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  • 特許-蓄熱材の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】蓄熱材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/06 20060101AFI20240104BHJP
   F28D 20/02 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
C09K5/06 J
C09K5/06 L
F28D20/02 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020017359
(22)【出願日】2020-02-04
(65)【公開番号】P2021123638
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】楢原 理沙
【審査官】林 建二
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-054918(JP,A)
【文献】特開2009-120734(JP,A)
【文献】特開平09-316436(JP,A)
【文献】特開平09-253656(JP,A)
【文献】国際公開第2018/066130(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/066131(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/066605(WO,A1)
【文献】特開2000-109787(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105131302(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 5/00-5/20
F28D 17/00-21/00
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤、ゲル化剤、およびゲル化補助剤を含む蓄熱材組成物を調製する調製工程と、当該調製工程にて得られた蓄熱材組成物を容器に充填する充填工程とを有し、
上記主剤は、テトラデカンおよびラウリン酸メチルからなる群から選択される少なくとも1つであり、
上記ゲル化剤は、2-エチルヘキサン酸アルミニウムであり、
上記ゲル化補助剤は、ステアリン酸、オレイン酸、デカノール、ラウリルアルコール、およびミリスチルアルコールからなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記蓄熱材組成物における前記ゲル化剤の含有量は、前記蓄熱材組成物100重量%中、0.5重量%~20重量%であり、
前記蓄熱材組成物における前記ゲル化補助剤の量は、前記ゲル化補助剤がステアリン酸またはオレイン酸の場合は、前記ゲル化剤の量の1/2~1/3倍量であり、前記ゲル化補助剤がデカノール、ラウリルアルコールまたはミリスチルアルコールの場合は、前記ゲル化剤の量の1~6倍量であり、
上記調製工程および上記充填工程では、上記蓄熱材組成物を、上記主剤の凝固開始温度以上、15.0℃以下に維持する、蓄熱材の製造方法。
【請求項2】
上記充填工程における上記蓄熱材組成物の、上記容器に充填される直前の粘度は、100mPa・s未満である、請求項1に記載の蓄熱材の製造方法。
【請求項3】
上記調製工程の後、2.0時間以上経過した後に、上記充填工程を行う、請求項1または2に記載の蓄熱材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品および食品等の物品のなかには、その品質を保持するため、輸送時に所定の温度範囲内に保冷または保温される必要があるものがある。
【0003】
従来、このような物品を保冷または保温する方法として、断熱性を有する輸送容器内に、予め融解または凝固させた蓄熱材を配置し、この蓄熱材の潜熱を利用して、輸送容器内に収容した物品を保冷または保温する方法が知られている。保冷または保温の対象となる物品を、所定の温度範囲内に長時間維持するためには、所定の温度範囲内に融解温度および/または凝固温度を有し、且つ、大きな潜熱量を持つ蓄熱材を用いることが好ましい。
【0004】
医薬品および食品等の物品の多くは、2℃~8℃の温度管理下で輸送する必要があり、現在、このような温度管理を可能にする蓄熱材の開発が進められている。
【0005】
蓄熱材の形態として、容器内に主剤が充填された形態が挙げられる。このとき、主剤が可燃性の物質(例えば、消防法上の危険物第4類第3石油類に分類されるテトラデカンなど)である場合、当該主剤をゲル化させて、非危険物化する必要がある。それ故に、現在、主剤である液状油脂類をゲル化するためのゲル化剤(例えば、特許文献1~2)や、液状の主剤を固定化(固形化)した蓄熱材が開発されている(例えば、特許文献3~4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-316436号公報
【文献】特開2000-109787号公報
【文献】特開2009-120734号公報
【文献】特開2014-122320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のとおり、液状の主剤を固形化した蓄熱材が開発されているが、このような蓄熱材の製造過程において、さらなる改善の余地があった。
【0008】
本発明の一態様は、ゲル化した蓄熱材組成物を効率よく製造する新たな技術を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の主剤と、特定のゲル化剤と、特定のゲル化補助剤とを含む蓄熱材組成物は、主剤の凝固開始温度以上、15.0℃以下の環境下においてゲル化の促進を抑制できることを見出し、ゲル化した蓄熱材組成物を製造するにあたり、液状の主剤のゲル化の促進を抑制した状態で蓄熱材組成物を容器に充填し、充填後に容器内で蓄熱材組成物をゲル化させることによって蓄熱材を作製する本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明の一実施形態は、以下の構成を含むものである。
【0011】
〔1〕主剤、ゲル化剤、およびゲル化補助剤を含む蓄熱材組成物を調製する調製工程と、当該調製工程にて得られた蓄熱材組成物を容器に充填する充填工程とを有し、上記主剤は、テトラデカン、ペンタデカン、およびラウリン酸メチルからなる群から選択される少なくとも1つであり、上記ゲル化剤は、2-エチルヘキサン酸アルミニウムであり、上記ゲル化補助剤は、脂肪酸化合物、および高級アルコールからなる群から選択される少なくとも1つであり、上記調製工程および上記充填工程では、上記蓄熱材組成物を、上記主剤の凝固開始温度以上、15.0℃以下に維持する、蓄熱材の製造方法。
【0012】
〔2〕上記充填工程における上記蓄熱材組成物の粘度は、100mPa・s未満である、〔1〕に記載の蓄熱材の製造方法。
【0013】
〔3〕上記調製工程の後、2.0時間以上経過した後に、上記充填工程を行う、〔1〕または〔2〕に記載の蓄熱材の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、ゲル化した蓄熱材組成物を効率よく製造することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例において、蓄熱材組成物の粘度の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0017】
〔1.本発明の一実施形態の技術的思想〕
本発明者は、本発明の一実施形態に係る蓄熱材の開発にあたって、2つの方法を試みた。まず、本発明者は、主剤、ゲル化剤、およびゲル化補助剤を混合して主剤をゲル化させた後、当該主剤を容器に充填する方法を行った。しかしながら、当該方法では、(i)ゲル化した主剤が、容器への充填の際に多くの空気を含み、当該主剤の容器への充填が困難になる、および、(ii)充填装置内に残存したゲル化した主剤の洗浄に時間を要する、という問題が生じることがわかった。
【0018】
そこで、本発明者は、主剤、ゲル化剤、およびゲル化補助剤を別々に容器に充填することによって、容器内で主剤をゲル化させる方法を試みた。しかしながら、当該方法では、(iii)容器内での3つの成分の濃度が均一とならず、主剤のゲル化が不完全になる、という問題が生じることがわかった。
【0019】
そこで、本発明者は、上述した(i)~(iii)の課題を解決すべく、さらに検討を重ねた結果、特定の主剤と、特定のゲル化剤と、特定のゲル化補助剤とを含む蓄熱材組成物は、主剤の凝固開始温度以上、15.0℃以下の環境下においてゲル化に要する時間を延長することができることを見出した。当該新規知見に基づき、主剤、ゲル化剤、およびゲル化補助剤を含む蓄熱材組成物を調製した後、当該蓄熱材組成物のゲル化を遅らせながら、液体状の蓄熱材組成物を容器に充填し、容器内で蓄熱材組成物をゲル化させることによって、固形化した蓄熱材を効率よく製造可能な本発明を完成させた。以下、本発明の一実施形態について詳説する。
【0020】
〔2.蓄熱材の製造方法〕
本発明の一実施形態に係る蓄熱材の製造方法は、主剤、ゲル化剤、およびゲル化補助剤を含む蓄熱材組成物を調製する調製工程と、当該調製工程にて得られた蓄熱材組成物を容器に充填する充填工程とを有し、主剤は、テトラデカン、ペンタデカン、およびラウリン酸メチルからなる群から選択される少なくとも1つであり、ゲル化剤は、2-エチルヘキサン酸アルミニウムであり、ゲル化補助剤は、脂肪酸化合物、および高級アルコールからなる群から選択される少なくとも1つであり、調製工程および充填工程では、蓄熱材組成物を、主剤の凝固開始温度以上、15.0℃以下に維持する。
【0021】
上述した蓄熱材組成物は、特定の材料を含み、かつ、各材料が、調製工程にて均一に混合され得る。当該構成であれば、(i)容器内で蓄熱材組成物を均一にゲル化させること、ができる。
【0022】
上述した蓄熱材組成物は、主剤の凝固開始温度以上、15.0℃以下の環境下であれば、ゲル化に要する時間を延長することができる。例えば、当該蓄熱材組成物は、2.0時間以上もの間、液体状であり得る。当該構成であれば、(ii)長い作業時間を確保しながら、蓄熱材組成物を容器に充填することができる。長い作業時間を確保できれば、例えば、調製工程と充填工程との間に所望の別工程を行うこと、および/または、時間をかけながら大きな容器に多量の蓄熱材組成物を充填すること、ができる。
【0023】
上述した蓄熱材組成物は、液体状にて容器に充填され得る。当該構成であれば、(iii)蓄熱材組成物の容器への充填を容易に行うこと、(iv)ゲル化した蓄熱材組成物が充填装置内に残存することを防ぐこと、ができる。
【0024】
以下、各工程について説明する。
【0025】
〔2-1.調製工程〕
調製工程は、主剤、ゲル化剤、およびゲル化補助剤を含む蓄熱材組成物を調製する工程である。
【0026】
調製工程では、(1)主剤、ゲル化剤、およびゲル化補助剤を混合時に撹拌して、蓄熱材組成物を調製してもよいし、(2)蓄熱材組成物を調製した後、当該蓄熱材組成物を撹拌してもよいし、(3)上述した(1)および(2)の撹拌の両方を行ってもよい。なお、撹拌する方法は、限定されず、例えば、公知の攪拌機を用いて撹拌すればよい。当該構成によれば、主剤、ゲル化剤、およびゲル化補助剤がより均一に混合された蓄熱材組成物を得ることができる。また、当該構成によれば、撹拌によって、蓄熱材組成物のゲル化に要する時間をより長く延長することができる。
【0027】
上述した(1)~(3)の撹拌の各々では、(i)撹拌処理と非撹拌処理とからなるサイクルを所望の数だけ繰り返し行うことによって、所望の時間、撹拌を行ってもよいし、(ii)撹拌処理のみを行うことによって、所望の時間、撹拌を行ってもよい。
【0028】
調製工程では、蓄熱材組成物を、主剤の凝固開始温度以上、15.0℃以下に維持する。当該温度の上限値は、好ましくは13℃以下、さらに好ましくは10℃以下、最も好ましくは8℃以下である。当該温度の下限値は、好ましくは主剤の凝固開始温度+1℃以上、さらに好ましくは主剤の凝固開始温度+2℃以上、最も好ましくは主剤の凝固開始温度+3℃以上である。当該構成であれば、主剤を凝固させることなく、蓄熱材組成物のゲル化に要する時間をより長く延長することができる。なお、主剤は、テトラデカン、ペンタデカン、およびラウリン酸メチルからなる群から選択される少なくとも1つである。テトラデカンの凝固開始温度は2.0℃であり、ペンタデカンの凝固開始温度は9.0℃であり、ラウリン酸メチルの凝固開始温度は1.4℃である。
【0029】
蓄熱材組成物を上述した温度に維持する方法は、特に限定されない。例えば、冷却装置によって上述した温度範囲に設定された槽の中で、調製工程を行えばよい。
【0030】
以下では、蓄熱材組成物を構成する各成分、および、蓄熱材組成物の物性などについて説明する。
【0031】
〔A.主剤〕
本明細書において「主剤」とは、蓄熱材組成物100重量%中、50重量%以上を占める物質をいう。上記主剤は、テトラデカン、ペンタデカン、およびラウリン酸メチルからなる群から選択される少なくとも1つである。2℃~8℃の温度管理下で物品を輸送するという観点からは、上記主剤は、少なくともテトラデカンまたはラウリン酸メチルを含むことが好ましい。
【0032】
蓄熱材組成物における主剤の含有量は、蓄熱材組成物100重量%中、50重量%以上が好ましく、65重量%以上がより好ましく、80重量%以上がさらに好ましく、90重量%以上であることが特に好ましい。
【0033】
〔B.ゲル化剤〕
上記ゲル化剤は、2-エチルヘキサン酸アルミニウムである。
【0034】
蓄熱材組成物におけるゲル化剤の含有量は、蓄熱材組成物100重量%中、0.5重量%~20重量%が好ましく、1重量%~15重量%がより好ましく、1重量%~10重量%がさらに好ましく、2重量%~6重量%が特に好ましい。
【0035】
〔C.ゲル化補助剤〕
上記ゲル化補助剤は、脂肪酸化合物、および高級アルコールからなる群から選択される少なくとも1つである。脂肪酸化合物としては、脂肪酸、脂肪酸の金属塩、および脂肪酸エステルを挙げることができる。
【0036】
なお、主剤とゲル化補助剤とは異なる物質である。例えば、ラウリン酸メチルは主剤ともなり得るが、脂肪酸エステルであることからゲル化補助剤としても機能し得る。したがい、主剤としてラウリン酸メチルを用いる場合には、ゲル化補助剤として、ラウリン酸メチル以外の脂肪酸化合物を用いることが好ましい。
【0037】
蓄熱材組成物におけるゲル化補助剤の含有量は、蓄熱材組成物100重量%中、0.1重量%~30.0重量%が好ましい。ゲル化補助剤が脂肪酸化合物である場合、蓄熱材組成物におけるゲル化補助剤の含有量は、0.2重量%~5.0重量%が好ましく、0.3重量%~4.0重量%がより好ましく、0.4重量%~3.0重量%が特に好ましい。ゲル化補助剤が高級アルコールである場合、蓄熱材組成物におけるゲル化補助剤の含有量は、1.0重量%~30.0重量%が好ましく、3.0重量%~30.0重量%がより好ましく、5.0重量%~25.0重量%が特に好ましい。
【0038】
ゲル化補助剤の量は、ゲル化補助剤が脂肪酸化合物の場合は、ゲル化剤の量の1/2~1/3倍量であることが好ましい。ゲル化補助剤が高級アルコールの場合は、ゲル化剤の量の1~6倍量であることが好ましい。当該構成であれば、蓄熱材組成物のゲル化を、長い時間遅らせることができるのみならず、容器内で蓄熱材組成物を十分にゲル化させることができる。
【0039】
上記脂肪酸化合物は、特に限定されず、例えば、常温(例えば、25℃)にて固体状の脂肪酸化合物であってもよいが、常温にて液体状の脂肪酸化合物であることが好ましい。
【0040】
上記脂肪酸化合物における脂肪酸は、飽和脂肪酸であってもよいし、不飽和脂肪酸であってもよい。当該脂肪酸化合物を構成する炭素原子の数の下限値は、限定されず、例えば、4個、5個、6個、7個、または8個であり得る。当該脂肪酸化合物を構成する炭素原子の数の上限値は、限定されず、例えば、30個、28個、26個、24個、または22個であり得る。
【0041】
上記脂肪酸の具体例としては、例えば、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、およびベヘン酸、並びに、これらの脂肪酸の混合物を挙げることができる。
【0042】
上記脂肪酸の金属塩の具体例としては、例えば、カプリル酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、およびベヘン酸ナトリウム、並びに、これらの金属塩の混合物を挙げることができる。
【0043】
上記脂肪酸エステルの具体例としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステルを挙げることができる。
【0044】
上記ソルビタン脂肪酸エステルの具体例としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステルとしては、ソルビタンモノカプリレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノミリステート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノベヘネート、ソルビタンジカプリレート、ソルビタンジラウレート、ソルビタンジミリステート、ソルビタンジパルミテート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンジオレエート、ソルビタンジベヘネート、ソルビタントリカプリレート、ソルビタントリラウレート、ソルビタントリミリステート、ソルビタントリパルミテート、ソルビタントリステアレート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリベヘネート、ソルビタンセスキカプリレート、ソルビタンセスキラウレート、ソルビタンセスキミリステート、ソルビタンセスキパルミテート、ソルビタンセスキステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンセスキベヘネート、等が挙げられる。
【0045】
なかでも、ソルビタンに1つの脂肪酸がエステル結合したソルビタンモノ脂肪酸エステル、またはソルビタン2分子に脂肪酸が3分子結合したソルビタンセスキ脂肪酸エステルであることがより好ましい。また、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンセスキオレエートおよびソルビタンモノステアレートからなる群より選択される少なくとも1種であることがさらに好ましく、ソルビタンモノオレエートおよびソルビタンセスキオレエートからなる群より選択される少なくとも1種であることが特に好ましい。
【0046】
また、ソルビタンと脂肪酸とからなるエステル結合を有する限り、ソルビタン脂肪酸エステルは他の構造、例えばポリオキシエチレン(poly(oxyethylene)、POEとも称する。)の構造(構造式;-[OCHCH-(nは、任意の数))、を有していてもよい。ポリオキシエチレンの構造を有するソルビタン脂肪酸エステルを、POEソルビタン脂肪酸エステル、またはPOE(X)ソルビタン脂肪酸エステルと称する場合もある。上記Xは、オキシエチレンの繰り返し単位の数を表し、上記構造式中におけるnの値を表す。
【0047】
POEソルビタン脂肪酸エステルの具体例としては、例えば、POE(20)ソルビタンモノラウレート、POE(6)ソルビタンモノラウレート、POE(20)ソルビタンモノパルミテート、POE(20)ソルビタンモノステアレート、POE(6)ソルビタンモノステアレート、POE(20)ソルビタントリステアレート、POE(20)ソルビタンモノオレエート、POE(6)ソルビタンモノオレエート、POE(20)ソルビタントリオレエート、POE(160)ソルビタントリイソステアレート、POE(20)ソルビタンモノラウレートを挙げることができる。
【0048】
ソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビタンモノ脂肪酸エステルまたはソルビタンセスキ脂肪酸エステルであることが好ましい。ソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンセスキオレエートおよびソルビタンモノステアレートからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。当該構成によると、得られる蓄熱材組成物の凝固開始温度は1℃~10℃となり得る。その結果、1℃~10℃の範囲内であり、かつ所望の管理温度にて温度管理対象物品をより安定的にかつより精度高く温度保持できるという利点を有する。
【0049】
上述したように、上記ゲル化補助剤は、高級アルコールであってもよい。当該高級アルコールとしては、限定されず、例えば、炭素数が10個以上、12個以上、または14個以上の高級アルコールを挙げることができる。このとき、炭素数の上限値は、限定されず、例えば、30個、28個、26個、24個、または22個であり得る。当該高級アルコールの具体例としては、デカノール、ラウリルアルコール、およびミリスチルアルコールを挙げることができる。
【0050】
〔D.他の成分〕
上記蓄熱材組成物は、主剤、ゲル化剤、およびゲル化補助剤以外に、他の成分を含んでもよい。
【0051】
蓄熱材組成物における他の成分の含有量は、蓄熱材組成物に含まれる主剤、ゲル化剤、およびゲル化補助剤の合計量を100重量部としたときに、好ましくは50重量部以下、より好ましくは40重量部以下、より好ましくは30重量部以下、より好ましくは20重量部以下、より好ましくは10重量部以下、最も好ましくは5重量部以下である。
【0052】
上記他の成分の具体例としては、例えば、軽金属および重金属などの金属、軽金属イオンおよび重金属イオンなどの金属イオン、結晶核剤、相分離防止剤、香料、着色剤、抗菌剤、高分子ポリマー、その他の有機化合物、または、その他の無機化合物を挙げることができる。
【0053】
上記軽金属の具体例としては、例えば、アルミニウム、マグネシウム、ベリリウムおよびチタンなどが挙げられる。重金属としては、鉄、鉛、金、白金、銀、銅、クロム、カドミウム、水銀、亜鉛、ヒ素、マンガン、コバルト、ニッケル、モリブデン、タングステン、錫、ビスマス、ウランおよびプルトニウムなどが挙げられる。
【0054】
〔E.蓄熱材組成物の物性〕
上記蓄熱材組成物は、1℃~10℃の範囲内に融解温度を有し得る。本明細書において蓄熱材組成物の「融解温度」とは、「固体状の蓄熱材組成物が融解してゲル化する間に、当該蓄熱材組成物が呈する温度」のことを意図する。例えば、恒温槽内に凝固状態の蓄熱材組成物を設置した後、恒温槽の温度を、低温(例えば-50℃)から一定の昇温速度で温度上昇させた場合、蓄熱材組成物の温度は、次の(1)~(3)の順で変化する:(1)一定速度で上昇する;(2)温度Tにおいて蓄熱材組成物の潜熱によりほとんど変化しなくなり、温度Tから温度Tまで、定温を保持する;(3)温度Tを境に、上昇を再開する。本明細書において、温度Tを「融解開始温度」と称し、温度Tを「融解終了温度」と称する。温度Tと温度Tとの中点の温度Tを、本明細書において「融解温度」と定義する。
【0055】
上記蓄熱材組成物の融解温度は、1℃~10℃であり得、1℃~9℃が好ましく、2℃~8℃がより好ましく、2℃~7℃がさらに好ましく、3℃~5℃が特に好ましい。当該構成によると、温度管理対象物品を所望の管理温度にてより精度高く保温できるという利点を有する。
【0056】
上記蓄熱材組成物の融解開始温度は、特に限定されないが、1℃~10℃が好ましく、1℃~8℃がより好ましく、1℃~6℃がさらに好ましく、2℃~4℃が特に好ましい。当該構成によると、温度管理対象物品を所望の管理温度にてより精度高く温度保持できるという利点を有する。
【0057】
上記蓄熱材組成物の融解終了温度は、特に限定されないが、1℃~10℃が好ましく、2℃~9℃がより好ましく、2℃~7℃がさらに好ましく、3℃~6℃が特に好ましい。当該構成によると、温度管理対象物品を所望の管理温度にてより精度高く温度保持できるという利点を有する。
【0058】
上記蓄熱材組成物の融解開始温度と融解終了温度との差(温度T-温度T)の絶対値は、特に限定されないが、0~10が好ましく、0~8がより好ましく、0~5がより好ましく、0~4がより好ましく、0~3がさらに好ましく、0~2が特に好ましい。当該構成によると、温度管理対象物品を所望の管理温度にてより精度高く温度保持できるという利点を有する。
【0059】
上記蓄熱材組成物は、-2℃~10℃の範囲内に凝固開始温度を有することが好ましい。本明細書において蓄熱材組成物の「凝固開始温度」とは、「ゲル状の蓄熱材組成物が凝固し始めるとき、換言すれば固化し始めるときに、当該蓄熱材組成物が呈する温度」のことを意図する。例えば、恒温槽内に、本発明の一実施形態に係る融解状態の蓄熱材組成物を設置した後、恒温槽の温度を、高温(例えば50℃)から一定の降温速度で温度下降させた場合、蓄熱材組成物の温度は、次の(1)~(3)の順で変化する:(1)温度Tまで一定速度で温度下降する;(2)温度Tから温度Tまでわずかに上昇した後、温度Tにおいて蓄熱材組成物の潜熱によりほとんど変化しなくなり、温度Tから温度Tまで、定温を保持する;(3)温度Tを境に、下降を再開する。本明細書において、温度Tを「凝固開始温度」と称し、温度Tを「凝固終了温度」と称する。また、本明細書において、温度Tを「凝固時最高温度」と称する。
【0060】
上記蓄熱材組成物の凝固開始温度は、-2℃~10℃がより好ましく、-1℃~10℃がより好ましく、0℃~10℃がより好ましく、1℃~10℃がより好ましく、1℃~7℃がさらに好ましく、2℃~5℃が特に好ましい。当該構成によると、温度管理対象物品を所望の管理温度にてより精度高く温度保持できるという利点を有する。
【0061】
上記蓄熱材組成物の凝固終了温度は、特に限定されないが、-5℃~10℃が好ましく、-3℃~8℃がより好ましく、-2℃~7℃がより好ましく、-1℃~7℃がより好ましく、0℃~7℃がより好ましく、1℃~7℃がさらに好ましく、2℃~5℃が特に好ましい。当該構成によると、温度管理対象物品を所望の管理温度にてより精度高く温度保持できるという利点を有する。
【0062】
上記蓄熱材組成物の凝固開始温度と凝固終了温度との差(温度T-温度T)の絶対値は、特に限定されないが、0~10が好ましく、0~8がより好ましく、0~5がより好ましく、0~4がより好ましく、0~3がさらに好ましく、0~2が特に好ましい。当該構成によると、温度管理対象物品を所望の管理温度にてより精度高く温度保持できるという利点を有する。
【0063】
上記蓄熱材組成物において、凝固時最高温度と凝固終了温度との差(温度T-温度T)の絶対値は、特に限定されないが、0~10が好ましく、0~8がより好ましく、0~5がより好ましく、0~4がより好ましく、0~3がさらに好ましく、0~2が特に好ましい。当該構成によると、温度管理対象物品を所望の管理温度にてより精度高く温度保持できるという利点を有する。
【0064】
上記蓄熱材組成物の融解開始温度と凝固開始温度との差(温度T-温度T)の絶対値は、特に限定されないが、0~10が好ましく、0~8がより好ましく、0~5がより好ましく、0~4がより好ましく、0~3がさらに好ましく、0~2が特に好ましい。当該構成によると、温度管理対象物品を所望の管理温度にてより精度高く温度保持できるという利点を有する。
【0065】
〔2-2.充填工程〕
充填工程は、調製工程にて得られた蓄熱材組成物を容器に充填する工程である。
【0066】
充填工程では、蓄熱材組成物を、主剤の凝固開始温度以上、15.0℃以下に維持する。当該温度の上限値は、好ましくは13℃以下、さらに好ましくは10℃以下、最も好ましくは8℃以下である。当該温度の下限値は、好ましくは主剤の凝固開始温度+1℃以上、さらに好ましくは主剤の凝固開始温度+2℃以上、最も好ましくは主剤の凝固開始温度+3℃以上である。当該構成であれば、主剤を凝固させることなく、蓄熱材組成物のゲル化に要する時間をより長く延長することができる。
【0067】
なお、充填工程では、少なくとも容器に充填されるまでの蓄熱材組成物の温度を上述した温度範囲内に維持できればよく、容器に充填された後の蓄熱材組成物の温度は、上述した温度範囲内に維持されてよいし、上述した温度範囲内に維持されなくてもよい。
【0068】
蓄熱材組成物を上述した温度に維持する方法は、特に限定されない。例えば、冷却装置によって上述した温度範囲に設定された槽の中で上述した調製工程を行った後、調製された蓄熱材組成物を、ポンプ(例えば、モーノポンプ)および充填機を用いて容器に充填すればよい。この場合、ポンプおよび/または充填機は、上述した温度範囲に設定されていてもよいし、設定されていなくてもよいが、上述した温度範囲に設定されていることが好ましい。
【0069】
本発明に用いられる蓄熱材組成物は、15.0℃以下においてゲル化に要する時間を延長することができる。それ故に、充填工程における蓄熱材組成物の粘度(例えば、容器に充填される直前(例えば、容器に充填される、30分前、10分前、または1分前)の蓄熱材組成物の粘度)は、好ましくは100mPa・s未満、より好ましくは90mPa・s以下、より好ましくは80mPa・s以下、より好ましくは70mPa・s以下、より好ましくは60mPa・s以下、より好ましくは50mPa・s以下、より好ましくは40mPa・s以下、より好ましくは30mPa・s以下、より好ましくは20mPa・s以下、最も好ましくは10mPa・s以下であり得る。充填工程における蓄熱材組成物の粘度の下限値は、限定されず、例えば、1mPa・s、3mPa・s、または、5mPa・sであり得る。
【0070】
蓄熱材組成物を容器に充填する方法は、限定されず、例えば、公知のポンプ(例えば、モーノポンプ)を用いて蓄熱材組成物を公知の充填機へ供給し、当該充填機から容器へ蓄熱材組成物を充填すればよい。
【0071】
上記容器としては、限定されず、公知の容器を用いることができる。
【0072】
上記容器は、蓄熱材組成物による錆びおよび腐食に起因する、液漏れを防ぐという観点から、主に樹脂(例えば合成樹脂)で形成されたものであることが好ましい。上記樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンおよびポリエステル等が挙げられる。
【0073】
これらの素材は、1種類を単独で使用してもよく、耐熱性およびバリアー性を高めるために、これらの素材の2種類以上を組み合わせて使用することもできる。取り扱い、およびコストの観点から、ナイロンまたはポリ塩化ビニルを用いた容器を用いることが好ましい。
【0074】
上記容器の形状としては、限定されないが、容器を介して蓄熱材組成物と温度管理対象物品またはその周辺の空間との間で効率良く熱交換を行うという観点から、厚みが薄く、且つ表面積を大きく確保できる形状が好ましい。これらの容器に対して、蓄熱材組成物を充填することによって、蓄熱材を形成することができる。
【0075】
上記容器のさらに具体的な例としては、特開2015-78307号公報に開示の容器を挙げることができる。当該文献は、本明細書中において参考文献として援用される。
【0076】
充填工程を行うタイミングは、限定されない。調製工程の後、0.5時間、1時間、または1.5時間経過した後に充填工程を行い得ることは勿論であるが、上記蓄熱材組成物は15.0℃以下においてゲル化に要する時間を延長することができるため、調製工程の後、2.0時間以上、2.5時間以上、3.0時間以上、3.5時間以上、または4.0時間以上経過した後であっても、充填工程を行うことができる。より確実に液体状の充填材組成物を容器に充填するという観点から、調製工程の後、24時間以内に充填工程を行うことが好ましく、15時間以内に充填工程を行うことがより好ましく、10時間以内に充填工程を行うことがより好ましく、5時間以内に充填工程を行うことが最も好ましい。
【実施例
【0077】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0078】
<原料>
実施例および比較例で使用した原料は、以下のとおりである。
【0079】
(主剤)
・テトラデカン(JXTGエネルギー社製、TSパラフィン TS4)
・ラウリン酸メチル(日油社製、ラウリン酸メチル95)
(ゲル化剤)
・2-エチルヘキサン酸アルミニウム(ホープ製薬社製、オクトープアルミA)
(ゲル化補助剤)
・オレイン酸(日油社製、NAA-34)
・ラウリルアルコール(花王社製、カルコール2098)
<蓄熱材組成物の製造-1>
947.5gのテトラデカンを、ウオーターバスおよび氷を用いて、所定の温度(具体的に、7.0~8.5℃、13.5~15.0℃、18.5~20.0℃、23.5~25.0℃、または、30.0~31.5℃)に調整した。
【0080】
当該テトラデカンに、35.0gの2-エチルヘキサン酸アルミニウムを添加し、撹拌した。
【0081】
テトラデカンと2-エチルヘキサン酸アルミニウムとの混合物の温度が、上述した所定の温度であることを確認した後、混合物に更に17.5gのオレイン酸を添加した。
【0082】
オレイン酸を添加してから所定の時間が経過した時点で、上記混合物の一部をサンプルとして採取して、当該サンプルの温度が上述した所定の温度であることを確認した後、当該サンプルの粘度を測定した。粘度を測定した後、蓄熱材組成物を容器に充填した。
【0083】
<蓄熱材組成物の製造-2>
947.5gのラウリン酸メチルを、ウオーターバスおよび氷を用いて、所定の温度(具体的に、13.5~15.0℃)に調整した。
【0084】
当該ラウリン酸メチルに、35.0gの2-エチルヘキサン酸アルミニウムを添加し、撹拌した。
【0085】
テトラデカンと2-エチルヘキサン酸アルミニウムとの混合物の温度が、上述した所定の温度であることを確認した後、混合物に更に17.5gのオレイン酸を添加した。
【0086】
オレイン酸を添加してから所定の時間が経過した時点で、上記混合物の一部をサンプルとして採取して、当該サンプルの温度が上述した所定の温度であることを確認した後、当該サンプルの粘度を測定した。粘度を測定した後、蓄熱材組成物を容器に充填した。
【0087】
<蓄熱材組成物の製造-3>
800.0gのテトラデカンを、ウオーターバスおよび氷を用いて、所定の温度(具体的に、13.5~15.0℃)に調整した。
【0088】
当該テトラデカンに、50.0gの2-エチルヘキサン酸アルミニウムを添加し、撹拌した。
【0089】
テトラデカンと2-エチルヘキサン酸アルミニウムとの混合物の温度が、上述した所定の温度であることを確認した後、混合物に更に120.0gのラウリルアルコールを添加した。
【0090】
ラウリルアルコールを添加してから所定の時間が経過した時点で、上記混合物の一部をサンプルとして採取して、当該サンプルの温度が上述した所定の温度であることを確認した後、当該サンプルの粘度を測定した。粘度を測定した後、蓄熱材組成物を容器に充填した。
【0091】
<粘度の測定>
蓄熱材組成物の粘度は、音叉式粘度測定計(エイ・アンド・デイ社製、音叉振動式レオメータ RV-10000A)を用いて測定した。なお、具体的な測定方法は、当該音叉式粘度測定計に添付のプロトコールにしたがった。なお、蓄熱材組成物の粘度が100mPa・s未満であれば、当該蓄熱材組成物は、液体状であって、容易に容器に充填され得る。
【0092】
<試験結果-1>
温度を変化させた場合の試験結果(上述した<蓄熱材組成物の製造-1>にて調整された蓄熱材組成物の試験結果)を、図1に示す。図1に示すように、温度が7.0~8.5℃、または、13.5~15.0℃の場合には、ゲル化補助剤を添加してから2.0時間が経過しても、蓄熱材組成物は、液体状のままであって、ゲル化しなかった。このことは、当該蓄熱材組成物であれば、十分に作業時間(少なくとも2.0時間の作業時間)を確保した上で、液体状の蓄熱材組成物を容器に充填可能であることを示している。また、当該蓄熱材組成物は、容器に容易に充填できた。
【0093】
一方、図1に示すように、温度が18.5~20.0℃、23.5~25.0℃、または、30.0~31.5℃の場合には、ゲル化補助剤を添加してから2.0時間が経過すると、蓄熱材組成物は、ゲル化した。このことは、当該蓄熱材組成物の場合には、液体状の蓄熱材組成物を容器に充填するための十分な作業時間を確保することが困難であることを示している。また、当該蓄熱材組成物は、容易に容器に充填できなかった、または、容器に充填できなかった。
【0094】
また、以上の試験結果から、蓄熱材組成物の温度を7.0~8.5℃、または、13.5~15.0℃に維持して、液体状の蓄熱材組成物を容器に充填した後、得られた蓄熱材の温度を、例えば、18.5~20.0℃、23.5~25.0℃、または、30.0~31.5℃に上昇させれば、容器内で蓄熱材組成物をゲル化できることが理解できる。
【0095】
<試験結果-2>
(i)上述した<蓄熱材組成物の製造-1>にて、13.5~15.0℃の条件下にて調整された蓄熱材組成物、(ii)上述した<蓄熱材組成物の製造-2>にて調整された蓄熱材組成物、および、(iii)上述した<蓄熱材組成物の製造-3>にて調整された蓄熱材組成物の各々に関して、ゲル化補助剤を添加してから2.0時間が経過したときの粘度を測定し、ゲル化補助剤を添加してから2時間の時点で粘度が100mPa・s未満のものを「○」と評価し、ゲル化補助剤を添加してから2時間の時点で粘度が100mPa・s以上のものを「×」と評価した。以下の表1に試験結果を示す。
【0096】
【表1】
【0097】
表1に示すように、何れの蓄熱材組成物も、ゲル化補助剤を添加してから2.0時間が経過しても液体状のままであってゲル化せず、評価が「○」であった。このことは、当該蓄熱材組成物であれば、十分に作業時間(少なくとも2.0時間の作業時間)を確保した上で、液体状の蓄熱材組成物を容器に充填可能であることを示している。また、当該蓄熱材組成物は、容器に容易に充填できた。また何れの蓄熱材組成物も、ゲル化補助剤を添加してから2.0時間が経過した後、蓄熱材の温度を15.0℃以上に上昇させれば、容器内でゲル化できることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、蓄熱材(例えば、医薬品、医療機器、細胞、検体、臓器、化学物質もしくは食品等の各種物品の保管および輸送に好適な蓄熱材)を製造する分野に広く利用することができる。
図1