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特許7412404高圧発生タンク部、電源装置、電気集塵装置及び電源装置の製造方法
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  • 特許-高圧発生タンク部、電源装置、電気集塵装置及び電源装置の製造方法 図1
  • 特許-高圧発生タンク部、電源装置、電気集塵装置及び電源装置の製造方法 図2
  • 特許-高圧発生タンク部、電源装置、電気集塵装置及び電源装置の製造方法 図3
  • 特許-高圧発生タンク部、電源装置、電気集塵装置及び電源装置の製造方法 図4
  • 特許-高圧発生タンク部、電源装置、電気集塵装置及び電源装置の製造方法 図5
  • 特許-高圧発生タンク部、電源装置、電気集塵装置及び電源装置の製造方法 図6
  • 特許-高圧発生タンク部、電源装置、電気集塵装置及び電源装置の製造方法 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】高圧発生タンク部、電源装置、電気集塵装置及び電源装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20240104BHJP
【FI】
H02M3/28 Y
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021199284
(22)【出願日】2021-12-08
(65)【公開番号】P2023084900
(43)【公開日】2023-06-20
【審査請求日】2022-10-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年11月1日 オリジン テクニカル ジャーナル 第84号,1-16頁 にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000103976
【氏名又は名称】株式会社オリジン
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】増田 正
(72)【発明者】
【氏名】兼子 和貴
(72)【発明者】
【氏名】大和 司
(72)【発明者】
【氏名】北島 喜巳雄
(72)【発明者】
【氏名】清水 敬一
(72)【発明者】
【氏名】清水 昭宏
(72)【発明者】
【氏名】小林 義貴
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-011632(JP,A)
【文献】特開2005-093708(JP,A)
【文献】特開2018-037444(JP,A)
【文献】実開昭60-101720(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源装置に備わる高圧発生タンク部であって、
入力信号の電圧を高電圧に変換する回路と、
前記回路を収容するタンクと、
前記タンクの上面に配置され、前記タンクを密閉する蓋と、
前記回路と導体で接続され、前記回路で発生させた高電圧を前記タンクの外に導く碍子と、
前記碍子の底面部より高い位置まで前記タンクに注がれ、前記碍子に備わる前記導体の周囲に充填されている絶縁油と、
を備える高圧発生タンク部。
【請求項2】
前記タンクは、前記タンクの高さ方向に垂直な断面形状が八角形である、
請求項1に記載の高圧発生タンク部。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の高圧発生タンク部と、
前記高圧発生タンク部で発生させる電圧を制御する制御部と、
を備える電源装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電源装置を備え、
前記電源装置で発生させた高電圧を放電させることで集塵を行う、
電気集塵装置。
【請求項5】
電源装置に備わるタンク内に電圧を変換する回路を収容し、
前記回路を碍子の導体に接続し、
前記タンクを蓋で密閉し、
前記タンクの内部を真空にし、
その後、絶縁油の油面が前記碍子の底面部よりも高くなるまで、前記タンクの内部に絶縁油を注油し、前記碍子に備わる前記導体の周囲に絶縁油を満たす、
電源装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高電圧の電力を供給する電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排煙ガスなどを清浄化する電気集塵機などにおいて、高電圧電源装置が用いられる(例えば、特許文献1参照。)。高電圧電源装置において高電圧を発生させる回路は絶縁油の満たされたタンク内に収容され、碍子を用いてタンク内で発生した電力をタンク外に取り出す。
【0003】
従来、タンク内の絶縁油の油面位置までしか碍子内部は絶縁油で満たされていなかった。油漏れを防ぐためにタンク上部に縦方方向に取り付けられている碍子の場合、碍子内に空気が存在すると、碍子内の中心を通る導体の近傍でのコロナ放電などにより、可燃性ガスの発生要因となる場合があった。
【0004】
可燃性ガスの発生を防ぐために、コンデンサブッシングが用いられている。コンデンサブッシングは、碍子の上面及び底面が共に密閉構造であり、内部に絶縁油が満たされている。コンデンサブッシングは、密閉構造を有するため、碍子の頭部に絶縁油の膨張を吸収する空気層が必要だった。このため、コンデンサブッシングを用いると、碍子自体が大型化し、コストアップの要因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-088132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、碍子内部の導体の周囲を絶縁油で満たすことを小形かつ安価に可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、電源装置に備わる高圧発生タンク部であって、
入力信号の電圧を高電圧に変換する回路と、
前記回路を収容するタンクと、
前記タンクの上面に配置され、前記タンクを密閉する蓋と、
前記回路と導体で接続され、前記回路で発生させた高電圧を前記タンクの外に導く碍子と、
前記碍子の底面部より高い位置まで前記タンクに注がれ、前記碍子に備わる前記導体の周囲に充填されている絶縁油と、
を備える。
【0008】
また本開示に係る電源装置の製造方法は、
電源装置に備わるタンク内に電圧を変換する回路を収容し、
前記回路を碍子の導体に接続し、
前記タンクを蓋で密閉し、
前記タンクの内部を真空にし、
その後、絶縁油の油面が前記碍子の底面部よりも高くなるまで、前記タンクの内部に絶縁油を注油し、前記碍子に備わる前記導体の周囲に絶縁油を満たす。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、碍子内部の導体の周囲を絶縁油で満たすことが小形かつ安価で実現できるため、高電圧電源装置の高圧タンク部を安価に小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る電源装置の一例を示す。
図2】本実施形態の高圧発生タンク部の構成例を示す。
図3】本実施形態に係る電源装置の製造過程の一例を示す。
図4】本実施形態に係る電源装置の製造過程の一例を示す。
図5】本実施形態に係る電源装置の製造過程の一例を示す。
図6】本実施形態の高圧発生タンク部の平面構造の一例を示す。
図7】本実施形態のタンク内に収容される回路の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本開示は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0012】
図1に、本実施形態に係る電源装置の一例を示す。本実施形態に係る電源装置は、高電圧を発生させる高圧発生タンク部120と、高圧発生タンク部120で発生させる電圧を制御する制御部110と、を備える。高圧発生タンク部120は、高電圧を発生させる回路24と、回路24を収容するタンク21と、発生させた電力を取り出す碍子23と、を備える。
【0013】
制御部110とタンク21は動力線26で接続されている。タンク21には、制御部110からの出力信号が入力される入力端子25が備わる。回路24は、入力端子25から入力された出力信号に基づいて、高電圧を発生させる。
【0014】
本実施形態に係る電源装置は、図7に示すような高電圧を発生可能な任意の構成を採用することができる。1は直流電圧を発生する整流器であり、2及び3は低周波フィルタ4を構成するチョークコイル及びコンデンサであり、5は所定の周波数の駆動パルスにより交流電流を生成するインバータであり、24は高周波インバータ5からの高周波出力電圧を直流高電圧に変換する回路である。回路24は、例えば、共振インダクタ12、高電圧トランス9、コンデンサ13及び14、高電圧整流器(整流回路(全波整流ダイオード)10、抵抗R2及びR3を備える。図では、接続点Sから分圧した検出電圧VSに応じて電極11へ供給される電圧を制御する例を示す。
【0015】
本実施形態に係る電源装置は、放電電極11と接地された集塵電極12との間に整流電圧に相当する電圧差を発生させる。電気集塵装置は、放電電極11と集塵電極12との間で放電させることで、放電電極11と集塵電極12との間の粉塵を収集する。電気集塵装置に用いる電圧差は任意であるが、例えば、-45kV~-180kVが例示できる。
【0016】
図1に示すように碍子23は、中心に、回路24で発生した高電圧を出力するための導体31を備える。導体31は碍子23を貫通しており、導体31に沿って空隙32が配置されている。この空隙32に空気が存在する場合、コロナ放電が発生する可能性がある。
【0017】
図2に、本実施形態の高圧発生タンク部の構成例を示す。本実施形態のタンク21の上部は蓋22で密閉されており、空隙32の全体に絶縁油27が充填されている。碍子23は蓋22を貫通している。入力端子25はタンク21の側面に配置される。
【0018】
本開示の電源装置の製造方法は、高圧タンク部120を製造する際に、
タンク21内に回路24を収容し(図3)、
回路24を碍子23の導体31に接続し(図3)、
タンク21を蓋22で密閉し(図3)、
タンク21の内部を真空にし(図3)、
その後、タンク21の内部に絶縁油27を注油する(図4及び図5)。本開示では、碍子23の底面部23Bを密閉構造にしないため、空隙32の空気が外部に流出して無くなり、代わりに絶縁油27が流入する。
このように、本開示は、タンク21内の絶縁油27を真空注油することにより、碍子23の空隙32に絶縁油27を充填させている。
【0019】
ここで、本開示では、注油の際、図5に示すように、絶縁油27の油面27Sが、碍子23の空隙32の底面部23B及び端子25よりも高くなるまで絶縁油27を注油する。このため、碍子23の空隙32に空気は存在せず、絶縁油27で満たされているので碍子23内でのコロナ放電の発生を防ぐことができる。また、碍子23の内部の絶縁油27の温度変化による体積膨張は、タンク21の上部の空気層28にて吸収されるため、碍子23の頭部23Tに空気層を設ける必要がないため、碍子23も小型化できる。
【0020】
また、本開示では、注油の際、タンク21の蓋22と絶縁油27の油面27Sの間に空間28を残す。これにより、温度変化によるタンク21本体と碍子23内部の絶縁油27の増減に対応することができる。
【0021】
図6に、本開示のタンク21の平面構造の一例を示す。本開示のタンク21は、高さ方向の断面形状が八角形を有する。タンク21が八角形を有することで、タンク21の内部の絶縁油27の使用量を削減することができる。
【0022】
また導体31からの高電圧の出力線41はダクト42で保護される。ダクト42の長手方向がタンク21の側面に垂直な方向と一致するように、ダクト42は取り付けられる。図では3方向に出力線41及びダクト42を接続する例を示すが、1方向又は2方向であってもよい。
【0023】
以上説明したように、本開示の電源装置は、コンデンサブッシングを用いずに碍子23の内部の空隙32に絶縁油27を充填することができるため、高圧発生タンク部120を安価に小型化することができる。したがって、本開示は、碍子12内部の導体31の周囲が絶縁油27で満たされている小形な電源装置を安価に提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本開示は、電気集塵機などの高電圧電源装置を用いる任意の装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1:整流器
2:チョークコイル
3:コンデンサ
4:低周波フィルタ
5:インバータ
5A~5D:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ
6A~6D:逆並列ダイオード
9:高電圧トランス
10:整流回路
11、12:電極
13、14:コンデンサ
21:タンク
22:蓋
23:碍子
24:回路
25:入力端子
26:動力線
27:絶縁油
31:導体
32:空隙
41:出力線
42:ダクト
110:制御部
120:高圧発生タンク部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7