(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】アルシン吸着剤
(51)【国際特許分類】
B01J 20/06 20060101AFI20240104BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20240104BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20240104BHJP
B01D 53/64 20060101ALI20240104BHJP
B01D 53/82 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
B01J20/06 C ZAB
B01J20/28 Z
B01J20/30
B01D53/64
B01D53/82
(21)【出願番号】P 2020524901
(86)(22)【出願日】2018-11-02
(86)【国際出願番号】 US2018058952
(87)【国際公開番号】W WO2019090071
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-11-02
(32)【優先日】2017-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ヴィチュク,アルテム ディー
(72)【発明者】
【氏名】ハラトコ,リンダ
(72)【発明者】
【氏名】マグリオ,アルフォンス
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/093713(WO,A1)
【文献】特表2018-525218(JP,A)
【文献】国際公開第2009/116181(WO,A1)
【文献】特開昭63-270541(JP,A)
【文献】特開2007-319859(JP,A)
【文献】特開2004-358333(JP,A)
【文献】特開2014-138927(JP,A)
【文献】特開平11-165038(JP,A)
【文献】特開平09-122437(JP,A)
【文献】特開2004-091276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/28,20/30-20/34
B01D 53/34-53/73,53/74-53/85,53/92,53/96
B01D 53/02-53/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化ビスマスと、酸化タングステ
ンを含む促進剤と、支持体と、を含む、ヒ素材料を吸着するための吸着剤組成物であって、前記支持体は、1μm~10mmの粒径を有する粒子を含み、前記吸着剤組成物が、アルシン分析装置を使用した乾式比色法で測定した場合、≧90%のアルシン除去効率を示す、吸着剤組成物。
【請求項2】
前記酸化ビスマスおよび前記促進剤は、バルク形態または分散形態である、請求項1に記載の吸着剤組成物。
【請求項3】
前記酸化ビスマスは、酸化ビスマス(III)(Bi
2O
3)を含む、請求項1または2に記載の吸着剤組成物。
【請求項4】
前記組成物は、前記組成物の総重量に基づいて、ビスマス金属ベースで0.1重量%から50.0重量%のビスマス材料を含む、請求項1から3のいずれかに記載の吸着剤組成物。
【請求項5】
前記組成物は、前記組成物の総重量に基づいて、0.05重量%から25.0重量%の前記促進剤を含む、請求項1から4のいずれかに記載の吸着剤組成物。
【請求項6】
前記支持体は、金属酸化物、半金属酸化物、活性炭、およびモレキュラーシーブからなる群から選択される、請求項1から5のいずれかに記載の吸着剤組成物。
【請求項7】
前記支持体は、二酸化チタンを含む、請求項1から
6のいずれかに記載の吸着剤組成物。
【請求項8】
前記支持体は、アナターゼ型二酸化チタンを含む、請求項1から
7のいずれかに記載の吸着剤組成物。
【請求項9】
前記支持体は、酸化アルミニウムを含む、請求項1から
8のいずれかに記載の吸着剤組成物。
【請求項10】
前記支持体は、二酸化チタンと酸化アルミニウムとを含む、請求項1から
9のいずれかに記載の吸着剤組成物。
【請求項11】
前記支持体は、シリカを含む、請求項1から
10のいずれかに記載の吸着剤組成物。
【請求項12】
前記組成物の総重量に基づいて、≧5重量%の支持体を含む、請求項1から
11のいずれかに記載の吸着剤組成物。
【請求項13】
前記支持体は、前記支持体の総重量に基づいて、≧5重量%、≧10重量%、≧15重量%、≧20重量%、≧25重量%、≧30重量%、≧35重量%、≧40重量%、≧45重量%、≧50重量%、≧55重量%、≧60重量%、≧65重量%、≧70重量%、または≧75重量%の金属酸化物を含む、請求項1から
12のいずれかに記載の吸着剤組成物。
【請求項14】
前記支持体は、10m
2/gから600m
2/gの表面積を有する、請求項1から
13のいずれかに記載の吸着剤組成物。
【請求項15】
前記組成物は、前記組成物の総重量に基づいて、≦20重量%の酸化鉛を含む、請求項1から
14のいずれかに記載の吸着剤組成物。
【請求項16】
前記吸着剤組成物は、鉛を実質的に含まない、請求項1から
15のいずれかに記載の吸着剤組成物。
【請求項17】
前記組成物は、錠剤、押出物、ペレット、ロッド、成形品、およびモノリスからなる群から選択される形態である、請求項1から
16のいずれかに記載の吸着剤組成物。
【請求項18】
前記組成物は、酸化銀、酸化鉄、酸化マンガン、酸化セリウム、酸化バナジウム、酸化スズ、および酸化ニオブからなる群から選択される1つ以上の化合物をさらに含む、請求項1から
17のいずれかに記載の吸着剤組成物。
【請求項19】
前記支持体は、0.01cm
3/gから5.0cm
3/gの細孔容積を有する、請求項1から
18のいずれかに記載の吸着剤組成物。
【請求項20】
前記支持体は、1Åから750Åの平均孔径を有する孔を含む、請求項1から
19のいずれかに記載の吸着剤組成物。
【請求項21】
ビスマス金属ベースで、2重量%から20重量%の酸化ビスマスと、
1重量%から11重量%の酸化タングステンと、
69重量%から94重量%のチタニアと、を含む、請求項1から
20のいずれかに記載の吸着剤組成物。
【請求項22】
アルシン分析装置を使用した乾式比色法で測定した場合、前記促進剤を含有しない同種の組成物と比較して、≧15%改良されたアルシン除去効率を示す、請求項1から
21のいずれかに記載の吸着剤組成物。
【請求項23】
酸化ビスマスと、酸化タングステ
ンを含む促進剤と、を含む、ヒ素材料を吸着するための吸着剤組成物を調整する方法であって、前記組成物を形成するために、酸化ビスマスまたは酸化ビスマス前駆体と、促進剤または促進剤前駆体と、支持体と、を結合させることを含み、前記吸着剤組成物が、アルシン分析装置を使用した乾式比色法で測定した場合、≧90%のアルシン除去効率を示す、方法。
【請求項24】
前記結合させることは、共沈、分散、および物理的混合からなる群から選択されるプロセスを含む、請求項
23に記載の方法。
【請求項25】
ヒ素材料を吸着する方法であって、ヒ素材料を含むプロセス流を、酸化ビスマスと酸化タングステ
ンを含む促進剤とを含む吸着剤組成物と接触させることを含む、方法。
【請求項26】
アルシン分析装置を使用した乾式比色法で測定した場合、≧90%のアルシン除去効率を示す、請求項
25に記載の方法。
【請求項27】
前記プロセス流は、石油プロセス、石油化学プロセス、重合プロセス、合成ガスプロセス、および半導体プロセスからなる群から選択されるプロセスの流体である、請求項
25または
26に記載の方法。
【請求項28】
前記プロセス流は、製油所オフガス、流動接触分解オフガス、スチームクラッカーオフガス、シェールガス、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるプロセスの流体である、請求項
25または
26に記載の方法。
【請求項29】
前記プロセス流は、アセチレン、メチルアセチレン、プロパジエン、またはこれらの組み合わせを含む、請求項
25または
26に記載の方法。
【請求項30】
前記プロセス流は、エチレンおよび/またはプロピレンを含む、請求項
25または
26に記載の方法。
【請求項31】
前記プロセス流は、天然ガスを含む、請求項
25または
26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年11月3日に出願された米国仮特許出願第62/581,265号の優先権の利益を主張し、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
工業プロセスの処理および排気流から不純物を除去することは、環境に放出される汚染物質と毒素を削減し、貴重な副産物を回収し、下流工程の性能を維持し、作業者の安全を確保するために極めて重要である。このような工業プロセスとしては、石油、石油化学、重合、合成ガス(「シンガス」)、および半導体プロセスが挙げられる。
【0003】
炭化水素処理流、特に製油所オフガス(「ROG」)流は、発熱を誘発し、さらに/あるいは望ましくない別の化合物(例えば、アセチリド、グリーンオイル/クプレンなど)を生成する反応性化合物を含み得る。そのような反応性化合物には、アセチレン、メチルアセチレンとプロパジエン(「MAPD」)、その他のジエンと重質オレフィン、ならびに水素と一酸化炭素が含まれる。
【0004】
酸化鉛を含む吸着剤は、反応性化合物(アセチレンやMAPDなど)を含む炭化水素流または水素含有流などの顕著な還元力を有する流体からアルシンおよび硫化カルボニル(「COS」)を除去するためによく使用される。しかし、酸化鉛は環境と健康に大きな懸念を与え、個々の生物に影響を及ぼし、生態系を脅かす可能性がある。したがって、吸着剤の安全な取り扱い、操作、および廃棄を可能にする代替材料を採用することが注目されている。酸化銅を含む吸着剤も、炭化水素流からアルシンを除去するために使用される。しかし、銅はアセチリドを形成し、グリーンオイルの形成を促進する傾向があるため、酸化銅の吸着剤は、アセチレン、MAPD、ジエンなどの濃度が低いか、これらを全く含まない「非反応性」流で主に使用される。さらに、上記の環境上、健康、および安全性の懸念に加えて、酸化鉛ベースの媒体は一般に、銅ベースの材料と比較して、アルシンに対応する能力がやや低いという特徴がある。
【0005】
したがって、対象となる反応性化合物(例えば、アルシンまたはヒ素含有化合物などのヒ素材料)の吸着能力が高く、発熱リスクを最小限に抑えるために水素化能力がなく、例えば、アセチリドまたはグリーンオイル/クプレンなどの望ましくない別の化合物を形成しない、代替のおよび/または改良された吸着剤が求められている。
【発明の概要】
【0006】
本明細書に、アルシン吸着剤、それらの調製方法、およびそれらの使用方法が開示および記載される。
【0007】
本開示の一態様では、吸着剤組成物は、酸化ビスマスと、酸化タングステンを含む促進剤と、支持体と、を含む、ヒ素材料を吸着するための吸着剤組成物であって、前記支持体は、1μm~10mmの粒径を有する粒子を含み、前記吸着剤組成物が、アルシン分析装置を使用した乾式比色法で測定した場合、≧90%のアルシン除去効率を示す。
【0008】
一部の実施形態では、前記吸着剤組成物は、さらにヒ素材料を含む。
【0009】
一部の実施形態では、前記ビスマス材料および/または前記促進剤は、バルク形態である。一部の実施形態では、前記ビスマス材料および/または前記促進剤は、分散形態である。
【0010】
一部の実施形態では、前記ビスマス材料は、ビスマス元素およびビスマス化合物からなる群から選択される。一部の実施形態では、前記ビスマス材料は、酸化ビスマスを含む。一部の実施形態では、前記ビスマス材料は、酸化ビスマス(III)(Bi2O3)を含む。
【0011】
一部の実施形態では、前記組成物は、前記組成物の総重量に基づいて、ビスマス金属ベースで約0.1重量%、約0.5重量%、約1.0重量%、約2.0重量%、約3.0重量%、約4.0重量%、約5.0重量%、約6.0重量%、約7.0重量%、約8.0重量%、約9.0重量%、または約10.0重量%から、約11.0重量%、約12.0重量%、約13.0重量%、約14.0重量%、約15.0重量%、約16.0重量%、約17.0重量%、約18.0重量%、約19.0重量%、約20.0重量%、約25.0重量%、約30.0重量%、約35.0重量%、約40.0重量%、約45.0重量%、または約50.0重量%のビスマス材料を含む。
【0012】
一部の実施形態では、前記促進剤は、タングステン材料またはシリコン材料を含む。一部の実施形態では、前記促進剤は、酸化タングステンまたは酸化ケイ素を含む。
【0013】
一部の実施形態では、前記組成物は、前記組成物の総重量に基づいて、約0.05重量%、約0.1重量%、約0.5重量%、約1.0重量%、約1.5重量%、約2.0重量%、約2.5重量%、約3.0重量%、約3.5重量%、約4.0重量%、約4.5重量%、または約5.0重量%から、約5.5重量%、約6.0重量%、約6.5重量%、約7.0重量%、約7.5重量%、約8.0重量%、約8.5重量%、約9.0重量%、約9.5重量%、約10.0重量%、約12.5重量%、約15.0重量%、約17.5重量%、約20.0重量%、約22.5重量%、または約25.0重量%の促進剤を含む。
【0014】
一部の実施形態では、前記吸着剤組成物は、さらに支持体を含む。一部の実施形態では、前記支持体は、金属酸化物、半金属酸化物、活性炭、およびモレキュラーシーブからなる群から選択される。一部の実施形態では、前記支持体は、高表面積金属酸化物からなる群から選択される。一部の実施形態では、前記支持体は、二酸化チタンを含む。一部の実施形態では、前記支持体は、アナターゼ型二酸化チタンを含む。一部の実施形態では、前記支持体は、酸化アルミニウムを含む。一部の実施形態では、前記支持体は、二酸化チタンと酸化アルミニウムとを含む。一部の実施形態では、前記支持体は、シリカを含む。
【0015】
一部の実施形態では、前記吸着剤材料は、前記組成物の総重量に基づいて、≧5重量%、≧10重量%、≧15重量%、≧20重量%、≧25重量%、≧30重量%、≧35重量%、≧40重量%、≧45重量%、≧50重量%、≧55重量%、≧60重量%、≧65重量%、≧70重量%、または≧75重量%の支持体を含む。
【0016】
一部の実施形態では、前記支持体は、前記支持体の総重量に基づいて、≧5重量%、≧10重量%、≧15重量%、≧20重量%、≧25重量%、≧30重量%、≧35重量%、≧40重量%、≧45重量%、≧50重量%、≧55重量%、≧60重量%、≧65重量%、≧70重量%、または≧75重量%の金属酸化物を含む。
【0017】
一部の実施形態では、前記支持体は、約1μm、約25μm、約50μm、約100μm、約300μm、約500μm、約750μm、または約900μmから、約1mm、約2mm、約3mm、約4mm、約5mm、約6mm、約7mm、約8mm、約9mm、または約10mmの粒径を有する粒子を含む。
【0018】
一部の実施形態では、前記支持体は、約10m2/g、約20m2/g、約30m2/g、約40m2/g、約50m2/g、約60m2/g、約75m2/g、約100m2/g、約150m2/g、または約200m2/gから、約250m2/g、約300m2/g、約350m2/g、約400m2/g、約450m2/g、約500m2/g、約550m2/g、または約600m2/gの表面積を有する。
【0019】
一部の実施形態では、前記組成物は、前記組成物の総重量に基づいて、≦20重量%、<20重量%、≦19重量%、≦18重量%、≦17重量%、≦16重量%、≦15重量%、≦14重量%、≦13重量%、≦12重量%、≦11重量%、≦10重量%、≦9重量%、≦8重量%、≦7重量%、≦6重量%、≦5重量%、≦4重量%、≦3重量%、≦2重量%、≦1重量%、または≦0.5重量%の酸化鉛を含む。
【0020】
一部の実施形態では、前記吸着剤組成物は、鉛を含まないか、または実質的に含まない。
【0021】
一部の実施形態では、前記吸着剤組成物は、錠剤、押出物、ペレット、ロッド、成形品、およびモノリスからなる群から選択される形態である。
【0022】
一部の実施形態では、前記吸着剤組成物は、酸化銀、酸化鉄、酸化マンガン、酸化セリウム、酸化バナジウム、酸化スズ、および酸化ニオブからなる群から選択される1つ以上の化合物をさらに含む。
【0023】
一部の実施形態では、前記支持体は、約0.01cm3/g、約0.05cm3/g、約0.1cm3/g、約0.3cm3/g、約0.6cm3/g、約0.8cm3/g、約1.0cm3/g、約1.5cm3/g、または約2.0cm3/gから、約2.5cm3/g、約3.0cm3/g、約3.5cm3/g、約4.0cm3/g、または約5.0cm3/gの細孔容積を有する。
【0024】
一部の実施形態では、前記支持体は、約1Å、約5Å、約10Å、約20Å、約50Å、または約100Åから、約150Å、約200Å、約250Å、約300Å、約350Å、約400Å、約450Å、約500Å、約550Å、約600Å、約650Å、約700Å、または約750Åの平均孔径を有する孔を含む。
【0025】
一部の実施形態では、前記吸着剤組成物は、ビスマス金属ベースで、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、または約11重量%から、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、または約20重量%の酸化ビスマスと、約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、または約5重量%から、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、または約11重量%の酸化タングステンと、約69重量%、約72重量%、約75重量%、約78重量%、約81重量%、約84重量%、約87重量%、または約90重量%から、約92重量%、約93重量%、または約94重量%のチタニアと、を含む。
【0026】
一部の実施形態では、前記吸着剤組成物は、アルシン分析装置を使用した乾式比色法で測定した場合、≧90%、≧91%、≧92%、≧93%、≧94%、≧95%、≧96%、≧97%、≧98%、または≧99%のアルシン除去効率を示す。
【0027】
一部の実施形態では、前記吸着剤組成物は、アルシン分析装置を使用した乾式比色法で測定した場合、前記促進剤を含有しない同種の組成物と比較して、≧15%、≧20%、≧25%、≧35%、≧45%、≧55%、≧65%、≧75%、≧85%、≧95%、≧105%、≧110%、≧115%、≧125%、または≧135%改良されたアルシン除去効率を示す。
【0028】
一部の実施形態では、前記吸着剤組成物は、ヒ素元素およびヒ素化合物からなる群から選択されるヒ素材料を含む。
【0029】
一部の実施形態では、前記吸着剤組成物は、アルシンを含む。
【0030】
一部の実施形態では、前記組成物は、前記組成物の総重量に基づいて、約0.01重量%、約0.05重量%、約0.1重量%、約0.5重量%、約1.0重量%、約2.0重量%、約3.0重量%、約4.0重量%、約5.0重量%、約6.0重量%、約7.0重量%、約8.0重量%、約9.0重量%、または約10.0重量%から、約11.0重量%、約12.0重量%、約13.0重量%、約14.0重量%、約15.0重量%、約16.0重量%、約17.0重量%、約18.0重量%、約19.0重量%、または約20.0重量%のヒ素材料を含む。
【0031】
本開示の別の態様では、吸着剤組成物を調整する方法は、前記組成物を形成するために、酸化ビスマスまたは酸化ビスマス前駆体と、促進剤または促進剤前駆体と、支持体と、を結合させることを含み、前記吸着剤組成物が、アルシン分析装置を使用した乾式比色法で測定した場合、≧90%のアルシン除去効率を示す。
【0032】
一部の実施形態では、前記結合させることは、共沈、分散、および物理的混合からなる群から選択されるプロセスを含む。
【0033】
一部の実施形態では、前記方法は、ビスマス元素または酸化ビスマスを結合させることを含む。
【0034】
一部の実施形態では、前記方法は、ビスマス材料またはビスマス前駆体と、促進剤または促進剤前駆体とを、支持体上に分散させることを含む。
【0035】
一部の実施形態では、前記方法は、ビスマス前駆体を、支持体上に分散させることを含む。
【0036】
一部の実施形態では、前記方法は、有機化合物、無機化合物、塩、および金属からなる群から選択されるビスマス前駆体および/または促進剤前駆体を結合させることを含む。
【0037】
一部の実施形態では、前記方法は、クエン酸ビスマス、硝酸ビスマス、またはこれらの組み合わせを結合させることを含む。
【0038】
一部の実施形態では、前記方法は、ビスマス前駆体、例えば、クエン酸ビスマスおよび/または硝酸ビスマスを、支持体上に分散させることを含む。
【0039】
一部の実施形態では、前記方法は、促進剤を、支持体上に分散させることを含む。
【0040】
一部の実施形態では、前記方法は、酸化タングステンを、支持体上に分散させることを含む。
【0041】
一部の実施形態では、前記方法は、促進剤前駆体を、支持体上に分散させることを含む。
【0042】
一部の実施形態では、前記方法は、タングステン化合物またはタングステン塩を、支持体上に分散させることを含む。
【0043】
一部の実施形態では、前記支持体は、金属酸化物、半金属酸化物、活性炭、およびモレキュラーシーブからなる群から選択される。一部の実施形態では、前記支持体は、高表面積金属酸化物を含む。一部の実施形態では、前記支持体は、二酸化チタンを含む。一部の実施形態では、前記支持体は、アナターゼ型二酸化チタンを含む。一部の実施形態では、前記支持体は、酸化アルミニウムを含む。一部の実施形態では、前記支持体は、二酸化チタンと酸化アルミニウムとを含む。一部の実施形態では、前記支持体は、シリカを含む。一部の実施形態では、前記支持体は、前記支持体の重量に基づいて、≦15重量%、≦13重量%、≦11重量%、≦9重量%、≦7重量%、≦5重量%、≦3重量%、≦2重量%、≦1重量%、≦0.5重量%、≦0.4重量%、≦0.3重量%、≦0.2重量%、または≦0.1重量%の含水率を有する。一部の実施形態では、前記支持体は実質的に水分を含まない。
【0044】
一部の実施形態では、前記方法は、支持された促進剤を調製するために、前記促進剤または促進剤前駆体と支持体と結合させることと、その後、前記ビスマス材料またはビスマス前駆体を前記支持された促進剤と結合させることと、を含む。
【0045】
一部の実施形態では、前記方法は、支持された促進剤を調製するために、前記促進剤または促進剤前駆体と支持体と結合させることと、前記支持された促進剤を乾燥し、か焼することと、前記ビスマス材料またはビスマス前駆体を前記乾燥、か焼を経た前記支持された促進剤と結合させることと、を含む。
【0046】
一部の実施形態では、前記方法は、支持された促進剤を調製するために、前記促進剤または促進剤前駆体と支持体と結合させることと、前記支持された促進剤を乾燥し、か焼することと、前記ビスマス材料またはビスマス前駆体を前記乾燥、か焼を経た前記支持された促進剤と結合させることと、生成された組成物を乾燥し、か焼することと、を含む。
【0047】
一部の実施形態では、前記方法は、前記支持体上に前記促進剤または促進剤前駆体を分散させること、および/または前記支持された促進剤上に前記ビスマス材料またはビスマス前駆体を分散させること、を含む。
【0048】
一部の実施形態では、前記方法は、前述の吸着剤組成物の実施形態のいずれかによる吸着剤組成物を調製することを含む。
【0049】
一部の実施形態では、前記方法は、前記吸着剤組成物を押出し、ペレット化または錠剤化することをさらに含む。
【0050】
本開示の別の態様では、前記方法は、ビスマス材料と、促進剤と、を含む吸着剤組成物を調整することを含み、前記方法は、前記組成物を形成するために、ビスマス材料またはビスマス前駆体と、促進剤または促進剤前駆体と、任意選択で支持体と、を結合させることを含み、前記結合させることは共沈を含む。
【0051】
本開示の別の態様では、吸着剤組成物は、前述の方法の実施形態のいずれかに従って調製される。
【0052】
本開示の別の態様では、ヒ素材料を吸着する方法は、ヒ素材料を含むプロセス流を、酸化ビスマスと酸化タングステンを含む促進剤とを含む吸着剤組成物と接触させることを含む。一部の実施形態では、前記吸着剤組成物は、支持体を含む。
【0053】
一部の実施形態では、前記方法は、アルシン分析装置を使用した乾式比色法で測定した場合、≧90%、≧91%、≧92%、≧93%、≧94%、≧95%、≧96%、≧97%、≧98%、または≧99%のアルシン除去効率を示す。一部の実施形態では、前記方法は、アルシン分析装置を使用した乾式比色法で測定した場合、前記促進剤を含有しない同種の組成物と比較して、≧15%、≧20%、≧25%、≧35%、≧45%、≧55%、≧65%、≧75%、≧85%、≧95%、≧105%、≧110%、≧115%、≧125%、または≧135%改良されたアルシン除去効率を示す。
【0054】
一部の実施形態では、前記プロセス流は、石油プロセス、石油化学プロセス、重合プロセス、合成ガスプロセス、および半導体プロセスからなる群から選択されるプロセスの流体である。
【0055】
一部の実施形態では、前記プロセス流は、石油化学プロセスの流体である。
【0056】
一部の実施形態では、前記プロセス流は、製油所オフガス、流動接触分解オフガス、スチームクラッカーオフガス、シェールガス、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるプロセスの流体である。
【0057】
一部の実施形態では、前記プロセス流は、アセチレン、メチルアセチレン、プロパジエン、またはこれらの組み合わせを含む。一部の実施形態では、前記プロセス流は、エチレンおよび/またはプロピレンを含む。一部の実施形態では、前記プロセス流は、天然ガスを含む。
【発明を実施するための形態】
【0058】
ビスマス材料は、ビスマス元素および酸化ビスマス(例えば酸化ビスマス(III)(Bi2O3))を含むビスマス含有化合物を含む。促進剤は、ビスマス材料のアルシン吸着剤の性能を促進または増強するように機能する化合物を含む。適切な促進剤としては、タングステン材料およびシリコン材料、例えば酸化タングステンおよび酸化ケイ素が挙げられる。
【0059】
本吸着剤組成物は、本質的にビスマス材料および促進剤、例えば、バルク形態の材料からなってもよい。吸着剤組成物は、支持体上に分散されたビスマス材料、および/または同じまたは異なる支持体上に分散された促進剤を含んでもよい。
【0060】
支持体としては、金属酸化物、半金属酸化物、活性炭、およびモレキュラーシーブが挙げられる。例えば、支持体は、酸化チタン、セリア、アルミナ、シリカ、ジルコニア、酸化マグネシウム、ゼオライト、およびこれらの組み合わせを含む。ある実施形態では、支持体は、二酸化チタン、例えばアナターゼ型二酸化チタンを含む。ある実施形態では、支持体は、シリカを含む。支持体は、高表面積金属酸化物を含む。一部の実施形態では、支持体は、酸化アルミニウムを含んでもよい。他の実施形態では、支持体は、二酸化チタンと酸化アルミニウムの混合物を含んでもよい。金属酸化物混合物、例えば、二酸化チタンと酸化アルミニウムの混合物は、二酸化チタン対酸化アルミニウムの重量/重量比が、約9/1、約8/1、約7/1、約6/1、約5/1、約4/1、約3/1、約2/1、または約1/1から、約1/2、約1/3、約1/4、約1/5、約/6、約1/7、約1/8、または約1/9のいずれかである金属酸化物を含んでもよい。
【0061】
ある実施形態では、吸着剤組成物は、組成物の総重量に基づいて、約5重量%(重量パーセント)または約10重量%から、約65重量%または約75重量%の支持体を含む。ある実施形態では、支持体は、支持体の総重量に基づいて、約5重量%または約10重量%から、約55重量%または約75重量%の金属酸化物を含む。
【0062】
支持体は、約10m2/gまたは約20m2/gから、約450m2/gまたは約600m2/gの表面積を有してもよい。支持体は、例えば、約1μmまたは約25μmから、約1mmまたは10mmの平均粒径を有する粒子を含む粒子形態であってもよい。
【0063】
支持体は、約0.01cm3/gまたは約0.1cm3/gから、約2.5cm3/gまたは約5.0cm3/gの細孔容積を有してもよい。支持体は、約1オングストロームまたは約5オングストロームから、約450または約750オングストロームの平均孔径(孔径)を有する孔を有してもよい。これらの細孔容積および孔径は、その上に分散される材料を有する前のものである。
【0064】
吸着剤組成物は、組成物の総重量に基づいて、ビスマス金属ベースで約0.1重量%または1.0重量%から、約20.0または約50.0重量%のビスマス材料を含んでもよい。
【0065】
吸着剤組成物は、組成物の総重量に基づいて、約0.05重量%または1.0重量%から、約10.0または約25重量%の促進剤を含んでもよい。
【0066】
有利なことに、吸着剤組成物は、鉛をほとんど含まないか、全く含まない。例えば、吸着剤組成物は、組成物の総重量に基づいて、酸化鉛(PbO)として、≦20重量%、<20重量%、≦10重量%、≦5重量%、または≦1重量%の鉛を含んでもよい。吸着剤組成物は、鉛を含まないか、または実質的に含まなくてもよい。
【0067】
吸着剤組成物は、酸化銀、酸化鉄、酸化マンガン、酸化セリウム、酸化バナジウム、酸化スズ、および酸化ニオブからなる群から選択される1つ以上の化合物をさらに含んでもよい。これらのさらなる化合物は、例えば、促進剤について記載されるようなレベルで存在してもよい。
【0068】
ある実施形態では、吸着剤組成物は、組成物の総重量に基づいて、ビスマス金属ベースで、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、または約11重量%から、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、または約20重量%の酸化ビスマスと、約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、または約5重量%から、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、または約11重量%の酸化タングステンと、約69重量%、約72重量%、約75重量%、約78重量%、約81重量%、約84重量%、約87重量%、または約90重量%から、約92重量%、約93重量%、または約94重量%のチタニアと、を含んでもよい。
【0069】
吸着剤組成物は、アルシン分析装置を使用した乾式比色法で測定した場合、≧90%、≧91%、≧92%、≧93%、≧94%、≧95%、≧96%、≧97%、≧98%、または≧99%のアルシン除去効率を示してもよい。
【0070】
吸着剤組成物は、アルシン分析装置を使用した乾式比色法で測定した場合、前記促進剤を含有しない同種の組成物と比較して、≧15%、≧20%、≧25%、≧35%、≧45%、≧55%、≧65%、≧75%、≧85%、≧95%、≧105%、≧110%、≧115%、≧125%、または≧135%改良されたアルシン除去効率を示してもよい。アルシン除去効率は、「ヒ素取り込み量」をアルシンを吸着した後の使用済み吸着剤で求める実施例のように決定してもよい。ヒ素取り込み量は、吸着プロセス中の特定の時点、例えば効率90%の時点での新鮮な吸着剤の重量当たりのヒ素の重量%を表す。ヒ素の取り込み量は、吸着剤のアルシン容量の尺度であり、すなわち、アルシン除去効率の尺度になる。
【0071】
さらに本発明の主題は、ヒ素材料をさらに含む上記の吸着剤組成物である。ヒ素材料は、ヒ素元素およびヒ素化合物(例えばアルシン)からなる群から選択される。吸着剤組成物は、組成物の総重量に基づいて、約0.01重量%または0.1重量%から、約14.0または約20.0重量%のヒ素材料を含んでもよい。
【0072】
吸着剤組成物は、様々な手段によって調製されてもよい。例えば、ビスマス材料またはビスマス前駆体のバルク粉末、促進剤または促進剤前駆体、および任意で支持体が、共沈、分散、または物理的混合を含む各種方法によって結合されてもよい。物理的混合には、例えば圧縮法およびコーティング法が含まれる。
【0073】
ある実施形態では、ビスマス材料またはビスマス前駆体と、促進剤または促進剤前駆体とを、支持体上に分散させる。前駆体には、有機化合物、無機化合物、塩、および金属が挙げられる。適切なビスマス前駆体としては、クエン酸ビスマスおよび硝酸ビスマスが挙げられる。適切なタングステン前駆体としては、例えばメタタングステン酸アンモニウムおよびその他のタングステン塩が挙げられる。支持体上の分散は、溶液滴下含浸技術によって実現し得る。例えば、支持体上のビスマス前駆体および促進剤前駆体の分散によって、支持体上/中に含浸された酸化ビスマスおよび例えば酸化タングステンを有する支持体を提供し得る。「分散形態」という用語は、「その上に分散された」、「中に含浸された」、「によって/上に支持されている」などと同義語であり得る。
【0074】
一般に含浸とは、材料が支持体の孔の「中」にあることを意味する。記載された支持体の細孔容積および孔径は、その中にいかなる材料も含浸されていない状態のものである。
【0075】
適切な成分をその上に分散させる前に、支持体を乾燥させることが有利な場合がある。支持体は、例えば、支持体の総重量に基づいて、≦15%、≦10%、≦5%、または≦0.5%の含水率を有してもよい。支持体は、本質的に湿気を含まなくてもよい。「適切な成分」という用語は、ビスマス材料またはビスマス前駆体と、促進剤または促進剤前駆体と、任意選択で支持体などの任意の材料と、を意味する。
【0076】
一部の実施形態では、ビスマス元素または酸化ビスマスは、促進剤または促進剤前駆体および任意選択で支持体と物理的に混合されてもよい。例えば、バルク粉末形態の適切な成分の混合物は、一緒に圧縮されてもよい。
【0077】
適切な成分の塗布は、例えば、ウォッシュコート技術によって実施されてもよい。例えば、コーティング(ウォッシュコート)を、液体ビヒクル中の適切な成分の特定の固形分(例えば、10~60重量%)を含むスラリーを調製し、次に、支持体などの所望の基板上にこれを塗布し、乾燥およびか焼してコーティング層を提供することによって形成してもよい。複数のコーティング層が塗布される場合、各層が塗布された後、および/または所望の複数の層が塗布された後、基材を乾燥およびか焼してもよい。
【0078】
適切な成分は、吸着剤組成物中にバルク形態で存在してもよく、これは、一般に、他の物質によって中断されることなく連続した形態を意味する。バルク形態は、他の材料を実質的に含まなくてもよい。
【0079】
したがって、吸着剤組成物は、様々な形状およびサイズの、例えば、錠剤、押出物、ペレット、ロッド、成形品、またはモノリスなどの任意の適切な最終形態であってもよい。例えば、形状は、約1mm、約2、約3、または約4mmから、約5mm、約6、約7、約8、約9、または約10mmの平均最大粒径を有してもよい。
【0080】
ある実施形態では、促進剤または促進剤前駆体は、第1の工程において支持体と結合され、「支持された促進剤」が提供される。支持体は、支持体の「上」または「中に含浸」された、分散形態またはコーティング形態の促進剤を有してもよい。次に、ビスマス材料またはビスマス前駆体は、後に続く第2の工程において支持された促進剤と結合され、吸着剤組成物が提供される。各工程の後に乾燥およびか焼が行われてもよい。一部の実施形態では、これらの工程の順は逆にすることができる。
【0081】
本発明の実施形態はさらに、ヒ素材料を含むプロセス流を、本明細書に記載の吸着剤組成物と接触させることを含む、ヒ素材料を吸着する方法を含む。プロセス流は、石油プロセス、石油化学プロセス、重合プロセス、合成ガスプロセス、または半導体プロセスの流体であってもよい。例えば、プロセス流は、製油所オフガス、流動接触分解オフガス、スチームクラッカーオフガス、シェールガス、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるプロセスの流体であってもよい。プロセス流は、アセチレン、メチルアセチレン、プロパジエン、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。プロセス流は、エチレンおよび/またはプロピレンを含んでもよい。プロセス流は、天然ガスを含んでもよい。
【0082】
一部の実施形態では、プロセス流は、プロセス流に基づいて、約0.1ppmw(100万分の1重量部)、約0.5、約1、約10、または約25ppmwから、約50ppmw、約100、約150、または約200ppmwの濃度のヒ素材料、例えばアルシンを含む。
【0083】
吸着剤組成物は、充填層カラム、流動層、モノリス、カートリッジフィルタ、半導体プロセスツールなどを含む適切な機器で使用することができる。吸着剤プロセス中の動作温度は、例えば、約10℃、約20℃、約25℃、約30℃、約50℃、または約60℃から、約80℃、約100℃、約125℃、または約150℃であってもよい。例えば、液体流の吸着プロセスは約50℃で、ガス流の吸着プロセスは約130℃で行ってもよい。吸着プロセスの動作圧力は、約1バール、約5バール、約10バール、約20バール、または約30バールから、約50バール、約70バール、約90バール、または約100バールであってもよい。動作ガス空間速度は、約20h-1以下、約30h-1、約50h-1、約100h-1、約500h-1、約1000h-1、または約2000h-1から、約5000h-1、約7500h-1、または約10000h-1であってもよい。例えば、液体流のガス空間速度は約20h-1以下であってもよく、ガス流のガス空間速度は約10000h-1であってもよい。
【0084】
本発明によれば、粒径は、粒子直径(最大直径)と同義であり、例えば、走査型電子顕微鏡法(SEM)または透過型電子顕微鏡法(TEM)によって決定し得る。平均粒径はD50と同義であり、つまり、母集団の半分はこれより上に、半分はこれより下に存在する。粒径は一次粒子を指す。粒径は、分散系または乾燥粉末を使用して、レーザー光散乱法で測定し得る。
【0085】
特に明記しない限り、「部」および「パーセント」は全て「重量部」、「重量パーセント」を指す。特に明記しない限り、重量パーセント(wt%)は、揮発性物質を含まない組成物全体、つまり乾燥固形分に基づく。
【0086】
実施例
以下の実施例は、開示の理解を助けるために記載されており、もちろん、本明細書に記載され、請求される実施形態を具体的に限定するものとして解釈されるべきではない。当業者が想達し得る、現在知られているまたは後に開発される全ての均等物の置換を含む、実施形態の変形、および製法の変更または実験計画の若干の変更は、本明細書に組み込まれる実施形態の範囲内であると解釈される。
【0087】
実施例1:チタニア粉末上の酸化ビスマスおよび酸化タングステン
表面積が291m2/g、支持体2細孔容積が0.41mL/gのチタニア粉末(アナターゼ)を、110℃で一晩乾燥させ、残留水を除去する。メタタングステン酸アンモニウムを脱イオン水に溶解して、約2.4重量%のタングステン金属濃度を有する溶液を得る。従来の溶液滴下含浸法を使用して、約20gの乾燥チタニア粉末に約18gのタングステン溶液を含浸させ、金属として約2.15重量%のタングステンを有する固形物を得る。この固形物を110℃で一晩乾燥させ、400℃で2時間か焼する。クエン酸ビスマスを水酸化アンモニアに溶解して、金属として約12.8重量%のビスマスを含む溶液を得る。この溶液の17gの部分を、溶液滴下含浸技術を使用してチタニアに担持されたタングステンに含浸させて、金属として約9.4重量%のBiを有する材料を提供する。この生成物を110℃で一晩乾燥させ、400℃で2時間か焼する。これをサンプルAとする。
【0088】
ビスマスとタングステンの含浸順序を逆にして、上記プロセスを繰り返す。これをサンプルBとする。
【0089】
比較サンプルには、PbOを含浸させたアルミナの市販の吸着剤を含む(サンプルC)。比較サンプルDおよびEは、それぞれ酸化ビスマスおよび酸化タングステンのみを含んで上記のように調製される。比較サンプルDは、「タングステンを含まず」、金属として約9.4%のBiを含有する。比較サンプルEは、「ビスマスを含まず」、金属として2重量%のタングステンを含有する。
【0090】
実施例2:アルシンの除去
約1mLの吸着剤を反応器に充填する。約100ppmwのアルシンを含む液体プロパンを、周囲温度と約220psigの圧力で反応器に通過させる。液体の空間速度は10h-1に設定されている。反応器を通過する液体流を、アルシン含有量について分析する。実験は、90%の除去効率を示す、約10ppmwのアルシンが反応器を突破するまで行われる。
【0091】
結果を表1に示す。「ヒ素取り込み量」は、使用済み吸着剤で求める。ヒ素取り込み量は、効率90%の時点での新鮮な吸着剤の重量当たりのヒ素の重量%を表す。この量は、吸着剤のアルシン容量の尺度であり、すなわち、アルシン除去効率の尺度になる。
【表1】
【0092】
サンプルAおよびBは本発明の例である。サンプルC、D、Eは比較例である。サンプルAは、サンプルDと比較して27%、サンプルCと比較して117%改良されたアルシン除去効率を示す。
【0093】
実施例3:チタニア押出物上の酸化ビスマスおよび酸化タングステン
実施例1を繰り返し、チタニア粉末をチタニア押出物(直径1/8”)で置き換え、クエン酸ビスマスの代わりに硝酸ビスマス(20重量%ビスマス金属原液)を使用する。金属として1.4重量%および6.5重量%のタングステンを有するサンプル(サンプルF)と、金属として約11重量%のビスマスを有するサンプル(サンプルG)を調整する。
【0094】
タングステンを含まないサンプル(サンプルH)を、硝酸ビスマスをチタニア押出物に含浸させることによって調製する。
【0095】
実施例4:アルシンの除去
実施例2と同様に、「ヒ素取り込み量」を求める。結果を表2に示す。ヒ素取り込み量は、効率90%の時点での新鮮な吸着剤の重量当たりのヒ素の重量%を表す。この量は、吸着剤のアルシン容量の尺度であり、すなわち、アルシン除去効率の尺度になる。
【表2】
【0096】
サンプルFおよびGは本発明の例である。サンプルCおよびHは比較例である。サンプルGは、サンプルHと比較して72%改良されたアルシン除去効率を示す。
【0097】
前述の説明では、本開示の実施形態の完全な理解を促すために、特定の材料、寸法、プロセスパラメータなどの様々な点で特定の詳細が示されている。特定の特徴、構造、材料、または特性は、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。「例」または「例示的」という語は、例、実例、または例示となることを意味するために本明細書で使用される。本明細書において「例」または「例示的」と記載される任意の態様または設計は、必ずしも他の態様または設計より好ましいまたは有利であると解釈されるべきではない。むしろ、「例」または「例示的」という語の使用は、概念を具体的な形で提示することを意図している。本出願で用いられる場合、「または」という語は、排他的な「または」ではなく、包括的な「または」を意味することを意図している。すなわち、別途明示されていない限り、または文脈から明らかでない限り、「XがAまたはBを含む」とは、自然な包括的組合せのいずれをも意味することを意図している。つまり、XがAを含み、XがBを含み、またはXがAとBの両方を含む場合、「XがAまたはBを含む」は、上記の例のいずれにおいても満たされる。
【0098】
さらに、本明細書に記載される材料および方法を説明する文脈(特に以下の請求項の文脈)における用語「a」、「an」、「the」、および同様の指示語の使用は、本明細書で別途指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を含むと解釈される。
【0099】
本明細書での値の範囲の列挙は、本明細書で別途指示がない限り、範囲内に含まれる各個別の値を個別に参照する簡略法として機能することのみを意図し、各個別の値は、本明細書で個別に列挙されているのと同様に本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されている全ての方法は、本明細書で別途指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。さらに、列挙された値の配列は、範囲の境界を定義するものと考えられる。例えば、1、2、または3から、4、5、または6の範囲は、1から4、1から5、1から6、2から4、2から5などだけではなく、1~2、1~3、2~3、4~6なども含むものと理解される。
【0100】
全体を通して使用される「約」という語は、実験または測定誤差(例えば、±1%)によって導入される可能性のある若干の変動を言い表し、説明するために使用される。全ての数値は、明示的に示されているか否かに関わらず、「約」という用語で修飾されるものとする。「約」という語によって修飾された数値には、識別された特定の値が含まれる。例えば、「約5.0」には5.0を含む。
【0101】
「本質的にない」または「実質的にない」または「実質的に含まない」という語は、「意図的に添加されていない」ことを意味し、微量または不注意の量のみが存在することがあり得る。例えばこれは、例えば全吸着剤組成物と呼ばれる組成物の重量に基づいて、≦5重量%、≦4重量%、≦3重量%、≦2重量%、≦1重量%、≦0.5重量%、または≦0.25重量%存在することを指し得る。例えば、鉛を実質的に含まない吸着剤組成物は、鉛が検出可能な限界未満であるか、またはその存在が吸着剤の性能に無視できる影響しか及ぼさない程度の吸着剤組成物を指す場合がある。
【0102】
本明細書全体を通して「一実施形態」、「ある実施形態」、「1つまたは複数の実施形態」、「実施形態」、または「一部の実施形態」との言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、材料、または特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、「1つまたは複数の実施形態において」、「ある実施形態において」、「1つの実施形態において」、または「一部の実施形態において」などの語句が本明細書全体の様々な箇所に出現することが、必ずしも本開示の同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、材料、または特性は、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0103】
上記の説明は例示を意図したものであり、限定を意図したものではないことを理解されたい。上記の説明を読んで理解すると、当業者においては他の多くの実施形態が自明となるであろう。したがって、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照して、そのような特許請求の範囲が権利を与えられる均等物の全範囲に照らして決定されるべきである。本明細書で提供される任意および全ての例または例示的言語(例えば「など」)の使用は、材料および方法をよりよく説明することのみを意図したものであり、別途請求されない限り、範囲を限定するものではない。本明細書中のいかなる言葉も、請求されていない要素を、開示された材料および方法の実施に必須であることを示すものと解釈されるべきではない。
【0104】
本明細書に開示される実施形態は、特定の実施形態を参照して説明されたが、これらの実施形態は、本開示の原理および用途の単なる例示であることを理解されたい。本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、本開示の方法および装置に対して様々な変形および変更を行うことができることは、当業者には明らかであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内にある変形および変更を含むことが意図され、上記の実施形態は、限定ではなく例示の目的で提示される。