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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】光学的配置とレーザシステム
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/00 20060101AFI20240104BHJP
   G02B 27/09 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
G02B5/00
G02B27/09
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020568302
(86)(22)【出願日】2019-06-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-14
(86)【国際出願番号】 EP2019064581
(87)【国際公開番号】W WO2019243042
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-04-13
(31)【優先権主張番号】102018115126.8
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506065105
【氏名又は名称】トルンプフ レーザー- ウント ジュステームテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Laser- und Systemtechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Johann-Maus-Strasse 2, D-71254 Ditzingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ベック、トシュテン
(72)【発明者】
【氏名】フラム、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ハイムズ、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ヘルシュテルン、ユリアン
(72)【発明者】
【氏名】リンゲル、クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】マルシャル、フェリクス
(72)【発明者】
【氏名】ティフェルダー、ジルケ
(72)【発明者】
【氏名】ティルコルン、クリストフ
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0176758(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102313915(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00 - 5/136
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射レーザ光(20)を、伝搬方向(z)に沿って伝搬する線状の出射光(28,40)であって作業平面(42)において、線(x)の方向に沿って延びる線状のビーム断面を有する出射光(28,40)に変換するための光学的配置(32)であって、
入射レーザビーム(20)が入射する入射開口(50)、及び開口長手方向(58)に沿って延びる出射開口(52)を有する再形成光学ユニット(22)であって、前記入射開口(50)を通って入射した入射レーザ光(20)を、前記出射開口(52)を通って出射されるビームパケット(24)に変換する再形成光学ユニット(22)と、
前記ビームパケット(24)を線状の出射ビーム(40)に変換するように設計され、前記ビームパケット(24)の異なるビームセグメント(56a~56f)が、線(x)の方向に沿って相互混合され、且つ重畳される均質化光学ユニット(26)と、
を有し、
前記開口長手方向(58)が、伝搬方向(z)を中心に前記線(x)の方向に対して回転角(α)だけ回転しており、
前記回転角(α)は、前記線(x)の方向と前記伝搬方向(z)に垂直な軸(y)によって形成される平面内に存在し、
前記回転角(α)は、前記均質化光学ユニット(26)を通過し、前記線(x)の方向に対して交差して重ね合わされることで形成された、前記ビームセグメント(56a~56f)に基づいて生じる出射光(28)の強度曲線の側面(76)の前記軸(y)に沿った勾配に影響を及ぼすように調整されることを特徴とする
光学的配置(32)。
【請求項2】
前記回転角(α)は0度より大きく90度未満である、請求項1に記載の光学的配置(32)。
【請求項3】
前記再形成光学ユニット(22)のために調整可能な保持装置(60)が設けられ、ここで、前記保持装置(60)は、前記回転角(α)が調整可能なように設計されている請求項1又は請求項2に記載の光学的配置(32)。
【請求項4】
前記再形成光学ユニット(22)は、高い空間コヒーレンスを有する入射レーザビーム(20)が前記入射開口(50)から入射すると、前記出射開口(52)から出射するビームパケット(24)の空間コヒーレンスが十分に減少し、インコヒーレントとなる請求項1~3の何れか1項に記載の光学的配置(32)。
【請求項5】
前記再形成光学ユニット(22)は、入射レーザビーム(20)の隣接するビームセグメントが前記再形成光学ユニット(22)を通過する際にビームパケット(24)のビームセグメント(56a~56c)に再配置されるように設計され、ここで、前記ビームパケット(24)の隣接するビームセグメントは、前記再形成光学ユニット(22)を通過する際に異なる光路を通過して前記ビームパケット(24)の空間コヒーレンスが減少し、インコヒーレントとなる請求項1~4の何れか1項に記載の光学的配置(32)。
【請求項6】
前記再形成光学ユニットは、モノリシックなプレート状の透明材料(44)から形成され、前記透明材料(44)は、プレートの前面(46)の領域と、前記前面(46)と実質的に平行に延在するプレートの後面(48)の領域とを有し、前記プレートの前面(46)の領域は、前記入射開口(50)を提供し、前記プレートの後面(48)の領域は、前記出射開口(52)を提供し、前記再形成光学ユニット(22)は、前記入射開口(50)を通って結合した後の入射レーザビーム(20)のビームセグメント(54a~54c)を、前記プレートの前面(46)及び前記プレートの後面(48)の反射によって前記出射開口(52)に導くように設計されている請求項5に記載の光学的配置(32)。
【請求項7】
前記出射開口(52)は、長方形であって、長方形の長辺が、前記開口長手方向(58)に平行に延在していることを特徴とする、請求項1~6の何れか1項に記載の光学的配置(32)。
【請求項8】
前記出射開口(52)は、台形又は多角形又は帯状又は自由形状に延在し、好ましい長手方向が前記開口長手方向(58)に平行に延在する、請求項1~6のいずれか1項に記載の光学的配置(32)。
【請求項9】
前記均質化光学ユニット(26)は、前記線(x)の方向に対して垂直であり、前記作業平面(42)内又は前記作業平面(42)からオフセットされた焦点面内の伝搬方向(z)に対して垂直である軸(y)に関して、前記ビームパケット(24)を集束及び/又は光学的に結像する横方向光学ユニット(66)を備える、請求項1~8の何れか1項に記載の光学的配置(32)。
【請求項10】
前記均質化光学ユニット(26)は、前記線(x)の方向に垂直かつ前記伝搬方向(z)に垂直な軸(y)に関して高空間周波数をフィルタリングする光学ローパスフィルタ(74)を備えることを特徴とする請求項1~9の何れか1項に記載の光学的配置(32)。
【請求項11】
ビーム断面が線状の強度プロファイル(I)を有する強度分布(L)を備えるビームを発生させるためのレーザシステム(10)であって、
レーザビーム(16)を放射するためのレーザ光源(14)と、
入射開口(50)に向かう入射レーザビーム(30)がレーザ光源(14)によって供給されるように配置された請求項1~10の何れか1項に記載の光学的配置(32)と、を備えるレーザシステム(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
入射レーザビームが線状の出射レーザビームとして出射される光学的配置を備えるレーザシステムである。
【背景技術】
【0002】
言及されているレーザシステムは、特に、線状に延びるビーム断面を示す強度分布を有する高強度ビームを発生するために使用される。以下では、線の延長として定義される軸を強度分布の「長軸」と呼び、前記線の方向に垂直で伝搬方向に垂直な軸を「短軸」とも呼ぶ。幾何学的関係を記述する目的で、長軸(x)、短軸(y)及び伝搬方向(z)は、配向した右手直交座標系を定義すべきである。
【0003】
このようなビームプロファイルは、例えば、ガラス又は半導体の表面を処理する(例えば、焼戻し、焼鈍)ために使用される。この目的のために、線状ビームプロファイルは、処理される表面上を、長軸に対して実質的に垂直になるように走査される。放射ビームは、例えば、再結晶プロセス、表面融解、加工される材料への異材拡散プロセス、又は表面の領域における他の相変化を生起させることができる。このような処理プロセスは、例えば、TFTディスプレイの製造や半導体のドーピング、太陽電池の製造において使用されるが、建築用に美的に設計されたガラス表面の製造においても使用される。
【0004】
請求項1の前提部分の特徴を含む光学的配置は、特許文献1に記載されている。
【0005】
前述の処理プロセスは、長軸に沿った強度プロファイルが、できるだけ均質で実質的に一定である強度曲線を有することを前提要件とする。前述の処理プロセスのプロセス結果は、短軸に沿った強度曲線にも大きく依存する。例えば、強度曲線における意図しないピーク、又は強度プロファイルの過度に急峻な側面は、半導体表面の再結晶に好ましくない影響を及ぼし得るか、又は熱応力をもたらし得る。適用分野に応じて、例えば、ビームプロファイルは、いくつかの領域において一定であり且つ傾斜した側面を有する短軸に沿った曲線を有することが望ましい場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2018/019374 A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明によって扱われる問題は、強度分布が、長軸に沿ってできる限り均一な強度プロファイルを有し、所望のプロセス結果に関して短軸に沿った強度プロファイルの特性を改善することにある。特に、強度分布は、異なる適用分野に適応可能であるべきである
【課題を解決するための手段】
【0008】
この問題は、請求項1に記載の光学的配置によって解決される。光学的配置は、入射レーザ光を線状の強度プロファイルを有する出射光に変換する装置である。この点において、出射ビームは、伝搬方向に(空間平均で)伝搬し、光学的配置の光学作用平面において、本文脈において「線の方向」と称される方向に沿った線状曲線を有するビーム断面を有する。
【0009】
前記光学的配置は、入射レーザビームが入射する入射開口と、細長い出射開口とを有する再形成光学ユニットを備える。出射開口は、開口の長手方向に沿って細長い方法で延在する。この点において、開口長手方向に沿った出射開口の寸法は、開口長手方向に垂直な寸法よりもかなり大きい。
【0010】
前記再形成光学ユニットは、入射開口を通して入射した入射レーザビームが、出射開口の下流の理論的観察面において既に実質的に線状の強度分布を形成するビームパケットに変換されるように設計される。前記ビームパケットは、特に細長い出射開口にわたって分布され、好ましくは出射開口を完全に満たす多数のビームセグメントを含む。
【0011】
前記光学的配置は、また、均質化光学ユニットを含み、これは、再形成光学ユニットから出射されるビームパケットを捕捉、出射ビームパケットを所望の線状強度プロファイルに変換するように設計される。前記均質化光学ユニットは、線の方向に沿ってビームパケットの異なるビームセグメントを相互混合して重ね合わせるように設計され、強度プロファイルはそれによって線の方向に関して均質化される。
【0012】
前記開口長手方向は線の方向と平行に延びない。むしろ、開口長手方向は、線の方向に対して伝搬方向を中心に非消失回転角だけ回転した態様で延在する。この点において、開口長手方向と線の方向は、伝搬方向に垂直な平面(すなわち、x-y平面)に投影されて、それらの間の回転角を囲む。回転角は、線の方向と開口長手方向とで囲まれた数学的に正の意味での鋭角(すなわち、デカルト座標系のx軸から出発して数学的に正で測定された角度)として定義することができる。回転角の絶対値は、光学的結果に対して実質的に決定的であるため、回転角は、開口長手方向と線の方向との間に囲まれた鋭角の絶対値によっても定義することができる。
【0013】
前述の実施形態によれば、長軸(x)に沿った出射ビームの強度曲線は、短軸(y)に沿った強度曲線と著しく異なる。均質化光学ユニットの長軸(x)に沿った強度分布は極めて均一である。従って、強度分布は、線の方向即ち長軸(x)の方向に沿ってほぼ一定の曲線を有し、比較的急峻な側面を有する周辺部で下降する(「トップハットプロファイル」と呼ばれる)。
【0014】
開口長手方向に沿って互いに隣接して出ているビームセグメントの強度は、均質化光学ユニットによって線の方向に沿って加算的に重畳される。開口長手方向の回転オフセット曲線と線の方向とにより、ビームパケットの隣接するビームセグメントは、短軸(y)に沿って互いにオフセットされる。その結果、個々のビームセグメントの寄与は位置に依存して短軸に沿って変化し、従って強度分布は均質化後の短軸に沿って傾斜する側面を有する。この場合の側面又は側面の急峻な傾斜は、回転角に依存し、従って、回転角を介して連続的に調節することもできる。厳密に規定された側面の急峻さが望まれる場合には、ホルダを静止させるように設計することもできるし、又はそれに応じて出射開口を傾斜させるように設計することもできる。
【0015】
したがって、短軸(x)に沿った位置座標の関数としての強度プロファイルの表現によれば、出射ビームは、長軸(y)に沿った均質化のために一部の領域で実質的に一定の値を有し、両側は基準値(ゼロ)に落ちる。
【0016】
回転角は0°より大きく、90°より小さいことが好ましい。
【0017】
回転角を連続的に調節可能にするために、再形成光学ユニットは、調節可能なホルダによって、光学的配置内に保持され得る。回転角を変えることにより、上述したように、短軸に沿った強度分布の側面の急峻性を調整することができ、したがって、出射ビームは、異なる適用分野に適応させることができる。ホルダは、好ましくは、回転角が連続的に調整可能であるように設計される。
【0018】
再形成光学ユニットは、好ましくは、コヒーレント入射レーザビーム(すなわち、入射開口の全体にわたって空間的コヒーレンスを有する入射レーザビーム)、又は少なくとも部分的コヒーレント入射レーザビームが入射開口を通して入射したときに、ビームパケットを生成し、出射開口から出射すると空間的コヒーレンスが減少し、好ましくは、空間的コヒーレンスが大幅に減少し、又はインコヒーレントであるように設計される。その結果、ビーム経路の下流にある均質化ユニットにおける干渉効果が減少するか、又は完全に回避される。このような干渉効果は、意図しない極端な現象をもたらす可能性があり、それによって、上述の表面処理に関するプロセス結果に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0019】
前記空間コヒーレンスの低減又は除去は、例えば、再形成光学ユニットを通過する際に入射レーザビームの隣接するビームセグメントに対して異なる光路長が提供されるように前記再形成光学ユニットを設計することによって達成することができる。特に、再形成光学ユニットは、入射レーザビームの隣接するビームセグメントが再形成光学ユニットを通過する際に出射開口を通って出射する出射ビームパケットのビームセグメントが異なる光路長をカバーすべく再配置されるように設計される。特に、再形成光学ユニットは、入射開口の反対領域及び周辺領域に入射するビームセグメントの光路長が、入射レーザビームのコヒーレンス長よりも大となるように設計される。
【0020】
再形成光学ユニットは、好ましくは、入射レーザビームの波長に対して光学的に透過性即ち透明である材料からプレート状且つ一体に形成される。したがって、再形成光学ユニットは、プレート前面と、前記プレート前面に略平行に延びるプレート後面とを有する。この点において、プレート前面及びプレート後面は、平面状に延在するプレートの大きな区画面を形成している。特に、前記プレート前面の領域は入射開口とされ、且つ前記プレート後面の領域は出射開口とされている。前記再形成光学ユニットは、入射レーザビームのビームセグメントが、入射開口を通して結合された後、プレート前面及びプレート後面上における少なくとも1回の反射、好ましくは多数回の反射によって、出射開口に導かれるように設計される。前記反射の数は、特に、入射開口における入射位置と入射角とに依存する。したがって、入射レーザビームの異なるビームセグメントは、異なる光路長をカバーする。前記反射は、特に、入射レーザビームの異なる(特に隣接する)ビームセグメントが、再形成光学ユニットを通過する際に再配置され、出射ビームセグメントとして出射開口を通って出るようにして行われる。
【0021】
従って、前記入射開口又は前記出射開口は、完全に透明な光インカップリング表面又は光アウトカップリング表面として設計することができる。入射開口又は出射開口として作用しない、プレート前面及びプレート後面の残りの領域は、特に反射性コーティングを設けて鏡面とすることができる。しかし、結合されていないビームが、プレート前面とプレート後面との間の全内部反射によって導波されるため、反射被膜が不要となる実施形態も有利となり得る。
【0022】
出射ビームパケットの特性は、前述の再形成光学ユニットの位置合わせによって影響を受ける。再形成光学ユニット用の調整可能なホルダは、特に、ビーム伝搬方向に垂直な回転角を設定することもできるように設計される(特に、x軸及び/又はy軸に関して)。出射開口を出る際のビームセグメントの位置は、x軸及びy軸を中心とする回転によって影響される。特に、開口長手方向を中心とした回転角が調整可能である。出射開口を出る際のビームセグメントの角度及び位置は、再形成光学ユニットを開口長手方向の周りに回転させることによって影響を受ける。特に、再形成光学ユニットを通過する際の内部反射の数、ひいては光路長が影響される。さらに、出射ビームパケットの開口長手方向と伝搬方向に垂直な方向への延長、すなわち、短軸(y)における線状プロファイルの延長も影響される。
【0023】
再形成光学ユニット用の調整可能なホルダは、好ましくは、再形成光学ユニットが、開口長手方向と垂直で且つ伝搬方向と垂直な軸を中心として、回転角だけ回転することもできるように設計される。この軸を中心とした回転によって、出射開口においてビームセグメントが互いに分離される程度を変化させることが可能である。従って、出射するビームパケットの長手方向の延長と強度が影響を受ける。
【0024】
出射開口は、特に平坦な光出射面として設計される。出射開口に対して種々の幾何学的形状が有利となり得る。特に、出射開口は、矩形であり、開口長手方向に平行に延びる長い矩形側面を有する。しかしながら、出射開口は、台形、多角形、帯状又は自由形状として延在してもよく、好ましい長手方向は開口長手方向に平行である。したがって、出射開口は、基本的に、開口長手方向が開口長手方向に垂直な方向よりも長さが大きい平面延長部を有する。出射開口を適切に形成することにより、引き続いて行われる均質化によって生じる強度プロファイルの側面領域の正確な強度曲線が影響される。
【0025】
均質化光学ユニットは、好ましくは、再整形光学ユニットから出射されるビームパケットの異なるビームセグメントが、線の方向に垂直でかつ伝搬方向に垂直な軸に関して相互混合されず、且つ/又は互いに重ね合わされないように働く。例えば、均質化光学ユニットは、それぞれのシリンダ軸に沿って延在するシリンダレンズを有する少なくとも1つのシリンダレンズアレイを備え、該シリンダ軸は、伝搬方向に垂直であって前記線の方向に垂直に延在し、したがって短軸(y)に沿って配向されている。シリンダーレンズは、特に、短軸yに関して何の湾曲もないように設計されている。シリンダーレンズは、好ましくは、ビームパケットが多数の隣接するシリンダーレンズを通過するように幾何学的寸法が決められる。
【0026】
均質化光学ユニットがフーリエレンズを備えることも考えられる。フーリエレンズは、長軸又は線の方向に沿ってビームセグメントを重ね合わせ、相互混合するように設計される。この目的のために、作業面は、例えば、フーリエレンズの焦点領域内に延在し得る。例えば、捕捉されたビームの各領域からのビームセグメントが、線の方向に沿って異なる、好ましくは全ての領域に集束されることが考えられる。
【0027】
均質化光学ユニットは、原則として、再形成光学ユニットから出てきたビームパケットが、短軸に関して作業面内で光学的に結像されるように設計することができる。
【0028】
前述の実施形態は、特に、線(長軸y)の方向に沿った線状出射ビームが、大きなビームパラメータ積、又は短軸に沿ったビームパラメータ積又は短軸に沿った回折比よりも大幅に大きな回折比Mによって特徴付けられるという効果を有する。この点において、出射ビームは、短軸yに対して高い焦点深度を有する。前述の光学的配置をレーザシステムで使用する場合には、光学構成要素を互いに調整し、整合させることが簡略化される。
【0029】
有利な一実施形態によれば、均質化光学ユニットはまた、作業面内の短軸(y)に対して、又は作業面からオフセットされた焦点面内におけるビームパケットの焦点合わせ及び/又は結像のために設計された横方向光学ユニットを含む。したがって、横方向光学ユニットは、短軸に沿ってビームプロファイルを形成する。横方向光学ユニットは、特に、ビーム経路内に連続して配置される2つ以上の収束レンズを有する配置として設計することができる。ビームパケットの中間焦点は、少なくとも1つのレンズによって中心焦点面内に生成されることが好ましい。実施形態に応じて、次いで、中間焦点は、少なくとも1つのさらなるレンズで作業面内に結像され得る。
【0030】
さらなる実施形態においては、均質化光学ユニットは、短軸(y)に関して高い空間周波数をフィルタリングするための光学ローパスフィルタを備える。前記光学ローパスフィルタによれば出射ビームに望ましくない強度ピークをもたらす可能性がある短軸(y)に沿った干渉アーチファクトを低減することができる。このような干渉アーチファクトは、例えば、再形成光学ユニットを通過する際に発生し得る。前述のローパスフィルタリングは、短軸に沿って平滑化された強度曲線をもたらし、従って、表面処理におけるプロセス結果を改善する。上述した横方向光学ユニットの場合、ローパスフィルタを実現するために、例えば、レンズ配置の中央焦点面において結像されるビームパケットの角度スペクトルによってローパスフィルタを実装することができる。例えば、スリットストップを中央焦点面に配置することができる。スリットストップは、特に長軸(x)に沿って延在するスリット状のストップ開口部を有する。ストップ開口部は長方形であることが好ましい。
【0031】
最初に述べた問題は、強度プロファイルが線状の強度分布を有するビームを発生させるためのレーザシステムによっても解決される。前記レーザシステムは、レーザビームを放射するためのレーザ光源と、上述したタイプの光学的配置とを備える。光学的配置は、入射レーザビームがレーザ光源によって供給されるように配置される。
【0032】
レーザ光源は、特にマルチモード動作に適しているか、又はマルチモード動作をするように設計されている。原理的には、レーザ光源のレーザビームは、入射開口を通して直接入射するようにしてもよい。しかし、入射開口に入る前に、予備形成光学ユニットによってレーザビームを再形成することも考えられる。予備形成光学ユニットは、例えば、コリメート光学ユニットとして設計することができる。例えば、予備形成光学ユニットは、入射レーザビームが楕円ビーム断面を有するようにアナモルフィックに作用することができる。
【0033】
原理的に、均質化光学ユニットの作用面に線状の強度分布を直接付与することができるので、均質化光学ユニットの出射ビームはレーザ系の全体強度分布に正確に対応する。原理的には、レーザシステムの強度分布は、レーザシステムのプロセス平面内に設けられる。処理面は、光学的配置の作業面から逸脱してもよい。例えば、出射ビームは、ビーム経路の下流に配置されたさらなるコリメート光学ユニット及び集束光学ユニットによって偏向及び/又は再形成することができる。また、均質化光学ユニットの下流の偏向ミラーによって、ビーム経路を折り畳むことも有利である。その結果、レーザシステムに必要な設置スペースを削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明のさらなる詳細及び可能な実施形態について、以下に、以下を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、線状の強度分布を生成するためのレーザシステムにおけるビーム経路を示す概略図である。
図2図2は、予備形成光学ユニット、再形成光学ユニット及び均質化光学ユニットを有する光学的配置の斜視図である。
図3図3は、再形成光学ユニットの概略図である。
図4図4は、再形成光学ユニットにおけるビーム経路を示す模式図である。
図5図5は、均質化光学ユニットの効果を長軸(線の方向)に沿って説明する模式図である。
図6a図6aは、短軸(y)に沿った均質化光学ユニットの効果を説明する模式図である。
図6b図6bは、短軸(y)に沿った均質化光学ユニットの効果を説明する模式図である。
図6c図6cは、短軸(y)に沿った均質化光学ユニットの効果を説明する模式図である。
図6d図6dは、短軸(y)に沿った均質化光学ユニットの効果を説明する模式図である。
図7図7は、強度プロファイルの回転角依存性を示す模式図である。
図8図8は、短軸(y)が側面勾配を示す強度曲線の概略図である。
図9図9は、回転角に対する側面勾配の依存性を示す模式図である。
【0036】
以下の記載及び図面においては、同一の符号は同一又は対応する構成要素を示す。
【0037】
図1は、プロセス平面12内に線状ビーム断面を有する強度分布Lを有するビームを発生させるレーザシステム10の概略図である。
【0038】
レーザシステム10は、レーザビーム16を放射するための少なくとも1つのレーザ光源14を備える。レーザ光源14は、好ましくは、マルチモードレーザとして設計される。レーザビーム16は、任意に予備形成光学ユニット18を介して入射レーザビーム20を供給する。予備形成光学ユニット18は、例えば、コリメート効果を有してもよく、且つ/又は楕円ビーム断面を有する入射レーザビーム20内にレーザビーム16を再形成することができる。
【0039】
入射レーザビーム20は、再形成光学ユニット22を通って導かれ、ビームパケット24としてそこから出る。ビームパケット24は、以下により詳細に説明するように、均質化光学ユニット26によって出射ビーム28に変換される。出射ビーム28は、コリメート光学ユニット及び/又は集束光学ユニット30によって任意に強度分布Lに変換することができる。
【0040】
大きな表面領域を処理するためには、非常に細長い線状の強度プロファイルを達成することが望ましい場合がある。この点において、強度分布L、L'が互いに補完して細長い線を形成するように、前記タイプ(10、10’)の複数のレーザシステムを設け、配置することが考えられる。
【0041】
再形成光学ユニット22及び均質化光学ユニット26は、レーザ光源14によって放射されるレーザビーム16の線状の形態への変換が行われる光学的配置32の一部である。また、光学的配置32は、予備形成光学ユニット18及び/又はコリメート/集束光学ユニット30を含んでもよい。
【0042】
図2は、光学的配置32を示す斜視図である。レーザビーム16は、まず偏向ミラー34及び/又はレンズ手段36によって入射レーザビーム20内に再形成されることが考えられる。例示された例では、予備形成光学ユニット18の光学素子は、入射レーザビームが楕円ビーム断面38を有するように設計される。さらに、入射レーザビーム20は、少なくとも1つのさらなるレーザ光源からレーザビーム16’によって供給してもよい。異なるレーザ光源からのレーザビーム16、16’は、例えば、共通の偏向ミラー34(図2の点線及び破線のビーム経路)を介して一緒にすることができる。
【0043】
図2において、幾何学的関係を示すためにデカルト座標系(x、y、z)を示す。図示の例では、入射レーザビーム20はz方向に沿って伝搬する。楕円ビーム断面38は、y軸に沿った長軸を有し、対応して、x軸に沿った小さな直径を有する。
【0044】
以下でより詳細に説明するように、再形成光学ユニット22は、入射レーザビーム20をビームパケット24に再形成し、このビームパケットは、均質化光学ユニット26によって出射ビーム40に変換され、線(x)の方向に沿って光学的配置32の作業平面42内に線状に延在する。
【0045】
図3は、可能な一実施形態における再形成光学ユニット22の概略図である。図示の例では、再形成光学ユニット22は、レーザビームに対して透明である原材料からなる一体型のプレート状の再形成体44として設計されている。
【0046】
再形成体44は、プレート前面46と、これに平行に走るプレート後面48とを有する。プレート前面46の領域は、入射レーザビーム20を再形成体44内において結合することができる再形成光学ユニット22の入射開口50を提供する。プレート後面48の領域は、光アウトカップリング表面として作用し、ビームパケット24が出射する出射開口52を提供する。
【0047】
図4に模式的に示すように、再形成光学ユニット22は、特に、入射レーザビーム20の隣接するビームセグメント54a、54b、54cが、再形成光学ユニット22を通過する際にビームパケット24のビームセグメント56a、56b、56cに再配置されるように作用する。例示された例では、前記再配置は、入射開口50を介して結合されたビームセグメント54a、54b、54cがプレート前面46とプレート後面48との間の再形成体44内への内部反射によって出射開口52に導かれることによって生起する。ビームセグメント54a~54cは、異なる位置で入射開口を介して結合されるので、出射開口52から出て行くビームセグメント56a~56cは、異なる光路長をカバーしている。再形成体44は、特に、異なるビームセグメント56a~56cの光路が、ビームパケット24が空間コヒーレンスを大幅に減少させ、特にインコヒーレントであるように、互いに異なるように設計される。これは、特に、ビームセグメント56a~56cの光路長の差が、レーザビームのコヒーレンス長と比較して大きいためである。
【0048】
図2に示すように、再形成光学ユニット22は、出射開口52が線xの方向に対してz軸を中心に回転するように配置されている。図示の例では、このことは、回転角αによって特徴づけられるが、回転角αは、出射開口52の開口長手方向58と線xの方向との間の囲まれた鋭角を規定する。開口長手方向58は、細長い(図示の例では長方形)出射開口52が延びる方向である(図3参照)。
【0049】
再形成光学ユニット22は、調整可能な保持装置60(図2に概略的に示す)によって、光学的配置32内に保持されることが好ましい。保持装置60は、回転角αが連続的に調整可能となるように設計されている。
【0050】
図5に均質化光学ユニット26の動作原理を模式的に示す。原理的には、均質化光学ユニットは、ビームパケット24を捕捉し、前記ビームパケット24を、線(x)の方向に沿って線状に延びる出射ビーム40に変換するように配置される。ビームパケット24の異なるビームセグメント56a、56b、56cは、所望の線状強度分布が作業平面42に設定されるように、相互混合され、重ね合わされる。特に、好ましくは入射レーザビームのコヒーレンスを大幅に排除する再形成光学ユニット22と関連して、ビームパケット24のビームセグメントの相互混合及び重ね合せは、出射ビーム28が線xの方向に沿って大部分均質であり、実質的に一定の強度曲線を有する結果となる。
【0051】
例えば、均質化光学ユニット26は、ビームセグメント56a、56b、56c、・・・に作用する少なくとも1つのシリンダーレンズアレイ62を有してよく、その結果、これらのビームセグメントは、作業平面42内で重なり合う。均質化光学ユニットはまた、x軸に対して焦点を合わせるように設計されたフーリエレンズ64を含んでよい。フーリエレンズ64は、特に、作業平面42がフーリエレンズ64の焦点面内に延びるように配置される。
【0052】
均質化光学ユニット26は、好ましくは、短軸yに対してビームパケット24を集束及び/又は結像させるように設計された横方向光学ユニット66(図6a参照)も備えている。例えば、横方向光学ユニット66は、ビーム経路において連続するように配置された第1集光レンズ68及び第2集光レンズ70を備える。第1集光レンズ68の焦点面72において、強度分布はビームパケット24のフーリエ変換に実質的に対応する。さらなる実施形態では、光学ローパスフィルタ74を、例えば焦点面72内のスリットストップの形態で設けることができる。光学ローパスフィルタ74は、短軸yに対して高空間周波数をフィルタリングする。第2集光レンズ70は、焦点面72が第2集光レンズ70の物体側焦点面と一致するように配置されていることが好ましい。
【0053】
横方向光学ユニット66については、原理的に、異なる実施形態が考えられる。特に、図6(a)のように対称な構造を設けることは必ずしも必要ではない。2つ以上の収束レンズを有する、又は1つの収束レンズのみを有する配置も考えられる。対応する例を図6b~6dに模式的に示す。図6bは、単一の有効集束レンズ69を有する横方向光学ユニットを示し、これは、ビームパケット24のための中間焦点71を生成する。空間周波数は、例えば、光学ローパスフィルタ74によって中間焦点71においてフィルタリングすることができる。図6cは、基本構造を有する実施形態を示す。図6aと同様に、第1集光レンズ68及び第2集光レンズ70は異なる焦点距離を有する。この結果、画像スケールは1:1に等しくならない。集束レンズが3つある構造を図6(d)に模式的に示す。第1の収束レンズ68は、再び、光学ローパスフィルタ74を用いてフィルタリングを行うことができる中間焦点71を生成する。フィルタリング結果は、2つのレンズ70a及び70bの配列を有する作業平面42内に結像される。
【0054】
開口長手方向58と線xの方向との間の回転角が、短軸yに沿った出射ビーム28の強度曲線に及ぼす影響が、図7によって示されている。図7は出射開口52の概略図であり、開口長手方向58に沿って細長い方法で延びている。図示の例では、ビームパケット24のビームセグメント56a~56fは、出射開口52を通って出射する。
【0055】
均質化光学ユニット26(図5参照)を通過すると、ビームセグメント56a~56fは、長軸x(線の方向)に対して交差して重ね合わされる。隣接するビームセグメント56a~56fの回転角のために、各場合に短軸yに沿って互いにオフセットされるので、相互混合及び重ね合わせは、短軸yに沿って台形曲線を有する出射ビーム28を生じる。出射ビーム28の強度曲線の側面76の短軸yに沿った勾配は、回転角αを調整することによって影響を受け得る。
【0056】
図8は、一例として、短軸yに沿った位置座標の関数として、作業平面42内の出射ビーム40の強度の曲線を示す。強度I及び位置座標yは、無次元単位で与えられる。開口長手方向58と線xの方向との間の非消失回転角αを有する出射ビーム40が示されている。均質化光学ユニット26による均質化のために、出射ビーム40の強度分布は中央領域78において大きく一定の曲線を有し、側面76を有する周辺領域において落下する。側面76は、ビームパケット24のビームセグメント56a、56b、56c、・・・が、周辺領域における回転角αに起因して、出射ビーム40への寄与がより小さくなることから生じる。側面76の勾配は、短軸yに沿った位置座標の間隔の幅によって決定することができ、その間隔にわたって強度Iは、中央領域78における値の10%から90%に増加する(図8参照)。これにより、グラデーション三角形を定義することができる。グラデーションは、強度の増加(80%)と位置座標の必要な間隔の商として決定できる。
【0057】
側面の勾配(m)の回転角αに関する依存性を図9に模式的に示す。小さな角度(小角近似)の分野では、側面76の勾配は回転角に実質的に比例して減少する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図6d
図7
図8
図9