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特許7412282炉内締結装置及び炉内締結方法並びに原子炉
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】炉内締結装置及び炉内締結方法並びに原子炉
(51)【国際特許分類】
   G21C 13/02 20060101AFI20240104BHJP
   G21C 15/02 20060101ALI20240104BHJP
   F16B 2/04 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
G21C13/02 200
G21C15/02 S
F16B2/04 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020102073
(22)【出願日】2020-06-12
(65)【公開番号】P2021196235
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2022-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】黒板 翔
(72)【発明者】
【氏名】内山 好司
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 義雄
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-064566(JP,A)
【文献】特開平05-188172(JP,A)
【文献】特開2005-189164(JP,A)
【文献】特開昭52-003800(JP,A)
【文献】特開平02-036038(JP,A)
【文献】特開昭51-039468(JP,A)
【文献】実開昭59-058514(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 11/00-13/10
G21C 15/02
F16B 2/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉圧力容器の内部に設置されている2つの炉内構造物を、原子炉運転時に増大する前記原子炉圧力容器内の圧力を用いて締結することを特徴とし、
前記2つの炉内構造物は、各々にフランジを有し、前記原子炉運転時には前記フランジ同士が前記原子炉圧力容器内の圧力を用いて締結されるものであり、
一方の前記フランジに固定された容器と、
前記容器内に移動可能に配置され、該容器の一部を密閉する密閉部材と、
前記密閉部材より前記フランジ側に設けられた圧力導入孔と、
前記密閉部材に一端が接続され、その一端から延びる部材が各々の前記フランジに形成された貫通孔を貫通し、その貫通した前記部材の先端(頭部)が前記貫通孔の径より大きいTバーと、から成ることを特徴とする炉内締結装置。
【請求項2】
請求項に記載の炉内締結装置であって、
前記容器は、底面が平面な断面がU字状で、かつ、前記密閉部材と前記圧力導入孔との間の位置の内周側に突起部を有する容器であり、
前記密閉部材は、前記容器内に移動可能に配置されていると共に、一端が前記容器の底面に位置し、他端が前記突起部で移動が規制され、原子炉停止時には前記原子炉圧力容器内の圧力より高いガスが内部に封入されているシリンダ及び該シリンダの両端部を封止する端板であることを特徴とする炉内締結装置。
【請求項3】
請求項に記載の炉内締結装置であって、
前記Tバーには、装置運転時に前記Tバーに締付け力を付与し、装置据付時に初期締付 け力を付与するばねが設置されていることを特徴とする炉内締結装置。
【請求項4】
請求項に記載の炉内締結装置であって、
前記ばねは、前記シリンダと前記突起部間に配置されて構成されていることを特徴とする炉内締結装置。
【請求項5】
請求項に記載の炉内締結装置であって、
前記シリンダに一端が接続され、前記容器の底面に形成された上部孔を貫通するロッドを有することを特徴とする炉内締結装置。
【請求項6】
請求項乃至のいずれか1項に記載の炉内締結装置であって、
前記シリンダは、長手方向の両端部が端板で支持されているベローズ構造であることを特徴とする炉内締結装置。
【請求項7】
請求項に記載の炉内締結装置であって、
前記容器は、底面が曲面な断面がU字状で、かつ、前記密閉部材と前記圧力導入孔との間の位置の内周側に突起部を有する容器であり、
前記密閉部材は、前記容器内に、原子炉停止時には前記原子炉圧力容器内の圧力より高いガスが封入されるガス空間を形成すると共に、前記突起部で移動が規制される封止部材及び該封止部材の外周部に設けられ、前記ガス空間内の前記ガスを密閉するOリングであることを特徴とする炉内締結装置。
【請求項8】
請求項乃至のいずれか1項に記載の炉内締結装置であって、
前記ガスは、不活性ガスであることを特徴とする炉内締結装置。
【請求項9】
原子炉圧力容器の内部に設置されている2つの炉内構造物が炉内締結装置で締結されて いる原子炉であって、
前記炉内締結装置は、請求項1乃至のいずれか1項に記載の炉内締結装置であることを特徴とする原子炉。
【請求項10】
原子炉圧力容器の内部に設置されている2つの炉内構造物を、原子炉運転時に増大する前記原子炉圧力容器内の圧力を用いて締結するに当たって、
前記2つの炉内構造物は、各々にフランジを有し、前記原子炉運転時には前記フランジ同士が前記原子炉圧力容器内の圧力を用いて締結され
一方の前記フランジに固定された容器と、
前記容器内に移動可能に配置され、該容器の一部を密閉する密閉部材と、
前記密閉部材より一方の前記フランジ側に設けられた圧力導入孔と、
前記密閉部材に一端が接続され、その一端から延びる部材が各々の前記フランジに形成された貫通孔を貫通し、その貫通した前記部材の先端(頭部)が前記貫通孔の径より大きいTバーと、から成る炉内締結装置により、
前記原子炉運転時には、前記密閉部材内に封入されたガスの圧力を上回る前記原子炉圧力容器内の圧力が前記圧力導入孔より前記容器内に導入されることで、前記Tバーが前記密閉部材と共に上昇し、他方の前記フランジと前記Tバーの頭部が接触することにより、前記フランジ同士が締結されることを特徴とする炉内締結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炉内締結装置及び炉内締結方法並びに原子炉に係り、例えば、沸騰水型原子炉の炉内構造物の締結を、被曝環境下でボルト等を用いないで行うものに好適な炉内締結装置及び炉内締結方法並びに原子炉に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、沸騰水型原子炉では、原子炉圧力容器内に配置された複数の燃料集合体から成る炉心での核反応により加熱された原子炉冷却水の一部が蒸気になる。この核反応により加熱された原子炉冷却水及び蒸気を含む気液二相流が、炉心の上方に設置された気水分離器により原子炉冷却水と蒸気に分離される。
【0003】
上記した気水分離器は、炉心上部プレナムを形成するシュラウドヘッド上に設けられており、このシュラウドヘッドは、上部格子板にシュラウドヘッドボルトにより固定されることで、原子炉圧力容器の内部に設置されている。
【0004】
上記したシュラウドヘッドボルトは、ボルト構造による締付け力に加えて、原子炉の運転時の温度におけるシュラウドヘッドボルトを構成する部材の材質の違いによる熱膨張差を利用して、シュラウドヘッドの固定に必要な締付け力を得ている。
【0005】
上記したシュラウドヘッドボルトの締付け及び緩め作業は、被曝環境下での作業となるため、シュラウドヘッドボルトによる締付け及び緩め作業を無くすことが望まれている。
【0006】
このシュラウドヘッドボルトを用いないでシュラウドヘッドを締結する締結構造の一例が、特許文献1、2、3及び4に記載されている。
【0007】
上記した特許文献1、2及び3には、シュラウドヘッドボルトを用いないでシュラウドヘッドを固定するために、シュラウドヘッドに設けられたフランジと上部格子板に設けられたフランジに機械的締結機構を用いることが記載されている。一方、特許文献4には、シュラウドヘッドに設けられたフランジを、シュラウドヘッドの上方に設置された蒸気乾燥器により押え付けることで固定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2014-134490号公報
【文献】特開昭62-228971号公報
【文献】特開昭61-226684号公報
【文献】特開昭61-281996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、シュラウドヘッドの据付け又は取外し作業においては、シュラウドヘッドボルトの締付け又は緩め作業が必要となる。このシュラウドヘッドボルトの締付け又は緩め作業は被曝環境下での作業であり、この被曝環境下での作業を無くすことが望ましい。
【0010】
上記した被曝環境下でのシュラウドヘッドボルトの締付け又は緩め作業を無くす場合、締付け又は緩め作業が必要となるシュラウドヘッドボルトを用いずに、シュラウドヘッドを固定する必要がある。
【0011】
ところが、シュラウドヘッドボルトを用いずにシュラウドヘッドを固定する場合、特許文献1、2及び3に記載されているように、シュラウドヘッドに設けられたフランジと上部格子板に設けられたフランジに機械的締結機構を用いたり、或いは特許文献4に記載されているように、シュラウドヘッドに設けられたフランジを、シュラウドヘッドの上方に設置された蒸気乾燥器により押え付けることが必要となる。
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載されている機械的締結構造の場合、シュラウドヘッドボルトによる締付け力のうち、シュラウドヘッドボルトを構成する部材の熱膨張差による締付け力を確保することが困難であり、また、特許文献4に記載されているように、シュラウドヘッドを、シュラウドヘッドの上方に設置された蒸気乾燥器により押え付ける場合、蒸気乾燥器による押え付け力をシュラウドヘッドに均等に作用させるために、蒸気乾燥器の据付時において、蒸気乾燥器と押え付け力を伝達する各改良型吊り上げ棒の接触位置を調整する必要があり、被曝環境下での作業を無くすことは困難である。
【0013】
また、特許文献2及び3に記載されている機械的締結構造の場合、機械的締付け力に加え、この機械的締結構造を構成する部材の熱膨張差を用いた締付け力を得ることができるが、シュラウドヘッドに設けられたフランジと上部格子板に設けられたフランジが近接していることから、シュラウドヘッドボルトを用いた場合と同等の熱膨張差による締付け力を得るためには、この機械的締結構造の部材の断面積を大きくする必要があり、原子炉冷却水の流れに対して悪影響を与える可能性がある。
【0014】
更に、シュラウドヘッドボルトを用いた場合又は特許文献2及び3に記載されている機械的締結構造の場合、構成部材の熱膨張差による締付け力を用いているが、原子炉停止時においては、原子炉内の温度が圧力より先に低下することにより、熱膨張差による締付け力も圧力より先に低下してしまう。
【0015】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、炉内構造物の締結を被曝環境下でボルト等を用いないで短時間で行うことができ、しかも、部材の熱膨張差による締付け力を得る構造よりも長時間締付け力を維持することができる炉内締結装置及び炉内締結方法並びに原子炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の炉内締結装置は、上記目的を達成するために、原子炉圧力容器の内部に設置されている2つの炉内構造物を、原子炉運転時に増大する前記原子炉圧力容器内の圧力を用いて締結することを特徴とし、
前記2つの炉内構造物は、各々にフランジを有し、前記原子炉運転時には前記フランジ同士が前記原子炉圧力容器内の圧力を用いて締結されるものであり、
一方の前記フランジに固定された容器と、
前記容器内に移動可能に配置され、該容器の一部を密閉する密閉部材と、
前記密閉部材より前記フランジ側に設けられた圧力導入孔と、
前記密閉部材に一端が接続され、その一端から延びる部材が各々の前記フランジに形成された貫通孔を貫通し、その貫通した前記部材の先端(頭部)が前記貫通孔の径より大きいTバーと、から成ることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の原子炉は、上記目的を達成するために、原子炉圧力容器の内部に設置されている2つの炉内構造物が炉内締結装置で締結されている原子炉であって、前記炉内締結装置は、上記構成の炉内締結装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、炉内構造物の締結を被曝環境下でボルト等を用いないで短時間で行うことができ、しかも、部材の熱膨張差による締付け力を得る構造よりも長時間締付け力を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の原子炉の一例として沸騰水型原子炉の構成を示す断面図である。
図2(a)】本発明の原子炉に採用される炉内締結装置の実施例1であり、装置据付時の状態を示す断面図である。
図2(b)】本発明の原子炉に採用される炉内締結装置の実施例1であり、装置運転時の状態を示す断面図である。
図3(a)】本発明の原子炉に採用される炉内締結装置の実施例2であり、装置据付時の状態を示す断面図である。
図3(b)】本発明の原子炉に採用される炉内締結装置の実施例2であり、装置運転時の状態を示す断面図である。
図4(a)】本発明の原子炉に採用される炉内締結装置の実施例3であり、装置据付時の状態を示す断面図である。
図4(b)】本発明の原子炉に採用される炉内締結装置の実施例3であり、装置運転時の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図示した実施例に基づいて本発明の炉内締結装置及び炉内締結方法並びに原子炉を説明する。なお、各実施例において、同一構成部品には同符号を使用する。
【実施例1】
【0021】
図1に、本発明の原子炉の一例として沸騰水型原子炉の構成を示す。
【0022】
図1に示すように、沸騰水型原子炉1は、原子炉圧力容器2内にシュラウドヘッド11、上部格子板7、炉心シュラウド5及び炉心支持板6が少なくとも配置されて概略構成されている。
【0023】
上記した炉心シュラウド5は、複数の燃料集合体4が装荷された炉心3を取り囲んで配置されており、炉心支持板6が炉心3の下端部において炉心シュラウド5に取り付けられて配置されている。
【0024】
また、炉心3の上端部には、炉心シュラウド5に取り付けられた上部格子板7が配置されており、この上部格子板7によってそれぞれの燃料集合体4の上端が支持されている。燃料集合体4の相互間に出し入れされる複数の制御棒8は、各制御棒駆動機構ハウジング10内に設置された制御棒駆動機構(図示せず)にそれぞれ連結されている。
【0025】
また、原子炉圧力容器2内の炉心3の下方には複数の制御棒案内管9が設置されており、炉心3から引き抜かれた制御棒8が制御棒案内管9にガイドされる。
【0026】
一方、上部格子板7の上端にはシュラウドヘッド11が取り付けられており、シュラウドヘッド11の上方には気水分離器12が取り付けられ、気水分離器12の上方には蒸気乾燥器13が配置されている。
【0027】
図2(a)及び図2(b)は、上述した沸騰水型原子炉1に採用される炉内締結装置の実施例1であり、図2(a)は装置据付時(原子炉停止時)、図2(b)は装置運転時(原子炉運転時)の状態をそれぞれ示し、図1のA部を拡大したものである。
【0028】
図2(a)及び図2(b)では、装置据付時(原子炉停止時)及び装置運転時(原子炉運転時)における、本実施例の締結装置14Aが設置されている様子を示している。なお、本実施例の締結装置14Aは、シュラウドヘッド11のフランジ11aの周方向に複数個設置されるが、設置されている様子は同一であるため、複数個の図示は省略する(他の実施例も同じ)。
【0029】
図2(a)及び図2(b)に示すように、本実施例の締結装置14Aは、シュラウドヘッド11のフランジ11aにカップリング構造(図2(a)のB部)で取り付けられ、シュラウドヘッド11のフランジ11a側の下部に圧力導入孔14cが形成されている底面が平面な断面U字状の容器14dと、この容器14d内に移動可能に配置されていると共に、一端が容器14dのU字状の底面に位置し、他端が容器14dの下部で圧力導入孔14cより上方の内周側に形成された突起部14d1で移動が規制され、かつ、装置据付時には原子炉圧力容器2内の圧力より高い不活性ガスが内部に封入されているシリンダ14a(このシリンダ14aは、長手方向(図の上下方向)の両端部が端板14a1、14a2で封止されているベローズ構造である)と、このシリンダ14aの容器14dのU字状の底面とは反対側に一端が接続され、その一端から下方に延びる部材14b1がシュラウドヘッド11のフランジ11aと上部格子板7のフランジ7aに形成された貫通孔14lを貫通し、その貫通した部材14b1の先端(頭部)が貫通孔14lの径より大きく、かつ、シリンダ14aと共に移動するTバー14bとから構成されている。
【0030】
そして、装置据付時(原子炉停止時)には、図2(a)に示すように、シリンダ14a内に封入された不活性ガスの圧力が原子炉圧力容器2内の圧力よりも高く、Tバー14bの頭部が上部格子板7のフランジ7aの下面に接触することなく取り付けられ、一方、装置運転時(原子炉運転時)には、図2(b)に示すように、シリンダ14a内に封入された不活性ガスの圧力を上回る原子炉圧力容器2内の圧力が圧力導入孔14cより容器14d内に導入されることで、シリンダ14aが圧縮されてTバー14bがシリンダ14aと共に上方に上昇し、上部格子板7のフランジ7aの下部にTバー14bの頭部が接触することにより、シュラウドヘッド11のフランジ11aと上部格子板7のフランジ7aが締結される。
【0031】
即ち、本実施例の締結装置14Aは、カップリング機構にてシュラウドヘッド11のフランジ11aに固定されており、締結装置14AのTバー14bは、上部格子板7のフランジ7aから抜けない方向に回転されている。
【0032】
装置据付時(原子炉停止時)においては、締結装置14Aの内部に設けられたベローズ構造のシリンダ14a内に封入された不活性ガスの圧力が、原子炉圧力容器2内の圧力よりも高いため、締結装置14AのTバー14bは上部格子板7のフランジ7aの下面に接触することなく取り付けられている。
【0033】
また、装置運転時(原子炉運転時)においては、締結装置14Aに設けられた圧力導入孔14cより、締結装置14Aの内部に設けられたベローズ構造のシリンダ14a内に封入された不活性ガスの圧力を上回る原子炉圧力容器2内の圧力が作用することで、シリンダ14aが圧縮され、締結装置14AのTバー14bが上方に上昇し、上部格子板7のフランジ7aの下部に接触することにより、シュラウドヘッド11のフランジ11aと上部格子板7のフランジ7aが締結される。
【0034】
なお、上述した実施例では、シュラウドヘッド11のフランジ11aと上部格子板7のフランジ7aの締結について説明したが、本実施例の締結装置14Aは、原子炉圧力容器2内に配置されている炉心シュラウド5と炉心支持板6、炉心シュラウド5と上部格子板7の締結にも適用できる。
【0035】
また、本実施例の締結装置14Aのシュラウドヘッド11のフランジ11aへの固定は、図2(a)及び図2(b)に示すカップリング機構による固定に限定されないことは言うまでもなく、溶接又はボルト締結等のあらゆる固定方法が可能である。
【0036】
また、本実施例の締結装置14Aのシリンダ14a内に封入されるものは、不活性ガスに限定されないことは言うまでもない。
【0037】
このように、本実施例の締結装置14Aは、ボルトの締付け及び緩め作業を無くし、シリンダ14a内に封入されている不活性ガスを原子炉運転時の圧力により圧縮することで、シュラウドヘッド11を含む炉内構造物の締付けを可能とする装置である。つまり、本実施例の締結装置14Aは、被曝環境下での締付け又は緩め作業を無くすことで、被曝環境下での作業時間を短縮すると共に、締結装置14Aを構成する部材の熱膨張差による締付け力を得る構造よりも長時間締付け力を維持することができる。
【0038】
従って、本実施例によれば、シュラウドヘッド11等の炉内構造物の締結を、被曝環境下でボルト等を用いないで短時間で行うことができ、しかも、部材の熱膨張差による締付け力を得る構造よりも長時間締付け力を維持することができる。
【実施例2】
【0039】
次に、本発明の原子炉に採用される炉内締結装置の実施例2について、図3(a)及び図3(b)を用いて説明する。
【0040】
図3(a)及び図3(b)に示すように、本実施例の炉内締結装置14Bは、シュラウドヘッド11のフランジ11aにカップリング構造(図2(a)のB部と同じ)で取り付けられ、シュラウドヘッド11のフランジ11a側の下部に圧力導入孔14cが形成されていると共に、この圧力導入孔14cより上方に、装置据付時(原子炉停止時)には原子炉圧力容器2内の圧力より高い不活性ガスが内部に封入される底面が曲面の断面U字状の容器14dと、この容器14d内にガス空間14iを形成し、容器14dの下部で圧力導入孔14cより上方の内周側に形成された突起部14d1で移動が規制される封止部材14jと、この封止部材14jに一端が接続され、その一端から延びる部材14b1がシュラウドヘッド11のフランジ11aと上部格子板7のフランジ7aに形成された貫通孔14lを貫通し、その貫通した部材14b1の先端(頭部)が貫通孔14lの径より大きく封止部材14jと共に移動するTバー14bとから構成され、封止部材14jの外周部には、ガス空間14i内に封入された不活性ガスを密閉するOリング14eが設置されている。
【0041】
そして、装置据付時(原子炉停止時)には、ガス空間14iには原子炉圧力容器2内の圧力よりも高い不活性ガスが直接封入されており、Tバー14bの頭部が上部格子板7のフランジ7aの下面に接触することなく取り付けられ、一方、装置運転時(原子炉運転時)には、ガス空間14i内に封入された不活性ガスの圧力を上回る原子炉圧力容器2内の圧力が圧力導入孔14cより容器14d内に導入されることで、封止部材14jと共にTバー14bが上方に上昇し、上部格子板7のフランジ7aの下部にTバー14bの頭部が接触することにより、シュラウドヘッド11のフランジ11aと上部格子板7のフランジ7aが締結される
即ち、本実施例の締結装置14Bは、実施例1の締結装置14Aと比べ、締結装置14B内にベローズ構造のシリンダ14aを設けることなく、容器14d内に直接不活性ガスを封入し、Tバー14bの上部にOリング14eを設けることで、不活性ガスを密閉する構造としたものである。
【0042】
このような本実施例の構成であっても、実施例1と同様な効果を得ることができる。
【実施例3】
【0043】
次に、本発明の原子炉に採用される炉内締結装置の実施例3について、図4(a)及び図4(b)を用いて説明する。
【0044】
図4(a)及び図4(b)に示す本実施例の炉内締結装置14Cは、実施例1の締結装置14Aを改良したものである。
【0045】
図4(a)及び図4(b)に示すように、本実施例の炉内締結装置14Cは、実施例1の締結装置14Aの構成に加え、Tバー14bに、装置運転時(原子炉運転時)にTバー14bに締付け力を付与し、装置据付時(原子炉停止時)に初期締付け力を付与するばね14fを設置したものである。
【0046】
上記したばね14fは、シリンダ14aの端板14a2とシュラウドヘッド11のフランジ11a間に配置されている。
【0047】
また、断面U字状の容器14dの底面には、この底面を貫通する上部孔14gが形成されており、装置据付時(原子炉停止時)に上部孔14gからロッド14hを挿入してシリンダ14aの端板14a1を押し下げ、シリンダ14aを介してばね14fを押圧することでシュラウドヘッド11のフランジ11aに設置され、ロッド11hを介した押圧を開放することで、初期締付け力を付与している。
【0048】
即ち、本実施例の締結装置14Cは、図4(a)に示すように、ばね14fが、シリンダ14aと容器14dの圧力導入孔14cより上方の内周側に形成された突起部14d1間に配置されて構成され、このばね14fのばね力により、実施例1の締結装置14Aに比べ装置運転時(原子炉運転時)の締付け力が向上すると共に、据付時(原子炉停止時)に初期締付け力を与えるようにしている。
【0049】
また、本実施例の締結装置14Cは、据付時(原子炉停止時)に容器14dの上部孔14gより、ロッド14hを用いてシリンダ14aを介してばね14fを押し下げることで、シュラウドヘッド11のフランジ11aに設置し、シュラウドヘッド11のフランジ11aと上部格子板7のフランジ7aに据付時より締付け力を与えることができる。
【0050】
このような本実施例の構成とすることにより、実施例1と同様な効果が得られることは勿論、ばね力が加わり装置運転時(原子炉運転時)の締付け力が更に向上すると共に、据付時(原子炉停止時)に初期締付け力を与えることができる。
【0051】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1…沸騰水型原子炉、2…原子炉圧力容器、3…炉心、4…燃料集合体、5…炉心シュラウド、6…炉心支持板、7…上部格子板、7a…上部格子板のフランジ、8…制御棒、9…制御棒案内管、10…制御棒駆動機構ハウジング、11…シュラウドヘッド、11a…シュラウドヘッドのフランジ、12…気水分離器、13…蒸気乾燥器、14A、14B、14C…締結装置、14a…シリンダ、14a1、14a2…端板、14b…Tバー、14b1…部材、14c…圧力導入孔、14d…容器、14d1…突起部、14e…Oリング、14f…ばね、14g…上部孔、14h…ロッド、14i…ガス空間、14j…封止部材、14l…貫通孔。
図1
図2(a)】
図2(b)】
図3(a)】
図3(b)】
図4(a)】
図4(b)】