(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】ウェザストリップ
(51)【国際特許分類】
B60J 10/90 20160101AFI20240104BHJP
B60R 13/06 20060101ALI20240104BHJP
B60J 10/18 20160101ALI20240104BHJP
B60J 10/21 20160101ALI20240104BHJP
B60J 10/36 20160101ALI20240104BHJP
B60J 10/20 20160101ALI20240104BHJP
【FI】
B60J10/90
B60R13/06
B60J10/18
B60J10/21
B60J10/36
B60J10/20
(21)【出願番号】P 2020105167
(22)【出願日】2020-06-18
【審査請求日】2023-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2019112522
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120765
【氏名又は名称】小滝 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】森 紘亮
(72)【発明者】
【氏名】渡曾 祐介
(72)【発明者】
【氏名】玉置 清隆
(72)【発明者】
【氏名】羽山 暢夫
(72)【発明者】
【氏名】藤田 豊栄
(72)【発明者】
【氏名】池内 翼
(72)【発明者】
【氏名】田中 学
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-206092(JP,A)
【文献】特開平07-215068(JP,A)
【文献】特開2009-241623(JP,A)
【文献】特開2005-206091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/90
B60R 13/06
B60J 10/18
B60J 10/21
B60J 10/36
B60J 10/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両上部の開口を開閉自在に覆う開閉ルーフと、左右一対のフロントピラーの上端部同士を車幅方向で連結するフロントヘッダを有するコンバーチブル車に取付けられ、前記開閉ルーフの前側の角部と前記フロントヘッダとの間、前記フロントピラーとフロントドアガラスとの間をシールするウェザストリップであって、
前記ウェザストリップは、前記フロントピラーに取付けられる縦辺部と、
前記フロントヘッダに取付けられる固定部を有し、
前記ウェザストリップの前記固定部には、前記フロントヘッダの端部に形成された切欠部に係合される係合部と、
前記フロントヘッダの端部にボルト締結される孔部を有するウェザストリップ締結部が形成され、
前記ウェザストリップの前記固定部にはインサートが埋設され
、
前記係合部は、車幅方向において、斜め内側に向けて形成されていることを特徴とするウェザストリップ。
【請求項2】
車両上部の開口を開閉自在に覆う開閉ルーフと、左右一対のフロントピラーの上端部同士を車幅方向で連結するフロントヘッダを有するコンバーチブル車に取付けられ、前記開閉ルーフの前側の角部と前記フロントヘッダとの間、前記フロントピラーとフロントドアガラスとの間をシールするウェザストリップであって、
前記ウェザストリップは、前記フロントピラーに取付けられる縦辺部と、
前記フロントヘッダに取付けられる固定部を有し、
前記ウェザストリップの前記固定部には、前記フロントヘッダの端部に形成された切欠部に係合される係合部と、
前記フロントヘッダの端部にボルト締結される孔部を有するウェザストリップ締結部が形成され、
前記ウェザストリップの前記固定部にはインサートが埋設され、
前記ウェザストリップ締結部は、車幅方向に延設し、車内側に突出して形成され、前記ウェザストリップの前記固定部に埋設される前記インサートは、前記ウェザストリップ締結部にも延設されていることを特徴とするウェザストリップ。
【請求項3】
前記ウェザストリップの前記固定部に埋設される前記インサートは、前記係合部にも延設され、前記係合部に埋設されている
請求項1に記載のウェザストリップ。
【請求項4】
前記ウェザストリップの前記固定部に埋設される前記インサートは、前記係合部にも延設され、前記係合部に埋設されている請求項2に記載のウェザストリップ。
【請求項5】
前記ウェザストリップ締結部は、車幅方向に延設し、車内側に突出して形成され、前記ウェザストリップの前記固定部に埋設される前記インサートは、前記ウェザストリップ締結部にも延設されている
請求項1又は請求項3に記載のウェザストリップ。
【請求項6】
前記ウェザストリップの前記固定部の固定部本体部の車内側であり、前記ウェザストリップ締結部の車幅方向の片側、または両側の近傍には、前記フロントヘッダの端部に当接する薄肉部が形成されている
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のウェザストリップ。
【請求項7】
前記薄肉部は、0.5mm以下である請求項
6に記載のウェザストリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバーチブル車のフロントヘッダとフロントピラーに取付けられ、開閉ルーフの前側の角部とフロントヘッダとの間、フロントピラーとフロントドアガラスとの間をシールするウェザストリップに関する。
【背景技術】
【0002】
開閉可能なルーフを有するコンバーチブル車のフロントガラス周縁には、左右一対のフロントピラーの上端部の相互間を車幅方向に連結するフロントヘッダが形成されている。そして、フロントピラーとフロントヘッダには、開閉ルーフが展開して、車体の天井部分まで移動して自動車のルーフを形成したときに、開閉ルーフの前端部とフロントヘッダとの間及びフロントドアガラスの前側部とフロントピラーとの間をシールするウェザストリップが取付けられている。
【0003】
上記のウェザストリップにおいて、特に、フロントヘッダとフロントピラーの接続部に配設される部分、すなわち、上記ウェザストリップのコーナー部では、ルーフの前側の角部とフロントドアガラスの前側部の上端部が場所を異にして当接し、且つルーフやフロントドアガラスが繰り返し開閉するため、ウェザストリップのズレや変形に伴うシール不良を防止する必要がある。そのため、ウェザストリップのコーナー部には、ウェザストリップ自身に高い剛性が要求されると同時に、フロントヘッダに対する確実な位置決めと固定が要求される。この高い剛性等の要求を満たすための技術として、例えば、下記特許文献1に記載のものが知られている。
【0004】
特許文献1の技術は、
図11に示すように、フロントガラスウエザストリップ200(以下、「ウェザストリップ」という。)のコーナー部210は、フロントガラス周縁フレームのコーナー部に取付ける取付基部240と、取付基部240の縦辺部220側に一体に形成され、ドアガラスの側端と当接するドアガラスシール部250と、取付基部240の上辺部230側に一体に形成され、可動ルーフ500の前端と当接する可動ルーフシール部260とを有し、取付基部240にフロントガラス周縁フレームのフランジ部の形状に対応したインサート270を埋設し、インサート270にフロントガラス周縁フレームのフランジ部に係止される第1切起こし係止部271、第2切起こし係止部272を設けている。そして、
図11(b)に示すように、ウェザストリップ200は、クリップ300と両面テープ400によりフロントガラス周縁フレームのコーナー部に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記の特許文献1の技術では、ウェザストリップ200をクリップ300と両面テープ400によりフロントガラス周縁フレームのコーナー部に固定しているが、この固定方法では、ウェザストリップ200をクリップ300止めした後、ウェザストリップ200の可動ルーフ側を捲り、両面テープ400の裏紙を剥がしながらウェザストリップ200をフロントガラス周縁フレームのコーナー部に固定する必要があり、作業が煩雑である。
一方、コスト低減として両面テープ400を廃止したいという要望も高い。さらに、フロントガラス周縁フレームのコーナー部の形状によっては、両面テープ400を用いた固定方法が難しい場合もある。
【0007】
両面テープを廃止した固定方法を考える場合、上記の特許文献1のクリップでは、フロントガラス周縁フレームへの固定力が不足するため、クリップに替えて、ボルト締結による固定が考えられる。
しかし、ボルト締結の場合は、ボルト締めを行う時に、ウェザストリップに形成される締結部にボルトの回転方向の力が加わり、そのボルトの回転方向の力によってウェザストリップにズレや変形が発生し、シール面における問題が発生する。
したがって、ボルト締結時のボルトの回転方向の力に対するウェザストリップおよび車体側取付部に構造的な対応が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1の本発明は、車両上部の開口を開閉自在に覆う開閉ルーフと、左右一対のフロントピラーの上端部同士を車幅方向で連結するフロントヘッダを有するコンバーチブル車に取付けられ、開閉ルーフの前側の角部とフロントヘッダとの間、フロントピラーとフロントドアガラスとの間をシールするウェザストリップであって、ウェザストリップは、フロントピラーに取付けられる縦辺部と、フロントヘッダに取付けられる固定部を有し、ウェザストリップの固定部には、フロントヘッダの端部に形成された切欠部に係合される係合部と、フロントヘッダの端部にボルト締結される孔部を有するウェザストリップ締結部が形成され、ウェザストリップの固定部にはインサートが埋設され、係合部は、車幅方向において、斜め内側に向けて形成されていることを特徴とするウェザストリップである。
【0009】
請求項1の本発明では、ウェザストリップの固定部には、フロントヘッダの端部に形成された切欠部に係合される係合部と、フロントヘッダの端部にボルト締結される孔部を有するウェザストリップ締結部が形成され、ウェザストリップの固定部にはインサートが埋設され、係合部は、車幅方向において、斜め内側に向けて形成されているので、第1に、ウェザストリップに形成された係合部をフロントヘッダの端部に形成された切欠部に挿入して係合することができ、取付時の位置合わせが容易である。
【0010】
第2に、孔部にボルトを挿入し、フロントヘッダの端部とウェザストリップ締結部をボルトによって締結する時に、係合部によって固定部がボルトの回転方向に回転することを防止することができ、且つ固定部に埋設されたインサートによって、ウェザストリップの固定部に変形が発生することを防止することができるので、フロントヘッダとウェザストリップの固定部とを両面テープを用いることなく強固に締結することができる。同時に、変形に起因するシール性や見栄えに問題が発生することを防止することができる。なお、インサートには、硬質な材料(例えば、金属、ポリプロピレン、ナイロンなどの樹脂材料)を使用する。
【0011】
第3に、フロントヘッダの端部に対して、係合部とウェザストリップ締結部の2点でウェザストリップの固定部が位置決めされるので、フロントヘッダの端部に対する確実な位置決めが可能となり、位置ズレに起因するシール性に問題が発生することを防止することができる。
第4に、ウェザストリップの係合部は、車幅方向において、斜め内側に向けて形成されているので、ウェザストリップをフロントヘッダの端部に装着する場合に、斜め内側に向けて形成された係合部が、フロントヘッダの端部に形成された切欠部への挿入の案内役となる。その結果、ウェザストリップをフロントヘッダの端部に装着する時のフロントヘッダに対するウェザストリップの上下左右方向のズレに対する許容範囲が広がり、組付性が向上する。
また、係合部がフロントヘッダの端部に形成された切欠部への挿入の案内役となる結果、係合部は、フロントヘッダの端部に形成された切欠部への挿入が終わった時点で、切欠部への係合が完了すると共に、ウェザストリップ締結部の孔部とフロントヘッダの端部の締結部位との位置合わせも完了するので、この観点においても組付性が向上する。
【0012】
なお、「コンバーチブル車」とは、開閉ルーフを有する乗用自動車を指す言葉であり、ロードスター(Roadster )、ドロップヘッドクーペ(Drophead Coupe )、カブリオレ・カブリオレット(Cabriolet / Kabriolett )、カブリオ (Cabrio )と同義である。また、開閉ルーフには、格納可能若しくは取り外し可能なルーフが含まれ、さらに、ルーフには、樹脂製のハードタイプと布製の幌を用いたソフトタイプが含まれる。
【0013】
請求項2の本発明は、車両上部の開口を開閉自在に覆う開閉ルーフと、左右一対のフロントピラーの上端部同士を車幅方向で連結するフロントヘッダを有するコンバーチブル車に取付けられ、開閉ルーフの前側の角部とフロントヘッダとの間、フロントピラーとフロントドアガラスとの間をシールするウェザストリップであって、ウェザストリップは、フロントピラーに取付けられる縦辺部と、フロントヘッダに取付けられる固定部を有し、ウェザストリップの固定部には、フロントヘッダの端部に形成された切欠部に係合される係合部と、フロントヘッダの端部にボルト締結される孔部を有するウェザストリップ締結部が形成され、ウェザストリップの前記固定部にはインサートが埋設され、ウェザストリップ締結部は、車幅方向に延設し、車内側に突出して形成され、ウェザストリップの固定部に埋設されるインサートは、ウェザストリップ締結部にも延設されていることを特徴とするウェザストリップである。請求項2の本発明では、ウェザストリップの固定部には、フロントヘッダの端部に形成された切欠部に係合される係合部と、フロントヘッダの端部にボルト締結される孔部を有するウェザストリップ締結部が形成され、ウェザストリップの前記固定部にはインサートが埋設され、ウェザストリップ締結部は、車幅方向に延設し、車内側に突出して形成され、ウェザストリップの固定部に埋設されるインサートは、ウェザストリップ締結部にも延設されているので、第1に、ウェザストリップに形成された係合部をフロントヘッダの端部に形成された切欠部に挿入して係合することができ、取付時の位置合わせが容易である。第2に、孔部にボルトを挿入し、フロントヘッダの端部とウェザストリップ締結部をボルトによって締結する時に、係合部によって固定部がボルトの回転方向に回転することを防止することができ、且つ固定部に埋設されたインサートによって、ウェザストリップの固定部に変形が発生することを防止することができるので、フロントヘッダとウェザストリップの固定部とを両面テープを用いることなく強固に締結することができる。同時に、変形に起因するシール性や見栄えに問題が発生することを防止することができる。なお、インサートには、硬質な材料(例えば、金属、ポリプロピレン、ナイロンなどの樹脂材料)を使用する。第3に、フロントヘッダの端部に対して、係合部とウェザストリップ締結部の2点でウェザストリップの固定部が位置決めされるので、フロントヘッダの端部に対する確実な位置決めが可能となり、位置ズレに起因するシール性に問題が発生することを防止することができる。第4に、ウェザストリップ締結部は、車幅方向に延設し、車内側に突出して形成されているので、ウェザストリップを車外側からフロントヘッダに取付ける時に、車幅方向に延設するフロントヘッダの端部に容易に取付けることができる。また、ウェザストリップの固定部に埋設されるインサートは、ウェザストリップ締結部にも延設されているので、ウェザストリップ締結部は高い剛性を有し、後のボルト締結の際のボルトによる回転方向の力がウェザストリップ締結部に加わっても、ウェザストリップ締結部が変形や破断を生じることを防止することができる。
【0015】
請求項3の本発明は請求項1の発明において、請求項4の本発明は請求項2の発明において、ウェザストリップの固定部に埋設されるインサートは、係合部にも延設され、係合部内に埋設されているウェザストリップである。請求項3及び請求項4の本発明では、ウェザストリップの固定部に埋設されるインサートは、係合部にも延設され、係合部内に埋設されているので、係合部の剛性が高くなり、固定部がボルトの回転方向に回転することを防止することができる。また、インサートが露出していないので、例えば、走行時の振動等により硬質な材料のインサートと金属のフロントヘッダが当たったり、擦れたりすることがなく、不快なノイズの発生を防止することができる。
【0016】
請求項5の本発明は、請求項1又は請求項3の発明において、ウェザストリップ締結部は、車幅方向に延設し、車内側に突出して形成され、ウェザストリップの固定部に埋設されるインサートは、ウェザストリップ締結部にも延設されているウェザストリップである。
【0017】
請求項5の本発明は、ウェザストリップ締結部は、車幅方向に延設し、車内側に突出して形成されているので、ウェザストリップを車外側からフロントヘッダに取付ける時に、車幅方向に延設するフロントヘッダの端部に容易に取付けることができる。
【0018】
また、ウェザストリップの固定部に埋設されるインサートは、ウェザストリップ締結部にも延設されているので、ウェザストリップ締結部は高い剛性を有し、後のボルト締結の際のボルトによる回転方向の力がウェザストリップ締結部に加わっても、ウェザストリップ締結部が変形や破断を生じることを防止することができる。
【0019】
請求項6の本発明は、請求項1から請求項5の発明において、ウェザストリップの固定部の固定部本体部の車内側であり、ウェザストリップ締結部の車幅方向の片側、または両側の近傍には、フロントヘッダの端部に当接する薄肉部が形成されているウェザストリップである。
【0020】
ボルトによってウェザストリップのウェザストリップ締結部をフロントヘッダの端部に締結する時、固定部本体部のインサートとフロントヘッダの端部との間に介在する固定部本体部のゴム・エラストマー等の軟質な高分子材料が、ボルトの回転に伴い、車幅方向や高さ方向に動き、固定部本体部が所定の位置からずれる場合がある。
【0021】
請求項6の本発明では、ウェザストリップの固定部の固定部本体部の車内側であり、ウェザストリップ締結部の車幅方向の片側、または両側の近傍には、フロントヘッダの端部に当接する薄肉部が形成されているので、フロントヘッダの端部と薄肉部の当接により、ウェザストリップの固定部の固定部本体部が車幅方向や高さ方向にずれることを防止することができる。
【0022】
請求項7の本発明は、薄肉部は、0.5mm以下であるウェザストリップである。請求項7の本発明では、薄肉部は、0.5mm以下であるので、フロントヘッダの端部とウェザストリップ締結部をボルトによって締結する時に、ウェザストリップの固定部が車幅方向や高さ方向にずれることを防止することができる。
【0023】
薄肉部が0.5mmより厚い場合は、フロントヘッダの端部とウェザストリップ締結部をボルトによって締結する時に、インサートとフロントヘッダの端部との間に介在する軟質な高分子材料が車幅方向や高さ方向に動き、ウェザストリップの固定部が所定の位置からずれる可能性が高くなる。
【0024】
なお、薄肉部の0.5mm以下には、薄肉部の厚さが0(ゼロ)、すなわち、インサートが露出している場合を含む。インサートが露出している場合は、硬質な材料のインサートが直接的にフロントヘッダへ当接するために、位置ずれなく強固に、フロントヘッダにウェザストリップを取付けることができる。ただし、走行時の振動等により、インサート表面が擦られることによりノイズが発生する懸念があるので、わずかでもゴムやエラストマーなどの軟質な高分子材料が薄肉部として介在している方がよい。また0.5mm以下の薄肉部であれば上記と同様に位置ずれなく強固に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0025】
ウェザストリップの固定部には、フロントヘッダの端部に形成された切欠部に係合される係合部と、フロントヘッダの端部にボルト締結される孔部を有するウェザストリップ締結部が形成されており、インサートが埋設されているので、ウェザストリップに形成された係合部をフロントヘッダの端部に形成された切欠部に差し込んで係合することにより、取付時の位置合わせが容易である。
【0026】
また、孔部にボルトを挿入し、フロントヘッダの端部とウェザストリップ締結部をボルトによって締結する時に、係合部によって固定部がボルトの回転方向に回転することを防止することができ、且つ固定部に埋設されたインサートによって、ウェザストリップの固定部に変形が発生することを防止することができるので、フロントヘッダとウェザストリップの固定部とを両面テープを用いることなく強固に締結することができる。同時に、変形に起因するシール性や見栄えに問題が発生することを防止することができる。
【0027】
さらに、フロントヘッダの端部に対して、係合部とウェザストリップ締結部の2点でウェザストリップの固定部が位置決めされるので、フロントヘッダの端部に対する確実な位置決めが可能となり、位置ズレに起因するシール性に問題が発生することを防止することができる。
ウェザストリップの係合部は、車幅方向において、斜め内側に向けて形成されているので、ウェザストリップをフロントヘッダの端部に装着する場合に、斜め内側に向けて形成された係合部が、フロントヘッダの端部に形成された切欠部への挿入の案内役となる。その結果、ウェザストリップをフロントヘッダの端部に装着する時のフロントヘッダに対するウェザストリップの上下左右方向のズレに対する許容範囲が広がり、組付性が向上する。
また、係合部がフロントヘッダの端部に形成された切欠部への挿入の案内役となる結果、係合部は、フロントヘッダの端部に形成された切欠部への挿入が終わった時点で、切欠部への係合が完了すると共に、ウェザストリップ締結部の孔部とフロントヘッダの端部の締結部位との位置合わせも完了するので、この観点においても組付性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図2】(a)は本発明の実施形態に用いるウェザストリップをフロントヘッダに装着した時の車外側上方からの外観図であり、(b)はウェザストリップの固定部の透視図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態における
図2(a)のウェザストリップを車内側から見た時の外観図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に用いるウェザストリップをフロントヘッダの端部に装着する前のウェザストリップとフロントヘッダの端部との関係を示す車外側上方から見た外観図である。
【
図6】(a)は、第1の本発明の実施形態に用いるウェザストリップをフロントヘッダの端部に装着する前、(b)は装着の途中、(c)は装着が完了した時(ボルト締結前)の車内側下方からの外観図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態における
図2(a)のウェザストリップを車内側から見た時の外観図である。
【
図11】(a)は、従来のウェザストリップのコーナー部付近の部分斜視図であり、(b)は、(a)のX-X断面図である(特許文献1)。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の第1の実施形態について
図1から
図6に基づき説明する。
図1で示される車両はコンバーチブル型であり、車体1は、ハードタイプのルーフを備え、2サイドドア、2列、4座タイプである。ただし、このタイプに限定されるものではない。なお、本実施形態のシール構造および車体構造は、左右対称または左右略対称であり、図面では車両右側のみを示している。
【0030】
車体1は、左右一対のフロントピラー4を設け、これら左右一対のフロントピラー4の上端相互間を車幅方向に連結するフロントヘッダ5を設けている。そして、上記の左右一対のフロントピラー4とフロントヘッダ5で囲まれた部位には、フロントガラス60が取付けられている。
【0031】
フロントピラー4の後部には、車室が形成されており、フロントドアガラス62を備えたサイドドア61で開閉すべく構成されている。また、フロントドアガラス62の後方にはクォータウインドウ63が、リアフェンダ80の車内側内部に上下に可動に組み込まれている。
【0032】
車室の上方は、前席用ルーフに該当するフロントルーフ70、後席用ルーフに該当するリヤルーフ71、リヤガラス72を有するガラスユニット73と、フロントルーフ70、リヤルーフ71およびガラスユニット73を格納する格納部74を有している。フロントルーフ70、リヤルーフ71およびガラスユニット73が格納部74内に折りたたまれる形で格納されると車室上方には、開放された空間が出来る。
【0033】
フロントルーフ70の前側の角部とフロントヘッダ5との隙間及びフロントドアガラス62の前側部とフロントピラー4との隙間は、後に詳述する本発明のウェザストリップ2でシールされている。また、フロントルーフ70の車幅側とフロントドアガラス62の上側端部との当接部、リヤルーフ71とクォータウインドウ63との間は、ルーフサイドウェザストリップ76、76でシールされている。さらに、フロントルーフ70とリヤルーフ71との隙間,リヤルーフ71とガラスユニット73との隙間、ガラスユニット73と格納部74との隙間は、それぞれルーフ間ウェザストリップ75、75、75でシールされている。
【0034】
なお、ルーフの分割部分や分割数は、上記と異なる場合でもよく、また、フロントルーフ70、リヤルーフ71およびガラスユニット73を一体にして製作し、取り外し式にしてもよい。さらに、コンバーチブルは、ハードタイプのルーフではなく、布製の幌を用いたソフトタイプのルーフであってもよく、この場合も折り畳み式や取り外し式であってもよい。
【0035】
次に、フロントルーフ70の前側の角部とフロントヘッダ5との隙間及びフロントドアガラス62の前側部とフロントピラー4との隙間をシールするウェザストリップ2について説明する。
図2及び
図3に示すように、ウェザストリップ2は、フロントピラー4に取付けられる縦辺部20と、フロントピラー4とフロントヘッダ5のコーナー部において、フロントヘッダ5に取付けられる固定部30から構成されている。
【0036】
ウェザストリップ2の縦辺部20は、フロントピラー4のリテーナー(図示せず)に取付けられる取付基部21と、フロントドアガラス62の前側の側端に当接してシールする中空状のガラスシール部22とからなる。フロントドアガラス62が上昇してフロントドアガラス62が閉まると、フロントドアガラス62の前側の側端は、ガラスシール部22に若干包まれるようにして当接してシールする。ガラスシール部22の車室内側の側方には、カバーリップ23が延設され、ガーニッシュ等と接して、フロントピラー4をカバーし、車室内側からの見栄えを向上させている。ウェザストリップ2の縦辺部20は、押出成形によって成形された後、一定の長さに裁断される。
【0037】
ウェザストリップ2の固定部30は、
図2(b)に示すように、縦辺部20と隣接する部分は、その断面形状が縦辺部20と略同じである。固定部30は、フロントヘッダ5に取付けられる固定部本体部31と、フロントドアガラス62の前側の上端部が当接するドアガラスシール部35と、フロントルーフ70の前側の角部が当接するルーフシール部36を有している。
【0038】
また、ウェザストリップ2の固定部30の固定部本体部31には、後述するフロントヘッダ5の切欠部52に係合する略直方体形状の係合部32と、フロントヘッダ5のフロントヘッダボルト締結部51にボルト締結されるための孔部37が形成されたウェザストリップ締結部33が形成されている。係合部32は、
図3に示すように、車幅方向に対して、斜め内側に向けて形成されている。固定部本体部31には、
図2(b)に示すように、金属製のインサート34が埋め込まれている。
【0039】
インサート34は、
図4に示すように、係合部32にも延設され、係合部32に埋設されている。これにより、係合部32の剛性が高められる。また、係合部32に延設したインサート34は埋設されているので、例えば、走行時の振動等により硬質な材料のインサート34と金属のフロントヘッダ5が当たったり、擦れたりすることがなく、不快なノイズの発生を防止することができる。
【0040】
図2(b)と
図5に示すように、ウェザストリップ締結部33は、フロントヘッダ5の端部であるフロントヘッダボルト締結部51と同様に車幅方向に延設し、ウェザストリップ締結部33は、車内側に突出して形成されている。また、インサート34は、ウェザストリップ締結部33にも延設されている。本第1の実施形態において、ウェザストリップ締結部33では、インサート34が露出し、実質的にインサート34がウェザストリップ締結部33を形成している。これにより、ウェザストリップ締結部33は高い剛性を有し、後のボルト締結の際のボルトによる回転方向の力がウェザストリップ締結部33に加わっても、ウェザストリップ締結部33が変形や破断を生じることを防止することができる。
【0041】
また、インサート34は、固定部本体部31からウェザストリップ締結部33に延設されているので、ボルト締結の際のボルトによる回転方向の力がウェザストリップ締結部33に加わっても、固定部本体部31にねじれ等の変形を生じることがなく、変形に起因するシール性や見栄えに問題が発生することを防止することができる。
【0042】
ウェザストリップ2の固定部30は、型成形により成形され、型成形時に、ウェザストリップ2の縦辺部20と接続される。
ウェザストリップ2の縦辺部20と固定部30は、ゴム、熱可塑性エラストマー、軟質合成樹脂等の軟質な高分子材料で形成することができる。ゴムの場合は、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)が、熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)や動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)が耐候性、リサイクル、コスト等の観点から望ましい。
また、いずれの場合も、ソリッド材及びスポンジ材で形成することができるが、ガラスシール部22は、柔軟性、弾力性の観点からスポンジ材で形成することが望ましい。
【0043】
次に、
図5と
図6に基づき、フロントヘッダ5へのウェザストリップ2の装着について説明する。フロントヘッダ5のウェザストリップ2の装着部には、ウェザストリップ2のウェザストリップ締結部33をボルト締めするためのねじ山が形成されたフロントヘッダボルト締結部51が形成されている。また、ウェザストリップ2の係合部32を挿入するために切欠部52が形成されている。さらに、
図6(a)に示すように、フロントヘッダ5の切欠部52には、挿入されたウェザストリップ2の係合部32を案内する係合部ガイド部53が形成されている。
【0044】
図6(a)に示すように、フロントヘッダ5へのウェザストリップ2の装着は、ウェザストリップ2をフロントヘッダ5の車外側から、ウェザストリップ2の係合部32をフロントヘッダ5の切欠部52に挿入することにより開始される。前述の通り、係合部32は、車幅方向に対して、斜め内側に向けて形成されているので、係合部32を挿入する際のウェザストリップ2とフロントヘッダ5との間において、上下左右方向の自由度を有している、すなわち、ウェザストリップ2とフロントヘッダ5間の位置的な上下左右方向のズレに対する許容範囲が広がるので、ウェザストリップ2の係合部32をフロントヘッダ5の切欠部52に容易に挿入することが可能になる。
【0045】
ウェザストリップ2の係合部32がフロントヘッダ5の切欠部52に挿入されると、フロントヘッダ5には、係合部ガイド部53が形成されているので、ウェザストリップ2の係合部32を係合部ガイド部53上を滑らせるように移動させることにより、フロントヘッダ5へのウェザストリップ2の装着が進行する。
図6(b)は、装着の途中を示す図であり、ウェザストリップ2の係合部32がフロントヘッダ5の切欠部52内を係合部ガイド部53に沿って挿入されていることを示している。また、この時点で、ウェザストリップ締結部33がフロントヘッダボルト締結部51のすぐ上に来ていることが分かる。
【0046】
図6(c)は、ウェザストリップ2をフロントヘッダ5の端部に装着が完了した時(ボルト締結前)を示している。前述の通り、ウェザストリップ2の係合部32がフロントヘッダ5の切欠部52内を係合部ガイド部53に沿って挿入される結果、係合部32は、フロントヘッダ5の端部に形成された切欠部52への挿入が終わった時点で、係合部32の切欠部52への係合が完了すると共に、ウェザストリップ2のウェザストリップ締結部33の孔部37とフロントヘッダ5の端部に形成されるフロントヘッダボルト締結部51との位置合わせも完了する。係合部32が、車幅方向に対して、斜め内側に向けて形成されている効果はここにも表れている。最後に、ボルトによりウェザストリップ2のウェザストリップ締結部33とフロントヘッダボルト締結部51とを締結し、ウェザストリップ2の縦辺部20の取付基部21をフロントピラー4のリテーナー(図示せず)に取付けることにより、ウェザストリップ2の装着が完了する。
【0047】
次に、本発明の第2の実施形態について、
図7から
図10に基づいて説明する。第2の実施形態と上記の第1の実施形態の相違点は、本第2の実施形態では、ウェザストリップ2において、ウェザストリップ締結部33の車幅方向の両側の近傍には、固定部30の固定部本体部31の他の部分に比較して薄肉化された薄肉部38が形成されている点にある。
【0048】
また、フロントヘッダ5側において、ウェザストリップ2のウェザストリップ締結部33の孔部37とフロントヘッダ5の端部に形成されるフロントヘッダボルト締結部51との位置合わせが完了したとき(
図6(c))に、上記の薄肉部38が形成されている部位には、薄肉部38に当接する突起部54が形成されている。これは、薄肉部38近傍には軟質な高分子材料が薄肉部38に比較して厚く存在しているので、薄肉部38とフロントヘッダ5の端部を容易に当接可能にするためである。
図8から
図10では、
図4と同様に、フロントヘッダ5側を二点鎖線で示した。
【0049】
本第2の実施形態では、固定部本体部31の車内側に形成された軟質な高分子材料の薄肉部38の厚さは、0.3mmである。また、薄肉部38以外の固定部本体部31の車内側の軟質な高分子材料の厚さは、1.5mm以上である。なお、上記の通り、薄肉部38の厚さは、0.5mm以下であればよく、厚さが0、すなわち、インサート34が露出していてもよい。
【0050】
ウェザストリップ締結部33をボルトによってフロントヘッダボルト締結部51に締結する時、ウェザストリップ締結部33近傍の固定部本体部31に車幅方向において、ウェザストリップ締結部33を挟んで、ボルトの回転に伴う接線方向に、固定部本体部31をフロントヘッダ5側に押し付ける方向の力と、固定部本体部31がフロントヘッダ5から離れる方向の力が発生する。その結果、インサート34上の軟質な高分子材料が厚い場合は、固定部本体部31が車幅方向や高さ方向に動いてずれ、所定の位置から外れる場合がある。
【0051】
本第2の実施形態では、ウェザストリップ2において、ウェザストリップ締結部33の車幅方向の両側の近傍には、固定部本体部31の他の部分に比較して薄肉化された薄肉部38が形成され、フロントヘッダ5側において、突起部54が形成され、薄肉部38と突起部54は当接しているので、ウェザストリップ2の固定部本体部31(固定部30)が車幅方向や高さ方向にずれることを防止することができる。
【0052】
なお、上記の第2の実施形態では、薄肉部38は、ウェザストリップ締結部33の車幅方向の両側の近傍に形成したが、片側のみに形成してもよい。また、薄肉部38を片側に形成する場合は、フロントヘッダ5側に形成される突起部54も薄肉部38が形成される側に形成する。
【0053】
また、薄肉部38を片側に形成する場合は、ウェザストリップ締結部33をフロントヘッダボルト締結部51にボルトによって締結する時に、固定部本体部31がフロントヘッダ5に押し付けられる側に形成することが望ましい。
【0054】
したがって、本発明により、孔部にボルトを挿入し、フロントヘッダの端部とウェザストリップ締結部をボルトによって締結する時に、係合部によって固定部がボルトの回転方向に回転することを防止することができ、且つ固定部に埋設されたインサートによって、ウェザストリップの固定部に変形が発生することを防止することができるので、変形に起因するシール性や見栄えに問題が発生すること防止することができる。
【0055】
また、フロントヘッダの端部に対して、係合部とウェザストリップ締結部の2点でウェザストリップの固定部が位置決めされるので、フロントヘッダの端部に対する確実な位置決めが可能となり、位置ズレに起因するシール性に問題が発生することを防止することができる。
【0056】
また、ウェザストリップの固定部の固定部本体部の車内側であり、ウェザストリップ締結部の車幅方向の片側、または両側の近傍にフロントヘッダの端部に当接する薄肉部を形成し、フロントヘッダの端部と薄肉部の当接により、ウェザストリップの固定部が車幅方向や高さ方向にずれることを防止することができる。
【0057】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0058】
上記の実施形態では、インサート34は、ウェザストリップ締結部33にも延設され、インサート34が露出し、実質的にインサート34がウェザストリップ締結部33を形成していたが、係合部32と同様に埋設されていてもよい。この場合は、インサート34が、係合部32とウェザストリップ締結部33を含む固定部本体部31で被覆されているので、金型構造が簡素になる。
【符号の説明】
【0059】
1 車体
2 ウェザストリップ
4 フロントピラー
5 フロントヘッダ
20 縦辺部
21 取付基部
22 ガラスシール部
23 カバーリップ
30 固定部
31 固定部本体部
32 係合部
33 ウェザストリップ締結部
34 インサート
35 ドアガラスシール部
36 ルーフシール部
37 孔部
38 薄肉部
51 フロントヘッダボルト締結部
52 切欠部
53 係合部ガイド部
54 突起部