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特許7412239ロードサービスのサービス拠点配置システムおよびサービス拠点配置方法
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  • 特許-ロードサービスのサービス拠点配置システムおよびサービス拠点配置方法 図1
  • 特許-ロードサービスのサービス拠点配置システムおよびサービス拠点配置方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】ロードサービスのサービス拠点配置システムおよびサービス拠点配置方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/0631 20230101AFI20240104BHJP
   G06Q 10/20 20230101ALI20240104BHJP
【FI】
G06Q10/0631
G06Q10/20
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020051398
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021149829
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】武富 尚吾
(72)【発明者】
【氏名】石垣 司
【審査官】田上 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-040197(JP,A)
【文献】中塩 英良,サービスを考慮した施設配置問題に対する近似アルゴリズムの実験評価,情報処理学会研究報告,日本,社団法人情報処理学会,2006年03月17日,Vol.2006 No.30,p.9~16
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に対し、ロードサービスを提供する際の拠点となる施設の配置場所を決定するロードサービスのサービス拠点配置システムであって、
施設に関する情報をデータとして蓄積した施設データ群、過去の車両トラブルに関する情報をデータとして蓄積したトラブルデータ群、施設から車両トラブルの発生地点までの経路に関する情報をデータとして蓄積した経路データ群、および、過去の車両トラブルに関するサービス利用者からの通知から当該車両トラブルの発生地点までのサービス提供者の到着時間に関する情報をデータとして蓄積した待ち時間データ群を、それぞれ変数とし、車両トラブルの発生地点でのサービス利用者の待ち時間を予測する予測モデルを用いて、当該車両トラブルに対処するための準備に係る準備時間を算出する第1の算出部と、
前記第1の算出部で算出された前記準備時間と施設の配置に関する条件とに基づいて、サービス利用者の待ち時間を算出する第2の算出部と、
前記第2の算出部で算出された前記サービス利用者の待ち時間に基づいて、施設の配置場所を決定する決定部と、
を備えたことを特徴とするロードサービスのサービス拠点配置システム。
【請求項2】
前記サービス利用者の待ち時間は、前記準備時間と移動時間との合計であり、
前記移動時間は、施設から車両トラブルの発生地点までの移動距離に応じた移動時間であり、
前記準備時間は、サービス利用者からの通知からサービス提供者が施設を出発するまでの、当該車両トラブルを解消するための所定のサービスを提供するための準備に係る準備時間である
ことを特徴とする請求項1に記載のロードサービスのサービス拠点配置システム。
【請求項3】
前記決定部は、全サービス利用者の待ち時間の総和を目的関数として定式化した下記の結果に基づいて、各車両トラブルに対する待ち時間の総和が最小となるように、施設の配置を決定することを特徴とする請求項1に記載のロードサービスのサービス拠点配置システム。
【数1】
【請求項4】
前記第1の算出部は、前記予測モデルとして既知の回帰モデルを利用することを特徴とする請求項1に記載のロードサービスのサービス拠点配置システム。
【請求項5】
前記第2の算出部は、既知の施設配置最適化モデルを利用して、前記サービス利用者の待ち時間を算出することを特徴とする請求項1に記載のロードサービスのサービス拠点配置システム。
【請求項6】
前記既知の施設配置最適化モデルは、数理モデルである施設配置問題であることを特徴とする請求項5に記載のロードサービスのサービス拠点配置システム。
【請求項7】
車両に対し、ロードサービスを提供する際の拠点となる施設の配置場所を決定するロードサービスのサービス拠点配置方法であって、
施設に関する情報をデータとして蓄積した施設データ群、過去の車両トラブルに関する情報をデータとして蓄積したトラブルデータ群、施設から車両トラブルの発生地点までの経路に関する情報をデータとして蓄積した経路データ群、および、過去の車両トラブルに関するサービス利用者からの通知から当該車両トラブルの発生地点までのサービス提供者の到着時間に関する情報をデータとして蓄積した待ち時間データ群を、それぞれ変数とし、車両トラブルの発生地点でのサービス利用者の待ち時間を予測する予測モデルを用いて、当該車両トラブルに対処するための準備に係る準備時間を算出し、
前記準備時間と施設の配置に関する条件とに基づいて、サービス利用者の待ち時間を算出するとともに、
前記サービス利用者の待ち時間に基づいて、施設の配置場所を決定する
ことを特徴とするロードサービスのサービス拠点配置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のためのロードサービスを行う際の拠点となる店舗(施設)の配置を最適化するロードサービスのサービス拠点配置システムおよびサービス拠点配置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のロードサービスにおいて、サービスの拠点となる店舗を適切に配置することは、車両トラブルなどの発生から復旧までの時間を短縮し、サービス利用者の利便性を高めるうえで重要である。
【0003】
ロードサービスの店舗を適切に配置するためには、店舗の配置候補地や配置可能な店舗数などのビジネス上の制約の中で、サービス利用者のリクエスト(コール)を受けてからトラブル発生地点にサービス提供者が到着するまでに要する時間(以下、「待ち時間」)を最小化することが求められる。
【0004】
施設配置における最適化技術の代表例として、非特許文献1が知られている。この非特許文献1では、一般的な施設配置の最適化を行うための数理モデルである「施設配置問題」を用いて、救急車の最適な配置場所を求めている。
【0005】
「施設配置問題」では、施設の配置候補地の集合や利用者の需要地点の集合が与えられ、さらに、各施設から各需要地点までの全ての組み合わせに対する移動コストが与えられる。そのうえで、移動コストが事前に設定された基準を超過する確率や、移動コストの総計が最小化するような、施設の配置場所が決定される。
【0006】
従来は、移動コストとして、地理的な経路距離や予想経路を経て目的地(需要地点)に着くまでの移動時間などが用いられてきた。例えば、非特許文献1では、移動コストとして、地図上の道路網と、過去の救急データから求めた主要幹線道路とそれ以外の道路での平均的な移動速度から算出される目的地までの移動時間と、を用いている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】「救急車の配置計画における確率的評価指標とその重要性について」((社)日本都市計画学会 都市計画論文集 No.42-3 2007年10月 稲川敬介、他)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ロードサービスの店舗を適切に配置する場合において、サービス利用者の利便性にとって重要なのは、サービス利用者のリクエストを受けてからトラブル発生の地点(目的地)にサービス提供者が到着するまでの「待ち時間」である。したがって、移動コストとして、地理的な経路距離や予想経路を経てトラブル発生地点に着くまでの移動時間だけを用いるのでは、ロードサービスの店舗を適切に配置することはできない。
【0009】
即ち、ロードサービスにおける「待ち時間」とは、「移動時間」と「準備時間(サービス利用者のリクエストを受けて、対応する店舗を決定し、該店舗において、車両トラブルに応じた準備を行ってサービスカーが出発するまでの時間)」との合計である。特に、ロードサービスにおいて、「準備時間」は、店舗の配置候補地と目的地との地理的な位置関係だけでは決まらず、対応する店舗の特性(業態)や車両トラブルの内容などの因子(属性)によっても変動する。
【0010】
例えば、店舗における、サービスを提供するためのサービス提供者の待機人員(シフト)は、店舗の保有リソースや、営業時間内か否か、平日か休日かといったトラブル発生の時間帯などによっても異なる。また、対応するトラブルの種類によって提供するサービスの内容が変わってくることなどから、必然的に準備に係る「準備時間」は違ってくる。
【0011】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、地理的な移動に伴うコストのみでなく、各種の車両トラブルに対応するための準備に係るコストをも考慮して、ロードサービスの拠点となる店舗の配置を最適化できるロードサービスのサービス拠点配置システムおよびサービス拠点配置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様に係るロードサービスのサービス拠点配置システム(1)は、車両に対し、ロードサービスを提供する際の拠点となる施設の配置場所を決定するロードサービスのサービス拠点配置システムであって、施設に関する情報(属性)をデータとして蓄積した施設データ群、過去の車両トラブルに関する情報(属性)をデータとして蓄積したトラブルデータ群、施設から車両トラブルの発生地点までの経路に関する情報(属性)をデータとして蓄積した経路データ群、および、過去の車両トラブルに関するサービス利用者からの通知から当該車両トラブルの発生地点までのサービス提供者の到着時間に関する情報(属性)をデータとして蓄積した待ち時間データ群を、それぞれ変数(z,x,d,T)とし、車両トラブルの発生地点でのサービス利用者の待ち時間を予測する予測モデルを用いて、当該車両トラブルに対処するための準備に係る準備時間を算出する第1の算出部(20)と、前記第1の算出部で算出された前記準備時間と施設の配置に関する条件(b)とに基づいて、サービス利用者の待ち時間を算出する第2の算出部(30)と、前記第2の算出部で算出された前記サービス利用者の待ち時間に基づいて、施設の配置場所を決定する決定部(40)と、を備えたことを要旨とする。
【0013】
また、本発明の他の形態に係るロードサービスのサービス拠点配置方法は、車両に対し、ロードサービスを提供する際の拠点となる施設の配置場所を決定するロードサービスのサービス拠点配置方法であって、施設に関する情報(属性)をデータとして蓄積した施設データ群、過去の車両トラブルに関する情報(属性)をデータとして蓄積したトラブルデータ群、施設から車両トラブルの発生地点までの経路に関する情報(属性)をデータとして蓄積した経路データ群、および、過去の車両トラブルに関するサービス利用者からの通知から当該車両トラブルの発生地点までのサービス提供者の到着時間に関する情報(属性)をデータとして蓄積した待ち時間データ群を、それぞれ変数(z,x,d,T)とし、車両トラブルの発生地点でのサービス利用者の待ち時間を予測する予測モデルを用いて、当該車両トラブルに対処するための準備に係る準備時間を算出し、前記準備時間と施設の配置に関する条件(d)とに基づいて、サービス利用者の待ち時間を算出するとともに、前記サービス利用者の待ち時間に基づいて、施設の配置場所を決定することを要旨とする。
【0014】
このような構成によれば、各種のロードサービスを提供する際の拠点となる施設の配置場所を、特に、サービス利用者の利便性にとって最適なものとすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、地理的な移動に伴うコストのみでなく、各種の車両トラブルに対応するための準備に係るコストをも考慮して、ロードサービスの拠点となる店舗の配置を最適化できるロードサービスのサービス拠点配置システムおよびサービス拠点配置方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係るロードサービスのサービス拠点配置システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】(a),(b)は、ロードサービスのサービス拠点配置システムの実施例1を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1を参照して、本発明の実施形態に係るロードサービスのサービス拠点配置システムについて説明する。
【0018】
(ロードサービスのサービス拠点配置システム)
図1は、ロードサービスのサービス拠点配置システム1の構成例を示すものである。該サービス拠点配置システム1は、図1に示すように、データ蓄積部10と、ロードサービス利用者待ち時間予測モデル評価部(第1の算出部)20と、施設配置最適化モデル評価部(第2の算出部)30と、店舗配置最適化部(決定部)40と、を備えている。これにより、ロードサービスの拠点となる店舗(施設)の配置を、地理的な移動に伴うコストのみでなく、各種の車両トラブルに対処するための準備に係るコストをも考慮した最適なものとすることが可能となる。
【0019】
データ蓄積部10は、例えば、サービス利用者の待ち時間データ群のデータベース11と、店舗データ群(施設データ群)のデータベース13と、トラブルデータ群のデータベース15と、経路データ群のデータベース17と、を備えている。
【0020】
データベース11は、過去のサービス利用者の待ち時間に関する各種の属性(因子)を待ち時間データ群として記憶するものである。例えば、待ち時間データ群としては、車両トラブルの発生に伴ってサービス利用者がサービス提供者の救援を要請した日時(リクエスト日時)や、要請からサービス提供者が車両トラブルの発生地点に到着した到着時間(現場到着日時)などが含まれる。この待ち時間データ群の各因子は、目的変数(従属変数)Tとして、ロードサービス利用者待ち時間予測モデル評価部20での待ち時間予測モデルの推計のために用いられる。
【0021】
データベース13は、店舗に関する各種の情報を店舗データ群として記憶するものである。例えば、施設データ群としては、24時間対応可能な年中無休や全日の日中または平日の日中のみの営業などといった店舗の営業形態、サービス提供者である作業者の人数(サービス人員)、作業車両であるサービスカーの台数などの情報(業態)が含まれる。この店舗データ群の各因子は、説明変数(独立変数)zとして、ロードサービス利用者待ち時間予測モデル評価部20での待ち時間予測モデルの推計のために用いられる。
【0022】
データベース15は、車両トラブルに関する各種の情報をトラブルデータ群として記憶するものである。例えば、トラブルデータ群としては、車両トラブルの発生月、発生日時、トラブル種、作業内容、トラブル車両種、トラブルタイヤ種、場所区分、依頼者区分などが含まれる。トラブル種とは、車両トラブルの種類であり、パンクまたはホイール割れまたはチェーン装着などがある。作業内容とは、実施するサービスの内容であり、パンクの場合の、車載スペアタイヤとの交換または代替品との交換などがある。トラブル車両種とは、車両トラブルを起こした車両の種類であり、トラックまたはバスまたはキャリアカーなどがある。トラブルタイヤ種とは、車両トラブルを起こしたタイヤの種類である。場所区分とは、車両トラブルを起こした地点の区分であり、高速道路上または一般道路上または路肩または施設内などがある。依頼者区分とは、リクエスト(コール)がサービス利用者自信によるものかや会員か非会員かなどがある。このトラブルデータ群の各因子は、説明変数xとして、ロードサービス利用者待ち時間予測モデル評価部20での待ち時間予測モデルの推計のために用いられる。
【0023】
データベース17は、経路に関する各種の情報を経路データ群として記憶するものである。例えば、経路データ群としては、高速道路距離や一般道路距離などの情報(経路距離/移動時間など)が含まれる。この経路データ群の各因子は、説明変数dとして、ロードサービス利用者待ち時間予測モデル評価部20での待ち時間予測モデルの推計のために用いられる。
【0024】
ロードサービス利用者待ち時間予測モデル評価部20は、例えば、データ蓄積部10に蓄積されたロードサービスのこれまでの蓄積データを基に、サービス利用者からのリクエストの通知から車両トラブルの発生地点にサービス提供者が到着するまでの「待ち時間」を予測するための統計モデルを推計するようになっている。そして、この待ち時間予測モデルでの評価を、例えば既知の「施設配置問題」の条件設定に組み込むことで、ロードサービスの店舗の配置を、地理的な移動に伴うコストのみでなく、車両トラブルに対処するための準備に係るコストをも考慮した最適なものとすることができる。
【0025】
即ち、本実施形態においては、店舗から車両トラブルの発生地点までの経路距離に加え、過去の蓄積データを待ち時間予測モデルの説明変数として用いることで、上述した様々な因子による準備時間の変動をも考慮した移動コストの設定が可能となる。
【0026】
施設配置最適化モデル評価部30では、既知の「施設配置問題」などの一般的な数理モデルを用いて、最適化問題の条件設定が行われるとともに、該条件設定に基づいたサービス利用者の待ち時間の算出が行われる。
【0027】
施設配置最適化モデル評価部30は、例えば図1に示すように、ビジネス上の制約などを記憶するデータベース31を備えている。データベース31は、例えば、予算、新店舗の配置候補地、既存店舗の再配置候補地、および、一定期間内に各店舗が対応可能な車両トラブルの回数などの店舗の配置に関する各種の条件を、ビジネス上の制約などとして蓄積する。このビジネス上の制約などの各因子は、制約条件bとして、最適化問題の条件設定のために用いられる。データベース31は、上記したデータ蓄積部10内に設けられるものであっても良い。
【0028】
店舗配置最適化部40では、施設配置最適化モデル評価部30で算出された前記サービス利用者の待ち時間が最小となるように、店舗の配置場所の最適地が決定される。
【0029】
(実施例1)
図2を参照して、ロードサービスの店舗の最適配置を行うためのサービス拠点配置方法の実施例について説明する。なお、(a)は、対象の地理空間を東京-大阪間とした場合の、主要高速道路TK,ST,CD,MK,SM上での車両トラブルの発生地点(図中の●)と、店舗配置の候補地となる32拠点(図中の□)と、を例示したものである。(b)は、32拠点のうち、3店舗SA,SB,SCについて、一定の基準時間以内にサービス対応可能なカバー範囲を予測モデルに基づいて例示したものである。
【0030】
ここでは、過去の蓄積データとして、ブリヂストン社の大型車両タイヤトラブル向けロードサービスネットワーク(BSN)の受付履歴データを用いるようにした場合を例に説明する。
【0031】
なお、待ち時間予測モデルの構築には、図2(a)に例示したように、2016年~2018年に対象の地理空間内で発生した一般タイヤのトラブルに関する履歴データを用いている。
【0032】
予測に用いる説明変数としては、例えば、店舗から車両トラブルの発生地点までの経路距離(経路データ群の各因子)をd、トラベルデータ群の各因子をx、店舗データ群の各因子をzとした。なお、変数dは、一般道路や高速道路など、個別の道路ID(識別情報)ごとに分けることも可能である。
【0033】
また、予測に用いる目的変数Tとしては、例えば、サービス利用者の待ち時間、つまり、ロードサービルを利用するサービス利用者からのリクエストを受けた時点から、サービス提供者が車両トラブルの発生地点に到着した時点までの時間とした。
【0034】
即ち、ロードサービス利用者待ち時間予測モデル評価部20においては、これらの説明変数d、x、zを用いて、目的変数Tの回帰モデルとしての待ち時間予測モデルの構築が行われる。
【0035】
T=f(x,z,d)
【0036】
ここで、待ち時間予測モデルは既知の回帰モデルであって、回帰モデルの種類に制限はなく、目的変数Tを精度良く予測できる回帰モデルであれば、いずれの回帰モデルも適用可能である。
【0037】
この待ち時間予測モデルによれば、図2(b)に例示するように、代表的な3店舗SA,SB,SCについて、それぞれ、車両トラブルをカバーできるカバー範囲を予測することが可能となる。
【0038】
一方、施設配置最適化モデル評価部30においては、ロードサービス利用者待ち時間予測モデル評価部20で構築された待ち時間予測モデルをベースとした最適化問題の条件設定(条件bの評価)が行われる。
【0039】
具体例として、下記には、過去の車両トラブルに対し、全サービス利用者の待ち時間の総和を目的関数として定式化した結果を示している。
【0040】
【数1】
【0041】
なお、上記の定式化では、例えば、制約条件として、サービス人員や一定期間内に対応可能な車両トラブルの回数などの各店舗のキャパシティ(対応能力)を考慮していないが、制約条件式として追加することで容易に考慮することが可能である。
【0042】
表1は、効果について検証した結果を例示したもので、ここでは、全データの80%を予測モデルの構築および最適化の計算に用いて店舗を選出し、残りの20%のデータにより、選出した店舗によって車両トラブルに対応した場合に予測される平均待ち時間の算出を行った。
【0043】
このような作業を、20%のデータを変更しながら5回実施し、予測される待ち時間の平均値を求めた。
【0044】
表1では、32拠点の店舗候補群の中から、それぞれ、利用者の待ち時間が最小となるような最適な6店舗、12店舗、18店舗を選出するとした場合について、本実施例の場合と従来の場合とその他の場合とを対比させて示した。
【0045】
なお、従来の場合とは、これまでに一般的に用いられてきた経路距離のみを移動コストとして設定し、最適化計算を実施した結果である。その他の場合とは、最適化計算を行わずに、ランダムに店舗を選出した結果(各店舗数に対し、ランダム試行を100回繰り返し、その平均を求めた)である。
【0046】
【表1】
【0047】
表1からも明らかなように、本実施例の場合において、いずれの店舗数の場合にも、サービス利用者の平均待ち時間が最も短くなった。
【0048】
(作用・効果)
上述した本実施形態によれば、以下の作用・効果が得られる。
【0049】
即ち、本実施形態に係るロードサービスのサービス拠点配置システム1およびサービス拠点配置方法は、過去のデータに基づいて構築された統計モデルを利用するようにしている。これにより、サービスの拠点となる店舗の配置を行う際に、地理的な移動に伴うコストのみでなく、車両トラブルに対処するための準備に係るコストをも考慮できるようになるので、店舗の配置をより最適化できる。
【0050】
特に、各種のロードサービスを提供する際の拠点となる店舗の配置場所を、サービス利用者の利便性にとって最適なものとすることができる。
【0051】
また、待ち時間予測モデルには既知の回帰モデルを、施設配置最適化モデルには既知の施設配置最適化モデル(例えば、施設配置問題)を、それぞれ適用することができ、低廉化が可能である。
【0052】
なお、ロードサービスにおける「待ち時間」は、「移動時間」と「準備時間と車両トラブルの発生地点において、該車両トラブルを解消するまでの作業時間を含む時間」との合計としても良い。
【0053】
以上、本発明のロードサービスのサービス拠点配置システム1を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 ロードサービスのサービス拠点配置システム
10 データ蓄積部
11、13、15、17 データベース
20 ロードサービス利用者待ち時間予測モデル評価部(第1の算出部)
30 施設配置最適化モデル評価部(第2の算出部)
31 データベース
40 店舗配置最適化部(決定部)
図1
図2