(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20240104BHJP
【FI】
H02M3/28 Y
(21)【出願番号】P 2020060354
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】若林 浩二
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-153724(JP,A)
【文献】特開2010-193536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体パターンからなる一次側コイルが形成された一次側コイル形成部、及び一次側電子部品が実装される一次側実装部を有する一次側基板と、
導体パターンからなる二次側コイルが形成された二次側コイル形成部、及び二次側電子部品が実装される二次側実装部を有する二次側基板とを備え、
前記一次側コイル形成部及び前記二次側コイル形成部が板厚方向に対向するように、前記一次側基板及び前記二次側基板が前記板厚方向に並んで配置され
、
前記一次側コイルは、前記一次側コイル形成部の上面に形成され、
前記二次側コイルは、前記二次側コイル形成部の下面に形成され、
電気的な絶縁性を有する材料からなり、前記板厚方向において前記一次側コイル形成部の上面と前記二次側コイル形成部の下面との間に挟まれる板状の絶縁部材をさらに備える電力変換装置。
【請求項2】
前記一次側実装部及び前記二次側実装部が前記板厚方向に対向しない位置となるように、前記一次側基板及び前記二次側基板が前記板厚方向に並んで配置される請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記一次側実装部及び前記二次側実装部が前記板厚方向に直交する方向において前記一次側コイル形成部及び前記二次側コイル形成部を間に挟んだ対称な位置となるように、前記一次側基板及び前記二次側基板が前記板厚方向に並んで配置される請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記一次側基板及び前記二次側基板に電気的に接続され、前記一次側電子部品及び前記二次側電子部品を制御する制御回路を有する制御基板を備え、
前記一次側基板、前記二次側基板及び前記制御基板が前記板厚方向に並んで配置される請求項1から3のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記一次側基板及び前記二次側基板が配置されるケースを備え、
前記一次側基板及び前記二次側基板はそれぞれ、形成されるコイルのターン数及び実装される電子部品の種類の少なくともいずれかが異なり、基板外形寸法が同じである複数種類の基板の中から選択可能となっており、
選択された前記一次側基板及び前記二次側基板が前記ケースに配置される請求項1から4のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トラクターや重機などの車両や産業機械には、DC-DCコンバータなどの電力変換装置が搭載されている。特許文献1には、一次側コイル、二次側コイル及びコアからなるトランスと、一次側コイルに接続された一次側回路と、二次側コイルに接続された二次側回路とを有する電力変換装置が開示されている。一次側回路は、直流電流を交流電流に変換して一次側コイルに出力する。二次側回路は、二次側コイルに流れる交流電流を直流電流に変換する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電力変換装置に要求される仕様(例えば、一次側コイルや二次側コイルのターン数、一次側回路や二次側回路の構成)は、入力電圧や出力電圧に応じて異なる。このため、電力変換装置全体を一括して設計すると、入力電圧や出力電圧が異なる場合に電力変換装置全体を設計変更しなくてはならず、様々な仕様への対応が難しく、汎用性が低い電力変換装置になる、という課題があった。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みたものであって、汎用性が高い電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、導体パターンからなる一次側コイルが形成された一次側コイル形成部、及び一次側電子部品が実装される一次側実装部を有する一次側基板と、導体パターンからなる二次側コイルが形成された二次側コイル形成部、及び二次側電子部品が実装される二次側実装部を有する二次側基板とを備え、前記一次側コイル形成部及び前記二次側コイル形成部が板厚方向に対向するように、前記一次側基板及び前記二次側基板が前記板厚方向に並んで配置され、前記一次側コイルは、前記一次側コイル形成部の上面に形成され、前記二次側コイルは、前記二次側コイル形成部の下面に形成され、電気的な絶縁性を有する材料からなり、前記板厚方向において前記一次側コイル形成部の上面と前記二次側コイル形成部の下面との間に挟まれる板状の絶縁部材をさらに備える電力変換装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る電力変換装置によれば、一次側コイルと一次側電子部品とが一次側基板にまとめられ、二次側コイルと二次側電子部品とが二次側基板にまとめられているため、一次側を構成する部品点数、二次側を構成する部品点数をそれぞれ減らすことができる。これにより、要求される仕様(例えば、入力電圧や出力電圧)に応じて、一次側コイルのターン数や一次側電子部品の種類を異ならせた複数種類の一次側基板の中から、要求される仕様に対応する一次側基板を選択し、二次側コイルのターン数や二次側電子部品の種類を異ならせた複数種類の二次側基板の中から、要求される仕様に対応する二次側基板を選択し、それらの一次側基板及び二次側基板を組み合わせることにより、様々な仕様に対応可能な電力変換装置を提供することができる。すなわち、汎用性が高い電力変換装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電力変換装置を示す分解斜視図である。
【
図3】
図2のIII-IIIの位置での上記電力変換装置の断面図である。
【
図5】上記電力変換装置の一次側基板を示す斜視図である。
【
図6】上記電力変換装置の二次側基板を示す斜視図である。
【
図7】上記電力変換装置のブラケットを示す斜視図である。
【
図8】上記電力変換装置の制御基板を示す斜視図である。
【
図9】上記電力変換装置において選択される複数種類の一次側基板及び二次側基板の例を示す図である。
【
図10】上記電力変換装置における一次側基板及び二次側基板の組み合わせの一例を示す回路図である。
【
図11】上記電力変換装置における一次側基板及び二次側基板の組み合わせの他の例を示す回路図である。
【
図12】上記電力変換装置における一次側基板及び二次側基板の組み合わせの他の例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1~
図12を参照して本発明の一実施形態について説明する。本実施形態では、説明の便宜上、
図1等に示す上下、左右及び前後の矢印に示す方向を、上下方向、左右方向及び前後方向と定義して構成要素の位置や向き等を説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る電力変換装置1は、ケース2と、トランス3と、入力コネクタ4と、平滑回路部5と、出力コネクタ6と、制御基板7と、カバー8とを備える。
【0010】
ケース2は、アルミニウムなどの熱伝導率が高い材料からなり、上下方向を厚さ方向とする板状に形成されている。
図1及び
図2に示すように、ケース2は、上側に向く載置面20を有する。載置面20には、トランス3を載置するための三つの載置領域21~23が設けられている。第一載置領域21、第二載置領域22及び第三載置領域23は、この順番で後方から前方に向かって並んで設けられている。第一載置領域21は、載置面20と略同じ高さの平面領域になっている。第二載置領域22は、第一載置領域21よりも一段高い平面領域になっている。第三載置領域23は、第二載置領域22よりも一段高い平面領域になっている。第一~第三載置領域21~23は、第一載置領域21が最も低く、第二載置領域22、第三載置領域23の順に一段ずつ高くなった段差状になっている。第二載置領域22には、後述するトランスコア34を載置するためのコア載置凹部24が形成されている。コア載置凹部24は、左右方向に延びる凹部であり、第二載置領域22の左右両端部まで延びて左右方向にも開口している。コア載置凹部24の底面は、載置面20及び第一載置領域21と略同じ高さの平面になっている。ケース2は、載置面20に載置されるトランス3等の熱を放散させて冷却するヒートシンクの機能を有している。ケース2は、空気の対流を利用した空冷式のヒートシンクであるが、水などの冷却媒体を利用した冷媒式のヒートシンクとしてもよい。
【0011】
ケース2の第一載置領域21には、二つの円筒状の基板支持部212が左右方向に間隔をあけて形成されている。二つの基板支持部212はそれぞれ、上下方向に延びる円筒状であり、その上面にネジ孔211が形成されている。二つの基板支持部212の上面の高さはそれぞれ、第二載置領域22と略同じ高さになっている。第二載置領域22には、コア載置凹部24よりも第一載置領域21に近い側の領域において、二つのネジ孔221が左右方向に間隔をあけて形成されている。第三載置領域23には三つのネジ孔231が形成されている。三つのネジ孔231は、左右方向に間隔をあけて形成された二つのネジ孔231と、それら二つのネジ孔231の間の位置で二つのネジ孔231よりも第二載置領域22に近づいた位置に形成された一つのネジ孔231とからなる。
【0012】
トランス3は、一次側基板31と、二次側基板32と、絶縁部材33と、トランスコア34とを備える。以下の説明では、一次側基板31、二次側基板32の板厚方向を上下方向として説明する。
【0013】
図1及び
図5に示すように、一次側基板31は、基板前方側に設けられた一次側コイル形成部311と、基板後方側に設けられた一次側実装部312とを有する。一次側コイル形成部311及び一次側実装部312は一枚の基板に形成されている。一次側コイル形成部311には、帯状の導体パターンからなる一次側コイル3111が形成されている。一次側コイル3111は、一次側コイル形成部311の上面において渦状に2ターン(2周)のコイルが形成され、そのコイルに繋がって更に渦状に2ターンのコイルが一次側コイル形成部311の下面に形成されて、合計4ターンのコイルになっている。一次側コイル3111は、渦状の2ターンのコイルが板厚方向に2層繋がって形成された構成になっている。一次側コイル形成部311の上面における一次側コイル3111の外周側の端部は、一次側実装部312まで延びて一次側実装部312に形成された導体パターン3125(配線パターン)に接続されている。一方、一次側コイル形成部311の上面における一次側コイル3111の内周側の端部は、板厚方向の2層目のコイルに繋がり、その2層目のコイルの端部が一次側実装部312まで延びて一次側実装部312に形成された導体パターン3126(配線パターン)に接続されている。なお、一次側コイル3111の2層目のコイルは、一次側コイル形成部311の下面や内部において渦状に形成されてもよい。
【0014】
一次側コイル形成部311には、一次側コイル3111の内側において上下方向に貫通する貫通孔3112が形成されている。一次側コイル形成部311の外形は、一次側コイル形成部311に形成された一次側コイル3111の外形に合わせた円形状になっている。
【0015】
一次側実装部312は上下方向から見て矩形板状に形成されている。一次側実装部312の前方側の辺に、一次側コイル形成部311が繋がって一体になっている。一次側実装部312の下面には、一つのFETモジュール3121(一次側電子部品)が実装される。FETモジュール3121は、一次側回路としてブリッジ回路を構成する四つのFET3122(電解効果トランジスタ)及び回路基板(
図10~
図12)と、それらのブリッジ回路を内部に収容する直方体状の封止樹脂と、ブリッジ回路に接続されて封止樹脂の外部まで延びる複数の接続端子とを有する。FETモジュール3121は、一次側実装部312に形成されたスルーホールに複数の接続端子を一次側実装部312の下面側から挿通させて半田付けされることにより、一次側実装部312の下面に実装される。このように実装されたFETモジュール3121は、一次側実装部312に形成された導体パターン3125,3126(配線パターン)を介して一次側コイル3111に接続され(
図4参照)、FETモジュール3121に入力された直流電流を交流電流に変換して一次側コイル3111に出力する。
【0016】
一次側実装部312の上面には、一次側基板31を制御基板7に電気的に接続するための複数の接続ピン3123が上方に延びて取り付けられている。複数の接続ピン3123はそれぞれ、一次側実装部312に形成された配線パターンに接続され、当該配線パターンを介して一次側実装部312に実装されるFETモジュール3121に電気的に接続される。
【0017】
一次側実装部312には、一次側実装部312を上下方向に貫通する四つの固定用孔3124が形成されている。四つの固定用孔3124はそれぞれ、一次側基板31をケース2に固定するためのネジ(不図示)を通す孔であり、ケース2の第一及び第二載置領域21,22に形成された四つのネジ孔211,221に対応している。固定用孔3124は一次側実装部312の左右方向の両端部に二つずつ配置され、一次側実装部312の左右方向の各端部に位置する二つの固定用孔3124が前後方向に間隔をあけて位置する。
【0018】
図1及び
図6に示すように、二次側基板32は、基板後方側に設けられた二次側コイル形成部321と、基板前方側に設けられた二次側実装部322とを有する。二次側コイル形成部321及び二次側実装部322は一枚の基板に形成されている。二次側コイル形成部321には、帯状の導体パターンからなる二次側コイル3211が形成されている。二次側コイル3211は、二次側コイル形成部321の上面に形成された1ターン(1周)のコイルと、二次側コイル形成部321の下面に形成された1ターンのコイルとを有し、それらのコイルが並列に接続された構成となっている。二次側コイル3211の両端部はそれぞれ、二次側実装部322まで延びて二次側実装部322に形成された配線パターン(不図示)に接続されている。なお、二次側コイル3211は、二次側コイル形成部321の下面や内部に形成されてもよい。
【0019】
二次側コイル形成部321には、二次側コイル3211の内側において上下方向に貫通する貫通孔3212が形成されている。二次側コイル形成部321の外形は、二次側コイル形成部321に形成された二次側コイル3211の外形に合わせた円形状になっている。
【0020】
二次側実装部322は上下方向から見て矩形板状に形成されている。二次側実装部322の後方側の辺に、二次側コイル形成部321が繋がって一体になっている。二次側実装部322の上面には、二つのFET3221(電解効果トランジスタ)と、二つのダイオード3222とが実装されている。二つのFET3221及び二つのダイオード3222はそれぞれ、二次側実装部322に形成された配線パターンに接続され、これらの配線パターンと共に二次側回路(ブリッジ回路)を構成する。この二次側回路は、二次側コイル3211に接続され(
図4参照)、二次側コイル3211に流れる交流電流を直流電流に変換する整流回路である。二つのFET3221はブリッジ回路におけるロ―サイドの整流素子として使用され、二つのダイオード3222はブリッジ回路におけるハイサイドの整流素子として使用される(
図10参照)。この二次側回路では、FET3221とダイオード3222とを直列接続した組を二つ並列に接続しているため、高耐圧化により広範囲の入力電圧に対応可能である。また、これらの電子部品のいずれか一つにショートなどの故障が発生しても出力短絡を引き起こさないため、高い安全性を確保することができる。
【0021】
二次側実装部322の上面には、二次側基板32を制御基板7に電気的に接続するための複数の接続ピン3223が上方に延びて取り付けられている。複数の接続ピン3223はそれぞれ、二次側実装部322に形成された配線パターンに接続され、当該配線パターンを介して二次側実装部322に実装される二つのFET3221及び二つのダイオード3222に電気的に接続されている。
【0022】
二次側実装部322には、二次側実装部322を上下方向に貫通する三つの固定用孔3224が形成されている。三つの固定用孔3224はそれぞれ、二次側基板32をケース2に固定するためのネジ(不図示)を通す孔であり、ケース2の第三載置領域23に形成された三つのネジ孔231に対応している。三つの固定用孔3224は左右方向に間隔をあけて並んでいる。また、二次側実装部322には、二次側実装部322を上下方向に貫通する一つの接続用孔3225が形成されている。接続用孔3225は、二次側実装部322における二次側コイル形成部321と反対側の位置に形成されている。接続用孔3225は、二次側実装部322に形成された配線パターン(二次側回路)と平滑回路部5とを電気的に接続するためのバスバー(不図示)をネジ止め等により固定するための孔である。
【0023】
図1に示すように、絶縁部材33は、電気的な絶縁性を有する材料からなり、上下方向を板厚方向とする円盤状に形成されている。絶縁部材33には、上下方向に貫通する貫通孔331が形成されている。絶縁部材33は、絶縁部材33の下面側において一次側基板31の一次側コイル形成部311を保持し、絶縁部材33の上面側において二次側基板32の二次側コイル形成部321を保持するボビンとしての機能を有している。
【0024】
トランスコア34は、磁性材料からなるE型の第一コア部材341と、磁性材料からなるI型の第二コア部材342とを有する。第一コア部材341は、上下方向を板厚方向とする平板状の基部3411と、基部3411の下面中央から下方に延びる円柱状の挿通部3412と、基部3411の左右端部からそれぞれ下方に延びる二つの壁部3413とを有する。第二コア部材342は、上下方向を板厚方向とする平板状に形成されている。トランスコア34は、第一コア部材341における挿通部3412の下面及び左右の壁部3413の下面と、第二コア部材342の上面とを面接触させて組み合わせることにより構成される。
【0025】
このように構成されるトランス3では、
図1~
図3に示すように、トランスコア34の第二コア部材342がケース2のコア載置凹部24内に上方から挿入されて載置される。第二コア部材342の板厚がコア載置凹部24の深さと略同じ寸法になっており、コア載置凹部24内に載置された第二コア部材342の上面とケース2の第二載置領域22をなす上面とが面一の状態となる。第二コア部材342の前後端部はそれぞれ内側にくびれた凹状になっており、それに対応してコア載置凹部24の前後壁が内側に凸状になっている。これらの凹凸の係合により、コア載置凹部24内に載置された第二コア部材342の左右方向の移動が規制されるようになっている。
【0026】
トランスコア34の第二コア部材342をケース2のコア載置凹部24内に載置した後に、一次側基板31の一次側コイル形成部311の下面が、第二コア部材342の上面及びケース2の第二載置領域22上に面接触し、一次側実装部312の下面に実装されたFETモジュール3121の下面がケース2の第一載置領域21上に面接触するように、一次側基板31がケース2の載置面20に載置される。このとき、第一載置領域21に形成された二つの基板支持部212の上面が一次側実装部312の下面に面接触し、二つの基板支持部212によっても一次側基板31が支持されるようになっている。また、第二載置領域22と第三載置領域23の間の段差壁部には、一次側コイル形成部311の円形状の外形に合わせた円弧状の凹部が形成されている。このように載置された一次側基板31は、四つの固定用孔3124にそれぞれ上方から挿入されたネジを、二つの基板支持部212のネジ孔211及び第二載置領域22の二つのネジ孔221に螺合させることにより、当該一次側基板31がケース2に固定される。なお、四つの固定用孔3124のうち一次側実装部312の前方側に形成された左右二つの固定用孔3124へのネジの挿入と、当該ネジを第二載置領域22の二つのネジ孔221へ螺合させることは、後述するブラケット9も一緒に固定するため、後の工程にて行われる。
【0027】
ケース2に固定された一次側基板31の一次側コイル形成部311の上面に絶縁部材33の下面が面接触し、一次側コイル形成部311の貫通孔3112と絶縁部材33の貫通孔331とが上下方向に連通するように、絶縁部材33が一次側コイル形成部311上に載置される。そして、二次側基板32の二次側コイル形成部321の下面が、一次側コイル形成部311上に載置された絶縁部材33の上面に面接触し、絶縁部材33の貫通孔331と二次側コイル形成部321の貫通孔3212とが上下方向に連通し、さらに二次側実装部322の下面がケース2の第三載置領域23上に面接触するように、二次側基板32がケース2の載置面20上に載置される。このように載置された二次側基板32は、三つの固定用孔3224にそれぞれ上方から挿入されたネジを第三載置領域23の三つのネジ孔231に螺合させることにより、当該二次側基板32がケース2に固定される。なお、三つの固定用孔3224のうち二次側実装部322の中央側に形成された一つの固定用孔3224へのネジの挿入と、当該ネジを第三載置領域23の中央側に形成された一つのネジ孔231へ螺合させることは、後述するブラケット9も一緒に固定するため、後の工程にて行われる。
【0028】
二次側基板32がケース2に固定されて上下方向に連通した二次側コイル形成部321の貫通孔3212、絶縁部材33の貫通孔331及び一次側コイル形成部311の貫通孔3112に、トランスコア34の第一コア部材341の挿通部3412を上方から挿入し、挿通部3412の下面及び第一コア部材341の左右の壁部3413の下面が、第二コア部材342の上面に面接触するように、第一コア部材341が第二コア部材342上に載置される。このように第一コア部材341が載置されると、上下方向に重ねて載置された二次側コイル形成部321、絶縁部材33及び一次側コイル形成部311の左右方向の側方にそれぞれ第一コア部材341の左右の壁部3413が配置された状態となる。
【0029】
第一コア部材341を第二コア部材342上に載置した後に、
図7に示すブラケット9によってトランスコア34がケース2に固定される。ブラケット9は、金属製の平板部材を折り曲げ加工等して形成されており、矩形状のベース部91と、ベース部91の後端部の左右に設けられた二つの第一固定部92と、ベース部91の前端部の中央に設けられた第二固定部93と、ベース部91の内側に設けられた二つのコア押圧部94と、ベース部91の後端部の中央に設けられた第一基板押圧部95と、ベース部91の前端部の左右に設けられた二つの第二基板押圧部96とを有する。
【0030】
ベース部91の左右端部にはそれぞれ、下方に延びる壁部が形成されている。二つの第一固定部92はそれぞれ、ベース部91の後端部から下方に延び、更にその先端側が後方に延びるように形成されている。二つの第一固定部92の先端側にはそれぞれ、上下方向に貫通した第一ネジ挿通孔921が形成されている。第二固定部93は、ベース部91の前端部から下方に延び、更にその先端側が前方に延びるように形成されている。第二固定部93の先端側には、上下方向に貫通した第二ネジ挿通孔931が形成されている。
【0031】
二つのコア押圧部94はそれぞれ、ベース部91をコ字状に切り抜くことにより形成され、ベース部91の中央部から左右方向に斜め下方に延びる板状になっている。二つのコア押圧部94は、ベース部91と繋がる基端部を支点として上下方向に弾性変形可能な板バネになっている。第一基板押圧部95は、ベース部91の後端部から後方斜め下方に延びる板状であり、ベース部91と繋がる基端部を支点として上下方向に弾性変形可能な板バネになっている。二つの第二基板押圧部96はそれぞれ、ベース部91の前端部から下方に延び、更にその先端側がU字状に折り曲げられて形成されている。
【0032】
上記のように第一コア部材341を第二コア部材342上に載置した後に、ブラケット9の二つの第一固定部92の先端側の下面が、一次側基板31の一次側実装部312の上面に面接触し、二つの第一固定部92の第一ネジ挿通孔921と一次側実装部312の前方側に形成された左右二つの固定用孔3124とが連通するように、ブラケット9が一次側基板31上に載置される。さらに、ブラケット9の第二固定部93の先端側の下面が、二次側基板32の二次側実装部322の上面に面接触し、第二固定部93の第二ネジ挿通孔931と二次側実装部322の中央側に形成された一つの固定用孔3224とが連通するように、ブラケット9が二次側基板32上に載置される。このように載置されたブラケット9は、二つの第一ネジ挿通孔921及び一次側実装部312の二つの固定用孔3124にそれぞれ上方から挿入されたネジを、ケース2の第二載置領域22の二つのネジ孔221へ螺合させるとともに、第二ネジ挿通孔931及び二次側実装部322の固定用孔3224に上方から挿入されたネジを、ケース2の第三載置領域23のネジ孔231に螺合させることにより、当該ブラケット9が一次側基板31及び二次側基板32と一緒にケース2に固定される。
【0033】
ブラケット9がケース2に固定されると、ベース部91がトランスコア34の上方に配置され、二つのコア押圧部94の先端部がそれぞれ第一コア部材341の上面に押し付けられて、二つのコア押圧部94がそれぞれ弾性変形する。これら二つのコア押圧部94の弾性力によって第一コア部材341が第二コア部材342押し付けられるとともに、第二コア部材342がケース2のコア載置凹部24に押し付けられることにより、トランスコア34がケース2に固定される。また、ブラケット9がケース2に固定されると、第一基板押圧部95の下端部が、二次側基板32の二次側コイル形成部321の上面における後端側の領域3226(
図6参照)に押し付けられるとともに、二つの第二基板押圧部96の下端部がそれぞれ二次側実装部322の上面における後端側の左右二つの領域3227(
図6参照)に押し付けられる。
【0034】
このようにケース2に固定されたトランス3では、
図1~
図3に示すように、ケース2の第一載置領域21の上方側に一次側基板31の一次側実装部312が配置される。一次側実装部312の下面に実装されたFETモジュール3121の下面が第一載置領域21上に面接触した状態で配置される。ケース2の第二載置領域22の上方側には、一次側基板31の一次側コイル形成部311、絶縁部材33及び二次側コイル形成部321が上下方向に並んで配置される。一次側コイル形成部311の下面が絶縁シート(不図示)を介して第二載置領域22上に面接触し、その一次側コイル形成部311の上面に絶縁部材33の下面が面接触し、その絶縁部材33の上面に二次側コイル形成部321の下面が面接触した状態で配置される。二次側コイル形成部321の上面にも絶縁シート(不図示)が配置される。ケース2の第三載置領域23の上方側に二次側基板32の二次側実装部322が配置される。二次側実装部322の下面が絶縁シート(不図示)を介して第三載置領域23上に面接触した状態で配置される。
【0035】
図1に示すように、入力コネクタ4は、接続開口部を有するハウジング41と、ハウジング41内に設けられる複数の接続端子42とを有する。入力コネクタ4は、ケース2の後壁部の貫通孔にケース2の内側から挿通されて取り付けられ、一次側基板31の一次側実装部312が配置される第一載置領域21の近くに設けられる。ケース2に取り付けられた入力コネクタ4では、複数の接続端子42の端部側がハウジング41から突出してケース2の内側(前方)に延び、更にその先端側が上方に屈曲されて延びている。複数の接続端子42の当該先端側は、制御基板7に接続されるようになっている。
【0036】
平滑回路部5は、出力側チョークコイル51と、出力側コンデンサ52とを有する。平滑回路部5は、ケース2の載置面20における前端側に設けられる。出力側チョークコイル51は、二次側基板32の二次側実装部322の接続用孔3225を用いて固定されるバスバー(不図示)を介して二次側基板32の二次側回路に電気的に接続される。平滑回路部5は、二次側基板32の二次側回路から出力された電流の波形を平滑化するようになっている。
【0037】
出力コネクタ6は、ケース2の前端から前方に延びるように設けられ、平滑回路部5に電気的に接続されている(
図4参照)。
【0038】
図1、
図2及び
図8に示すように、制御基板7は、上下方向を板厚方向とする板状に形成されている。制御基板7の下面70には複数の制御用電子部品71が実装されている。複数の制御用電子部品71は、一次側基板31に実装されたFETモジュール3121、及び二次側基板32に実装された二つのFET3221の動作を制御する制御回路を構成する。制御基板7は、制御基板7の下面70がケース2の載置面20に対向するように、載置面20及び載置面20に配置されたトランス3の上方側に配置される。トランス3の上方側に配置された制御基板7には、一次側基板31の一次側実装部312に設けられた複数の接続ピン3123、二次側基板32の二次側実装部322に設けられた複数の接続ピン3223、及び入力コネクタ4の複数の接続端子42がそれぞれ接続される。これらの接続により、入力コネクタ4、制御基板7、一次側基板31及び二次側基板32が電気的に接続される。複数の制御用電子部品71は、制御基板7の下面70において、トランス3と対向する領域701を除く領域に実装されている。これにより、ケース2の載置面20及びトランス3と制御基板7との間隔を小さく抑えることができ、電力変換装置1の薄型化を図ることができる。
【0039】
図1及び
図2に示すように、カバー8は、下方に開口する箱状に形成されている。カバー8は、ケース2の載置面20、載置面20に配置されたトランス3及び平滑回路部5、並びに、載置面20及びトランス3の上方側に配置された制御基板7を覆うように、ケース2に装着可能になっている。カバー8の後壁部には、カバー8をケース2に装着する際に入力コネクタ4との干渉を防ぐための切欠き81が形成されている。同様に、カバー8の前壁部にも、出力コネクタ6との干渉を防ぐための切欠き(不図示)が形成されている。
【0040】
図4に示すように、電力変換装置1では、所定の電圧の直流電流が、入力コネクタ4から制御基板7を通して一次側基板31のFETモジュール3121に入力されて交流電流に変換され、一次側コイル3111に出力される。一次側コイル3111に交流電流が流れると、電磁誘導によって二次側コイル3211に交流電流が流れる。一次側コイル3111及び二次側コイル3211のターン数が互いに異なることで、二次側コイル3211に流れる交流電流の電圧は、一次側コイル3111に流れる交流電流の電圧と異なる。例えば、二次側コイル3211のターン数が一次側コイル3111のターン数よりも少ないと、二次側コイル3211に流れる交流電流の電圧は、一次側コイル3111に流れる交流電流の電圧よりも低くなる。二次側コイル3211に流れる交流電流は、二次側基板32のFET3221及びダイオード3222において直流電流に変換され、この直流電流の波形が平滑回路部5において平滑化される。平滑化された直流電流の電圧は、入力コネクタ4から入力された直流電流の電圧と異なる。平滑化された直流電流は出力コネクタ6から外部に出力される。
【0041】
上記のように電力変換装置1が動作する際には、一次側基板31の一次側コイル3111、FETモジュール3121、二次側基板32の二次側コイル3211、FET3221及びダイオード3222、トランスコア34が発熱するが、これらの熱はトランス3を載置したケース2に逃がすことができる。特に、FETモジュール3121は一次側実装部312を介さずに第一載置領域21に直接面接触させているため、FETモジュール3121の熱を効率よくケース2に逃がすことができる。
【0042】
電力変換装置1では、トランス3における一次側基板31及び二次側基板32を、コイルのターン数や実装部品等が異なる複数種類の一次側及び二次側基板の中から選択して変更可能になっている。これらの選択及び変更は、入力電圧や出力電圧等の要求される仕様に応じて行い、様々な仕様に対応可能な電力変換装置1とすることができる。
図9に例示するように、一次側基板は、上述した一次側基板31を含む四種類の一次側基板の中から適宜選択することができる。これら四種類の一次側基板は、外形形状や寸法は互いに同じになっており、FETモジュール3121が実装されることも同じであるが、一次側コイル形成部311に形成される一次側コイルの構成が異なっている。
【0043】
第一の一次側基板31‐1は、上述した一次側基板31と同じ基板である。第二の一次側基板31‐2の一次側コイル3111‐2は、一次側コイル形成部311の上面において渦状に2ターン(2周)のコイルが形成され、そのコイルに繋がって更に渦状に2ターンのコイルが一次側コイル形成部311の内部及び下面に3層形成されて、合計8ターンのコイルになっている。一次側コイル3111‐2は、渦状の2ターンのコイルが板厚方向に4層繋がって形成された構成になっている。第三の一次側基板31‐3の一次側コイル3111‐3は、一次側コイル形成部311の上面において渦状に3ターンのコイルが形成され、そのコイルに繋がって更に渦状に2ターンの二つのコイルと3ターンのコイルとが一次側コイル形成部311の内部及び下面に3層形成されて、合計10ターンのコイルになっている。一次側コイル3111‐3は、渦状の3ターンの二つのコイルと2ターンの二つのコイルとが板厚方向に4層繋がって形成された構成になっている。第四の一次側基板31‐4の一次側コイル3111‐4は、一次側コイル形成部311の上面において渦状に4ターンのコイルが形成され、そのコイルに繋がって更に渦状に3ターンの三つのコイルが一次側コイル形成部311の内部及び下面に3層形成されて、合計13ターンのコイルになっている。一次側コイル3111‐4は、渦状の4ターンのコイルと3ターンの三つのコイルとが板厚方向に4層繋がって形成された構成になっている。
【0044】
二次側基板は、上述した二次側基板32を含む四種類の二次側基板の中から適宜選択することができる。これら四種類の二次側基板は、外形形状や寸法は互いに同じになっているが、二次側コイル形成部321に形成される二次側コイルの構成や、二次側実装部322に実装される電子部品の種類が異なっている。第一の二次側基板32‐1は、上述した二次側基板32と同じ基板である。
【0045】
第二の二次側基板32‐2は、上述した二次側基板32と比較して、二次側コイル形成部321に形成される二次側コイル3211‐2の構成だけが異なる。二次側コイル3211‐2は、二次側コイル形成部321の上面に形成された1ターン(1周)のコイルと、二次側コイル形成部321の下面に形成された1ターンのコイルとが直列に接続されて、合計2ターンのコイルになっている。このように2ターン構成の二次側コイル3211‐2は、1ターン構成の第一の二次側基板32-1と比較して、出力電圧を二倍とすることができる。また、第二の二次側基板32-2では、第一の二次側基板32-1と同様に、広範囲の入力電圧に対応可能であり、かつ、高い安全性を確保することができる。
【0046】
第三の二次側基板32‐3は、上述した二次側基板32と比較して、二次側実装部322に実装される電子部品の種類だけが異なる。第三の二次側基板32‐3の二次側実装部322の上面には、四つのFET3221が実装されている。
図11に示すように、これら四つのFET3221は、二次側回路としてブリッジ回路を構成している。四つのFET3221は、ブリッジ回路におけるロ―サイド及びハイサイドの両方の整流素子として使用される。第三の二次側基板32‐3では、二次側回路がFET3221だけを用いた同期整流型の回路となるため、第一及び第二の二次側基板32‐1,32‐2よりも高効率化を実現することができる。また、二次側回路が同期整流型の回路となることで、二次側を入力側とし、一次側を出力側とした双方向側のトランスを構成することができる。
【0047】
第四の二次側基板32‐4では、
図9及び
図12に示すように、二次側実装部322に構成される二次側回路がセンタータップ方式の回路になっている。二次側コイル形成部321に形成される二次側コイル3211‐4は、二次側コイル形成部321の上面に形成された1ターンのコイルと、二次側コイル形成部321の下面に形成された1ターンのコイルとが直列に接続されている。その接続点には、二次側回路の第一の出力端子3228が接続されている。二次側回路の第二の出力端子3229は、直列接続された二つの二次側コイル3211‐4の両端に接続されている。二つの二次側コイル3211‐4の両端と第二の出力端子3229との間にはそれぞれ、二つのFET3221を並列接続したFETユニットが設けられている。第四の二次側基板32‐4では、二次側回路における電力損失を低減することができるため、高効率化を実現することができると共に、大電流出力にも対応することができる。なお、第四の二次側基板32‐4においては、各FETユニットにおけるFET3221の数を一つにすることができるため、また、二次側回路におけるFET3221をダイオードに変えることもできるため、第四の二次側基板32‐4の製造コストの削減を図ることができる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態に係る電力変換装置1によれば、一次側コイル3111と一次側回路を構成するFETモジュール3121とが一次側基板31にまとめられ、二次側コイル3211と二次側回路を構成する二次側電子部品とが二次側基板32にまとめられている。このため、一次側を構成する部品点数、二次側を構成する部品点数をそれぞれ減らすことができる。これにより、要求される仕様(例えば入力電圧や出力電圧)に応じて、例えば、一次側コイル3111のターン数を異ならせた四種類の一次側基板31-1~4の中から要求される仕様に対応する一次側基板を選択し、二次側コイル3211のターン数や二次側電子部品の種類(二次側回路の構成)を異ならせた四種類の二次側基板32-1~4の中から要求される仕様に対応する二次側基板を選択し、それらの一次側基板及び二次側基板を組み合わせることにより、様々な仕様に対応可能な電力変換装置1を提供することができる。すなわち、汎用性が高い電力変換装置1を提供することが可能となる。
【0049】
電力変換装置1では、四種類の一次側基板31-1~4の外形寸法が同じであり、四種類の二次側基板32-1~4の外形寸法が同じである。このため、要求される仕様に関わらず、電力変換装置1の他の構成要素(ケース2、入力コネクタ4、平滑回路部5、出力コネクタ6、カバー8など)を共通の部品として利用することができる。これにより、電力変換装置1の全ての構成要素を要求される仕様毎に用意する場合と比較して、構成要素のコスト削減を図ることができる。したがって、より低コストの電力変換装置1を提供することが可能となる。また、四種類の一次側基板31-1~4の外形寸法が同じであり、四種類の二次側基板32-1~4の外形寸法が同じであるため、仕様の異なる電力変換装置1であっても同一の組立装置で自動的に組み立てることができる。
【0050】
電力変換装置1では、一次側実装部312及び二次側実装部322が上下方向に対向しない位置となるように、一次側基板31及び二次側基板32が上下方向に並んで配置される。このため、一次側実装部312に実装されたFETモジュール3121において生じた熱や、二次側実装部322に実装された二次側電子部品において生じた熱が、一次側基板31と二次側基板32との間で籠ることを防止することができる。これにより、熱が籠ることに基づいて、FETモジュール3121や二次側電子部品の温度が過度に高くなることを防ぐことができる。
【0051】
電力変換装置1では、一次側実装部312及び二次側実装部322が前後方向において一次側コイル形成部311及び二次側コイル形成部321を間に挟む対称な位置となるように、一次側基板31及び二次側基板32が上下方向に並んで配置される。これにより、一次側実装部312に設けられるFETモジュール3121と、二次側実装部322に設けられる二次側電子部品とを互いに遠ざけることができ、これらFETモジュール3121と二次側電子部品との電磁気的な干渉を最小限に抑えることができる。
【0052】
電力変換装置1では、FETモジュール3121や四つの二次側電子部品の動作を制御する制御回路が、一次側基板31や二次側基板32とは別の制御基板7に設けられている。このため、仕様が異なる制御基板7を複数種類用意しておくことで、要求される仕様に応じて選択された一次側基板31及び二次側基板32に最適な種類の制御基板7を選択することにより、様々な仕様に対応可能な電力変換装置1を提供することができる。また、制御回路が一次側基板31や二次側基板32とは別の制御基板7に設けられ、制御基板7が一次側基板31及び二次側基板32に対して上下方向に並んで配置されるため、制御回路を一次側基板31や二次側基板32に設ける場合と比較して、上下方向から見た一次側基板31や二次側基板32の大きさを小さく抑えることができる。また、制御基板7を一次側基板31や二次側基板32に対して前後方向や左右方向に並べる場合と比較して、上下方向から見た電力変換装置1の大きさを小さく抑えることができる。したがって、電力変換装置1の小型化を図ることができる。
【0053】
電力変換装置1では、一次側コイル3111と二次側コイル3211とが互いに異なる基板(一次側基板31、二次側基板32)に設けられている。このため、一次側コイル3111と二次側コイル3211との間に配置される絶縁部材33の厚さや材料を、一次側コイル3111及び二次側コイル3211のうち高圧側コイルの電圧に応じて適宜変えることができる。これにより、一次側基板31、絶縁部材33及び二次側基板32を重ねた厚さを最小限に抑えたり、絶縁部材33のコストを最小限に抑えたりすることができる。
【0054】
以上、本発明の詳細について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。例えば、二次側基板32が一次側基板31の下面側に配置されてもよい。この場合、ケース2の第三載置領域23が第二載置領域22よりも低く形成されればよい。
【0055】
本発明において、上下方向に重なる一次側コイル形成部311及び二次側コイル形成部321に対し、一次側実装部312が並ぶ方向と、二次側実装部322が並ぶ方向とは、上記実施形態のように互いに逆向き(すなわち180度)に限らず、例えば45度や90度、135度などで互いに傾斜してもよい。すなわち、一次側実装部312と二次側実装部322とは、一次側コイル形成部311及び二次側コイル形成部321の周方向において互いに異なる位置に配置されてもよい。
【0056】
本発明では、四種類に限らずさらに多くの種類の一次側基板31や二次側基板32の中から選択可能であってもよい。また、トランスコア34は、材質等が異なる複数種類のトランスコアの中から選択可能としてもよい。制御基板7は、一次側基板31及び二次側基板32に対して前後方向や左右方向に並んで配置されてもよい。この場合には、上下方向における電力変換装置1の薄型化を図ることができる。トランスコア34は、少なくとも一次側基板31及び二次側基板32の貫通孔3112,3212に挿通されて一次側コイル3111及び二次側コイル3211の内側を通る挿通部3412を有していればよい。本発明において、トランス3は、例えばトランスコア34を備えなくてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 電力変換装置
2 ケース
3 トランス
31 一次側基板
311 一次側コイル形成部
3111 一次側コイル
312 一次側実装部
3121 FETモジュール(一次側電子部品)
32 二次側基板
321 二次側コイル形成部
3211 二次側コイル
322 二次側実装部
3221 FET(二次側電子部品)
3222 ダイオード(二次側電子部品)
7 制御基板