(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】冷凍施設
(51)【国際特許分類】
F25D 23/06 20060101AFI20240104BHJP
E04B 1/76 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
F25D23/06 303Z
E04B1/76 500J
(21)【出願番号】P 2020059370
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】本間 瑞基
【審査官】五十嵐 公輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-069098(JP,A)
【文献】特開平4-169778(JP,A)
【文献】特開昭61-211680(JP,A)
【文献】特開平11-294942(JP,A)
【文献】特開平5-059774(JP,A)
【文献】特開昭64-058949(JP,A)
【文献】特開昭60-181446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/06
F24F 7/06
E04B 1/76
E04B 1/92
E02D 31/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床と、壁と、天井とを備え、該床と該壁と該天井により形成される収容空間に冷凍庫が配設されている冷凍施設であって、
前記冷凍庫の側面と前記壁の間に壁空間が形成され、
前記冷凍庫の天端面と前記天井の間に天井空間が形成され、
前記冷凍庫の下方に下方空間が形成され、
前記収容空間には、分離空間を介して複数の前記冷凍庫が配設されており、
前記壁空間と、前記天井空間と、前記分離空間と、前記下方空間は連通して流体の流通路を形成しており、
前記壁に給気口が設けられ、前記下方空間の端部に排気口が設けられており、
前記流通路において、前記壁空間から前記天井空間及び前記分離空間を経て、前記下方空間に前記流体を流通させるファンが設けられていることを特徴とする、冷凍施設。
【請求項2】
前記冷凍庫の周囲が断熱材フォームにて包囲されており、前記分離空間が左右にある該断熱材フォームにて形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の冷凍施設。
【請求項3】
床と、壁と、天井とを備え、該床と該壁と該天井により形成される収容空間に冷凍庫が配設されている冷凍施設であって、
前記冷凍庫の側面と前記壁の間に壁空間が形成され、
前記冷凍庫の天端面と前記天井の間に天井空間が形成され、
前記冷凍庫の下方に下方空間が形成され、
前記収容空間には、分離空間を介して、前記冷凍庫と、該冷凍庫よりも温度の高い冷蔵庫もしくは室が配設されており、
前記分離空間には、前記天井空間と前記下方空間の双方に連通する保温ダクトが配設され、
前記壁空間と、前記天井空間と、前記保温ダクトと、前記下方空間は連通して流体の流通路を形成しており、
前記壁に給気口が設けられ、前記下方空間の端部に排気口が設けられており、
前記流通路において、前記壁空間から前記天井空間及び前記保温ダクトを経て、前記下方空間に前記流体を流通させるファンが設けられていることを特徴とする、冷凍施設。
【請求項4】
前記冷凍庫の周囲が断熱材フォームにて包囲されており、前記前記分離空間における前記冷蔵庫側もしくは前記室側には、非断熱性であり、通気性を有する仕切り壁が設けられていることを特徴とする、請求項3に記載の冷凍施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍施設に関する。
【背景技術】
【0002】
食品工場をはじめとする冷凍施設においては、大規模な冷凍庫が建物内に装備されており、庫内の温度がマイナスであることから、この冷熱が建物下方の地盤へ伝熱されることに起因して凍上が発生する恐れがある。凍上のメカニズムは以下の通りである。まず、冷凍庫からの伝熱によって地盤凍結線が発生し、アイスレンズの発生と地中の水分移動が生じる。ここで、アイスレンズとは、地中水分の凍結過程において、水分が凍結面付近に集まり、レンズ状の氷晶が形成される現象のことである。その後、アイスレンズが増長し、地盤の隆起に至る。このように、地中水分の凍結と体積膨張によって地盤が隆起することにより、施設が傾斜する等の被害が生じ得る。
【0003】
この凍上を防止する対策として、凍上防止管を設置する、所謂通気管工法と、地下ピットを造成して施設の直下から凍上対象の地盤そのものを排除する、所謂二重床工法を挙げることができる。通気管工法では、冷凍庫の床下の地盤に対して外気を導入するための塩ビ管等により形成されるパイプ(下方流路)を埋設することになり、例えば、U字型のパイプが地下に埋設される。
【0004】
ところで、大規模な面積を有する冷凍施設において、例えば、その中央付近に冷凍庫が集中している場合では、上記するU字型のパイプを施設の中央にある冷凍庫直下まで延ばしながら敷設する必要が生じ、凍上対策に不要な施設エリアの床下にもパイプが施工されることに起因して、冷凍施設の施工費が嵩むといった課題がある。
【0005】
また、上記する大規模な面積を有する冷凍施設では、通気性能の観点から通気量が自ずと多くなることや、圧力損失が大きくなるといった課題もある。また、パイプ内は低温のため、外気をパイプ内に導入する夏季にはパイプ内に結露水が付着し得ることから、パイプは勾配を設けて施工し、外部への排水を可能にするのが一般的となる。このため、冷凍施設の規模が大きく、パイプが長い場合には、この排水に要するパイプの勾配の確保が困難な事態も生じ得る。さらに、冷凍施設内における、例えば壁空間(冷凍庫等の側面と壁の間の空間)や天井空間(冷凍庫等の天端面と天井の間の空間)等においても結露対策が必要になり、冷凍施設全体としての結露対策に要する施工費が嵩み、上記するように大規模な冷凍施設ではこの課題は一層顕著になる。
【0006】
例えば、具体的に冷凍施設を例示すると次のようになる。まず、床下のパイプに外気を導入するべく、外気導入口もしくは外気排気口等に床下用のファンを設け、床下用のファンを作動させることにより、床下のパイプに外気を流通させ、凍上対策とパイプ内の結露対策を行う。このことに加えて、壁空間や天井空間にもこれらの空間に固有のファンを設け、ファンを作動させることにより、壁空間や天井空間の結露対策を行うことにより、施設全体の結露対策と床下地盤の凍上対策を可能とした冷凍施設となる。すなわち、冷凍施設内には、場所ごとに固有のファンが設置されることとなり、冷凍施設の施工費とランニング費用の双方が高騰し易い。
【0007】
ここで、穴明き管による床下送風配管を床下砕石層内に配設し、この送風配管に、冷凍室外機の排熱による温風と、外気を取り入れて建物の外壁及び屋根と冷凍庫等の壁との間の空間に流した空気とを、切り替え可能に送り込む床下凍上防止方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の床下凍上防止方法は、土間コンクリートの下方に床下砕石層を設け、この床下砕石層に床下送風配管を埋設することから、上記する通気管工法が適用されることになるが、この床下凍上防止方法を適用したとしても、上記する課題、すなわち、可及的に安価な施工費とランニング費用にて凍上防止と結露防止の双方を可能とした、冷凍施設を提供することはできない。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、可及的にシンプルな構成で、かつ可及的に安価な施工費とランニング費用にて、凍上防止と結露防止の双方を図ることのできる冷凍施設を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成すべく、本発明による冷凍施設の一態様は、
床と、壁と、天井とを備え、該床と該壁と該天井により形成される収容空間に冷凍庫が配設されている冷凍施設であって、
前記冷凍庫の側面と前記壁の間に壁空間が形成され、
前記冷凍庫の天端面と前記天井の間に天井空間が形成され、
前記冷凍庫の下方に下方空間が形成され、
前記収容空間には、分離空間を介して複数の前記冷凍庫が配設されており、
前記壁空間と、前記天井空間と、前記分離空間と、前記下方空間は連通して流体の流通路を形成しており、
前記壁に給気口が設けられ、前記下方空間の端部に排気口が設けられており、
前記流通路において、前記壁空間から前記天井空間及び前記分離空間を経て、前記下方空間に前記流体を流通させるファンが設けられていることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、冷凍施設の収容空間に複数の冷凍庫(例えばいずれも0℃以下の低温室)が分離空間を介して配設されている形態において、壁空間と、天井空間と、分離空間と、下方空間(床下の空間)が連通する流体の流通路のいずれかの箇所にファンが設けられていることにより、このファンを作動させた際に、壁空間と天井空間、さらには床下の下方空間の全ての空間に外気等の流体を流通させることができる。すなわち、例えば一基のファンのみにより、冷凍施設の全域の結露防止と床下地盤の凍上防止の双方を行うことが可能になる。そのため、天井空間や壁空間の結露対策にもなり、外気等の流通経路がシンプルになることで施設の構成も自ずとシンプルになり、冷凍施設の施工費とランニング費用の双方を低減することが可能になる。ここで、冷凍施設が平屋建ての形態では、天井は屋根となり、天井空間は屋根裏空間(小屋裏空間)となる。一方、冷凍施設が二階建て等の複数階建ての形態では、天井は一階の天井であり、天井空間は、一階の天井と二階の床の間の床下空間もしくは一階の天井下の空間となる。
【0013】
ファンは、例えば外気を導入するべく設けられている壁の給気口に給気ファンとして取り付けられてもよいし、流通路を流通した外気を屋外に排出するべく下方空間の端部に設けられている排気口に排気ファンとして取り付けられてもよいし、あるいは、分離空間の途中位置(例えば、分離空間と下方空間の境界領域等)に取り付けられてもよい。例えば、排気ファンを適用する場合は、日射受熱によって高温になり易い天井空間に存在する空気を積極的に床下の下方空間に送ることができ、少ない風量でも冷凍庫下方の地盤を効果的に加温することができる。従って、例えば高規格な排気ファンの適用は必ずしも必要ない。一方、給気ファンを適用する場合は、この給気ファンによって外気を積極的に導入することになるが、冷凍庫からの冷熱よりも高温の外気により、冷凍庫下方の地盤を効果的に加温することができる。
【0014】
本態様の冷凍施設は、通気管工法、二重床工法のいずれの工法にて床下の下方空間が形成されてもよい。また、これらの工法以外にも、土間スラブ(土間コンクリートスラブ)の上にある床の内部に外気等を流通させる、所謂土間上通気工法にて下方空間が形成されてもよい。
【0015】
また、本発明による冷凍施設の他の態様は、前記冷凍庫の周囲が断熱材フォームにて包囲されており、前記分離空間が左右にある該断熱材フォームにて形成されていることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、冷凍庫の周囲が断熱材フォームにて包囲されていることにより、分離空間を、その左右にある冷凍庫の備える断熱材フォームにて形成することができる。この構成により、分離空間を流通する外気が冷凍庫からの冷熱によって冷やされ、下方空間を流れた際の凍上防止作用が低下することを抑制できる。
【0017】
また、本発明による冷凍施設の他の態様は、
床と、壁と、天井とを備え、該床と該壁と該天井により形成される収容空間に冷凍庫が配設されている冷凍施設であって、
前記冷凍庫の側面と前記壁の間に壁空間が形成され、
前記冷凍庫の天端面と前記天井の間に天井空間が形成され、
前記冷凍庫の下方に下方空間が形成され、
前記収容空間には、分離空間を介して、前記冷凍庫と、該冷凍庫よりも温度の高い冷蔵庫もしくは室が配設されており、
前記分離空間には、前記天井空間と前記下方空間の双方に連通する保温ダクトが配設され、
前記壁空間と、前記天井空間と、前記保温ダクトと、前記下方空間は連通して流体の流通路を形成しており、
前記壁に給気口が設けられ、前記下方空間の端部に排気口が設けられており、
前記流通路において、前記壁空間から前記天井空間及び前記保温ダクトを経て、前記下方空間に前記流体を流通させるファンが設けられていることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、冷凍施設の収容空間に、冷凍庫(例えば0℃以下の低温室)と冷蔵庫(例えば0℃より高温の保管庫)や室(作業室、会議室等)が分離空間を介して配設されている形態において、壁空間と、天井空間と、保温ダクトと、下方空間(床下の空間)が連通する流体の流通路のいずれかの箇所にファンが設けられていることにより、このファンを作動させた際に、壁空間と天井空間、さらには床下の下方空間の全ての空間に外気等の流体を流通させることができる。
【0019】
また、本態様では、分離空間において、天井空間と下方空間の双方に連通する保温ダクトが配設され、この保温ダクトが流通路の構成要素となっている。このように分離空間に保温ダクトが配設されることにより、例えば常温の冷蔵庫や室の温度を保温ダクトに提供し、保温ダクト内を流通する外気等を比較的高い温度に保温でき、下方空間に提供された外気等による凍上防止作用を保証することが可能になる。尚、分離空間において、例えば複数の保温ダクトが設けられているのが好ましく、通気管工法が適用される場合は、下方空間を複数のパイプ(塩ビ管等)が形成し、各保温ダクトに対して対応するパイプが連結されることにより、複数の流通路が形成される。
【0020】
また、本発明による冷凍施設の他の態様は、前記冷凍庫の周囲が断熱材フォームにて包囲されており、前記前記分離空間における前記冷蔵庫側もしくは前記室側には、非断熱性であり、通気性を有する仕切り壁が設けられていることを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、冷凍庫の周囲が断熱材フォームにて包囲されていることにより、分離空間にある保温ダクトを流通する外気が冷凍庫からの冷熱によって冷やされ、下方空間を流れた際の凍上防止作用が低下することを抑制できる。さらに、分離空間における冷蔵庫側もしくは前記室側において、非断熱性であり、通気性を有する仕切り壁が設けられていることにより、例えば常温の冷蔵庫や室の温度を保温ダクトに提供し、保温ダクト内を流通する外気等を比較的高い温度に保温できるとともに、冷蔵庫側や室側から分離空間を視認した際に保温ダクトが仕切り壁にて視認できないようにされることで、露出した保温ダクトに起因して施設内の意匠性が損なわれることを防止できる。
【発明の効果】
【0022】
以上の説明から理解できるように、本発明の冷凍施設によれば、可及的にシンプルな構成で、かつ可及的に安価な施工費とランニング費用にて、凍上防止と結露防止の双方を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1実施形態に係る冷凍施設の一例を示す縦断面図である。
【
図2】第2実施形態に係る冷凍施設の一例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、各実施形態に係る冷凍施設の一例について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0025】
[第1実施形態に係る冷凍施設]
はじめに、
図1を参照して、第1実施形態に係る冷凍施設について説明する。ここで、
図1は、第1実施形態に係る冷凍施設の一例を示す縦断面図である。
【0026】
冷凍施設100は、床11と、壁12と、天井13(屋根)とを有する平屋の建物10と、建物10の内部の収容空間Sにおいて、床11に載置されている複数(図示例は二つ)の冷凍庫30とを有する。地盤Gの上には砕石層21が敷設され、砕石層21の上に土間コンクリートスラブからなる床11が設けられている。尚、床11は、土間コンクリートスラブと、その上に敷設される別途の床材により形成されてもよい。
【0027】
冷凍庫30は、その内部が0℃以下(例えば-25℃程度)に設定される貯蔵庫であり、その周囲が断熱材フォーム35により包囲されている。ここで、断熱材フォーム35は、発泡ポリスチレンや発泡スチレン、ポリスチレン、スチレン等のフォーム材により形成される。
【0028】
冷凍庫30(の断熱材フォーム35)の側面31と壁12の間には、壁空間16が形成されている。ここで、壁12は、金属製の外装材及び内装材が溝形鋼等の形鋼材による下地材(図示せず)により接合された構造を呈しており、鉄筋コンクリート製の布基礎15の上に立設されている。
【0029】
壁12の下端(布基礎15の上方)には、給気口14が設けられている。図示例では、左右の壁12の下端にそれぞれ、給気口14が設けられている。
【0030】
一方、冷凍庫30(の断熱材フォーム35)の天端面32と天井13の間には、天井空間17(屋根裏空間)が形成されている。ここで、天井13は、鋼板やステンレス、ガリバリウム鋼板、これらの板材に合成樹脂塗装やメッキが施された波板や折板等からなる金属屋根により形成される。尚、図示例の冷凍施設100は平屋建ての施設であるが、冷凍施設は二階建て等の複数階建ての施設であってもよく、この場合は、一階の天井と二階の床の間の床下空間や一階の天井下の空間が天井空間となる。
【0031】
また、左右にある冷凍庫30の間には、分離空間18が形成されている。すなわち、分離空間18を介して、左右の冷凍庫30が離間した状態で収容空間Sに配設されている。
【0032】
この分離空間18の下方位置、すなわち、分離空間18における床11の上方には、ファン40が回転自在に取り付けられている。ファン40には、プロペラファンやシロッコファン、ターボファン、斜流ファン、ラインフローファンなど、多様な形態のファンが適用できる。
【0033】
さらに、分離空間18の下方の床11を貫通し、冷凍庫30の下方の床11のさらに下方には、砕石層21の内部を側方の布基礎15に向かって下方に傾斜する線形の下方空間19が通気管工法により設けられている。この下方空間19は塩ビ管等により形成され、布基礎15の立ち上がり部に形成されている排気口20に下方空間19の先端が連通している。図示例では、分離空間18から下方に二本の塩ビ管19が延び、左右の布基礎15の有するそれぞれの排気口20に連通している。
【0034】
このように、冷凍施設100では、壁12に設けられている給気口14、壁空間16,天井空間17,分離空間18,下方空間19,及び排気口20により、流通路25が形成される。図示例の冷凍施設100は、左右の二つの流通路25を備えている。
【0035】
ここで、ファン40の設置位置は、図示例以外にも、天井空間17と分離空間18の境界領域等であってもよい。いずれにせよ、ファン40が、中央の分離空間18のいずれかの位置に取り付けられていることにより、左右の給気口14から分離空間18に通じる二つの流通路25を、図示例のように例えば一基のファン40にて形成することが可能になり、可及的にシンプルな構成の冷凍施設100を形成できる。
【0036】
図示する流通路25では、給気口14を介して収容空間Sに取り込まれた外気(流体の一例)が、壁空間16を介し、日射受熱等によって一般に温かい天井空間17を介して冷凍庫30の下方の下方空間19に送気される。そのため、この外気の流通により、冷凍庫30の周囲の壁空間側の側面31や天井空間側の天端面32、分離空間側の側面に生じ得る結露を効果的に防止することができる。
【0037】
さらに、天井空間17等を経た外気が冷凍庫30の下方の下方空間19を流通することにより、冷凍庫30からの冷熱に起因する凍上も効果的に防止することができる。尚、冷凍庫30の周囲が断熱材フォーム35にて包囲されていることにより、分離空間18を、その左右にある冷凍庫30の備える断熱材フォーム35にて形成することができる。この構成により、分離空間18を流通する外気が冷凍庫30からの冷熱によって冷やされ、下方空間19を流れた際の凍上防止作用が低下することを抑制できる。
【0038】
冷凍施設100によれば、可及的に少ない基数(図示例は一基)のファン40を作動させるだけで、冷凍施設100の内部における結露の防止と、冷凍施設100の下方地盤の凍上の防止の双方を実現できる。そのため、可及的にシンプルな構成で、かつ可及的に安価な施工費とランニング費用にて、凍上防止と結露防止の双方を図ることが可能になる。尚、図示例の流通路25を備えていない従来の冷凍施設では、結露防止のために外気を下方空間に供給するファンを備えることに加えて、壁空間や天井空間における結露防止のためのファンを別途備える必要があり、冷凍施設内において場所ごとに固有の複数のファンが設置されることとなり、冷凍施設の施工費とランニング費用の双方が高騰し易い。
【0039】
図示する冷凍施設100では、下方空間19を通気管工法により施工しているが、下方空間19はその他、二重床工法や土間上通気工法にて施工されてもよい。例えば、下方空間が土間上通気工法にて施工される場合は、複数の断熱材フォームを積層させ、例えば最下層の断熱材フォームに複数の開口が開設することにより、この開口を下方空間とすることができる。
【0040】
[第2実施形態に係る冷凍施設]
次に、
図2を参照して、第2実施形態に係る冷凍施設について説明する。ここで、
図2は、第2実施形態に係る冷凍施設の一例を示す縦断面図である。
【0041】
冷凍施設200は、収容空間Sの内部において、分離空間18の左右に冷蔵庫30Aと冷凍庫30を有している。ここで、冷凍庫30が0℃以下の貯蔵庫であるのに対して、冷蔵庫30Aの内部の温度は0℃よりも高い例えば常温程度(10℃乃至25℃程度)であり、冷凍庫30に比べて高い温度で物品を保管できる。尚、冷蔵庫30Aに代わり、作業員のワークスペース(作業室、会議室等)等の室が設けられてもよい。
【0042】
冷蔵庫30Aでは、分離空間18側の断熱材フォームが廃され、その代わりに、非断熱性であり、通気性を有する仕切り壁50が設けられている。
【0043】
分離空間18には、天井空間17と下方空間19の双方に連通する保温ダクト60が配設されている。さらに、ファン40は、保温ダクト60の上方の位置に取り付けられている。
【0044】
冷凍施設200では、壁12に設けられている左右の給気口14、左右の壁空間16,左右の天井空間17,分離空間18に配設されている保温ダクト60,下方空間19,及び排気口20により、流通路25Aが形成される。尚、
図2では、一本の保温ダクト60が図示されているが、紙面奥行き方向に複数の保温ダクト60が配設され、各保温ダクト60に対して固有の塩ビ管19が取り付けられている形態であってもよい。また、図示例は、一本の保温ダクト60の下端が二股に分かれて左右の塩ビ管19に取り付けられているが、分離空間18に二本の保温ダクト60が併設され、各保温ダクト60に対して左右の塩ビ管19が取り付けられる形態であってもよい。
【0045】
冷凍施設200では、分離空間18において、天井空間17と下方空間19の双方に連通する保温ダクト60が配設され、この保温ダクト60が流通路25Aの構成要素となっている。このように分離空間18に保温ダクト60が配設されることにより、例えば常温の冷蔵庫30Aの温度を保温ダクト60に提供し、保温ダクト60内を流通する外気等を比較的高い温度に保温でき、下方空間19に提供された外気等による凍上防止作用を保証することが可能になる。
【0046】
また、冷凍庫30の周囲が断熱材フォーム35にて包囲されていることにより、分離空間18にある保温ダクト60を流通する外気が冷凍庫30からの冷熱によって冷やされ、下方空間19を流れた際の凍上防止作用が低下することを抑制できる。
【0047】
さらに、分離空間18における冷蔵庫30A側において、非断熱性であり、通気性を有する仕切り壁50が設けられていることにより、例えば常温の冷蔵庫30Aの温度を保温ダクト60に提供し、保温ダクト60内を流通する外気等を比較的高い温度に保温できるとともに、冷蔵庫30A側から分離空間18を視認した際に、保温ダクト60が仕切り壁50にて視認できないようにされることで、露出した保温ダクト60に起因して施設内の意匠性が損なわれることを防止できる。
【0048】
また、冷凍施設200によっても、冷凍施設100と同様に、可及的に少ない基数(図示例は一基)のファン40を作動させるだけで、冷凍施設200の内部における結露の防止と、冷凍施設200の下方地盤の凍上の防止の双方を実現できるため、可及的にシンプルな構成で、かつ可及的に安価な施工費とランニング費用にて、凍上防止と結露防止の双方を図ることが可能になる。
【0049】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0050】
10:建物
11:床(土間コンクリートスラブ)
12:壁
13:天井(屋根)
14:給気口
15:基礎
16:壁空間
17:天井空間(屋根裏空間)
18:分離空間
19:下方空間(塩ビ管)
20:排気口
21:砕石層
25、25A:流通路
30:冷凍庫
30A:冷蔵庫
31:側面
32:天端面
35:断熱材フォーム
40:ファン
50:仕切り壁
60:保温ダクト
100,200:冷凍施設
S:収容空間
G:地盤