(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】特徴量データ生成装置、無線利用予測システム、特徴量データ生成方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 24/02 20090101AFI20240104BHJP
H04W 16/14 20090101ALI20240104BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20240104BHJP
【FI】
H04W24/02
H04W16/14
G06N20/00
(21)【出願番号】P 2021040327
(22)【出願日】2021-03-12
【審査請求日】2023-02-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、総務省「異システム間の周波数共用技術の高度化に関する研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】長尾 竜也
(72)【発明者】
【氏名】林 高弘
【審査官】永田 義仁
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/217457(WO,A1)
【文献】特開2010-147519(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0196091(US,A1)
【文献】特開2013-221943(JP,A)
【文献】特開2011-234084(JP,A)
【文献】ヨウ ユンイチ,環境変化による受信電力の時系列予測技術に関する検討,電子情報通信学会2020年総合大会講演論文集 通信1,2020年03月03日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N20/00
H04B1/60
3/46-3/493
7/02-7/12
7/24-7/26
17/00-17/40
H04L1/02-1/06
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信の将来の利用状態の予測処理に使用される特徴量時系列データを生成する特徴量データ生成装置であって、
前記無線通信に利用される電波の送信点から受信点までの電波伝搬経路を求める伝搬経路算出部と、
前記電波伝搬経路を含む区域毎に、前記電波の伝搬に影響を及ぼす特徴量の過去の時間的変化を示す特徴量時系列データを生成する特徴量時系列データ生成部と、
を備える特徴量データ生成装置。
【請求項2】
前記特徴量時系列データは、前記電波の伝搬に影響を及ぼす物体の個数の過去の時間的変化を示すデータである、
請求項1に記載の特徴量データ生成装置。
【請求項3】
前記特徴量時系列データ生成部は、前記電波伝搬経路を含む区域毎に前記特徴量時系列データに対して、過去の前記電波の利用状態に応じた重み付けを行う、
請求項1又は2のいずれか1項に記載の特徴量データ生成装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の特徴量データ生成装置と、
無線通信の将来の利用状態の予測を示す無線利用予測データを生成する無線利用予測データ生成装置と、を備え、
前記無線利用予測データ生成装置は、前記無線通信に利用される電波の過去の利用状態の時間的変化を示す利用状態時系列データと、前記特徴量データ生成装置が生成した特徴量時系列データとに基づいて、前記無線利用予測データを生成する、
無線利用予測システム。
【請求項5】
前記利用状態時系列データは、前記電波の受信点における前記電波の受信電力の過去の時間的変化を示すデータであり、
前記無線利用予測データは、前記電波の受信点における前記電波の受信電力の時間的変化の予測を示す受信電力予測値時系列データである、
請求項4に記載の無線利用予測システム。
【請求項6】
無線通信の将来の利用状態の予測処理に使用される特徴量時系列データを生成する特徴量データ生成装置が実行する特徴量データ生成方法であって、
前記特徴量データ生成装置が、前記無線通信に利用される電波の送信点から受信点までの電波伝搬経路を求める伝搬経路算出ステップと、
前記特徴量データ生成装置が、前記電波伝搬経路を含む区域毎に、前記電波の伝搬に影響を及ぼす特徴量の過去の時間的変化を示す特徴量時系列データを生成する特徴量時系列データ生成ステップと、
を含む特徴量データ生成方法。
【請求項7】
無線通信の将来の利用状態の予測処理に使用される特徴量時系列データを生成する特徴量データ生成装置のコンピュータに、
前記無線通信に利用される電波の送信点から受信点までの電波伝搬経路を求める伝搬経路算出ステップと、
前記電波伝搬経路を含む区域毎に、前記電波の伝搬に影響を及ぼす特徴量の過去の時間的変化を示す特徴量時系列データを生成する特徴量時系列データ生成ステップと、
を実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特徴量データ生成装置、無線利用予測システム、特徴量データ生成方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、異なる複数の無線通信システムが同じ周波数帯を共用することが検討されている。例えば、既存の無線通信システム(1次事業者システム)に割り当てられている周波数帯(共用周波数帯)を他の無線通信システム(2次事業者システム)が二次的に利用することが検討されている。この異システム間の周波数共用においては、1次事業者システムの運用に支障をきたさないように、2次事業者システムが共用周波数帯を利用可能な時間や場所等には制約が生じる。このため、2次事業者システムの投資判断や利用計画策定等の観点から、1次事業者システムの共用周波数帯の利用状況の将来予測ができることが望ましい。
【0003】
特許文献1には、無線チャネルのビジー状態およびアイドル状態の時系列データから確率的ニューラルネットワークを使用して無線チャネルのビジー状態およびアイドル状態の時系列データの将来のデータを予測する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載された技術に対して将来のチャネル状態(ビジー状態およびアイドル状態)の予測精度を向上させるために、過去のチャネル状態の時系列データに加えて、さらに、チャネル状態の変動要因になる特徴量を追加して将来のチャネル状態を予測することが考えられる。しかし、チャネル状態の変動には無関係な特徴量が予測に使用されると、かえって予測精度が劣化してしまうという課題がある。このため、無線通信の将来の利用状態(例えばチャネル状態や受信電力)の予測処理に使用される特徴量の時間的変化を示す特徴量時系列データを精度よく生成することが望まれる。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、無線通信の将来の利用状態の予測処理に使用される特徴量の時間的変化を示す特徴量時系列データの精度向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一態様は、無線通信の将来の利用状態の予測処理に使用される特徴量時系列データを生成する特徴量データ生成装置であって、前記無線通信に利用される電波の送信点から受信点までの電波伝搬経路を求める伝搬経路算出部と、前記電波伝搬経路を含む区域毎に、前記電波の伝搬に影響を及ぼす特徴量の過去の時間的変化を示す特徴量時系列データを生成する特徴量時系列データ生成部と、を備える特徴量データ生成装置である。
(2)本発明の一態様は、前記特徴量時系列データは、前記電波の伝搬に影響を及ぼす物体の個数の過去の時間的変化を示すデータである、上記(1)の特徴量データ生成装置である。
(3)本発明の一態様は、前記特徴量時系列データ生成部は、前記電波伝搬経路を含む区域毎に前記特徴量時系列データに対して、過去の前記電波の利用状態に応じた重み付けを行う、上記(1)又は(2)のいずれかの特徴量データ生成装置である。
【0008】
(4)本発明の一態様は、上記(1)から(3)のいずれかの特徴量データ生成装置と、無線通信の将来の利用状態の予測を示す無線利用予測データを生成する無線利用予測データ生成装置と、を備え、前記無線利用予測データ生成装置は、前記無線通信に利用される電波の過去の利用状態の時間的変化を示す利用状態時系列データと、前記特徴量データ生成装置が生成した特徴量時系列データとに基づいて、前記無線利用予測データを生成する、無線利用予測システムである。
(5)本発明の一態様は、前記利用状態時系列データは、前記電波の受信点における前記電波の受信電力の過去の時間的変化を示すデータであり、前記無線利用予測データは、前記電波の受信点における前記電波の受信電力の時間的変化の予測を示す受信電力予測値時系列データである、上記(4)の無線利用予測システムである。
【0009】
(6)本発明の一態様は、無線通信の将来の利用状態の予測処理に使用される特徴量時系列データを生成する特徴量データ生成装置が実行する特徴量データ生成方法であって、前記特徴量データ生成装置が、前記無線通信に利用される電波の送信点から受信点までの電波伝搬経路を求める伝搬経路算出ステップと、前記特徴量データ生成装置が、前記電波伝搬経路を含む区域毎に、前記電波の伝搬に影響を及ぼす特徴量の過去の時間的変化を示す特徴量時系列データを生成する特徴量時系列データ生成ステップと、を含む特徴量データ生成方法である。
【0010】
(7)本発明の一態様は、無線通信の将来の利用状態の予測処理に使用される特徴量時系列データを生成する特徴量データ生成装置のコンピュータに、前記無線通信に利用される電波の送信点から受信点までの電波伝搬経路を求める伝搬経路算出ステップと、前記電波伝搬経路を含む区域毎に、前記電波の伝搬に影響を及ぼす特徴量の過去の時間的変化を示す特徴量時系列データを生成する特徴量時系列データ生成ステップと、を実行させるためのコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、無線通信の将来の利用状態の予測処理に使用される特徴量の時間的変化を示す特徴量時系列データの精度向上を図ることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態に係る特徴量データ生成装置及び無線利用予測システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】一実施形態に係る特徴量データ生成方法の概略説明図である。
【
図3】一実施形態に係る特徴量データ生成方法の詳細な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1は、一実施形態に係る特徴量データ生成装置及び無線利用予測システムの構成例を示すブロック図である。
図1において、無線利用予測システム1は、特徴量データ生成装置10と、無線利用予測データ生成装置30とを備える。
【0014】
無線利用予測システム1は、無線通信の将来の利用状態を予測するシステムである。無線通信の利用状態は、例えば、無線通信に利用される電波のチャネル状態(無線チャネルのビジー状態およびアイドル状態)や無線通信に利用される電波の受信電力等である。
【0015】
特徴量データ生成装置10は、入力データ110,120に基づいて、無線通信の将来の利用状態の予測処理に使用される特徴量時系列データ130を生成する。特徴量時系列データ130は、無線通信の利用状態の変動要因になる特徴量についての過去の時間的変化を示す時系列データである。
【0016】
無線利用予測データ生成装置30は、無線通信に利用される電波の過去の利用状態の時間的変化を示す利用状態時系列データ140と、特徴量データ生成装置10が生成した特徴量時系列データ130とに基づいて、無線通信の将来の利用状態の予測を示す無線利用予測データ150を生成する。無線利用予測データ生成装置30は、例えば機械学習を利用して無線通信の将来の利用状態の予測を行う。
【0017】
例えば、無線利用予測データ生成装置30は、無線通信に利用される電波の過去のチャネル状態(無線チャネルのビジー状態およびアイドル状態)の時間的変化を示すチャネル状態時系列データ(利用状態時系列データ)140と、特徴量データ生成装置10が生成した特徴量時系列データ130とに基づいて、将来のチャネル状態(無線チャネルのビジー状態およびアイドル状態)の時間的変化の予測を示すチャネル状態予測時系列データ(無線利用予測データ)150を生成する。
【0018】
例えば、無線利用予測データ生成装置30は、無線通信に利用される電波の受信点における当該電波の過去の受信電力の時間的変化を示す受信電力時系列データ(利用状態時系列データ)140と、特徴量データ生成装置10が生成した特徴量時系列データ130とに基づいて、当該電波の受信点における当該電波の将来の受信電力の時間的変化の予測を示す受信電力予測値時系列データ(無線利用予測データ)150を生成する。
【0019】
特徴量データ生成装置10及び無線利用予測データ生成装置30の各機能は、特徴量データ生成装置10及び無線利用予測データ生成装置30がCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)及びメモリ等のコンピュータハードウェアを備え、CPUがメモリに格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。なお、特徴量データ生成装置10及び無線利用予測データ生成装置30として、汎用のコンピュータ装置を使用して構成してもよく、又は、専用のハードウェア装置として構成してもよい。例えば、特徴量データ生成装置10及び無線利用予測データ生成装置30は、インターネット等の通信ネットワークに接続されるサーバコンピュータを使用して構成されてもよい。また、特徴量データ生成装置10及び無線利用予測データ生成装置30の各機能はクラウドコンピューティングにより実現されてもよい。また、特徴量データ生成装置10及び無線利用予測データ生成装置30は、単独のコンピュータにより実現するものであってもよく、又は、特徴量データ生成装置10及び無線利用予測データ生成装置30の機能を複数のコンピュータに分散させて実現するものであってもよい。
【0020】
(特徴量データ生成装置)
特徴量データ生成装置10は、伝搬経路算出部11と、特徴量時系列データ生成部12とを備える。
【0021】
伝搬経路算出部11は、無線通信に利用される電波の送信点から受信点までの電波伝搬経路を求める。本実施形態では、電波伝搬経路を求める方法の一例としてレイトレース法を用いる。伝搬経路算出部11は、入力データ110に基づいて、無線通信に利用される電波の送信点から受信点までの電波伝搬経路をレイトレース法により求める。入力データ110は、レイトレース法に必要な情報を示すデータである。入力データ110は、送信局諸元情報と3次元建物データとを含むデータである。送信局諸元情報は、無線通信に利用される電波を送信する送信局の諸元を示す情報である。送信局諸元情報は、例えば、送信局(送信点)の位置(緯度、経度)やアンテナ高や送信電波の指向特性や送信電波の周波数等を含む情報である。3次元建物データは、建物の高さや広さや形状等の建物に関する3次元の情報を示すデータである。
【0022】
特徴量時系列データ生成部12は、伝搬経路算出部11が求めた電波伝搬経路を含む区域毎に、入力データ120に基づいて、無線通信に利用される電波の伝搬に影響を及ぼす特徴量の過去の時間的変化を示す特徴量時系列データ130を生成する。入力データ120は、無線利用予測システム1がサービス対象にする全ての区域について区域毎に、無線通信に利用される電波の伝搬に影響を及ぼす特徴量の過去の時間的変化を示す時系列データである。無線通信に利用される電波の伝搬に影響を及ぼす特徴量は、例えば、当該電波の伝搬に影響を及ぼす物体の個数である。当該電波の伝搬に影響を及ぼす物体は、例えば、歩行者や車両である。なお、電波の伝搬に影響を及ぼす物体である歩行者や車両等をブロッカーと称する場合がある。
【0023】
図2は、本実施形態に係る特徴量データ生成方法の概略説明図である。
図2には、無線通信の利用状態の予測の一例として受信電力の予測を行う場合が示されているが、チャネル状態(無線チャネルのビジー状態およびアイドル状態)の予測を行う場合も同様である。
【0024】
図2において、送信局31(送信点)が送信する電波は、様々な電波伝搬経路33を通って電波センサ32(受信点)へ到達する。電波センサ32は、送信局31(送信点)が送信する電波を受信し、受信した電波の受信強度を検出する。受信強度として、例えば受信電力強度(Received Signal Strength Indicator:RSSI)が検出される。送信局31が送信する電波は、直接に電波センサ32へ到達したり、建物41で反射されてから電波センサ32へ到達したりする。電波伝搬経路33を含む区域には、歩行者43や車両42が存在する。
【0025】
電波伝搬経路33を含む区域に存在する歩行者43や車両42は、送信局31が送信する電波の伝搬に影響を及ぼす物体である。したがって、電波伝搬経路33を含む区域に存在する歩行者43や車両42の個数は、送信局31が送信する電波の利用状態の変動要因になる特徴量である。例えば、電波伝搬経路33を含む区域に存在する歩行者43や車両42の個数は、送信局31が送信する電波のチャネル状態(無線チャネルのビジー状態およびアイドル状態)の変動要因になる。例えば、電波伝搬経路33を含む区域に存在する歩行者43や車両42の個数は、送信局31が送信する電波の電波センサ32での受信電力の変動要因になる。
【0026】
このため、無線利用予測システム1がサービス対象にする全ての区域のうち電波伝搬経路33を含む区域は、歩行者43や車両42の個数を特徴量として抽出する対象の区域にする。また、電波センサ32(受信点)の周辺の区域のみではなく、送信局31(送信点)から電波センサ32(受信点)に至るまでの全ての区域を、特徴量を抽出する区域にすることが好ましい。なお、当該全ての区域を一律的に同じ重要度にするのではなく、各区域に対して、送信局31が送信する電波の利用状態の変動に対する影響度に応じた重み付けを行ってもよい。例えば、電波伝搬経路33を含む各区域に対して、送信局31が送信する電波の過去の利用状態に応じた重み付けを行ってもよい。例えば、電波伝搬経路33を含む各区域に対して、送信局31が送信する電波の過去の区域毎のチャネル状態(無線チャネルのビジー状態およびアイドル状態)に応じて、ビジー状態が多い区域ほど重みを大きくする。例えば、電波伝搬経路33を含む各区域に対して、送信局31が送信する電波の区域毎の過去の受信電力に応じて、受信電力が大きい区域ほど重みを大きくする。例えば、電波伝搬経路33を含む各区域に対して、送信局31が送信する電波の区域毎の過去の受信電力に応じて、受信電力の変動幅が大きい区域ほど重みを大きくする。また、電波伝搬経路33を含む各区域に対して、電波センサ32(受信点)からの距離が近い区域ほど重みを大きくしてもよい。
【0027】
一方、電波伝搬経路33を含まない区域に存在する歩行者43や車両42は、送信局31が送信する電波の伝搬に影響を及ぼす物体ではない、又は当該電波の伝搬に影響を及ぼしても当該電波の利用状態の変動に対する影響度が当該電波の利用状態の予測精度上の許容可能なくらいに小さい物体である。このため、無線利用予測システム1がサービス対象にする全ての区域のうち電波伝搬経路33を含まない区域は、歩行者43や車両42の個数を特徴量として抽出する対象の区域にしない。これにより、送信局31が送信する電波の利用状態(例えばチャネル状態や受信電力)の変動にはほとんど無関係な歩行者43や車両42の個数が特徴量として抽出されなくなる。したがって、送信局31が送信する電波の利用状態(例えばチャネル状態や受信電力)の変動要因になる歩行者43や車両42の個数を特徴量として効率的に抽出することができる。
【0028】
これにより、無線通信の将来の利用状態(例えばチャネル状態や受信電力)の予測処理に使用される特徴量(例えば歩行者43や車両42等のブロッカーの個数(ブロッカー数))の時間的変化を示す特徴量時系列データ130の精度が向上し、無線通信の将来の利用状態(例えばチャネル状態や受信電力)の予測精度の向上に寄与することができる。
【0029】
図3は、本実施形態に係る特徴量データ生成方法の詳細な説明図である。
図3には、無線通信の利用状態の予測の一例として受信電力の予測を行う場合が示されているが、チャネル状態(無線チャネルのビジー状態およびアイドル状態)の予測を行う場合も同様である。
【0030】
図3を参照して本実施形態に係る特徴量データ生成方法を詳細に説明する。なお、ここでは、区域のことをメッシュと称する場合がある。
【0031】
特徴量データ生成装置10には、入力データ110,120が入力される。入力データ110は、送信局諸元情報と3次元建物データとを含むデータである。入力データ120は、ブロッカー情報である。ブロッカー情報(入力データ)120は、無線利用予測システム1がサービス対象にする全ての区域(メッシュ)について区域(メッシュ)毎に、無線通信に利用される電波の伝搬に影響を及ぼす物体である歩行者43や車両42等のブロッカーの個数(特徴量)の過去の時間的変化を示す時系列データである。ブロッカー情報(入力データ)120は、例えば、時刻とブロッカーの位置(緯度、経度)との組から構成される。各メッシュの範囲(緯度、経度)は予め設定される。ブロッカー情報(入力データ)120は、例えば、スマートフォン等の携帯端末がGPS(Global Positioning System)等により取得した位置情報を利用して生成される。また、ブロッカー情報(入力データ)120は、基地局に接続したスマートフォン等の携帯端末の個数(接続端末数)を示す接続端末数データを利用して生成されてもよい。
【0032】
無線利用予測データ生成装置30には、受信電力時系列データ(利用状態時系列データ)140が入力される。受信電力時系列データ(利用状態時系列データ)140は、無線通信に利用される電波の受信点における当該電波の過去の受信電力の時間的変化を示す時系列データである。受信電力時系列データ(利用状態時系列データ)140は、例えば、時刻と受信電力強度(Received Signal Strength Indicator:RSSI)との組から構成される。受信電力時系列データ(利用状態時系列データ)140は、例えば、受信点に設置された電波センサ32が検出したRSSIを利用して生成される。受信電力時系列データ(利用状態時系列データ)140が取得される受信点は、無線通信の将来の受信電力の予測を行いたい場所である。
【0033】
(ステップS1) 特徴量データ生成装置10の伝搬経路算出部11は、入力データ110に基づいて、無線通信に利用される電波の送信点Txから受信点Rxまでの電波伝搬経路をレイトレース法により求める。この電波伝搬経路の算出結果201は、特徴量時系列データ生成部12へ送られる。電波伝搬経路の算出結果201は、無線利用予測システム1がサービス対象にする全てのメッシュのうち、電波伝搬経路がどのメッシュを通るのかを示す情報を含んでいる。電波伝搬経路が通るメッシュは、言い換えれば、電波伝搬経路を含むメッシュである。
【0034】
(ステップS2) 特徴量時系列データ生成部12は、電波伝搬経路の算出結果201に基づいて、無線利用予測システム1がサービス対象にする全てのメッシュの中から、電波伝搬経路を含むメッシュを抽出する。このメッシュ抽出結果202は、無線利用予測システム1がサービス対象にする全てのメッシュのうち、電波伝搬経路を含むメッシュ(伝搬経路メッシュ)を示す情報である。
【0035】
(ステップS3) 特徴量時系列データ生成部12は、ブロッカー情報(入力データ)120とメッシュ抽出結果202とに基づいて、時刻毎に且つ抽出結果のメッシュ(伝搬経路メッシュ)毎に、ブロッカー数を集計する。この集計結果として、各伝搬経路メッシュのブロッカー数時系列データ(特徴量時系列データ)130が生成される。ブロッカー数時系列データ(特徴量時系列データ)130は、伝搬経路メッシュ毎に、無線通信に利用される電波の伝搬に影響を及ぼす特徴量(ブロッカー数)の過去の時間的変化を示す時系列データである。特徴量データ生成装置10は、ブロッカー数時系列データ(特徴量時系列データ)130を無線利用予測データ生成装置30へ送信する。
【0036】
なお、特徴量時系列データ生成部12は、各伝搬経路メッシュに対して、過去の受信電力に応じた重み付けを行ってもよい。例えば、各伝搬経路メッシュに対して、各伝搬経路メッシュでの受信電力の実測データに基づいて、受信電力が大きい伝搬経路メッシュほど重みを大きくする。例えば、各伝搬経路メッシュに対して、各伝搬経路メッシュでの受信電力の実測データに基づいて、受信電力の変動幅が大きい伝搬経路メッシュほど重みを大きくする。また、各伝搬経路メッシュに対して、受信点からの距離が近い伝搬経路メッシュほど重みを大きくしてもよい。特徴量時系列データ生成部12は、各伝搬経路メッシュのブロッカー数の集計結果に対して、各伝搬経路メッシュの重みを反映させる。例えば、伝搬経路メッシュ毎に、伝搬経路メッシュの重みに応じた重み係数をブロッカー数の集計結果に乗じる。特徴量時系列データ生成部12は、各伝搬経路メッシュの重みが反映された各伝搬経路メッシュのブロッカー数の集計結果を、各伝搬経路メッシュのブロッカー数時系列データ(特徴量時系列データ)130にする。
【0037】
(ステップS4) 無線利用予測データ生成装置30は、受信電力時系列データ(利用状態時系列データ)140と、特徴量データ生成装置10から受信したブロッカー数時系列データ(特徴量時系列データ)130とに基づいて、無線通信に利用される電波の受信点における当該電波の将来の受信電力の時間的変化の予測を示す受信電力予測値時系列データ(無線利用予測データ)150を生成する。
【0038】
無線利用予測データ生成装置30は、例えば機械学習を利用して将来の受信電力の時間的変化の予測を行う。学習段階では、学習段階における受信電力時系列データ(利用状態時系列データ)140とブロッカー数時系列データ(特徴量時系列データ)130とを学習データに使用して、受信電力時系列データ(利用状態時系列データ)140とブロッカー数時系列データ(特徴量時系列データ)130とから将来の受信電力の予測値を時系列データとして出力するように機械学習モデルの学習を行う。機械学習モデルは、例えばニューラルネットワークである。予測段階では、予測段階における受信電力時系列データ(利用状態時系列データ)140とブロッカー数時系列データ(特徴量時系列データ)130とを入力データとして学習済みの機械学習モデルへ入力し、当該入力の結果として機械学習モデルから出力される将来の受信電力の予測値の時系列データを得る。無線利用予測データ生成装置30は、機械学習モデルから出力された将来の受信電力の予測値の時系列データを使用して受信電力予測値時系列データ(無線利用予測データ)150を生成する。
【0039】
本実施形態によれば、無線通信の利用状態(例えばチャネル状態や受信電力)の変動要因になる特徴量を電波伝搬の観点から的確に抽出することができるので、無線通信の将来の利用状態の予測処理に使用される特徴量の時間的変化を示す特徴量時系列データの精度を向上させる効果が得られる。これにより、無線通信の将来の利用状態の予測精度の向上に寄与することができるようになる。
【0040】
また、本実施形態によれば、特徴量時系列データが無線通信の将来の利用状態の予測処理に適切な入力データから構成されるので、当該予測処理への入力データの次元数の削減に寄与することができる。これにより、当該予測処理の処理量が削減され処理時間の短縮効果が得られる。
【0041】
また、本実施形態によれば、電波伝搬経路を求める方法としてレイトレース法を用いることができる。レイトレース法は、3次元建物データやレイトレースシミュレーションソフトウェアが市販品を利用可能であるため、比較的容易に実現することができる。
【0042】
なお、これにより、例えば異システム間の周波数共用における総合的なサービス品質の向上を実現することができることから、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0043】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0044】
また、上述した各装置の機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0045】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…無線利用予測システム、10…特徴量データ生成装置、11…伝搬経路算出部、12…特徴量時系列データ生成部、30…無線利用予測データ生成装置