(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】GNSSを用いた出来形観測方法、観測システム、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20240104BHJP
G01S 19/14 20100101ALI20240104BHJP
【FI】
G01C15/00 102C
G01S19/14
(21)【出願番号】P 2020128787
(22)【出願日】2020-07-30
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【氏名又は名称】簾内 里子
(74)【代理人】
【識別番号】100077986
【氏名又は名称】千葉 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【氏名又は名称】川野 由希
(74)【代理人】
【識別番号】100168088
【氏名又は名称】太田 悠
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 基広
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮介
(72)【発明者】
【氏名】一里山 海洋
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-82895(JP,A)
【文献】特開平9-281210(JP,A)
【文献】特開2002-202357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00
G01S 19/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一既知点と第二既知点の間の複数の観測点をGNSSを利用して計測する出来形観測方法であって、
前記各観測点を計測する時に、
基準局と移動局の斜距離が規定値を超えて離れていないかを確認するステップと、
前記第一既知点と前記移動局の斜距離が規定値を超えて離れていないかを確認するステップと、
前記第一既知点の計測時間から規定値を超えて空いていないかを確認するステップと、
を有することを特徴とする出来形観測方法。
【請求項2】
前記第一既知点が計測される時に、計測された前記第一既知点と予め記憶された前記第一既知点の三次元位置座標を比較して、誤差が規定値以内か確認するステップを有することを特徴とする請求項1に記載の出来形観測方法。
【請求項3】
前記第二既知点が計測される時に、前記第二既知点と前記第一既知点の斜距離が規定値を超えて離れていないかを確認するステップを有することを特徴とする請求項1に記載の出来形観測方法。
【請求項4】
前記第二既知点が選択される時に、前記第一既知点との斜距離が規定値以内の条件を満たす既知点をピックアップし、リスト表示するステップを有することを特徴とする請求項1に記載の出来形観測方法。
【請求項5】
前記第二既知点が選択される時に、前記第一既知点との斜距離が規定値以内の条件を満たし、かつ前記移動局の現在地と最も近い既知点を表示するステップを有することを特徴とする請求項1に記載の出来形観測方法。
【請求項6】
前記第二既知点が計測された後に、ユーザに観測を延長するか確認するステップを有し、延長される場合は、今回の計測サイクルの前記第二既知点を次回の計測サイクルの前記第一既知点に設定することを特徴とする請求項1に記載の出来形観測方法。
【請求項7】
基準局と、移動局としての移動装置と、表示部を備える携帯端末とを備え、第一既知点と第二既知点の間の複数の観測点をGNSSを利用して計測する出来形観測システムであって、
前記携帯端末の端末制御部は、
前記各観測点の計測時に、基準局と移動局の斜距離が規定値を超えて離れていないかを確認する移動局第一確認部と、
前記各観測点の計測時に、前記第一既知点と前記移動局の斜距離が規定値を超えて離れていないかを確認する移動局第二確認部と、
前記各観測点の計測時に、前記第一既知点の計測時間から規定値を超えて空いていないかを確認する移動局第三確認部と、
を備えることを特徴とする出来形観測システム。
【請求項8】
前記端末制御部は、前記第一既知点が計測された時に、計測された前記第一既知点と予め記憶された前記第一既知点の三次元位置座標を比較して、誤差が規定値以内か判定する第一既知点確認部を備えることを特徴とする請求項7に記載の出来形観測システム。
【請求項9】
前記端末制御部は、前記第二既知点が計測される時に、前記第二既知点と前記第一既知点の斜距離が規定値を超えて離れていないかを確認する第二既知点確認部を備えることを特徴とする請求項7に記載の出来形観測システム。
【請求項10】
前記第二既知点確認部は、前記第二既知点が選択される時に、前記第一既知点との斜距離が規定値以内の条件を満たす既知点をピックアップし、リスト表示することを特徴とする
請求項9に記載の出来形観測システム。
【請求項11】
前記第二既知点確認部は、前記第二既知点が選択される時に、前記第一既知点との斜距離が規定値以内の条件を満たし、かつ前記移動局の現在地と最も近い既知点を表示することを特徴とする
請求項9に記載の出来形観測システム。
【請求項12】
前記第二既知点が計測された後に、ユーザに観測を延長するか確認し、延長される場合は、今回の計測サイクルの前記第二既知点を次回の計測サイクルの前記第一既知点に設定する延長確認部を備えることを特徴とする請求項7に記載の出来形観測システム。
【請求項13】
請求項1~6のいずれかに記載の出来形観測方法を、コンピュータプログラムで記載し、それを実行可能にしたことを特徴とする観測プログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出来形観測方法、観測システム、およびプログラムに関し、より詳細には、GNSSを用いた路線建設に係る出来形観測方法、観測システム、および観測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
道路等の路線の建設では、路線中心線上に所定の間隔で設定した中心点、路線幅を示す構成点、中心線に直交する断面上の地形の変化点である構成点のそれぞれの三次元設計データに基づき、中心点と構成点に杭を設置し、これを基準として切土、盛土等の作業を行う。そして、建設後には、中心点と構成点の座標を計測して路線の出来形の確認を行う。この出来形観測には、トータルステーションが用いられている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、トータルステーションによる出来形観測では、測定精度保証の観点から、トータルステーションからの測定距離を150メートル以内とする規定(制限値)があり、トータルステーションを用いてキロメートル単位で続く路線を観測するには、トータルステーションの設置点を複数回移動させる必要があった。このため、現場からはトータルステーションの据え付けが煩わしいとの意見があり、GNSSを用いた出来形観測への要望が高まっていた。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するものであって、GNSSによる路線の出来形観測を可能にし、かつ、GNSSの使用注意点をフォローして、初心者であっても簡単にGNSSによる出来形観測ができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の出来形観測方法は、第一既知点と第二既知点の間の複数の観測点をGNSSを利用して計測する出来形観測方法であって、前記各観測点を計測する時に、基準局と移動局の斜距離が規定値を超えて離れていないかを確認するステップと、前記第一既知点と前記移動局の斜距離が規定値を超えて離れていないかを確認するステップと、前記第一既知点の計測時間から規定値を超えて空いていないかを確認するステップと、を有することを特徴とする。
【0007】
上記態様において、前記第一既知点が計測される時に、計測された前記第一既知点と予め記憶された前記第一既知点の三次元位置座標を比較して、誤差が規定値以内か確認するステップを有するのも好ましい。
【0008】
上記態様において、前記第二既知点が計測される時に、前記第二既知点と前記第一既知点の斜距離が規定値を超えて離れていないかを確認するステップを有するのも好ましい。
【0009】
上記態様において、前記第二既知点が選択される時に、前記第一既知点との斜距離が規定値以内の条件を満たす既知点をピックアップし、リスト表示するステップを有するのも好ましい。
【0010】
上記態様において、前記第二既知点が選択される時に、前記第一既知点との斜距離が規定値以内の条件を満たし、かつ前記移動局の現在地と最も近い既知点を表示するステップを有するのも好ましい。
【0011】
上記態様において、前記第二既知点が計測された後に、ユーザに観測を延長するか確認するステップを有し、延長される場合は、今回の計測サイクルの前記第二既知点を次回の計測サイクルの前記第一既知点に設定するのも好ましい。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明のある態様の出来形観測システムは、基準局と、移動局としての移動装置と、表示部を備える携帯端末とを備え、第一既知点と第二既知点の間の複数の観測点をGNSSを利用して計測する出来形観測システムであって、前記携帯端末の端末制御部は、前記各観測点の計測時に、基準局と移動局の斜距離が規定値を超えて離れていないかを確認する移動局第一確認部と、前記各観測点の計測時に、前記第一既知点と前記移動局の斜距離が規定値を超えて離れていないかを確認する移動局第二確認部と、前記各観測点の計測時に、前記第一既知点の計測時間から規定値を超えて空いていないかを確認する移動局第三確認部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
上記態様において、前記端末制御部は、前記第一既知点が計測された時に、計測された前記第一既知点と予め記憶された前記第一既知点の三次元位置座標を比較して、誤差が規定値以内か判定する第一既知点確認部を備えるのも好ましい。
【0014】
上記態様において、前記端末制御部は、前記第二既知点が計測される時に、前記第二既知点と前記第一既知点の斜距離が規定値を超えて離れていないかを確認する第二既知点確認部を備えるのも好ましい。
【0015】
上記態様において、前記第二既知点確認部は、前記第二既知点が選択される時に、前記第一既知点との斜距離が規定値以内の条件を満たす既知点をピックアップし、リスト表示するのも好ましい。
【0016】
上記態様において、前記第二既知点確認部は、前記第二既知点が選択される時に、前記第一既知点との斜距離が規定値以内の条件を満たし、かつ前記移動局の現在地と最も近い既知点を表示するのも好ましい。
【0017】
上記態様において、前記第二既知点が計測された後に、ユーザに観測を延長するか確認し、延長される場合は、今回の計測サイクルの前記第二既知点を次回の計測サイクルの前記第一既知点に設定する延長確認部を備えるのも好ましい。
【0018】
また、請求項1~6のいずれかに記載の出来形観測方法を、コンピュータプログラムで記載し、それを実行可能にするのも好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の出来形観測方法、観測システム、およびプログラムによれば、初心者であっても簡単にGNSSを利用した出来形観測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る出来形観測システムの現場での使用イメージ図である。
【
図3】同観測システムを利用した出来形観測方法の「基本作業」を説明するフロー図である。
【
図4】同観測システムを利用した出来形観測方法の「観測支援作業」を説明するフロー図である。
【
図5】同観測方法において、第一既知点確認の時に携帯端末に表示される画面の一例である。
【
図6】同観測方法において表示される判定通知の表示例である。
【
図7】同観測方法において、出来形観測の時に携帯端末に表示される画面の一例である。
【
図8】同観測方法において表示される判定通知の表示例である。
【
図9】同観測方法において表示される判定通知の表示例である。
【
図10】同観測方法において表示される判定通知の表示例である。
【
図11】同観測方法において表示される出来形観測の設定画面の一例である。
【
図12】同観測方法において、第二既知点確認の時に携帯端末に表示される画面の一例である。
【
図13】同観測方法において表示される判定通知の表示例である。
【
図14】本発明の実施形態の変形例(1)に係る第二既知点確認の時に携帯端末に表示される画面の一例である。
【
図15】同変形例(2)に係る第二既知点確認の時に携帯端末に表示される画面の一例である。
【
図16】本発明の実施形態の変形例(3)に係る観測システムの構成ブロック図である。
【
図17】同変形例(3)に係る観測方法のフロー図である。
【
図18】同変形例(3)において表示される質問表示の表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0022】
(システム全体)
図1は、本発明の実施形態に係る出来形観測システム1(以下、単に「観測システム1」という。)の現場での使用イメージ図、
図2は観測システム1の構成ブロック図である。
【0023】
図1に示すように、現場には、路線の中心線CL上に所定の間隔で設定された中心点PCLと、各中心点の管理断面CSと、各管理断面において路線幅を示す点または地形の変化点である構成点PLと、出来形観測を効率的に行えるような位置に設定され三次元座標が既知である工事基準点(以下、「既知点」という。)BPなどがある。中心点PCLと構成点PLが、観測システム1の観測点となる。
【0024】
図1に示すように、観測システム1は、移動装置2と携帯端末3と基準局4を備える。
【0025】
移動装置2と基準局4はGNSS(全地球航法衛星システム:Global・Navigation・Satelite・System)を利用し、人工衛星からの位置信号を用いて位置を計測する。
【0026】
基準局4は、移動局との基線ベクトル解析により移動局の座標を得るためのものであって、例えば
図1に示すように、GNSS受信機(図示略)を備えた固定局として現場に据え付け配置される形態でもよいし、ネットワークを利用して、全国に設置された電子基準点のデータを元に仮想的に作成された基準局として配置され移動局に情報を配信する形態であってもよい。なお、基準局4は仮想的に配置される場合があるので、
図2では記載を割愛する。
【0027】
(移動装置)
移動装置2は、GNSS(全地球航法衛星システム:Global・Navigation・Satelite・System)を利用する、基準局4に対する移動局である。移動装置2は、観測中、作業者によって携帯される。移動装置2は、
図2に示すように、GNSS受信機21、通信部22、および支持部材23を備える。
【0028】
GNSS受信機21は、アンテナ一体型の航法信号受信装置である。GNSS受信機21は、航法衛星から発信される航法信号を受信し、航法信号の送信時刻を計測して測位を行うことで、自位置を取得可能である。GNSS受信機21は、受信した航法信号を電気信号に変換し、測位データとして出力する。
【0029】
GNSS受信機21は、既知の長さH(
図1)を有するポール状の支持部材23上端の、支持部材23に直交する面上に支持されている。作業者が支持部材23を鉛直に支持して、GNSS受信機21が水平な状態で測位を行うことにより、GNSS受信機21の基準点O(
図1)の三次元座標を取得することができる。GNSS受信機21を水平にするために、支持部材23に水準器やチルトセンサを備える構成も好ましい。
【0030】
通信部22は、GNSS受信機21と、後述する携帯端末3を有線または無線で接続する通信制御装置である。通信部22を実現する通信規格として、Bluetooth(登録商標)、赤外線通信等の近距離無線通信規格を採用してもよい。あるいは、無線LAN規格の一つであるWi-Fi(登録商標)や4G(第4世代移動通信システム)を採用してもよい。
【0031】
(携帯端末)
携帯端末3は、携帯電話、スマートフォン、タブレット、PDA、データコレクタ等の、いわゆるコンピュータ端末である。携帯端末3は、観測中、作業者によって携帯される。携帯端末3は、
図2に示すように、端末表示部31、端末操作部32、端末記憶部33、端末通信部34および端末制御部35を備える。
【0032】
端末表示部31は、例えば端末操作部32と一体に構成されたタッチパネル式の液晶ディスプレイである。但し、端末表示部31と端末操作部32が、別個に設けられていてもよい。端末表示部31は、観測内容に応じた画面を表示し、各画面は観測内容に応じて切り替えられる。
【0033】
端末記憶部33は、例えばHDDである。端末記憶部33には、通信プログラム、出来形観測を実行するための各種プログラムが記憶されている。また、各工事基準点BPの三次元座標が識別情報(例えば既知点NO.1、NO.2…など)とともに記憶されている。また、出来形観測に関する制限値や推奨値が記憶されている。また、移動装置2から受信した測位データを保存し、演算処理により得られる計測値が保存される。
【0034】
端末通信部34は、移動装置2の通信部22と有線または無線での通信を可能とする通信制御装置であり、通信部22と同じ通信規格を有する。
【0035】
端末制御部35は、少なくともCPU及びメモリ(ROM,RAM)等を備える制御ユニットである。端末制御部35は、端末通信部34、端末操作部32等からの入力信号に基づいて、携帯端末3および移動装置2を制御する。端末制御部35は、後述する観測方法を実行するためのプログラムを呼び出して実行する。端末制御部35は、移動装置2から受信した測位データに基づいて、移動装置2の基準点Oの三次元位置座標を取得し、支持部材23の長さHを利用したオフセット観測により、支持部材23の先端で指定された点の三次元位置座標を算出する。
【0036】
また、端末制御部35は、出来形観測方法の観測支援作業を行うための、第一既知点確認部351、移動局第一確認部352、移動局第二確認部353、移動局第三確認部354、第二既知点確認部355の機能部を備える。各機能部は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのPLD(Programmable Logic Device)などの電子回路により構成される。これらの機能部については、後述する出来形観測方法(観測支援技術)において説明する。
【0037】
(出来形観測方法:基本作業)
図3は観測システム1を利用した出来形観測方法の「基本作業」を説明するフロー図である。
【0038】
観測システム1で出来形観測を開始すると、ステップS1に移行して、作業者は、まず観測システム1の初期化を行う。具体的には、作業者はいずれか一つの既知点(工事基準点)BPに移動装置2を当て、その既知点BPの計測値に大きな誤差が無いことを確認する。初期化誤差がある場合は、水平方向および鉛直方向の値が初期化誤差を解消する値となるまで、初期化を行う。
【0039】
次に、ステップS2に移行して、作業者は、出来形観測を行う管理断面CS(単数または複数)を十分に観測できる既知点を開始点(以下、第一既知点BP(START)と称する)として選択し、第一既知点BP(START)の確認を行う。具体的には、作業者は、第一既知点BP(START)に移動装置2を当て、第一既知点BP(START)をGNSS計測する。第一既知点BP(START)の測位データは携帯端末3に送信され、携帯端末3は測位データから第一既知点BP(START)の三次元位置座標を取得する。
【0040】
次に、ステップS3に移行して、作業者は、出来形観測を開始する。具体的には、作業者は、ステップS102で選択した管理断面CS上の中心点PCLおよび構成点PLのそれぞれに移動装置2を当て、各観測点をGNSS計測し、携帯端末3は各点の測位データから各点の三次元位置座標を取得する。
【0041】
次に、ステップS4に移行して、作業者は、工事基準点(既知点)のなかから終了点(以下、第二既知点BP(END)と称する)を選択し、第二既知点BP(END)の確認を行う。すなわち、作業者は、第二既知点BP(END)に移動装置2を当て、第二既知点BP(END)をGNSS計測する。第二既知点BP(END)の測位データは携帯端末3に送信され、携帯端末3は測位データから第二既知点BP(END)の三次元位置座標を取得する。
【0042】
次に、ステップS5に移行して、携帯端末3は、ステップS3の出来形観測の計測値を端末記憶部33に保存して、観測を終了する。作業者は、この値を基に出来形観測レポートを作成する。以上が、観測システム1を利用した出来形観測方法の「基本作業」となる。
【0043】
(出来形観測方法:観測支援技術)
次に、観測システム1を利用した出来形観測方法における観測支援技術について説明する。
図4は、観測システム1を利用した出来形観測方法の「観測支援作業」を説明するフロー図である。
【0044】
(第一既知点確認支援)
図3で説明した通り、観測システム1で出来形観測を開始すると、観測システム1はまず、第一既知点BP(START)を計測する(ステップS2)。この時、ステップS201として、端末制御部35の第一既知点確認部351が機能する。
【0045】
図5は、第一既知点確認の時に携帯端末3に表示される画面の一例である。端末表示部31の画面において、現場は、東西南北を示す方位表示51、縮尺を示す縮尺表示52とともに平面地図で表示され、管理断面CSは管理断面直線53で表示され、移動装置2の現在位置はマーク54で表示される。また、端末表示部31の画面には、機能アイコンF1、F2…、が表示されており、このうちのアイコンF(meas)が計測ボタン、アイコンF(set)が設定ボタンである。作業者によって第一既知点BP(START)として選択された既知点(工事基準点)は、マーク55で表示される。端末制御部35は、移動装置2(マーク54)を第一既知点BP(START)(マーク55)まで誘導し、かつ水平方向および鉛直方向の移動距離を表示する。
【0046】
作業者が第一既知点BP(START)に着き、観測ボタンF(meas)を押した時、ステップS201として、第一既知点確認部351が機能する。第一既知点確認部351は、計測された第一既知点BP(START)と端末記憶部33に記憶されている第一既知点BP(START)の三次元位置座標を比較して、誤差が規定値(制限値 水平較差20ミリメートル、鉛直較差10ミリ メートル)以内か判定する。誤差が規定値超であった場合は、第一既知点確認部351は、
図6に示すような判定通知表示61を表示する。判定通知表示61には、規定値をオーバーしているため判定結果は不可(NG)であることが表示されるとともに、水平方向と鉛直方向のうち不可となった方向とその較差の数値が表示される。作業者は、判定NGであった場合はステップS1に戻り初期化をやり直し、判定OKであった場合に、次のステップS3(出来形観測)に進むことができる。
【0047】
(出来形観測支援 その1)
図3で説明した通り、観測システム1は、第一既知点BP(START)を確認したあとに、出来形観測に移る(ステップS3)。この時、ステップS301として、端末制御部35の移動局第一確認部352が機能する。
【0048】
図7は、出来形観測の時に携帯端末3に表示される画面の一例である。端末表示部31の画面には、平面地図と並んで、管理断面CS(例えば断面No.1)の横断面
図56が表示される。作業者は、この横断面
図56を参照して、上記断面No.1上の中心点PCLおよび構成点PL1~PL3を計測する。
【0049】
作業者が上記の中心点PCLまたは構成点PL1~PL3のいずれかに着き、観測ボタンF(meas)を押した時、ステップS301として、移動局第一確認部352が機能する。移動局第一確認部352は、現在の移動装置2(移動局)と基準局4の斜距離が規定値を超えて(制限値500メートル)離れていないかを確認(判定)する。基準局4からの斜距離が規定値超となると、GNSSの計測精度に影響が生じるためである。移動局第一確認部352は、規定値以内であった場合は、例えば
図8の判定通知表示62を表示し、次の点に移動するよう促す。規定値超であった場合は、例えば
図9の判定通知表示63に示すようなエラーダイアログを表示し、かつ、この計測を端末記憶部33に保存せずに、ステップS3へ戻る。
【0050】
(出来形観測支援 その2)
出来形観測において、上述のように観測ボタンF(meas)が押された時、ステップS301に続いて、ステップS302として、移動局第二確認部353が機能する。移動局第二確認部352は、現在の移動装置2(移動局)と第一既知点BP(START)の斜距離が規定値を超えて(推奨値100~200メートル)離れていないかを確認する。第一既知点BP(START)からの斜距離が規定値超となると、GNSSの計測精度に影響が生じるおそれがあるためである。移動局第二確認部353は、規定値以内であった場合は、
図8の判定通知表示62を表示し、次の点に移動するよう促す。規定値超であった場合は、
図9の判定通知表示63に示すエラーダイアログを表示し、かつ、この計測を端末記憶部33に保存せずに、ステップS3へ戻る。
【0051】
(出来形観測支援 その3)
出来形観測において、上述のように観測ボタンF(meas)が押された時、ステップS302に続いて、ステップS303として、移動局第三確認部354が機能する。移動局第三確認部354は、現在の移動装置2(移動局)での計測時間の経過が第一既知点BP(START)の計測時間から規定値を超えて(推奨値1時間)空いていないかを確認する。第一既知点BP(START)の計測時刻からの経過時間が規定値超となると、衛星の移動により、GNSSの計測精度に影響が生じるおそれがあるためである。移動局第三確認部354は、規定値以内であった場合は、
図8の判定通知表示62を表示し、次の点に移動するよう促す。規定値超であった場合は、ステップS304に移行し、
図10の判定通知表示64に示す警告ダイアログを表示し、この計測を端末記憶部33に保存するかどうかユーザに委ねて(計測禁止にはしない)ステップS4へ移行する。
【0052】
図11は、出来形観測の設定画面の一例である。上記の「1.基準局と移動局の距離」「2.第一既知点と移動局の距離」「3.第一既知点計測からの経過時間」の制限値および/または推奨値は、作業者が入力することができる。一度設定した値は、基本的には現場を変えても引き継がれる。ここで、推奨値に関しては、設定ボタンF(set)を押すことで
図11の設定画面65に切り替わり、チェックマークを外す/入れる、によるユーザ選択により、柔軟な観測を行えるようになっている。
【0053】
図3で説明した通り、観測システム1は、出来形観測を第二既知点BP(END)の計測で締めくくる(ステップS4)。この際、ステップS401として、端末制御部35の第二既知点確認部355が機能する。
図7に示すように、出来形観測(ステップ
S3)に移ると、端末表示部31には、第二既知点確認のためのアイコンとして、第二既知点確認ボタンF(check)が追加表示される。作業者は、出来形観測を締めくくりたくなった時に、第二既知点確認ボタンF(check)を押す。
【0054】
作業者が第二既知点確認ボタンF(check)を押した時、ステップS401として、第二既知点確認部355が機能する。第二既知点確認部355は、端末記憶部33から既知点BP(工事基準点)の情報を読み出し、例えば
図12に示すような既知点リストを表示して、作業者に第二既知点BP(END)を選択させる。その際、第二既知点確認部355は、第一既知点BP(START)との斜距離が規定値を超えていないか(推奨値100~200m)判定する。第二既知点確認部35
5は、規定値以内であった場合は、次のステップS5に移行し、出来形観測を締めくくる。一方、規定値超である既知点が選択された場合は、例えば
図13の判定通知表示66を表示し、その選択を無効とし、別の既知点を選択するよう促す。
【0055】
(作用効果)
以上のように、観測システム1によれば、第一既知点確認部351によって、第一既知点の計測精度を確保してから出来形観測に移り、移動局第一確認部352,移動局第二確認部353,移動局第三確認部354によって、GNSS観測において計測誤差を生じさせる3つの注意点「1.基準局と移動局の距離」「2.第一既知点と移動局の距離」「3.第一既知点計測からの経過時間」を、各点の計測時に必ずチェックし、第二既知点確認部355によって、第二既知点の計測精度を確認した上で出来形観測を締めくくるので、作業者は観測システム1の観測フローに則り作業を進めることで、計測精度が保証された出来形観測を行うことができる。
【0056】
(好ましい変形例)
次に、上記の実施形態に適用できる好ましい変形例を複数示す。実施形態と同様の構成については同一の符号を用いて説明を割愛する。
【0057】
(変形例1)
図14は、実施形態の変形例(1)に係る第二既知点確認の時に携帯端末3に表示される画面の一例である。変形例(1)では、第二既知点確認支援として、第二既知点確認部355は、第二既知点確認ボタンF(check)が押され、既知点確認リストが開かれると、第一既知点BP(START)との距離条件を満たす点のみを、第二既知点BP(END)の候補として自動でピックアップして表示する。既知点(工事基準点)の座標は予め端末記憶部33に記憶されているので、第二既知点確認部355は、距離条件によって表示する既知点を選別することができる。これにより、第二既知点確認(ステップS4)の時の作業者の選択作業を容易にする。
【0058】
(変形例2)
図15は、同変形例(2)に係る第二既知点確認の時に携帯端末3に表示される画面の一例である。変形例(2)では、第二既知点確認支援として、第二既知点確認ボタンF(check)が押されると、第一既知点BP(START)との距離条件を満たし、移動装置2(移動局)の現在
地に最も近い点を、第二既知点BP(END)の推奨として自動でピックアップして表示する(
図15)。既知点(工事基準点)の座標は予め端末記憶部33に記憶されているので、第二既知点確認部355は、距離条件によって表示する既知点を選別することができる。これにより、作業者は、第二既知点確認(ステップS4)の時、
図12に示すような既知点確認リストを開き選択する手間を省略することができるので、第二既知点確認をより容易に行うことができる。
【0059】
(変形例3)
図16は、実施形態の変形例(3)に係る観測システム1´の構成ブロック図、
図17は変形例(3)に係る観測方法のフロー図である。
図16に示すように、観測システム1´は、端末制御部35にさらに延長確認部356を備える。
【0060】
出来形観測では、第一既知点BP(START)から第二既知点BP(END)までの計測を1サイクルとするが、休憩や中断を挟んで計測を続けたい場合が多々ある。その場合、
図3のステップS2で述べたように、2サイクル目を開始する際は、第一既知点BP(START)を改めて再選択する必要がある。
【0061】
そこで、変形例(3)では、ステップS5で出来形観測の計測値を端末記憶部33に保存する時に、延長確認部356が機能する。延長確認部356は、
図18の質問表示67に示すような延長確認ダイアログを表示し、観測を延長するか尋ねる。延長しない場合は、そのまま観測を終了する。一方、延長が選択された場合は、延長確認部356は、今回のサイクルの第二既知点BP(END)を、次のサイクルの第一既知点BP(START)に設定して、ステップS2に戻る。
【0062】
このように、変形例(3)によれば、延長確認部356によって、ユーザに計測の延長を訊ねることで、作業者は次回の計測時に第一既知点BP(START)を選択・確認する手間を省くことができる。
【0063】
以上、本発明の好ましい観測方法および観測システムについて、実施の形態および変形例を述べたが、各形態および各変形を当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1 出来形観測システム
2 移動装置(移動局)
21 GNSS受信機
22 通信部
23 支持部材
3 携帯端末
31 端末表示部
32 端末操作部
33 端末記憶部
34 端末通信部
35 端末制御部
351 第一既知点確認部
352 移動局第一確認部
353 移動局第二確認部
354 移動局第三確認部
355 第二既知点確認部
356 延長確認部
4 基準局
BP 既知点