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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/02 20060101AFI20240104BHJP
   B25F 5/00 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
B25F5/02
B25F5/00 G
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020076298
(22)【出願日】2020-04-22
(65)【公開番号】P2021171857
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 由浩
(72)【発明者】
【氏名】今江 友彦
(72)【発明者】
【氏名】上田 純
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-080888(JP,A)
【文献】特開2017-148910(JP,A)
【文献】特開2014-240113(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0008090(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/02
B25F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ及び前記ステータに対し回転可能なロータを含むモータと、
前記モータを収容し、左右に分割される左ハウジングと右ハウジングとを有する筒状のモータハウジングと、
前記モータハウジングの下部に繋がるグリップ部と、
前記モータの前方に設けられて前記モータにより駆動する出力部と、
前記ロータの後部を支持し、前記モータハウジングの後部を閉塞するリアカバーと、を有し、
前記リアカバーは、前記左ハウジングと前記右ハウジングとで挟み込まれて固定されている電動工具。
【請求項2】
前記ロータは、前後方向に延びる回転軸を有し、前記リアカバーは、前記回転軸の後端を支持する軸受を内面に保持していることを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記軸受の前側で前記回転軸にはファンが固定され、前記軸受は、前記軸受の径方向に見た場合に前記ファンと部分的に重なっていることを特徴とする請求項2に記載の電動工具。
【請求項4】
ステータ及び前記ステータに対し回転可能なロータを含むモータと、
前記モータを収容し、左右に分割される左ハウジングと右ハウジングとを有する筒状のモータハウジングと、
前記モータハウジングの下部に繋がるグリップ部と、
前記モータの前方に設けられて前記モータにより駆動する出力部と、
前記ロータの後部を支持し、前記モータハウジングの後部を閉塞するリアカバーと、を有し、
前記リアカバーは、前記左ハウジングと前記右ハウジングとで挟み込まれて固定されて、
前記ロータの後部を支持する軸受が、前記軸受の径方向に見た場合に前記モータ側と部分的に重なっている電動工具。
【請求項5】
前記モータは、前記ロータの後方に配置されるファンをさらに有し、
前記軸受は、前記径方向に見た場合に前記ファンと部分的に重なっていることを特徴とする請求項4に記載の電動工具。
【請求項6】
前記リアカバーは、前方を開口したキャップ状で、開口の内縁には、前記左ハウジングと前記右ハウジングとに挟み込まれる連結片が前向きに形成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の電動工具。
【請求項7】
前記連結片は、左右に一対設けられていることを特徴とする請求項6に記載の電動工具。
【請求項8】
前記連結片の外周面には、外向きに突出する突条が形成されて、前記モータハウジングの内面には、前記突条が係止する係止溝が形成されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の電動工具。
【請求項9】
前記リアカバーの背面は、上下左右方向で規定される平面となっていることを特徴とする請求項6乃至8の何れかに記載の電動工具。
【請求項10】
前記リアカバーの周面には、通気口が形成されていることを特徴とする請求項6乃至9の何れかに記載の電動工具。
【請求項11】
前記リアカバーの周面は、前記モータハウジングの周面と連続状に繋がっていることを特徴とする請求項6乃至10の何れかに記載の電動工具。
【請求項12】
前記リアカバーは、背面視が円形状であることを特徴とする請求項6乃至11の何れかに記載の電動工具。
【請求項13】
前記リアカバーは、前記モータハウジングの後端面よりも前方に位置していることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の電動工具。
【請求項14】
前記左ハウジングと前記右ハウジングとは、ネジ止めによって固定されることを特徴とする請求項1乃至13の何れかに記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバドリル等の電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライバドリル等の電動工具においては、前後方向に延びる筒状のモータハウジングの後方にモータを収容し、その前方に減速機構を介してスピンドル等の出力部を配置するものが知られている。この場合、モータハウジングは、左右に分割される半割ハウジングをネジ止めして形成される。モータの回転軸は、例えば特許文献1に開示されるように、半割ハウジングに対して、これと別体の軸受支持部材をネジ止めし、軸受支持部材に支持させた軸受によって軸支する構造が採用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6537402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように別体の軸受支持部材を用いてネジ止めを行うと、組み立て性が悪くなる上、軸受保持部材を取り付けるためのネジボス等のネジ止め部をモータハウジング内に設ける必要がある。これにより、モータハウジングが径方向に大きくなってしまうというデメリットもある。
【0005】
そこで、本発明は、リアカバー方式を採用しつつ、組み立て性が簡素となる電動工具を提供することを目的としたものである。また、追加の目的として、本発明は、径方向に大きくならない電動工具を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のうち、第1の発明は、ステータ及びステータに対し回転可能なロータを含むモータと、
モータを収容し、左右に分割される左ハウジングと右ハウジングとを有する筒状のモータハウジングと、
モータハウジングの下部に繋がるグリップ部と、
モータの前方に設けられてモータにより駆動する出力部と、
ロータの後部を支持し、モータハウジングの後部を閉塞するリアカバーと、を有し、
リアカバーは、左ハウジングと右ハウジングとで挟み込まれて固定されていることを特徴とする。
第1の発明の別の態様は、上記構成において、ロータは、前後方向に延びる回転軸を有し、リアカバーは、回転軸の後端を支持する軸受を内面に保持していることを特徴とする。
第1の発明の別の態様は、上記構成において、軸受の前側で回転軸にはファンが固定され、軸受は、軸受の径方向に見た場合にファンと部分的に重なっていることを特徴とする。
上記目的を達成するために、本発明のうち、第2の発明は、ステータ及びステータに対し回転可能なロータを含むモータと、
モータを収容し、左右に分割される左ハウジングと右ハウジングとを有する筒状のモータハウジングと、
モータハウジングの下部に繋がるグリップ部と、
モータの前方に設けられてモータにより駆動する出力部と、
ロータの後部を支持し、モータハウジングの後部を閉塞するリアカバーと、を有し、
リアカバーは、左ハウジングと右ハウジングとで挟み込まれて固定されて、
ロータの後部を支持する軸受が、軸受の径方向に見た場合にモータ側と部分的に重なっていることを特徴とする。
第2の発明の別の態様は、上記構成において、モータは、ロータの後方に配置されるファンをさらに有し、
軸受は、径方向に見た場合にファンと部分的に重なっていることを特徴とする。
第1,第2の発明に共通する別の態様は、上記構成において、リアカバーは、前方を開口したキャップ状で、開口の内縁には、左ハウジングと右ハウジングとに挟み込まれる連結片が前向きに形成されていることを特徴とする。
第1,第2の発明に共通する別の態様は、上記構成において、連結片は、左右に一対設けられていることを特徴とする。
第1,第2の発明に共通する別の態様は、上記構成において、連結片の外周面には、外向きに突出する突条が形成されて、モータハウジングの内面には、突条が係止する係止溝が形成されていることを特徴とする。
第1,第2の発明に共通する別の態様は、上記構成において、リアカバーの背面は、上下左右方向で規定される平面となっていることを特徴とする。
第1,第2の発明に共通する別の態様は、上記構成において、リアカバーの周面には、通気口が形成されていることを特徴とする。
第1,第2の発明に共通する別の態様は、上記構成において、リアカバーの周面は、モータハウジングの周面と連続状に繋がっていることを特徴とする。
第1,第2の発明に共通する別の態様は、上記構成において、リアカバーは、背面視が円形状であることを特徴とする。
第1,第2の発明に共通する別の態様は、上記構成において、リアカバーは、モータハウジングの後端面よりも前方に位置していることを特徴とする。
第1,第2の発明に共通する別の態様は、上記構成において、左ハウジングと右ハウジングとは、ネジ止めによって固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、リアカバーを取り付けるためのネジボス等のネジ止め部をモータハウジング内に設ける必要がなくなる。よって、リアカバーの組み立て性が簡素となる。また、別の効果として、リアカバーの採用による全長の短縮化と共に、モータハウジングの径方向のコンパクト化も達成できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】形態1のドライバドリルの後方からの斜視図である。
図2】形態1のドライバドリルの側面図である。
図3】形態1のドライバドリルの平面図である。
図4】形態1のドライバドリルの一部拡大正面図である。
図5】形態1のドライバドリルの一部拡大背面図である。
図6図5のA-A線断面図である。
図7図5のB-B線断面図である。
図8】ハウジングの一部とギヤアッセンブリとの分解斜視図である。
図9図6のC-C線拡大断面図である。
図10図6のD-D線拡大断面図である。
図11】形態2のドライバドリルの後方からの斜視図である。
図12】形態2のドライバドリルの一部拡大背面図である。
図13図12のE-E線断面図である。
図14図12のF-F線断面図である。
図15】形態3のドライバドリルの後方からの斜視図である。
図16】形態3のドライバドリルの一部拡大背面図である。
図17図16のG-G線断面図である。
図18図16のH-H線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[形態1]
図1は、電動工具の一例を示すドライバドリルの後方からの斜視図、図2は側面図、図3は平面図、図4は一部拡大正面図、図5は一部拡大背面図である。
ドライバドリル1は、本体2とグリップ部3とを備える。本体2は、前後方向に延びる。グリップ部3は、本体2の下側から突出する。本体2とグリップ部3とは、左右何れかの方向から見ると、T字状である。本体2の前端には、ドリルチャック4が設けられる。ドリルチャック4の先端は、ビットを把持可能である。
グリップ部3の下端には、電源となるバッテリーパック5が装着されている。ドライバドリル1のハウジングは、本体ハウジング6とリアカバー7とを含む。本体ハウジング6には、筒状のモータハウジング部8とグリップ部3とが連設される。本体ハウジング6は、左右の半割ハウジング6a,6bを有する。半割ハウジング6a,6bは、右側からねじ込まれる複数のネジ9,9・・を用いて固定される。
【0010】
リアカバー7は、前面を開口するキャップ状である。リアカバー7の外周は、モータハウジング部8の外周と連続状に繋がっている。リアカバー7の背面7aは、上下左右方向で規定される平面となっている。リアカバー7の内面中央には、図6に示すように、正面視円形の軸受保持部10が形成されている。リアカバー7の左右の側面には、複数の排気口11,11・・が形成されている。リアカバー7の開口の左右の内縁には、図7に示すように、一対の連結片12,12が形成されている。連結片12,12は、左右に配置されているが、それぞれの下部において連結されている。各連結片12は、図8に示すように、前方へ延びる正面視円弧状を有する。各連結片12の前端には、径方向外側に突出する突条13が形成されている。突条13の後側で連結片12の外周面には、周方向に凹溝13aが形成されている。
モータハウジング部8は、半割ハウジング6a,6bの上側部分となる左ハウジング8aと右ハウジング8bとを組み付けて形成される。左ハウジング8aと右ハウジング8bとは、リアカバー7の連結片12,12を挟んで組み付けられる。モータハウジング部8の後部には、最後端のネジ9のやや後方でモータハウジング部8の軸方向と直交する後端面8cが形成されている。本体ハウジング6の後部には、図6に示すように、後端面8cの下端から後方に延びる舌片部6cが形成されている。舌片部6cの上面は、前後及び左右方向で規定される平面となっている。
【0011】
左ハウジング8a及び右ハウジング8bの後端における左右の内面側には、図8にも示すように、後リブ14と、前リブ15と、係止溝16とがそれぞれ正面視半円状に形成されている。後リブ14は、連結片12の突条13の後方で凹溝13aに係止する。前リブ15は、連結片12の前面を受けると共に、後述するステータ21を保持する。係止溝16は、後リブ14と前リブ15との間に形成されて、図9に示すように、連結片12の突条13が係止する。
リアカバー7は、各連結片12の突条13が係止溝16に係止し、各後リブ14が凹溝13aへ互い違いに係止することで、後方へ抜け止めされる。この状態で、ネジ9によってネジ止めされる左右ハウジング8a,8bによって挟持固定される。最後端のネジ9がねじ込まれる左ハウジング8a側のネジボス17,17は、図6及び9に示すように、連結片12,12の上下にそれぞれ設けられている。よって、連結片12,12を左右から挟持することにより、リアカバー7は確実に抜け止めされる。リアカバー7の前面で連結片12,12の上側には、ネジボス17,17との干渉を回避するための逃げ部7bが形成されている。
リアカバー7の下面には、平面部18が形成されている。平面部18は、リアカバー7の固定状態で舌片部6c上に当接する。よって、リアカバー7は、モータハウジング部8及び舌片部6cと連続状に繋がる。
【0012】
本体2内の後部のモータハウジング部8には、ブラシレスモータ20が収容されている。ブラシレスモータ20は、ステータ21と、ステータ21の内側に配置されるロータ22とを有するインナロータ型である。ステータ21は、ステータコア23と、前後のインシュレータ24,24と、複数のコイル25,25・・とを有する。コイル25,25・・は、前後のインシュレータ24,24を介してステータコア23に巻き付けられる。前側のインシュレータ24の下側には、3つのヒュージング端子26,26・・が保持されている。ヒュージング端子26は、各相のコイル25とヒュージングされる。このヒュージング端子26を用いることで三相結線が形成される。ヒュージング端子26には、下方からコネクタ27がネジ止めされる。コネクタ27は、リード線を介して後述するコントローラに接続される。
前側のインシュレータ24の前端には、センサ回路基板28が取り付けられている。センサ回路基板28には、後述する永久磁石30の磁界を検出する回転検出素子が搭載されている。
【0013】
ロータ22は、ロータコア29と、4つの永久磁石30,30・・とを有する。ロータコア29の軸心には、回転軸31が固定されている。永久磁石30,30・・は、ロータコア29の貫通穴に埋め込まれている。回転軸31の後端は、軸受32で軸支される。軸受32は、リアカバー7の軸受保持部10に保持される。軸受32の前方側であって、ロータコア29の後方側には、ファン33が配置されている。ファン33は、遠心ファンで、回転軸31に固定されている。ファン33と軸受32とは、軸受32の径方向で互いにオーバーラップしている。ステータ21の左右でモータハウジング部8の左右の側面には、複数の吸気口34.34・・(図1,2)が形成されている。
【0014】
ブラシレスモータ20には、前方にギヤアッセンブリ40が組み付けられている。ギヤアッセンブリ40は、後述する第2ギヤケース51から前方へ突出するスピンドル41を備える。ドリルチャック4は、スピンドル41の前端に取り付けられている。ギヤアッセンブリ40の下方でグリップ部3の上部には、スイッチ42が収容されている。スイッチ42の前方側には、トリガ43が接続されている。スイッチ42の上方には、ブラシレスモータ20の回転方向を切り替える正逆切替ボタン44が設けられる。正逆切替ボタン44の前方には、ドリルチャック4の前方を照射するライト45が設けられている。
グリップ部3の下端には、バッテリー装着部46が形成される。このバッテリー装着部46にバッテリーパック5が前方からスライド装着される。バッテリー装着部46には、図示しない端子台とコントローラとが収容されている。コントローラは、ブラシレスモータ20の制御用のマイコンやスイッチング素子等が搭載される制御回路基板を備えている。
【0015】
ギヤアッセンブリ40は、筒状の第1ギヤケース50と、筒状の第2ギヤケース51と、ギヤカバーリング52と、クラッチ調整リング53とを備えている。第1ギヤケース50、第2ギヤケース51とクラッチ調整リング53とは、樹脂製である。ギヤカバーリング52は、アルミニウム合金等の金属製である。クラッチ調整リング53は、ドリルモードへの切替も可能である。
第1ギヤケース50は、後端中央に軸受保持部54を備えている。軸受保持部54は、回転軸31の前部を支持する軸受55を保持している。回転軸31は、第1ギヤケース50の内部に突出して前端にピニオン56を備えている。第1ギヤケース50の前部外周には、フランジ57が形成されている。フランジ57の後方で第1ギヤケース50の左右には、図7及び図8に示すように、前後方向に延びる上下一対の第1リブ58,58がそれぞれ突設されている。モータハウジング部8の左右の内面には、半円状の受けリブ59,59がそれぞれ形成されている。受けリブ59,59は、軸受保持部54を除いて第1ギヤケース50の後面を受ける。各受けリブ59の前面外周は、内周側よりも肉厚に形成されている。当該肉厚部分には、第1リブ58,58が係止する第1溝60,60がそれぞれ形成されている。第1ギヤケース50は、第1リブ58,58と第1溝60,60との係止によってモータハウジング部8内で回転規制される。
【0016】
第2ギヤケース51は、後側から大径部61、中径部62、小径部63をそれぞれ同軸で備えた多段筒形状となっている。大径部61は、第1ギヤケース50の前端に被さり、大径部61の後端がフランジ57に係止している。大径部61と第1ギヤケース50との間には、係合リング64が保持されている。大径部61の前側で中径部62の左右には、図7及び図8に示すように、周方向に所定間隔をおいて前方へ突出する3つの第2リブ65,65・・が形成されている。
【0017】
ギヤカバーリング52は、リング状である。ギヤカバーリング52は、モータハウジング部8の前端に前方から当接する。ギヤカバーリング52の外周には、図4に示すように、周方向に間隔をおいて4つのネジ止め部66,66・・がそれぞれ突設されている。なお、ネジ止め部66,66の左右の間隔は、上方の2つにおいて近接しており、下方の2つにおいて離間している。各ネジ止め部66は、正面視でクラッチ調整リング53より外側に突出している。モータハウジング部8の外周には、図1~3に示すように、各ネジ止め部66の後方に位置するネジボス67,67・・がそれぞれ形成されている。
ギヤカバーリング52の内周は、モータハウジング部8の前端を越えて中心側に突出するリング状の突出端部68となっている。突出端部68は、第2ギヤケース51の大径部61の前面に当接している。突出端部68の左右には、図8に示すように、3つの第2溝69,69・・が形成されている。第2溝69,69・・には、図10に示すように、第2ギヤケース51に設けた第2リブ65,65・・がそれぞれ係止する。第2ギヤケース51は、第2リブ65と第2溝69との係止によって回転規制される。
【0018】
クラッチ調整リング53は、第2ギヤケース51の中径部62に後端が被さる筒状である。クラッチ調整リング53の後端には、ギヤカバーリング52の前端が対向している。なお、クラッチ調整リング53とギヤカバーリング52とは接触していてもよい。第2ギヤケース51の小径部63の前端には、押さえプレート70が3本のネジ70a、70a・・によって固定されている。押さえプレート70は、クラッチ調整リング53を前方から位置決めする。よって、クラッチ調整リング53は、ギヤカバーリング52と押さえプレート70との間で回転可能に保持される。
【0019】
ギヤカバーリング52の各ネジ止め部66には、前方からネジ71がそれぞれ貫通される。各ネジ止め部66を貫通した各ネジ71は、モータハウジング部8の各ネジボス67にそれぞれねじ込まれる。よって、ギヤアッセンブリ40は、モータハウジング部8に固定される。このとき、ギヤカバーリング52の突出端部68は、第2ギヤケース51の大径部61を後方へ押圧する。よって、大径部61は、第1ギヤケース50のフランジ57に押し付けられる。第1ギヤケース50は、フランジ57を介して後方へ押圧され、受けリブ59に当接して軸方向に位置決めされる。
このように、ギヤカバーリング52がネジ止めされることにより、ギヤカバーリング52が受けリブ59に近づくことによって、第2ギヤケース51が第1ギヤケース50に対して密着する。
【0020】
ギヤアッセンブリ40の内部には、減速機構75が設けられている。減速機構75は、キャリア76A~76Cを軸方向に3段並設してなる。キャリア76Aは、3つの遊星歯車78,78・・をそれぞれピン77を介して支持する。キャリア76Bも、3つの遊星歯車78,78・・をそれぞれピン77を介して支持する。キャリア76Cも、3つの遊星歯車78,78・・をそれぞれピン77を介して支持する。各段の遊星歯車78は、インターナルギヤ79A~79C内で遊星運動する。1段目の遊星歯車78は、回転軸31のピニオン56に噛合している。2段目のインターナルギヤ79Bは、第1ギヤケース50内で回転可能且つ前後移動可能に設けられている。インターナルギヤ79Bは、前進位置では、2段目の遊星歯車78に噛合した状態で係合リング64に係合して回転規制される。インターナルギヤ79Bは、後退位置では、2段目の遊星歯車78と1段目のキャリア76Aとに同時に噛合して回転可能となる。インターナルギヤ79Bの外周には、全周に亘ってリング溝80が形成されている。
【0021】
第1ギヤケース50の外周上側には、正面視が半円状のリーフスプリング81が設けられている。リーフスプリング81の左右の中間部は、図8に示すように、第1ギヤケース50の左右の側面に突設した支持ピン82,82に挿通されている。よって、リーフスプリング81は、支持ピン82,82を中心に前後へ揺動可能となる。リーフスプリング81の左右の下端には、係止ピン83,83が設けられる。係止ピン83,83は、支持ピン82,82の下方で第1ギヤケース50の左右に形成された円弧状の案内孔84,84を貫通している。案内孔84,84を貫通した係止ピン83,83は、インターナルギヤ79Bのリング溝80に係止している。リーフスプリング81の上端中央は、スライダ85の前部下面に係合している。スライダ85は、第1ギヤケース50の上側で前後移動可能に設けられる。スライダ85の上面には、速度切替レバー86が、前後のコイルバネ87,87を介して連結される。速度切替レバー86は、モータハウジング部8の上面で前後移動可能に支持される。ギヤカバーリング52の後面上部には、スライダ85及び速度切替レバー86の前方へのスライドを許容する凹部52a(図6図10)が形成されている。
【0022】
速度切替レバー86を前方へスライドさせると、スライダ85が前進する。すると、リーフスプリング81の上端中央が前進し、支持ピン82,82を中心に左右の下端が後方へ揺動する。よって、インターナルギヤ79Bは、係止ピン83,83を介して後退位置に移動する。この状態は、インターナルギヤ79Bを介して2段目の遊星歯車78と1段目のキャリア76Aとが一体回転し、2段目の減速がキャンセルされる高速モード(2速)である。
逆に速度切替レバー86を後方へスライドさせると、スライダ85が後退する。すると、リーフスプリング81の上端中央が後退し、支持ピン82,82を中心に左右の下端が前方へ揺動する。よって、インターナルギヤ79Bは、係止ピン83,83を介して前進位置に移動する。この状態は、インターナルギヤ79Bが係合リング64により回転規制されて2段目の減速が機能する低速モード(1速)である。
【0023】
3段目のインターナルギヤ79Cは、第2ギヤケース51の中径部62内で回転可能に設けられる。中径部62には、インターナルギヤ79Cの前面に当接する複数のボール90,90・・が保持される。各ボール90は、インターナルギヤ79Cの前面に設けられた図示しない係止突起と回転方向で係合する。各ボール90は、ワッシャー91を介して複数のコイルバネ92,92・・により後方へ付勢される。各コイルバネ92の前端は、第2ギヤケース51の小径部63に外装される受けリング93によって保持される。受けリング93は、小径部63の外周に形成した前後方向の複数の溝94,94・・に係止して回転規制される。よって、受けリング93は、前後方向へのみ移動可能である。受けリング93の前側には、送りリング96が配置されている。送りリング96は、小径部63の外周に設けたネジ部95に螺合する。送りリング96の外周は、クラッチ調整リング53の内周に係合している。よって、クラッチ調整リング53が回転操作されると、送りリング96は、クラッチ調整リング53と一体回転して軸方向へねじ送りされる。これにより受けリング93が前後移動してコイルバネ92の押圧力が変化する。クラッチ調整リング53は、押圧力を最小から最大まで変化させることができる。押圧力が最大の場合には、ドリルチャック4のトルクが大きくなったとしても、コイルバネ92の押圧力によって、ボール90がインターナルギヤ79Cの係止突起を乗り越えることができない。すなわち、押圧力が最大の場合には、クラッチが作動することがないドリルとして使用することができる。
【0024】
スピンドル41は、第2ギヤケース51の小径部63内で軸受97A(ボールベアリング),97B(メタル軸受)によって軸支される。スピンドル41の後端は、3段目のキャリア76Cに遊挿されている。キャリア76Cには、前方に3つの爪98,98・・が突設されている。各爪98は、スピンドル41の外周に係止している。よって、スピンドル41は、キャリア76Cと一体回転する。
爪98,98の間には、3つの楔ピン99,99・・が配置されている。各楔ピン99は、スピンドル41の外周に形成した3つの面取部100,100・・にそれぞれ当接している。ブラシレスモータ20の停止状態でビットの着脱のためにドリルチャック4を回転させる際、各楔ピン99が爪98と面取部100との間に噛み込むことでスピンドル41の回転はロックされる。
【0025】
以上の如く構成されたドライバドリル1においては、作業者がトリガ43を押し込み操作してスイッチ42をONさせる。スイッチ42がONされることにより、コントローラのマイコンが、各スイッチング素子をON/OFFし、コイル25への通電を開始する。コイル25の通電により、ステータ21に磁界が発生する。この磁界によりロータ22が回転する。
センサ回路基板28の回転検出素子は、永久磁石30の位置を示す回転検出信号を出力する。この出力により、コントローラのマイコンがロータ22の回転状態を取得する。マイコンは、取得した回転状態に応じて各スイッチング素子のON/OFFを制御する。このスイッチング素子のON/OFFにより、ステータ21の各相のコイル25に対し順番に電流が流れる。これにより、ロータ22は回転を続け、ロータ22の回転により回転軸31が回転する。回転軸31の回転によりピニオン56が回転し、ピニオン56の回転は、減速機構75を介してスピンドル41を回転させる。よって、ドリルチャック4に把持したビットにより、ネジ締め等の作業が可能となる。
【0026】
スピンドル41のトルクが高まり、ボール90を介してインターナルギヤ79Cを回転規制しているコイルバネ92の押圧力を越えると、インターナルギヤ79Cの前面の係止突起にボール90を相対的に乗り越えさせることでインターナルギヤ79Cは空転する。よって、スピンドル41への回転伝達が遮断される。このクラッチ作動トルクは、クラッチ調整リング53の回転操作によって変更可能である。
【0027】
上記形態1のドライバドリル1は、ステータ21及びステータ21に対し回転可能なロータ22を含むブラシレスモータ20(モータ)を含む。また、ドライバドリル1は、ブラシレスモータ20を収容し、左右に分割される左ハウジング8aと右ハウジング8bとを有する筒状のモータハウジング部8(モータハウジング)と、モータハウジング部8の下部に繋がるグリップ部3とを含む。また、ドライバドリル1は、ブラシレスモータ20の前方に設けられてブラシレスモータ20により駆動するスピンドル41(出力部)と、ロータ22の後部を支持し、モータハウジング部8の後部を閉塞するリアカバー7とを含む。そして、リアカバー7は、左ハウジング8aと右ハウジング8bとで挟み込まれて固定されている。
この構成により、リアカバー7を取り付けるためのネジボス等のネジ止め部をモータハウジング部8内に設ける必要がなくなる。よって、リアカバー7の採用による全長の短縮化と共に、モータハウジング部8の径方向のコンパクト化も達成できる。また、リアカバー7の取付用のネジが不要となって組み立て性が簡素化するため、製造コストの低減にも繋がる。
【0028】
特にここでは、ロータ22は、前後方向に延びる回転軸31を有し、リアカバー7は、回転軸31の後端を支持する軸受32を内面に保持している。よって、軸受32を径方向に精度よく保持可能となる。
軸受32の前側で回転軸31にはファン33が固定され、軸受32は、軸受32の径方向においてファン33とオーバーラップしている。
よって、ファン33を設けてもリアカバー7を前後方向に短く形成でき、全長の短縮化に効果的となる。
【0029】
リアカバー7は、前方を開口したキャップ状で、開口の内縁には、左右ハウジング8a,8bに挟み込まれる連結片12が前向きに形成されている。よって、連結片12を利用してリアカバー7を確実に挟持固定できる。
連結片12,12は、左右に一対設けられている。よって、左右ハウジング8a,8bによってリアカバー7をバランスよく挟持固定可能となる。
連結片12の外周面には、外向きに突出する突条13が形成されて、モータハウジング部8の内面には、突条13が係止する係止溝16が形成されている。よって、挟持固定したリアカバー7の後方への抜けが確実に防止できる。
リアカバー7の背面は、上下左右方向で規定される平面となっている。よって、リアカバー7の前後寸法の短縮化に繋がる。
【0030】
ギヤカバーリング52がネジ止めされることによって、ギヤカバーリング52が受けリブ59に近づき、第2ギヤケース51が第1ギヤケース50に対して密着する。この密着によって第1ギヤケース50と第2ギヤケース51とが離間することがなくなる。仮に離間した場合には、前述したドリルとしての使用ができなくなる。すなわち、コイルバネ92による押圧力が最大となるようにクラッチ調整リング53を回転させたとしても、ボール90が係止突起を乗り越えてしまうことになるからである。
【0031】
次に、本発明の他の形態を説明する。但し、リアカバーの形状及びその固定構造以外は上記形態1と同じである。よって、同じ構成部には同じ符号を付して重複する説明は省略する。
[形態2]
図11図14に示すドライバドリル1Aにおいて、本体ハウジング6には、形態1のようにリアカバー7Aの下面に当接する舌片部が設けられていない。よって、モータハウジング部8の後端面8cは、全周に亘って平面となっている。リアカバー7Aの下部には、平面部に代えて、舌片部に置き換わる垂下部7cが一体に形成されている。
ドライバドリル1Aにおいても、リアカバー7Aを取り付けるためのネジボス等のネジ止め部をモータハウジング部8内に設ける必要がなくなる。よって、リアカバー7Aの採用による全長の短縮化と共に、モータハウジング部8の径方向のコンパクト化も達成できる。また、リアカバー7Aの取付用のネジが不要となって組み立て性が簡素化するため、製造コストの低減にも繋がる。
【0032】
[形態3]
図15図18に示すドライバドリル1Bにおいて、モータハウジング部8の後部は、後端面8cがファン33の後方位置となるまで長く形成されている。ファン33の後方で左右ハウジング8a,8bの内面には、周方向に受け溝105,105がそれぞれ半円状に形成されている。
リアカバー7Bは、キャップ状でなく、正面視が円形状の板体となっている。リアカバー7Bの前面中央に軸受保持部10が設けられている。リアカバー7Bは、受け溝105,105に跨がって嵌合することで、左右ハウジング8a,8bに挟持されている。よって、リアカバー7Bは、モータハウジング部8の後端面8cよりも前方に位置して側面視では露出しない。モータハウジング部8の左右の側面には、ファン33の外側に位置する排気口11,11・・が形成されている。
【0033】
ドライバドリル1Bにおいても、リアカバー7Bを取り付けるためのネジボス等のネジ止め部をモータハウジング部8内に設ける必要がなくなる。よって、リアカバー7Bの採用による全長の短縮化と共に、モータハウジング部8の径方向のコンパクト化も達成できる。また、リアカバー7Bの取付用のネジが不要となって組み立て性が簡素化するため、製造コストの低減にも繋がる。さらに、リアカバー7Bは、モータハウジング部8の後端面8cよりも前方に位置しているので、全長の一層の短縮化に繋がる。
【0034】
以下、変更例を説明する。
形態1,2において、リアカバーの連結片は、左右一対に限らず、周方向の幅を小さくして数を増やしてもよい。長さも変更可能である。連結片の外周面には、突条に代えて突起を設けてもよい。突条等と係止溝との組み合わせの数を増やしてもよい。逆に凹溝をなくして突条等と係止溝との1つの組み合わせのみで抜け止めを図ってもよい。
形態3においても、モータハウジング部の後端内周面に受け溝を設けてリアカバーを挟持する構造に限らない。例えば、リアカバーの厚みによっては、リアカバーの外周面に受け溝を設け、モータハウジング部の後端内周面に、受け溝に係止する突条や突起を設けてもよい。
【0035】
各形態において、モータは、ブラシレスモータでなく整流子モータ等であってもよい。
各形態において、左ハウジングと右ハウジングとは半割でなくてもよい。モータハウジング部とグリップ部とは別体で連結されてもよい。
各形態において、リアカバーが保持する軸受は、ファンとオーバーラップさせる構造に限らない。例えば、ファンがロータの前側にある場合は、軸受をモータ側のインシュレータ等と径方向にオーバーラップさせることもできる。但し、軸受とモータ側とは必ずしもオーバーラップさせなくてもよい。ファンが前側の場合、リアカバーには通気口として吸気口を設けてもよい。
各形態において、減速機構の段数は増減可能である。変速機構も設計変更が可能であるが、変速機構は省略することもできる。機械式のクラッチでなく電気式のクラッチを採用してもよい。
【0036】
本発明が対象とする電動工具は、ドライバドリルに限らない。本発明は、ドライバドリルの他、震動機構を備えた震動ドライバドリル、インパクトドライバ、スクリュードライバ等の電動工具にも適用できる。これらの電動工具は、バッテリーパックでなく交流電源を用いるAC工具であってもよい。
【符号の説明】
【0037】
1,1A,1B・・ドライバドリル、2・・本体、3・・グリップ部、4・・ドリルチャック、5・・バッテリーパック、6・・本体ハウジング、6a,6b・・半割ハウジング、7,7A,7B・・リアカバー、8・・モータハウジング部、8a・・左ハウジング、8b・・右ハウジング、8c・・後端面、9,71・・ネジ、10・・軸受保持部、12・・連結片、13・・突条、13a・・凹溝、14・・後リブ、15・・前リブ、16・・係止溝、17,67・・ネジボス、20・・ブラシレスモータ、21・・ステータ、22・・ロータ、31・・回転軸、32・・軸受、33・・ファン、40・・ギヤアッセンブリ、41・・スピンドル、50・・第1ギヤケース、51・・第2ギヤケース、52・・ギヤカバーリング、53・・クラッチ調整リング、57・・フランジ、61・・大径部、62・・中径部、63・・小径部、66・・ネジ止め部、68・・突出端部、75・・減速機構、105・・受け溝。
図1
図2
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図18