(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】収穫機
(51)【国際特許分類】
A01F 12/24 20060101AFI20240104BHJP
A01F 12/00 20060101ALI20240104BHJP
A01F 12/20 20060101ALI20240104BHJP
A01F 12/22 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
A01F12/24
A01F12/00 H
A01F12/20
A01F12/22 B
(21)【出願番号】P 2020114877
(22)【出願日】2020-07-02
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】高木 雅志
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 雅行
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-153727(JP,A)
【文献】特開平08-308367(JP,A)
【文献】特開平02-257805(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101379916(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01F 12/24
A01F 12/00
A01F 12/20
A01F 12/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体前部に設けられ、圃場の作物を収穫する収穫部と、
前記収穫部によって収穫された作物を機体後方に向けて搬送する搬送装置と、
前記搬送装置によって搬送された作物を脱穀処理物として受け入れ、受け入れた脱穀処理物を脱穀処理する脱穀装置と、が備えられ、
前記脱穀装置に、前記搬送装置によって作物が脱穀処理物として投入される扱室と、前記扱室に回転可能に設けられ、前記扱室に投入された脱穀処理物を脱穀処理する扱胴と、前記扱胴における下部の周囲に設けられた受網と、が備えられ、
前記扱胴に、前記扱胴の前部に設けられ、前記扱室に投入された脱穀処理物を前記扱胴の後部に向けて掻き込む掻込み部と、前記掻込み部の後部に連続する状態で設けられ、前記掻込み部からの脱穀処理物を扱き処理する扱き処理部と、が備えられ、
前記掻込み部に、基台部と、前記基台部の外周部から扱胴径方向外側に向けて立ち上げられ、脱穀処理物を前記扱胴の後部に向けて掻き込む螺旋羽根と、が備えられ、
前記受網の前部が前記掻込み部における後部の直下まで延ばされ、
前記掻込み部における後部と前記受網の前部とが前後方向において重複し
、
機体後方に向けて脱穀処理物を案内する複数の送塵弁を備え、
前記複数の送塵弁は、前記扱室内における前記掻込み部及び前記扱き処理部の上方に位置すると共に、機体前後方向に並んでおり、
前記掻込み部の上方に位置する前記送塵弁同士の間隔は、前記扱き処理部の上方に位置する前記送塵弁同士の間隔よりも狭い収穫機。
【請求項2】
前記前部は、前記掻込み部における前後方向中央部の直下まで延ばされ、
前記掻込み部における前後方向中央部と前記前部とが前後方向において重複している請求項1に記載の収穫機。
【請求項3】
前記基台部は、扱胴前端側ほど小径である前側細り形状に構成されている請求項1または2に記載の収穫機。
【請求項4】
前記掻込み部の下方に前下がり傾斜の状態で設けられ、前記扱室の前部に投入された脱穀処理物を前記掻込み部に向けて案内する案内部が備えられ、
前記案内部の前下がり角が、前記基台部の下端における前上がり角よりも大きい請求項3に記載の収穫機。
【請求項5】
前記螺旋羽根が4本並列状態で設けられている請求項1から4のいずれか一項に記載の収穫機。
【請求項6】
前記扱き処理部に、扱胴周方向に並ぶ状態で設けられ、扱胴軸芯方向に沿った方向の棒状の扱歯支持部材と、前記扱歯支持部材における扱胴軸芯方向での複数箇所から扱胴径方向外側に向けて突設された複数の扱歯と、が備えられている請求項1から5のいずれか一項に記載の収穫機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
収穫機には、機体前部に設けられ、圃場の作物を収穫する収穫部と、前記収穫部によって収穫された作物を機体後方に向けて搬送する搬送装置と、前記搬送装置によって搬送された作物を脱穀処理物として受け入れ、受け入れた脱穀処理物を脱穀処理する脱穀装置と、が備えられ、前記脱穀装置に、前記搬送装置によって作物が脱穀処理物として投入される扱室と、前記扱室に回転可能に設けられ、前記扱室に投入された脱穀処理物を脱穀処理する扱胴と、前記扱胴における下部の周囲に設けられた受網と、が備えられたものがある。また、この種の収穫機において、前記扱胴に、前記扱胴の前部に設けられ、前記扱室に投入された脱穀処理物を前記扱胴の後部に向けて掻き込む掻込み部と、前記掻込み部の後部に連続する状態で設けられ、前記掻込み部からの脱穀処理物を扱き処理する扱き処理部と、が備えられたものがある。
【0003】
この種の収穫機としては、特許文献1に示されるコンバインがある。特許文献1に示されるコンバインでは、収穫部としての刈取部、搬送装置としての搬送部、脱穀装置が備えられている。脱穀装置に、扱室および扱胴が備えられ、扱胴に、掻き込み部および扱き処理部が備えられている。収穫部としての刈取部、搬送装置としての搬送部が備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、扱室に投入された収穫物(脱穀処理物)は、扱き処理部においてのみ、受網による扱き作用を受けるので、多量の収穫物が投入された場合、扱室から排出される収穫物に扱き作用を十分に受けないままで排出されるものが混在しがちになる。いわゆる、脱穀不良が発生しがちになる。
【0006】
本発明は、多量の脱穀処理物が扱室に投入された場合でも脱穀不良を回避しやすい収穫機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による収穫機は、
機体前部に設けられ、圃場の作物を収穫する収穫部と、前記収穫部によって収穫された作物を機体後方に向けて搬送する搬送装置と、前記搬送装置によって搬送された作物を脱穀処理物として受け入れ、受け入れた脱穀処理物を脱穀処理する脱穀装置と、が備えられ、前記脱穀装置に、前記搬送装置によって作物が脱穀処理物として投入される扱室と、前記扱室に回転可能に設けられ、前記扱室に投入された脱穀処理物を脱穀処理する扱胴と、前記扱胴における下部の周囲に設けられた受網と、が備えられ、前記扱胴に、前記扱胴の前部に設けられ、前記扱室に投入された脱穀処理物を前記扱胴の後部に向けて掻き込む掻込み部と、前記掻込み部の後部に連続する状態で設けられ、前記掻込み部からの脱穀処理物を扱き処理する扱き処理部と、が備えられ、前記掻込み部に、基台部と、前記基台部の外周部から扱胴径方向外側に向けて立ち上げられ、脱穀処理物を前記扱胴の後部に向けて掻き込む螺旋羽根と、が備えられ、前記受網の前部が前記掻込み部における後部の直下まで延ばされ、前記掻込み部における後部と前記受網の前部とが前後方向において重複し、機体後方に向けて脱穀処理物を案内する複数の送塵弁を備え、前記複数の送塵弁は、前記扱室内における前記掻込み部及び前記扱き処理部の上方に位置すると共に、機体前後方向に並んでおり、前記掻込み部の上方に位置する前記送塵弁同士の間隔は、前記扱き処理部の上方に位置する前記送塵弁同士の間隔よりも狭い。
【0008】
本構成によると、脱穀処理物が扱き処理部と受網の間に供給されて扱き処理部と受網とによって扱き処理される前に、掻込み部の後部において螺旋羽根と受網とによって扱き処理されるので、多量の脱穀処理物が扱室に投入された場合でも、脱穀不良を回避し易い。
【0009】
本発明においては、
前記前部は、前記掻込み部における前後方向中央部の直下まで延ばされ、前記掻込み部における前後方向中央部と前記前部とが前後方向において重複していると好適である。
【0010】
本構成によると、脱穀処理物が掻込み部において螺旋羽根によって搬送されながら螺旋羽根と受網とによって扱き処理される距離が長くなるので、多量の脱穀処理物が扱室に投入された場合でも、脱穀不良をより回避し易い。
【0011】
本発明においては、
前記基台部は、扱胴前端側ほど小径である前側細り形状に構成されていると好適である。
【0012】
本構成によると、扱室の前部に投入され、基台部の下方に収容される脱穀処理物の量を多くできる。また、基台部が前側細り形状であるので、受網の前部を掻込み部における後部の直下まで延ばしても、受網の前部と基台部との間隔が広くなって脱穀処理物が詰まらないので、多量の脱穀処理物が投入された場合でも、脱穀処理物が詰まらなくてスムーズに脱穀処理される。
【0013】
本発明においては、
前記掻込み部の下方に前下がり傾斜の状態で設けられ、前記扱室の前部に投入された脱穀処理物を前記掻込み部に向けて案内する案内部が備えられ、前記案内部の前下がり角が、前記基台部の下端における前上がり角よりも大きいと好適である。
【0014】
本構成によると、扱室の前部に投入され、基台部と案内部との間に収容される脱穀処理物の量を多くできる。また、受網の前端と基台部との間隔がより広くなって脱穀処理物がより詰まらないので、多量の脱穀処理物が投入された場合でも、脱穀処理物が詰まらなく脱穀処理がよりスムーズに行われる。
【0015】
本発明においては、
前記螺旋羽根が4本並列状態で設けられていると好適である。
【0016】
本構成によると、扱室の前部に投入された脱穀処理物が4本並列の螺旋羽根によって扱き処理部に掻き込まれるので、多量の脱穀処理物が投入された場合でも、脱穀処理物が詰まらなくてスムーズに脱穀処理される。
【0017】
本発明においては、
前記扱き処理部に、扱胴周方向に並ぶ状態で設けられ、扱胴軸芯方向に沿った方向の棒状の扱歯支持部材と、前記扱歯支持部材における扱胴軸芯方向での複数箇所から扱胴径方向外側に向けて突設された複数の扱歯と、が備えられていると好適である。
【0018】
本構成によると、扱き処理部において、脱穀処理物が扱歯支持部材どうしの間を介して扱胴の内部と外部との間を流動し、扱歯と受網による扱き作用を受け、さらに、扱歯支持部材の打撃による脱穀作用を受けるので、多量の脱穀処理物が投入された場合でも、脱穀処理物が詰まらなくスムーズに脱穀処理され、かつ、脱穀不良を回避し易い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】普通型コンバインの全体を示す左側面図である。
【
図4】搬送装置の後部および扱胴の前部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一例である実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明では、普通型コンバイン(「収穫機」の一例)の走行機体に関し、
図1に示される矢印Fの方向を「機体前方」、矢印Bの方向を「機体後方」、矢印Uの方向を「機体上方」、矢印Dの方向を「機体下方」、紙面表側の方向を「機体左方」、紙面裏側の方向を「機体右方」とする。
【0021】
〔普通型コンバインの全体〕
図1に示されるように、普通型コンバインは、角パイプ材などの複数の鋼材を連結して構成された機体フレーム1、機体フレーム1の下部に設けられた左右一対のクローラ式の走行装置2を有する走行機体を備えている。走行機体の前部(機体前部)に、運転部4おおび収穫搬送装置6が設けられている。運転部4には、運転座席3が備えられている。運転座席3の下方に、エンジン5が設けられている。収穫搬送装置6には、収穫搬送装置6の前部に設けられ、圃場に植立する作物としての稲、麦、蕎などの穀稈をバリカン型の刈取装置7によって刈り取って収穫する収穫部8と、収穫搬送装置6の後部に設けられ、収穫部8によって収穫された刈取穀稈を走行機体の所定箇所に搬送する搬送装置9と、が備えられている。走行機体の後部に、搬送装置9によって搬送された刈取穀稈を受け入れて脱穀処理し、脱穀後の脱穀処理物の選別処理を行う脱穀装置10、および、脱穀装置10によって得られた穀粒を回収して貯留する穀粒タンク11が設けられている。穀粒タンク11の後部に、穀粒タンク11から穀粒を排出する穀粒排出装置12が接続されている。
【0022】
〔搬送装置の構成〕
図1,2に示されるように、搬送装置9は、収穫部8の後部から脱穀装置10の前部に至る搬送ケース13を備えている。搬送ケース13の内部に、搬送ケース内の下部と搬送ケース内の上部とにわたって回転可能に設けられた無端回動帯状体14が備えられている。無端回動帯状体14の長手方向での複数箇所に係止搬送部14aが備えられている。
図2,4に示されるように、搬送ケース13の内部のうち、搬送装置9の搬送終端部に対応する部位に、脱穀装置10の扱室20の横幅方向に沿う方向に延びる軸芯15aを有する回転部材15が設けられている。
図4に示されるように、回転部材15の軸芯15aは、脱穀装置10に備えられている受網25における扱胴側周面の下端25tよりも低い位置に配置されている。本実施形態では、扱胴21の周方向に沿う円弧状に形成された状態で扱胴21の下方に位置する棒状部材が受網25に備えられている。扱胴側周面の下端25tは、棒状部材のうち、扱胴前後方向視において最も低く位置する部位の下端である。回転部材15の軸芯15aは、扱胴21に備えられている掻込み部30が有する螺旋羽根33の下端部33tよりも低い位置に配置されている。回転部材15は、無端回動帯状体14からの刈取穀稈を扱室20の前部に投入する。具体的には、回転部材15に、搬送装置9における搬送経路の全幅にわたる状態の放擲羽根15bが備えられている。3枚の放擲羽根15bが回転部材15の周方向に並んでいる。回転部材15は、無端回動帯状体14からの刈取穀稈を放擲羽根15bによって螺旋羽根33の下方から螺旋羽根33に向けて放擲する。本実施形態では、回転部材15は、無端回動帯状体14の搬送終端部よりも上側に設けられているが、これに限らず、無端回動帯状体14の搬送終端部が巻回されている輪体16の回転支軸に支持される構成を採用したものであってもよい。
【0023】
搬送装置9においては、回転部材15がエンジン5からの動力によって軸芯15aを回転中心にして矢印Z(
図4参照)で示される回転方向に駆動される。無端回動帯状体14の搬送終端側が巻回されている輪体16が回転部材15から無端ベルト(図示せず)によよって伝達される動力によって駆動されて、無端回動帯状体14が輪体16によって駆動される。収穫部8からの刈取穀稈の株元から穂先までの全稈が無端回動帯状体14の係止搬送部14aによる係止搬送によって搬送ケース13の内部を揚送される。無端回動帯状体14によって搬送された刈取穀稈が回転部材15に受け継がれ、回転部材15の放擲羽根15bによって螺旋羽根33の下方から掻込み部30に向けて放擲されて脱穀装置10の扱室20に投入される。
【0024】
〔脱穀装置の構成〕
脱穀装置10および扱胴21の説明にあたり、脱穀装置10および扱胴21の処理始端側[穀稈投入側(
図2の紙面左側)]を「前」とし、脱穀装置10および扱胴21の処理終端側[穀稈排出側(
図2の紙面右側)]を「後」とする。
【0025】
図2に示されるように、脱穀装置10は、脱穀装置10の上部に設けられた脱穀部10Aと、脱穀部10Aにおける扱室20の下方に設けられた選別部10Bと、を備えている。脱穀装置10において、脱穀部10Aにおける脱穀処理方向が走行機体の前後方向と一致し、脱穀処理方向の上手側が走行機体の前側に位置するように設定されている。
【0026】
図2に示されるように、脱穀部10Aは、脱穀装置10の上部に形成された扱室20を備えている。扱室20に、扱胴21が設けられている。扱胴21は、扱胴支軸22を回転中心にして、正面視右回り方向(
図3に矢印Xで示される方向)に回転駆動される。扱室20の前下部に、刈取穀稈の扱室20への投入を可能にする供給口23が形成されている。扱室20の後下部に、脱穀排稈や切れワラなどの脱穀処理物の扱室外への排出を可能にする排塵口24が形成されている。扱胴21における下部の周囲(扱胴21の周囲のうちの扱胴21の下方の領域)に受網25が備えられている。受網25は、コンケーブ型に構成されている。
【0027】
扱室20は、扱胴21を支持する前支持壁26と後支持壁27、扱胴21の上方に設けられた天板28、および、受網25などによって形成されている。天板28の内側に扱室20の前後方向に並ぶ複数の送塵弁29が設けられている。扱胴21には、
図2に示されるように、扱胴21の前部に設けられた掻込み部30と、扱胴21のうち、掻込み部30の後側の部位に設けられた扱き処理部31と、が備えられている。扱き処理部31は、掻込み部30の後部に連続している。
【0028】
脱穀部10Aにおいては、搬送装置9における回転部材15によって供給口23を通して扱室20の前部に投入された刈取穀稈の株元から穂先までの全稈が脱穀処理物として掻込み部30によって扱胴21の後部に向けて掻き込まれて扱き処理部31と受網25とによって脱穀処理される。脱穀処理される脱穀処理物は、回転する扱き処理部31によって回動力を付与されて送塵弁29に当り、送塵弁29によって扱室20の後方に向けて流れるように案内される。脱穀処理物は、扱き処理部31によって扱室20の後方に向けて移送されつつ脱穀処理される。脱穀処理によって得た穀粒が受網25から漏下する。脱穀処理によって発生した脱穀排稈や切れワラなどの脱穀処理物が排塵口24から扱室20の外部へ排出される。
【0029】
〔扱胴の構成〕
扱胴21は、
図2に示されるように、扱室20の前後方向に沿う姿勢で扱室20に設けられている。扱胴21には、扱胴軸芯Pを回転中心として回転駆動される扱胴支軸22と、扱胴支軸22の前部に支持されている掻込み部30と、掻込み部30の後部に連続する状態で扱胴支軸22に支持される扱き処理部31と、が備えられている。
【0030】
〔掻込み部の構成〕
図2,4に示されるように、掻込み部30に、扱胴支軸22の前部に支持される基台部32と、基台部32の外周部から扱胴径方向外側に向けて立ち上げられた螺旋羽根33と、が備えられている。基台部32は、
図2,4に示されるように、扱胴前端側ほど小径である前側細り形状に構成されている。基台部32は、扱胴軸芯Pを中心とする前側細りの筒形状に成形された板部材によって構成されている。螺旋羽根33は、4本並列状態で設けられ、4重の螺旋羽根になっている。
【0031】
螺旋羽根33は、
図3,5に示されるように、螺旋羽根33における前端の基台部側と反対側の角部33aが角張るように構成されている。螺旋羽根33は、螺旋羽根33における前端部33bが扱胴径方向外側に向けて盛り上がるように構成されている。
【0032】
図2,4に示されるように、受網25の前部25aが掻込み部30における後部の直下まで延ばされ、掻込み部30の後部と受網25の前部25aとが前後方向において重複している。詳述すると、受網25の前部25aが掻込み部30における前後中間部の直下まで延ばされ、掻込み部30における前後中間部と受網25の前部25aとが前後方向において重複している。
【0033】
図3,4に示されるように、掻込み部30の下方に、供給口23からの刈取穀稈を掻込み部30に案内する案内部34が設けられている。案内部34は、前下がり傾斜の状態で設けられている。
図4に示されるように、案内部34は、案内部34の前下がり角Kが、基台部32の下端における前上がり角Sよりも大きいように構成されている。
【0034】
掻込み部30においては、基台部32が扱胴支軸22によって駆動されて、4重の螺旋羽根33が扱胴軸芯Pを回転中心にして回転駆動される。搬送装置9の回転部材15によって供給口23を通して扱室20の前部に投入された刈取穀稈の株元から穂先までの全稈が回転する螺旋羽根33によって案内部34に沿わせて扱胴21の後部に向けて掻き込まれる。回転部材15による刈取穀稈の放擲が螺旋羽根33の下方から螺旋羽根33に向けて行われる。刈取穀稈が案内部34によって掻込み部30に向かうように案内される。螺旋羽根33の角部33aの角張りによって刈取穀稈が螺旋羽根33の前端に引っ掛かり易い。螺旋羽根33の前端に引っ掛かった刈取穀稈が螺旋羽根33の前端部33bにおける盛り上がりによって螺旋羽根33から外れ難くい。これにより、刈取穀稈が螺旋羽根33によって扱胴21の後部に向けてしっかり掻き込まれる。
【0035】
〔扱き処理部の構成〕
図2,4に示されるように、扱き処理部31に、扱胴21の周方向に間隔を空けて並ぶ状態で扱胴支軸22に支持される複数の扱歯支持部材40が備えられている。本実施形態では、6本の扱歯支持部材40が備えられている。各扱歯支持部材40は、扱胴軸芯Pに沿う方向の棒状の部材によって構成されている。扱胴支軸22による扱歯支持部材40の支持は、扱胴支軸22の軸芯方向での複数箇所において、扱胴支軸22と扱歯支持部材40とが円板部材41によって連結されることによって行われている。扱胴21の扱き処理部31における外周部としての扱歯支持部材40に、扱歯42が扱胴径方向外側に向けて立設されている。扱歯42は、扱歯支持部材40における扱胴軸芯方向での複数箇所から立設されている。扱歯42は、棒状の部材によって構成されている。扱き処理部31は、籠状に構成されている。
【0036】
扱き処理部31においては、脱穀処理物が扱歯支持部材40どうしの間を介して扱胴21の内部と外部との間を流動し、扱歯42と受網25による扱き作用を受けて、かつ、扱歯支持部材40の打撃による脱穀作用を受けて脱穀処理される。
【0037】
本実施形態では、扱歯支持部材40は、丸パイプ鋼材によって構成されている。扱歯支持部材40には、丸パイプ鋼材の他、丸鋼材、角棒鋼材、角パイプ鋼材などの各種の棒状部材を採用することができる。本実施形態では、各扱歯42は、丸鋼材によって構成されている。扱歯42には、丸鋼材の他、角棒鋼材、丸パイプ材、各パイプ材など各種の棒状部材を採用することができる。
【0038】
〔選別部の構成〕
選別部10Bには、
図2に示されるように、受網25の下方に揺動駆動可能に設けられた揺動選別装置45、揺動選別装置45の前下方に設けられた唐箕46、唐箕46の後方において、揺動選別装置45の下方に設けられた1番回収部47及び2番回収部48が備えられている。本実施形態では、1番回収部47及び2番回収部48は、脱穀装置10の横幅方向に延びるスクリューコンベヤによって構成されている。
【0039】
選別部10Bにおいては、受網25から漏下した処理物が揺動選別装置45に落下して受け入れられ、受け入れられた処理物が揺動選別装置45によって後方に向けて搬送されつつゆすられて、かつ、唐箕46によって揺動選別装置45の前下方から揺動選別装置45の後方に向けて供給される選別風を受けて選別処理される。選別処理によって得られた1番処理物としての清粒が1番回収部47に流下して回収され、1番回収部47によって脱穀装置10の穀粒タンク側の横外側へ搬送される。選別処理によって得られた2番処理部物としての未処理粒が2番回収部48に流下して回収され、2番回収部48によって脱穀装置10の穀粒タンク側の横外側へ搬送される。選別処理によって発生した3番処理物としてのワラ屑などの選別塵埃が脱穀装置10の後部に設けられた塵埃排出口49から選別風とともに脱穀装置10の後方に排出される。
【0040】
1番回収部47によって搬送された清粒は、1番回収部47に接続された揚穀装置50によって穀粒タンク11に供給される。2番回収部48によって搬送された未処理粒は、2番回収部48に接続された還元装置51によって揺動選別装置45の始端部に還元される。
【0041】
〔別実施形態〕
(1)上記した実施形態では、扱き処理部31が籠状に構成されたバー形の扱胴21が採用された例を示したが、この限りではない。たとえば、扱き処理部31が円筒状に構成されたドラム形の扱胴が採用されたものであってもよい。また、バー形の扱胴の場合、6本の扱歯支持部材40を備えるものに限らず、たとえば、5本以下、7本以上の扱歯支持部材を備えるものであってもよい。
【0042】
(2)上記した実施形態では、基台部32が前側細り形状に構成された例を示したが、掻込み部30の前端部から後端部にわたって外径が一定に構成されたものであってもよい。
【0043】
(3)上記した実施形態では、案内部34の前下がり角Kが基台部32の前上がり角Sよりも大きい例を示したが、これに限らない。たとえば、案内部34の前下がり角が基台部32の前上がり角よりも小さいもの、あるいは、案内部34の前下がり角と基台部32の前上がり角とが同じものであってもよい。
【0044】
(4)上記した実施形態では、4重の螺旋羽根33が備えられた例を示したが、これに限らない。たとえば、3重以下、5重以上の螺旋羽根を備えるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、稲、麦、蕎麦などを収穫対象物とするコンバインの他、トウモロコシなど各種の作物を収穫対象物とする収穫機に適用できる。
【符号の説明】
【0046】
8 収穫部
9 搬送装置
10 脱穀装置
20 扱室
21 扱胴
25 受網
25a 前部
29 送塵弁
30 掻込み部
31 扱き処理部
32 基台部
33 螺旋羽根
34 案内部
40 扱歯支持部材
42 扱歯
K 前下がり角
S 前上がり角