(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】スピンマニピュレータ
(51)【国際特許分類】
H01J 37/04 20060101AFI20240104BHJP
H01J 37/16 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
H01J37/04 Z
H01J37/16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020013212
(22)【出願日】2020-01-30
【審査請求日】2022-08-30
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】516363916
【氏名又は名称】エム・ベー・サイエンティフィック・アクチボラゲット
【氏名又は名称原語表記】MB SCIENTIFIC AB
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・バルツァー
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ディビッド・キング
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-004342(JP,A)
【文献】特開2005-191011(JP,A)
【文献】特開平11-204077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子分光法で使用されるスピンマニピュレータであって、
8個の極、または、個数が8よりも大きい4の倍数個の極を含む多極アセンブリを含み、前記多極アセンブリは、μメタルから作られた内極素子(22)と、前記内極素子(22)に磁束を供給するための外極素子(26)とを含み、前記スピンマニピュレータはさらに、
真空容器(24)を含み、前記内極素子(22)は前記真空容器(24)の内側に設けられ、前記内極素子(22)は電場の生成のために電圧源に接続可能であり、前記外極素子(26)は前記真空容器の周囲に沿って前記真空容器(24)の外側に設けられ、前記外極素子(26)は前記内極素子(22)に磁束を提供するために異なる電流源に接続可能であり、
前記スピンマニピュレータは、
前記内極素子(22)が、前記内極素子の幅の約2分の1以
下の厚さを有する、実質的に平坦で矩形の構造であることと、
前記真空容器(24)の各端にはエンドプレート(34a、34b)が設けられ、前記エンドプレートは、μメタルから作られており、前記真空容器(24)から絶縁されるように、かつ、絶縁体手段(40)が前記内極素子(22)とエンドプレート(34a、34b)との間に介在する状態で前記内極素子(22)に当接するように配置されることとを特徴とする、スピンマニピュレータ。
【請求項2】
前記内極素子(22)は、各エンドプレート(34a、34b)に対して前記真空容器(24)の長手方向に力を及ぼすように設けられたクランプ部品(36)からのクランプ作用によって適所に保たれる、請求項1に記載のスピンマニピュレータ。
【請求項3】
前記外極素子(26)は、スタックを形成する複数のプレート部材(32;32a、32b)から構成される、請求項1または2に記載のスピンマニピュレータ。
【請求項4】
前記スタックを形成する前記複数のプレート部材(32;32a、32b)は、10個を上回り700個を下回る素子を含
む、請求項3に記載のスピンマニピュレータ。
【請求項5】
前記外極素子はヨーク(30)によって相互接続され、前記ヨーク(30)は前記プレート部材(32;32a、32b)と一体化され、このため、前記ヨーク(30)も複数の素子から構成される、請求項3または4に記載のスピンマニピュレータ。
【請求項6】
クランプ部品(36)は、レンズ系の剛性部材(38)にボルト(44)によって固定される、請求項1から5のいずれか1項に記載のスピンマニピュレータ。
【請求項7】
前記エンドプレート(34a、34b)は、前記スピンマニピュレータを通る電子の通過のための中心通路をプレートのアセンブリに形成する中心穴(38)を有する、請求項1から6のいずれか1項に記載のスピンマニピュレータ。
【請求項8】
前記真空容器は管状または筒状に形作られ、すなわち、円形の断面を有する、請求項1から7のいずれか1項に記載のスピンマニピュレータ。
【請求項9】
前記エンドプレート(34a、34b)は、前記真空容器(24)の内側にぴったり嵌まる絶縁プレート(46)に取付けられ、すなわち、前記絶縁プレート(46)は、前記真空容器(24)の内径に対応する外径を有し、前記絶縁プレート(46)には円周方向リム(47)が設けられ、それにより、前記エンドプレート(34a、34b)は、前記円周方向リム(47)によって囲まれた前記絶縁プレート(46)にぴったり嵌まるような外径を有する、請求項1から8のいずれか1項に記載のスピンマニピュレータ。
【請求項10】
前記エンドプレート(34a、34b)には、レンズ素子を支持するための支持部材(48)が設けられる、請求項1から9のいずれか1項に記載のスピンマニピュレータ。
【請求項11】
前記内極素子(22)が、前記内極素子の幅の約3分の1以下の厚さを有する、請求項1~10のいずれか1項に記載のスピンマニピュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子分光法で使用されるスピンマニピュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
電子分光法では、研究中の試料から放出された電子のスピンを操作できることが望ましいときがある。
【0003】
スピン回転器は公知であり、典型的なスピン回転器はドゥーデン(Duden)およびバウアー(Bauer)によって導入された。彼らは、光軸からのスピン偏極の極角θを制御するために、電磁場を使用する90°偏向器を使用した。純粋な電場では、電子は偏向されるが、スピン方向は影響を受けない。その結果、電子軌道と平行である、入ってくる電子のスピン偏極は、90°偏向後、軌道に対して垂直偏極に切換わる(θ=90°)。これに対して、純粋な磁場では、初期の長手方向の偏極(longitudinal polarization)は、90°偏向後でも保存される(θ=0°)。なぜなら、ラーモア歳差運動が、ビーム偏向と同時に極のスピン回転をもたらすためである。そして、電場と磁場との適切な組合せが、偏極の極角θを操作することができる。後続の円形磁気レンズが、光軸を中心とする方位角回転φを提供する。したがって、このタイプのスピン回転器における3次元スピン回転のために、2個の装置が必要とされる。
【0004】
直交場装置(クロスフィールド装置)も同様に、電場と磁場の双方を使用する。磁場によって生じるビーム偏向は、電場によって生じるビーム偏向によって相殺されるため、電子ビームは直交場装置を通ってまっすぐ進む。スピン回転は、磁場のみによって誘導される。したがって、直交場装置は、電場と平行な平面における偏極の極角の操作も可能にする。
【0005】
しばしばウィーン(Wien)フィルターと呼ばれる従来の直交場装置は、一対の電極と、直交した一対の磁極とからなり、よって、偏極の極回転平面は固定される。極回転は、直交場装置に対する水平面内で起こる。しかしながら、多極直交場装置では、各電極は同時に磁極として機能する。
【0006】
US9,466,454(ヤスエ等)として特許を取得した先行技術の8極直交場装置の一例が
図1に示されており、ここでは極はパーマロイから作られなければならない。各極に電圧Vnを印加して電場を生成し、コイル電流Inによって磁場を励起することができる。x軸に沿った電場とy軸に沿った直交磁場とが必要とされる場合、電圧Vn=Vcosαnと電流In=Isinαnとが各極に印加され、ここで、αnは、x軸から測定された極の角度である。8極直交場装置については、α1=22.5°、およびαn - αn-1 = 45°(n≧2)である。この場合、スピン偏極の極回転がzx平面で起こる。有効場長がLである直交場装置を、スピン偏極された電子が通過する場合、極回転角θはθ=eLB mvとして表わされ、ここで、Bは磁気誘導、vは電子の速度、eは電気素量(elemental charge)、mは電子質量である。
【0007】
直交場装置を通過する電子のまっすぐな軌道を確実にするウィーン条件はE=vBとして書かれ、ここで、Eは電場である。そして、θはθ=eLE mv2=LE 2Kになり、ここで、Kは電子の運動エネルギーである。電場は、極への印加電圧に比例する。このため、極回転角はVによって管理され得る。ウィーン条件を通して、IはVに関連する。θとVとの関係、およびVとIとの関係がいったん定められると、θのみが設定パラメータとして必要とされ、VおよびIは対応する値に自動的に設定され得る。
【0008】
電圧Vn=Vcos(αn-φ)と電流In=Isin(αn-φ)とが各極に印加されると、電場はx軸からφだけ回転し、磁場はy軸からφだけ回転する。そして、スピン偏極の極回転が、zx平面に対してφだけ回転された平面で起こる。すなわち、多極直交場装置を使用すると、極回転θに加えて方位角回転φを与えることができる。ここでの重要な問題は、θおよびφが互いに独立して管理され得るということである。3次元スピン操作のために、補助装置はもはや必要ではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
本発明者は、先行技術の装置の上述の欠点を排除する新規のスピンマニピュレータを考案した。
【0010】
この新規の装置は、添付された請求項1で規定される。
すなわち、8個の極、または、個数が8よりも大きい4の倍数個の極を含む多極アセンブリを含む、電子分光法で使用されるスピンマニピュレータが提供される。多極アセンブリは、電場を生成するための、μメタルから作られた内極素子と、磁束を生成するための外極とを含む。好適には管状または筒状に形作られ、すなわち、円形の断面を有する、真空容器があり、その内側に内極素子が設けられる。内極は電場の生成のために電圧源に接続可能である。外極は真空容器の周囲に沿って真空容器の外側に設けられ、好ましくはヨークによって接続され、外極は内極素子に磁束を供給するために複数の電流源に結合される。
【0011】
内極素子は、極の幅の約2分の1以下、好ましくは幅の3分の1以下、および幅の6分の1以上の厚さを有する、実質的に平坦で矩形の構造である。
【0012】
真空容器の各端にはエンドプレートが設けられ、前記エンドプレートは、μメタルから作られており、真空容器から絶縁されるように、かつ、絶縁体手段が内極とエンドプレートとの間に介在する状態で内極素子に当接するように配置される。エンドプレートは、内極素子のほぼ平均電位を帯びる。
【0013】
好ましい実施形態は、従属請求項で規定される。
このため、内極の新規の設計により、スピンマニピュレータを通る中心通路は、装置の外径に比べてはるかに大きい径を有して作られ得るため、数ミリメートル程度の直径を有するビームのみを可能にする先行技術と比較して、数センチメートル程度の電子ビームのサイズを可能にする。言い換えれば、装置は、維持されたかまたはさらには拡大された中心通路を有して、先行技術の装置よりもはるかに小さく作られ得る。これはそして、試料のはるかにより大きい表面積の研究を可能にする。また、エンドプレートを含む設計は、電子の移動方向における同様の形状の電場および磁場の形成にとって必須であり、それは、スピンマニピュレータを通過した後の電子ビームのずれを回避することを可能にする。
【0014】
さらに、好ましい一実施形態では、外部構造全体を構成する積層プレートの形をした外極の設計により、新規の装置は、磁場および電場の方向を、先行技術よりも数桁速い、はるかにより速い速度で切換えることを可能にする。これを説明するより正確な方法は、この発明は、出ていくスピンベクトルを定義する回転行列の要素が速やかに変更されることを可能にする、と言うことである。物理的に、これは、場が速やかに変化するように、極に高速で電圧を印加し、電流を供給することに対応しており、それにより、スピン方向の変化も高速で生じる。
【0015】
図面の簡単な説明
以下に与えられる詳細な説明および添付図面は、例示のためにのみ与えられ、よって、本発明に対する限定であると考えられるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】新規のスピンマニピュレータの部分切欠斜視図である。
【
図4】分解された
図3の装置の外部構造を示す図である。
【
図6a】
図5aと同様の構造を異なる断面で示す図である。
【
図6b】
図5bと同様の構造を異なる断面で示す図である。
【
図8a】外極のためのコイルの構造を示す図である。
【
図9】コイルがどのように取付けられるかを部分切欠斜視図で示す図である。
【
図10】スピンマニピュレータの取付けを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
好ましい実施形態の詳細な説明
この特許出願のために、実質的に平坦であるという用語は、内極に関する場合、若干湾曲した表面を有する構造を包含するものとし、曲率半径は、装置の真空容器内の内極の構成に対応する、すなわち外接する円の直径の半分以上である。
【0018】
図1は、US9,466,454に開示されたような、スピン回転のために使用される先行技術の8極直交場装置を示す。
【0019】
それは、内極1と、外極3と、真空容器2を構成する非磁性管とを含む。この種の装置は超高真空で使用されるため、磁場を生成するためのコイル5を真空容器2の外側に配置することが必要である。このため、真空容器2は、内極1と外極3との間に介在する。
【0020】
また、それぞれの内極1が互いから電気的に絶縁されるように、それぞれの内極1と管状の真空容器2との間に絶縁体を設けることも必要である。
【0021】
図1に示す装置は、磁場および電場の方向の切換えが遅いという、背景の節で上述された欠点を抱えており、また、それは重くて扱いが厄介である。
【0022】
図2は、概して20で表わされた、多極アセンブリ、特に新規のスピンマニピュレータの8極実施形態を、部分切欠斜視図で示す。それは、先行技術の装置と同じ全体的構成を有し、このため、μメタルから作られた8個の内極22(または、個数が、12、16、24などといった、8よりも大きい4の倍数である電極)を含む。μメタルとは、非常に高い透磁率と低い残留磁気とを有する軟強磁性ニッケル鉄合金であり、それはすなわち、静的磁場または低周波磁場に対して影響されやすい電子機器を遮蔽するために使用される。1つの典型的な配合は、約77%のニッケル、16%の鉄、5%の銅、および2%のクロムまたはモリブデンである。80:20(%)のNi:Feなど、多くの他の可能な配合がある。
【0023】
装置はさらに、複数の内極素子22を収容する、好ましくは管形状の真空容器24と、真空容器24の外側に位置する8個の外極素子26と、複数のコイル28とを含み、各コイルは各外極素子の周りに配置される。内極素子および外極素子の個数は同じである。
図2にはコイル28が1個だけ概略的に示され、矢印が指すところに位置しているが、もちろん、各極26にコイル28が設けられる。コイル構造は
図8により詳細に示されており、以下にさらに説明されるであろう。
【0024】
コイルは構造の長手方向に延在しており、好ましい一実施形態では、好適には直径d=0.5mmを有する銅線を含む。好適には、好ましい一実施形態では、各極26の周りには線が80回巻かれている。しかしながら、線径およびコイルの個数は電流システムに適合させるべきであり、このため、ある制限内で変わり得る。このため、銅線は0.01mm~2mm、コイルの個数は1~1000個であってもよい。
【0025】
各コイルは好ましくは個々の電流源に接続可能であるが、いくつかの実施形態では、それらは対となって1個の電流源に接続可能であり、それにより、直径方向に対向するコイル同士が同じ電流源を共有する。
【0026】
外極素子26は好ましくは、ヨーク30によって、すなわち、すべての外極素子26を共通電位に相互接続する構造の部品によって相互接続される。図示された実施形態では、外極素子26はヨーク構造30と一体化されており、すなわち、外極素子とヨークとは同じ材料から作られる。
【0027】
外部構造全体、すなわち、外極素子26およびヨーク30は好ましくは、複数の薄いプレート素子32から構成され、それらの各々は好ましくは、厚さが約1mmであり、スタック33に配置される。プレートは、たとえば、プレート上のコーティングという形をした、または別個の絶縁シート材料としての薄い絶縁体材料を各プレート間に設けることによって、互いから電気的に絶縁される。
図2の実施形態では、各々厚さが1mmの70個のプレート素子32が、外部構造を形成する。プレート素子32の実際の個数は10~700個の間にあってもよく、プレート素子の厚さは0.1mm~5mmで変わり得る。プレート素子32のスタックを設ける理由は、渦電流を回避するためである。渦電流は、先行技術の装置のような巨大部品において必然的に生じ、上述のスピンの切換えの遅い速度の原因となる。
【0028】
各プレート素子32は好ましくは、
図3および
図4に示すような、第1の部品32aおよび第2の部品32bという2個の部品を順に含む。
図3では、2個の部品32a、32bは組立てられた状態で示され、
図4では、それらは分離されて示される。好適には、それぞれの部品32a、32bは、プレート素子32の半分を構成する。この2つの半分への細分化の理由は、スピンマニピュレータの内部部材を真空容器内に取付けることを可能にするために、外極素子26とヨーク30とを含む外部包囲構造を分解可能でなければならないということである。
【0029】
図5および
図6に示すように、μメタルから作られ、内極素子22のアセンブリの各端に設けられた、一対のエンドプレート34a、34bもある。
【0030】
エンドプレート34a、34b(
図5には1個だけ示される)は、
図10を参照してさらに説明される分光計に固定された係止部材からの押圧作用によって、真空容器2の内側で内極22のパッケージをまとめて保持する。プレートは、装置を通る電子の通過のための中心通路をプレートのアセンブリに形成する中心穴38を有する。この中心通路の直径は、先行技術の装置における対応する通路よりもはるかに大きい。これは、試料上のより広い表面の研究を可能にする。
【0031】
図5aには、1個のエンドプレートが正面図で示され、
図5bには、
図5aの、中心から若干ずれた断面が示される。
【0032】
エンドプレートは必須機能を有する。すなわち、電場および磁場は内極22の長さに沿って均質であるが、内極22の端縁22e(
図5b)では、フリンジング場が、縁を越える短距離間でゼロまで減衰するであろう。端縁22eの区域では、フリンジング場の機能は、電場と磁場とで異なるであろう。この影響を排除するために何も設けられなければ、光軸に沿って電子ビームを通過させることはできない。しかしながら、μメタルから作られたエンドプレートを設けることによって、フリンジング場同士は、同一ではないにせよ、少なくとも非常に同様になるであろう。これは、電子ビームが光軸からずれることなく光軸に沿ってスピンマニピュレータを通過する、すなわち、電気光学的観点から見てシステムは中性になる、すなわち、スピンのみが影響を受ける、という効果を有する。
【0033】
エンドプレート34a、34bからの極素子22の絶縁を提供するために、内極素子22とエンドプレート34a、34bとの間には、好適には円筒状に形作られたセラミック素子40が設けられる(
図5b参照)。セラミック素子40は、極素子22に設けられた凹部22a、およびエンドプレート34a、34bに設けられた凹部42aに載置される。凹部22a、およびエンドプレート34aの凹部42aのみが示される。もちろん、第2のエンドプレート34bにも、対応する凹部がある。図示された絶縁はもちろん単なる例示であり、絶縁を提供するためのいずれの手段もこの発明の範囲内にある。
【0034】
図6は
図5と同様の図を示すが、断面は中心を通っている。
このため、
図6bは、エンドプレート34aの中心を通る断面図である。内極素子22への電気的接続を提供するために、各内極素子22は、その各端に穿孔36aを有する(孔は1個だけ見える)。電圧供給のための穿孔36a、36bにおける接触線のはんだ付けを可能にするために穿孔36a、36bへのアクセスを得るように、相手側の孔37a、37bが、各エンドプレート34a、34bに設けられる。
【0035】
図7は、内極素子22の8極構成を示す。ここでも、セラミック素子40は、各内極素子22における凹部
22aに載置されて示される。
【0036】
図8aには、コイル28の構造が概略的に示され、
図8bには、コイル28の断面が示される状態で、プレート32a、32bのスタック33が正面図で示される。
【0037】
コイル28は、電気モータ用のコイルのように、従来の態様で作られる。このため、コイルが取付けられる外極素子のサイズおよびジオメトリに対応して、型板が作られる。次に、極素子上で滑動可能な剛性部材を提供するように、銅線が型板に巻き付けられ、結合剤を含浸される。
【0038】
図9は、外極素子26およびヨーク30を形成するプレート32aのスタック33の半分と、コイル28がどのように極素子26上に取付けられるかとを、部分切欠斜視図で示す。
【0039】
図10は、エンドプレート34a(1個だけ示される)が取付けられる方法と、それらが真空容器の内側で内極素子22を適所に保つ方法とを示す概略図である。エンドプレートと内極素子との間に適切な絶縁を提供するには、ボルトの使用を差し控えることが望ましい。なぜなら、該当するタイプの装置を組立てるプロセスにおいてボルトを電気的に絶縁することは、非常に難しいためである。
【0040】
代わりに、本実施形態では、クランプ手段が使用される。これは、1個のエンドプレート34aのみが示され、取付けの一部のみが示される、部分断面図である
図10に概略的に示される。
【0041】
このため、
図5~7に関連してすでに前述されたように、内極素子22とエンドプレート34a、34bとの間のスペーサ部材として設けられたセラミック素子の形態の絶縁部品40がある(ここでは、明確にするために、セラミック素子40は2個だけ示される)。エンドプレート34aは真空容器24の壁に接触してはならず、この目的に向けて、真空容器24の内側にぴったり嵌まる絶縁プレート46が設けられる。すなわち、それは、真空容器24の内径に対応する外径を有する。この絶縁プレート46には、円周方向リム47が設けられる。エンドプレート34aは、それが円周方向リム47によって囲まれた絶縁プレート46にぴったり嵌まるような外径を有しており、そのため、エンドプレート
34aは真空容器24から絶縁されるであろう。
【0042】
アセンブリを適所に保つために、装置全体の長手方向にエンドプレート34aを押圧するために配置されたクランプ部品36がある。このクランプ部品は、剛性部材38に、好適には分光計の真空チャンバの真空フランジ形成部に、ボルト44によって固定される。それにより、クランプ部品36は、内極素子22を適所に保つように、真空容器24の長手方向にクランプ力を加える。同様の構成が、真空容器24の他方の端に設けられる(図示せず)。このため、内極素子22は、複雑な絶縁を要求するボルトを使用する必要なく、エンドプレート間(1個のエンドプレート34aだけが示される)で効率的にクランプされる。
【0043】
エンドプレート34a、34bには、好適には、レンズ素子のための支持部材48が設けられる。この支持部材48は好適には、電気的接続を提供するために、銅で作られ、エンドプレートにはんだ付けされる。支持部材は好適には、(
図10に残影線(ghost line)で示された)レンズ素子の端部がぴったり嵌まる円筒状部品として設けられる。
【0044】
新規の装置と上述の先行技術の装置との間の注目すべき違いは、内極素子22のサイズが先行技術の装置の内極1よりも著しく小さいことである。
【0045】
この技術分野では、このタイプの装置の(内)極素子は比較的大きくなければならないということが、一般に信じられてきた。しかしながら、本発明者は、これがあてはまらないことに気付いた。実際、内極素子のサイズを質量に関して10分の1に減少させることができ、特に、極素子は、先行技術の態様の径方向延在部を有すべきではない。
【0046】
代わりに、極素子は好適には、好ましい実施形態では矩形形状を有する、実質的に平坦な構造である。特に好ましい一実施形態では、内極22は、長さが100mm、幅が12mm、厚さが3mmである。これらの寸法はもちろん、使用用途に依存するが、ほとんどの電子分光計にとって、これらの示された寸法は好適である。
【0047】
このため、好適には、内極素子22は、極素子の幅の約2分の1以下、好ましくは幅の3分の1以下、および幅の6分の1以上の厚さを有する、実質的に平坦で矩形の構造である。
【0048】
スピンマニピュレータは、以下の態様で動作する。
電荷を提供するように、電圧が内極素子22に印加され、それにより、電場が生成される。電流を供給することによって、外極素子26上のコイルが励磁され、好適にはコイルごとに別個の電流源が使用されて、正確な制御を可能にする。ただし、上述のように、対向するコイルが対となって励磁され得る。これは磁束を提供し、それは、内極素子22間に磁場を誘導するであろう。電場および磁場の形状は、内極素子22に沿って均質になるであろう。しかしながら、マニピュレータはコンパクトであり、限られた長さを有するため、措置が全く取られなければ、フリンジング場が問題になるであろう。したがって、非常に同様の形状を有する内極の両端におけるフリンジング場を提供するために、内極素子22のアセンブリの両端に、μメタル(すなわち内極の材料と同じ)から作られたエンドプレート34が提供される。これらのエンドプレートは、電場と磁場との違いを等しくする。