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特許7412378二次電池の製造方法および二次電池組立体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】二次電池の製造方法および二次電池組立体
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20240104BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240104BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALI20240104BHJP
   H01M 50/645 20210101ALI20240104BHJP
   H01M 50/655 20210101ALI20240104BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/052
H01M10/0587
H01M50/645
H01M50/655
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021039915
(22)【出願日】2021-03-12
(65)【公開番号】P2022139497
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2022-04-05
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(72)【発明者】
【氏名】原 尊
【審査官】森 透
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-116179(JP,A)
【文献】国際公開第2014/033822(WO,A1)
【文献】特開2007-257942(JP,A)
【文献】特開2018-106816(JP,A)
【文献】特開2002-280059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 10/36-10/39
H01M 50/60-50/77
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極を有する電極体と、
非水電解液と、
前記電極体と前記非水電解液とを収容する電池ケースであって、前記非水電解液を注液するための注液孔を有する電池ケースと、
を備える二次電池を製造する方法であって、
前記電池ケースに前記電極体が収容された状態で、該電池ケースの内部を負圧にすること;
前記電池ケースの内部が負圧となった状態で、前記注液孔を介して前記電池ケースの内部に前記非水電解液を注液すること;
前記非水電解液注液後に、前記電池ケースの内部と外部雰囲気とを連通させること;
前記連通後、第1封止部材を用いて前記注液孔を仮封止すること;
前記注液孔の仮封止をした状態で、前記電極体に、前記非水電解液の少なくとも一部を含浸させること;
前記第1封止部材を取り除いて前記注液孔を開封すること;および、
第2封止部材を用いて前記注液孔を封止すること、
を包含し、
ここで、
前記注液孔には、内周面にねじ切り加工が施された中空円筒状の連結部材が設けられており、
前記第1封止部材は、
中空円筒状の部材であり、
貫通孔を有するベース部と、該ベース部から延び、かつ、外周面にねじ切り加工が施された中空円筒状の筒部とを有する封止栓本体と、
通気性を有する通気性膜であって、前記ベース部における前記筒部と反対側の面に配置されて前記貫通孔の上端を覆う、あるいは、前記封止栓本体の中空内部に設けられた通気性膜と、
を備えており、
前記仮封止後の前記電池ケースの内部と外部雰囲気とは、前記通気性膜を介して通気可能であり、
前記通気性膜に対する、前記非水電解液由来の蒸気の透過性は、該通気性膜に対する水蒸気の透過性よりも小さく、
前記注液孔の前記仮封止では、前記筒部が前記連結部材に螺合され、
前記注液孔の前記封止では、前記第2封止部材が前記連結部材に螺合される、製造方法。
【請求項2】
前記正極は、長尺な帯状の正極シートであり、
前記負極は、長尺な帯状の負極シートであり、
前記電極体は、前記正極シートおよび前記負極シートが、セパレータを介在させつつ積層されて、シート長手方向に直交する捲回軸を中心として捲回された捲回電極体であり、
ここで、前記正極シート、前記負極シート、および前記セパレータの積層面は、前記捲回軸方向の両端から前記電極体の外部に対して開放されている、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記通気性膜は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、およびポリテトラフルオロエチレンからなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂材料で構成されている、請求項1または2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の製造方法および二次電池組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等の二次電池は、車両や携帯端末等の様々な分野において広く使用されている。この種の二次電池の一例として、正極および負極を有する電極体と、非水電解液と、該電極体および該非水電解液を収容する電池ケースと、を備える構成のものが挙げられる。電池ケースには、典型的には、非水電解液を注液するための注液孔が備えられている。上記二次電池の製造方法は、例えば、電極体を電池ケースに収容すること;および、電極体が収容された状態の電池ケースに非水電解液を注液すること(注液工程);を包含し得る。このように、二次電池の製造過程では、電極体と、非水電解液と、電池ケースと、を備える二次電池組立体が構築され得る。
【0003】
例えば特許文献1に記載の注液工程は、電池ケース内を減圧した状態で電解液の注液が開始され、電極体の少なくとも一部が電解液に浸漬された状態で注液を停止する第1注液工程;電池ケース内の気圧を高めて、電解液の液面を低下させる液面下げ工程;および、電解液の注液を再開し、電解液を規定量または規定高さまで注液する第2注液工程;を包含している。かかる構成の製造方法では、注液工程に掛かる時間を短くできる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-106816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電池ケースに注液した非水電解液を、より効率よく電極体に含浸させることが望まれている。
【0006】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、二次電池の製造時に、二次電池組立体の電極体への非水電解液の含浸効率を向上できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示される二次電池の製造方法は、正極および負極を有する電極体と、非水電解液と、上記電極体と上記非水電解液とを収容する電池ケースであって、上記非水電解液を注液するための注液孔を有する電池ケースと、を備える二次電池を製造する方法である。この製造方法は、上記電池ケースに上記電極体が収容された状態で、該電池ケースの内部を負圧にすること;上記電池ケースの内部が負圧となった状態で、上記注液孔を介して上記電池ケースの内部に上記非水電解液を注液すること;上記非水電解液注液後に、上記電池ケースの内部と外部雰囲気とを連通させること;上記連通後、第1封止部材を用いて上記注液孔を仮封止すること;上記注液孔の仮封止をした状態で、上記電極体に、上記非水電解液の少なくとも一部を含浸させること;上記第1封止部材を取り除いて上記注液孔を開封すること;および、第2封止部材を用いて上記注液孔を封止すること、を包含する。ここで、上記第1封止部材は、通気性を有する通気性膜を備えている。上記仮封止後の上記電池ケースの内部と外部雰囲気とは、上記通気性膜を介して通気可能である。上記通気性膜に対する、上記非水電解液由来の蒸気の透過性は、該通気性膜に対する水蒸気の透過性よりも小さい。
【0008】
かかる構成の製造方法では、上記のような通気性膜を備える第1封止部材を用いて、非水電解液を注液した後の電池ケースの注液孔を仮封止する。当該通気性膜は、通気性を有しているため、電池ケース内部と外部雰囲気との通気が可能となっている。これによって、電極体への非水電解液の含浸効率を向上させることができる。また、当該通気性膜は、非水電解液由来の蒸気が透過しにくい。そのため、電極体に非水電解液を含浸させている間の、非水電解液の外部への揮発を抑制することができる。
【0009】
ここに開示される製造方法の好適な一態様では、上記第1封止部材は、貫通孔を有する封止栓本体と、上記通気性膜とを有している。上記通気性膜が上記封止栓本体の上記貫通孔を塞いでいる。第1封止部材として、かかる構成の封止栓を用いることによって、上記効果に加えて、第1封止部材の脱着をより容易にすることができる。また、通気性膜(封止栓)を再利用することができる。
【0010】
ここに開示される製造方法の好適な他の一態様では、上記正極は、長尺な帯状の正極シートであり、上記負極は、長尺な帯状の負極シートである。上記電極体は、上記正極シートおよび上記負極シートが、セパレータを介在させつつ積層されて、シート長手方向に直交する捲回軸を中心として捲回された捲回電極体である。ここで、上記正極シート、上記負極シート、および上記セパレータの積層面は、上記捲回軸方向の両端から上記電極体の外部に対して開放されている。非水電解液は、上記開放積層面を介して捲回電極体に含浸し得る。そのため、捲回電極体を備える二次電池の製造方法における非水電解液の含浸効率の向上に対する要求が高まっている。ここで開示される技術の効果は、捲回電極体を有する二次電池の製造方法において、好ましく発揮され得る。
【0011】
ここで開示される製造方法の好適な他の一態様では、上記通気性膜は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、およびポリテトラフルオロエチレンからなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂材料で構成されている。上記樹脂材料は、通気性を有しながら、非水電解液由来の蒸気の透過性が低い。そのため、ここで開示される技術の効果を実現するために好適である。
【0012】
また、ここで開示される製造方法を用いて二次電池を製造すると、下記構成を有する二次電池組立体が提供される。この二次電池組立体は、正極および負極を有する電極体と、非水電解液と、上記電極体と上記非水電解液とを収容する電池ケースであって、上記非水電解液を注入するための注液孔を有する電池ケースと、を備える。上記注液孔および/またはその周囲には、通気性を有する通気性膜および/または該通気性膜の残渣が存在している。上記通気性膜に対する、上記非水電解液由来の蒸気の透過性は、該通気性膜に対する水蒸気の透過性よりも小さい。かかる構成によると、電極体への非水電解液の含浸効率を向上させることができる。また、電極体に非水電解液を含浸させている間の、非水電解液の外部への揮発を抑制することができる。
【0013】
ここで開示される二次電池組立体の好適な他の一態様では、上記正極は、長尺な帯状の正極シートであり、上記負極は、長尺な帯状の負極シートである。上記電極体は、上記正極シートおよび上記負極シートが、セパレータを介在させつつ積層されて、シート長手方向に直交する捲回軸を中心として捲回された捲回電極体である。ここで、上記正極シート、上記負極シート、および上記セパレータの積層面は、上記捲回軸方向の両端から上記電極体の外部に対して開放されている。ここで開示される技術の効果は、捲回電極体を有する二次電池の製造方法において、好ましく発揮され得る。
【0014】
ここで開示される二次電池組立体の好適な他の一態様では、上記通気性膜は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、およびポリテトラフルオロエチレンからなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂材料で構成されている。上記樹脂材料は、ここで開示される技術の効果を実現するために好適である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る製造方法によって製造される二次電池を模式的に示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係る製造方法で用いられる電極体を模式的に示す斜視図である。
図3】第1実施形態に係る製造方法で用いられる電極体の構成を示す模式図である。
図4】第1実施形態に係る製造方法の工程図である。
図5】第1実施形態に係る製造方法の一部を説明する模式図である。
図6】第1実施形態に係る製造方法における仮封止工程を示す部分断面図である。
図7】第2実施形態に係る製造方法における仮封止工程を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、ここで開示される技術のいくつかの好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、ここで開示される技術を特徴付けない二次電池および製造工程における二次電池組立体の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0017】
本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)と、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)と、を包含する概念である。
【0018】
本明細書において参照する各図における符号Xは「奥行方向」を示し、符号Yは「幅方向」を示し、符号Zは「高さ方向」を示す。また、奥行方向XにおけるFは「前」を示し、Rrは「後」を示す。幅方向YにおけるLは「左」を示し、Rは「右」を示す。そして、高さ方向ZにおけるUは「上」を示し、Dは「下」を示す。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、二次電池および製造工程における二次電池組立体の設置形態を何ら限定するものではない。また、本明細書において数値範囲を示す「A~B」の表記は、「A以上B以下」という意味と共に、「Aを上回り、かつ、Bを下回る」という意味も包含する。
【0019】
<第1実施形態>
ここで開示される製造方法を実施することによって得られる二次電池の一例を、図1に示す。図1は、第1実施形態に係る製造方法によって製造される二次電池を模式的に示す斜視図である。二次電池100は、図示されない電極体および電解液と、該電極体および該電解液を収容する電池ケース10と、を備えている。二次電池100は、ここではリチウムイオン二次電池である。
【0020】
電池ケース10は、開口を有するケース本体12と、開口を塞ぐ蓋体14と、を備えている。電池ケース10は、ケース本体12の開口の周縁に蓋体14が接合されることによって、一体化されて気密に封止(密閉)されている。蓋体14には、注液孔15と、安全弁17と、正極外部端子30と、負極外部端子40と、が設けられている。注液孔15は、電池ケース10内に電解液を注液するための孔であり、封止部材16(後述する第2封止部材)により封止されている。安全弁17は、電池ケース10内の圧力が所定値以上になったときに破断して、電池ケース10内のガスを外部に排出するように構成された薄肉部である。正極外部端子30および負極外部端子40は、電池ケース10内に収容された電極体と電気的に接続されている。
【0021】
電池ケース10は、六面箱型状に形成されており、矩形状の底面12aと、一対の矩形状幅広面12bと、一対の矩形状幅狭面12cと、を有している。一対の幅広面12bは、底面12aの2つの長辺からそれぞれ立ち上がっている。一対の幅狭面12cは、底面12aの2つの短辺からそれぞれ立ち上がっている。
【0022】
特に限定するものではないが、電池ケース10は、例えば金属製である。電池ケース10を構成する金属材料としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等が挙げられる。あるいは、電池ケース10はポリイミド樹脂等の耐熱性樹脂材料により構成されてもよい。
【0023】
電極体は、二次電池100の発電要素であり、正極、負極、および該正極と該負極とを離隔するセパレータを備えている。図2は、第1実施形態に係る製造方法で用いられる電極体を模式的に示す斜視図である。図3は、第1実施形態に係る製造方法で用いられる電極体の構成を示す模式図である。図2,3に示すように、電極体20には、正極内部端子50と負極内部端子60とが取り付けられている。正極内部端子50は、正極外部端子30(図1参照)と接続される。負極内部端子60は、負極外部端子40(図1参照)と接続される。
【0024】
図3に示すように、電極体20は、正極22および負極24を有する。電極体20は、ここでは、長尺な帯状の正極シート22と帯状の長尺な帯状の負極シート24とが長尺な帯状のセパレータ26を介して積層され、シート長手方向に直交する捲回軸WLを中心として捲回された、扁平形状の捲回電極体である。図2に示すように、電極体20は、一対の幅広面20aと、一対の幅方向Yの端面20bと、を有している。端面20bは、正極22、負極24、およびセパレータ26の積層面であり、電極体20の外部に対して開放されている。
【0025】
詳細な図示は省略するが、電極体20は、捲回軸WLが幅方向Yと平行になる向きで、外装体12の内部に配置されている。図1の電池ケース10内に収容された状態において、電極体20の一対の幅広面20aは、電池ケース10の幅広面12bと対向している。また、一対の端面20bは、幅狭面12cと対向している。
【0026】
正極シート22は、長尺な帯状の正極集電箔22c(例えばアルミニウム箔)と、正極集電箔22cの少なくとも一方の表面上に固着された正極活物質層22aとを有する。特に限定するものではないが、正極シート22の幅方向Yにおける一方の側縁部には、必要に応じて、正極保護層22pが設けられていてもよい。なお、正極活物質層22aや正極保護層22pを構成する材料は、この種の二次電池(本実施形態では、リチウムイオン二次電池)において使用されるものを特に制限なく使用することができ、ここに開示される技術を特徴づけるものではないため、ここでの詳細な説明は省略する
【0027】
正極集電箔22cの幅方向Yの一方の端部(図3の左端部)には、複数の正極タブ22tが設けられている。複数の正極タブ22tは、それぞれ幅方向Yの一方側(図3の左側)に向かって突出している。複数の正極タブ22tは、正極板22の長手方向に沿って間隔を置いて(間欠的に)設けられている。正極タブ22tは、正極集電箔22cの一部であり、正極集電箔22cの正極活物質層22aおよび正極保護層22pが形成されていない部分(集電箔露出部)である。複数の正極タブ22tは幅方向Yの一方の端部(図3の左端部)で積層され、正極タブ群23を構成している。正極タブ群23に、正極内部端子50が接合されている(図2参照)。
【0028】
負極シート24は、長尺な帯状の負極集電箔24c(例えば銅箔)と、負極集電箔24cの少なくとも一方の表面上に固着された負極活物質層24aと、を有する。なお、負極活物質層24aを構成する材料は、この種の二次電池(本実施形態では、リチウムイオン二次電池)において使用されるものを特に制限なく使用することができ、ここに開示される技術を特徴づけるものではないため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0029】
負極集電箔24cの幅方向Yの一方の端部(図3の右端部)には、複数の負極タブ24tが設けられている。複数の負極タブ24tは、幅方向Yの一方側(図3の右側)に向かって突出している。複数の負極タブ24tは、負極板24の長手方向に沿って間隔を置いて(間欠的に)設けられている。負極タブ24tは、ここでは負極集電箔24cの一部であり、負極集電箔24cの負極活物質層24aが形成されていない部分(集電箔露出部)である。複数の負極タブ24tは幅方向Yの一方の端部(図3の右端部)で積層され、負極タブ群25を構成している。負極タブ群25に、負極内部端子60が接合されている(図2参照)。
【0030】
特に限定するものではないが、電極体20の幅広面20aの幅方向Yの長さは、例えば、80mm以上とすることができ、100mm以上、200mm以上、250mm以上、あるいは300mm以上であってもよい。上記長さが大きくなるほど、電極体への非水電解液の含浸に長い時間を要し得る。そのため、ここで開示される技術の効果は、上記長さが上記範囲を満たす場合であっても好適に発揮され得る。なお、上記長さは、特に限定するものではないが、例えば、500mm以下、450mm以下、あるいは、400mm以下とすることができる。
【0031】
非水電解液は、典型的には、非水溶媒および支持塩を含有する。非水溶媒および支持塩としては、この種の二次電池(ここではリチウムイオン二次電池)の電解液に用いられる各種の溶媒を特に制限なく使用することができる。非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等の各種カーボネート類が挙げられる。支持塩としては、例えば、LiPF等のリチウム塩を用いることができる。非水電解液は、必要に応じて、被膜形成剤;増粘剤;分散剤;等の従来公知の添加剤を含有してもよい。
【0032】
図4は、第1実施形態に係る製造方法の工程図である。図5は、第1実施形態に係る製造方法の一部を説明する模式図である。当該製造方法は、図4に示すように、下記S1~S8の工程:電極体収容工程S1;減圧工程S2;注液工程S3;連通工程S4;仮封止工程S5;含浸工程S6;開封工程S7;および、封止工程S8;を包含する。
【0033】
電極体収容工程S1では、電極体を電池ケースに収容する。具体的には、例えば、まず、電極体20を従来公知の方法で作製する。次いで、電極体20の正極タブ群23に正極内部端子50を取り付け、さらに負極タブ群25に負極内部端子60を取り付ける。次いで、蓋体14に正極外部端子30と負極外部端子40とを取り付ける。これらの外部端子に、同極の内部端子を従来公知の方法(例えば、超音波接合、抵抗溶接、レーザ溶接等)で接合する。次いで、樹脂製の電極体ホルダに電極体20を収容する。そして、電極体ホルダで覆われた電極体20を、ケース本体に挿入する。この状態で、ケース本体12の開口部に蓋体14を重ね合わせて、これらを溶接してケース本体12を封口する。
【0034】
減圧工程S2では、電池ケース10に電極体20が収容された状態で、該電池ケースの内部を負圧にする。具体的には、例えば、まず、工程S1で用意された構築物を図5に示すようなチャンバ70内に配置する。チャンバ70には、図示されない真空ポンプが接続されている。次いで、この真空ポンプのスイッチをオンにして、チャンバ70内を減圧し、負圧にする。この時の圧力は、特に限定されないが、例えば、大気圧(0.1MPa)に対して、-0.05MPa以下、-0.08MPa以下、-0.09MPa以下とすることができる。
【0035】
注液工程S3では、電池ケース10の内部が負圧となった状態で、注液孔15を介して電池ケース10の内部に非水電解液を注液する。具体的には、例えば、チャンバ70に接続された配管80を電池ケース10の注液孔15に接続し、ケース本体12に非水電解液を注液する。配管80は、上記のとおり、注液用の配管であり、非水電解液の供給源(例えば、非水電解液を収容するタンク等)に接続されている。非水電解液の注液が開始されてから、電極体20の少なくとも一部が非水電解液に浸漬された状態で、注液が停止される。本工程において、電極体20と、非水電解液と、電池ケース10とを備える二次電池組立体が構築される。なお、本明細書における「二次電池組立体」は、電極体と、非水電解液と、電池ケースとを有する構築物を意味する。
【0036】
連通工程S4では、非水電解液注液後に、電池ケース10の内部と外部雰囲気とを連通させる。具体的には、例えば、配管80を介した非水電解液の注液が停止された後、チャンバ70に接続された真空ポンプのスイッチをオフにする。この時、例えば、注液孔15から配管80を外すことで、開封された注液孔15を介して、電池ケース10を外部雰囲気に対して開放することができる。あるいは、配管80を外さず、これを介して、電池ケース10を外部雰囲気に対して開放してよい。電池ケース10を外部雰囲気に対して開放することによって、電池ケース10内を昇圧することができる。電池ケース内圧は、例えば大気圧程度に昇圧し得る。上記連通を行った後、下記工程における作業を用意とするため、二次電池組立体をチャンバ70外に出してよい。
【0037】
仮封止工程S5では、上記連通後、第1封止部材を用いて注液孔15を仮封止する。図6は、第1実施形態に係る製造方法における仮封止工程を示す部分断面図である。第1封止部材90は、通気性を有する通気性膜を備えている。そのため、仮封止後の電池ケース10の内部と外部雰囲気とは、当該通気性膜を介して通気可能である。ここで、「膜」とは、面状に広がった構造体を意味する。換言すると、膜の形成面における2方向(例えばX軸方向及びY軸方向)の寸法が、いずれも膜の厚みよりも小さいものを意味する。本明細書において、「膜」の厚みは、例えば1000μm以下であり、500μm以下であってよく、250μm以下であってよい。
【0038】
本実施形態では、図6に示すように、第1封止部材90が通気性膜からなっている。第1封止部材90は、電池ケース10の蓋体14のケース外側の表面(高さ方向Zの上側表面)に配置されており、注液孔15を塞いでいる第1封止部材90は、注液孔15の上部および周囲に配置されている。即ち、本工程における二次電池組立体では、注液孔15の上部とその周囲には、第1封止部材90としての通気性膜が存在している。かかる構成は、下記工程S7で第1封止部材90が取り除かれるまで維持され得る。第1封止部材90は、必要に応じて接着剤を用いて蓋体14の上記表面に貼り付けられていてよい。第1封止部材の平面形状は、注液孔15を塞ぐ限り、特に限定されない。
【0039】
通気性膜は、水蒸気および非水電解液由来の蒸気の透過がいずれも可能であり得る。水蒸気および非水電解液由来の蒸気の透過性は、例えば以下のような試験に基づいて評価することができる。上記試験では、まず、容器を2つ用意して、一方の容器に水、他方の容器に非水電解液を収容する。内部に所定量の水または非水電解液を収容した状態で、それぞれの容器の開口部を通気性膜で塞ぐ。次いで、それぞれの容器を所定時間放置する。当該放置時の水または非水電解液の液量、時間条件、温度条件、圧力条件等は、下記含浸工程における条件と同様とするとよい。なお、本試験では、水を収容した容器と非水電解液を収容した容器とを同じ条件に置いて、上記放置を行う。
【0040】
放置後、容器に残存する水または非水電解液の重量を測定する。
そして、通気性膜に対する水の透過率Tw(%)を下記式(1):
透過率Tw(%)=放置後の水の重量/放置前の水の重量×100(1)
に基づいて算出する。
同様に、通気性膜に対する非水電解液の透過率Te(%)を下記式(2):
透過率Te(%)=
放置後の非水電解液の重量/放置前の非水電解液の重量×100(2)
に基づいて算出する。
【0041】
通気性膜に対する水の透過率Tw(%)は特に限定されないが、例えば10重量%以下とすることができる。通気性膜に対する非水電解液由来の蒸気の透過率Te(%)は、例えば1重量%以下とすることができ、0.5重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以下であることがより好ましく、ゼロに近いほどよい。
【0042】
通気性膜に対する、非水電解液由来の蒸気の透過性は、該通気性膜に対する水蒸気の透過性よりも小さい。例えば、水蒸気の透過性を1としたときに、非水電解液由来の蒸気の透過性は、例えば0.1以下であり、好ましくは0.05以下であり、より好ましくは0.01以下であり、さらに好ましくは0.005以下であり、ゼロに近いほどよい。即ち、通気性膜に対する非水電解液の透過率Te(%)は、水の透過率Tw(%)よりも小さく、透過率Te(%)と水の透過率Tw(%)との比(Te/Tw)は、上記範囲を満たし得る。
【0043】
通気性膜の厚みは、ここで開示される技術の効果を実現し得る限り、限定されない。即ち、通気性膜の厚みは、電極体のサイズ、非水電解液の注液量、含浸工程S6における諸条件に合わせて、上述のような水蒸気の透過性や非水電解液由来の上記の透過性を実現するように、適宜設定され得る。
【0044】
通気性膜の構成材料は、上記の性質を有する限りは特に限定されない。例えば、通気性膜は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂材料で構成され得る。通気性膜は、例えばフィルムや不織布であってよく、市販品を使用してよい。
【0045】
含浸工程S6では、注液孔の仮封止をした状態で、電極体に、非水電解液の少なくとも一部を含浸させる。上記連通によって、電池ケース10内の圧力は、外部雰囲気と同程度に昇圧されている。上記連通直後は、電極体20内の圧力が電池ケース10内の圧力よりも低くなっているため、この圧力差によって、電極体20内に非水電解液が含浸し得る。本工程では、例えば、電池ケース10内に注液された非水電解液が所定の高さに低下するまで、二次電池組立体を所定の圧力条件および温度条件の下、所定時間放置する。上記圧力条件は、上記のとおり、外部雰囲気と同程度とすることができ、例えば大気圧である。上記温度条件は、例えば20℃~30℃であり、室温(25℃)程度とすることができる。
【0046】
上記放置時間は、製造する二次電池のサイズにもよるが、例えば、3時間~72時間とすることができる。上記放置によって、電池ケース10に注液された非水電解液の一部が揮発し得る。非水電解液の注液量を100重量%としたときに、本工程における揮発許容量は、例えば、0.5重量%以下である。第1封止部材90を用いた状態で、非水電解液の揮発量が当該揮発許容量を下回るように、上記放置時間を設定することができる。
【0047】
上記通気性膜を備える第1封止部材90を用いて仮封止を行うことによって、ここで開示される技術の効果が実現され得る。そのメカニズムについて、本発明者は、以下のように考察している(符号は、適宜図面を参照)。ただし、以下に記載のメカニズムに限定することを意図したものではない。
非水電解液は、例えば、電池ケース10内における電極体20外の空間の圧力Psと電極体20内の圧力Peとの差や毛細管現象によって、電極体20内に含浸する。この時、非水電解液の含浸にともなって電極体20内の空間が減少し、電極体20内の圧力Peが上昇して、電池ケース10内の空間の圧力Psが低下する。ここで、仮封止するための部材が通気性を有しない場合、圧力Psは低下し続けるため、圧力Peよりも低くなる。そうすると、電池ケース10内の空間と電極体20内の空間との圧力関係が、非水電解液の含浸開始時から逆転する。このため、電極体20内への非水電解液の含浸速度が低下し、含浸効率が悪くなる。
【0048】
ここで開示される技術によると、仮封止のための第1部材が通気性を有する通気性膜を備えることによって、電池ケース10内と外部雰囲気とが通気可能である。そのため、電極体20への非水電解液の含浸が進んでも、上記圧力Psが低下しにくくなる。これによって、含浸効率を向上させることができる。また、上記通気性膜は、非水電解液由来の蒸気の透過性が低くなるように構成されており、電池ケース10内と外部雰囲気とが通気しても、非水電解液由来の蒸気の揮発を抑制することができる。そのため、工程S6において、非水電解液を電極体20に含浸させるための放置時間を延長することもできる。このようにしても、含浸効率を向上させることができる。
【0049】
開封工程S7では、第1封止部材90を取り除いて注液孔15を開封する。具体的には、例えば、第1封止部材90(本実施形態では、通気性膜)を剥がすことによって注液孔15を開封する。工程S7を経た二次電池組立体は、注液孔15の内周および/または周囲には、第1封止部材90としての通気性膜の残渣が存在し得る。
【0050】
封止工程S8では、第2封止部材16を用いて注液孔15を封止する。第2封止部材16としては、この種の二次電池で使用される封止部材を特に限定なく使用することができる。一例として、第2封止部材16として金属製の封止栓を用い、該封止栓を注液孔15にはめ込む。次いで、第2封止部材16で注液孔15を塞いだ状態で、レーザ溶接等を施し、注液孔15を封止する。その後、所定の条件の下、二次電池100の初期充電およびエージング処理を行うことで、使用可能状態とすることができる。なお、ここで開示される二次電池組立体は、工程S5~工程S8にある製造過程にある二次電池組立体と、使用可能状態となった二次電池とを含む。
【0051】
二次電池100は、各種用途に利用可能である。好適な用途としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)等の車両に搭載される駆動用電源が挙げられる。また、二次電池100は、小型電力貯蔵装置等の蓄電池として使用することができる。二次電池100は、典型的には複数個を直列および/または並列に接続してなる組電池の形態でも使用され得る。
【0052】
上述した第1実施形態は、ここで開示される製造方法および二次電池組立体の一例に過ぎない。ここで開示される技術は、他の形態にて実施することができる。以下、ここで開示される技術の他の実施形態について説明する。
【0053】
<第2実施形態>
上記第1実施形態では、第1封止部材90が通気性膜からなっている。しかし、第1封止部材は、上記通気性膜を備えており、該通気性膜によって電池ケース10と外部雰囲気との通気が可能であるように構成されていればよい。そのため、第1封止部材の構成は、これに限定されない。一例として、図7に示す構成の第1封止部材290も使用可能である。図7は、第2実施形態に係る製造方法における仮封止工程を示す部分断面図である。第1封止部材290は、封止栓本体295と、通気性膜299とを有する。封止栓本体295は、ベース部291と、筒部292とを有する。ベース部291は、平板状であり、貫通孔を有する。ベース部291の平面形状は特に限定されず、矩形状であってよく、円状であってよい。筒部292は中空円筒状であり、ベース部291から高さ方向Zの下側(D側)に延びている。筒部292の外周には、ねじ切り加工が施されている。ベース部291の貫通孔と、筒部292とが相互に連結して、封止栓本体295に貫通孔293が形成される。即ち、封止栓本体295は、貫通孔293を有しており、中空円筒状である。
【0054】
通気性膜299は、封止栓本体295の貫通孔293を塞いでいる。具体的には、図7に示すように、通気性膜299は、ベース部291の上側表面に設けられており、貫通孔293の上端を覆っている。
【0055】
図7に示すように、第1封止部材290の筒部292が、注液孔215に螺合されている。具体的には、注液孔215の内周面には、工程S8で第2封止部材を注液孔215に螺合するために、中空円筒状の連結部材218が設けられている。この連結部材218を、第1部材290との螺合に使用してよい。連結部材218の内周面には、ねじ切り加工が施されている。封止栓本体295の筒部292は、連結部材218の中空内部に挿入されている。ここで、筒部292と連結部材218とが螺合されている。連結部材218の上端部は、ベース部291の下表面と接触している。
【0056】
第2実施形態では、上記のとおり、封止工程S8において、第2封止部材として、連結部材218の内周に螺合できるようにねじ切り加工された封止栓等を使用し得る。第2実施形態で採用される第1封止部材290および注液孔215の構成は、電極体20への非水電解液の含浸効率を高めるとともに、第1封止部材290の取り外しをより容易とすることができる。また、第1封止部材290は、取り外し後に再利用され得る。なお、第2実施形態に係る二次電池の製造方法は、上述した点を除いて、第1実施形態に係る製造方法と同様であってよい。
【0057】
<第3実施形態>
上記第2実施形態では、中空円筒状の第1封止部材290のベース部291の上端面に通気性膜299を設けていた。しかし、第1封止部材290の中空を塞ぐことができる限り、通気性膜299を設ける部位は、特に限定されない。例えば、中空円筒状の封止栓本体295の貫通孔293の内部に通気性膜299を設け、第1封止部材290の中空内部を塞いでよい。
【0058】
以上、ここで開示される技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。ここで開示される技術には上記の具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、ここで開示される技術は、ナトリウムイオン二次電池にも適用することができる。また、ここで開示される技術は、積層電極体を備える二次電池にも適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
10 電池ケース
12 ケース本体
14 蓋体
15 注液孔
16 第2封止部材
17 安全弁
20 電極体
22 正極(正極シート)
22a 正極活物質層
22c 正極集電箔
22p 正極保護層
22t 正極タブ
23 正極タブ群
24 負極(負極シート)
25 負極タブ群
26 セパレータ
30 正極外部端子
40 負極外部端子
50 正極内部端子
60 負極内部端子
70 チャンバ
80 配管
90 第1封止部材
100 二次電池
215 注液孔
290 第1封止部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7