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特許7412294釣り用リールのトルク制限装置及び釣り用リール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】釣り用リールのトルク制限装置及び釣り用リール
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/015 20060101AFI20240104BHJP
   A01K 89/017 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
A01K89/015 E
A01K89/017
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020116564
(22)【出願日】2020-07-06
(65)【公開番号】P2022014298
(43)【公開日】2022-01-19
【審査請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】原口 仁志
(72)【発明者】
【氏名】林 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】村山 聡
(72)【発明者】
【氏名】森 成秀
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-165255(JP,A)
【文献】特開2013-70652(JP,A)
【文献】米国特許第4524922(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 89/015
A01K 89/017
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣り用リールの回転する軸部材と前記軸部材に支持される回転部材との間のトルクを制限する釣り用リールのトルク制限装置であって、
前記軸部材に設けられ、前記軸部材の径方向に開口する収容部と、
前記回転部材の内周面に形成された係合部と、
前記回転部材に向けて進退可能に前記収容部に配置され、前記係合部に係合可能な少なくとも1つのピン部材と、
前記収容部に配置され、前記ピン部材を前記回転部材に向けて付勢する少なくとも一つの付勢部材と、
を備え、
前記軸部材の軸方向における前記収容部の長さは、前記軸方向における前記回転部材の長さ以上である、
釣り用リールのトルク制限装置。
【請求項2】
前記付勢部材は、コイルバネであり、
前記付勢部材の外径は、前記軸方向における前記回転部材の長さ以上である、
請求項1に記載のトルク制限装置。
【請求項3】
前記軸部材は、前記回転部材と前記軸方向に当接する鍔部を有し、
前記収容部は、前記鍔部の一部を切り欠いて形成されている、
請求項1又は2に記載のトルク制限装置。
【請求項4】
前記係合部は、前記鍔部に向かって前記軸部材の軸芯に徐々に近づくように傾斜する斜面を有する、
請求項3に記載のトルク制限装置。
【請求項5】
リール本体と、
前記リール本体に対して回転可能に支持される軸部材と、
前記軸部材に支持される回転部材と、
前記軸部材と前記回転部材との間のトルクを制限する請求項1から4のいずれか1項に記載のトルク制限装置と、
を備える、釣り用リール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り用リールのトルク制限装置及び釣り用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、釣り用リールの回転する軸部材と軸部材に支持される回転部材との間のトルクを制限するトルク制限装置を備えた釣り用リールが知られている。例えば、特許文献1に開示された釣り用リールは、ハンドル軸とハンドル軸に支持されるギアとの間のトルクを制限するトルク制限装置を備えている。トルク制限装置は、ピン部材と、付勢部材とを有している。ピン部材及び付勢部材は、ハンドル軸に形成された貫通孔に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5912371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、ピン部材及び付勢部材が配置される貫通孔の直径は、ハンドル軸の軸方向における従動ギアの長さよりも小さい。このため、例えば付勢部材の外径寸法を軸方向における従動ギアの長さ以上にすることができない。すなわち、付勢部材の設計自由度が低いため、トルク制限装置の耐久性を向上させることが難しい。
【0005】
本発明の課題は、釣り用リールのトルク制限装置及び釣り用リールにおいて、トルク制限装置の耐久性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る釣り用リールのトルク制限装置は、釣り用リールの回転する軸部材と軸部材に支持される回転部材との間のトルクを制限する。トルク制限装置は、収容部と、係合部と、少なくとも1つのピン部材と、少なくとも1つの付勢部材とを備えている。収容部は、軸部材に設けられ、軸部材の径方向に開口する。係合部は、回転部材の内周面に形成されている。少なくとも1つのピン部材は、回転部材に向けて進退可能に収容部に配置され、係合部に係合可能である。少なくとも1つの付勢部材は、収容部に配置され、ピン部材を回転部材に向けて付勢する。軸部材の軸方向における収容部の長さは、軸方向における回転部材の長さ以上である。
【0007】
この釣り用リールのトルク制限装置では、軸部材の軸方向において、収容部の長さは、回転部材の長さ以上であるので、収容部に配置される付勢部材の設計自由度が高まる。これにより、例えば付勢部材の外径寸法を軸方向における回転部材の長さ以上にすることが可能になるので、付勢部材の耐久性を向上させることができる。その結果、トルク制限装置の耐久性を向上させることができる。
【0008】
付勢部材は、コイルバネであってもよい。付勢部材の外径は、軸方向における回転部材の長さ以上であってもよい。この場合は、コイルバネの外径寸法を軸方向における回転部材の長さ以上にしたり、コイルバネの線径を従来よりも大きくしたりすることができるので、コイルバネの耐久性を向上させることができる。その結果、トルク制限装置の耐久性を向上させることができる。
【0009】
軸部材は、回転部材と軸方向に当接する鍔部を有してもよい。収容部は、鍔部の一部を切り欠いて形成されてもよい。この場合は、収容部が鍔部の一部を切り欠いて形成されるので、軸方向における収容部の長さを大きくした場合でも、軸部材が軸方向に大型化することを抑制することができる。
【0010】
係合部は、鍔部に向かって軸部材の軸芯に徐々に近づくように傾斜する傾斜面を有してもよい。この場合は、ピン部材が係合部に係合したときに、係合部の傾斜面によって回転部材を鍔部に向けて押圧する力が発生するので、回転部材ががたつきにくくなる。
【0011】
本発明の別の発明に係る釣り用リールは、リール本体と、リール本体に対して回転可能に支持される軸部材と、軸部材に支持される回転部材と、軸部材と回転部材との間のトルクを制限する上記のトルク制限装置とを備えている。
【0012】
この釣り用リールでは、軸部材の軸方向において、収容部の長さは、回転部材の長さ以上であるので、収容部に配置される付勢部材の設計自由度が高まる。これにより、例えば付勢部材の外径寸法を軸方向における回転部材の長さ以上にすることが可能になるので、付勢部材の耐久性を向上させることができる。その結果、釣り用リールにおいて、トルク制限装置の耐久性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、釣り用リールのトルク制限装置及び釣り用リールにおいて、トルク制限装置の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態が採用された両軸受リールの平面図。
図2図1のII-II線断面図。
図3】第1側カバー及び機構装着板を外した状態の電動リールの右側面図。
図4】両軸受リールの一部の分解斜視図。
図5】駆動軸の一部の斜視図。
図6】クラッチ戻し機構の側面図。
図7】ハンドル軸の装着部の断面図。
図8図7のVIII-VIII線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態が採用された両軸受リール100は、図1から図3に示すように、リール本体2と、スプール3と、ハンドル4と、スプール駆動機構13(図3参照)と、を備えている。両軸受リール100は、外部電源から供給された電力によりモータ12を駆動してスプール3が回転する電動リールである。両軸受リール100は、釣り用リールの一例である。なお、以下の説明において、軸方向とは、後述するスプール軸10及び駆動軸30が延びる方向を意味する。
【0016】
リール本体2は、フレーム7と、第1側カバー8aと、第2側カバー8bと、を有している。フレーム7は、第1側板7aと、第2側板7bと、複数の連結部7cと、機構装着板9と、を有している。
【0017】
第1側板7aは、フレーム7の前方(釣り糸が繰り出される方向)に向かって右側に配置されている。第2側板7bは、第1側板7aと軸方向に間隔を隔てて、フレーム7の左側に配置されている。複数の連結部7cは、軸方向に延びて第1側板7aと第2側板7bとを連結している。機構装着板9は、第1側板7aと第1側カバー8aとの間に配置されている。機構装着板9は、第1側板7aと第1側カバー8aとの間に配置され、機構装着板9には各種の機構が装着されている。
【0018】
第1側カバー8aは、フレーム7の第1側板7aの右側方を覆う。第2側カバー8bは、フレーム7の第2側板7bの左側方を覆う。
【0019】
スプール3は、図2に示すように、リール本体2に対して回転可能であり、第1側板7a及び第2側板7bの間に配置されている。スプール3は、リール本体2の内部を軸方向に延びるスプール軸10に支持されている。スプール3は、スプール軸10に一体回転可能に装着されている。スプール軸10は、リール本体2に配置された1対の軸受11a,11bにより、リール本体2に回転自在に支持されている。本実施形態におけるスプール軸10は、左右方向に延びている。
【0020】
ハンドル4は、リール本体2に対して回転可能である。ハンドル4は、リール本体2の第1側カバー8a側に設けられている。
【0021】
スプール駆動機構13は、ハンドル4及びモータ12の回転をスプール3に伝達する。スプール駆動機構13は、図3に示すように、第1回転伝達機構14と、第2回転伝達機構15と、を有している。
【0022】
第1回転伝達機構14は、モータ12の回転を減速してスプール3に伝達する。詳細には、第1回転伝達機構14は、モータ12の出力軸に連結された図示しない遊星歯車機構と、第1ギア部材60と、第2ギア部材61と、ピニオンギア32と、を有している。
【0023】
第1ギア部材60には、遊星歯車機構を介してモータ12の回転が伝達される。第2ギア部材61は、第1ギア部材60に噛み合う。第2ギア部材61は、第1ギア部材60の回転をピニオンギア32に伝達するための中間ギアであり、ピニオンギア32に噛み合う。
【0024】
ピニオンギア32は、スプール軸10の軸回りに回転可能であり、スプール軸10が内周部を貫通している。また、ピニオンギア32は、スプール軸10に一体回転可能に連結される連結位置と、スプール軸10との連結が解除される解除位置との間で、軸方向に移動可能にリール本体2に設けられている。ピニオンギア32は、後述するクラッチヨーク41に係合し、クラッチヨーク41とともに軸方向に移動する。ピニオンギア32は、クラッチヨーク41が係合する環状凹部32aを有している。
【0025】
第2回転伝達機構15は、ハンドル4の回転を、第1回転伝達機構14を介してスプール3に伝達する。第2回転伝達機構15は、駆動軸30と、駆動ギア31と、第3ギア部材62と、を有している。
【0026】
駆動軸30は、軸部材の一例である。駆動軸30には、ハンドル4が一体回転可能に連結されている。駆動軸30は、リール本体2に対して回転可能に支持されている。駆動軸30は、左右方向に延びている。図5に示すように、駆動軸30は、装着部30aと、鍔部30bとを有している。装着部30aは、後述する回転部材52が装着される部分である。装着部30aは、外周面が円筒状に形成されている。鍔部30bは、装着部30aよりも駆動軸30の径方向外側に延びている。鍔部30bは、外径が装着部30aの外径よりも大径に形成されている。鍔部30bは、装着部30aよりもハンドル4側で装着部30aに隣接して配置されている。
【0027】
駆動軸30は、第1側カバー8aに装着される図示しないローラクラッチによって糸巻き取り方向と逆方向の回転が禁止されている。また、駆動軸30は、回転部材52と、回転部材52とに係合可能な爪部材54(図4参照)とで構成される爪式のワンウェイクラッチによっても、糸巻き取り方向と逆方向の回転が禁止されている。
【0028】
駆動ギア31は、駆動軸30に回転可能に装着されている。駆動ギア31には、周知のドラグ機構を介して駆動軸30の回転が伝達される。
【0029】
第3ギア部材62は、駆動ギア31に噛み合うとともに、遊星歯車機構のキャリアに一体回転可能に連結されている。これにより、第3ギア部材62の回転がキャリア、第1ギア部材60、及び第2ギア部材61を介して、ピニオンギア32に伝達される。
【0030】
両軸受リール100は、クラッチ機構16(図2参照)と、クラッチ操作部材17(図3参照)と、をさらに備えている。また、両軸受リール100は、図4及び図6に示すように、クラッチ制御機構20と、クラッチ戻し機構22と、規制部材24と、をさらに備えている。
【0031】
クラッチ機構16は、ハンドル4の回転力をスプール3に伝達及び遮断するための機構である。クラッチ機構16は、従来と同様の構成であり、スプール軸10とピニオンギア32との間に設けられている。クラッチ機構16は、図2に示すように、係合ピン16aと、係合凹部16bと、を有している。
【0032】
クラッチ機構16が伝達状態にあるとき、すなわち、ピニオンギア32が連結位置にあるとき、係合ピン16aが係合凹部16bに係合して、ピニオンギア32の回転がスプール軸10に伝達される。一方、クラッチ機構16が遮断状態にあるとき、すなわち、ピニオンギア32が解除位置にあるとき、係合ピン16aが係合凹部16bから離脱して、ピニオンギア32の回転はスプール軸10に伝達されない。
【0033】
クラッチ操作部材17は、リール本体2の後部で上下方向に移動可能にリール本体2に支持されている。クラッチ操作部材17は、図3において、実線で示す第1位置と、破線で示す第2位置との間で移動可能であり、第1位置側に向けて付勢されている。
【0034】
クラッチ操作部材17は、図4に示すように、回動部18と、操作部19と、を有している。回動部18は、スプール軸10の軸回りに回動可能にリール本体2に支持されている。回動部18は、リング部18aと、挿入部18bと、第1バネ掛け部18cと、連結部18dと、を有している。リング部18aは、機構装着板9に設けられた第1支持部9aの外周面に揺動可能に支持されている。挿入部18bは、操作部19を軸方向に貫通して、操作部19に一体移動可能に連結されている。
【0035】
第1バネ掛け部18cは、リング部18aの外周部から径方向外側に延びて形成されている。第1バネ掛け部18cには、クラッチ操作部材17を第1位置に向けて付勢する第1バネ部材51の一端が引っ掛けられる。第1バネ部材51は、例えばコイルばねである。第1バネ部材51の他端は、機構装着板9の第1側カバー8a側の外側面に引っ掛けられる。
【0036】
連結部18dは、リング部18aと挿入部18bとを連結する。連結部18dには、クラッチ制御機構20の後述するクラッチ爪44を支持する支持軸18eが設けられている。
【0037】
操作部19は、クラッチ操作部材17を手で押圧操作する部分である。操作部19は、スプール軸10と実質的に平行に配置される。操作部19は、第1接触部材43a及び第2接触部材43bを介して、第1側板7a及び第2側板7bに沿って移動可能である。
【0038】
クラッチ制御機構20は、クラッチ操作部材17が第1位置から第2位置に移動する度にクラッチ機構16を伝達状態及び遮断状態に交互に切り換える。クラッチ制御機構20の構成は従来と同様の構成であるため、ここでは簡潔に説明する。
【0039】
クラッチ制御機構20は、クラッチカム40と、クラッチヨーク41と、クラッチ爪44と、有している。
【0040】
クラッチカム40は、クラッチ操作部材17が第1位置から第2位置に移動する度に、一方向にのみ回転する。詳細には、クラッチカム40は、クラッチ操作部材17が第1位置から第2位置に移動する度に、図5に示す第1方向R1に所定の回転位相RPだけ回転する。クラッチカム40は、機構装着板9の第1支持部9aに回転自在に装着されている。
【0041】
クラッチカム40は、図6に示すように、複数のラチェット歯40aと、複数のカム部40bと、を有している。複数のラチェット歯40aは、クラッチカム40の外周面に周方向に間隔を隔てて設けられている。所定の回転位相RPはラチェット歯40aの数によって定まる。本実施形態では、ラチェット歯40aが12個であり、所定の回転位相RPは30度である。
【0042】
ラチェット歯40aは、第1ラチェット歯40cと、第2ラチェット歯40dと、を有している。第1ラチェット歯40c及び第2ラチェット歯40dは、周方向に間隔を隔てて交互に設けられている。
【0043】
カム部40bは、所定の回転位相RPに関連した位相PSで周方向に間隔を隔てて設けられている。カム部40bは、クラッチ操作部材17が第1位置から第2位置に移動する度にクラッチヨーク41を軸方向に移動させる。
【0044】
クラッチヨーク41は、ピニオンギア32を、連結位置と、解除位置と、に移動させるために設けられている。クラッチヨーク41は、図4に示すように、機構装着板9の第1支持部9aに固定されるガイド部材49によって軸方向に移動可能に支持されている。クラッチヨーク41は、ガイド部材49に装着された2本の第2バネ部材42によって、軸方向においてクラッチカム40に近づく方向に向けて付勢されている。クラッチヨーク41は、ピニオンギア32の環状凹部32aに係合する係合部41aを有している。
【0045】
クラッチ爪44は、回動部18の支持軸18eに揺動自在に支持されている。クラッチ爪44は、クラッチ操作部材17の第1位置から第2位置への移動に伴い、クラッチカム40を第1方向R1に所定の回転位相RPだけ回転させる。詳細には、クラッチ爪44は、ラチェット歯40aの第1ラチェット歯40c及び第2ラチェット歯40dのいずれかに係合してクラッチカム40を第1方向R1に押圧する。クラッチ爪44は、回動部18の支持軸18eに支持された第3バネ部材48によって、ラチェット歯40aに向けて付勢されている。
【0046】
クラッチ戻し機構22は、クラッチ機構16が遮断状態にあるとき、ハンドル4の回転によってクラッチ機構16を伝達状態に戻すための機構である。クラッチ戻し機構22は、回転部材52を有している。回転部材52は、駆動軸30に支持されており、ハンドル4の回転に応じて回転する。回転部材52は、装着部30aに装着されている。回転部材52は、鍔部30bと軸方向に当接する。回転部材52は、鍔部30bによって軸方向の移動が規制されている。
【0047】
回転部材52は、複数の突起部52aと、連結孔52bと、を有している。突起部52aは、周方向に間隔を隔てて設けられている。突起部52aは、クラッチ機構16が遮断状態にあるとき、ハンドル4の回転によってクラッチカム40の第1ラチェット歯40cに係合して、クラッチカム40を第1方向R1に回転させる。
【0048】
突起部52aは、クラッチカム40の第2ラチェット歯40dに係合しないように構成されている。詳細には、第2ラチェット歯40dは、第1ラチェット歯40cよりも径方向の厚みが薄く形成されている。また、クラッチ機構16が伝達状態にあるとき、突起部52aは、第2ラチェット歯40dに近接した位置に配置される。このため、ハンドル4が回転しても、突起部52aによってクラッチカム40が第1方向R1に回転することがない。
【0049】
連結孔52bは、後述する係合部72を除いて円形であり、駆動軸30が軸方向に貫通する。
【0050】
規制部材24は、クラッチ操作部材17の移動により、クラッチ機構16を伝達状態から遮断状態に切り換えたときにクラッチ戻し機構22の作動を規制する。
【0051】
詳細には、クラッチ機構16が伝達状態にあるとき、クラッチ操作部材17を第1位置から第2位置に移動させると、クラッチカム40の回転によってクラッチ機構16が伝達状態から遮断状態に切り換わる。規制部材24は、このクラッチ機構16が伝達状態から遮断状態に切り換わったときからクラッチ操作部材17が第2位置に戻るまでの間の少なくとも一部の期間において、クラッチ戻し機構22の作動を規制する。なお、少なくとも一部の期間とは、クラッチ操作部材17が第2位置にあるときを含む。
【0052】
規制部材24は、図4に示すように、クラッチ操作部材17の回動部18に設けられている。詳細には、規制部材24は、回動部18のリング部18aから軸方向に板状に延びている。規制部材24は、回動部18に一体に設けられている。規制部材24は、例えば、回動部18の一部を曲げ加工して形成されている。
【0053】
規制部材24は、クラッチ操作部材17の移動によりクラッチ機構16を伝達状態から遮断状態に切り換えたときに、クラッチカム40の第1ラチェット歯40cと、回転部材52の突起部52aと、の干渉を規制する。詳細には、規制部材24は、クラッチ操作部材17の第1位置から第2位置への移動に伴って回動部18が回動することで、図6の実線で示す待機位置から破線で示す規制位置に回動する。これにより、規制部材24によって回転部材52の糸巻き取り方向WDへの回転が規制され、ハンドル4の回転によるクラッチ戻し機構22の作動が防止される。
【0054】
両軸受リール100は、図6及び図7に示すように、トルク制限装置70をさらに備えている。トルク制限装置70は、駆動軸30と回転部材52との間で伝達されるトルクを制限する。トルク制限装置70は、規制部材24に大きな負荷がかかった場合に、規制部材24及び突起部52aの損傷を防止するために設けられている。
【0055】
トルク制限装置70は、収容部71と、係合部72と、1対のピン部材73と、付勢部材74とを有している。
【0056】
収容部71は、駆動軸30に設けられている。収容部71は、装着部30aに形成されている。収容部71は、駆動軸30の径方向に開口する。本実施形態では、収容部71は、装着部30aを径方向に貫通して形成された貫通孔によって構成されている。収容部71は、図5及び図8に示すように、鍔部30bの一部を切り欠いて形成されている。収容部71の一部は、鍔部30bと径方向に重なる。
【0057】
図8に示すように、軸方向における収容部71の長さL1は、軸方向における回転部材52の長さL2以上である。収容部71の長さL1は、回転部材52の長さL2よりも長いことが好ましい。図8では、収容部71の長さL1が回転部材52のL2よりも長い実施例を示している。
【0058】
係合部72は、回転部材52の内周面に形成されている。係合部72は、回転部材52の内周面において、径方向外側に凹むように形成されている。係合部72は、連結孔52bに形成されている。本実施形態では、係合部72は、周方向に間隔を隔てて4つ設けられており、装着部30a側から連結孔52bに向かって凹むように形成されている。
【0059】
係合部72は、係止面72aと、第1斜面72bと、第2斜面72cとを有している。係止面72aは、1対のピン部材73の先端に沿うように形成されている。第1斜面72bは、回転部材52を糸巻き取り方向WDに付勢するように構成されている。第1斜面72bは、駆動軸30の軸方向から見て、直線状に傾斜するとともに、糸巻き取り方向WDに進むにつれて内径が徐々に大きくなるように形成されている。
【0060】
第2斜面72cは、斜面の一例である。図8に示すように、第2斜面72cは、鍔部30bに向かって駆動軸30の軸芯C(図7参照)に徐々に近づくように傾斜する。なお、駆動軸30の軸芯Cは、図7の紙面に対して直交する方向に延びている。第2斜面72cは、係止面72aと第1斜面72bとに亘って形成されている。なお、第2斜面72cは、係止面72aのみに形成してもよい。
【0061】
1対のピン部材73は、回転部材52に向けて進退可能に収容部71に配置されている。1対のピン部材73は、収容部71に内周面によって径方向の移動が案内されている。軸方向における1対のピン部材73の長さL3は、回転部材52の長さL2以上である。1対のピン部材73の長さL3は、回転部材52の長さL2よりも長いことが好ましい。図8では、1対のピン部材73の長さL3が回転部材52のL2よりも長い実施例を示している。1対のピン部材73の長さL3は、収容部71の長さL1よりも短い。
【0062】
1対のピン部材73は、係合部72に係合可能である。1対のピン部材73は、先端が球面状の頭部73aと、頭部73aよりも小径の軸部73bと、を有している。頭部73aが係止面72aを押圧することで、駆動軸30の回転とともに回転部材52が回転する。駆動軸30と回転部材52との間に許容以上のトルクが作用すると、頭部73aが収容部71の内部に後退して、駆動軸30が回転部材52に対して相対回転する。すなわち、駆動軸30と回転部材52との間に許容以上のトルクが作用すると、駆動軸30のみが回転する。1対のピン部材73が係合部72に係合した状態では、1対のピン部材73は、第2斜面72cを介して回転部材52を鍔部30bに向けて押圧する。
【0063】
付勢部材74は、収容部71に配置されている。付勢部材74は、1対のピン部材73を回転部材52に向けて付勢する。付勢部材74は、例えばコイルバネであり、圧縮された状態で1対のピン部材73の軸部73bに装着されている。付勢部材74の外径D1は、軸方向における回転部材52の長さL1以上である。図8に示すように、付勢部材74の外径D1は、回転部材52の長さL2よりも長いことが好ましい。図8では、付勢部材74の外径D1は、回転部材の長さL2よりも長い実施例を示している。付勢部材74の外径D1は、収容部71の長さL1よりも小さい。付勢部材74の内径は、軸部73bの外径よりも大きく、頭部73aの外径よりも小さい。
【0064】
上記構成のトルク制限装置70では、軸方向において、収容部71の長さL1は、回転部材52の長さL2以上であるので、収容部71に配置される付勢部材74の設計自由度が高まる。これにより、例えば付勢部材74の外径寸法(ここでは、コイルバネの外径D1)を回転部材52の長さL2以上にすることが可能になるので、付勢部材74の耐久性を向上させることができる。その結果、トルク制限装置70の耐久性を向上させることができる。また、軸方向において、1対のピン部材73の長さL3を回転部材52の長さL2以上にすることも可能になるので、トルク制限装置70の耐久性をさらに向上させることができる。
【0065】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0066】
(a)前記実施形態では、釣り用リールとしてモータ12でスプール3を駆動する電動リールを開示したが、本発明は、手巻きの両軸受リールにも適用できる。
【0067】
(b)前記実施形態では、規制部材24を回動部18に一体に設けていたが、必ずしも回動部18に一体に設ける必要はない。また、規制部材24を必ずしも回動部18に設ける必要はない。
【0068】
(c)前記実施形態では、回転部材52がワンウェイクラッチ38及びクラッチ戻し機構22の構成を兼ねていたが、必ずしも回転部材52がワンウェイクラッチ38及びクラッチ戻し機構22の構成を兼ねる必要はない。爪部材54に係合可能かつ駆動軸30に一体回転可能なラチェット部材を、回転部材52とは別に設けてもよい。
【0069】
(d)前記実施形態では、トルク制限装置70は、駆動軸30と回転部材52との間で伝達されるトルクを制限する構成であったが、トルク制限装置70は、スプール3に釣り糸を均一に巻き付けるレベルワインド機構のウォームシャフトとウォームシャフトに支持される従動ギアとの間のトルクを制限してもよい。また、トルク制限装置70は、駆動軸30と駆動軸30に支持される他の回転部材との間のトルクを制限してもよい。例えば、従動ギアに回転を伝達する回転部材と駆動軸30との間のトルクと制限してもよい。また、スプール軸10とスプール軸10に支持される回転部材との間のトルクを制限してもよい。
【0070】
(e)トルク制限装置70は、少なくとも1つのピン部材73を有していればよい。トルク制限装置70は、少なくとも1つの係合部72を有していればよい。収容部71は、必ずしも装着部30aを径方向に貫通している必要はない。また、回転部材52が装着される装着部30aは、外周面が必ずしも円筒状でなくてもよい。
【符号の説明】
【0071】
30 駆動軸(軸部材の一例)
30b 鍔部
52 回転部材
70 トルク制限装置
71 収容部
72 係合部
72c 第2斜面(斜面の一例)
73 ピン部材
74 付勢部材
100 両軸受リール(釣り用リールの一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8