(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】窒素原子を含有する受容体を有するセンサー
(51)【国際特許分類】
G01N 5/02 20060101AFI20240104BHJP
G01N 29/036 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
G01N5/02 A
G01N29/036
(21)【出願番号】P 2020116499
(22)【出願日】2020-07-06
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】山川 菜摘
(72)【発明者】
【氏名】辻本 浩行
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-019700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 5/02
G01N 29/036
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
RSiO
3/2 (1)
(式(1)中、Rは少なくとも窒素原子を1つ以上含む有機基を示す)
で示される構造を含む有機無機ハイブリッド
と、球状のフィラーと、を含み、空隙率が3%以下である受容体を有するセンサー。
【請求項2】
前記Rは、アミノ基または窒素原子を含む複素環を有する、請求項1に記載のセンサー。
【請求項3】
前記Rは、3級アミノ基を有する、請求項1又は2に記載のセンサー。
【請求項4】
前記Rは、少なくとも1種の芳香環を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のセンサー。
【請求項5】
前記芳香環はSi原子に直接結合している、請求項4に記載のセンサー。
【請求項6】
前記Rは、芳香環と非芳香環との共重合構造を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のセンサー。
【請求項7】
前記Rは、アルキルアミノアルキル基を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載のセンサー。
【請求項8】
前記フィラーが無機フィラーである、請求項
1~7のいずれか1項に記載のセンサー。
【請求項9】
前記フィラーが金属酸化物である、請求項
1~8のいずれか1項に記載のセンサー。
【請求項10】
前記フィラーがシリカである、請求項
1~8のいずれか1項に記載のセンサー。
【請求項11】
前記フィラーを体積分率で1~70%含む、請求項1~
10のいずれか1項に記載のセンサー。
【請求項12】
前記フィラーを体積分率で3~40%含む、請求項1~
11のいずれか1項に記載のセンサー。
【請求項13】
前記受容体の熱重量減少率が65重量%以下である、請求項1~
12のいずれか1項に記載のセンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素原子を含有する受容体を有するセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にセンサーは、対象となる検知対象物質を高感度かつ高選択的な検出を可能とする検知部(受容体)を有する。受容体として自己組織化膜、単分子膜、DNA/RNA、タンパク質、抗原/抗体、ポリマーなど多岐に渡る物質が用いられている。嗅覚/ガスセンサー分野では近年のAI,IoTの発達により、呼気検査やホテル、自動車、工場での匂い管理などの新たなアプリケーションが期待されている。また、食物の嫌気呼吸由来のエタノールやアルデヒドの追跡が可能となれば食品の品質をセンサーによって管理することができる。
特許文献1では、多孔質材料または粒状材料を、物理パラメータを検出するタイプのセンサー本体上に被覆し、検体分子を前記多孔質材料または粒状材料が吸着することによる前記物理パラメータの変化により前記検体分子を検出するセンサーが記載されている。
特許文献2では、測定対象物質を吸着することによって検出する検出装置であって、前記測定対象物質を吸着する2つ以上の検出部を備え、前記2つ以上の検出部は、D単位またはT単位のシロキサン結合と炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基とを含有する第1の化合物を含む第1検出部と、D単位またはT単位のシロキサン結合と炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基とを含有し、第1の化合物とは異なる第2の化合物を含む第2検出部とを含み、前記第1検出部および第2検出部は、同一の測定対象物質の吸着に対し、互いに異なる電気信号を出力することを特徴とする検出装置が記載されている。
特許文献3では、シリカ粒子へ生体分子等を結合させるために有用なアミノ基を粒子表面に有し、かつ前記アミノ基がシリカ粒子表面に吸着することにより前記生体分子等との反応性が低下することを防止したシリカ粒子の製造方法、前記シリカ粒子、及びそれを用いた複合粒子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/121155号パンフレット
【文献】国際公開第2018/230382号パンフレット
【文献】特開2009-274923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、高い感度と選択性、安定性を実現する一方で、乾燥雰囲気下以外では電気シグナルが大きく減衰し、嗅覚センサーとして使用できる環境が大きく制限されている。
特許文献2に記載の技術では、簡易な方法で、複数種類の測定対象物質の選択的な測定を行う方法を実現する一方で、湿度によるシグナル減衰の問題や高濃度の匂い/ガス分子により受容体が変形し、再現性のあるシグナルが得られない。
特許文献3に記載の技術では、生体分子等と高い反応性で結合するシリカ粒子を製造でき、分散安定性に優れ、分析試薬として測定結果の再現性が高く、極微量標的試料の高感度分析が可能である一方で、前記生体分子や生理活性物質を標的とする分析試薬としての用途に限定されている。
【0005】
本発明は、上記の従来技術が有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、アルデヒド等の親水性の高いガスを、湿度のある状態下であっても高感度で測定可能なセンサーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討し、実験を重ねた結果、窒素を含む特定の式で示される有機無機ハイブリッド構造を含み、且つ、特定の空隙率を有する受容体を含有することにより、予想外に前記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の態様を包含する。
[1]
下記式(1)
RSiO3/2 (1)
(式(1)中、Rは少なくとも窒素原子を1つ以上含む有機基を示す)
で示される構造を含む有機無機ハイブリッドを含み、空隙率が3%以下である受容体を有するセンサー。
[2]
前記Rは、アミノ基または窒素原子を含む複素環を有する、上記[1]に記載のセンサー。
[3]
前記Rは、3級アミノ基を有する、上記[1]又は[2]に記載のセンサー。
[4]
前記Rは、少なくとも1種の芳香環を有する、上記[1]~[3]のいずれかに記載のセンサー。
[5]
前記芳香環はSi原子に直接結合している、上記[4]に記載のセンサー。
[6]
前記Rは、芳香環と非芳香環との共重合構造を有する、上記[1]~[5]のいずれかに記載のセンサー。
[7]
前記受容体がフィラーを含む、上記[1]~[6]のいずれかに記載のセンサー。
[8]
前記フィラーが無機フィラーである、上記[7]に記載のセンサー。
[9]
前記フィラーが金属酸化物である、上記[7]又は[8]に記載のセンサー。
[10]
前記フィラーがシリカである、上記[7]~[9]のいずれかに記載のセンサー。
[11]
前記フィラーが球状もしくは鎖状である、上記[7]~[10]のいずれかに記載のセンサー。
[12]
前記フィラーを体積分率で1~70%含む、上記[1]~[11]のいずれかに記載のセンサー。
[13]
前記フィラーを体積分率で3~40%含む、上記[1]~[12]のいずれかに記載のセンサー。
[14]
前記受容体の熱重量減少率が65重量%以下である、上記[1]~[13]のいずれかに記載のセンサー。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アルデヒド等の高親水性のガスを、湿度のある状態下であっても高感度に測定可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】受容体を塗布したチップの光学顕微鏡写真の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0010】
本実施形態のセンサーは、下記式(1)
RSiO3/2 (1)
(式(1)中、Rは少なくとも窒素原子を1つ以上含む有機基を示す)
で示される構造を含む有機無機ハイブリッドを含み、空隙率が3%以下である受容体を有する。
【0011】
本実施形態のセンサーは、検知対象物質が吸着及び膜内部に拡散する受容体を有するセンサーであって、前記受容体が、RSiO3/2で表される構造を有する有機無機ハイブリッドを含み、ここで、前記Rは少なくとも窒素原子を1つ以上含む有機基であり、前記受容体の体積分率としての空隙率が3%以下である。
【0012】
受容体がこのように構成されていることにより、本実施形態のセンサーは、アセトアルデヒド等のアルデヒド系ガスを湿度のある状態下であっても高感度に測定することができる。更にはリフロー処理後、長時間使用後であっても受容体の劣化がなく継続して測定することができるという効果をも奏する。
【0013】
本実施形態のセンサーは、特に限定されないが、例えば、物理パラメータを検出するタイプのセンサー本体を含む。物理パラメータとしては、特に限定されないが、例えば、表面応力、応力、力、表面張力、圧力、質量、弾性、ヤング率、ポアソン比、共振周波数、周波数、体積、厚み、粘度、密度、磁力、磁気量、磁場、磁束、磁束密度、電気抵抗、電気量、誘電率、電力、電界、電荷、電流、電圧、電位、移動度、静電エネルギー、キャパシタンス、インダクタンス、リアクタンス、サセプタンス、アドミッタンス、インピーダンス、コンダクタンス、プラズモン、屈折率、光度および温度やその他の様々な物理パラメータが挙げられる。
【0014】
本実施形態のセンサーは、例えば、センサー本体上に直接、受容体(形状等に応じ、「受容体層」や「感応膜」と言う。)を設けたセンサーである。すなわち、本実施形態のセンサーは、当該受容体が検知対象物質(検体分子)を吸着、内部拡散することで、そこに引き起こされる物理パラメータの変化を、センサー本体により検出するものとすることができる。上記のとおり、本実施形態のセンサーにおいて使用可能なセンサー本体は、その表面上に配された受容体が検知対象物質を吸着、内部拡散することによって当該受容体に引き起こされる変化を検知するものであれば、特に限定されない。
【0015】
本実施形態のセンサーを、例えば、表面応力センサー(例えば、嗅覚センサー)に適用する場合には、センサー本体の表面の少なくとも一部を被覆した受容体(感応膜)に検知対象物質が吸着し、さらに受容体中に内部拡散することで、当該受容体中に引き起こされた応力変化を検出して本体がシグナルを出力する。
【0016】
また、別の種類のセンサー本体として、例えば、QCM装置を適用しうる。QCM装置は、交流電場を印加した水晶振動子の電極表面に物質が吸着すると、その吸着質の質量や粘弾性等に応じて共振周波数が減少する性質を利用して微量な質量変化を計測する質量センサーであり、in-situでの測定が可能である。本実施形態のセンサーをQCM装置として適用する場合、例えば、電極の表面に本実施形態における受容体を形成することにより、当該受容体が検知対象物質を吸着することで起こる質量変化をセンサー本体で検出してシグナルを出力する。また、QCMの電極としては、様々な導電性材料を適用しうるが、本実施形態における受容体に導電性を持たせる場合、当該受容体をQCMの電極として用いることもできる。
【0017】
なお、本明細書において、「吸着」という用語は、ある物体の界面において、(吸着質となる)他の物質の濃度が周囲よりも増加する現象を含む意味で用いており、物理吸着だけではなく、化学結合や生化学的な作用による化学吸着も含むものである。
【0018】
[受容体]
本実施形態における受容体は、例えば、匂い分子やガス分子等の吸着質(検知対象物質)が吸着、内部拡散することによりシグナルの変化を誘起することができる。特に膜形状の受容体については「感応膜」とも称される。
【0019】
本実施形態のセンサーにより測定可能なガスとしては、酸化還元型ガス、可燃性ガス、水蒸気、揮発性有機物質(VOC)ガスが挙げられ、ガス分子の選択性は、分子骨格、共重合比から容易に変えることができる。より具体的には、炭化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、酸素、アルコール、アミン、アルデヒド、不飽和アルデヒド、ケトン、エステル、ハロメタン、揮発性芳香族化合物、揮発性複素環芳香族化合物等が挙げられる。炭化水素としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブタン、エチレン等が挙げられ、アルコールとしてはメタノール、エタノール、イソプロパノール、高級アルコールが挙げられ、アミンとしては、アンモニア、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられ、アルデヒドとしてはホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等が挙げられ、不飽和アルデヒドとしてはオクテナール、ノネナール、ヘキセナール等が挙げられ、ケトンとしてはアセトン等が挙げられ、ハロメタンとしてはクロロホルム、ジクロロメタン等が挙げられ、揮発性芳香族としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン等が挙げられ、揮発性複素環芳香族化合物としては、インドールやスカトール等が挙げられる。
【0020】
本実施形態のセンサーにおいて、湿度のある環境下での感度及び安定性の観点から、受容体の体積分率としての空隙率は3%以下である。感度をより向上させる観点からは、空隙率は2%以下がより好ましく、湿度下環境において感度の低減を抑制する観点からは、空隙率は1%以下であることがさらに好ましい。
【0021】
空隙率は、例えば、フィラーとRSiO3/2で表される構造の比を調節すること等により上記範囲に調整することができる。また、空隙率は、本明細書の実施例に記載の方法、又はこれと同等であることが当業者に理解される方法で測定される値である。
【0022】
本実施形態のセンサーは、式(1)
RSiO3/2 (1)
(式(1)中、Rは少なくとも窒素原子を1つ以上含む有機基を示す)
で示される構造を含む。
【0023】
Rは少なくとも窒素原子を1つ以上含む有機基であり、有機基に窒素原子を1つ以上含むことによりアルデヒド等の高親水性のガスの応答感度が向上する。本実施形態の受容体に吸着されるアルデヒドとしては、特に限定されないが、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等が挙げられる。
【0024】
Rで示される窒素原子を1つ以上含む有機基の具体例としては、以下に限定されないが、アミノ基、アミド基、ウレタン結合、尿素結合、イミド基、イミン基等や、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピロール、ピペリジン、ピペラジン、ピリジン、ヘキサメチレンイミン、アザドピロリデン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イミダゾリン、モルホリン、チアジン、トリアゾール、テトラゾール、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、インドール、イソインドール、ベンゾイミダゾール、プリン、ベンゾトリアゾール、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシル等の窒素原子を含む複素環構造を有する置換基が挙げられる。本発明者らは、特に有機基に窒素原子を含む場合、湿度のある状態でもアセトアルデヒド等のアルデヒド類に特異的高い感度を有することを見出した。その理由としては、以下のように考えられるが、以下に限定する趣旨ではない。すなわち、窒素原子の持つ非共有電子対がアルデヒドのカルボニル炭素を攻撃し、炭素-酸素間の二重結合の電子対を酸素上に移し四面体中間体を生成する過程における平衡反応がアルデヒドと窒素原子との間で起こるため、受容体の特異的な膨潤を誘発するためと推定される。
【0025】
また、Rはアミノ基または窒素原子を含む複素環を有することが好ましい。すなわち、有機基に含まれる窒素原子がアミノ基あるいは複素環構造に含まれている場合、合成・試薬入手性の観点から好ましい。
【0026】
さらに、Rは3級アミノ基を有することが好ましい。すなわち、有機基に含まれる窒素原子が3級アミノ基に含まれている場合、アルデヒド等の高親水性のガスの選択性の観点から好ましい。
【0027】
さらに、Rは少なくとも1種の芳香環を有することが好ましい。すなわち、Rが芳香環を含む場合、センサーの耐湿度性がより向上する傾向にある。芳香環としては、センサーの用途等を考慮して適宜選択できるため特に限定されないが、例えば、フェニル基、ナフチル基、p-トリル基、ビフェニル基等の芳香族炭化水素基、4-クロロフェニル基、4-フルオロフェニル基、4-ブロモフェニル基、4-ヨードフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-アミノフェニル基、ペンタフルオロフェニル基等の置換芳香族炭化水素基、3-フリル基、3-チエニル基、2-ピリジル基、3-ピリジル基、4-ピリジル基等の複素環炭化水素基、フェロセニル基等のメタロセン等が挙げられる。本実施形態のセンサーにおけるRで示される有機基は、上述した芳香環を1種単独で含んでいてもよく、2種以上を併せて含んでいてもよい。
【0028】
Rが芳香環を含む場合、芳香環とSi原子との間には、アルキル基(炭素数が1から18までのもの)や、エーテル基、カルボニル基、カルボキシル基、アミド基、ウレタン結合、尿素結合、イミド基、イミン基等のスペーサーとなる構造を挟んでもよいが、応答性感度の観点から、これらのスペーサーは挟まず、芳香環が、Si原子に直接結合していることが好ましい。
【0029】
本実施形態のセンサーにおけるRで示される有機基は、耐湿度性と様々なガス分子(検知対象物質)への選択性とを両立する観点から、芳香環と非芳香環との共重合構造を含むことが好ましい。
【0030】
また、Rで示される有機基は、極性の高いガス・ニオイ分子への応答性の観点から、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ホウ素原子、及びリン原子からなる群より選択される1種以上の原子を含有する有機官能基を含むことが好ましい。これらの中でも、安定性の観点から、Rで示される有機基は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、及びフッ素原子からなる群より選択される1種以上の原子を含有する有機官能基を含むことが好ましい。
【0031】
有機官能基の具体例としては、以下に限定されないが、ハロゲン原子等の置換基を有してもよい直鎖状若しくは分岐状炭化水素基(例えば、3-クロロプロピル基、オクチル基等の直鎖状若しくは分岐状C1-8アルキル基)、ハロゲン原子等の置換基を有してもよい脂環炭化水素基(例えば、シクロヘキシル基等のC5-6シクロアルキル基)、ハロゲン原子等の置換基を有してもよい芳香族炭化水素基(例えば、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基等)、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基(例えば、(メタ)アクリロイルオキシプロピル基等の(メタ)アクリロイルオキシC1-3アルキル基)、エポキシ基、グリシジルオキシアルキル基(例えば、3-グリシジルオキシプロピル基等のグリシジルオキシC1-3アルキル基)、(エポキシシクロアルキル)アルキル基(例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基等)、ヒドロキシ基、エーテル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、ウレタン基、ウレア基、メルカプト基、メルカプトアルキル基(例えば、メルカプトプロピル基等のメルカプトC1-3アルキル基)、スルフィド基、アミノ基(例えば、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基)、アミノアルキル基(例えば、アミノプロピル基等のアミノC1-3アルキル基)、(アミノアルキルアミノ)アルキル基(例えば、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピル基)、イミダゾリル基、イミダゾリルアルキル基(例えば、3-(2-イミダゾリン-1-イル)プロピル基)、アルキルアミノアルキル基(例えば、3-(ジメチルアミノ)プロピル基)、アミド基、複素環芳香族基、オキシム基、イミド基、イミン基、ハロゲン基、ニトリル基、ホスホン基、リン酸基等があげられる。これらの中でも、有機官能基は、入手性の観点から、置換基を有してもよい直鎖状又は分岐状炭化水素基、置換基を有してもよい脂環炭化水素基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基、グリシジルオキシアルキル基、(エポキシシクロアルキル)アルキル基、メルカプトアルキル基、アミノアルキル基、(アミノアルキルアミノ)アルキル基、イミダゾリルアルキル基、及びアルキルアミノアルキル基、ヒドロキシ基からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。これらの官能基は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0032】
有機官能基は、シランカップリング剤由来の有機官能基であることが好ましい。シランカップリング剤としては、アルコキシシラン、アセトキシシランもしくはクロロシラン等の加水分解性金属酸化物が挙げられる。これらの中でも、加水分解性金属酸化物は、取り扱い性、官能基の汎用性からアルコキシシランが好ましく、反応性の観点から3官能性のアルコキシシランがより好ましい。
【0033】
3官能性のアルコキシシランは、1、2,4官能性のアルコキシシラン等と共重合されてもよいが、有機無機ハイブリッドのヤング率を上げて高感度化させる観点からは、4官能性のものとの共重合が好ましい。
【0034】
3官能性のアルコキシシランとしては、アルコキシ基にメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基を有するシランカップリング剤を使用することができる。
【0035】
市販の芳香族系シランカップリング剤としては、フェニルトリアルコキシシラン、ニトロベンゼンアミドトリアルコキシシラン、ベンジルトリアルコキシシラン、4-クロロフェニルトリアルコキシシラン、フェニルアミノプロピルトリアルコキシシラン、4-アミノフェニルトリアルコキシシラン、ナフチルトリアルコキシシラン、4-メトキシトリアルコキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリアルコキシシラン、フェロセニルトリアルコキシシラン、ビフェニルトリアルコキシシラン、3-フリルトリアルコキシシラン、3-チエニルトリアルコキシシラン、2-ピリジルトリアルコキシシラン、3-ピリジルトリアルコキシシラン、4-ピリジルトリアルコキシシラン等が挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0036】
市販の非芳香族系シランカップリング剤としては、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、シクロヘキシルトリアルコキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリアルコキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシラン、3-(ジメチルアミノ)プロピルトリアルコキシシラン、3-(2-イミダゾリン-1-イル)プロピルトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリアルコキシシラン、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリアルコキシシラン、3-(アクリロイルオキシ)プロピルトリアルコキシシラン、アリルトリアルコキシシラン、メチルトリアルコキシシラン、エチルトリアルコキシシラン、プロピルトリアルコキシシラン、ブチルアルコキシシラン、ヘキシルトリアルコキシシラン、オクチルトリアルコキシシラン、デシルトリアルコキシシラン、ドデシルトリアルコキシシラン、オクタデシルトリアルコキシシラン、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、シクロヘキシルアミノプロピルトリアルコキシシラン、ヘキサフルオロフェニルトリアルコキシシラン、3-クロロプロピルトリアルコキシシラン、3-ブロモプロピルトリアルコキシシラン、3-ピペラジノプロピルトリアルコキシシラン、3-モルフォリノプロピルトリアルコキシシラン、3-アリルアミノプロピルトリアルコキシシラン、ノルボルニルトリアルコキシシラン、ピペリジノプロピルトリアルコキシシラン等が挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0037】
2種類以上のシランカップリング剤を共重合する場合、芳香族シランカップリング剤と非芳香族シランカップリング剤の比率として、モル比で1:10から1:5であることが好ましく、耐熱性の点から1:5から1:1であることが好ましく、湿度下におけるシグナル強度低減の抑制の点から1:1から10:1であることが好ましい。
【0038】
本実施形態のセンサーにおける有機官能基については、センサー本体上の受容体をSEM-EDXやXPS、ATR等の表面元素解析に供することにより、同定することができる。
【0039】
[フィラー]
本実施形態における受容体は、フィラーを含んでいてもよい。受容体がフィラーを含んでいる場合、有機無機ハイブリッドのヤング率を向上させ、センサーの感度を高めることができる傾向にある。受容体中に含まれるフィラーの体積分率としては、1%以上であることが耐クラック性の点で好ましく、3%以上であることが感度の点で好ましい。一方、70%超であると、フィラー間の空隙による応答緩和によりセンサーの感度が低下する傾向にあるため、70%以下であることが好ましく、応答性におけるフィラーの影響を抑制するために応答多様性の点から、40%以下であることがより好ましい。
【0040】
フィラーとしては、特に限定されず、種々公知のものから選択することができる。その具体例としては、以下に限定されないが、ポリスチレンやポリメチルメタクリレート、ポリフェニレンオキシド等のポリマービーズやアクリルラテックス等の球状粒子、窒化シリコン等の金属窒化物、シリカ、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化スズ等の金属酸化物、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、ITO等の複合金属化合物、金や銀、銅、パラジウム、白金、鉄、アルミニウム等の無機金属フィラー、カーボンナノチューブやグラフェン、カーボンブラック、カーボンドット、ナノカーボン等のカーボン材料から選ばれる1種以上を含むことができる。
【0041】
フィラーとしては、分散性、塗布性の観点から、無機フィラーであることが好ましい。同様の観点から、フィラーとしては、シリカ、ジルコニア、チタニア、アルミナ等の金属酸化物、金や銀、銅、パラジウム、白金、鉄、アルミニウム等の無機金属フィラーが好ましく、湿度下での水分によるシグナル減衰の影響が小さい点から、シリカ、ジルコニア等の金属酸化物がより好ましく、経済性の観点から、シリカであることがさらに好ましい。本発明者らは、特にシリカを用いる場合、湿度のある状態でもエタノール、アセトアルデヒド等の一般的な親水性ガスの応答の減衰がより顕著に改良されることを見出した。その理由としては、以下のように考えられるが、以下に限定する趣旨ではない。すなわち、シリカの骨格及びケイ素原子に結合した状態で存在する水酸基が、特許文献1のチタニア骨格もしくはチタン原子に結合した水酸基に比べて比較的疎水的であるため、親水性の高い水分子の吸着阻害が抑制されるものと推定される。
【0042】
フィラーの形状としては、特に限定されず、球状や数珠状、鎖状、ホロー状、楕円球状、繊維状、棒状、筒状、針状、板等の固有の組織構造・構造体を形成していてもよい。フィラーの形状は、好ましくは、球状、棒状、板状若しくは繊維状又はこれらの2種類以上が合体した形状であり、より好ましくは球状、鎖状である。なお、ここでいう球状とは、真球状の他、回転楕円体、卵形等も含む略球状を意味する。フィラーは、クラック耐性の点から球状であることが特に好ましい。
【0043】
フィラーとしての金属酸化物は、例えば、ゾルゲル法を用いてアルコキシ、クロロ等の4官能性加水分解基を有する金属酸化物前駆体のゾルゲル法によって製造してもよく、市販品を用いることもできる。4官能性の加水分解基を有する金属酸化物前駆体としては、テトラアルコキシシラン、テトラクロロシラン、テトラアルコキシチタン、テトラアセトキシジルコニウム等が挙げられる。これらの4官能性の加水分解性金属無機酸化物は3官能性の加水分解性金属酸化物と共重合してもよく、反応系の濃度、温度、pH、水分量等を調整することにより形状の制御を行うことができる。なお、例えばエマルジョン重合によりフィラーが製造された場合等、フィラー側にRSiO3/2で表される構造が得られることも考えられるが、本実施形態における受容体中でこのような構造を持つフィラーについては本実施形態のセンサーにおける有機無機ハイブリッドと扱うものとする。
【0044】
フィラーの市販品としては、LEVASILシリーズ(H.C.Starck(株)製)、クオートロンP Lシリーズ(扶桑化学(株)製)、OSCALシリーズ(触媒化成工業(株)製)等;粉体状のシリカ粒子として、例えばアエロジル130、同300、同380、同TT600、同OX50(以上、日本アエロジル(株)製)、シルデックスH31、同H32、同H51、同H52、同H121、同H122(以上、旭硝子(株)製)、E220A、E220(以上、日本シリカ工業(株))、SYLYSIA470(富士シリシア(株)製)、SGフレーク(日本板硝子(株)製)等、IPA-ST, IPA-ST-L, IPA-ST-ZL,MEK-ST-2040 ST-XS,ST-S, ST-30,ST-50T, ST-30L,ST-YL, ST-ZL,MP-1040, MP-2040, MP-4540M,ST-OXS, ST-OS, ST-O, ST-O-40, ST-OL, ST-OYL, ST-NXS, ST-NS, ST-N, ST-N-40,ST-CXS,ST-C, ST-CM, ST-AK, ST-AK-L, ST-AK-YL,OZ-S30K,SZ-S30K-AC, OZ-S30M、セルナックス CX-S505M、IPA-ST-UP、MEK-ST-UP、ST-UP、ST-PS-S、ST-PS-M、ST-OUP、ST-PS-SO、ST-PS-MO、ST-AK-PS-S等(日産化学(株)製),SRD-K, SRD-M, SXR-CM, SZR-K, SZR-M(堺化学(株)製)が挙げられる。粉体状のフィラーとして、例えばアエロジル130、同300、同380、同TT600、同OX50(以上、日本アエロジル(株)製)、シルデックスH31、同H32、同H51、同H52、同H121、同H122(以上、旭硝子(株)製)、E220A、E220(以上、日本シリカ工業(株)製)、SYLYSIA470(富士シリシア(株)製)、SGフレーク(日本板硝子(株)製)等を挙げることができる。また、これらのフィラー表面を化学変性して用いることもできる。
【0045】
[有機無機ハイブリッドの製造方法]
式(1)
RSiO3/2 (1)
(式(1)中、Rは少なくとも窒素原子を1つ以上含む有機基を示す)
で示される構造を含む有機無機ハイブリッドの製造方法としては、特に限定されないが、主にゾルゲル法を用いて製造される。具体的には、加水分解性シラン化合物(シランカップリング剤を含む)を水存在下で、酸、塩基性条件下でゾルゲル法により処理することにより、シランカップリング剤の縮合体、すなわち、RSiO3/2で表される構造を含む有機無機ハイブリッドを得ることができる。本実施形態における有機無機ハイブリッドは、かご型、ラダー型、ランダム型の分子骨格を有するものを用いることができ、これらの混合物を用いることもできる。
【0046】
有機無機ハイブリッドの製造においては、加水分解及び縮合の反応速度を調節できる観点から、触媒の存在下で、シランカップリング剤を加水分解及び縮合、表面修飾することがより好ましい。
【0047】
触媒の種類としては、酸触媒及び塩基触媒が挙げられる。
酸触媒としては、例えば、無機酸及び有機酸が挙げられる。無機酸としては、以下に限定されないが、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸、ホウ酸等が挙げられる。有機酸としては、以下に限定されないが、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、安息香酸、p-アミノ安息香酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、シトラコン酸、リンゴ酸、グルタル酸等が挙げられる。
塩基触媒としては、例えば、無機塩基及び有機塩基が挙げられる。無機塩基としては、以下に限定されないが、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ又はアルカリ土類金属炭酸塩;炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム等の金属炭酸水素塩;等が挙げられる。有機塩基としては、以下に限定されないが、アンモニア水、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン等のトリアルキルアミン;N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン等の炭素数1~4のN,N-ジアルキルアニリン誘導体;ピリジン、2,6-ルチジン等の、炭素数1~4のアルキル置換基を有していてもよいピリジン誘導体;等が挙げられる。これらの触媒は、1種で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0048】
有機無機ハイブリッドの製造においては、反応系のpHを0.01~6.0の範囲、若しくはpH8~14になる量の触媒を加えることが、反応効率の点で好ましく、より効率を高めるためにはpH8~14の塩基性条件下でゾルゲル反応を行うことがより好ましい。
【0049】
有機無機ハイブリッドを製造するための加水分解及び縮合は、有機溶媒中で行うこともできる。縮合反応に使用できる有機溶媒としては、例えば、アルコール、エステル、ケトン、エーテル、脂肪族炭化水素化合物、芳香族炭化水素化合物、アミド化合物等が挙げられる。
【0050】
上記アルコールとしては、以下に限定されないが、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコールのような一価アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールのような多価アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルのような多価アルコールのモノエーテル類;等が挙げられる。
【0051】
上記エステルとしては、以下に限定されないが、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。
【0052】
上記ケトンとしては、以下に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン等が挙げられる。
【0053】
上記エーテルとしては、上記の多価アルコールのモノエーテル類の他に、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルのような多価アルコールの水酸基の全てをアルキルエーテル化した多価アルコールエーテル類;テトラヒドロフラン;1,4-ジオキサン;アニソール等が挙げられる。
【0054】
上記脂肪族炭化水素化合物としては、以下に限定されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等が挙げられる。
【0055】
上記芳香族炭化水素化合物としては、以下に限定されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる
【0056】
上記アミド化合物としては、以下に限定されないが、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
【0057】
上述した溶媒の中でも、アルコールとしてメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等;ケトンとしてアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等;エーテルとしてエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等;及びアミド化合物としてジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等が水と混合しやすい点で好ましい。これらの溶媒は単独で使用してもよいし、複数の溶媒を組み合わせて使用してもよい。
【0058】
有機無機ハイブリッドにフィラーを配合する場合は、有機無機ハイブリッドはフィラーの存在下で製造してもよいし、製造した有機無機ハイブリッドにフィラーを配合してもよい。この場合、有機無機ハイブリッドは、市販の分散フィラーにシランカップリング剤の縮合物を溶解させてもよいし、フィラーとシランカップリング剤をボールミル、ジェットミル等で分散処理してもよいし、アルコキシシランとフィラーを同時に縮合反応することで製造することができるが、フィラーの溶剤分散性を高め、インクジェット塗布性を高める点でアルコキシシランとフィラーを同時に縮合する製造方法がより好ましい。コロイダルフィラーをシランカップリング剤存在下でゾルゲル法により処理した場合は、シランカップリング剤の縮合体がフィラーの表面を変性しながら隙間を埋めるように縮合体が配されることになりアルコキシシランの量を任意に調整することで細孔量を調整することができる。フィラー表面に水酸基が存在する場合、その表面水酸基とアルコキシシランの加水分解により生成される水酸基が相互作用、縮合反応によりエーテル結合を形成するため、フィラーと縮合体の相溶性を高めることができるため、より安定な受容体を得ることができる。
【0059】
フィラーにRで示される有機基を表面変性させることは、分散媒に分散させた状態で表面修飾することにより行われる。具体的には、例えば、アルコール及び水を含む金属酸化物の均一分散液に、触媒存在下で上記シランカップリング剤を添加する工程により有機無機ハイブリッドが製造される。
【0060】
有機無機ハイブリッドは沈殿物、ゲル化物を遠心分離、ろ過により濾別することにより回収してもよいし、エバポレーター等で揮発性溶剤を除去することにより単離される。
【0061】
Rで示される有機基の導入は、FT-IRや元素分析により確認することができる。また、熱重量減少測定により確認することができる。150℃から1000℃までの、受容体の熱重量減少率は、感度の観点から、3重量%~75重量%であることが好ましく、湿度耐性の観点から、5重量%~65重量%であることがより好ましく、熱安定性の観点から、5重量%~60重量%であることが更に好ましい。
【0062】
本実施形態における受容体が膜形状を有することによりセンサーの測定精度が安定する傾向にある。膜形状を有する場合の好ましい膜厚は、有機無機ハイブリッドが均質な膜厚分布を有する形状でもよいし、端部の膜厚が厚くなるように分布するコーヒーリング状の形状を有していてもよい。コーヒーリング状の形態を有する膜は、高濃度のVOCの蒸気にさらされた場合であっても形状劣化がなく、構造安定性に優れ、また平坦構造からなる膜構造にくらべて高い感度を有する傾向にあるため好ましい。その理由としては、以下のように考えられるが、以下に限定する趣旨ではない。センサーが表面応力センサーの場合、表面応力センサー上にコーヒーリング型の膜を配した場合、ピエゾ近くにより多くの膜体積を配するためその変形による応力がより効率よくピエゾ素子に伝播するため、より高い感度が実現できると考えられる。コーヒーリング型として、円形状に形成された膜の直径上における2点間の断面プロファイルを取得し、断面プロファイルから中心部の膜厚が最大部の膜厚に対して80%以下であることが感度再現性の観点から好ましく、60%以下であることが感度の観点からより好ましく、40%以下であることが応答感度の最大化の観点からより好ましい。コーヒーリング状の形状となる場合は、膜の中心部分における最も薄い部分、及び端部分における最も厚い部分の膜厚は、それぞれ通常10nm以上50μm以下であることが好ましい。上記膜厚は、製造時における乾燥に要する時間を短縮し、生産性を高める観点から、好ましくは10nm以上30μm以下であり、感度を高める観点から、より好ましくは10nm以上20μm以下である。また、本実施形態における受容体の最大厚みは、30μm以下であることが好ましい。
【0063】
本実施形態における受容体でセンサー本体を被覆したセンサーを嗅覚センサーとして用いる場合は、気相中において、有機官能基とガス分子が相互作用し、当該ガス分子が受容体に吸着又は内部拡散することにより応力発生し、それによってガスを検出することが好ましい。
【0064】
[表面応力(MSS)センサー]
本実施形態のセンサーは、例えば、表面応力センサーに適用することができ、より具体的には膜型表面応力(MSS:Membrane-type Surface stress)センサーとして用いることができる。その場合には、センサー本体の表面の少なくとも一部を被覆した受容体が検知対象物質を吸着することで、当該受容体中に引き起こされた応力変化を検出して本体がシグナルを出力する。表面応力センサーは、4点固定のピエゾ素子型表面応力センサーであることが好ましい。
【0065】
[センサーの製造方法]
本実施形態のセンサーの製造方法としては、特に限定されないが、センサー本体上に受容体を形成するための種々の方法により製造することができる。本実施形態における受容体は、例えば、有機無機ハイブリッドを有機溶剤に分散させて塗布液を調製し、当該塗布液をセンサー本体上に塗布することにより製造される。塗布液をセンサーのチップ上に塗布する際には、インクジェット装置を好適に用いることができる。インクジェット装置によれば、塗布液の液滴を射出し、液滴がセンサー上に塗布され、受容体が成膜される。チップ上に受容体を形成した例を
図1に示す。センサー1は、センサー本体に対応するチップ3と、その表面上に形成された受容体2を有するものとして構成されており、
図1に示す例において、このような構成を4箇所において備えている。
【0066】
有機無機ハイブリッドをセンサー本体(例えば、MSSセンサー本体)の表面に被覆するための手法は、特に限定されないが、例えば、ディップコーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、インクジェットスポッティング、キャスティング、ドクターブレード等を用いた被覆方法が挙げられる。
【0067】
300μmφのメンブレンに塗布するためには、インクジェット、マイクロジェット方式が好ましく、生産性の観点からマイクロジェット方式の塗布がより好ましい。
【0068】
本実施形態における受容体は、例えば、有機無機ハイブリッドを有機溶剤に分散させ、その分散液をMSSセンサーのチップ上に塗布することにより製造できる。有機無機ハイブリッドは、有機溶剤中に0.1g/L~50g/Lの濃度で分散されて塗布液となる。有機無機ハイブリッドの濃度は、生産性の観点から、0.5~50g/Lであることが好ましく、ノズルつまりを抑制する観点から、0.5~15g/Lであることがより好ましい。
【0069】
有機無機ハイブリッドを分散する有機溶媒としては、分散可能な溶媒であればよく、沸点が80℃~250℃のものが好ましく、ノズルのつまりによる生産性の低下を抑制する観点からは、沸点が100℃~250℃のものが好ましく、乾燥にかかる時間を早め、生産性を高める観点からは、沸点が100℃~200℃であるものがより好ましい。
【0070】
有機溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、アルコール溶媒、エステル溶媒、ケトン溶媒、エーテル溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、アミド溶媒等が挙げられる。
【0071】
アルコール溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等の一価アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール等の多価アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールのモノエーテル類;等が挙げられる。
【0072】
エステル溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。
【0073】
ケトン溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン等が挙げられる。
【0074】
エーテル溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等の多価アルコールの水酸基の全てをアルキルエーテル化した多価アルコールエーテル類;テトラヒドロフラン;1,4-ジオキサン;アニソール;等が挙げられる。
【0075】
脂肪族炭化水素溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等が挙げられる。
【0076】
芳香族炭化水素溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0077】
アミド溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
【0078】
これらの有機溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの有機溶媒の中でも、安全性及び溶解性に優れることから、N,N-ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
【0079】
本実施形態における受容体は、有機無機ハイブリッド以外に、任意の粒子、イオン性化合物、樹脂、及び低分子化合物等の添加物を含んでもよい。上記添加物は、例えば、塗布液に配合し、センサー本体の表面に塗布することにより、上記添加物を含む受容体を有するセンサーを得ることができる。
【実施例】
【0080】
以下、実施例及び比較例により本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0081】
各実施例及び比較例のMSSセンサーの各種物性を以下の(1)~(6)に従って評価した。
【0082】
(1)受容体の空隙率の測定
ダイシングにより断面を形成した試料を加工台に固定した後、下記のFIB Millingで加工を行い、走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察を行った。SEM観察条件は下記のとおりとした。
(加工条件FIB Milling)
装置 Helios 650
粗加工 Wによる保護膜形成後実施
加速電圧 30kV
電流値 9.4nA、2.4nA、0.7nAの順に変更
(仕上げ加工)
加速電圧 30 kV
電流値 0.24nA
(SEM観察条件)
装置 Helios 650 (ThermoFisher SCIENTIFIC製)
加速電圧 2kV, 0.1又は0.2nA
観察像 反射電子像(組成像)
傾斜 52°
断面SEM観察で取得した像からを有機無機ハイブリッド中に存在する空隙を抽出した。抽出については、取得像において空隙周辺がエッジ効果により明コントラストを有すること、また空隙自体は暗コントラストを有することを利用し、画像解析ソフトにて二値化処理を行った。その際、構造層を白色に、空隙、基板および背景を黒色とする二値化処理を行った。二値化処理で追従しきれない部位については、手動による判別を行い補足した。得られた空隙の抽出像にて、空隙に対応する部分の面積を、構造層及び空隙に対応する部分の面積に対する比を、受容体層の空隙率として算出した。上記操作を3視野に対して行い、その数平均値を空隙率とした。
【0083】
(2)フィラーの体積分率の測定
(1)で得られた断面像のうち、フィラー部分の面積とそれ以外の面積の比をフィラーの体積率として算出した。上記操作を3視野に対して行い、その数平均値を体積分率とした。
【0084】
(3)熱重量減少率(有機成分の定量)
MSSセンサーから削りとった受容体の粉末試料を、大気中100℃で乾燥し、次いで室温に戻してから正確に秤量した。その後、TGAを用いて大気中で150℃から1000℃まで10℃/分で昇温加熱することで有機成分を除去し、熱重量減少率とした。有機基のみ加熱で分解し、SiO3/2の部分はシリカとして残るため、熱重量減少率を有機成分量(重量%)とした。
【0085】
(4)物理・化学安定性
(1回目)
アナライトとして水飽和蒸気を用いた。25℃、乾燥条件下で、水飽和蒸気を6sccm窒素とともに10分間パージ(全体流量を30sccmに設定)して、シグナル強度を測定した。
(2回目)
アナライトとしてエタノールを用いた。25℃、乾燥条件下で、エタノールのヘッドスペースガスを6sccm窒素とともに10分間パージ(全体流量を30sccmに設定)して、シグナル強度を測定した。
(3回目)
アナライトとしてトルエンを用いた。25℃、乾燥条件下で、トルエンのヘッドスペースガスを窒素6sccmとともに10分間パージ(全体流量を30sccmに設定)して、シグナル強度を測定した。
各回で測定した後に、光学顕微鏡による観察で膜形状の変化を観察して以下のように評価した。
A:3回目の後も変化が見られなかった。
B:2回目の後は変化が見られなかったが3回目の後に明らかな膜の形状変化が倍率200倍の顕微鏡で見られた。
C:2回目の後に明らかな膜の形状変化が倍率200倍の顕微鏡で見られた。
【0086】
(5)アルデヒド選択性
25℃、乾燥窒素下で以下の9つのガス(エタノール、アセトン、酢酸エチル、アセトアルデヒド、エチレン、トルエン、トリメチルアミン、ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド)の250ppmの測定を1h行った。各感度をアセトアルデヒドの感度で割り返し、アセトアルデヒドの感度を1としたときに各感度の相対値において最大値が0.75以下のものをAとし、最大値が0.76以上0.85以下のものをBとし、どれにも当てはまらないものをCとした。
【0087】
(6)耐湿度影響性
25℃、アセトアルデヒド250ppmで1時間測定を行った。100×(「乾燥下で測定されたシグナルの強度」-「50RT%下で測定されたシグナルの強度」)/(「乾燥下で測定されたシグナルの強度」を減衰率(%)とし、その値が20%以下のものをS、21%から40%以下のものをA、41%以上50%未満のものをB、51%以上のものをCとした。
【0088】
<実施例1>
セパラブルフラスコに鎖状コロイダルシリカの2-プロパノール分散液IPA-ST-UP(日産化学製品)10g、水18g、28%アンモニア水2g、2-プロパノール80gに、3-(2-イミダゾリンプロピル)トリエトキシシラン8.3gを加え80℃で3時間反応させた。反応液を空冷後、6000rpm、10分間遠心分離することで沈殿物を単離した。エタノールでサンプルを十分に洗浄したのち、N,Nジメチルホルムアミドで10mg/mLになるように溶解し、塗布液を得た。サンプルを一部80℃真空下で乾燥させて、熱重量減少率を測定した。インクジェット装置を用いて塗布液の一部を、40℃のホットプレート上に配したMSSセンサー用のセンサー本体表面上に塗布することにより、受容体付きのMSSセンサーを得た。上記塗布において、まずは300pLの液滴を2連続で塗布し(600pL)、乾燥のため1秒おいて同様の操作を繰り返した(計30回)。すなわち、18000pL分の塗布液を使用した。MSSセンサーの代表的な外観としては、
図1に示すものと同様であった。
次いで、実施例1に係るMSSセンサーを断面SEM観察し、断面SEM画像に基づいて、上記(1)、(2)のとおりに空隙率及び体積率を算出した。
物理化学安定性は(4)の方法で評価した。倍率200倍の光学顕微鏡による観察で2回目の後は変化が見られなかったが3回目の後に明らかな膜の形状変化が顕微鏡で見られたためBとした。
(5)の通りに評価したアルデヒド選択性は、最大相対値が0.78でBとした。(6)の通りに評価した湿度耐性は42%でBとした。
その他、上述した方法と同様の要領にて、以降の実施例及び比較例についても評価を行った。各評価の結果は表1に併せて示す。
【0089】
<実施例2>
500mLセパラブルフラスコに水36g、28%アンモニア水4g、2-プロパノール106.4gに、フェニルトリメトキシシシラン7.2gと3-(2-イミダゾリンプロピル)トリエトキシシラン6.6gを2-プロパノール24gに溶解した溶液を加え80℃で3時間反応させた。反応液を空冷後、沈殿物をろ取単離した。エタノールでサンプルを十分に洗浄し乾燥させたのち、DMFで10g/mLになるように溶解した。2-プロパノール分散液IPA-ST-UP(日産化学製品)をDMFで10mg/mLになるように調整した溶液と、先述の溶液を6:4の割合で混合し塗布液を得た。それ以後の評価は実施例1に準じた。
【0090】
<実施例3>
実施例2のIPA-ST-UP(日産化学製品)をIPA-ST-ZL(日産化学製品)に変更した以外は実施例2に準じた。
【0091】
<実施例4>
実施例1の3-(2-イミダゾリンプロピル)トリエトキシシラン27.1gを3-N,Nジメチルアミノプロピルトリメトキシシシラン6.2gにした以外は実施例1に準じた。
【0092】
<実施例5>
500mLセパラブルフラスコに水36g、28%アンモニア水4g、2-プロパノール106.4gに、フェニルトリメトキシシシラン7.2gと3-N,Nジメチルアミノプロピルトリメトキシシシラン5.0gを2-プロパノール24gに溶解した溶液を加え80℃で3時間反応させた。反応液を空冷後、沈殿物をろ取単離した。エタノールでサンプルを十分に洗浄し乾燥させたのち、DMFで10g/mLになるように溶解し塗布液を得た。それ以後の評価は実施例1に準じた。
【0093】
<実施例6>
実施例2の3-(2-イミダゾリンプロピル)トリエトキシシラン6.6gを3-N,Nジメチルアミノプロピルトリメトキシシシラン5.0gに変更した以外は実施例2に準じた。
【0094】
<実施例7>
実施例6のIPA-ST-UP(日産化学製品)をIPA-ST-ZL(日産化学製品)に変更した以外は実施例6に準じた。
【0095】
<実施例8>
実施例7の6:4の割合で混合し塗布液を得た代わりに、19:1で混合し塗布液を得た以外は実施例7に準じた。
【0096】
<実施例9>
実施例7の6:4の割合で混合し塗布液を得た代わりに、1:4で混合し塗布液を得た以外は実施例7に準じた。
【0097】
<実施例10>
実施例2の3-(2-イミダゾリンプロピル)トリエトキシシラン6.6gを3-(2-アミノプロピルエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン6.4gにし、IPA-ST-UP(日産化学製品)をIPA-ST-ZL(日産化学製品)に変更した以外は実施例2に準じた。
【0098】
<実施例11>
実施例2のフェニルトリメトキシシシラン7.2gと3-(2-イミダゾリンプロピル)トリエトキシシラン6.6gを4-アミノフェニルトリメトキシシラン12.8gにし、IPA-ST-UP(日産化学製品)をIPA-ST-ZL(日産化学製品)に変更した以外は実施例2に準じた。
【0099】
<実施例12>
実施例2の3-(2-イミダゾリンプロピル)トリエトキシシラン27.1gを4-アミノフェニルトリメトキシシラン5.1gにし、IPA-ST-UP(日産化学製品)をIPA-ST-ZL(日産化学製品)に変更した以外は実施例2に準じた。
【0100】
<実施例13>
実施例2の3-(2-イミダゾリンプロピル)トリエトキシシラン27.1gを3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン6.4gにし、IPA-ST-UP(日産化学製品)をIPA-ST-ZL(日産化学製品)に変更した以外は実施例2に準じた。
【0101】
<実施例14>
実施例2のフェニルトリメトキシシシラン7.2gと3-(2-イミダゾリンプロピル)トリエトキシシラン6.6gを3-ピリジントリエトキシシラン14.5gにし、IPA-ST-UP(日産化学製品)をIPA-ST-ZL(日産化学製品)に変更した以外は実施例2に準じた。
【0102】
<実施例15>
実施例2の3-(2-イミダゾリンプロピル)トリエトキシシラン27.1gを3-ピリジントリエトキシシラン5.8gにし、IPA-ST-UP(日産化学製品)をIPA-ST-ZL(日産化学製品)に変更した以外は実施例2に準じた。
【0103】
<実施例16>
実施例2の3-(2-イミダゾリンプロピル)トリエトキシシラン27.1gを3-アセトアミドプロピルトリメトキシシラン5.3gにし、IPA-ST-UP(日産化学製品)をIPA-ST-ZL(日産化学製品)に変更した以外は実施例2に準じた。
【0104】
<実施例17>
実施例2の3-(2-イミダゾリンプロピル)トリエトキシシラン27.1gを3-ピペリジノプロピルトリメトキシシラン6.0gにし、IPA-ST-UP(日産化学製品)をIPA-ST-ZL(日産化学製品)に変更した以外は実施例2に準じた。
【0105】
<実施例18>
実施例2の3-(2-イミダゾリンプロピル)トリエトキシシラン27.1gを3-ピペラジノプロピルトリメトキシシラン6.0gにし、IPA-ST-UP(日産化学製品)をIPA-ST-ZL(日産化学製品)に変更した以外は実施例2に準じた。
【0106】
<実施例19>
実施例2の3-(2-イミダゾリンプロピル)トリエトキシシラン27.1gを3-(シクロヘキシルアミノ)プロピルトリメトキシシラン6.3gにし、IPA-ST-UP(日産化学製品)をIPA-ST-ZL(日産化学製品)に変更した以外は実施例2に準じた。
【0107】
<実施例20>
実施例2の3-(2-イミダゾリンプロピル)トリエトキシシラン27.1gを3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン6.1gにし、IPA-ST-UP(日産化学製品)をIPA-ST-ZL(日産化学製品)に変更した以外は実施例2に準じた。
【0108】
<比較例1>
実施例2のフェニルトリメトキシシシラン7.2gと3-(2-イミダゾリンプロピル)トリエトキシシラン6.6gをフェニルトリメトキシシシラン11.9gにし、IPA-ST-UP(日産化学製品)をIPA-ST-ZL(日産化学製品)に変更した以外は実施例2に準じた。
【0109】
<比較例2>
500mLセパラブルフラスコに水36g、28%アンモニア水4g、2-プロパノール106.4gに、フェニルトリメトキシシシラン11.9gを2-プロパノール24gに溶解した溶液を加え80℃で3時間反応させた。反応液を空冷後、沈殿物をろ取単離した。エタノールでサンプルを十分に洗浄し乾燥させたのち、DMFで10g/mLになるように溶解し塗布液を得た。それ以後の評価は実施例1に準じた。
【0110】
<比較例3>
シリカチタニア粒子(粒状)はWO2016/121155公報に記載の方法に準じて合成した。オクタデシルアミン(ODA)が溶解したアンモニア塩基性のイソプロパノール(IPA)水溶液中における、アミノプロピルトリメトキシシランとチタニウムテトライソプロポキシド(TTIP)の共加水分解、縮合重合反応により合成した。上記合成反応は、マイクロメートルサイズのY字型流路を有するテフロン(登録商標)製マイクロリアクタを用いて実施した。前駆溶液は、溶液1:アミノプロピルトリメトキシシラン/IPA、溶液2:H2O/IPA/アンモニア、溶液3:TTIP/IPA、溶液4:H2O/IPAの4つとし、溶液1から溶液4まで体積を揃えて調製した。前駆溶液はシリンジポンプにより同時に一定速度で送液した。溶液1と溶液2、溶液3と溶液4を並列したマイクロリアクタ内でそれぞれ混合し、両リアクタからの吐出液をさらに別のマイクロリアクタ内で混合することにより、1つの反応液とした。反応液は別途調製しておいた前駆溶液5:ODA/H2O/IPA中へ吐出し、吐出終了まで一定速度で撹拌した。その後、室温で静置し、ナノ粒子(NH2-STNP)分散液を得た。かかるナノ粒子にRSiO3/2で表される構造が確認されたため、これを有機無機ハイブリッドと扱った。反応液を空冷後、6000rpm,10分間遠心分離することで沈殿物を単離した。エタノールでサンプルを十分に洗浄したのち、N,N-ジメチルホルムアミドで1g/mLになるように溶解し、塗布液を得た。塗布液を、マイクロジェットを用いて1滴当たり300pLの量にて300滴を80℃のホットプレート上に配したMSSセンサー用のセンサー本体表面上に塗布することにより受容体付きのMSSセンサーを得た。受容体層は塗布後にクラックと剥がれがみられたため、物理、化学安定性はCとした。アルデヒド応答性は4.6であったためCとした。湿度耐性は0.94であったため、Cとした。
【0111】
各実施例/比較例について上記測定(1)~(6)を行った結果を次の表1~3に示す。
【0112】
【0113】
【0114】
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明のセンサーは、呼気検査やホテル、自動車、工場での匂い管理などに嗅覚センサーとして利用可能である。
【符号の説明】
【0116】
1 センサー
2 受容体(感応膜)
3 チップ(センサー本体)