その下面に雄型スナップボタン22が直接固定されている形態であってもよい。
【0044】
図示する天井面材取り付け具20は、天井下地材である野縁に対して係止材10Aがスライド自在に係止された状態において、固定手段21を備える取り付け材10Bを取り付けることにより形成することができる。
【0045】
図4乃至図6は、固定手段21を備える取り付け材10Bと、係止材10Aとにより構成される天井面材取り付け具20を示している。
【0046】
図4及び図5に示すように、貫通孔15の断面寸法(もしくは平面寸法)に比べて遊嵌体18の断面寸法(もしくは平面寸法)が小さく設定され(図示例では、直径長さで2t小さい)、同様に、座ぐり溝16の断面寸法に比べて載置片17の断面寸法が小さく設定されている(図示例では、直径長さで2t小さい)。
【0047】
従って、この寸法差(遊び)の範囲内において、係止材10Aに対して取り付け材10Bを360度方向にスライド可能となっている。
【0048】
また、図6に示すように、雄型スナップボタン22の雄部22aに対して雌型スナップボタン23の雌部23aを勘合させて固定手段21を形成した状態において、雄型スナップボタン22と雌型スナップボタン23の間には、僅かな隙間Gが形成される。以下で詳説するように、実施形態に係る建物天井の施工方法では、この隙間Gに隣接する一方の天井面材の端部の切り欠きを差し込み、さらに他方の天井面材の端部の切り欠きを差し込むことにより、隣接する天井面材の端部同士を隙間無く重ね合わせながら、固定手段21により固定するものである。
【0049】
[建物天井の施工方法と建物天井]
次に、図7乃至図15を参照して、実施形態に係る建物天井の施工方法と、この施工方法により施工される建物天井について説明する。ここで、図7図9乃至図15は順に、実施形態に係る建物天井の施工方法の一例を示す工程図であり、図15はさらに実施形態に係る建物天井の一例を示す図である。また、図8(a)、(b)はいずれも、天井面材の一例の平面図である。尚、図示する建物天井の施工方法では、図8(b)に示す天井面材40Aを適用する施工方法として説明するが、図8(a)に示す天井面材40を適用する施工方法であってもよい。
【0050】
まず、図7に示すように、天井下地材30は、野縁31と野縁受け32、ハンガー33、及び吊ボルト34により構成される。不図示の天井梁やデッキプレート、コンクリートスラブ等から吊ボルト34を垂下し、吊ボルト34にハンガー33を螺子止めし、このハンガー33に野縁受け32を支持させる。尚、図7では、図面を見易くするために、野縁受け32を支持するハンガー33と吊りボルト31の一部のみを示している。
【0051】
野縁受け32は第一の方向に延設しており、複数の野縁受け32(図7では、二つの野縁受け32のみ図示)が、第一の方向に直交する第二の方向に対して所定の間隔を置いて配設されている。ここで、第一の方向とは、例えば平面視矩形の建物の対向する一組の壁と壁を結ぶ方向であり、第二の方向とは、建物の対向する他の一組の壁と壁を結ぶ方向である。
【0052】
野縁受け32に対して、第二の方向に延びる野縁31が、第一の方向に所定の間隔を置いて配設され、支持されている。図7においては、五本の野縁31A~31Eが図示されている。ここで、野縁受け32と野縁31は断面コの字状の金具により形成されている。また、野縁受け32に対して、野縁31は、ビスやクリップ等により支持されている。図7において、天井下地材30の上方が天井空間側となり、天井下地材30の下方が室内空間側となる。
【0053】
図7に示すように天井下地材30を施工した後、係止材10Aの二つの垂れ片11の上部を側方に開いて上方の開口を広げ、開口を介して係止材10Aの内部に野縁31を通し、側方に開いた垂れ片11を元に戻すことにより、二つの係止爪13が野縁31の左右上端に係止されて、係止材10Aが野縁31に対してY1方向にスライド自在に取り付けられる。この際、係止材10Aの底片12に開設されている座ぐり溝16と貫通孔15にはそれぞれ、取り付け材10Bの載置片17と遊嵌体18が遊びを有した状態で遊嵌しており、遊嵌体18の底面には、固定手段21を形成する雄型スナップボタン22のみが固定され、雌型スナップボタン23は取り外しておく。尚、天井下地材30を施工した後に係止材10Aを野縁31に取り付ける方法の他にも、野縁31に対して所定数の係止材10Aを予め取り付けておいた状態で天井下地材30を施工してもよい。
【0054】
図7では、隣接する三本の野縁31において、取り付けられる天井面材の固定箇所に対応する位置に係止材10A及び取り付け材10Bが取り付けられている。一例として、野縁31A~31Cにおいて、一点鎖線で示す領域A1が最初に取り付けられる天井面材に相当する領域であり、天井面材の八箇所の固定箇所において、八組の係止材10A及び取り付け材10Bを配設する。また、実施形態に係る建物天井の施工方法では、隣接する天井面材の端部同士を重ね合わせ、共通の固定手段21にて固定することから、図示するように、一点鎖線で示す領域A1と領域A2がラップしている。尚、野縁31A~31Cにおいては、天井の寸法に応じて、野縁31A~31Cに対してさらに不図示の天井面材が相互に重ね合わされることにより、列状の天井面材群を形成する。
【0055】
そして、野縁31Cを共通にしながら、野縁31C~31Eにおいても、一点鎖線で示す領域A3と領域A4に天井面材が取り付けられ、別途の列状の天井面材群を形成する。
【0056】
図7からも明らかなように、列状の天井面材群は、その構成要素である複数の天井面材がそれらの端部同士を相互に重ね合わせながら形成され、隣接する別途の列状の天井面材群も、同様に複数の天井面材がそれらの端部同士を相互に重ね合わせながら形成される。さらに、隣接する列状の天井面材群同士も、それらの端部同士が相互に重ね合わされることにより、建物天井が形成される。
【0057】
次に、天井面材取り付け具20を介して野縁31に取り付けられる天井面材について説明する。まず、図8(a)に示す天井面材40は、一対の第一端辺41,42と一対の第二端辺43,44を有する平面視矩形を呈し、軽量で薄厚の板材により形成されている。具体的には、野原ホールディングス株式会社製の超軽量天井材:CARLTON(カールトン)や、株式会社エービーシー商会社製の超軽量天井材:かるてんなどを適用できる。ここで、「薄厚」とは、例えば厚みが1mm乃至数mmの範囲のことである。
【0058】
天井面材40は、一方の第一端辺41の中央位置に切り欠き48を備え、他の第一端辺42と一対の第二端辺43,44の各中央位置、及び四つの隅角部45には計七つの孔49を備えている。
【0059】
図8(a)に示す天井面材40を用いて建物天井を施工する場合は、例えば領域A1(図7参照)において、中央の野縁31Bの上方に位置する雄型スナップボタン22に雌型スナップボタン23を嵌合して固定手段21を形成しておく。次に、固定手段21の隙間G(図6参照)に切り欠き48を差し込むとともに、七つの孔49を領域A1における対応する雄型スナップボタン22に通す。最後に、野縁31Bの下方に位置する雄型スナップボタン22に雌型スナップボタン23を嵌合して固定手段21を形成することにより、二つの固定手段21にて領域A1において天井面材40を固定することができる。以後、領域A2(図7参照)において、別途の天井面材40の端部を領域A1における天井面材40の端部と重ね合わせ、同様の方法で領域A2においても固定することができる。
【0060】
一方、図8(b)に示す天井面材40Aは、原則的には天井面材40と同様の構成であるが、孔49を具備せず、八箇所全てに切り欠き48,48Aを備えている点において天井面材40と相違する。
【0061】
第一端辺41,42と第二端辺43,44の各中央位置にある切り欠き48は半トラック状の平面形状を呈しているが、隅角部45にある切り欠き48Aは1/4円状の平面形状を呈している。尚、天井面材40は、図7に示すように、三本の野縁31に取り付けられることから、第一端辺41,42に二つの孔49と一つの切り欠き48を備えているが、天井面材40が例えば四本の野縁31に取り付けられる場合は、第一端辺41,42に二つの孔49と二つの切り欠き48を備えている天井面材となり、取り付けられる野縁31の数に応じた孔49と切り欠き48の数が設定される。このことは、天井面材40Aについても同様であり、天井面材40Aが例えば四本の野縁31に取り付けられる場合は、第一端辺41,42に切り欠き48、48Aを二つずつ備えている天井面材となる。また、天井面材40は第二端辺43,44に三つの孔49を備え、天井面材40Aは第二端辺43,44に二つの切り欠き48Aと一つの切り欠き48を備えているが、天井面材40,40Aの第二の方向の長さが長くなる場合は、野縁31に取り付けられている天井面材40,40Aが撓まない間隔で、四つ以上の孔49や、二つの切り欠き48Aと二つ以上の切り欠き48を備えているのがよい。以下の説明では、この天井面材40Aを適用した場合の建物天井の施工方法について説明する。
【0062】
図9に示すように、野縁31Bにおいて領域A1の上方に位置する雄型スナップボタン22に雌型スナップボタン23をY2方向に嵌合することにより、固定手段21を形成する。
【0063】
次に、図10に示すように、第一端辺41の中央にある切り欠き48を固定手段21の隙間Gに差し込むようにして、天井面材40A(第一天井面材40Aa)をY3方向にスライドさせていく。この際、第一天井面材40Aaを適当に変形させることにより、他の切り欠き48,48Aを対応する雄型スナップボタン22に嵌め込み、各雄部22aを下方に露出させる。ここでは、図示を省略するが、作業員が第一天井面材40Aaを下方から野縁31側へ押さえている。
【0064】
図7に示す天井下地材30の施工において、例えば、野縁31の取り付けの際に施工誤差がある場合に、図10に示すように、各取り付け材10Bの備える雄型スナップボタン22に対して第一天井面材40Aaの切り欠き48,48Aを差し込ませようとした際に、野縁31の施工誤差に起因して、雄型スナップボタン22に対して切り欠き48,48Aを挿通できない事態が生じ得る。
【0065】
しかしながら、図示する施工方法では、係止材10Aに対して取り付け材10Bが遊びを有した状態で取り付けられ、図10に示すように360度方向であるZ方向に取り付け材10Bがスライド自在であることにより、この遊びの範囲で取り付け材10Bをスライドさせ、雄型スナップボタン22に対して切り欠き48,48Aを挿通させることが可能になる。
【0066】
次に、図11に示すように、第一端辺42の中央にある切り欠き48が差し込まれている雄型スナップボタン22に雌型スナップボタン23をY4方向に嵌合することにより、固定手段21を形成し、二つの固定手段21により第一天井面材40Aaを固定する。この固定状態において、他の切り欠き48,48Aが差し込まれている雄型スナップボタン22の雄部22aは、下方に露出した状態である。
【0067】
次に、図12に示すように、第一天井面材40Aaを固定している下方の固定手段21の隙間Gに対して、第二天井面材40Abを、その第一端辺41の中央にある切り欠き48を差し込むようにしてY5方向にスライドさせていく。この際、隙間Gにおいては、先行して固定されている第一天井面材40Aaはその自重にて下方に位置する雌型スナップボタン23側に落ち込んで支持され、後施工にて差し込まれた第二天井面材40Abが同様に自重にて落ち込んで第一天井面材40Aaの上方に重ね合されることになる。図12において、後施工にて差し込まれた第二天井面材40Abの第一端辺41を一点鎖線で示している。
【0068】
後施工にて差し込まれた第二天井面材40Abにおいても、適当に変形させることにより、他の切り欠き48,48Aを対応する雄型スナップボタン22に嵌め込み、各雄部22aを下方に露出させる。
【0069】
そして、図13に示すように、後施工された第二天井面材40Abの第一端辺42の中央にある切り欠き48が差し込まれている雄型スナップボタン22に雌型スナップボタン23をY6方向に嵌合することにより、固定手段21を形成し、二つの固定手段21により第二天井面材40Abを固定する。
【0070】
このように、三本の野縁31A~31Cにおいて、複数の天井面材40Aをそれらの端部同士を相互にラップさせながら順次固定していくことにより、一列目の先行天井面材群50Aを施工する(A工程)。尚、図13においては、二つの天井面材40Aのみを示しているが、第二の方向において野縁31A~31Cの両端部に亘って複数の天井面材40Aが取り付けられ、先行天井面材群50Aが形成される。
【0071】
次に、図14に示すように、隣接する三本の野縁31C~31Eにおいて、同様の方法により、複数の天井面材40Aをそれらの端部同士を相互にラップさせながら順次固定していくことにより、二列目の後行天井面材群50Bを施工する。そして、三列目以降の後行天井面材群も同様の方法により施工する。尚、図14においては、先行天井面材群50Aの右側に一列の後行天井面材群50Bが図示されているのみであるが、複数列の後行天井面材群50Bが施工されてよく、さらに、先行天井面材群50Aの左側にも単数列もしくは複数列の後行天井面材群50Bが施工されてよい(以上、B工程)。
【0072】
ここで、後行天井面材群50Bは、先行天井面材群50Aに対して第二の方向に天井面材40Aの半分の長さだけずらした態様で施工されている。このように後行天井面材群50Bをずらして施工することにより、先行天井面材群50Aを構成する二枚の天井面材40Aの重ね合せ箇所に対して、後行天井面材群50Bを構成する一枚の天井面材40Aのみを重ね合わせるのみでよく、この格点Pにおける隙間Gには、三枚の天井面材40Aが重ね合されることになる。
【0073】
仮に、隣接する先行天井面材群50Aと後行天井面材群50Bの備える各天井面材40Aの第一端辺41をずらさない場合、四つの天井面材40Aの隅角部、すなわち四箇所を共通の固定手段21の隙間Gに差し込むことになる。このように四枚の天井面材40Aが重なることで固定箇所の厚みが厚くなり、隙間Gに四枚の天井面材40Aが差し込みできなくなる恐れがあり、また、四枚の天井面材40Aが重なることで見栄えが悪くなる恐れがある。図示例のように先行天井面材群50Aと後行天井面材群50Bの備える各天井面材40Aの第一端辺41を相互にずらして施工することにより、これらの課題が解消される。尤も、先行天井面材群50Aと後行天井面材群50Bの備える各天井面材40Aの第一端辺41を図示例のようにずらすことなく、施工してもよい。
【0074】
次に、図15に示すように、格点Pにおける雄型スナップボタン22に雌型スナップボタン23をY7方向に嵌合して固定手段21を形成し、先行天井面材群50Aと後行天井面材群50Bの重ね合せ箇所も固定手段21にて固定することにより、建物天井60を施工する。
【0075】
図15からも明らかなように、建物天井60では、隣接する天井面材40Aの縁部同士が重ね合わされていることから、突合せの場合のように天井面材間に隙間が生じることはない。特に、図示する施工方法により、固定手段21にて二つの天井面材40Aが重ね合わされて野縁31に固定されている箇所においては、先行して固定されている一方の天井面材40Aがその自重にて下方に位置する雌型スナップボタン23側に落ち込んで支持され、後施工にて差し込まれた他方の天井面材40Aが同様に自重にて落ち込んで一方の天井面材40Aの上方に重ね合されることになる。そのため、簡単な施工方法にて、隣接する天井面材40Aの端部同士を隙間なく重ね合わせながら建物天井60を施工することができる。
【0076】
また、天井面材40Aが軽量で薄厚の板材により形成されていることから、天井面材40Aの設置が容易になり、かつ、建物架構に対する天井面材40Aの重量の影響を抑制することができる。
【0077】
また、天井面材40Aが薄厚であることから、隣接する天井面材40Aの端部同士の重ね合わせ箇所における段差が目立たなくなり、すっきりとした重ね合わせラインを形成できる。
【0078】
また、天井面材40Aが板材により形成されていることから、天井面材40Aがある程度の剛性を有しており、従って天井面材40A同士の重ね合わせ箇所をスナップボタンにて留め付ける際に、良好な留め付け性が担保される。
【0079】
図示する建物天井60は、仮設建物と本設建物のいずれに適用されてもよい。仮設建物としては、屋外イベントのための仮設アリーナや、震災後において早急な施工を要する仮設住宅、仮設の宿泊施設等が挙げられる。また、本設建物としては、商業施設やレジャー施設といった大型店舗、工場、オフィスビル(のシステム天井)、医療・福祉施設、官公庁舎、ホテルや宿泊施設、教育施設等が挙げられる。
【0080】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、また、本発明はここで示した構成に何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0081】
10A:係止材
10B:取り付け材
11:垂れ片
12:底片
13:係止爪
14:上面(底片の上面)
15:貫通孔
16:座ぐり溝
17:載置片
18:遊嵌体
20:天井面材取り付け具
21:固定手段(スナップボタン)
22:雄型スナップボタン
22a:雄部
23:雌型スナップボタン
23a:雌部
30:天井下地材
31,31A~31E:野縁(天井下地材)
32:野縁受け(天井下地材)
33:ハンガー(天井下地材)
34:吊りボルト(天井下地材)
40,40A:天井面材
40Aa:第一天井面材
40Ab:第二天井面材
41,42:第一端辺
43,44:第二端辺
45:隅角部
48,48A:切り欠き
49:孔
50A:先行天井面材群
50B:後行天井面材群
60:建物天井
P:格点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15