(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】ワーク回収装置
(51)【国際特許分類】
B23B 15/00 20060101AFI20240104BHJP
【FI】
B23B15/00 G
(21)【出願番号】P 2020066933
(22)【出願日】2020-04-02
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000137856
【氏名又は名称】シチズンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】志田 忠靖
(72)【発明者】
【氏名】矢部 晃一
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-075887(JP,U)
【文献】特開2017-074627(JP,A)
【文献】特開2001-138104(JP,A)
【文献】実開平01-163001(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 3/30、9/04、
15/00、23/00
B23Q 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主軸に把持されたワークを受ける受け部が、前記第1主軸に対向して配置された第2主軸に備えられたワーク回収装置において、
前記受け部と、前記受け部に繋がった、前記第2主軸の内部に設けられた管材とを有するワーク回収器と、
前記管材を前記第2主軸の軸と平行な方向に移動させる移動部と、を備え、
前記移動部は、前記第2主軸に備えられた、前記第2主軸の軸と平行に移動するプッシュロッドであり、
前記移動部による前記管材の移動により、前記第2主軸の先端からの前記受け部の突出長さを調整するワーク回収装置。
【請求項2】
前記管材の外周面に、前記第2主軸に形成されたキーが挿入される、前記管材の軸方向に延びたキー溝が形成され、前記キーと前記キー溝との係合により、前記第2主軸の回転に伴って、前記ワーク回収器が前記第2主軸と一体に回転される請求項
1に記載のワーク回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械により加工されたワークを回収するワーク回収装置が知られている。例えば、旋盤装置において、突切加工物受け部を設けたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この突切加工物受け部は、ワークを把持して回転させる主軸と対向して配置された、ワークを支持する芯押し軸に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、主軸に把持されたワークを加工する工具を、芯押し軸と一体に移動する構造を採用した場合、工具で加工を行う等のために工具が主軸に把持されたワークに接近した際、突切加工物受け部が主軸の側に干渉することが起こり得る。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、ワークを受ける受け部の突出長さを適宜調整することができるワーク回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1主軸に把持されたワークを受ける受け部が、前記第1主軸に対向して配置された第2主軸に備えられたワーク回収装置において、前記受け部と前記受け部に繋がった、前記第2主軸の内部に設けられた管材とを有するワーク回収器と、前記管材を、前記第2主軸の軸と平行な方向に移動させる移動部と、を備え、前記移動部による前記管材の移動により、前記第2主軸の先端からの前記受け部の突出長さを調整するワーク回収装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るワーク回収装置によれば、ワークを受ける受け部の突出長さを適宜調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態であるワーク回収装置を有する背面主軸を含む自動旋盤を示す外観図である。
【
図2】自動旋盤の内部に設けられた正面主軸及び背面主軸等の平面図である。
【
図3】ワーク回収装置を有する背面主軸の軸を含む鉛直面による断面を示す断面図であってワーク回収器が長く突出した状態を示す。
【
図4】背面主軸の先端から突出したワーク回収器を示す斜視図である。
【
図5】ワーク回収装置を有する背面主軸の軸を含む鉛直面による断面を示す断面図であって、ワーク回収器が短く突出した状態を示す。
【
図6】背面主軸が正面主軸に近接して、ワーク回収器がワークを受け取り可能の状態を示す
図2相当の平面図である。
【
図7】ワークが切り落とされてワーク回収器の受け部で受けた状態を示す
図2相当の平面図である。
【
図8】正面主軸に把持されたワークを、背面主軸工具台の工具で加工する場合に、長い突出長さの受け部が正面主軸の側に突き当たった状態を示す
図2相当の平面図である。
【
図9】正面主軸に把持されたワークを、背面主軸工具台の工具で加工する場合に、短い突出長さの受け部が正面主軸の側に突き当たらない状態を示す
図2相当の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るワーク回収装置の実施形態について説明する。
【0010】
図1は本発明の一実施形態であるワーク回収装置1を有する背面主軸200を含む自動旋盤100を示す外観図、
図2は自動旋盤100の内部に設けられた正面主軸300及び背面主軸200等の平面図である。
【0011】
また、
図3はワーク回収装置1を有する背面主軸200の軸C1を含む鉛直面による断面を示す断面図であってワーク回収器10が長く突出した状態を示し、
図4は背面主軸200の先端から突出したワーク回収器10を示す斜視図、
図5はワーク回収装置1を有する背面主軸200の軸C1を含む鉛直面による断面を示す断面図であって、ワーク回収器10が短く突出した状態を示す。
【0012】
(構成)
本発明の一実施形態であるワーク回収装置1を有する背面主軸200(第2主軸の一例)を含む自動旋盤100(
図1参照)は、
図2に示すように、正面主軸300(第1主軸の一例)に対向して配置される背面主軸200を有する。
【0013】
正面主軸300は、ワークWを把持して軸C2まわりに回転し、図示を略した工具をワークWに押し当てることにより、ワークWを加工する。
【0014】
背面主軸200は、この正面主軸300で加工され、突っ切り加工により正面主軸300から切り離されたワークWを受け取り、突っ切りしたワークWの、正面主軸300側の領域を加工する。背面主軸200で把持したワークWの加工は、正面主軸300で把持したワークWの加工と並行して又は連携して行ってもよいし、正面主軸300での加工とは別に独立して行ってもよい。
【0015】
なお、
図2に示した背面主軸200は、ワーク回収器10が備えられた状態であるため、上述したようにワークWを把持することはできないが、ワーク回収器10は背面主軸200に着脱可能であり、ワーク回収器10を背面主軸200から取り外した状態で、背面主軸200はワークWを把持して加工することができる。
【0016】
図2に示すように、自動旋盤100は、背面主軸200に隣接して、正面主軸300に把持されたワークWに対して、加工を行う工具281,282を備えた背面主軸工具台280が設けられている。背面主軸工具台280は、背面主軸200が設置されている背面主軸台290に設置されている。したがって、背面主軸200と背面主軸工具台280は、一体に動く。
【0017】
ワーク回収装置1は、
図3に示すように、ワーク回収器10と、移動部としてのプッシュロッド220とを備えている。プッシュロッド220は、ワーク回収器10を取り外した状態において背面主軸200が把持したワークWを、背面主軸200の先端側に押し出すために背面主軸200が予め備えている。
【0018】
ワーク回収器10は、受け部20と管材30と連結管40とを備えている。受け部20は、
図4に示すように、円筒の周壁の一部が欠けた形状とであり、半筒状の周壁21と、この周壁21の先端側の端面の一部を覆う端壁23とを備えている。受け部20は、ワークWを回収する際、
図3,4に示すように、周壁21は少なくとも鉛直方向の下側に配置された姿勢となり、周壁21の内面側で、落下したワークWを受ける。
【0019】
管材30は直管状に形成され、先端31が、受け部の20の、軸C1の後端(端壁23が形成された側とは反対側の端)に繋がって、受け部20と一体に形成されている。管材30は少なくとも一部が、背面主軸200の内部に配置されている.
【0020】
連結管40は、その先端41がプッシュロッド220の先端221にボルト225によって固定されることで、プッシュロッド220と連結されている。そして、連結管40の外側から管材30が覆うように配置されて、連結管40の後端42と、管材30の後端32とが、軸受226によって、互いに軸C1回りに回転可能に連結されている。
【0021】
つまり、軸受226の内輪に連結管40が固定され、軸受226の外輪に管材30が固定されて、連結管40と管材30とが軸C1回りに相対的に回転可能となっている。
【0022】
また、プッシュロッド220が軸C1と平行に移動することにより、ワーク回収器10は、背面主軸200の内部において、軸C1と平行な方向に移動する。
【0023】
ここで、管材30の外周面には、背面主軸200に設けられたキー215が挿入される、軸C1方向に延びたキー溝33が形成されている。そして、キー215とキー溝33とが係合することで、背面主軸200に対して管材30の軸C1回りの回転が拘束され、管材30及び受け部20は、背面主軸200と一体に、軸C1回りに回転する。
【0024】
なお、プッシュロッド220が固定された連結管40は、管材30に対して回転可能であるため、背面主軸200の回転が、プッシュロッド220を回転させることはない。
【0025】
また、キー溝33は、軸C1方向に延びているため、プッシュロッド220の軸C1方向への移動による、ワーク回収器10の軸C1に平行な方向への移動の妨げにはならない。
【0026】
このように、ワーク回収装置1は、プッシュロッド220の軸C1方向への移動により、ワーク回収器10を背面主軸200に対して内部に収納したり突出させたりし、特に受け部20の、背面主軸200の先端からの突出長さを調整することができる。
【0027】
具体的には、
図3に示すように、プッシュロッド220が軸C1の図示右方向に移動した状態のとき、受け部20の全部が背面主軸200の先端211から大きく突出するとともに管材30の一部が突出して、背面主軸200から端壁23までの突出長さL1が長い状態となる。
【0028】
一方、
図5に示すように、プッシュロッド220が軸C1の図示左方向に移動した状態のとき、管材30の全部と受け部20の一部が背面主軸200の内部に収容されて、背面主軸200から端壁23までの突出長さL2(<L1)が短い状態となる。
【0029】
(動作)
図6は背面主軸200が正面主軸300に近接して、ワーク回収器10がワークWを受け取り可能の状態を示す
図2相当の平面図、
図7は、ワークWが切り落とされてワーク回収器10の受け部20で受けた状態を示す
図2相当の平面図である。
【0030】
また、
図8は、正面主軸300に把持されたワークWを、背面主軸工具台280の工具281で加工する場合に、長い突出長さL1の受け部20が正面主軸300の側350と干渉した状態を示す
図2相当の平面図であり、
図9は、正面主軸300に把持されたワークWを、背面主軸工具台280の工具281で加工する場合に、短い突出長さL2の受け部20が正面主軸300の側350に干渉しない状態を示す
図2相当の平面図である。
【0031】
以上のように構成された自動旋盤100の動作について説明する。正面主軸300に把持されたワークWは、図示しない工具等(背面主軸工具台280の工具も含む)で加工がされる(
図2参照)。
【0032】
その後、
図6に示すように、加工後のワークWを回収するため、ワーク回収器10が設置された背面主軸200を正面主軸300に近づけるように移動する。具体的には、正面主軸300の軸C2に背面主軸200の軸C1が一致して、加工されたワークWの鉛直下方に受け部20の周壁21が配置される位置に、背面主軸200が移動する。
【0033】
その後、ワークWは、突切り工具によって、正面主軸300に把持されている部分から切り離され、
図7に示すようにワークWは下方に落下し、受け部20がワークWを受け取る。
【0034】
ワークWを受け取った背面主軸200は、正面主軸300から遠ざかった位置(例えば
図2に示す位置)まで移動し、背面主軸200の主軸本体210(
図3参照)を回転させる(C軸回転)ことにより、受け部20を
図4の矢印R方向に回転させて、受け部20で受け取ったワークWをシュータ等に受け渡す。
【0035】
これにより、ワークWを正面主軸300から確実に受け取って、正面主軸300から離れた他の場所へ搬出することができる。ワークWをシュータ等に受け渡した後は、ワーク回収装置1は、主軸本体210を元の位置まで回転させることにより、受け部20がワークWを受ける姿勢に戻す。
【0036】
ところで、ワークWが正面主軸300に把持されている状態で、背面主軸工具台280の工具281によりワークWを加工する場合、背面主軸台290を移動させて背面主軸工具台280を正面主軸300に近付ける。このとき、背面主軸台290に設置されている背面主軸200も背面主軸工具台280と一体的に移動する。
【0037】
そして、受け部20が背面主軸200の先端から長く突出しているときは、
図8に示すように、受け部20が正面主軸300の側350(正面主軸300の本体や外装となる部分や外装に取り付けられた部材や正面主軸が載せられた正面主軸台等、外観として正面主軸と一体的に構成されるもの。)に接触し、干渉する。
【0038】
図8に示す例では、受け部20の先端である端壁23が側350に干渉するため、背面主軸200はこれ以上、正面主軸300の方向には動き得ない。そうすると、背面主軸台290も動けないため、背面主軸工具台280の工具281をワークWの端面Waに接触させることができず、工具281を用いた加工を行うことができない。
【0039】
そこで、本実施形態のワーク回収装置1は、受け部20の一部を背面主軸200の主軸本体210内に収容する。つまり、
図3に示すように、受け部20がワークWを受ける位置である長い突出長さL1の状態から、プッシュロッド220を矢印-Z方向に移動して、受け部20の一部を背面主軸200の主軸本体210内に引き込む。
【0040】
これにより、受け部20が収容位置である短い突出長さL2の状態(
図5参照)となって、
図9に示すように、正面主軸300に把持されたワークWに背面主軸工具台280の工具281を接触させても、受け部20は正面主軸300の側350に接触しなくなり、ワークWの加工を行うことができる。
【0041】
本実施形態のワーク回収装置1は、ワーク回収器10を移動させる移動部を、背面主軸200が予め備えているプッシュロッド220としたため、移動部を新たに設ける必要が無い。
【0042】
そして、本実施形態のワーク回収装置1は、ワーク回収器10を背面主軸200に対して着脱自在としたため、背面主軸200によりワークWを把持した加工を行うときは、ワーク回収器10を背面主軸200から取り外し、代わりにワーク把持装置を取り付ければよく、背面主軸200を有効に活用することができる。
【0043】
また、本実施形態のワーク回収装置1は、ワーク回収器10の管材30に形成したキー溝33と背面主軸200に設けたキー215により、ワーク回収器10の回転を規制しつつ、軸C1方向への進退を可能とし、かつ、背面主軸200のC軸駆動をワーク回収器10の回転動作に利用することができる。
【0044】
本実施形態のワーク回収装置1は、正面主軸300を本発明における第1主軸、背面主軸200を本発明における第2主軸として適用し、背面主軸200にワーク回収装置1を備えた構成例であるが、本発明に係るワーク回収装置は、背面主軸に備えた構成に限定するものではない。
【0045】
すなわち、例えば、平行に配置された2つの主軸(第1主軸、第3主軸)と、これらの第1主軸及び第3主軸とそれぞれ一直線上の配置となる位置に移動し得る第2主軸とを備えた自動旋盤においては、第1主軸は第1正面主軸、第3主軸は第2正面主軸、第2主軸は背面主軸となり、この場合、背面主軸を本発明における第1主軸、第2正面主軸を本発明における第2主軸として適用することもできる。この場合、ワーク回収装置は、第2正面主軸に備えた構成となる。
【0046】
本実施形態のワーク回収装置1は、ワーク回収器10を、受け部20と管材30と連結管40とが連結されたものとして説明したが、ワーク回収器10は、少なくとも受け部20と受け部20に繋がった管材30とを有するものであればよい。
【0047】
また、本発明に係るワーク回収装置におけるワーク回収器は、受け部の一部が管材として機能するものであってもよく、受け部と管材とが外形的に明確に峻別される構成でなくてもよい。
【0048】
本実施形態のワーク回収装置1は、長い突出長さL1の状態において、ワーク回収器10が正面主軸300の側350に突き当たって干渉するという課題を解決するものとして説明したが、本発明に係るワーク回収装置は、長い突出長さのワーク回収器が第1主軸の側に接触するという課題を解決するだけではなく、ワーク回収器が背面主軸200から常時突出することにより、背面主軸200の全体のサイズが大きくなり、背面主軸台290の移動範囲を占有する課題を解決するものでもある。
【0049】
つまり、突出したワーク回収器が占有する占有空間が小さくすることができれば、背面主軸200の全体の大きさを小さくすることができ、背面主軸台290の移動範囲の規制を無くしたり、又は長い突出長さの場合に、正面主軸300の側の位置に別の工具台等を配置したりすることも可能になる。
【0050】
したがって、本発明に係るワーク回収装置は、ワーク回収器の突出長さが常に長いという課題を解決し、ワークを受ける受け部の突出長さを変化させて、突出長さを適宜調整することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 ワーク回収装置
10 ワーク回収器
20 受け部
30 :管材
100 自動旋盤
200 背面主軸(第2主軸の一例)
220 プッシュロッド(移動部の一例)
300 正面主軸(第1主軸の一例)
C1,C2 軸
W ワーク