(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】ヒンジキャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 47/36 20060101AFI20240104BHJP
B65D 47/08 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
B65D47/36 310
B65D47/08 110
(21)【出願番号】P 2020157635
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】山本 学
(72)【発明者】
【氏名】桑原 和仁
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-99850(JP,U)
【文献】特開2015-67360(JP,A)
【文献】特開平10-338253(JP,A)
【文献】米国特許第6216945(US,B1)
【文献】国際公開第99/43561(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/36
B65D 47/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が収容される容器本体の口部に装着され、内容物を注出する注出口が設けられたキャップ本体と、
前記キャップ本体にヒンジ回りに回動可能に連結され、前記注出口を開閉可能に覆う有頂筒状の蓋体と、
前記注出口の開口縁部に破断可能な弱化部を介して連結され、当該注出口を閉塞する閉塞体と、
前記蓋体に設けられ、前記蓋体と前記閉塞体とを一体に連結する抜栓体と、
を備え、
前記蓋体においてキャップ軸を径方向に挟んで前記ヒンジの反対側に位置する前端部に、開封時の把持に用いる開封補助部材が連結され、
前記開封補助部材は、前記前端部回りに上方に向けて回動可能に設けられている、ヒンジキャップ。
【請求項2】
前記蓋体は、頂壁部と、前記頂壁部の外周縁から下方に向けて延在する周筒部と、前記周筒部から前方に突出する鍔部と、を有し、
前記開封補助部材は、前記鍔部に連結されている、請求項1に記載のヒンジキャップ。
【請求項3】
前記開封補助部材と前記蓋体とは、互いに別体とされ、
前記開封補助部材の端部に嵌合凸部が設けられ、
前記嵌合凸部が前記鍔部に嵌合されている、請求項2に記載のヒンジキャップ。
【請求項4】
前記開封補助部材と前記蓋体とは、互いに一体とされ、
前記開封補助部材は、補助ヒンジ部を介して前記鍔部に連結されている、請求項2に記載のヒンジキャップ。
【請求項5】
前記開封補助部材は、前記蓋体の外周に沿って環状に設けられている、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のヒンジキャップ。
【請求項6】
前記開封補助部材は、前記抜栓体または前記蓋体に薄肉部を介して連結され、前記薄肉部が破断されることで前記前端部回りに上方に向けて回動可能とされている、請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のヒンジキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
蓋体を開いた後にプルリング等の部材を引き上げる操作を行うことなく、蓋体を開く操作のみによって開封可能なヒンジキャップが、従来から知られている。例えば下記の特許文献1には、蓋体と、弱化部を介して分離片が連結された頂壁を有するキャップ基部と、を備えたキャップが開示されている。このキャップによれば、開封時に弱化部が破断されて分離片が蓋体に移行することにより、分離片が連結されていた個所が開口し、容器が開封される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のヒンジキャップが装着された容器を開封する際には、蓋体を開く動作に伴って注出口を閉塞する閉塞体とキャップ本体とを連結している弱化部が破断され、注出口が開封されるとともに、閉塞体が蓋体側に移行する。したがって、容器を一旦開封した後は、既に弱化部が破断され、閉塞体が蓋体側に移行された状態となっている。そのため、僅かな力で蓋体を開くことができ、内容物を容易に注出することができる。これに対して、開封時には弱化部を破断させるだけの力が必要となるため、例えば力が弱い高齢者等の使用者には開封しにくい、という課題がある。
【0005】
本発明の一つの態様は、上記の課題を解決するためになされたものであって、蓋体の回動操作に伴って開封可能なヒンジキャップにおいて、開封時の操作性を高めることができるヒンジキャップを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の一つの態様のヒンジキャップは、内容物が収容される容器本体の口部に装着され、内容物を注出する注出口が設けられたキャップ本体と、前記キャップ本体にヒンジ回りに回動可能に連結され、前記注出口を開閉可能に覆う有頂筒状の蓋体と、前記注出口の開口縁部に破断可能な弱化部を介して連結され、当該注出口を閉塞する閉塞体と、前記蓋体に設けられ、前記蓋体と前記閉塞体とを一体に連結する抜栓体と、を備え、前記蓋体においてキャップ軸を径方向に挟んで前記ヒンジの反対側に位置する前端部に、開封時の把持に用いる開封補助部材が連結され、前記開封補助部材は、前記前端部回りに上方に向けて回動可能に設けられている。
【0007】
本発明の一つの態様のヒンジキャップにおいては、蓋体においてキャップ軸を径方向に挟んでヒンジの反対側に位置する前端部に開封補助部材が連結されているため、使用者は開封補助部材を把持して蓋体をヒンジ回りに回動させ、容器を開封することができる。このとき、開封補助部材を蓋体の前端部回りに上方に向けて回動させ、蓋体の上方に位置させた状態で引き上げることができるため、例えば蓋体の前端部に指を掛けて蓋体を開く場合に比べて、開封時の操作性を高めることができる。
【0008】
本発明の一つの態様のヒンジキャップにおいて、前記蓋体は、頂壁部と、前記頂壁部の外周縁から下方に向けて延在する周筒部と、前記周筒部から前方に突出する鍔部と、を有し、前記開封補助部材は、前記鍔部に連結されていてもよい。
【0009】
この構成によれば、開封補助部材が蓋体の周筒部から前方に突出する鍔部に連結されているため、開封補助部材を引き上げる力が蓋体を回動させる力により有効に変換され、弱化部を破断させることができる。
【0010】
本発明の一つの態様のヒンジキャップにおいて、前記開封補助部材と前記蓋体とは、互いに別体とされ、前記開封補助部材の端部に嵌合凸部が設けられ、前記嵌合凸部が前記鍔部に嵌合されていてもよい。
【0011】
この構成によれば、開封補助部材と蓋体とを互いに別体の部材として作製し、これらを組み合わせることで、本発明の一つの態様のヒンジキャップを構成することができる。
【0012】
本発明の一つの態様のヒンジキャップにおいて、前記開封補助部材と前記蓋体とは、互いに一体とされ、前記開封補助部材は、補助ヒンジ部を介して前記鍔部に連結されていてもよい。
【0013】
この構成によれば、開封補助部材と蓋体とを互いに一体の部材として作製することで、本発明の一つの態様のヒンジキャップを構成することができる。
【0014】
本発明の一つの態様のヒンジキャップにおいて、前記開封補助部材は、前記蓋体の外周に沿って環状に設けられていてもよい。
【0015】
この構成によれば、開封補助部材が環状に設けられているため、使用者が開封補助部材を上方に向けて回動させた際に指等を引っ掛けやすく、開封補助部材を把持しやすい。
【0016】
本発明の一つの態様のヒンジキャップにおいて、前記開封補助部材は、前記抜栓体または前記蓋体に薄肉部を介して連結され、前記薄肉部が破断されることで前記前端部回りに上方に向けて回動可能とされていてもよい。
【0017】
この構成によれば、開封補助部材は薄肉部が破断されることで前端部回りに上方に向けて回動可能とされるため、薄肉部が破断される前の状態では薄肉部によって開封補助部材の上方への回動が規制される。そのため、未開封時に開封補助部材が意図せずに上方に回動することが抑えられ、容器の保管時や流通時に支障を来すことがない。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一つの態様によれば、蓋体の回動操作に伴って開封可能なヒンジキャップにおいて、開封時の操作性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態のヒンジキャップを示す図であって、開封前のヒンジキャップの縦断面図である。
【
図2】同、開封前のヒンジキャップの平面図である。
【
図3】同、開封後のヒンジキャップの縦断面図である。
【
図4】第2実施形態のヒンジキャップを示す図であって、開封前のヒンジキャップの縦断面図である。
【
図5】同、開封前のヒンジキャップの平面図である。
【
図6】同、開封後のヒンジキャップの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態のヒンジキャップについて、
図1、
図2、および
図3に基づいて説明する。
図1は、
図2のI-I線に沿う縦断面図である。
図1に示すように、本実施形態のヒンジキャップ1は、有頂円筒状をなしており、例えば液状の内容物を収容する有底円筒状の容器本体2の口部3に装着されている。
【0021】
図示の例では、容器本体2の口部3およびヒンジキャップ1は、それぞれの中心軸線が共通軸上に位置された状態で配設されている。以下、この共通軸をキャップ軸Oとし、キャップ軸Oに沿ってヒンジキャップ1側を上側、容器本体2側を下側とし、キャップ軸O方向から見て、キャップ軸O回りに周回する方向を周方向と称し、キャップ軸Oに交差する方向を径方向と称する。また、径方向のうち、後述するヒンジ12側を後側と称し、その反対側を前側と称し、径方向のうち、前後方向に交差する方向を左右方向と称する。
【0022】
ヒンジキャップ1は、容器本体2の口部3に装着され、内容物を注出する注出口11Aが形成された有頂円筒状のキャップ本体11と、キャップ本体11にヒンジ12回りに回動可能に連結され、注出口11Aを開閉自在に覆う有頂円筒状の蓋体13と、注出口11Aの開口縁部に弱化部14を介して連結されて注出口11Aを閉塞する閉塞体15と、蓋体13に装着された抜栓体16と、蓋体13の前端部に連結された開封補助部材17と、を備えている。キャップ本体11、蓋体13および開封補助部材17は、キャップ軸Oと同軸に配設されている。
【0023】
キャップ本体11は、前後方向に長い長円形の注出口11Aが形成された平面視で円形の天板部21と、天板部21の外周縁から下方に向けて延在する円筒状の装着筒部22と、装着筒部22よりも径方向内側において天板部21から上方に向けて延在する円筒状の取付筒部23と、取付筒部23よりも径方向内側において天板部21から下方に向けて延在する円筒状の嵌合筒部24と、嵌合筒部24よりも径方向内側において天板部21から上方に向けて延在する円筒状の注出筒部25と、を有している。
【0024】
天板部21、装着筒部22、取付筒部23、嵌合筒部24、および注出筒部25は、キャップ軸Oと同軸に配設されている。また、キャップ本体11、蓋体13、および閉塞体15は、例えば直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等の樹脂材料によって一体に形成されている。なお、キャップ本体11、蓋体13および閉塞体15は、他の樹脂材料から形成されていてもよい。
【0025】
装着筒部22は、口部3の径方向外側に配設されている。装着筒部22の下端部の内周面には、口部3の外周面に形成されて径方向外側に向けて突出する第1装着突部3Aに対して下方から係止されて、径方向内側に向けて突出する第2装着突部22Aが形成されている。
【0026】
取付筒部23の上端部の外周面には、径方向外側に向けて突出する第1取付突部23Aが形成されている。
【0027】
嵌合筒部24は、装着筒部22とともに口部3の上端部を径方向で挟み込んでいる。なお、嵌合筒部24の下端は、装着筒部22の下端よりも上方に位置している。
【0028】
注出筒部25は、上方に向かうに従って径方向外側に向かうように傾斜している。注出筒部25の前端部は、注出筒部25の後端部よりも上方に位置している。そのため、注出筒部25の上端縁は、前側から後側に向かうに従って漸次下側に向かうように傾斜している。なお、注出筒部25の後端の上端縁は、取付筒部23の上端縁よりも上方に位置している。
【0029】
蓋体13は、平面視で円形の頂壁部31と、頂壁部31の外周縁から下方に向けて延在する円筒状の周筒部32と、周筒部32よりも径方向内側において頂壁部31から下方に向けて延在する円筒状の内筒部33と、を有する。頂壁部31、周筒部32、および内筒部33は、キャップ軸Oと同軸に形成されている。
【0030】
頂壁部31のうち、キャップ軸Oよりも前側の部分に、頂壁部31を上下方向に貫通する平面視で円形の挿入孔31Aが形成されている。挿入孔31Aには、後述する抜栓体16の脚筒部52が挿入されている。以下、挿入孔31Aの中心軸を抜栓軸O’と称し、抜栓軸O’回りに周回する方向を抜栓周方向と称し、抜栓軸O’に交差する方向を抜栓径方向と称する。
【0031】
頂壁部31の上面において、挿入孔31Aの周囲には、後述する抜栓体16のヘッド部51が収容される凹部31Bが形成されている。凹部31Bは、
図2に示すように、抜栓体の外形に沿った形状に形成され、キャップ軸Oに近い後端側が抜栓軸O’を中心として半円形に形成され、前端側が直線状に延在している。
【0032】
頂壁部31は、凹部31Bの縁部から抜栓径方向内側に向けて延在する平板部35と、平板部35の内周縁から下方に向けて延在する円筒状の囲繞筒部36と、を有する。囲繞筒部36は、抜栓軸O’と同軸に形成されている。囲繞筒部36は、後述する抜栓体16の脚筒部52を外側から囲んでいる。
【0033】
周筒部32の下端部の内周面には、径方向外側に向けて突出し、取付筒部23の第1取付突部23Aに対して下方から係止する第2取付突部32Aが形成されている。また、周筒部32の下端部のうち、前端部には、前方に向けて突出する鍔部34が形成されている。鍔部34には、上下方向に貫通する貫通孔34Bが形成され、貫通孔34Bには後述する開封補助部材17の取付部19が挿通されている。
【0034】
周筒部32の後端部の下端は、ヒンジ12を介して装着筒部22の上端に連結されている。これにより、周筒部32の前端部が他の部分と比較して径方向に弾性変形しやすくなり、蓋体13をキャップ本体11に対してヒンジ12回りに回動させる際に、周筒部32の前端部において第2取付突部32Aと第1取付突部23Aとの係止状態が解除されやすくなっている。
【0035】
内筒部33は、注出筒部25よりも径方向内側に配設されており、内筒部33の下端部は、注出筒部25の内周面に当接している。内筒部33のうち、前端部は、平板部35の前端部に連なって形成されている。
【0036】
閉塞体15は、注出口11Aと同様、平面視で前後方向に長い長円形をなす閉塞板部41と、閉塞板部41の前端部から上方に向けて突出する支柱部42と、を有する。閉塞板部41は、弱化部14を介してキャップ本体11の天板部21と連結されている。弱化部14の厚さは、閉塞板部41および天板部21の板厚に比べて十分に薄く形成されている。また、支柱部42は、抜栓軸O’と同軸に形成され、抜栓体16と連結されている。
【0037】
支柱部42は、上方に向けて延在する円筒状の外筒部53と、外筒部53の内側において上方に向けて延在する円柱状の軸部54と、を有する。外筒部53および軸部54は、抜栓軸O’と同軸に形成されている。また、外筒部53の外周面において、外筒部53と閉塞板部41とが接する角部には、断面三角形状のリブ44が形成されている。
【0038】
外筒部53の内周面には、抜栓径方向外側に向けて凹む閉塞体係止凹部53Aが上下方向に間隔をあけて2つ形成されている。閉塞体係止凹部53Aは、上端縁から下方に向かうに従って漸次抜栓径方向外側に向かうように傾斜する第1傾斜面と、第1傾斜面の下端に連なり、下方に向かうに従って漸次抜栓径方向内側に向かうように傾斜する第2傾斜面と、を有する。ここで、抜栓軸O’と第1傾斜面とのなす角度は、抜栓軸O’と第2傾斜面とのなす角度よりも大きい。外筒部53の上端縁は、囲繞筒部36の下端縁と当接している。
【0039】
軸部54の上端部は、軸部54の下端部よりも小径に形成されている。また、軸部54の上端は、外筒部53の上端よりも上方に突出している。
【0040】
抜栓体16は、板状のヘッド部51と、ヘッド部51の下面から下方に向けて延在する円筒状の脚筒部52と、を有する。ヘッド部51および脚筒部52は、抜栓軸O’と同軸に形成されている。抜栓体16は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)やポリアセタール(POM)、ポリプロピレン(PP)など、キャップ本体11、蓋体13および閉塞体15よりも硬質の材料で形成されていてもよい。ただし、抜栓体16の構成材料は、特に限定されず、上記以外の樹脂材料であってもよい。蓋体13と抜栓体16とは、互いに別体とされている。
【0041】
ヘッド部51は、
図2に示すように、頂壁部31の凹部31Bに対応した形状に形成され、キャップ軸Oに近い後端側が抜栓軸O’を中心として半円形に形成され、鍔部34に近い前端側が直線状に延在している。また、ヘッド部51は、
図1に示すように、蓋体13の平板部35の上面に配置されている。本実施形態の場合、ヘッド部51の下面と平板部35の上面とは接触しているが、この構成に代えて、ヘッド部51の下面と平板部35の上面とは接触しておらず、ヘッド部51と平板部35との間には、隙間が設けられていてもよい。
【0042】
脚筒部52は、閉塞体15の外筒部53と軸部54との間に嵌装されており、外筒部53と軸部54とによって抜栓径方向で挟み込まれている。脚筒部52の外周面には、抜栓径方向外側に向けて突出し、2つの閉塞体係止凹部53Aとそれぞれ係止される閉塞体係止突部52Aが上下方向に間隔をあけて2つ形成されている。閉塞体係止突部52Aは、閉塞体係止凹部53Aに対して下方から係止する。
【0043】
閉塞体係止突部52Aは、閉塞体係止凹部53Aと同様に、上端縁から下方に向かうに従って漸次抜栓径方向外側に向かうように傾斜する第1傾斜面と、第1傾斜面の下端に連なり、下方に向かうに従って漸次抜栓径方向内側に向かうように傾斜する第2傾斜面と、を有する。ここで、抜栓軸O’と第1傾斜面とのなす角度は、抜栓軸O’と第2傾斜面とのなす角度よりも大きい。また、脚筒部52の上端部の内径は、脚筒部52の下端部の内径よりも小径とされている。
【0044】
また、抜栓体16の脚筒部52と、閉塞体15の外筒部53および軸部54と、の間の抜け強度は、弱化部14の破断強度よりも大きい。これにより、蓋体13をキャップ本体11に対してヒンジ12回りに回動させたときに、弱化部14が破断する前に抜栓体16の脚筒部52が閉塞体15の外筒部53と軸部54との間から抜け出てしまうことが抑制される。
【0045】
抜栓体16は、蓋体13をキャップ本体11に装着させた状態で挿入孔31Aに挿入されて打栓機(図示略)などを用いて脚筒部52を外筒部53と軸部54との間に打ち込むことにより、蓋体13に装着される。また、ヒンジキャップ1は、打栓機(図示略)などを用いて容器本体2の口部3に装着される。
【0046】
蓋体13においてキャップ軸Oを径方向に挟んでヒンジ12の反対側に位置する前端部には、開封時の把持に用いる開封補助部材17が連結されている。開封補助部材17は、蓋体13の外周に沿って環状に設けられた環状部18と、環状部18の前端部から下方に向けて延在する取付部19と、を有する。開封補助部材17は、キャップ本体11、蓋体13および閉塞体15と同様の樹脂材料、または、抜栓体16と同様の樹脂材料から構成されていてもよい。ただし、開封補助部材の構成材料は、特に限定されないが、弾性変形しやすい材料であることが望ましい。本実施形態において、開封補助部材は、抜栓体16と一体に形成されている。
【0047】
図2に示すように、環状部18は、キャップ軸Oを中心として蓋体13の頂壁部31を囲んで設けられている。また、
図1に示すように、蓋体13の周筒部32と頂壁部31との角部には、径方向内側に窪む凹部13Bが設けられている。環状部18は、凹部13B内に配置されている。これにより、環状部18の外周面は、周筒部32の外周面と略同一面上に配置され、環状部18の上面は、頂壁部31の上面と略同一面上に配置され、環状部18が蓋体13の表面よりも外側に突出しない構成となっている。また、
図3に示すように、環状部18は、前端部側の高さh1が後端部側の高さh2よりも小さく形成されている。
【0048】
取付部19は、環状部18の前端部から周筒部32に沿って下方に向けて延在して設けられている。
図2に示すように、平面視において、周方向に沿った取付部19の幅は、鍔部34に設けられた貫通孔34Bの幅よりも小さい。また、
図1に示すように、取付部19の上端から下端までの寸法は、頂壁部31の上面から鍔部34の下面までの寸法よりも長い。したがって、取付部19は、鍔部34に設けられた貫通孔34Bを貫通し、先端が鍔部34の下方に向けて突出する。取付部19のうち、鍔部34の下方に向けて突出した部分には、径方向外側に向けて突出する嵌合凸部19Aが形成されている。開封補助部材17は、嵌合凸部19Aが貫通孔34Bに下方から嵌合することにより、鍔部34に連結されている。このようにして、開封補助部材17は、蓋体13の前端部回りに上方に向けて回動可能に設けられている。
【0049】
また、開封補助部材17は、抜栓体16のヘッド部51に薄肉部20を介して連結されている。
図2に示すように、本実施形態においては、3つの薄肉部20が周方向に沿って互いに間隔をおいて形成されている。なお、薄肉部20の数や配置は特に限定されない。開封補助部材17は、開封時に各薄肉部20が破断されることによって、蓋体13の前端部回りに上方に向けて回動可能とされている。
【0050】
以下、上記構成のヒンジキャップ1の使用方法および作用について説明する。
製品輸送時や製品流通時等の未開封時においては、
図1に示すように、注出口11Aの開口縁部に弱化部14を介して連結された閉塞体15が注出口11Aを閉塞した状態となっている。これにより、容器本体2の内部と外部との間を高い密閉性で密封することができる。そのため、外部への内容物の漏出を抑制することができるとともに、外部から容器本体2内に外気、水分等が侵入することを抑制することができる。
【0051】
容器を開封する際には、使用者は、開封補助部材17の後端側を把持して前端部回りに回動させる。このとき、抜栓体16は、脚筒部52が閉塞体15の外筒部53と軸部54とに挟み込まれた状態で蓋体13に固定されている。したがって、抜栓体16の上方への移動が規制されたままで開封補助部材17が蓋体13から上昇する方向に移動しようとするため、薄肉部20に力が加わって薄肉部20が破断され、開封補助部材17が抜栓体16から分離される。これにより、
図3に示すように、開封補助部材17を蓋体13の前端部回りに上方に向けて回動させることができる。
【0052】
次に、開封補助部材17を蓋体13に対して上方に向けて回動させた状態のまま、開封補助部材17をさらに上方に引き上げ、蓋体13をキャップ本体11に対してヒンジ12回りに回動させる。このとき、蓋体13に対する抜栓体16の移動が規制されているため、抜栓体16は、蓋体13に伴ってキャップ本体11に対してヒンジ12回りに回動しようとする。また、閉塞体15の外筒部53の閉塞体係止凹部53Aに対して抜栓体16の脚筒部52の閉塞体係止突部52Aが下方から係止しているため、抜栓体16のヒンジ12回りの回動に伴って、閉塞体15にも上方に向かう力が作用する。
【0053】
この上方に向かう力によって弱化部14が破断され、閉塞体15がキャップ本体11の天板部21から分離し、注出口11Aが開放される。このとき、弱化部14は、前端部側から後端部側に向けて順に破断される。ここで、閉塞体15とキャップ本体11の天板部21とを連結する弱化部14の破断強度が、抜栓体16の脚筒部52と閉塞体15の外筒部53および軸部54との間の抜け強度よりも小さいため、蓋体13をキャップ本体11に対してヒンジ12回りに回動させた際に、弱化部14が破断する前に抜栓体16の脚筒部52が閉塞体15の外筒部53と軸部54との間から抜け出ることが回避される。
【0054】
ここで、キャップ本体11の天板部21から分離した閉塞体15は、抜栓体16によって蓋体13に保持される。換言すると、閉塞体15は、抜栓体16を介して蓋体13に連結された形態で、キャップ本体11から蓋体13に移行する。
【0055】
その後、容器本体2を傾けるなどして、容器本体2内の内容物を注出口11Aから適宜注出する。内容物を注出した後、蓋体13をヒンジ12回りに回動させて注出口11Aを閉じることによって、蓋体13に移行した閉塞体15によって注出口11Aを再度閉塞することができる。
【0056】
このようにして、本実施形態のヒンジキャップ1によれば、容器本体2内を適切に密閉した状態で容器本体2の保管等を行うことができるとともに、蓋体13の頂壁部31、内筒部33、および閉塞体15等で囲まれた空間内に内容物が侵入することが抑えられ、汚れを防止することができる。
【0057】
上述したように、開封操作に伴って閉塞体が蓋体に移行する形態のヒンジキャップの場合、容器を一旦開封した後は弱化部が既に破断され、閉塞体が蓋体に移行しているため、蓋体を開く動作によって注出口が開放され、内容物を容易に注出することができる。これに対して、新品の容器を開封する際には、弱化部を破断させるだけの力が必要となる。このとき、使用者は蓋体の外側に僅かに突出した鍔部に指を引っ掛けるなどして力を加えなければならず、例えば力が弱い高齢者等の使用者にとっては開封しにくい、という課題がある。
【0058】
この課題に対して、本実施形態のヒンジキャップ1においては、開封時に開封補助部材17を蓋体13の前端部回りに上方に向けて回動させ、開封補助部材17を把持して上方に引き上げることにより、蓋体13をキャップ本体11に対してヒンジ12回りに回動させることができる。したがって、本実施形態のヒンジキャップ1においては、指先に大きな力を必要とする従来のヒンジキャップと異なり、腕全体の力を使って開封補助部材17を引き上げ、弱化部14を破断して開封することができる。このように、本実施形態のヒンジキャップ1によれば、従来に比べて開封時の操作性を高めることができる。
【0059】
なお、本実施形態のヒンジキャップ1においては、開封時にのみ開封補助部材17を用い、開封後は開封補助部材17を
図1に示す元の位置に戻した後、鍔部34を用いて蓋体13を開くようにしてもよい。または、開封時のみならず、開封後にも開封補助部材17を用いて蓋体を開くようにしてもよい。後者の場合、開封後の通常使用時において、鍔部34を用いて蓋体13を開くことが困難な使用者にとっても、蓋体13が開けやすいという効果が得られる。
【0060】
また、本実施形態のヒンジキャップ1においては、開封補助部材17が蓋体13の周筒部32から前方に突出する鍔部34に連結されているため、開封補助部材17に加えた力が蓋体13を回動させる力により有効に変換され、弱化部14を破断させて開封することができる。
【0061】
また、本実施形態のヒンジキャップ1においては、開封補助部材17および抜栓体16と蓋体13とが互いに別体とされ、開封補助部材17の嵌合凸部19Aが鍔部34に嵌合される構成を有するため、開封補助部材17および抜栓体16と蓋体13とを互いに別体の部材として作製し、これらを組み合わせることで、本実施形態のヒンジキャップ1を構成することができる。
【0062】
また、本実施形態のヒンジキャップ1においては、開封補助部材17が環状に設けられているため、使用者が開封補助部材17を上方に向けて回動させた際に指を引っ掛けやすく、開封補助部材17を把持しやすい。
【0063】
また、本実施形態のヒンジキャップ1においては、薄肉部20が破断されることにより開封補助部材17が前端部回りに上方に向けて回動可能とされているため、薄肉部20が破断される前の状態では開封補助部材17の上方への回動が薄肉部20によって規制されている。そのため、未開封時に開封補助部材17が意図せずに上方に回動することが抑えられ、容器の保管時や流通時に支障を来すことがない。
【0064】
また、本実施形態の場合、抜栓体16の脚筒部52が外筒部53と軸部54とによって挟み込まれており、脚筒部52の抜栓径方向での弾性変形が抑制されているため、蓋体13をキャップ本体11に対してヒンジ12回りに回動させる際に抜栓体16が閉塞体15から抜け出すことをより確実に防止できる。さらに、抜栓体16のヘッド部51が蓋体13の平板部35によって下方から支持されているため、蓋体13をキャップ本体11に対してヒンジ12回りに回動させる際に蓋体13を引き上げる力をヘッド部51に円滑に伝達させることができる。これにより、弱化部14をより確実に破断させることができる。
【0065】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について、
図4、
図5および
図6を用いて説明する。
第2実施形態のヒンジキャップの基本構成は第1実施形態と同様であり、開封補助部材の構成が第1実施形態と異なっている。そのため、本実施形態では、基本構成の説明は省略する。
図4は、第2実施形態のヒンジキャップ5を示す図であって、開封前のヒンジキャップ5の縦断面図である。
図5は、開封前のヒンジキャップ5の平面図である。
図6は、開封後のヒンジキャップ5の縦断面図である。なお、
図4は、
図5のIV-IV線に沿う縦断面図である。
図4、
図5および
図6において、第1実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0066】
本実施形態のヒンジキャップ5において、抜栓体61は、
図5に示すように、ヘッド部62が平面視において円形に形成されている。また、
図4に示すように、頂壁部31に形成された凹部31B内において、平板部35の上面には支持部37が形成されている。支持部37は、上面にヘッド部62が載置される載置部38と、載置部38の前方に載置部38と一体に形成された連結部39と、を有する。載置部38は、連結部39よりも薄肉に形成されている。この構成により、頂壁部31の上面と、ヘッド部62の上面と、連結部39の上面とは、略同一平面上に位置している。
【0067】
開封補助部材64は、蓋体13の外周に沿って環状に設けられた環状部65と、環状部65の前端部から下方に向けて延在する取付部66と、を有する。第1実施形態では、開封補助部材17は、抜栓体16と一体に形成されていたのに対し、本実施形態では、開封補助部材64は、蓋体13と一体に形成されている。
【0068】
取付部66は、環状部65の前端部から周筒部32に沿って下方に向けて延在して設けられている。本実施形態の場合、開封補助部材64は、取付部66の下端が鍔部34の前端に補助ヒンジ部68を介して鍔部34に連結されている。このようにして、開封補助部材64は、補助ヒンジ部68回り、すなわち蓋体13の前端部回りに上方に向けて回動可能に設けられている。
【0069】
また、開封補助部材64は、蓋体13の連結部39に薄肉部69を介して連結されている。
図5に示すように、本実施形態においては、3つの薄肉部69が周方向に沿って互いに間隔をおいて形成されている。なお、薄肉部69の数や配置は特に限定されない。開封補助部材64は、開封時に各薄肉部69が破断されることによって、蓋体13の前端部回りに上方に向けて回動可能とされている。
【0070】
本実施形態のヒンジキャップ5の使用方法および作用は、第1実施形態と同様である。
すなわち、容器を開封する際には、使用者は、開封補助部材64の後端側を把持して前端部回りに回動させる。このとき、抜栓体61の上方への移動が規制されたままで開封補助部材64のみが蓋体13から上昇する方向に移動しようとするため、薄肉部69に力が加わって薄肉部69が破断され、開封補助部材64の後端側が蓋体13から上方に離れる方向に移動可能となる。これにより、
図6に示すように、開封補助部材64を蓋体13の前端部回りに上方に向けて回動させることができる。以降の操作は、第1実施形態と同様である。
【0071】
本実施形態のヒンジキャップ5においても、従来に比べて開封時の操作性を高めることができる、開封補助部材64が環状に設けられていることで開封補助部材64を把持しやすい、未開封時に開封補助部材64が意図せずに上方に回動することが抑えられる、等の第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0072】
また、本実施形態のヒンジキャップ5においては、開封補助部材64と蓋体13とが互いに一体に形成されているため、開封補助部材64と蓋体13とを互いに一体の部材として作製することで本実施形態のヒンジキャップ5を構成することができる。また、開封補助部材64が補助ヒンジ部68を介して鍔部34に連結されているため、開封補助部材64が蓋体13の前端部回りに回動しやすい構成とすることができる。
【0073】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
例えば上記実施形態では、蓋体13が閉じた状態で抜栓体16,61が蓋体13に接触する構成であるが、この構成に代えて、蓋体13が閉じた状態では抜栓体16,61が蓋体13に接触しておらず、抜栓体16,61と蓋体13との間に隙間が設けられている構成であってもよい。
【0074】
この場合、開封操作を行うと、抜栓体16,61が蓋体13に接触するまでの間は抜栓体16,61が移動せずに蓋体13のみが回動し、抜栓体16,61が蓋体13に接触した後は、蓋体13とともに抜栓体16,61が回動して弱化部を破断させる。その結果、未開封時には抜栓体16,61の上面と蓋体13の上面とが同一面上に位置していた状態が、開封後には抜栓体16,61の上面が蓋体13の上面よりも下方に位置する状態となる。この構成によれば、使用者は、蓋体13に対して抜栓体16,61が凹んだ位置にあることを見れば、当該容器が開封済みであることを容易に認識することができる。
【0075】
また、上記実施形態では、抜栓体16,61が蓋体13とは別体に形成されていたが、この構成に代えて、抜栓体16,61は、蓋体13と一体に形成されていてもよく、蓋体13と閉塞体15とを一体に連結できる機能を有していればよい。また、上記実施形態では、開封補助部材17,64が抜栓体16,61または蓋体13に薄肉部20,69を介して連結されていたが、薄肉部20,69は必ずしも設けられていなくてもよく、開封補助部材17,64が蓋体13の前端部のみで連結されていてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、開封補助部材17,64が環状に形成されていたが、開封補助部材の形状は、必ずしも環状でなくてもよく、例えば円弧状等であってもよい。なお、開封補助部材は、指等を引っ掛けやすい形状であることが望ましい。
【0077】
その他、ヒンジキャップ1,5の注出口11Aの形状は、前後方向に長い長円状に限らず、正円状や多角形状など、他の形状であってもよい。キャップ本体11は、有頂筒状をなしており、容器本体2の口部3を径方向外側から囲む装着筒部22を有しているが、容器本体2の口部3に装着されれば、有頂筒状に限られず、板状など、他の形状を有してもよい。また、支柱部42は、キャップ軸Oから前方にずらした位置に形成されているが、キャップ軸Oと同軸に形成するなど、他の位置に形成されてもよい。ただし、蓋体13をキャップ本体11に対してヒンジ12回りに回動させたときに弱化部14が前端部から順に破断されるため、支柱部42は、キャップ軸Oから前方にずらした位置に形成されることが好ましい。
【0078】
また、ヒンジキャップ1,5を構成する各構成要素の数、形状、配置、構成材料等の具体的な記載については、上記実施形態に限定されることなく、適宜変更が可能である。また、ヒンジキャップ1,5や容器本体2の形状は、円筒状に限らず、楕円状や多角形筒状など、他の形状を有していてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1,5 ヒンジキャップ
2 容器本体
3 口部
11 キャップ本体
11A 注出口
12 ヒンジ
13 蓋体
14 弱化部
15 閉塞体
16,61 抜栓体
17,64 開封補助部材
19A 嵌合凸部
20,69 薄肉部
31 頂壁部
32 周筒部
34 鍔部
68 補助ヒンジ部