(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】荷揚げ装置
(51)【国際特許分類】
B65G 67/60 20060101AFI20240104BHJP
【FI】
B65G67/60 G
B65G67/60 B
(21)【出願番号】P 2020091607
(22)【出願日】2020-05-26
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(73)【特許権者】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 諒太郎
(72)【発明者】
【氏名】坂野 肇
(72)【発明者】
【氏名】阿久根 圭
(72)【発明者】
【氏名】水崎 紀彦
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-131393(JP,A)
【文献】特開2013-036978(JP,A)
【文献】特開2019-113934(JP,A)
【文献】特開平11-208895(JP,A)
【文献】国際公開第2015/195046(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110182622(CN,A)
【文献】特開2014-223990(JP,A)
【文献】特開2019-131398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 67/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積荷を荷揚げする垂直運搬機構に設けられ、走査ライン上における複数の計測点までの距離を計測する測距センサと、
前記走査ライン上における2点間の前記計測点のベクトルと、鉛直下方向との鋭角側のなす角を導出し、導出した前記なす角に基づいて、船倉の壁面に対応する前記計測点を船倉の壁面と判定する判定部と、
を備える荷揚げ装置。
【請求項2】
前記判定部は、
前記なす角の絶対値が所定の角度閾値以下である場合、前記なす角を作る2点の前記計測点を前記船倉の壁面と判定する請求項1に記載の荷揚げ装置。
【請求項3】
前記判定部は、
前記なす角の絶対値が前記角度閾値より大きく90°未満であり、かつ、鉛直下方向に向かうに連れて座標系の原点から離れるように傾斜していると判定された場合、前記なす角を作る2点の前記計測点を前記船倉の壁面と判定する請求項2に記載の荷揚げ装置。
【請求項4】
前記測距センサによって距離が計測された前記計測点について、前記垂直運搬機構を基準とした座標系における位置を導出する座標導出部と、
前記座標導出部によって導出された前記計測点の座標を、地上の所定位置を基準とした座標系の座標に変換する座標変換部と、を備える請求項1から3のいずれか1項に記載の荷揚げ装置。
【請求項5】
前記判定部は、
複数の前記計測点のうち、前記垂直運搬機構を構成する、積荷を掻き取る掻取部の先端部側の所定範囲の前記計測点を対象として前記船倉の壁面を判定する請求項1から4のいずれか1項に記載の荷揚げ装置。
【請求項6】
船倉に挿入される掻取部と、
測距センサのデータを取得する計測データ取得部と、
前記計測データ取得部で取得した複数の計測点に対し参照角を導出し、前記参照角と設定された下限値とを比較する判定部と、
前記複数の計測点に沿う直線と、前記掻取部との接近を判定する接近判定部と、
を備え、
前記参照角は、前記複数の計測点に沿う直線と、鉛直下方向との鋭角側のなす角である荷揚げ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、荷揚げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
荷揚げ装置は、船倉内に積載された積荷を、船倉外に搬出する。荷揚げ装置の一例としてアンローダ装置がある。アンローダ装置では、積荷の状態や、船倉の壁面までの距離等を作業者が直接目視することが困難または不可能なことが多い。
【0003】
そこで、アンローダ装置では、複数の測距センサでの計測結果を用いて船倉のモデルを生成し、生成した船倉のモデルと掻取部のモデルとの位置関係に基づいて、船倉の壁面までの距離を導出する技術(例えば、特許文献1)が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載されたような技術では、船倉のモデル構築までに十分なデータの蓄積や煩雑な処理を要する。しかし、荷揚げ装置では、モデルが生成されていない状況においても壁面を判定し、衝突回避を行うことが必要となる。
【0006】
本開示は、このような課題を鑑み、壁面を判定することが可能な荷揚げ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る荷揚げ装置は、積荷を荷揚げする垂直運搬機構に設けられ、走査ライン上における複数の計測点までの距離を計測する測距センサと、走査ライン上における2点間の計測点のベクトルと、鉛直下方向との鋭角側のなす角を導出し、導出したなす角に基づいて、船倉の壁面に対応する計測点を船倉の壁面と判定する判定部と、を備える。
【0008】
判定部は、なす角の絶対値が所定の角度閾値以下である場合、なす角を作る2点の計測点を船倉の壁面と判定計測点として抽出してもよい。
【0009】
判定部は、なす角の絶対値が角度閾値より大きく90°未満であり、かつ、鉛直下方向に向かうに連れて座標系の原点から離れるように傾斜していると判定された場合、なす角を作る2点の計測点を船倉の壁面と判定してもよい。
【0010】
測距センサによって距離が計測された計測点について、垂直運搬機構を基準とした座標系における位置を導出する座標導出部と、座標導出部によって導出された計測点の座標を、地上の所定位置を基準とした座標系の座標に変換する座標変換部を備えてもよい。
【0011】
判定部は、複数の計測点のうち、垂直運搬機構を構成する、積荷を掻き取る掻取部の先端部側の所定範囲の計測点を対象として船倉の壁面と判定してもよい。
【0012】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る荷揚げ装置は、船倉に挿入される掻取部と、測距センサのデータを取得する計測データ取得部と、計測データ取得部で取得した複数の計測点に対し参照角を導出し、参照角と設定された下限値とを比較する判定部と、複数の計測点に沿う直線と、掻取部との接近を判定する接近判定部と、を備え、参照角は、複数の計測点に沿う直線と、鉛直下方向との鋭角側のなす角である。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、荷揚げ装置は、船倉の壁面を判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図5】アンローダ装置の電気的な構成を説明する図である。
【
図6】垂直運搬機構部と船倉の壁面との接近判定を行う処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】アンローダ装置の座標系を説明する図である。
【
図8】アンローダ装置の座標系を説明する図である。
【
図9】船倉壁面計測点抽出処理を説明する図である。
【
図12】垂直運搬機構のワイヤーフレームモデルを説明する図である。
【
図13】第2の実施形態におけるアンローダ装置の電気的な構成を説明する図である。
【
図14】第2の実施形態におけるアンローダ装置の座標系を説明する図である。
【
図15】第2の実施形態におけるアンローダ装置の座標系を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態におけるアンローダ装置100の概要を説明する図である。
図1に示すように、荷揚げ装置の一例としてのアンローダ装置100は、岸壁2に沿って敷設された一対のレール3上を、レール3の延在方向に走行可能である。アンローダ装置100は、岸壁2に停泊された船舶4の船倉5内に積載された積荷6を外部に搬出する。積荷6は、ばら荷が想定されており、一例として石炭が挙げられる。
【0017】
図2は、アンローダ装置100の構成を説明する図である。なお、
図2では、岸壁2および船舶4を断面で示している。
図2に示すように、アンローダ装置100は、走行体102、旋回体104、ブーム106、トップフレーム108、エレベータ110、掻取部112、ブームコンベア114を含んで構成される。なお、エレベータ110および掻取部112は、積荷6を船倉5から搬出する垂直運搬機構部として機能する。
【0018】
走行体102は、不図示のアクチュエータが駆動することで、レール3上を走行可能である。走行体102には、位置センサ116が設けられる。位置センサ116は、例えばロータリーエンコーダである。位置センサ116は、走行体102の車輪の回転数に基づき、所定の原点位置に対する走行体102の水平面上の位置を計測する。
【0019】
旋回体104は、走行体102の上部に、垂直軸を中心に旋回自在に設けられる。旋回体104は、不図示のアクチュエータが駆動することで、走行体102に対して旋回可能である。
【0020】
ブーム106は、旋回体104の上部に、傾斜角度を変更可能に設けられる。ブーム106は、不図示のアクチュエータが駆動することで、旋回体104を基準とした傾斜角度を変更可能である。
【0021】
旋回体104には、旋回角度センサ118および傾斜角度センサ120が設けられる。旋回角度センサ118および傾斜角度センサ120は、例えばロータリーエンコーダである。旋回角度センサ118は、走行体102に対する旋回体104の旋回角度を計測する。傾斜角度センサ120は、旋回体104に対するブーム106の傾斜角度を計測する。
【0022】
トップフレーム108は、ブーム106の先端に設けられる。トップフレーム108には、エレベータ110を旋回させるアクチュエータが設けられる。
【0023】
エレベータ110は、略円柱形状に形成される。エレベータ110は、中心軸を中心として旋回自在にトップフレーム108に支持される。トップフレーム108には、旋回角度センサ122が設けられる。旋回角度センサ122は、例えばロータリーエンコーダである。旋回角度センサ122は、トップフレーム108に対するエレベータ110の旋回角度を計測する。
【0024】
掻取部112は、エレベータ110の下端に設けられ、船倉5に挿入される。掻取部112は、エレベータ110の旋回に伴って、エレベータ110と一体的に旋回する。
【0025】
掻取部112は、複数のバケツ112aおよびチェーン112bが設けられる。複数のバケツ112aは、チェーン112bに連続的に配置される。チェーン112bは、掻取部112、および、エレベータ110の内部に架け渡される。
【0026】
掻取部112は、不図示のリンク機構が設けられる。リンク機構は、可動することにより、掻取部112の底部の長さを可変させる。これにより、掻取部112は、船倉5内の積荷6と接するバケツ112aの数を可変させる。掻取部112は、チェーン112bを回動させることにより、底部のバケツ112aによって船倉5内の積荷6を掻き取る。そして、積荷6を掻き取ったバケツ112aは、チェーン112bの回動に伴ってエレベータ110の上部に移動する。
【0027】
ブームコンベア114は、ブーム106の下方に設けられる。ブームコンベア114は、バケツ112aによってエレベータ110の上部に移動された積荷6を外部に搬出させる。
【0028】
このような構成でなるアンローダ装置100は、走行体102によってレール3の延在方向に移動し、船舶4との長手方向の相対位置関係を調整する。また、アンローダ装置100は、旋回体104によって、ブーム106、トップフレーム108、エレベータ110および掻取部112を旋回させ、船舶4との短手方向の相対位置関係を調整する。また、アンローダ装置100は、ブーム106によって、トップフレーム108、エレベータ110および掻取部112を鉛直方向に移動させ、船舶4との鉛直方向の相対位置関係を調整する。また、アンローダ装置100は、トップフレーム108によってエレベータ110および掻取部112を旋回させる。これにより、アンローダ装置100は、掻取部112を任意の位置および角度に移動させることができる。
【0029】
ここで、船舶4は、複数の船倉5が設けられる。船倉5は、上部にハッチコーミング7が設けられる。ハッチコーミング7は、鉛直方向に所定高さの壁面を有している。また、ハッチコーミング7は、船倉5における中央付近の水平断面に比べて、開口面積が小さい。つまり、船倉5は、ハッチコーミング7により開口が窄まった形状をしている。なお、ハッチコーミング7の上方には、ハッチコーミング7を開閉するハッチカバー8が設けられる。
【0030】
アンローダ装置100には、測距センサ130、131が設けられる。測距センサ130、131は、例えば、測距可能なレーザセンサであり、Velodyne社製のVLP-16、VLP-32、Quanergy社製のM8等が適用される。測距センサ130、131は、例えば円柱形状の本体部の側面に、軸方向に沿って離隔した16のレーザー照射部が設けられる。レーザー照射部は、360度回転可能に本体部に設けられる。レーザー照射部は、互いに隣接して配置されたレーザー照射部との軸方向に対するレーザーの発射角度の差が1~2.5度間隔となるようにそれぞれ配置される。つまり、測距センサ130、131は、本体部の周方向に360度の範囲でレーザーを照射可能である。また、測距センサ130、131は、本体部の軸方向に直交する平面を基準として、±15度の範囲でレーザーを発射可能である。また、測距センサ130、131は、レーザーを受信する受信部が本体部に設けられる。
【0031】
測距センサ130、131は、レーザー照射部を回転させながら所定角度毎にレーザーを照射する。測距センサ130、131は、複数のレーザー照射部から照射(投影)されて物体(計測点)で反射したレーザーを受信部でそれぞれ受信する。そして、測距センサ130、131は、レーザーが照射されてから受信するまでの時間に基づいて、物体(計測点)までの距離を導出する。つまり、測距センサ130、131は、1つのレーザー照射部によって、1つの走査ライン上で複数の計測点までの距離をそれぞれ計測する。また、測距センサ130、131は、複数のレーザー照射部によって、複数の走査ライン上での複数の計測点までの距離をそれぞれ計測する。
【0032】
図3および
図4は、測距センサ130、131の計測範囲を説明する図である。
図3は、掻取部112を上方から見た際の測距センサ130、131の計測範囲を説明する図である。なお、
図3では、アンローダ装置100のうち、掻取部112のみを図示している。また、
図3では、船舶4について、掻取部112と鉛直方向の同位置での水平断面を示している。
図4は、掻取部112を側面112c側から見た際の測距センサ130、131の計測範囲を説明する図である。
図3および
図4において、測距センサ130、131の計測範囲を一点鎖線で示す。
【0033】
測距センサ130、131は、主に、船倉5内の積荷6、および、船倉5の壁面を検出する際に用いられる。測距センサ130は、
図3および
図4に示すように、掻取部112の側面112cに取り付けられる。測距センサ130は、本体部の中心軸が、掻取部112の側面112cに直交するように配置される。測距センサ131は、掻取部112の側面112dに取り付けられる。測距センサ131は、本体部の中心軸が、掻取部112の側面112dに直交するように配置される。測距センサ130、131は、鉛直上方向の一部が不図示のカバーで覆われる。
【0034】
したがって、測距センサ130、131は、
図3に示すように、上方から見たときに、掻取部112の先端部112eから末端部112fに向かう方向とは直交する方向に、測距センサ130、131全体としての発射角度に応じた範囲に存在する物体までの距離を計測することができる。また、測距センサ130、131は、
図4に示すように、側面112c側から見たときに、測距センサ130、131よりも上方から下方に向かい、さらに上方に至るまでの円弧状の範囲に存在する物体までの距離を計測することができる。
【0035】
測距センサ130、131は、物体までの距離を計測すると、物体までの距離を示す計測データをアンローダ制御部140(
図5参照)に送信する。
【0036】
図5は、アンローダ装置100の電気的な構成を説明する図である。
図5に示すように、アンローダ装置100には、アンローダ制御部140、記憶部142および表示部144が設けられる。
【0037】
アンローダ制御部140は、位置センサ116、旋回角度センサ118、傾斜角度センサ120、旋回角度センサ122、測距センサ130、131、記憶部142および表示部144と接続される。アンローダ制御部140は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成される。アンローダ制御部140は、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出す。そして、アンローダ制御部140は、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して、アンローダ装置100全体を管理および制御する。
【0038】
また、アンローダ制御部140は、駆動制御部150、計測データ取得部152、座標導出部154、船倉壁面計測点抽出部(判定部)156、水平方向接近判定部158、鉛直方向接近判定部160、接近制御部162として機能する。駆動制御部150は、例えば、アンローダ装置100に設けられた不図示の操作室に搭乗した作業者の操作に応じて、アンローダ装置100の駆動を制御する。なお、アンローダ制御部140の他の機能部の詳細については後述する。
【0039】
記憶部142は、ハードディスク、不揮発性メモリ等の記憶媒体である。記憶部142は、詳しくは後述する垂直運搬機構部(エレベータ110および掻取部112)の3次元モデルを記憶する。
【0040】
表示部144は、LEDディスプレイ、有機ELディスプレイ等である。表示部144には、作業者に種々の情報を報知するための画像が表示される。
【0041】
図6は、垂直運搬機構部と船倉5の壁面との接近判定を行う処理の流れを示すフローチャートである。
図6に示すように、まず、計測データ取得部152は、測距センサ130、131で計測された計測点の計測データを随時取得する(S100)。なお、計測データ取得部152は、掻取部112が船倉5内の積荷6の掻き取り作業を開始してから、全ての積荷6を掻き取り終えるまでの間(例えば10時間)、測距センサ130、131から計測データを1秒に1~5回の頻度で定期的に取得する。
【0042】
図7および
図8は、アンローダ装置100の座標系を説明する図である。
図7は、アンローダ装置100を上方から見た図である。
図8は、アンローダ装置100を側方から見た図である。ここで、アンローダ装置100は、掻取部座標系300を有する。
【0043】
図7および
図8に示すように、掻取部座標系300は、エレベータ110の中心軸上であって、鉛直方向におけるトップフレーム108の下端を原点としている。掻取部座標系300は、原点から掻取部112の先端部112eの中心に向かう方向をXa軸方向とする。掻取部座標系300は、エレベータ110の延在方向をZa軸方向とする。掻取部座標系300は、Xa軸方向およびZa軸方向に直交する方向をYa軸方向とする。
【0044】
そして、計測データ取得部152により測距センサ130、131から計測データが取得される度に、座標導出部154は、測距センサ130、131により計測された計測点について、掻取部座標系300における位置(座標)を導出する(S102)。
【0045】
ここで、測距センサ130、131は、掻取部112に取り付けられているため、掻取部座標系300における位置が予め既知となっている。そこで、座標導出部154は、測距センサ130、131の掻取部座標系300における位置と、測距センサ130、131により計測された計測点までの距離および方向とに基づいて、計測点の掻取部座標系300における位置(x、y、z)を導出する。
【0046】
船倉壁面計測点抽出部156は、測距センサ130、131により計測された計測点から、掻取部112の先端部112e側の半分の計測点を抽出する(S104)。つまり、船倉壁面計測点抽出部156は、測距センサ130、131により計測された計測点のうち、先端部112e側の所定範囲の計測点を抽出する。
【0047】
これは、掻取部112が積荷6を掻き取る際、掻取部112の先端部112eが最も船倉5の壁面に接近するため、先端部112e側に位置する壁面のみを抽出すれば、後述する接近処理(水平方向接近判定処理、鉛直方向接近判定処理)において、掻取部112と壁面との接近判定を行えるからである。このようにすることで、処理負荷を低減することができる。
【0048】
その後、船倉壁面計測点抽出部156は、抽出した先端部112e側の半分の計測点を対象として、船倉5の壁面に対応する計測点(壁面までの距離が計測された計測点)を抽出する船倉壁面計測点抽出処理を実行する(S106)。
【0049】
図9は、船倉壁面計測点抽出処理を説明する図である。
図10は、第1条件を説明する図である。
図11は、第2条件を説明する図である。なお、
図9、
図10、
図11において、計測点を黒丸で示す。
【0050】
船倉壁面計測点抽出部156は、先端部112e側の半分の計測点を抽出すると、走査ライン毎に以下の処理を行う。なお、
図9は、1つの走査ラインで切取った船倉5の断面を示す図ともいえる。上記したように、測距センサ130、131は、16のレーザー照射部が設けられているため、一回の測定において16の走査ライン上の計測点までの距離を計測することができる。なお、レーザー照射部は、
図9で示す計測点を時計回りの順に計測したとする。また、エレベータ110は略鉛直方向に延在し、測距センサ130、131はエレベータ110が延在する方向に沿ってレーザーを照射するため、走査ラインは、鉛直線を含む平面上に位置するか、鉛直線を含む平面に対してわずかに傾いている。換言すると、測距センサ130、131で計測される計測点は、鉛直線を含む平面上(鉛直方向)、あるいは鉛直線を含む平面に対してわずかに傾いた平面上に配列されている。つまり、実施形態における鉛直方向には、鉛直方向、および、鉛直方向とみなせる方向(鉛直方向に対してわずかに傾いた方向)を含むものである。
【0051】
ここで、
図9に示すように、船倉5は、概ね鉛直方向に延在する側壁5a、および、側壁5aの上端から鉛直上方に向かってハッチコーミング7側に傾斜する上壁5bを有する。つまり、船倉5の壁面は、側壁5aおよび上壁5bを含んでいる。
【0052】
そこで、船倉壁面計測点抽出部156は、側壁5aおよび上壁5bに対応する計測点を抽出する。
【0053】
具体的には、船倉壁面計測点抽出部156は、
図10および
図11に示すように、まず、連続して計測される計測点のうち、いずれかの計測点P
i(x
i、y
i、z
i)と、当該計測の時系列でn個(nは1以上の整数)後に計測される計測点P
i+n(x
i+n、y
i+n、z
i+n)とが作るベクトルP
i-P
i+nを導出する。なお、nの値は適宜選択することが可能で、隣接した計測点(n=1)によりベクトルを導出することも可能である。その場合は、壁面の角度が変化する境界近くの計測点まで判定が可能となる。他方、n=1とした場合は,ノイズの影響を除去する対策が必要となる。nを1より大きな値とすることで、ノイズの影響を緩和することが可能である。例えば、本願発明者により、n=2~5であると、ノイズの影響を緩和できることが確認されている。
【0054】
また、船倉壁面計測点抽出部156は、導出したベクトルPi-Pi+nと、Za軸負方向(鉛直下方向)との鋭角側のなす角φi(参考角)を導出する。
【0055】
そして、船倉壁面計測点抽出部156は、なす角φiが第1条件または第2条件を満たしているかを判定する。
【0056】
第1条件は、下記の(1)式で示される。
0≦|φi|≦φth (1)
【0057】
第2条件は、下記の(2)式で示される。
φ
th<|φ
i|<90 かつ
【数1】
【0058】
ここで、φthは、側壁5aが鉛直方向に対して傾く可能性がある角度に設定された所定の角度閾値である。φthは、例えば10°~15°の範囲のいずれかの値に設定される(このφthはPi、Pi+nが船倉壁面上にあると判定するための下限値となる)。
【0059】
したがって、第1条件は、なす角φiの絶対値がφth以下であることが設定されている。つまり、第1条件を満たす計測点は、側壁5aに対応するものであると言える。これにより、側壁5aに対応する計測点を精度良く抽出することができる。
【0060】
第2条件は、なす角φiがφth大きく90°未満であり、かつ、Za軸負方向に向かうに連れて掻取部座標系300の原点から離れるように傾斜していることが設定されている。したがって、第2条件を満たす計測点は、上壁5bに対応するものであると言える。なお、積荷6の表面は、Za軸負方向に向かうに連れて掻取部座標系300の原点に近づくように傾斜するため、積荷6の表面を誤って抽出してしまうことを防止することができる。これにより、上壁5bに対応する計測点を精度良く抽出することができる。
【0061】
船倉壁面計測点抽出部156は、第1条件または第2条件を満たす計測点Piおよび計測点Pi+nを、船倉5の壁面に対応する計測点として抽出する。なお、船倉壁面計測点抽出部156は、他の計測点に対して同様の処理を行う。また、ここで抽出された計測点を船倉壁面計測点と呼ぶ。
【0062】
このように、船倉壁面計測点抽出部156は、船倉5の壁面の形状に合わせた第1条件または第2条件を満たす計測点を、船倉5の壁面と判定し、船倉壁面計測点として抽出する。これにより、後述する処理において、垂直運搬機構から船倉5の壁面までの距離を導出することができる。
【0063】
水平方向接近判定部158は、船倉5の壁面と垂直運搬機構との水平方向の接近判定を行う(S108)。
【0064】
図12は、垂直運搬機構のワイヤーフレームモデル170を説明する図である。記憶部142には、
図12に示すような、垂直運搬機構(エレベータ110および掻取部112)のワイヤーフレームモデル170が記憶されている。ワイヤーフレームモデル170は、垂直運搬機構の外形を直線によって示した3次元モデルである。ワイヤーフレームモデル170には、垂直運搬機構の外形を示す直線jの重心p
mcj(x
mcj、y
mcj、z
mcj)、直線方向の単位ベクトルv
mj(x
vmj、y
vmj、z
vmj)が関連付けられている。なお、重心p
mcj、直線方向の単位ベクトルv
mjは、掻取部座標系300によって表されている。
【0065】
水平方向接近判定部158は、船倉壁面計測点Piに対するワイヤーフレームモデル170の水平面上の距離Lijを導出する。ただし、Za軸方向の座標が、ワイヤーフレームモデル170の上端点よりも大きい船倉壁面計測点Pi、および、ワイヤーフレームモデル170の下端点よりも小さい船倉壁面計測点Piは、計算の対象から除外する。
【0066】
ここで、距離L
ijは、下記の(3)式によって表すことができる。
【数2】
【0067】
また、下記の(4)式および(5)式の関係が成り立つ。
Zpi=Zpij (4)
pij=tvmj+pmcj(tは任意の実数) (5)
ここで、pij(xij、xij、zij)は、船倉壁面計測点Pi(xi、yi、zi)を含む水平面と直線jの交点である。
【0068】
そして、(4)式および(5)式によれば、(6)式~(8)式が導き出せる。
【数3】
【数4】
【数5】
【0069】
水平方向接近判定部158は、(3)式、(6)式~(8)式を用いて、全ての船倉壁面計測点Piについて距離Lijを導出する。
【0070】
水平方向接近判定部158は、導出した距離Lijのうち、最も値が小さい最小距離Lminと水平距離閾値とを比較することで、水平方向の接近判定を行う。水平距離閾値は、警告水平距離閾値と、警告水平距離閾値よりも小さい値の停止水平距離閾値とが設けられている。
【0071】
また、水平方向接近判定部158は、最小距離Lminが導出された船倉壁面計測点Piおよびpijのベクトルpij-Piと、Xa軸の正方向、負方向、Ya軸方向の正方向、負方向の4つの単位ベクトルとの内積を用いて壁面の接近方向を導出する。
【0072】
接近制御部162は、水平方向接近判定部158による比較結果として、最小距離Lminが警告水平距離閾値以下である場合、最小距離Lminと、接近方向とを例えば表示部144に表示する(S112)。
【0073】
また、接近制御部162は、水平方向接近判定部158による比較結果として、最小距離Lminが停止水平距離閾値以下である場合、掻取部112を強制的に停止させる(S112)。
【0074】
鉛直方向接近判定部160は、船倉5の壁面と垂直運搬機構との鉛直方向の接近判定を行う(S110)。
【0075】
鉛直方向接近判定部160は、ワイヤーフレームモデル170における掻取部112の上面に対応する直線の頂点、および、その直線を一定間隔でサンプリングした点を代表点PCULj(xCULj、yCULj、zCULj)として抽出する。
【0076】
そして、鉛直方向接近判定部160は、ワイヤーフレームモデル170の代表点PCULjの下端(Za軸方向の最も値が小さい位置)よりもZa軸方向上方にある船倉壁面計測点Piと、代表点PCULjとの距離Lzijを導出する。
【0077】
なお、各代表点PCULjに対して距離Lzijを導出する船倉壁面計測点Piは、(9)式および(10)式を満たす船倉壁面計測点Piに限られる。
xCULj-thvAreax<xi<xCULj+thvAreax (9)
yCULj-thvAreay<yi<yCULj+thvAreay (10)
ここで、thvAreaxは、Xa軸方向の範囲閾値であり、thvAreayは、Ya軸方向の範囲閾値である。
【0078】
鉛直方向接近判定部160は、各代表点PCULjについて、(9)式および(10)式を満たす船倉壁面計測点Piとの距離Lzijを(11)式を用いて導出する。
Lzij=|zj-zCULj | (11)
【0079】
鉛直方向接近判定部160は、導出した距離Lzijのうち、最も値が小さい最小距離Lzminと鉛直距離閾値とを比較することで、鉛直方向の接近判定を行う。鉛直距離閾値は、警告鉛直距離閾値と、警告鉛直距離閾値よりも小さい値の停止鉛直距離閾値とが設けられている。
【0080】
接近制御部162は、鉛直方向接近判定部160による比較結果として、最小距離Lzminが警告水平距離閾値以下である場合、最小距離Lzminと、接近方向とを例えば表示部144に表示する(S112)。
【0081】
また、接近制御部162は、鉛直方向接近判定部160による比較結果として、最小距離Lzminが停止鉛直距離閾値以下である場合、掻取部112を強制的に停止させる(S112)。
【0082】
以上のように、水平方向接近判定部158および鉛直方向接近判定部160によって、垂直運搬機構のワイヤーフレームモデル170と、船舶4の壁面に対応する船倉壁面計測点との接近判定を行う。これにより、アンローダ装置100は、垂直運搬機構が船舶4の壁面に衝突してしまうおそれがあることを作業者に通知することができる。また、アンローダ装置100は、垂直運搬機構が船舶4の壁面に衝突してしまうおそれがあるときに未然に垂直運搬機構を停止させることができる。
【0083】
船倉5の壁面の一部は、掻取対象により埋没した状態となっている。本実施形態では、既に露出した船倉5の壁面上のベクトルPi-Pi+nに沿った直線と掻取部112との間の接近を判定している。つまり、本実施形態は、埋没した状態となっている壁面に対しも接近の判定をしている。そのため、掻取対象により埋没した状態となっている壁面との衝突も抑制することが可能である。
【0084】
<第2の実施形態>
図13は、第2の実施形態におけるアンローダ装置400の電気的な構成を説明する図である。アンローダ装置400は、第1の実施形態におけるアンローダ装置100と比べ、アンローダ制御部140に座標変換部402が設けられている点で相違する。
【0085】
図14および
図15は、第2の実施形態におけるアンローダ装置400の座標系を説明する図である。
図14は、アンローダ装置400を上方から見た図である。
図15は、アンローダ装置400を側方から見た図である。ここで、アンローダ装置400は、掻取部座標系300に加え、地上座標系310を有する。
【0086】
図14および
図15に示すように、地上座標系310は、岸壁2(地上)に予め設定された所定位置、例えばアンローダ装置400の初期位置を原点としている。地上座標系310は、レール3の延在方向および鉛直方向に直交する方向をXa軸方向とする。地上座標系310は、レール3の延在方向をYa軸方向とする。地上座標系310は、鉛直方向をZa軸方向とする。
【0087】
ここで、掻取部座標系300は、アンローダ装置400の形状、アンローダ装置400の移動、および、掻取部112の旋回に基づいて幾何学的に地上座標系310に変換可能である。そこで、座標変換部402は、掻取部座標系300で表される、船倉壁面計測点抽出部156により抽出された船倉壁面計測点の位置(座標)を、アンローダ装置400の形状、アンローダ装置400の移動、および、掻取部112の旋回に基づいて、地上座標系310の位置(座標)に変換する。
【0088】
また、座標変換部402は、掻取部座標系300で表される、ワイヤーフレームモデル170を構成する直線の重心の位置(座標)を、アンローダ装置400の形状、アンローダ装置400の移動、および、掻取部112の旋回に基づいて、地上座標系310の位置(座標)に変換する。
【0089】
そして、水平方向接近判定部158および鉛直方向接近判定部160は、地上座標系310に変換された船倉壁面計測点の位置、および、ワイヤーフレームモデル170の直線の重心の位置を用いて、接近判定を行う。したがって、水平方向接近判定部158は、上記した接近方向を地上座標系310で表すことになる。
【0090】
そうすると、接近制御部162は、接近方向を表示部144に表示するときに、地上座標系310で表示することができる。そのため、作業者は、例えば、垂直運搬機構が海側または陸側のどちらで船倉5の壁面に近づいているのかや、垂直運搬機構が船首側または船尾側のどちらで船倉5の壁面に近づいているのかなど、直感的に近接方向を把握することができる。
【0091】
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に技術的範囲に属するものと了解される。
【0092】
また、上記実施形態において、荷揚げ装置の一例としてアンローダ装置100を例に挙げて説明した。しかしながら、荷揚げ装置は、連続アンローダ(バケット式、ベルト式、垂直スクリューコンベア式など)、ニューマチックアンローダ、グラブ式アンローダ、ジブクレーン等であってもよい。なお、グラブ式アンローダやジブクレーンにおける垂直搬送部は、上下動するケーブルおよび、グラブ・フックが相当する。
【0093】
また、上記実施形態では、計測データ取得部152で取得した2つの計測点に対するベクトルから参照角を導出した。しかし、計測点は2つに限る必要はなく、例えば直線状に並んだ2つより多くの計測点の近似直線に対し、参照角を導出することも可能である。つまり、2つの計測点に対するベクトル、複数の計測点に対する近似直線など、複数の計測点に沿った直線に対し、参照角を導出してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本開示は、荷揚げ装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0095】
100 アンローダ装置(荷揚げ装置)
130 測距センサ
131 測距センサ
154 座標導出部
156 船倉壁面計測点抽出部(判定部)