(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】給湯システムの水漏れ判定装置
(51)【国際特許分類】
F24H 15/12 20220101AFI20240104BHJP
F24H 1/00 20220101ALI20240104BHJP
F24H 15/215 20220101ALI20240104BHJP
F24H 15/219 20220101ALI20240104BHJP
F24H 15/258 20220101ALI20240104BHJP
F24H 15/395 20220101ALI20240104BHJP
【FI】
F24H15/12
F24H1/00 A
F24H15/215
F24H15/219
F24H15/258
F24H15/395
(21)【出願番号】P 2020051188
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 弘明
(72)【発明者】
【氏名】中島 幸祐
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-199157(JP,A)
【文献】特開2007-170753(JP,A)
【文献】特開2018-036101(JP,A)
【文献】特開2009-222326(JP,A)
【文献】特開2013-245852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00-15/493
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水が流通する給水配管と、前記給水配管から流入した水を加熱して湯として貯留する貯留槽と、前記貯留槽に貯留された湯を流出させる出湯配管と、前記出湯配管に前記給水配管の水を合流させる水量を調整する調整弁とを備えた貯湯器を有する給湯システムの水漏れ判定装置であって、
前記貯湯器の外部で前記給水配管に接続された水道管を流通する水の温度を計測する水道水温計測部と、
前記貯湯器の内部空気の温度を計測する雰囲気温度計測部と、
前記調整弁よりも下流側で前記貯湯器の内部に位置する前記出湯配管を流通する湯の温度を計測する湯温計測部と、
前記給湯システムの水漏れ判定を実行する判定部と、を備え、
前記判定部は、前記貯湯器が出湯停止してから出湯開始するまでの待機状態で前記調整弁が前記給水配管の水を前記出湯配管に流通可能な弁位置にあるとき、前記水道水温計測部の計測値、前記湯温計測部の計測値及び前記雰囲気温度計測部の計測値に基づいて前記水漏れ判定を実行する給湯システムの水漏れ判定装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記湯温計測部の計測値と前記雰囲気温度計測部の計測値との差の絶対値が所定温度以下となれば水漏れが無いと判定する請求項1に記載の給湯システムの水漏れ判定装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記湯温計測部の計測値が、前記雰囲気温度計測部の計測値よりも前記水道水温計測部の計測値に近い値であるとき、水漏れが有ると判定する請求項1又は2に記載の給湯システムの水漏れ判定装置。
【請求項4】
前記出湯配管を流通する湯の流量を計測する流量計測部をさらに備え、
前記判定部は、前記流量計測部の計測値が所定値未満であるときに前記待機状態にあるとして、前記水漏れ判定を実行する請求項1から3のいずれか一項に記載の給湯システムの水漏れ判定装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記流量計測部の計測値が前記所定値以上から前記所定値未満となった出湯停止後、前記湯温計測部の計測値の変化率に基づいて前記水漏れ判定を実行する請求項4に記載の給湯システムの水漏れ判定装置。
【請求項6】
前記判定部による前記水漏れ判定の結果を報知する報知部をさらに備え、
前記報知部は、前記判定部により水漏れが有ると判定されたときに作動するように構成されている請求項1から5のいずれか一項に記載の給湯システムの水漏れ判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯器を有する給湯システムの水漏れ判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、台所や浴室等に設けられた温水消費装置に湯を供給する給湯システムは、給水配管から流入する水を給湯器により加熱して湯を生成する。この給湯システムの一形態として、給湯器の上流側に予め加温した湯を貯留する貯湯器を有する貯湯式給湯システムが知られており、出湯目標温度に基づいて予め加温した湯に水を加えて貯湯器の出湯配管から給湯器に供給し、必要に応じて熱交換器等により加熱して給湯する。この給湯システムにあっては、配管の継ぎ目からの水漏れ、配管の腐食による水漏れ、給湯を制御するバルブの動作不良による水漏れ等が発生することがある。
【0003】
特許文献1には、給湯システムにおける少量の水漏れを判定することができる水漏れ判定装置が開示されている。特許文献1に記載の発明は、通常、給湯が停止した後に給湯が再開されると、給湯器内部の雰囲気温度により温められた給水配管には冷水が供給されて水温が低下するが、水漏れが発生している場合には給水配管中の水の流れが停止していないため、水温の変動量が小さくなる点に着目している。そこで、特許文献1に記載の水漏れ判定装置は、給湯を開始した後、給水配管の水温と給湯器外部の雰囲気温度との温度差が所定温度差以上であり、且つ、給水配管中の水温の変動量が所定値を下回る場合に水漏れが発生していると判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の水漏れ判定装置は、給水配管が温められる十分な給湯時間が確保されない場合は水漏れが無くても給水配管中の水温の変動量が小さくなり、次回の給湯までの間隔が短い場合には、水漏れが有っても給水配管中の水温の変動量が大きくなるため、水漏れ判定精度が低下するおそれがあった。しかも、特許文献1は、給湯器の上流側に予め加温した湯を貯留する貯湯器側で水漏れ判定を行う技術ではない。
【0006】
そこで、貯湯器を有する給湯システムにおいて、貯湯器側で水漏れ判定精度を高めることが可能な水漏れ判定装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る給湯システムの水漏れ判定装置の特徴構成は、水が流通する給水配管と、前記給水配管から流入した水を加熱して湯として貯留する貯留槽と、前記貯留槽に貯留された湯を流出させる出湯配管と、前記出湯配管に前記給水配管の水を合流させる水量を調整する調整弁とを備えた貯湯器を有する給湯システムの水漏れ判定装置であって、前記貯湯器の外部で前記給水配管に接続された水道管を流通する水の温度を計測する水道水温計測部と、前記貯湯器の内部空気の温度を計測する雰囲気温度計測部と、前記調整弁よりも下流側で前記貯湯器の内部に位置する前記出湯配管を流通する湯の温度を計測する湯温計測部と、前記給湯システムの水漏れ判定を実行する判定部と、を備え、前記判定部は、前記貯湯器が出湯停止してから出湯開始するまでの待機状態で前記調整弁が前記給水配管の水を前記出湯配管に流通可能な弁位置にあるとき、前記水道水温計測部の計測値、前記湯温計測部の計測値及び前記雰囲気温度計測部の計測値に基づいて前記水漏れ判定を実行する点にある。
【0008】
出湯停止後の待機状態において、給湯システムに水漏れが発生していない場合には、貯湯器における出湯配管の湯温は、貯湯器内部の雰囲気温度に収束する。一方、出湯停止後の待機状態において、給湯システムに水漏れが発生している場合には、出湯配管に給水配管からの冷水が調整弁を介して常時流通しているため、出湯停止後、出湯配管の湯温が貯湯器内部の雰囲気温度に追従せず、出湯配管の湯温が水道管の水道水の温度に収束する。
【0009】
そこで、本構成では、貯湯器が待機状態にあるとき、水道水温計測部の計測値、湯温計測部の計測値及び雰囲気温度計測部の計測値に基づいて水漏れ判定を実行する。つまり、給湯システムに水漏れの有無により温度変化の挙動が異なる出湯配管の湯温に基づいて水漏れ判定を実行すれば、水漏れ判定が正確なものとなる。
【0010】
このように、出湯停止後の待機状態において水漏れ判定を実行するため、給湯システムの使用頻度に関係なく、貯湯器側で水漏れ判定精度を高めることが可能な給湯システムの水漏れ判定装置を提供できた。
【0011】
他の特徴構成は、前記判定部は、前記湯温計測部の計測値と前記雰囲気温度計測部の計測値との差の絶対値が所定温度以下となれば水漏れが無いと判定する点にある。
【0012】
出湯停止後の待機状態において、給湯システムに水漏れが発生していない場合には、貯湯器における出湯配管の湯温は、貯湯器内部の雰囲気温度に収束する。このため、本構成のように、湯温計測部の計測値と雰囲気温度計測部の計測値との差の絶対値が所定温度以下となれば水漏れが無いと判定すれば、水漏れ判定が正確なものとなる。
【0013】
他の特徴構成は、前記判定部は、前記湯温計測部の計測値が、前記雰囲気温度計測部の計測値よりも前記水道水温計測部の計測値に近い値であるとき、水漏れが有ると判定する点にある。
【0014】
出湯停止後の待機状態において、給湯システムに水漏れが発生している場合には、出湯配管に給水配管からの冷水が常時流通しているため、出湯停止後、出湯配管の湯温が貯湯器内部の雰囲気温度に追従せず、出湯配管の湯温が水道水の温度に収束する。このため、本構成のように、湯温計測部の計測値が、雰囲気温度計測部の計測値よりも水道水温計測部の計測値に近い値であるとき、水漏れが有ると判定すれば、水漏れ判定が正確なものとなる。
【0015】
他の特徴構成は、前記出湯配管を流通する湯の流量を計測する流量計測部をさらに備え、前記判定部は、前記流量計測部の計測値が所定値未満であるときに前記待機状態にあるとして、前記水漏れ判定を実行する点にある。
【0016】
本構成では、水漏れ判定を実行する貯湯器の待機状態を確実に検出することができる。
【0017】
他の特徴構成は、前記判定部は、前記流量計測部の計測値が前記所定値以上から前記所定値未満となった出湯停止後、前記湯温計測部の計測値の変化率に基づいて前記水漏れ判定を実行する点にある。
【0018】
通常、水道水の温度は、貯湯器内部の雰囲気温度及び出湯配管の湯温よりも低い。つまり、出湯停止後、貯湯器内部の雰囲気温度が出湯配管の湯温よりも高い場合、水漏れが無いときに出湯配管の湯温が上昇し、水漏れがあるときに出湯配管の湯温が低下することから、出湯配管の湯温の変化方向により水漏れの有無が分かる。一方、出湯停止後、貯湯器内部の雰囲気温度が出湯配管の湯温よりも低い場合、水漏れが無いときに出湯配管の湯温が緩勾配で低下し、水漏れがあるときに出湯配管の湯温が急勾配で低下することから、出湯配管の湯温の低下勾配により水漏れの有無が分かる。このため、本構成のように、出湯停止後、湯温計測部の計測値の変化率に基づいて水漏れ判定を実行すれば、水漏れ判定が正確なものとなる。
【0019】
他の特徴構成は、前記判定部による前記水漏れ判定の結果を報知する報知部をさらに備え、前記報知部は、前記判定部により水漏れが有ると判定されたときに作動するように構成されている点にある。
【0020】
本構成のように、水漏れが有る場合に報知部を作動させれば、ユーザに対しては水漏れ情報を周知することが可能となり、事業者に対しては水漏れ防止措置の迅速な対応が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図3】第一実施形態に係る水漏れ判定フロー図である。
【
図4】第二実施形態に係る水漏れ判定フロー図である。
【
図5】雰囲気温度が出湯目標温度よりも高い場合の湯温挙動例を示す図である。
【
図6】雰囲気温度が出湯目標温度よりも低い場合の湯温挙動例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る給湯システムの水漏れ判定装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態では、水漏れ判定装置の一例として、貯湯器1及び給湯器10を有する給湯システムXの水漏れを判定する水漏れ判定装置100として説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0023】
図1に示すように、給湯システムXは、貯湯器1で貯留された湯を給湯器10で加熱し、給湯器10の外部にある温水消費装置90に供給する。本実施形態における水漏れ判定装置100は、貯湯器1を有する給湯システムXの水漏れを判定する。この水漏れ判定装置100は、主として給湯システムXにおける貯湯器1よりも下流側(後述する調整弁6の下流側)の配管系やバルブの破損による水漏れや、バルブの異物噛み込みによる下流側への水漏れ等の有無を判定する。この水漏れ判定装置100は、給湯システムXの給湯機能の一部として機能する機構であっても良いし、給湯システムXの状態を遠隔地で集中管理する管理センタに設けられたコンピュータに機能の一部を受け持たせても良い。
【0024】
給湯システムXは、温水消費装置90に給湯する給湯器10と、給湯器10よりも上流側で湯を貯留する貯湯器1と、給湯器10及び貯湯器1の作動を制御する制御部2とを備えている。制御部2は、各種処理を実行するCPUやメモリを中核としたソフトウェア、又はハードウェアとソフトウェアとの協働により構成されている。
【0025】
給湯器10は、ケーシング60内部に配管20を備えており、配管20に給湯熱源である熱交換器30が設けられている。この給湯器10は、ガス配管31から供給される天然ガスなどの燃焼ガスの燃焼火炎で得た熱を、熱交換器30により配管20を流通する貯湯器1からの湯に与えて給湯機能を実行するガス給湯器である。
【0026】
本実施形態における給湯器10は、ケーシング60と、ケーシング60内に設けられた配管20と、配管20の途中に設けられた熱交換器30と、貯湯器1から供給された湯の流量(給湯流量)を計測する流量計測部40とを備えている。
【0027】
流量計測部40は、熱交換器30を介して配管20を流通する給湯流量を計測する流量計を有している。流量計測部40は、例えば、流量計としてプロペラ式流量計で構成されており、当該流量計で検出した流量に係る情報を制御部2や水漏れ判定装置100へ出力する。本実施形態における流量計測部40は、その計測のダイナミックレンジの下限は2リットル毎分(所定値の一例)に設定されており、配管20を流通する給湯流量が2リットル毎分未満の場合、ゼロを出力する。
【0028】
貯湯器1は、熱源3から排出された熱を湯水(湯)として蓄え(即ち、熱媒体としての湯水で熱を蓄え)、当該湯水を出湯配管52を介して給湯器10へと流出させるように構成されている。貯湯器1は、湯水(湯)を貯留する貯湯タンク4(貯留槽の一例)を有する。貯湯タンク4の下部には、水道水が供給される給水配管51が接続されており、貯湯タンク4の内部には湯水が満たされている。熱源3は、燃料電池、ガスエンジンコージェネレーション装置、電気式ヒートポンプ装置、太陽熱集熱装置など、熱を排出する様々な装置を用いて実現できる。
【0029】
本実施形態における貯湯器1は、ケーシング11と、ケーシング11内に設けられ、水道管Wからの水(水道水)が流通する給水配管51及び湯が流通する出湯配管52を含む配管5と、給水配管51と出湯配管52との間に設けられた貯湯タンク4と、貯湯タンク4の湯水を加熱する熱源3と、出湯配管52に給水配管51の水を合流させる水量を調整する調整弁6と、を備えている。
【0030】
ケーシング11は、内部が空気で満たされており、空気の温度を計測する温度センサ等の温度計を有する雰囲気温度計測部8が設けられている。雰囲気温度計測部8は、例えば、温度センサとして熱電対やサーミスタ(以下、「熱電対等」を言う)を含んでおり、当該熱電対等で検出した温度に係る情報を、制御部2や水漏れ判定装置100へ出力する。
【0031】
配管5は、ケーシング11内部に収容されており、給水して出湯する配管部である。配管5のうち、貯湯タンク4より上流側の配管5が、給水配管51であり、貯湯タンク4より下流側の配管5が、出湯配管52である。したがって、配管5は、ケーシング11外部の水道管Wから供給された水道水を給水源として貯湯タンク4で湯水として貯留し、貯湯タンク4から出湯配管52へと流通させて、給湯器10へ出湯する。この出湯配管52を流通する湯の流量は、上述した流量計測部40にて計測される。
【0032】
給水配管51は、貯湯器1の外部の水道管Wから給水を受け、貯湯タンク4に連通する配管部であり、貯湯タンク4と並列して出湯配管52に水を合流させる合流路51aを有している。水道管Wには、水道水温計測部7が設けられている。給水配管51には、給水バルブ53と水温計測部54とが設けられている。本実施形態における給水配管51には、給水バルブ53及び水温計測部54が上流から下流に向かってこの順に設けられており、出湯配管52に給水配管51の水を合流させる合流路51aにおける調整弁6よりも上流側に設けられている。出湯配管52は、貯湯タンク4と連通し、貯湯タンク4から排出される湯を給湯器10へ供給する配管部である。出湯配管52には、湯温計測部9が設けられている。
【0033】
給水バルブ53は、給水配管51の水の流通を制御するボール弁等で構成される弁部材である。なお、給水バルブ53に用いる弁部材としては、その他、ダイヤフラム弁、バタフライ弁などを用いることもできる。この給水バルブ53は、制御部2からの指示に従って、開状態と閉状態とに切り替わる。つまり、給水バルブ53が開状態で貯湯タンク4への給水可能となる。給水バルブ53の開閉状態に係る情報は、制御部2や水漏れ判定装置100へ出力される。
【0034】
水道水温計測部7は、水道管Wを流通する水道水の温度を計測する温度センサ等の温度計を有している。また、水温計測部54は、給水配管51を流通する水の温度を計測する温度センサ等の温度計を有している。水道水温計測部7は、ケーシング11(貯湯器1)の外部に設けられており、水温計測部54は、ケーシング11(貯湯器1)の内部に設けられている。水道水温計測部7及び水温計測部54は、例えば、温度センサとして熱電対等を含んでおり、当該熱電対等で検出した温度に係る情報を、制御部2や水漏れ判定装置100へ出力する。
【0035】
湯温計測部9は、出湯配管52を流通する湯の温度を計測する温度センサ等の温度計を有している。つまり、湯温計測部9は、出湯配管52を流通する湯の温度として給湯器10への出湯温度を検出する。湯温計測部9は、例えば、温度センサとして熱電対等を含んでおり、当該熱電対等で検出した温度に係る情報を、制御部2や水漏れ判定装置100へ出力する。本実施形態における湯温計測部9は、貯湯タンク4の下流側であって、出湯配管52と給水配管51との接続部に設けられた調整弁6の下流側でケーシング11(貯湯器1)の内部に設けられている。
【0036】
貯湯タンク4には、貯湯タンク4と熱源3との間で湯水を循環させる湯水循環路13が接続されている。この湯水循環路13の途中には循環ポンプ12が設けられている。湯水循環路13は、貯湯タンク4の下部から取り出された湯水が、熱源3を経由して、貯湯タンク4の上部へと帰還するように設けられている。つまり、貯湯タンク4の下部から取り出された相対的に低温の湯水が、熱源3で熱を回収し、熱源3から排出された熱を回収した相対的に高温の湯水は、貯湯タンク4の上部に帰還する。その結果、貯湯タンク4では、上部には相対的に高温の湯水が貯えられ、下部には相対的に低温の湯水が貯えられるというように、温度成層を形成して湯水が貯えられることになる。
【0037】
貯湯タンク4の上部には、貯えている湯水を出湯する出湯配管52が接続されている。この出湯配管52からは、貯湯タンク4に貯留されている相対的に高温の湯水(湯)が放出される。調整弁6では、出湯配管52を介して貯湯タンク4から放出される相対的に高温の湯と、給水配管51を介して供給される相対的に低温の水とが流れ込む。制御部2は、調整弁6から下流側の出湯配管52へと流通する湯の温度が、出湯目標温度(例えば、30~35℃)となるように調整弁6の動作を制御する。
【0038】
調整弁6は、出湯配管52の湯の流通量、及び、給水配管51からの水の合流量を制御する三方弁等で構成される弁部材である。なお、調整弁6に用いる弁部材としては、ロータリバルブ、電磁弁などを用いることができる。この調整弁6は、制御部2からの指示に従って、出湯配管52及び給水配管51の開度を調整する。つまり、制御部2は、調整弁6を出湯配管52が開状態となるように制御して給湯器10への出湯可能となり、出湯目標温度に基づいて給水配管51の連通開度を制御する。一方、給湯器10への出湯を停止する際、制御部2は、貯湯タンク4側の出湯配管52を遮断すると共に、給水配管51側を全開状態となるように調整弁6の弁位置を制御しておく。つまり、給湯器10への出湯を停止する際、調整弁6は、給水配管51の水を出湯配管52に流通可能な弁位置となっている。調整弁6の弁位置に係る情報は、制御部2や水漏れ判定装置100へ出力される。
【0039】
図2に示すように、水漏れ判定装置100は、上述した水道水温計測部7と雰囲気温度計測部8と湯温計測部9と流量計測部40とを備えている。また、水漏れ判定装置100は、通信部32と判定実行部33(判定部の一例)と漏水判定部34(判定部の一例)と計時部35と報知部36と記憶部37と学習部38とを備えている。判定実行部33、漏水判定部34及び学習部38は、各種処理を実行するCPUやメモリを中核としたソフトウェア、又はハードウェアとソフトウェアとの協働により構成されている。記憶部37は、RAMやHDDといったハードウェアで構成されている。
【0040】
通信部32は、貯湯器1との間で有線又は無線で構成されるネットワークを介して送受信するためのインターフェースである。本実施形態における通信部32は、水道水温計測部7、雰囲気温度計測部8、湯温計測部9及び流量計測部40の計測値を受信すると共に、制御部2に指示信号を送信する。
【0041】
判定実行部33は、給湯システムXにおける水漏れ判定の実行を制御する。判定実行部33より水漏れ判定を開始するとの指示信号を受けて、漏水判定部34が水漏れの有無を判定する。判定実行部33は、流量計測部40の計測値が所定値(例えば2リットル毎分)未満の待機状態、又は、流量計測部40の計測値が所定値(例えば2リットル毎分)以上から所定値未満となった出湯停止後(待機状態の一形態)、水漏れ判定を実行する。また、判定実行部33は、水漏れ判定中に流量計測部40の計測値が所定値(例えば2リットル毎分)以上となったとき、水漏れ判定の実行を停止させる。なお、給湯システムXに水漏れが有った場合でも通常は少量であるため、流量計測部40の計測値が所定値(例えば2リットル毎分)以上とならず、水漏れ判定の実行が停止されない。
【0042】
判定実行部33は、学習部38が学習した出湯期間に基づいて水漏れ判定を実行することが好ましい。例えば、学習部38が学習した出湯期間のうち、出湯しない確率の高い時間帯に定期的(例えば週1回)に水漏れ判定を実行する。また、判定実行部33は、記憶部37が記憶した水漏れ判定の結果に基づいて、水漏れ判定の実行頻度を変更することが好ましい。例えば、水漏れ判定により水漏れが無い回数が連続して所定回数以上となったとき、水漏れ判定の実行頻度を週1回から2週間に1回に変更する。
【0043】
漏水判定部34は、給湯システムXにおける水漏れの有無を判定する。漏水判定部34は、流量計測部40の計測値が所定値(例えば2リットル毎分)未満の待機状態にあるとき、水道水温計測部7の計測値、湯温計測部9の計測値及び雰囲気温度計測部8の計測値に基づいて、水漏れ判定を実行する。一例として、漏水判定部34は、湯温計測部9の計測値と雰囲気温度計測部8の計測値との差の絶対値が所定温度(例えば5℃)以下となれば、水漏れが無いと判定する(第一実施形態)。また、湯温計測部9の計測値が、雰囲気温度計測部8の計測値よりも水道水温計測部7の計測値に近い値であるとき、水漏れが有ると判定する(第一実施形態)。この判定は、一定時間(例えば1分)継続して実行することが好ましい。
【0044】
流量計測部40の計測値が所定値(例えば2リットル毎分)以上から所定値未満となった給湯停止後、漏水判定部34は、湯温計測部9の計測値の変化率に基づいて、水漏れ判定を実行してもよい(第二実施形態)。一例として、出湯停止後、雰囲気温度計測部8の計測値が出湯目標温度(湯温計測部9の計測値)よりも高い場合、水漏れが無いときに出湯配管14の湯温が上昇し、水漏れが有るときに出湯配管14の湯温が低下することから、漏水判定部34は、出湯配管の湯温の変化方向により水漏れの有無を判定する。一方、出湯停止後、雰囲気温度計測部8の計測値が出湯目標温度(湯温計測部9の計測値)よりも低い場合、水漏れが無いときに出湯配管14の湯温が緩勾配で低下し、水漏れがあるときに出湯配管14の湯温が急勾配で低下することから、漏水判定部34は、湯温計測部9の計測値の低下勾配により水漏れの有無を判定する。この判定は、一定時間(例えば1分)継続して実行することが好ましい。
【0045】
計時部35は、時間の経過を計測する計時機構であり、判定実行部33の水漏れ判定の指示信号を受けて計時を開始し、漏水判定部34の要求に応じて経過時間に係る情報を出力する。
【0046】
報知部36は、漏水判定部34により水漏れ判定の結果を報知する。この報知部36は、漏水判定部34により水漏れが有ると判定された場合に、使用者や管理センタなどへ水漏れが発生している旨を報知する信号を発する機構である。報知部36は、例えば水漏れを知らせる警報を音や光、もしくはその他の使用者が知覚可能な信号を発して水漏れが発生している旨を報知する。また、報知部36は、給湯器10の状態を遠隔地で集中管理する管理センタなどへ、電気通信回線を介して通信して、水漏れが発生している旨を報知することもできる。
【0047】
(第一実施形態の判定フロー)
図3及び
図5~
図6を用いて、第一実施形態における水漏れ判定装置100の判定方法について説明する。
【0048】
図3に示すように、判定実行部33が水漏れ判定を開始するか否か(待機状態か否か)を判定する(#31)。判定実行部33は、流量計測部40の計測値が所定値(例えば2リットル毎分)未満の待機状態にあるとき、水漏れ判定を実行する(#31Yes)。なお、学習部16が学習した出湯期間のうち、出湯しない確率の比較的高い時間帯に水漏れ判定を開始することが好ましい。
【0049】
漏水判定部34は、流量計測部40の計測値が所定値(例えば2リットル毎分)以上となる出湯開始が行われたか否かを監視する(#32)。流量計測部40の計測値が所定値以上となれば、判定を停止する(#32Yes、#33)。水漏れ判定を開始してから、計時部35が計時を開始し、漏水判定部34は、所定時間を経過したか否かを判定する(#34)。
【0050】
#34の判定の結果、所定時間を経過するまでに流量計測部40の計測値が所定値以上となれば、判定を停止する(#34No、#32Yes、#33)。一方、#34の判定の結果、所定時間を経過すれば、漏水判定部34が水漏れ判定を実行する(#34Yes、#35)。この所定時間は、数分程度確保することが好ましい。
【0051】
図5には、夏季のように雰囲気温度計測部8の計測値が出湯目標温度よりも高い場合の湯温計測部9で計測された湯温挙動例が示されており、
図6には、冬季のように雰囲気温度計測部8の計測値が出湯目標温度よりも低い場合の湯温計測部9で計測された湯温挙動例が示されている。破線は、雰囲気温度計測部8で計測されたケーシング60内部の雰囲気温度であり、一点鎖線は、出湯目標温度であり、二点鎖線は、水道水温計測部7で計測された水道管W内の水道水の温度である。また、
図5(a)及び
図6(a)の実線は、水漏れが無い場合の湯温計測部9で計測された出湯配管52内の湯の温度であり、
図5(b)及び
図6(b)の実線は、水漏れが有る場合の湯温計測部9で計測された出湯配管52内の湯の温度である。
【0052】
出湯中は、
図5及び
図6の実線で示すように、湯温計測部9で計測された出湯配管52内の湯の温度は、出湯目標温度となるように調整弁6の開度が調整されている。一方、出湯を停止したとき、湯温計測部9で計測された出湯配管52内の湯の温度は、
図5(a)及び
図6(a)の実線で示すように、水漏れが無い場合には雰囲気温度に近づくように変化し、
図5(b)及び
図6(b)の実線で示すように、水漏れが有る場合には、給水配管51に温度の低い水道水が流れ続けるため、急激に低下して水道水温計測部7で計測された水道水の温度に近い温度へと収束する。
【0053】
そこで、本実施形態における漏水判定部34は、給湯を停止してから所定時間経過したとき、水道水温計測部7の計測値と湯温計測部9の計測値と雰囲気温度計測部8の計測値とに基づいて、水漏れ判定を実行する。
図3に戻って説明すると、漏水判定部34は、湯温計測部9の計測値と雰囲気温度計測部8の計測値との差の絶対値が所定温度(例えば5℃)以下であるか否かを判定する(#35)。
【0054】
#35の判定の結果、漏水判定部34は、湯温計測部9の計測値と雰囲気温度計測部8の計測値との差の絶対値が所定温度(例えば5℃)以下であれば、水漏れが無いと判定し、この判定結果を記憶部37に記憶させる(#37、#40)。一方、#35の判定の結果、漏水判定部34は、湯温計測部9の計測値と雰囲気温度計測部8の計測値との差の絶対値が所定温度より大きければ、湯温計測部9の計測値が、雰囲気温度計測部8の計測値よりも水道水温計測部7の計測値に近い値か否かを判定する(#36)。つまり、湯温計測部9の計測値が水道水の温度に近い温度へと収束しているか否か判定する。なお、水道水温計測部7の計測値に代えて、水温計測部54の計測値を用いても良い。これは、貯湯器1内の空気の温度が出湯の有無により変動が殆どなく、給水配管51内の水の温度は、水道水の温度に近い温度となっているためである。
【0055】
#36の判定の結果、漏水判定部34は、湯温計測部9の計測値が、雰囲気温度計測部8の計測値よりも水道水温計測部7の計測値に近い値であれば、水漏れが有ると判定し、報知部36を作動させる(#38、#39)。一方、漏水判定部34は、湯温計測部9の計測値が、水道水温計測部7の計測値よりも雰囲気温度計測部8の計測値に近い値、つまり、出湯配管14内の湯の温度が雰囲気温度に近づくように徐々に変化していれば、水漏れが無いと判定する(#37)。そして、これらの判定結果を記憶部37に記憶させて、水漏れ判定を終了する(#40)。なお、漏水判定部34による判定は、一定時間継続して実行しても良い。また、#35及び#36の判定のうち、いずれか一方を用いても良い。
【0056】
このように、本実施形態では、出湯待機中において、水道水温計測部7の計測値と湯温計測部9の計測値と雰囲気温度計測部8の計測値とに基づいて水漏れ判定を実行する。つまり、給湯システムXの水漏れの有無により温度変化の挙動が異なる出湯配管14の湯温に基づいて水漏れ判定を実行すれば、水漏れ判定が正確なものとなる。また、本実施形態のように、湯温計測部9の計測値と雰囲気温度計測部8の計測値との差の絶対値が所定温度以下となれば水漏れが無いと判定すれば、水漏れ判定が正確なものとなる。さらに、湯温計測部9の計測値が、雰囲気温度計測部8の計測値よりも水道水温計測部7の計測値に近い値であるとき、水漏れが有ると判定すれば、水漏れ判定が正確なものとなる。
【0057】
また、学習部38が学習した出湯期間に基づいて水漏れ判定を実行すれば、貯湯器1の使用頻度の少ないときに水漏れ判定を実行できるため、水漏れ判定中に再度出湯開始され、水漏れ判定精度が低下する不都合を防止できる。さらに、記憶部37に記憶した水漏れ判定の結果に基づいて水漏れ判定の実行頻度を変更することが好ましい。これにより、水漏れの無い場合には不必要な水漏れ判定によるエネルギー消費を削減可能となり、水漏れの有る場合には、判定頻度を上げることで水漏れ判定の信頼度を高めることができる。
【0058】
(第二実施形態の判定フロー)
図4~
図6を用いて、第二実施形態における水漏れ判定装置100の判定方法について説明する。なお、本実施形態は、第一実施形態と同時に、又は並行して実行しても良いため、第一実施形態と異なる構成のみ説明する。
【0059】
図4に示すように、判定実行部33は、貯湯器1が出湯を停止したか否かを監視し、水漏れ判定を開始するか否か判定する(#41)。流量計測部40の計測値が所定値(例えば2リットル毎分)以上から所定値未満となった出湯停止後、水漏れ判定を実行する(#41Yes)。このとき、学習部16が学習した出湯期間のうち、出湯しない確率の比較的高い時間帯に水漏れ判定を開始することが好ましい。
【0060】
図5(a)と(b)の実線で示すように、雰囲気温度計測部8の計測値が出湯目標温度よりも高い場合、流量計測部40の計測値は、水漏れの有無により変化方向が異なり、
図6(a)と(b)の実線で示すように、雰囲気温度計測部8の計測値が出湯目標温度よりも低い場合、流量計測部40の計測値は、水漏れの有無により変化方向が同一であるが、変化勾配が異なる。
【0061】
そこで、本実施形態における漏水判定部34は、流量計測部40の計測値が所定値以上から所定値未満となった出湯停止後、湯温計測部9の計測値の変化率に基づいて水漏れ判定を実行する。
図4に戻って説明すると、漏水判定部34は、湯温計測部9の計測値の変化率(湯温の変化勾配)を取得し、雰囲気温度計測部8の計測値が出湯目標温度よりも高いか否かを判定する(#42、#43)。
【0062】
雰囲気温度計測部8の計測値が出湯目標温度よりも高い場合(#43Yes)、漏水判定部34は、湯温計測部9の計測値が上昇勾配か否かを判定する(#44)。漏水判定部34は、#44の判定の結果、湯温計測部9の計測値が上昇勾配であれば(Yes判定)、水漏れが無いと判定し、この判定結果を記憶部37に記憶させる(#46、#49)。一方、漏水判定部34は、#44の判定の結果、湯温計測部9の計測値が下降勾配であれば(Nо判定)、水漏れが有ると判定し、報知部36を作動させ、この判定結果を記憶部37に記憶させる(#47、#48、#49)。
【0063】
雰囲気温度計測部8の計測値が出湯目標温度よりも低い場合(#43Nо)、漏水判定部34は、湯温計測部9の計測値の下降勾配が所定勾配より急勾配か否かを判定する(#45)。漏水判定部34は、#45の判定の結果、湯温計測部9の計測値の下降勾配が急勾配であれば(Yes判定)、水漏れが有ると判定し、報知部36を作動させ、この判定結果を記憶部37に記憶させる(#47、#48、#49)。一方、漏水判定部34は、#44の判定の結果、湯温計測部9の計測値の下降勾配が緩勾配であれば(Nо判定)、水漏れが無いと判定し、この判定結果を記憶部37に記憶させる(#46、#49)。なお、漏水判定部34による判定は、一定時間継続して実行しても良い。
【0064】
このように、本実施形態では、出湯待機中の初期である出湯を停止したとき、湯温計測部9の計測値の変化率に基づいて水漏れ判定を実行すれば、水漏れ判定が正確なものとなる。
【0065】
[その他の実施形態]
(1)漏水判定部34に対する水漏れ判定の実行指示を受け付ける入力部を設けても良い。この入力部は、例えばタッチパネルや、ボタン式のリモコンで構成される。また、水漏れ判定を実行する貯湯器1の待機状態は、使用者が給湯停止指示を入力してから所定時間経過後であっても良い。
(2)水漏れ判定装置100は、水温計測部54を備えていなくても良い。第二実施形態において、出湯中は湯温計測部9の計測値が出湯目標温度に近付くことから、
図4の#43における出湯目標温度に代えて湯温計測部9の計測値を用いても良い。
(3)流量計測部40を給湯器10内部に設けたが、貯湯器1内部の調整弁6よりも下流側の出湯配管14に設けても良い。
(4)漏水判定部34における判定閾値は、学習部16により学習させて変更可能に構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、貯湯器を有する給湯システムの水漏れ判定装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 :貯湯器
4 :貯湯タンク(貯留槽)
6 :調整弁
7 :水道水温計測部
8 :雰囲気温度計測部
9 :湯温計測部
14 :出湯配管
33 :漏水判定部(判定部)
34 :判定実行部(判定部)
36 :報知部
40 :流量計測部
51 :給水配管
52 :出湯配管
100 :判定装置
W :水道管
X :給湯システム