(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】衣類処理装置
(51)【国際特許分類】
D06F 33/30 20200101AFI20240104BHJP
【FI】
D06F33/30
(21)【出願番号】P 2020088328
(22)【出願日】2020-05-20
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 哲也
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-185190(JP,A)
【文献】特開平01-140389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 1/00-51/02
D06F 58/00-60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類処理室に収容した衣類の洗濯又は乾燥の運転を実行する衣類処理装置であって、
前記衣類処理装置の利用料金を回収する支払装置と、
前記支払装置に支払われた料金に応じた時間を計時するタイマー装置と、
前記支払装置からの運転開始信号に基づいて、前記料金に応じた時間の間、前記運転を制御する制御部と、
商用電源の給電と停電とを検知する電源状態検知部と、
前記衣類処理室内の環境温度を検知する温度検知部と、
を備え、
前記運転の実行中に前記電源状態検知部が前記停電を検知したとき、前記タイマー装置は、復電してから所定条件が成立するまで計時の再開を遅延させる復電時処理を実行
し、
前記タイマー装置は、前記停電の発生時における前記環境温度と前記衣類処理装置の作動状態の少なくとも一方に基づいて、前記支払われた料金に対する時間の計時を再開することを特徴とする衣類処理装置。
【請求項2】
前記環境温度を上昇又は保持させる加熱部と、
前記停電の発生時における前記環境温度を記憶する第1記憶部と、
を備え、
前記制御部は、復電してから前記環境温度に戻すように前記加熱部を制御し、
前記タイマー装置は、前記温度検知部が検知する前記環境温度が前記第1記憶部に記憶された前記環境温度に到達したとき、前記支払われた料金に対する時間の計時を再開することを特徴とする請求項
1に記載の衣類処理装置。
【請求項3】
前記第1記憶部は、前記停電の発生時における前記加熱部の作動状態を記憶し、
前記制御部は、復電してから前記第1記憶部に記憶された前記作動状態に復帰するように前記加熱部を制御し、
前記タイマー装置は、前記制御部が前記第1記憶部に記憶された前記作動状態に復帰したと判断したとき、前記支払われた料金に対する時間の計時を再開することを特徴とする請求項
2に記載の衣類処理装置。
【請求項4】
前記加熱部による加熱時間と前記環境温度の上昇値との相関を記憶する第2記憶部を備え、
前記制御部は、復電時に前記温度検知部により検知される環境温度と前記第1記憶部に記憶された前記環境温度とから前記上昇値を取得し、
前記タイマー装置は、取得した前記上昇値に対応する前記加熱時間が経過したとき、前記支払われた料金に対する時間の計時を再開することを特徴とする請求項
2又は
3に記載の衣類処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用料金を支払うことで動作する乾燥機、洗濯機等の衣類処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コインランドリーやホテルに設置された洗濯機や衣類乾燥機は、コインを投入することで一連の工程を実行するようになっている。また、工程の途中で停電等が発生した場合に備えて、停電発生時の工程や運転状態を記憶しておく機能を有するものがある。
【0003】
例えば、下記の特許文献1のコイン式洗濯機は、途中の進行工程等を記憶する不揮発性メモリを備えている。この不揮発性メモリは、書込み、読出しが自由であり、電源を切ってもその記憶内容が保持される。
【0004】
実際には、コイン受付後、洗濯開始時、すすぎ開始時、脱水開始時に不揮発性メモリに書込みを行う。これにより、停電が発生した場合にも、その復帰時に不揮発性メモリに記憶された工程から運転を再開することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、衣類乾燥機のように、コイン受付後にタイマーによる計時がスタートし、投入金額に応じた時間だけ動作する装置の場合、停電発生時の状態に戻すまでに所定の時間を要する。
【0007】
衣類乾燥機の場合、停電発生時の乾燥室内の温度に復帰するまでに、例えば30秒かかったとすると、この30秒についてもタイマーによる計時が進んでしまい、ユーザが不利益を被るという問題があった。
【0008】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、運転中に停電や故障が発生した場合に、ユーザが不利益を被ることがない衣類処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、衣類処理室に収容した衣類の洗濯又は乾燥の運転を実行する衣類処理装置であって、
前記衣類処理装置の利用料金を回収する支払装置と、
前記支払装置に支払われた料金に応じた時間を計時するタイマー装置と、
前記支払装置からの運転開始信号に基づいて、前記料金に応じた時間の間、前記運転を制御する制御部と、
商用電源の給電と停電とを検知する電源状態検知部と、
前記衣類処理室内の環境温度を検知する温度検知部と、を備え、
前記運転の実行中に前記電源状態検知部が前記停電を検知したとき、前記タイマー装置は、復電してから所定条件が成立するまで計時の再開を遅延させる復電時処理を実行し、
前記タイマー装置は、前記停電の発生時における前記環境温度と前記衣類処理装置の作動状態の少なくとも一方に基づいて、前記支払われた料金に対する時間の計時を再開することを特徴とする。
【0010】
本発明の衣類処理装置は、利用料金を回収する支払装置を備えており、制御部は、支払われた料金に応じた時間の間、洗濯又は乾燥の運転を実行する。また、衣類処理装置の電源状態検知部は、給電の検知を行うとともに停電の検知を行うが、停電を検知したとき復電時処理を実行する。
【0011】
例えば、温風によって衣類を乾燥する衣類乾燥機の運転中に停電により運転が停止されると、衣類処理室の温度が低下する。このため、復電時処理では、復電してから所定条件が成立するまで、タイマー装置による計時の再開を遅延させる。これにより、計時が停止している間に衣類処理室の温度を元に戻す作業を行うことができる。従って、本発明の衣類処理装置は、ユーザに不利益を与えず、支払った料金に応じた衣類処理の運転を提供することができる。
【0013】
また、この構成によれば、温度検知部により、停電発生時における衣類処理室内の環境温度を検知することができる。タイマー装置は、復電時に当該環境温度に基づいて(当該環境温度に戻ったとき、又は近づいたとき)計時を再開する。また、停電発生時における衣類処理装置の作動状態(工程、運転条件等)に基づいて計時を再開してもよい。これにより、停電発生時の状態に戻ったときに、改めて料金に対する時間の計時が行われるようにすることができる。
【0014】
また、本発明の衣類処理装置において、
前記環境温度を上昇又は保持させる加熱部と、
前記停電の発生時における前記環境温度を記憶する第1記憶部と、
を備え、
前記制御部は、復電してから前記環境温度に戻すように前記加熱部を制御し、
前記タイマー装置は、前記温度検知部が検知する前記環境温度が前記第1記憶部に記憶された前記環境温度に到達したとき、前記支払われた料金に対する時間の計時を再開することが好ましい。
【0015】
第1記憶部は、停電発生時における衣類処理室内の環境温度を記憶しているので、制御部は、復電してから前記環境温度に戻すように加熱部を制御する。そして、温度検知部が検知する環境温度が第1記憶部に記憶された環境温度に到達したとき、タイマー装置が料金に対する時間の計時を再開するので、復電時にユーザが料金の面で不利益を被ることがなくなる。
【0016】
また、本発明の衣類処理装置において、
前記第1記憶部は、前記停電の発生時における前記加熱部の作動状態を記憶し、
前記制御部は、復電してから前記第1記憶部に記憶された前記作動状態に復帰するように前記加熱部を制御し、
前記タイマー装置は、前記制御部が前記第1記憶部に記憶された前記作動状態に復帰したと判断したとき、前記支払われた料金に対する時間の計時を再開することが好ましい。
【0017】
第1記憶部は、停電発生時における加熱部の作動状態を記憶しているので、制御部は、復電してから加熱部を元の作動状態に復帰するように制御する。そして、制御部が第1記憶部に記憶された作動状態に復帰したと判断したとき、タイマー装置が料金に対する時間の計時を再開するので、復電時にユーザが料金の面で不利益を被ることがなくなる。
【0018】
また、本発明の衣類処理装置において、
前記加熱部による加熱時間と前記環境温度の上昇値との相関を記憶する第2記憶部を備え、
前記制御部は、復電時に前記温度検知部により検知される環境温度と前記第1記憶部に記憶された前記環境温度とから前記上昇値を取得し、
前記タイマー装置は、取得した前記上昇値に対応する前記加熱時間が経過したとき、前記支払われた料金に対する時間の計時を再開することが好ましい。
【0019】
第2記憶部には、加熱部による加熱時間と環境温度の上昇値との相関(例えば、20℃上昇させるのに60秒かかる等)が予め記憶されている。制御部は、復電時の環境温度と停電発生時の環境温度とから上昇値(温度)を取得する。そして、タイマー装置は、第2記憶部に記憶された環境温度に到達するまでの加熱時間を計時して、当該加熱時間が経過したとき料金に対する時間の計時を再開するので、復電時にユーザが、料金の面で不利益を被ることがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】衣類乾燥機による乾燥運転のフローチャート。
【
図4】衣類乾燥機による乾燥運転のフローチャート(変更形態)。
【
図5】第2実施形態に係る洗濯機の内部構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
以下では、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0022】
初めに、
図1を参照して、本発明の第1実施形態に係る衣類処理装置(衣類乾燥機1)について説明する。衣類乾燥機1は、衣類(タオル、シーツ等の布製品を含む洗濯物)を収容する回転ドラム4(本発明の「衣類処理室」)を備え、温風で衣類を乾燥させる装置である。
【0023】
衣類乾燥機1の筐体2は直方体をなし、天板20、底板21、前板22、後蓋23及び対向する左右一対の側板24により構成されている。前板22の略中央には、回転ドラム4内に衣類を投入するための衣類投入口18が設けられている。また、衣類投入口18は、片開き式の扉19で覆われている。
【0024】
詳細は後述するが、筐体2の内部には、回転ドラム4を回転させるためのモータ、外気を加熱して温風を生成する燃焼ユニット、温風を回転ドラムの内部へ導く温風ダクト等が設けられている。さらに、乾燥運転時にモータの駆動、燃焼ユニットの点消火動作等を制御するコントローラが設けられている。
【0025】
衣類乾燥機1は、コインランドリー、ホテル、病院等に設置され、コインを投入して、支払われた金額に応じた時間作動するタイプである。このため、筐体2の前面(前板22)に支払装置10が取り付けられている。支払装置10は、利用料金としてのコインを回収して、運転開始信号を出力する。また、衣類乾燥機1は、支払われた料金に応じた時間を計時する計時手段(後述するタイマー装置12)を備えている。
【0026】
図2は、衣類乾燥機1の内部構成を示すブロック図である。
【0027】
図示するように、衣類乾燥機1は、コントローラ3、回転ドラム4(モータ4a)、燃焼ユニット6、電源状態検知センサ8、支払装置10、タイマー装置12、温度検知センサ14及び記憶装置16で構成されている。
【0028】
ユーザが支払装置10のコイン投入口にコインを投入すると、コントローラ3の指令でタイマー装置12のタイマーがセットされ(例えば、100円で15分)、その後、タイマーがスタートする。同時に、コントローラ3の指令で乾燥運転の各工程がスタートする。
【0029】
コントローラ3は、モータ4aに駆動信号を送信して回転ドラム4を回転させ、また、燃焼ユニット6(本発明の「加熱部」)を制御して回転ドラム4内の温度(環境温度)を上昇(又は保持)して衣類を乾燥する。その後、セットしたタイマーの残り時間がなくなったとき、タイマー装置12がその旨をコントローラ3に送信する。これにより、コントローラ3がモータ4aを停止させ、乾燥運転が終了する。
【0030】
電源状態検知センサ8(本発明の「電源状態検知部」)は、衣類乾燥機1の外部の商用電源と接続しており、商用電源からの給電(電力供給)を検知する。また、電源状態検知センサ8は、停電が発生して給電が停止した場合には、給電停止信号をコントローラ3に送信する。コントローラ3は、後述する停電時処理を実行した後、乾燥運転を停止する。
【0031】
また、コントローラ3は、温度検知センサ14(本発明の「温度検知部」)及び記憶装置16(本発明の「記憶部」)と接続している。コントローラ3は、当該給電停止信号を受信したとき、温度検知センサ14に回転ドラム4内の温度を測定させ、温度情報(バックアップ温度)を記憶装置16に記憶する。
【0032】
記憶装置16は、第1記憶部16aと第2記憶部16bとからなり、当該温度情報は第1記憶部16aに記憶される。温度情報は停電状態から復帰する復電時処理の際に使用され、回転ドラム4内が当該温度情報の温度に戻るように制御される。なお、第2記憶部16bには、燃焼ユニット6の加熱時間と環境温度の上昇値との相関が記憶されている。
【0033】
次に、
図3を参照して、衣類乾燥機1の乾燥運転のフローチャートを説明する。なお、この乾燥運転には、運転中に停電が発生した場合に実行される停電時処理及び復電時処理が含まれる。
【0034】
まず、ユーザが衣類乾燥機1の支払装置10にコインを投入する(STEP01)。これにより、タイマー装置12が、支払われた料金に応じたタイマー(例えば、30分)をセットする。その後、コントローラ3からモータ4a、燃焼ユニット6に駆動信号が送信され、乾燥運転が開始する(STEP02)。また、このとき、タイマー装置12のタイマー(計時)がスタートする。
【0035】
次に、停電を検知したか否かを判定する(STEP03)。電源状態検知センサ8が停電を検知した場合にはSTEP05に進み、停電を検知していない場合にはSTEP04に進む。
【0036】
停電を検知していない場合(STEP03で「NO」)、タイマーの残り時間がなくなったか否かを判定する(STEP04)。タイマーの残り時間がなくなった場合には、乾燥運転を終えるため本処理を終了する。一方、まだ残り時間がある場合にはSTEP03にリターンする。残り時間がある期間は、乾燥運転が継続して行われる。
【0037】
一方、停電を検知した場合(STEP03で「YES」)、乾燥運転を停止し、タイマー装置12がタイマーをストップ(計時を一時停止)する(STEP05)。また、このとき、温度検知センサ14が停電発生時の回転ドラム4内の温度を測定して、バックアップ温度として記憶装置16(第1記憶部16a)に記憶する(停電時処理)。
【0038】
その後、給電を検知したか否かが判定される(STEP06)。具体的には、電源状態検知センサ8が、商用電源から電力供給が再開されたかを検知する。まだ給電を検知していない場合には給電を検知するまでループし、給電を検知した場合にはSTEP07に進む。
【0039】
給電を検知した場合(STEP06で「YES」)、乾燥運転を再開する(STEP07)。ここで、コントローラ3は、回転ドラム4内が記憶装置16に記憶されたバックアップ温度に戻るように、モータ4a及び燃焼ユニット6を制御する。なお、このとき、タイマー装置12には指令を行わず、タイマー(計時)はストップしたままとする。
【0040】
次に、回転ドラム4内がバックアップ温度に到達したか否かが判定される(STEP08)。温度検知センサ14がバックアップ温度に到達したと検知した場合にはSTEP09に進み、まだ到達を検知していない場合には到達するまでループ(加熱を継続)する。
【0041】
バックアップ温度への到達を検知した場合(STEP08で「YES」)、乾燥運転を継続したまま、タイマー装置12がタイマー(計時)をリスタートする(STEP09)。コントローラ3は、回転ドラム4内がバックアップ温度に到達したときタイマーをリスタートさせる(到達するまで遅延させる)ことで、到達するまでの期間に対して料金がかからないようにする(STEP07~09:復電時処理)。これにより、当該期間において、ユーザが不利益を被ることがなくなる。
【0042】
その後、STEP04に進み、タイマーの残り時間がなくなるまで乾燥運転を継続し、タイマーの残り時間がなくなったとき本処理を終了する。
【0043】
以上では、停電発生時の環境温度(バックアップ温度に到達)に基づいてタイマーをリスタートさせたが、衣類乾燥機1の運転状態に基づいてタイマーをリスタートさせてもよい。「運転状態」の例としては、燃焼ユニット6の作動状態が挙げられるが、以下で詳細を説明する。
【0044】
次に、
図4を参照して、衣類乾燥機1の乾燥運転のフローチャート(変更形態)を説明する。ここでは、上述の衣類乾燥機1の運転状態に基づいてタイマーをリスタートさせる例を説明する。
【0045】
まず、ユーザが衣類乾燥機1にコインを投入する(STEP11)。これにより、タイマー装置12が、支払われた料金に応じたタイマーをセットする。その後、コントローラ3からモータ4a、燃焼ユニット6に駆動信号が送信され、乾燥運転が開始し、タイマーがスタートする(STEP12)。
【0046】
次に、停電を検知したか否かを判定する(STEP13)。電源状態検知センサ8が停電を検知した場合にはSTEP15に進み、停電を検知していない場合にはSTEP14に進む。
【0047】
停電を検知していない場合(STEP13で「NO」)、タイマーの残り時間がなくなったか否かを判定する(STEP14)。タイマーの残り時間がなくなった場合には、乾燥運転を終えるため本処理を終了し、まだ残り時間がある場合にはSTEP13にリターンする。
【0048】
一方、停電を検知した場合(STEP13で「YES」)、乾燥運転を停止し、タイマー装置12がタイマーをストップする(STEP15)。また、温度検知センサ14が停電発生時に測定したバックアップ温度の他、衣類乾燥機1の運転状態を記憶装置16(第1記憶部16a)に記憶する(停電時処理)。
【0049】
その後、給電を検知したか否かが判定される(STEP16)。電源状態検知センサ8が給電を検知していない場合には給電を検知するまでループし、給電を検知した場合にはSTEP17に進む。
【0050】
給電を検知した場合(STEP16で「YES」)、乾燥運転を再開する(STEP17)。ここで、コントローラ3は、回転ドラム4内が記憶装置16(第1記憶部16a)に記憶された運転状態に戻るように、モータ4a及び燃焼ユニット6を制御する。なお、このとき、タイマー装置12には指令を行わず、タイマーはストップしたままとする。
【0051】
例えば、乾燥運転の終盤においては、衣類がほぼ乾いた状態となるため、回転ドラム4をゆっくり回転させながら仕上げを行う工程が存在する。このような工程の途中で停電が発生した場合には、コントローラ3は、モータ4a及び燃焼ユニット6がゆっくりと停電発生時の状態に戻るように制御することが好ましい。
【0052】
例えば、直ちに停電発生時の温度に戻すため、燃焼ユニット6から高温の風を出そうとすると、大出力となり、衣類を傷めてしまうおそれも生じる。このため、コントローラ3は、徐々にバックアップ温度に到達するように燃焼ユニット6を制御する。「運転状態」とは、温度に限られず、停電発生時の乾燥運転の工程やモータ4aの回転数等を含む概念である。
【0053】
次に、回転ドラム4内が元の運転状態に復帰したか否かが判定される(STEP18)。コントローラ3が元の運転状態に復帰したと判断した場合にはSTEP19に進み、まだ復帰していないと判断した場合には復帰するまでループ(加熱を継続)する
【0054】
元の運転状態に復帰したと判定した場合(STEP18で「YES」)、乾燥運転を継続したまま、タイマー装置12がタイマーをリスタートする(STEP19)。コントローラ3は、停電発生時の運転状態に復帰したとき、タイマーをリスタートさせる(復帰まで遅延させる)ことで、復帰までの期間に対して料金がかからないようにする(STEP17~19:復電時処理)。これにより、当該期間において、ユーザが不利益を被ることがなくなる。
【0055】
その後、STEP14に進み、タイマーの残り時間がなくなるまで乾燥運転を継続し、タイマーの残り時間がなくなったとき本処理を終了する。このように、上記変更形態では、停電発生時の乾燥運転の運転状態から再開することで、ユーザの不利益を解消する。
【0056】
以上では、停電発生時の温度や運転状態に戻ったことを契機にタイマーをリスタートさせたが、これに限られるものではない。記憶装置16の第2記憶部16bには、燃焼ユニット6による加熱時間と環境温度の上昇値との相関(例えば、20℃上昇させるのに60秒かかる等)が記憶されているので、測定した環境温度から加熱時間を取得して、復電してから当該加熱時間だけ遅延させてタイマーをリスタートさせてもよい。
【0057】
具体的には、コントローラ3は、停電発生時に回転ドラム4内の環境温度T1を測定するように温度検知センサ14を制御して、環境温度T1を記憶装置16(第1記憶部16a)に記憶する。また、コントローラは3、復電時に回転ドラム4内の環境温度T2を測定するように温度検知センサ14を制御する。
【0058】
コントローラ3は、復電時に停電発生時の状態に戻すための上昇温度ΔT(=T1-T2)を算出する。さらに、コントローラ3は、第2記憶部16bに記憶された相関表から、ΔTだけ上昇させるのにかかる、燃焼ユニット6による加熱時間を取得する。
【0059】
そして、コントローラ3は、当該加熱時間が経過したとき、すなわち、当該加熱時間だけ遅延させてからタイマーがリスタートするようにタイマー装置12を制御する。これにより、停電発生時の状態に復帰したか否かの判定を繰り返すことなく、タイマーをリスタートさせることができる。このような方法でも、停電発生時の状態に戻るまでの期間において、ユーザが不利益を被ることがなくなる。
【0060】
[第2実施形態]
次に、
図5、
図6を参照して、第2実施形態に係る衣類処理装置(洗濯機30)を説明する。洗濯機30は、コインを投入して洗濯の各工程(洗濯運転)を実行する全自動の洗濯機である。
【0061】
図5は、洗濯機30の内部構成を示すブロック図である。
【0062】
図示するように、洗濯機30は、コントローラ33、回転ドラム34(モータ34a)、ドラム回転数検知センサ35、記憶装置36、電源状態検知センサ38、支払装置40、タイマー装置42で構成されている。
【0063】
ユーザが支払装置40のコイン投入口にコインを投入すると、コントローラ33の指令でタイマー装置42のタイマーがセットされ、その後、タイマーがスタートする。同時に、コントローラ33の指令で洗濯運転の一連の工程がスタートする。
【0064】
コントローラ33は、まず、回転ドラム34(洗濯槽、本発明の「衣類処理室」)に水道水を溜める。そして、水量検知センサ(図示省略)が回転ドラム34内の水量が一定値となったことを検知すると、モータ34aに駆動信号を送信して、回転ドラム34を回転させて衣類を洗濯する。
【0065】
洗濯機30では、セットしたタイマー(例えば、脱水時間)の残り時間がなくなったとき、タイマー装置42がその旨をコントローラ33に送信する。これにより、コントローラ33がモータ34aを停止させ、洗濯運転が終了する。
【0066】
電源状態検知センサ38(本発明の「電源状態検知部」)は、洗濯機30の外部の商用電源と接続しており、商用電源からの給電(電力供給)を検知する。また、電源状態検知センサ38は、停電が発生して給電が停止した場合には、給電停止信号をコントローラ33に送信する。コントローラ33は、後述する停電時処理を実行した後、洗濯運転を停止する。
【0067】
また、コントローラ33は、ドラム回転数検知センサ35及び記憶装置36と接続している。コントローラ33は、当該給電停止信号を受信したとき、洗濯機30の運転状態と、ドラム回転数検知センサ35で検知された回転ドラム34の回転数情報(ドラム回転数)を記憶装置36に記憶する。
【0068】
当該運転情報及び当該回転数情報は、停電状態から復帰する復電時処理の際に使用され、停電発生時の洗濯機30の運転状態、ドラム回転数に戻るように制御される。
【0069】
図6は、洗濯機30の洗濯運転のフローチャートである。なお、この洗濯運転には、運転中に停電が発生した場合に実行される停電時処理及び復電時処理が含まれる。
【0070】
まず、ユーザが洗濯機30にコインを投入する(STEP21)。これにより、タイマー装置42が洗濯コースに応じた洗濯終了までの時間に対するタイマー(例えば、45分)をセットする。その後、コントローラ33からモータ34aに駆動信号が送信されて、洗濯運転が開始する(STEP22)。また、このとき、タイマー装置42のタイマー(計時)がスタートする。
【0071】
次に、停電を検知したか否かを判定する(STEP23)。電源状態検知センサ38が停電を検知した場合にはSTEP25に進み、停電を検知していない場合にはSTEP24に進む。
【0072】
停電を検知していない場合(STEP23で「NO」)、タイマーの残り時間がなくなったか否かを判定する(STEP24)。タイマーの残り時間がなくなった場合には、洗濯運転を終えるため本処理を終了する。一方、まだ残り時間がある場合にはSTEP23にリターンする。なお、残り時間がある期間は、洗濯運転(特に、脱水処理)が継続して行われる。
【0073】
一方、停電を検知した場合(STEP23で「YES」)、洗濯運転を停止し、タイマー装置42がタイマーをストップ(計時を一時停止)する(STEP25)。また、このとき、洗濯機30の運転状態(工程、運転条件等)及びドラム回転数検知センサ35によるドラム回転数を記憶装置36に記憶する(停電時処理)。
【0074】
その後、給電を検知したか否かが判定される(STEP26)。具体的には、電源状態検知センサ38が、商用電源から電力供給が再開されたかを検知する。まだ給電を検知していない場合には給電を検知するまでループし、給電を検知した場合にはSTEP27に進む。
【0075】
給電を検知した場合(STEP26で「YES」)、洗濯運転を再開する(STEP27)。ここで、コントローラ33は、記憶装置36に記憶された運転状態、ドラム回転数に戻るように、モータ34a等を制御する。なお、このとき、タイマー装置42には指令を行わず、タイマー(計時)はストップしたままとする。
【0076】
次に、回転ドラム34の回転数が停電発生時の元のドラム回転数に到達したか否かが判定される(STEP28)。ドラム回転数検知センサ35がドラム回転数に到達したと検知した場合にはSTEP29に進み、まだ到達を検知していない場合には到達するまでループする。
【0077】
元のドラム回転数への到達を検知した場合(STEP28で「YES」)、洗濯運転を継続したまま、タイマー装置41がタイマー(計時)をリスタートする(STEP29)。コントローラ33は、回転ドラム34の回転数が元のドラム回転数に到達したとき、タイマーをリスタートさせる(到達するまで遅延させる)ことで、到達するまでの期間に対して料金がかからないようにする(STEP27~29:復電時処理)。これにより、当該期間において、ユーザが不利益を被ることがなくなる。
【0078】
その後、STEP24に進み、タイマーの残り時間がなくなるまで洗濯運転を継続し、タイマーの残り時間がなくなったとき本処理を終了する。特に、洗濯運転の脱水工程においては、回転ドラム34を停電発生時のドラム回転数に戻すのに時間を要することがある。従って、脱水工程の途中で停電が発生した場合には、コントローラ33は、モータ34aがゆっくりと当該ドラム回転数に戻るように制御することが好ましい。
【0079】
以上、本発明を実施するための実施形態を説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、適宜変更することができる。
【0080】
第1実施形態の衣類乾燥機1、第2実施形態の洗濯機30は、何れもコインの投入より作動する装置であったが、本発明は、これに限られるものではない。本発明は、プリペイドカード等の磁気カードにより利用料金を支払い、タイマーがセットされて、所定時間作動する衣類処理装置にも適用可能である。
【0081】
第2実施形態においては、記憶装置36に回転ドラム34が停止状態から所定の回転数に到達するまでの時間の相関が記憶されていてもよい。コントローラ3は、この相関を用いて、停電発生時のドラム回転数に到達するまでの時間だけ遅延させてからタイマーをリスタートさせてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1…衣類乾燥機、2…筐体、3,33…コントローラ、4,34…回転ドラム、4a,34a…モータ、6…燃焼ユニット、8,38…電源状態検知センサ、10,40…支払装置、12,42…タイマー装置、14…温度検知センサ、16,36…記憶装置、18…衣類投入口、19…扉、30…洗濯機、35…ドラム回転数検知センサ。