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特許7412316エレベーター呼び登録方法及びエレベーターシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】エレベーター呼び登録方法及びエレベーターシステム
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/14 20060101AFI20240104BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20240104BHJP
   B66B 5/00 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
B66B1/14 Z
B66B1/14 L
B66B3/00 K
B66B5/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020182160
(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公開番号】P2022072615
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 晶夫
(72)【発明者】
【氏名】井元 涼大郎
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/183669(WO,A1)
【文献】特開2014-118263(JP,A)
【文献】特開平08-245098(JP,A)
【文献】特開2010-030695(JP,A)
【文献】特開2018-083691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00- 1/52
B66B 3/00- 3/02
B66B 5/00- 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーター利用者が所持する携帯端末で生成したかご呼び指令をかご呼び登録装置が受信したとき、受信したかご呼び指令の送信元を認証して受け付けるかご呼び受信処理と、
前記かご呼び受信処理が行われたとき、前記かご呼び登録装置からエレベーターを遠隔監視する遠隔監視装置に、受信したかご呼び指令を送信して、エレベーターのかご呼びを登録するかご呼び登録処理と、
前記遠隔監視装置が、前記かご呼び指令を登録したとき、前記遠隔監視装置が遠隔管理しているエレベーターの制御装置に対して、前記かご呼び指令で指示された階床に乗りかごを停止させる指示を行うかご呼び実行処理と、
前記遠隔監視装置が、前記かご呼び実行処理で指示を行ったエレベーターから故障発報情報を受信したとき、前記かご呼び登録処理を行った履歴から、乗りかご内の利用者の閉じ込めの可能性を検知する閉じ込め検知処理と、を含む
エレベーター呼び登録方法。
【請求項2】
前記遠隔監視装置は、前記かご呼び受信処理で取得した送信元の情報に基づいて、閉じ込めの可能性がある乗りかご内の利用者の種別を判別して、救出の優先度を判定する
請求項に記載のエレベーター呼び登録方法。
【請求項3】
前記遠隔監視装置は、前記かご呼び受信処理で取得した送信元の情報に基づいて、閉じ込めの可能性がある乗りかご内の利用者の前記携帯端末に、所定の通信回線を経由して、乗りかごに閉じ込められているか否かを問い合わせる案内情報を送信する
請求項に記載のエレベーター呼び登録方法。
【請求項4】
前記検知処理は、現在のかご位置が目的階に到達しているかどうかを基に乗りかご内の利用者の閉じ込めの可能性を検知する
請求項に記載のエレベーター呼び登録方法。
【請求項5】
エレベーター利用者が所持する携帯端末での、所定のエレベーターのかご呼びを指示する操作に基づいて生成したかご呼び指令を受信し、受信した受信したかご呼び指令の送信元を認証するかご呼び登録装置と、
前記かご呼び登録装置で認証が完了したとき、受信したかご呼び指令の転送を受けて、前記所定のエレベーターのかご呼びを登録する遠隔監視装置と、
前記遠隔監視装置で前記かご呼び指令が登録されたとき、前記かご呼び指令で指示された階床に乗りかごを停止させる指示を行う制御装置と、を備えたエレベーターシステムであり、
前記遠隔監視装置は、かごを停止させる指示を行ったエレベーターから故障発報情報を受信したとき、前記かご呼びの登録を行った履歴から、乗りかご内の利用者の閉じ込めの可能性を検知するようにした
エレベーターシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーター呼び登録方法及びエレベーターシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベーターは、利用者が各階の乗り場に設置されたかご呼びボタンを押すことで、乗りかごが該当する階床に停止してドアが開き、乗車できるようになっている。
【0003】
これに対し、かご呼びを、利用者が所持するスマートフォンなどの携帯端末から行うようにして、利用者の利便性や乗り場での待ち時間の短縮を図るようにした技術が各種開発されている。
例えば、特許文献1には、ビル内の各階のエレベーター乗り場に、エレベーター利用者の携帯端末と無線通信を行う受信部を設置し、エレベーター利用者が携帯端末により受信部を経由してビル内のエレベーターの管理装置と無線通信を行うことで、利用者がいる階床に乗りかごを割り当てる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-120976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるように、利用者が所持する携帯端末を使って、エレベーターのかご呼びに相当する操作を行うことは従来から知られている。しかしながら、従来提案されている技術では、携帯端末からの指示を受信したビル内のエレベーターの管理装置が乗りかごの停止階を単に割り当ているだけである。
言い換えると、乗り場に設置されたかご呼びボタンを押す代わりに、携帯端末で操作できるようにしただけであり、必ずしも高度な制御が行われているとは言えなかった。
【0006】
例えば、エレベーターの運行を管理する上では、乗りかごの走行中に何らかのトラブルが発生して、乗客が乗りかご内に閉じ込められるといった故障が発生することがある。このような場合には、乗客が乗りかごから降りることができるように、作業員や管制員が支援を行う必要がある。
携帯端末を使ってかご呼びを行った乗客の乗りかご内のトラブルに対して、エレベーター制御システム側が何らかの支援を行うことが好ましいが、現状では、具体的な支援は行われていない。
【0007】
本発明の目的は、利用者からのかご呼びを高度化して、エレベーター制御システム側が状況を的確に把握できるエレベーター呼び登録方法及びエレベーターシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、エレベーター利用者が所持する携帯端末で生成したかご呼び指令をかご呼び登録装置が受信したとき、受信したかご呼び指令の送信元を確認して、受け付けるかご呼び受信処理と、かご呼び受信処理が行われたとき、かご呼び登録装置からエレベーターを遠隔監視する遠隔監視装置に、受信したかご呼び指令を送信して、所定のエレベーターのかご呼びを登録するかご呼び登録処理と、遠隔監視装置が、かご呼び指令を登録したとき、遠隔監視装置が遠隔管理している所定のエレベーターの制御装置に対して、かご呼び指令で指示された階床に乗りかごを停止させる指示を行うかご呼び実行処理と、遠隔監視装置が、かご呼び実行処理で指示を行ったエレベーターから故障発報情報を受信したとき、かご呼び登録処理を行った履歴から、乗りかご内の利用者の閉じ込めの可能性を検知する閉じ込め検知処理と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、かご呼び登録が行われた履歴などに基づいて、遠隔監視装置が利用者の人数や種別などを判断することができる。したがって、エレベーターに何らかのトラブルが発生したときには、そのかご呼び登録が行われた履歴を使って、救助などの対処を迅速かつ的確に行うことが可能になる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態例によるシステム例を示す構成図である。
図2】本発明の一実施の形態例による呼び登録部のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施の形態例による呼び登録装置の記憶部が記憶したテーブルの例を示すデータ構成図である。
図4】本発明の一実施の形態例による遠隔監視装置の記憶部が記憶したテーブルの例を示すデータ構成図である。
図5】本発明の一実施の形態例によるかご呼びの処理及びエレベーター救助処理の流れの例を示すフローチャートである。
図6】本発明の一実施の形態例による閉じ込め発報の受信処理例を示す図である。
図7】本発明の一実施の形態例による閉じ込めの可能性の判断処理例を示す図である。
図8】本発明の一実施の形態例による乗員情報の取得処理例を示す図である。
図9】本発明の一実施の形態例による管制センタの表示画面の例を示す図である。
図10】本発明の一実施の形態例による携帯端末の表示画面の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態例(以下、「本例」と称する)のエレベーターシステムを、添付図面を参照して説明する。
【0012】
[システム構成]
図1は、本例のエレベーターシステムの構成を示す。
本例のエレベーターシステムは、呼び登録装置3、遠隔監視装置4、エレベーター6、及び管制センタ7を備える。
呼び登録装置3と遠隔監視装置4と管制センタ7は、エレベーター6の管理会社が運営するものであり、複数のビルのエレベーター6についての処理(登録処理、管理処理など)を統括して行う。但し、図1では説明を簡単にするために、1つのビルのエレベーター6のみを示す。
【0013】
呼び登録装置3は、処理部301と、記憶部302と、通信部303とを備える。
通信部303は、一般回線網2を介して携帯端末1と接続され、携帯端末1からエレベーター呼び指令を受信する。一般回線網2としては、例えば無線電話回線などの公衆回線が使用される。
【0014】
携帯端末1は、エレベーター6の利用者が所持する携帯端末であり、例えばインターネットへの接続機能や通話機能を備えたスマートフォンとして構成される。
携帯端末1は、利用者が操作を行う操作部101と、操作部101での操作に基づいた信号を送信する通信部102と、端末の現在位置を測位する測位部103と、表示部110とを備える。携帯端末1がスマートフォンの場合、操作部101は、表示部110と一体化されたタッチパネルで構成される。測位部103は、GPS(Global Positioning System)などを利用して携帯端末1の現在位置を測位するものである。
【0015】
携帯端末1には、利用者が操作部101を操作することで、エレベーターの呼び登録を行うアプリケーションが実装されている。すなわち、携帯端末1は、操作部101の操作に基づいて、呼び出すエレベーターが設置されたビル、号機、呼び出し時間、目的階を指定し、指定された内容のかご呼び指令を生成する。なお、乗車階は、1階などの予め登録された階とするが、操作部101での操作により変更してもよい。
【0016】
また、携帯端末1は、生成したかご呼び指令を通信部102から一般回線網2を介して呼び登録装置3へ送信する機能を持つ。このとき、携帯端末1は、同時に携帯端末1が持つユニークな識別番号あるいはユーザーアカウント情報を同時に呼び登録装置3へ送信する。さらに、携帯端末1は、送信した結果として、エレベーター呼び出しの成功可否やその他のインタフェース情報を受信することもできる。また、携帯端末1は、測位部103が測位した位置情報を通信部102から送信することも可能である。
【0017】
エレベーター6の利用者が所持する携帯端末1は、呼び登録装置3に予め登録された端末であり、呼び登録装置3の記憶部302には、登録された携帯端末1が持つユニークな識別番号あるいはユーザーアカウント情報が顧客情報として記憶される。また、記憶部302には、かご呼び指令の履歴などが記憶される。この記憶部302に記憶される情報の詳細については後述する。
【0018】
呼び登録装置3の処理部301は、通信部303が携帯端末1からエレベーター呼び指令を受信したとき、記憶部302の記憶情報に基づいて、登録された端末か否かを判断する認証処理を行う。処理部301は、その認証処理により、登録された携帯端末1からのエレベーター呼び指令であるとき、受信したかご呼び指令を受け付ける処理を行う(かご呼び受信処理)。そして、処理部301は、携帯端末1からのかご呼び指令を、遠隔監視装置4に転送する。
【0019】
なお、携帯端末1から呼び登録装置3に送信するエレベーターのかご呼び指令には、携帯端末1の識別コードの他に、利用者が乗車する階、降車する階の情報が含まれる。また、かご呼び指令には、携帯端末1の現在位置の情報を含めるようにしてもよい。
なお、エレベーター呼び指令に携帯端末1の現在位置の情報が含まれる場合には、その現在位置の情報が、エレベーター6が設置されたビルの近傍である場合のときだけ、処理部301は、かご呼び指令を受け付ける処理を行う。
【0020】
遠隔監視装置4は、制御部401と、記憶部402と、通信部403とを備える。
制御部401は、エレベーター6の運行状態を遠隔で監視する処理を行う。また、制御部401は、呼び登録装置3からかご呼び指令が伝送(転送)されたとき、そのかご呼び指令に基づいたエレベーター6の停止階の登録情報を、通信部403を経由してエレベーター6側の通信部601に送信する。
また、制御部401は、監視中のエレベーター6の故障を検知したとき、故障した乗りかご内に乗客の閉じ込めが発生したか否かを判断して、その判断に基づいた対処を行う。この閉じ込めが発生したか否かの判断と、その対処の詳細は後述する。
【0021】
記憶部402には、遠隔監視装置4が監視するエレベーター6についての情報や、エレベーター6の運行状態や故障などの履歴が記憶される。この記憶部402に記憶される情報の詳細については後述する。
通信部403は、閉域回線網5を介してエレベーター6の通信部601と通信を行う。
【0022】
エレベーター6は、通信部601と、制御部602と、昇降機駆動部603とを備える。通信部601は、エレベーター用の専用のネットワークである閉域回線網5を経由して、遠隔監視装置4側の通信部403と通信を行う。
【0023】
制御部602は、昇降機駆動部603によるエレベーター6の乗りかご(不図示)の走行(昇降)や扉の開閉などを制御する。なお、エレベーター6の通信部601には、ユニークな識別番号が付与されており、遠隔監視装置4と通信することで、遠隔監視装置4側では、通信部601からの情報を受信したとき、その受信情報の送信元についての物件情報や住所を一意に特定することが可能である。
【0024】
制御部602による乗りかごの走行制御は、乗りかご内の停止階登録ボタンの操作や、各階の乗り場のかご呼び登録ボタンの操作に基づいて行われる。また、通信部601が遠隔監視装置4から停止階の登録情報を受信したとき、制御部602は、その停止階の登録情報に基づいた走行制御を行う。
また、制御部602は、エレベーター6の稼働状態や故障の発生を監視して、故障の発生を検知したとき、通信部601を介して遠隔監視装置4に故障情報を送信する。
【0025】
管制センタ7は、処理部701と、表示部710とを備える。
処理部701は、呼び登録装置3の記憶部302の記憶情報と、遠隔監視装置4の記憶部402の記憶情報をリアルタイムに取得して、それらの情報を統合してエレベーター6の運用状況や故障時の対応を表示部710に表示する。
【0026】
このとき、処理部701は、各記憶部302、402の記憶情報から、エレベーター6の故障時に、利用者(乗客)の閉じ込めが発生しているか等の情報を取得し、故障時の詳細を表示部710に表示する。なお、閉じ込め故障の発生時には、処理部701は、自動的にかご内の乗員情報を管制員に伝達する。
【0027】
[各装置のハードウェア構成]
呼び登録装置3や遠隔監視装置4は、例えばコンピュータにより構成することができる。
図2は、呼び登録装置3をコンピュータで構成した場合のハードウェア構成例を示す。
【0028】
図2に示す呼び登録装置(コンピュータ)3は、バスにそれぞれ接続されたCPU(Central Processing Unit:中央処理ユニット)3a、ROM(Read Only Memory)3b、及びRAM(Random Access Memory)3c、不揮発性ストレージ3d、ネットワークインタフェース3e及び入出力部3fを備える。
不揮発性ストレージ3dは、呼び登録装置3の記憶部302に相当する。また、ネットワークインタフェース3eは、呼び登録装置3の通信部303に相当する。
【0029】
CPU3aは、呼び登録装置3が行う機能を実現するソフトウェアのプログラムコードをROM3bから読み出して実行する演算処理部である。
RAM3cには、演算処理の途中に発生した変数やパラメータ等が一時的に書き込まれる。
【0030】
不揮発性ストレージ3dは、例えばHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などの大容量情報記憶媒体が用いられ、顧客情報や呼び出し履歴などが記憶される。
ネットワークインタフェース3eは、例えば、NIC(Network Interface Card)などが用いられ、一般回線網2へのデータ送信及び一般回線網2からのデータ受信が行われる。
入出力部3fは、呼び登録装置3、遠隔監視装置4、管制センタ7相互間でのデータのやり取りを行う。
【0031】
図2は、呼び登録装置3をコンピュータで構成した例を示すが、遠隔監視装置4についても同様にコンピュータで構成することができる。さらに、管制センタ7についても、同様のコンピュータで構成することができる。但し、管制センタ7の場合には、図2に示す構成に加えて、表示部710や、管制作業員が操作するキーボードなどの入力部が加わる。
【0032】
なお、呼び登録装置3や遠隔監視装置4を図2に示すコンピュータで構成するのは一例であり、コンピュータ以外のその他の演算処理装置で構成してもよい。例えば、呼び登録装置3が行う機能の一部または全部を、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアによって実現してもよい。また、呼び登録装置3と遠隔監視装置4は、1台のコンピュータで構成して、呼び登録装置3としての機能と、遠隔監視装置4としての機能を実行してもよい。
【0033】
[記憶情報の構成]
図3は、呼び登録装置3の記憶部302に記憶される情報の例を示す。
記憶部302には、顧客情報テーブルT11と、呼び出し登録ログテーブルT12と、エレベーター遠隔稼働詳細履歴テーブルT13が設けられる。
各テーブルT11~T13の詳細を説明すると、顧客情報テーブルT11には、本例のシステムが提供するエレベーター遠隔呼びサービスを利用する利用者についての情報が記憶される。
【0034】
すなわち、図3に示すように、顧客情報テーブルT11には、利用者ごとに割当てられたユニークな番号である利用者番号と、顧客情報と、性別と、年齢と、備考情報と、登録日が登録される。備考情報には、車椅子利用や閉所恐怖症などのエレベーターを利用する上で配慮が必要な情報が登録される。登録された利用者の性別と、年齢と、備考情報内の車椅子利用や閉所恐怖症などの情報は、顧客の種別の情報として利用される。顧客の種別の情報を利用する際の具体的な例については後述する。また、備考情報として、該当する利用者の利用履歴、利用頻度、呼び出した時間帯、通常利用する目的階といった情報を登録してもよい。
【0035】
呼び出し登録ログテーブルT12には、1台ごとのエレベーターについて、携帯端末1から呼び出された履歴が記憶される。
すなわち、図3に示すように、呼び出し登録ログテーブルT12には、呼び出し順に付与される番号と、呼出元番号(利用者番号)と、呼出先コード(対象のエレベーターの製造番号)と、呼出階(乗車階)と、目的階(降車階)と、呼出日時の情報が登録される。
【0036】
エレベーター遠隔稼働詳細履歴テーブルT13には、エレベーター製造番号ごとに、時系列順に遠隔呼び登録に関連するイベントが記憶される。すなわち、図3に示すように、エレベーター遠隔稼働詳細履歴テーブルT13には、イベントIDと、コード(エレベーター製造番号)と、イベントの詳細と、呼出番号と、発生日時とが登録される。
【0037】
図4は、遠隔監視装置4の記憶部402に記憶される情報の例を示す。
記憶部402には、エレベーター情報テーブルT21と、発報来歴テーブルT22と、運行状態テーブルT23が記憶される。
各テーブルT21~T33の詳細を説明すると、エレベーター情報テーブルT21には、エレベーター製造番号と、それに紐付いたエレベーターのスペック情報が登録される。すなわち、図4に示すように、エレベーター情報テーブルT21には、エレベーター製造番号に相当するコードと、そのエレベーター設置ビルの顧客番号と、機種番号と、号機と、最上階床の情報と、監視開始日の情報が登録される。
【0038】
発報来歴テーブルT22には、エレベーター製造番号をキーとして、監視開始日から受信された発報コードが記憶される。すなわち、図4に示すように、エレベーター製造番号に相当するコードと、発報コードと、受理日時とが登録される。
運行状態テーブルT23には、エレベーター製造番号をキーとして、遠隔監視装置4が取得したエレベーター6のエラーメッセージや運行状態が記憶される。すなわち、図4に示すように、運行状態テーブルT23には、エレベーター製造番号に相当するコードと、故障内容を示す故障コードと、故障内容の詳細を示すデータと、発生日時とが登録される。
【0039】
[かご呼びの処理とエレベーター救助処理の流れ]
図5は、本例のエレベーターシステムで実行される、かご呼びの処理及びエレベーター救助処理の流れの例を示すフローチャートである。
まず、利用者は、携帯端末1を通して、呼び出したいエレベーター、号機、呼び出し階と目的階を入力したのち、呼び登録装置3に対して、エレベーターを遠隔で呼び出すためのかご呼び指令を送信する(ステップS1)。
【0040】
このかご呼び指令を受信した呼び登録装置3は、予め登録された携帯端末1からのかご呼び指令であることを認証した上で、遠隔監視装置4を経由してエレベーター6にかご呼び指令を送り、エレベーター6の乗りかごを指示された階に停止させる。
これにより、かご呼びを指示した携帯端末1を所持した利用者がエレベーター6に搭乗することができる(ステップS2)。このとき、呼び登録装置3では、記憶部302が、エレベーター6が持つ識別番号と携帯端末1が持つ識別番号を紐づけて、呼び出し履歴と呼び出した利用者の情報を、呼び出し登録ログテーブルT12(図3)に記憶しておく。
【0041】
その後、予め設定した目的階へ到着する前に何らかの理由でエレベーター6の乗りかごが停止し、閉じ込め故障が発生したとする(ステップS3)。このとき、エレベーター6の制御部602は、遠隔監視装置4に対して閉じ込め発報を送信する(ステップS4)。
遠隔監視装置4が閉じ込め発報を受信した時、発報情報と記憶部402に記憶されている情報から、故障したエレベーター6が納入されている物件、故障状況、発生原因を収集し、管制センタ7へ展開する(ステップS5)。
【0042】
情報収取と同時に管制センタ7の処理部702は、該当するエレベーター6が携帯端末1からの遠隔での呼び登録機能によって呼び出されたか否かを、呼び登録装置3の記憶部302に問い合わせて確認する(ステップS6)。このステップS6で遠隔での呼び登録機能によって呼び出されていない場合は(ステップS6のNo)、通常の手順に従い閉じ込め救出の手順を実施する(ステップS14)。
【0043】
そして、ステップS6で遠隔での呼び登録機能によって呼び出されていた場合(ステップS6のYes)、呼び出した携帯端末1の数をカウントする(ステップS7)。そして、呼び出した携帯端末1の数だけ、つまりエレベーター6の利用者の数だけ、以下のステップS9~S11の処理を実施する(ステップS8)
【0044】
ステップS9:利用者がエレベーターを呼び出した階と目的階を調査する。
ステップS10:閉じ込めが発生した位置とステップS9の情報を照らし合わせて、目的階を過ぎた位置で閉じ込めが発生したか否かを判断する。このステップS10で、目的階を過ぎた位置ならば(ステップS10のYes)、その利用者は閉じ込めが発生する前に降りたと判断されるため、閉じ込め乗員の候補から除外する。ステップS10で、目的階を過ぎてなければ(ステップS10のNo)、閉じ込め乗員の候補に加える。
ステップS11:ステップS10で、目的階を過ぎてなければ、その利用者は乗りかご内に閉じ込められたと判断されるため、利用者の詳細な情報を収集する。ここで収集する情報としては、顧客情報テーブルT11(図3)に登録された利用者(顧客)についての情報であり、少なくとも利用者の年齢や車椅子利用などの救助に役立つ利用者の種別の情報が含まれる。
【0045】
このステップS9~S11の処理が呼び出した携帯端末1の数だけ繰り返されることで、乗りかご内に閉じ込められた乗員のリストの作成が完了する(ステップS12)。乗員リストは、遠隔監視装置4の記憶部402に記憶されている物件情報とエレベーター機種情報と統合して、管制センタ7に伝送し、表示部710での表示などで管制員に提供する(ステップS13)。
管制員は、表示部710に表示された情報を用いて、現地作業員に対して乗員の救助に必要な事前情報を提供する(ステップS14)。
【0046】
図6は、ステップS6で行われる判断処理の一例を示す。
図6の例では、呼び登録装置3の記憶部302のエレベーター遠隔稼働詳細履歴テーブルT13に、イベントID:B0008として、閉じ込め発報受理のイベントが記録されたとする。
【0047】
このとき、イベントID:B0008よりも前のイベントIDが判断され、目的階の着床がない遠隔呼出が判断される。具体的には、イベントID:B0001の遠隔呼出受信については、イベントID:B0001で目的階着床があるため除外され、イベントID:B0003の遠隔呼出受信が、まだ目的階に着床していないと判断される。
【0048】
図7は、ステップS10で閉じ込め位置が目的階を過ぎているか否かを判断する際の処理の一例を示す。
図7の例では、呼び登録装置3の記憶部302の呼び出し登録ログテーブルT12に、呼び出し番号No2について、呼び出し階が10階であり、目的階が20階の情報が登録されている。
【0049】
また、遠隔監視装置4の記憶部402の運行状態テーブルT23の情報には、故障の発生状態位置や日時の情報が登録され、乗りかごの現在位置(閉じ込め故障で停止した位置)が判断される。例えば、図7の例では、乗りかごの現在位置が20階よりも下である場合、管制センタ7の処理部701は、閉じ込めの可能性ありと判断する。
【0050】
図8は、ステップS13でエレベーター据付物件と、故障情報、エレベーターの乗りかごの乗員情報を統合する処理を示す。
具体的には、管制センタ7の処理部701は、呼び出し登録ログテーブルT12から、呼出階と目的階の情報を取得し、顧客情報テーブルT11から、閉じ込められている顧客(利用者)の年齢、性別などの詳細情報を取得する。さらに、管制センタ7の処理部701は、運行状態テーブルT23から故障状態や故障日時などの詳細を取得し、エレベーター情報テーブルT21から、故障した号機の機種情報や最上階床の情報を取得する。
【0051】
なお、図8示すようにエレベーター情報として、最上階床の情報があることで、管制センタ7は、現場の作業員への指示を的確に行うことができる。すなわち、通常、エレベーターの巻き上げ機やその制御装置は、最上階の近傍に設置されており、管制センタ7から指示する際に、どの階に向かえばよいかを作業員に的確に指示することが可能になる。
【0052】
[管制センタでの表示例]
図9は、エレベーターに閉じ込め故障が発生した際の、管制センタ7の表示部710の画面の例を示す。
図9(a)に示す表示部710の画面711は、閉じ込め発報状況確認用のアプリケーション画面である。この画面711の右上には、全国あるいは管制センタ管轄内で発生した閉じ込め発報総発生件数の表示712がなされる。また、表示712に隣接して、大規模災害等のまとまったエリアに対して風水害や地震といった災害が発生したケースにおいて、効率的に閉じ込め状況を把握できるように、エリア選択欄が設けられている。
【0053】
閉じ込め発報総発生件数の表示712の下には、閉じ込め故障が発生した物件の表示713、714が、1つの物件ごとに1行で表示される。この物件の表示713、714は、物件ごとに設定された物件番号、エレベーターの階層数と停止階、発生日時と経過時間、遠隔で呼び出されたかを示す表示エリアを有している。
【0054】
例えば、表示713の例では、遠隔で呼び出されたエレベーターが閉じ込め故障を発生した場合の例を示している。遠隔で呼び出された場合であるため、表示713の行の右端に、かご内の推定登場人数が表示されている。この人数は遠隔で呼び出された人数を表している。
【0055】
また、表示714の例では、遠隔で呼び出されていないエレベーターが閉じ込め故障を発生した場合の例を示している。遠隔で呼び出された記録がないため、表示714の行の右端には×ボタンが表示されている。
【0056】
管制員は、表示713または表示714を選んでクリックすることで、より詳細な情報を表示することが可能となる。
図9(b)の画面721は、表示713をクリックした場合の例を示している。表示712の詳細情報表示欄722では、閉じ込め故障が発生した際に送信される故障情報と、遠隔監視装置4が記憶している情報を基に、エレベーターの機種と推定搭乗人数が表示されている。
【0057】
閉じ込められた乗客の詳細情報表示欄723、724には、遠隔で呼び出した乗客の詳細情報が表示されている。この乗客の詳細情報の表示は、顧客情報テーブルT11(図3)に登録された顧客の種別の情報を使ったものである。図9の例の乗客の詳細情報表示欄723、724は、顧客の種別として、利用者の名前と年齢が記載されている例を示している。また、特記事項の欄には、顧客情報テーブルT11の備考情報に登録した、より詳細な顧客の種別の情報が表示される。例えば図9(b)の画面721では、「閉所恐怖症」と表示されている。「閉所恐怖症」との表示を確認した管制員は、該当する顧客を救出する際の優先度を他の顧客よりも高くするなどの判断が可能になる。
【0058】
このように、乗客の詳細情報表示欄723、724には、搭乗者の特徴が記載されているので、救出の優先度を決定する材料にすることができる。また、管制員が、乗りかご内との通話を行う際において、搭乗者のパニックを防ぐための情報として利用することが可能となる
【0059】
また、図9の例の乗客の詳細情報表示欄724では、特記事項として「車椅子利用」と記載されている場合の例を示している。このような表示を行うことで、車椅子を利用している場合、閉じ込め救出をする上で必要な道具や機材を素早く現地作業員に指示することが可能となる。
そして、管制員が画面721内のボタン725を押下することで、現地作業員に対して出動指示を出すと共に、画面721に表示されている情報を出動する作業員が所持する端末に対して送信される。
【0060】
[利用者端末での表示例]
なお、管制センタ7の処理部702で遠隔かご呼びをした利用者の閉じ込めが発生したと判断した場合に、該当する利用者の携帯端末1に対して、一般回線網2を使って、閉じ込められているかの確認を行うようしてもよい。
【0061】
図10は、利用者の閉じ込めが発生したと判断した場合の携帯端末1の表示部110の画面の例を示す。
例えば、管制センタ7の処理部702で、遠隔かご呼びをした利用者の閉じ込めが発生している可能性があると判断されたとき、処理部702は、図10の左側に示すように、携帯端末1に、閉じ込めが発生したことの案内画面111を表示する。
【0062】
この案内画面111では、閉じ込め故障発生通知表示112と、該当するエレベーターに搭乗しているか否かの確認表示113とが行われる。
確認表示113としては、該当するエレベーターに搭乗していることを返答する「はい」の欄113aと、搭乗していないことを返答する「いいえ」の欄113bとが設けられている。
【0063】
ここで、「いいえ」の欄113bがタッチされた場合、図10の中央に示すように、案内画面111に「回答ありがとうございました。・・・」との表示欄114が加わる。また、管制センタ7の処理部702は、この回答に基づいて、該当する利用者を、閉じ込められた乗員のリストから除外する。
【0064】
また、「はい」の欄113aがタッチされた場合、図10の右側に示すように、案内画面111に「管制センタの技術員と通話ができます。・・・」との表示欄115が加わる。
表示欄115には、通話を行うためのボタン(受話器のマーク)が表示され、利用者による該当するボタンのタッチで、管制センタ7との通話が行われる。
【0065】
<変形例>
なお、本発明は、上述した実施の形態例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施の形態例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
例えば、図9図10に示す表示画面は、管制員や利用者に通知する画面の一例を示すものであり、その他の形態の表示画面としてもよい。
【0066】
さらにまた、図1及び図2のブロック図では、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものだけを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。また、図5に示すフローチャートにおいて、処理結果に影響を及ぼさない範囲で、複数の処理を同時に実行するか、あるいは処理順序を変更してもよい。
【符号の説明】
【0067】
1…携帯端末、2…一般回線網、3…呼び登録装置、3a…CPU(中央制御ユニット)、3b…ROM、3c…RAM、3d…不揮発性ストレージ、3e…ネットワークインタフェース、3f…入出力部、4…遠隔監視装置、5…閉域回線網、6…エレベーター、101…操作部、102…通信部、103…測位部、110…表示部、301…処理部、302…記憶部、303…通信部、401…制御部、402…記憶部、403…通信部、601…通信部、602…制御部、603…昇降機駆動部、7…管制センタ、701…処理部、710…表示部
図1
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図9
図10