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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
   B62D 61/12 20060101AFI20240104BHJP
   B60G 17/015 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
B62D61/12
B60G17/015 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020206224
(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公開番号】P2022093116
(43)【公開日】2022-06-23
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】井田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】平岡 実
(72)【発明者】
【氏名】石川 淳一
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 竣也
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-001442(JP,A)
【文献】特開2020-135622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 61/12
B60G 17/015
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体と、
前記車両本体の左右両側における前後夫々に位置する複数の走行車輪と、
前記車両本体に支持されると共に、複数の前記走行車輪を前記車両本体に対する位置を個別に変更可能な状態で支持する支持機構と、
路面の状態を検知する検知装置と、
前記検知装置が検知した路面の状態に基づいて前記支持機構を制御して前記走行車輪の前記車両本体に対する位置を変更させる制御装置と、を備え
前記制御装置は、前記車両本体が水平方向を向いた姿勢で、前記検知装置が検知した路面の起伏の大きさよりも車両上下方向における前記車両本体と前記走行車輪との間の距離が大きくなるように前記支持機構を制御する作業車。
【請求項2】
車両本体と、
前記車両本体の左右両側における前後夫々に位置する複数の走行車輪と、
前記車両本体に支持されると共に、複数の前記走行車輪を前記車両本体に対する位置を個別に変更可能な状態で支持する支持機構と、
路面の状態を検知する検知装置と、
前記検知装置が検知した路面の状態に基づいて前記支持機構を制御して前記走行車輪の前記車両本体に対する位置を変更させる制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記車両本体が水平方向を向いた姿勢で、前記検知装置が検知した路面の起伏が大きくなるほど車両前後方向における前記車両本体と前記走行車輪との間の距離が大きくなるように前記支持機構を制御する作業車。
【請求項3】
車両本体と、
前記車両本体の左右両側における前後夫々に位置する複数の走行車輪と、
前記車両本体に支持されると共に、複数の前記走行車輪を前記車両本体に対する位置を個別に変更可能な状態で支持する支持機構と、
路面の状態を検知する検知装置と、
前記検知装置が検知した路面の状態に基づいて前記支持機構を制御して前記走行車輪の前記車両本体に対する位置を変更させる制御装置と、を備え、
前記支持機構は、前記走行車輪の回転軸の延びる向きを個別に変更可能に構成されており、
前記制御装置は、路面の起伏が大きくなることを前記検知装置が検知し、かつ、傾斜対応が必要だと判断した場合には、前記傾斜対応として、前記回転軸の延びる向きが路面の傾斜方向と直交しないように、車両左右方向における前記車両本体と前記走行車輪との間の距離が大きくなるように前記支持機構を制御する作業車。
【請求項4】
前記制御装置は、路面が傾斜していることを前記検知装置が検知し、かつ、前記車両本体が停止又は徐行する必要があると判断した場合には、前記回転軸の延びる向きが路面の傾斜方向と直交しないように前記支持機構を制御する請求項3に記載の作業車。
【請求項5】
前記支持機構は、前記走行車輪の回転軸の延びる向きを個別に変更可能に構成されており、
前記制御装置は、前記回転軸の延びる向きが路面の傾斜方向と直交しないように前記支持機構を制御する請求項1または2に記載の作業車。
【請求項6】
前記検知装置は、路面を撮影するカメラである請求項1からのいずれか1項に記載の作業車。
【請求項7】
前記支持機構は、複数の屈折リンク機構と、複数の前記屈折リンク機構の姿勢を個別に変更可能な姿勢変更装置と、を備え、
前記屈折リンク機構の先端部に前記走行車輪が設けられており、
前記制御装置は、前記姿勢変更装置を制御する請求項1からのいずれか1項に記載の作業車。
【請求項8】
前記屈折リンク機構の先端部に設けられ前記走行車輪を駆動する油圧モータを備え、
前記姿勢変更装置は油圧シリンダである請求項に記載の作業車。
【請求項9】
車両走行方向前方の障害物を検知する障害物検知装置を備え、
前記支持機構は、前記走行車輪の回転軸の延びる向きを個別に変更可能に構成されており、
前記制御装置は、車両走行中に前記障害物検知装置が車両走行方向前方の障害物を検知した場合に、前記回転軸の延びる向きが車両走行方向と直交しないように前記支持機構を制御する請求項1からのいずれか1項に記載の作業車。
【請求項10】
車両本体と、
前記車両本体の左右両側における前後夫々に位置する複数の走行車輪と、
前記車両本体に支持されると共に、複数の前記走行車輪を前記車両本体に対する位置及び前記走行車輪の回転軸の延びる向きを個別に変更可能な状態で支持する支持機構と、
車両走行方向前方の障害物を検知する障害物検知装置と、
車両走行中に前記障害物検知装置が車両走行方向前方の障害物を検知した場合に、前記回転軸の延びる向きが車両走行方向と直交しないように前記支持機構を制御する制御装置と、を備え
前記制御装置は、車両走行中に前記障害物検知装置が車両走行方向前方の障害物を検知した場合に、前記支持機構のトレッド幅をハの字状に広がるように制御する作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、不整地移動ローバーが開示されている。この不整地移動ローバーは4つの走行車輪を備えており、各走行車輪がリンク機構を介して車両本体に支持されている。リンク機構に電動モータが備えられ、電動モータの駆動力によりリンク機構が屈伸駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-142347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の不整地移動ローバーは、路面の状態を検知する手段を備えていない。また、特許文献1には、どのようにリンク機構を動作させて不整地環境を走破するのか、具体的な方法や構成は開示されていない。
【0005】
本発明の目的は、不整地の走破性または制動性を向上できる作業車を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決する手段として、本発明の作業車は、車両本体と、前記車両本体の左右両側における前後夫々に位置する複数の走行車輪と、前記車両本体に支持されると共に、複数の前記走行車輪を前記車両本体に対する位置を個別に変更可能な状態で支持する支持機構と、路面の状態を検知する検知装置と、前記検知装置が検知した路面の状態に基づいて前記支持機構を制御して前記走行車輪の前記車両本体に対する位置を変更させる制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記車両本体が水平方向を向いた姿勢で、前記検知装置が検知した路面の起伏の大きさよりも車両上下方向における前記車両本体と前記走行車輪との間の距離が大きくなるように前記支持機構を制御することを特徴とする。
【0007】
本構成によれば、検知装置が検知した路面の状態に基づいて走行車輪の位置が変更されるので、走行車輪の位置が路面状態に応じた適切なものとなるから、作業車の不整地の走破性や制動性を向上させることができる。
また、路面の起伏が大きくなるほど車両本体と走行車輪との上下方向の距離が大きくなる。すなわち、車両本体と路面との上下方向の距離が大きくなるので、路面と車両本体との接触が抑制され、作業車の不整地の走破性を向上させることができる。
さらに、路面の起伏の大きさよりも車両本体と走行車輪との上下方向の距離が大きくなる。すなわち、車両本体と路面との上下方向の距離が路面の起伏よりも大きくなるので、路面と車両本体との接触が更に抑制され、作業車の不整地の走破性を更に向上させることができる。
【0008】
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
上述した課題を解決する手段として、本発明の作業車は、車両本体と、前記車両本体の左右両側における前後夫々に位置する複数の走行車輪と、前記車両本体に支持されると共に、複数の前記走行車輪を前記車両本体に対する位置を個別に変更可能な状態で支持する支持機構と、路面の状態を検知する検知装置と、前記検知装置が検知した路面の状態に基づいて前記支持機構を制御して前記走行車輪の前記車両本体に対する位置を変更させる制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記車両本体が水平方向を向いた姿勢で、前記検知装置が検知した路面の起伏が大きくなるほど車両前後方向における前記車両本体と前記走行車輪との間の距離が大きくなるように前記支持機構を制御することを特徴とする。
【0013】
本構成によれば、路面の起伏が大きくなるほど車両本体と走行車輪との前後方向の距離が大きくなる。すなわち、作業車のホイールベースが大きくなるので、前後方向の揺動に対する安定性が向上し、作業車の不整地の走破性を向上させることができる。
【0014】
上述した課題を解決する手段として、本発明の作業車は、車両本体と、前記車両本体の左右両側における前後夫々に位置する複数の走行車輪と、前記車両本体に支持されると共に、複数の前記走行車輪を前記車両本体に対する位置を個別に変更可能な状態で支持する支持機構と、路面の状態を検知する検知装置と、前記検知装置が検知した路面の状態に基づいて前記支持機構を制御して前記走行車輪の前記車両本体に対する位置を変更させる制御装置と、を備え、前記支持機構は、前記走行車輪の回転軸の延びる向きを個別に変更可能に構成されており、前記制御装置は、路面の起伏が大きくなることを前記検知装置が検知し、かつ、傾斜対応が必要だと判断した場合には、前記傾斜対応として、前記回転軸の延びる向きが路面の傾斜方向と直交しないように、車両左右方向における前記車両本体と前記走行車輪との間の距離が大きくなるように前記支持機構を制御することを特徴とする。
また、本発明において、前記制御装置は、路面が傾斜していることを前記検知装置が検知し、かつ、前記車両本体が停止又は徐行する必要があると判断した場合には、前記回転軸の延びる向きが路面の傾斜方向と直交しないように前記支持機構を制御すると好適である。
【0015】
本構成によれば、路面の起伏が大きくなるほど車両本体と走行車輪との左右方向の距離が大きくなる。すなわち、作業車のトレッド幅が大きくなるので、左右方向の揺動に対する安定性が向上し、作業車の不整地の走破性や制動性を向上させることができる。
【0016】
本発明において、前記支持機構は、前記走行車輪の回転軸の延びる向きを個別に変更可能に構成されており、前記制御装置は、前記回転軸の延びる向きが路面の傾斜方向と直交しないように前記支持機構を制御すると好適である。
【0017】
走行車輪の回転軸の延びる向きが路面の傾斜方向と直交すると、走行車輪の走行方向が路面の傾斜方向に向くことになり、傾斜した路面において停止や徐行を行うことが困難になる。本構成によれば、走行車輪の走行方向が路面の傾斜方向に向くことが抑制されるので、傾斜した路面において停止や徐行を行うことが容易になる。
【0018】
本発明において、前記検知装置は、路面を撮影するカメラであると好適である。
【0019】
本構成によれば、路面の状態の検知が、カメラが撮影した路面の画像に基づいて適切に行われるので、走行車輪の位置が更に適切なものとなるから、作業車の不整地の走破性を更に向上させることができる。
【0020】
本発明において、前記支持機構は、複数の屈折リンク機構と、複数の前記屈折リンク機構の姿勢を個別に変更可能な姿勢変更装置と、を備え、前記屈折リンク機構の先端部に前記走行車輪が設けられており、前記制御装置は、前記姿勢変更装置を制御すると好適である。
【0021】
本構成によれば、走行車輪の位置を変更する支持機構が、屈折リンク機構と姿勢変更装置とにより実現されるので、支持機構を簡易で堅牢なものとすることができ好ましい。
【0022】
本発明において、前記屈折リンク機構の先端部に設けられ前記走行車輪を駆動する油圧モータを備え、前記姿勢変更装置は油圧シリンダであると好適である。
【0023】
本構成によれば、走行車輪の駆動及び支持機構の姿勢変更が共に油圧動力により実現されるので、両者の精密な制御と共通構成による作業車のコストダウンとを実現でき好ましい。
【0024】
本発明において、車両走行方向前方の障害物を検知する障害物検知装置を備え、前記支持機構は、前記走行車輪の回転軸の延びる向きを個別に変更可能に構成されており、前記制御装置は、車両走行中に前記障害物検知装置が車両走行方向前方の障害物を検知した場合に、前記回転軸の延びる向きが車両走行方向と直交しないように前記支持機構を制御すると好適である。
【0025】
本構成によれば、車両走行方向前方の障害物を検知して急制動する場合の制動性能および安定性を向上させることができる。
【0026】
上述した課題を解決する手段として、本発明の作業車は、車両本体と、前記車両本体の左右両側における前後夫々に位置する複数の走行車輪と、前記車両本体に支持されると共に、複数の前記走行車輪を前記車両本体に対する位置及び前記走行車輪の回転軸の延びる向きを個別に変更可能な状態で支持する支持機構と、車両走行方向前方の障害物を検知する障害物検知装置と、車両走行中に前記障害物検知装置が車両走行方向前方の障害物を検知した場合に、前記回転軸の延びる向きが車両走行方向と直交しないように前記支持機構を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、車両走行中に前記障害物検知装置が車両走行方向前方の障害物を検知した場合に、前記支持機構のトレッド幅をハの字状に広がるように制御することを特徴とする。
【0027】
本構成によれば、車両走行方向前方の障害物を検知して急制動する場合の制動性能および安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】作業車及び作業車の動作の概要を示す図である。
図2】作業車及び作業車の動作の概要を示す図である。
図3】作業車及び作業車の動作の概要を示す図である。
図4】作業車及び作業車の動作の概要を示す図である。
図5】作業車の全体側面図である。
図6】作業車の全体平面図である。
図7】屈折リンク機構の平面図である。
図8】屈折リンク機構の側面図である。
図9】旋回機構による左旋回状態を示す平面図である。
図10】旋回機構による右旋回状態を示す平面図である。
図11】制御ブロック図である。
図12】姿勢変更処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る作業車の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。なお、以下の説明においては、図中に示される矢印FWの方向を「前」、矢印BKの方向を「後」、矢印RHの方向を「右」、矢印LHの方向を「左」、矢印UPの方向を「上」、矢印DWの方向を「下」とする。矢印FW及び矢印BKの延びる方向が「車両前後方向」に対応し、矢印RH及び矢印LHの延びる方向が「車両左右方向」に対応し、矢印UP及び矢印DWの延びる方向が「上下方向」に対応する。
【0030】
〔作業車及び作業車の動作の概要〕
図1図2図3図4に、作業車及び作業車の動作の概要が示されている。作業車は、車両本体1と、複数の走行車輪2と、支持機構Aと、検知装置B(検知装置、及び障害物検知装置の一例)と、制御装置Cと、を備える。
【0031】
走行車輪2は、車両本体1の左右両側における前後夫々に位置する。本実施形態では、作業車は、左前、右前、左後、及び右後の4つの走行車輪2を備える。
【0032】
支持機構Aは、車両本体1に支持されると共に、複数の走行車輪2を車両本体1に対する位置を個別に変更可能な状態で支持する。本実施形態では、作業車は、左前、右前、左後、及び右後の4つの支持機構Aを備える。
【0033】
具体的には、支持機構Aは、複数の屈折リンク機構4と、姿勢変更装置D(後述)と、を備える。姿勢変更装置Dは、複数の屈折リンク機構4の姿勢を個別に変更可能である。本実施形態では、姿勢変更装置Dは、油圧シリンダである。
【0034】
屈折リンク機構4の先端部に、走行車輪2及び油圧モータ6(後述)が設けられている。油圧モータ6は、走行車輪2を制御する。
【0035】
図4に示されるように、支持機構Aは、走行車輪2の回転軸2aの延びる向きを個別に変更可能に構成されている。詳しくは、支持機構Aは、縦軸芯Y周りに揺動可能に構成されている。支持機構Aの揺動に伴って走行車輪2も縦軸芯Y周りに揺動し、回転軸2aの延びる向きが変更される。
【0036】
本実施形態では、作業車は、複数の補助車輪3を備える。本実施形態では、補助車輪3は、屈折リンク機構4の中間部(節)に設けられている。
【0037】
検知装置Bは、路面の状態を検知する。また、検知装置Bは、車両走行方向前方の障害物を検知する。本実施形態では、検知装置Bは、路面を撮影するカメラである。
【0038】
制御装置Cは、検知装置Bが検知した路面の状態に基づいて支持機構Aを制御して走行車輪2の車両本体1に対する位置を変更させる。制御装置Cは、姿勢変更装置Dを制御する。具体的には、制御装置Cは、油圧シリンダである姿勢変更装置Dと油圧モータ6とに作動油を供給し、作動油の流量及び圧力を制御することにより、姿勢変更装置D及び油圧モータ6の動作を制御する。
【0039】
また制御装置Cは、検知装置Bが車両走行方向前方の障害物を検知した場合に、走行車輪2の回転軸2aの延びる向きが車両走行方向と直交しないように支持機構Aを制御する。
【0040】
図1に示されるように、制御装置Cは、検知装置Bが検知した路面の起伏が大きくなるほど車両上下方向における車両本体1と走行車輪2との間の距離が大きくなるように支持機構Aを制御する。
【0041】
以下詳しく説明する。作業車は、検知装置Bにより路面の状態を検知しながら走行する。図中左の状態では、路面の状態は平滑であり、起伏は小さい。制御装置Cは、車両本体1と走行車輪2との上下方向の距離が距離H1となるように、支持機構Aを制御する。
【0042】
検知装置Bが、路面に障害物OBが存在し、路面の起伏が大きくなることを検知すると(図中右の状態)、制御装置Cは、車両本体1と走行車輪2との上下方向の距離が、距離H1よりも大きい距離H2となるように、支持機構Aを制御する。特に、制御装置Cは、車両本体1と走行車輪2との距離が、路面の起伏の大きさ(障害物OBの高さH3)よりも大きい距離である距離H2となるように、支持機構Aを制御する。すなわち、制御装置Cは、検知装置Bが検知した路面の起伏の大きさよりも車両上下方向における車両本体1と走行車輪2との間の距離が大きくなるように支持機構Aを制御する。これにより、路面と車両本体1との上下方向の距離が大きくなり、走破性が向上する。
【0043】
図2に示されるように、制御装置Cは、検知装置Bが検知した路面の起伏が大きくなるほど車両前後方向における車両本体1と走行車輪2との間の距離が大きくなるように支持機構Aを制御する。
【0044】
以下詳しく説明する。作業車は、検知装置Bにより路面の状態を検知しながら走行する。図中左の状態では、路面の状態は平滑であり、起伏は小さい。制御装置Cは、車両本体1と走行車輪2との車両前後方向の距離が距離L1となるように、支持機構Aを制御する。
【0045】
検知装置Bが、路面に段差STが存在し、路面の起伏が大きくなることを検知すると(図中右の状態)、制御装置Cは、車両本体1と走行車輪2との車両前後方向の距離が、距離L1よりも大きい距離L2となるように、支持機構Aを制御する。これにより、いわゆるホイールベースが大きくなり、走破性が向上する。
【0046】
図3に示されるように、制御装置Cは、検知装置Bが検知した路面の起伏が大きくなるほど車両左右方向における車両本体1と走行車輪2との間の距離が大きくなるように支持機構Aを制御する。
【0047】
以下詳しく説明する。作業車は、検知装置Bにより路面の状態を検知しながら走行する。図中左の状態では、路面の状態は平滑であり、起伏は小さい。制御装置Cは、車両本体1と走行車輪2との車両左右方向の距離が距離W1となるように、支持機構Aを制御する。
【0048】
検知装置Bが、路面に段差STが存在し、路面の起伏が大きくなることを検知すると(図中右の状態)、制御装置Cは、車両本体1と走行車輪2との車両左右方向の距離が、距離W1よりも大きい距離W2となるように、支持機構Aを制御する。これにより、いわゆるトレッド幅が大きくなり、走破性が向上する。
【0049】
図4に示されるように、制御装置Cは、走行車輪2の回転軸2aの延びる向きが路面の傾斜方向ASと直交しないように支持機構Aを制御する。
【0050】
以下詳しく説明する。作業車は、検知装置Bにより路面の状態を検知しながら走行する。図中左の状態では、路面の状態は平滑・水平であり、傾斜は小さい。制御装置Cは、走行車輪2の回転軸2aが進行方向と直交するように支持機構Aを制御する。
【0051】
検知装置Bが、前方に斜面SLが存在し、路面の傾斜が大きくなることを検知すると(図中右の状態)、制御装置Cは、走行車輪2の回転軸2aの延びる向きが路面の傾斜方向ASと直交しないように、支持機構Aを制御する。詳しくは、制御装置Cは、支持機構Aを縦軸芯Y周りに揺動させて、走行車輪2の回転軸2aの延びる方向を変更し、回転軸2aの延びる方向が傾斜方向ASと直交しないようにする。これにより、走行車輪2の走行方向が路面の傾斜方向ASに向くことが抑制されるので、傾斜した路面において停止や徐行を容易に行うことができる。
【0052】
なお、前方が平坦な路面であっても、検知装置Bが前方に障害物(岩、倒木、動物や人)を検知し、制御装置Cが急ブレーキをかける必要があると判断した場合に、制御装置Cが走行車輪2の回転軸2aの延びる向きが走行方向と直交しないように支持機構Aを制御するようにしてもよい。この場合、例えば、制御装置Cが図4の図中右の状態のようにトレッド幅をハの字状に広げるように支持機構Aを制御してもよい。これにより、制動性能および制動時の安定性を向上させることができる。なお、制御装置Cは、急ブレーキが必要か否かを、例えば、車両走行速度と車両から障害物までの距離とに応じて判断する。
【0053】
〔作業車の構成の詳細〕
図5-10を参照しながら、作業車の構成の詳細について説明する。作業車は、上述の通り、車両本体1と、複数の走行車輪2と、支持機構Aと、検知装置Bと、制御装置Cと、を備える。
【0054】
〔車両本体〕
図5図6に示されるように、車両本体1は、矩形枠状の車体フレーム7、油圧供給源8、弁機構9、支持台10、油圧制御弁11、収納ケース12、ECU13、及び検知装置Bを備える。
【0055】
油圧供給源8は、例えば、エンジンあるいは電動モータ等の駆動手段(図示せず)によって駆動される油圧ポンプである。油圧供給源8は、車体フレーム7の下側に連結された支持台10により支持され、車両本体1の下腹部に位置する。油圧供給源8は、弁機構9を介して姿勢変更装置Dに作動油を送り出し供給する。そして、図示はしていないが、支持台10を車体フレーム7から取り外すことにより、油圧供給源8と支持台10とを連結した状態で一体的に、車両本体1から横側方にスライドさせて取り外すことが可能であり、再度、支持台10を車体フレーム7に取り付けることにより、横側方にスライドさせて装着することが可能である。
【0056】
弁機構9は、車体フレーム7の上側に載置支持される状態で備えられ、複数の油圧制御弁11を備えている。油圧制御弁11は、油圧シリンダである姿勢変更装置D及び油圧モータ6に対する作動油の給排あるいは流量・圧力の調節等を行う。弁機構9の上方は収納ケース12によって覆われている。収納ケース12の上側には、弁機構9の作動を制御するECU13(Electronic Control Unit)が備えられている。油圧制御弁11及びECU13により、制御装置Cが構成されている。
【0057】
車体フレーム7の上側には、例えば、車両本体1が転倒したような場合に、収納ケース12に収納される弁機構9や上方に備えられるECU13等を保護するための外装フレーム14が備えられている。外装フレーム14は、前後両側に備えられ、棒状体が平面視で略U字形に曲げられ、且つ、側面視で略L字形に曲げられた形状となっており、車体フレーム7の前端部と後端部とに左右両側端部が取り付け固定されている。前後の外装フレーム14は、上部側が互いに近接するように設けられ、弁機構9やECU13等の外周側を覆う形状となっている。
【0058】
上述の通り、検知装置Bは、路面を撮影するカメラである。検知装置Bは、車両本体1の前端部に配置されている。検知装置Bは、車体フレーム7に支持されている。検知装置Bは、経時的に路面を撮影して画像データを生成する。検知装置Bが生成した画像データは、ECU13に入力される。
【0059】
〔支持機構〕
上述の通り、支持機構Aは、複数の屈折リンク機構4及び姿勢変更装置Dにより構成されている。
【0060】
4つの走行車輪2は、屈折リンク機構4を介して車両本体1に対して各別に昇降自在に支持されている。屈折リンク機構4は、旋回機構16を介して縦軸芯Y周りで回動可能に車体フレーム7に支持されている。
【0061】
旋回機構16には、車体フレーム7に連結されるとともに、屈折リンク機構4を揺動自在に支持する車体側支持部17(図7,8参照)と、屈折リンク機構4を旋回操作させる旋回用油圧シリンダ(以下、旋回シリンダと称する)18とが備えられている。
【0062】
説明を加えると、図7図8に示されるように、車体側支持部17は、連結部材20と、外方側枢支ブラケット21と、内方側枢支ブラケット22と、縦向きの回動支軸23と、を備える。車体側支持部17は、回動支軸23の縦軸芯Y周りで回動自在に屈折リンク機構4を支持している。
【0063】
連結部材20は、車体フレーム7における横側箇所に備えられた角筒状の前後向きフレーム体19に対して、横側外方から挟み込む状態で嵌め合い係合するとともに、取外し可能にボルト連結される。
【0064】
外方側枢支ブラケット21は、連結部材20の車体前後方向外方側箇所に位置する。内方側枢支ブラケット22は、連結部材20の車体前後方向の内方側箇所に位置する。縦向きの回動支軸23は、外方側枢支ブラケット21に支持される。
【0065】
屈折リンク機構4は、基端部24と、第一リンク25と、第二リンク26と、を備える。基端部24は、上下方向の位置が固定された状態で且つ縦軸芯Y周りで回動自在に車体側支持部17に支持される。第一リンク25は、一端部が基端部24の下部に横軸芯X1周りで回動自在に支持される。第二リンク26は、一端部が第一リンク25の他端部に横軸芯X2周りで回動自在に支持され且つ他端部に走行車輪2が支持される。
【0066】
説明を加えると、基端部24は、平面視で矩形枠状に設けられ、車体横幅方向内方側に偏倚した箇所において、回動支軸23を介して縦軸芯Y周りで回動自在に、車体側支持部17の外方側枢支ブラケット21に支持されている。旋回シリンダ18は、一端部が、内方側枢支ブラケット22に回動自在に連結され、他端部が、基端部24における回動支軸23に対して横方向に位置ずれした箇所に回動自在に連結されている。
【0067】
支持軸27が、第一リンク25の一端側に備えられている。支持軸27は、基端部24に対して回動自在な状態で、基端部24に支持されている。すなわち、第一リンク25は、基端部24の下部に対して、支持軸27の軸芯周りで回動自在に連結されている。
【0068】
図8に示されるように、第一リンク25は、基端側アーム部25bと他端側アーム部25aとを有している。第一リンク25の一端側箇所には、斜め上外方に向けて延びる基端側アーム部25bが一体的に形成されている。第一リンク25の他端側箇所には、斜め上外方に向けて延びる他端側アーム部25aが一体的に形成されている。
【0069】
図7に示されるように、第二リンク26は、左右一対の帯板状の板体26a,26bを備えて平面視で二股状に形成されている。第二リンク26の第一リンク25に対する連結箇所は一対の板体26a,26bが間隔をあけている。一対の板体26a,26bで挟まれた領域に、第一リンク25と連結するための連結支軸28が回動自在に支持されている。第二リンク26の第一リンク25に対する連結箇所とは反対側の揺動側端部には走行車輪2が支持されている。図8に示されるように、第二リンク26の揺動側端部は車両本体1から離れる方向に略L字状に延びるL字状延設部26Aが形成され、L字状延設部26Aの延設側端部に走行車輪2が支持されている。
【0070】
図6に示されるように、走行車輪2は、屈折リンク機構4に対して左右方向の車体外方側に位置する状態で支持されている。具体的には、第二リンク26の揺動側端部において、左右方向の車体外方側に位置する状態で支持されている。油圧モータ6は、第二リンク26の揺動側端部において、左右方向の車体内方側(走行車輪2とは反対側)に位置する状態で支持されている。
【0071】
複数の屈折リンク機構4の夫々に対応して、屈折リンク機構4の姿勢を各別に変更可能な姿勢変更装置Dが備えられている。姿勢変更装置Dは、上述した旋回シリンダ18、第一油圧シリンダ29、及び第二油圧シリンダ30を含む。第一油圧シリンダ29は、車両本体1に対する第一リンク25の揺動姿勢を変更可能である。第二油圧シリンダ30は、第一リンク25に対する第二リンク26の揺動姿勢を変更可能である。第一油圧シリンダ29及び第二油圧シリンダ30は、夫々、第一リンク25の近傍に集約して配置されている。
【0072】
第一リンク25、第一油圧シリンダ29及び第二油圧シリンダ30が、平面視において、第二リンク26の一対の板体26a,26bの間に位置する状態で配備されている。第一油圧シリンダ29は、第一リンク25に対して車体前後方向内方側に位置して、第一リンク25の長手方向に沿うように設けられている。第一油圧シリンダ29の一端部が円弧状の第一連動部材31を介して基端部24の下部に連動連結されている。第一油圧シリンダ29の一端部は、別の第二連動部材32を介して第一リンク25の基端側箇所に連動連結されている。第一連動部材31及び第二連動部材32は、両側端部が夫々、相対回動可能に枢支連結されている。第一油圧シリンダ29の他端部は、第一リンク25に一体的に形成された他端側アーム部25aに連動連結されている。
【0073】
第二油圧シリンダ30は、第一油圧シリンダ29とは反対側、すなわち、第一リンク25に対して車体前後方向外方側に位置して、第一リンク25の長手方向に略沿うように設けられている。第二油圧シリンダ30の一端部が第一リンク25の基端側に一体的に形成された基端側アーム部25bに連動連結されている。第二油圧シリンダ30の他端部は、第三連動部材34を介して第二リンク26の基端側箇所に一体的に形成されたアーム部35に連動連結されている。第二油圧シリンダ30の他端部は、別の第四連動部材36を介して第一リンク25の揺動端側箇所にも連動連結されている。第三連動部材34及び第四連動部材36は、両側端部が夫々、相対回動可能に枢支連結されている。
【0074】
第二油圧シリンダ30の作動を停止した状態で第一油圧シリンダ29を伸縮操作すると、第一リンク25、第二リンク26及び走行車輪2の夫々が、相対的な姿勢を一定に維持したまま一体的に、基端部24に対する枢支連結箇所の横軸芯X1周りで揺動する。第一油圧シリンダ29の作動を停止した状態で第二油圧シリンダ30を伸縮操作すると、第一リンク25の姿勢が一定に維持されたまま、第二リンク26及び走行車輪2が、一体的に、第一リンク25と第二リンク26との連結箇所の横軸芯X2周りで揺動する。
【0075】
複数の屈折リンク機構4夫々の中間屈折部に自由回転自在に補助車輪3が支持されている。補助車輪3は走行車輪2と略同じ外径の車輪にて構成されている。第一リンク25と第二リンク26とを枢支連結する連結支軸28が、第二リンク26よりも車体横幅方向外方側に突出するように延長形成されている。連結支軸28の延長突出箇所に補助車輪3が回動自在に支持されている。
【0076】
図9図10に示されるように、屈折リンク機構4、走行車輪2、補助車輪3、第一油圧シリンダ29、及び、第二油圧シリンダ30の夫々が、一体的に、回動支軸23の縦軸芯Y周りで回動自在に外方側枢支ブラケット21に支持されている。そして、旋回シリンダ18を伸縮させることにより、それらが一体的に回動操作される。走行車輪2が前後方向に向く直進状態から左旋回方向及び右旋回方向に夫々、約45度ずつ旋回操作させることができる。
【0077】
油圧供給源8から、弁機構9を介して、複数の屈折リンク機構4の夫々の第一油圧シリンダ29及び第二油圧シリンダ30に、作動油が供給される。弁機構9では油圧制御弁11により作動油の給排が行われて、第一油圧シリンダ29及び第二油圧シリンダ30を伸縮操作させることができる。油圧制御弁11はECU13によって制御される。
【0078】
又、油圧モータ6に対応する油圧制御弁11により作動油の流量調整が行われることで、油圧モータ6すなわち走行車輪2の回転速度を変更することができる。油圧制御弁11は、手動操作にて入力される制御情報あるいは予め設定記憶されている制御情報等に基づいてECU13によって制御される。
【0079】
〔センサ〕
この作業車は種々のセンサを備える。具体的には、作業車は、図5及び図11に示されるように、4つの第二油圧シリンダ30の夫々について、ヘッド側圧力センサS1及びキャップ側圧力センサS2を備える。ヘッド側圧力センサS1は、第二油圧シリンダ30のヘッド側室の油圧を検出する。キャップ側圧力センサS2は、第二油圧シリンダ30のキャップ側室の油圧を検出する。各圧力センサS1,S2の検出結果はECU13に入力される。
【0080】
図11に示されるように、作業車は、4つの第一油圧シリンダ29及び4つの第二油圧シリンダ30の夫々について、伸縮操作量を検出可能なストロークセンサS3を備える。各油圧シリンダ29,30の伸縮操作量は、操作対象である第一リンク25及び第二リンク26の揺動位置に対応する検出値である。各ストロークセンサS3の検出結果はECU13に入力される。
【0081】
尚、各圧力センサS1,S2の取り付け位置は上記した位置に限られるものではない。各圧力センサS1,S2は、対応するキャップ側室又はヘッド側室の油圧を検出(推定)可能であればよく、弁機構9から対応するキャップ側室又はヘッド側室の間の配管に設けられてもよい。
【0082】
これらのセンサS1、S2の検出結果に基づいて、車両本体1を支持するために必要な推力が算出され、その結果に基づいて、それぞれの第二油圧シリンダ30への作動油の供給が制御される。
【0083】
図5図6図11に示されるように、車両本体1には、例えば、三軸加速度センサ等からなる加速度センサS4が備えられている。加速度センサS4の検出結果に基づき、車両本体1の前後左右の傾きが検知され、その結果に基づいて車両本体1の姿勢が制御される。つまり、車両本体1の姿勢が目標の姿勢となるよう、それぞれの第一油圧シリンダ29及び第二油圧シリンダ30への作動油の供給が制御される。
【0084】
図5図11に示されるように、走行車輪2には、油圧モータ6により駆動される走行車輪2の回転速度を検出する回転センサS5が備えられている。回転センサS5の検出結果はECU13に入力される。回転センサS5にて検出された走行車輪2の回転速度に基づいて、走行車輪2の回転速度が目標の値となるように、油圧モータ6への作動油の供給(流量)が制御される(流量制御による走行車輪2の回転速度制御)。
【0085】
図11に示されるように、作業車は、油圧モータ6に供給される作動油の圧力を検出する圧力センサS6を備える。圧力センサS6の検出結果はECU13に入力される。圧力センサS6にて検出された作動油の圧力に基づいて、走行車輪2の駆動トルクが目標の値となるように、油圧モータ6への作動油の供給(圧力)が制御される(圧力制御による走行車輪2の駆動トルク制御)。
【0086】
図11に示されるように、作業車は、4つの旋回シリンダ18の夫々について、伸縮操作量を検出可能なストロークセンサS7を備える。旋回シリンダ18の伸縮操作量は、操作対象である屈折リンク機構4の回動位置に対する検出値である。各ストロークセンサS7の検出結果はECU13に入力される。
【0087】
図11に示されるように、作業車は、走行車輪2及び補助車輪3の空気圧を調整する調整機構TPを備える。調整機構TPは、例えば、電動の空気ポンプ及び空気弁である。調整機構TPは、制御装置C(ECU13)により制御されて、走行車輪2及び補助車輪3の空気圧を増加又は減少させる。
【0088】
上述したように、本実施形態の作業車は、油圧駆動式の姿勢変更装置Dとしての旋回シリンダ18、油圧シリンダ29,30により屈折リンク機構4の姿勢を変更操作するよう構成され、かつ、走行駆動も油圧モータ6にて行うよう構成されているから、水分や細かな塵埃等による影響を受け難く、農作業に適している。
【0089】
〔ECU〕
図11に示されるように、ECU13は、状態判定部81、機構制御部82、及び走行制御部83を備えている。ECU13は、機能部に対応するプログラムを記憶するメモリ(HDDや不揮発性RAMなど。図示省略)と、当該プログラムを実行するCPU(図示省略)と、を備えている。プログラムがCPUにより実行されることにより、各機能部の機能が実現される。
【0090】
状態判定部81は、検知装置Bから入力された画像に基づいて、路面の状態を判定する。詳しくは、状態判定部81は、検知装置Bが生成した路面の画像を画像解析して、路面の状態(例えば、路面の起伏の大きさ、傾斜の大きさ、傾斜の方向)を判定する。状態判定部81が、検知装置Bが生成した路面の画像の入力を受けて路面の状態を出力するニューラルネットワークを含んでもよい。このニューラルネットワークは、多数の路面の撮影画像及びその画像が示す路面の状態を教師画像として機械学習されて、構築されている。
【0091】
また、状態判定部81は、検知装置Bから入力された画像に基づいて、車両走行方向前方の障害物の有無を判定する。詳しくは、状態判定部81は、検知装置Bが生成した路面の画像を画像解析して、障害物(岩、倒木、動物や人)の有無を判定する。状態判定部81が、検知装置Bが生成した路面の画像の入力を受けて障害物の有無を出力するニューラルネットワークを含んでもよい。このニューラルネットワークは、多数の路面の撮影画像及びその画像における障害物の有無を教師データとして機械学習されて、構築されている。
【0092】
機構制御部82は、状態判定部81が判定した路面の状態及び障害物の有無に基づいて、油圧制御弁11を作動させて、走行車輪2の車両本体1に対する位置を変更させる。
【0093】
例えば、機構制御部82は、路面の起伏が大きくなるほど車両上下方向における車両本体1と走行車輪2との間の距離が大きくなるように、油圧制御弁11を作動させる。図1の例では、機構制御部82は、油圧制御弁11を作動させて第二油圧シリンダ30を伸長させる。そうすると、第二リンク26及び走行車輪2が横軸芯X2周りで揺動し、支持機構Aの姿勢が図中左の状態から右の状態へ変化する。
【0094】
例えば、機構制御部82は、路面の起伏が大きくなるほど車両前後方向における車両本体1と走行車輪2との間の距離が大きくなるように、油圧制御弁11を作動させる。図2の例では、機構制御部82は、油圧制御弁11を作動させて第一油圧シリンダ29及び第二油圧シリンダ30を伸長させる。そうすると、第一リンク25が横軸芯X1周りで揺動し、第二リンク26及び走行車輪2が横軸芯X2周りで揺動し、支持機構Aの姿勢が図中左の状態から右の状態へ変化する。
【0095】
例えば、機構制御部82は、路面の起伏が大きくなるほど車両左右方向における車両本体1と走行車輪2との間の距離が大きくなるように、油圧制御弁11を作動させる。図3の例では、機構制御部82は、油圧制御弁11を作動させて左前及び右前の旋回シリンダ18を収縮させる。そうすると、左前及び右前の屈折リンク機構4及び走行車輪2が縦軸芯Y周りで揺動し、支持機構Aの姿勢が図中左の状態から右の状態へ変化する。
【0096】
例えば、機構制御部82は、走行車輪2の回転軸2aの延びる向きが路面の傾斜方向ASと直交しないように、油圧制御弁11を作動させる。図4の例では、機構制御部82は、油圧制御弁11を作動させて4つの旋回シリンダ18を収縮させる。そうすると、4つの屈折リンク機構4及び走行車輪2が縦軸芯Y周りで揺動し、支持機構Aの姿勢が図中左の状態から右の状態へ変化する。
【0097】
例えば、機構制御部83は、急ブレーキをかける必要があると判断した場合に、油圧制御弁11を作動させて4つの旋回シリンダ18を収縮させる。そうすると、4つの屈折リンク機構4及び走行車輪2が縦軸芯Y周りで揺動し、走行車輪2の回転軸2aの延びる向きが走行方向と直交しない状態となる。
【0098】
走行制御部83は、作業車の走行(前進、後進、停止、旋回)を制御する。具体的には、走行制御部83は、油圧制御弁11を作動させて油圧モータ6及び旋回シリンダ18への作動油の供給を制御する。例えば、走行制御部83は、人為入力された走行指示に基づいて、作業車の走行を制御する。走行制御部83が、設定された自動走行経路に沿って作業車が走行するように、油圧制御弁11を作動させて作業車の走行を制御してもよい。
【0099】
〔姿勢変更処理〕
図12のフローチャートを参照しながら、ECU13により実行される姿勢変更処理について説明する。姿勢変更処理は、作業車の走行中に繰り返し実行される。
【0100】
検知装置Bが、路面を撮影して画像を生成し、ECU13へ入力する(ステップ#01)。
【0101】
状態判定部81は、検知装置Bから入力された画像を解析して、路面の状態を判定する(ステップ#02)。路面の起伏に変化があると判定されると(ステップ#02:Yes)、機構制御部82が姿勢変更装置Dを作動させて走行車輪2の位置を変更する(ステップ#03)。
【0102】
ステップ#02:Noの場合、又は、ステップ#03に続いて、機構制御部82は、傾斜対応が必要か否かを判定する(ステップ#04)。傾斜対応とは、走行車輪2の回転軸2aの延びる向きが路面の傾斜方向ASと直交しないように支持機構Aを制御する処理である。詳しくは、機構制御部82は、状態判定部81が判定した路面の状態と、走行制御部83により制御される作業車の走行の状態と、に基づいて、傾斜対応が必要か否かを判定する。例えば、路面が傾斜しており、作業車が停止又は徐行する必要がある場合に、機構制御部82は傾斜対応が必要であると判定する。
【0103】
傾斜対応が必要であると判定されると(ステップ#04:Yes)、機構制御部82が姿勢変更装置Dを作動させて、支持機構Aの状態を走行車輪2の回転軸2aの延びる向きが路面の傾斜方向ASと直交しない状態(図4)へ変更する(ステップ#05)。ステップ#04:Noの場合、又はステップ#05の終了後、姿勢変更処理は終了する。
【0104】
なお、姿勢変更処理が、急制動対応が必要か否かを機構制御部82が判定するステップと、急制動対応が必要であると判定された場合に、機構制御部82が支持機構Aの状態を走行車輪2の回転軸2aの延びる向きが車両進行方向と直交しない状態へ変更する急制動対応を行うステップと、を含んでもよい。
【0105】
〔変形例〕
(1)図1図2には、前後の走行車輪2の位置が同じ距離だけ変更される態様が示されている。前の走行車輪2のみ、または後の走行車輪2のみについて、その位置が変更されてもよい。また、車両本体1との距離が、前後の走行車輪2で異なっていてもよい。
【0106】
(2)図3には、前の走行車輪2の位置が同じ距離だけ変更される態様が示されている。前の走行車輪2のみ、または後の走行車輪2のみについて、その位置が変更されてもよい。また、車両本体1との距離が、前後の走行車輪2で異なっていてもよい。
【0107】
(3)図4には、全ての走行車輪2の回転軸2aの延びる向きが路面の傾斜方向ASと直交しない態様が示されている。回転軸2aの延びる向きが路面の傾斜方向ASと直交しない姿勢となるのが、一部の車輪であってもよく、前の2つのみ、後の2つのみ、右の2つのみ、または左の2つのみであってもよい。
【0108】
(4)支持機構Aの態様は上述のものに限られない。例えば、支持機構Aが、1つのリンク、又は3つ以上のリンクを備える機構であってもよい。支持機構Aが、一部の走行車輪2(例えば、前のみ、または後のみ)に対応して設けられてもよい。
【0109】
(5)姿勢変更装置Dの態様は上述のものに限られない。例えば、姿勢変更装置Dが、電動のアクチュエータを備えてもよい。
【0110】
(6)走行車輪2が、電動モータやエンジン等により駆動されてもよい。
【0111】
(7)検知装置Bが、超音波センサやミリ波レーダー等であってもよい。
【0112】
(8)検知装置Bの設置位置は、車両本体1の前端部に限らず、車両本体1の上面、下面、側面、あるいは背面であってもよい。複数の検知装置Bが複数の位置に設置されてもよい。
【0113】
(9)機構制御部82が、路面の起伏の大きさと現在の最低地上高(車両本体1の下端と路面との距離)とに基づいて、車両本体1が路面に接触する可能性が高いと判定したことに応じて、車両前後方向における車両本体1と走行車輪2との間の距離が大きくなるように支持機構Aを動作させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、凹凸の多い路面を走行するのに適した作業車に適用できる。
【符号の説明】
【0115】
1 :車両本体
2 :走行車輪
2a :回転軸
4 :屈折リンク機構
6 :油圧モータ
29 :第一油圧シリンダ
30 :第二油圧シリンダ
A :支持機構
AS :傾斜方向
B :検知装置(障害物検知装置)
C :制御装置
D :姿勢変更装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12