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特許7412408細孔にグラフトされたポリマーを有するセラミックナノろ過膜及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】細孔にグラフトされたポリマーを有するセラミックナノろ過膜及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 67/00 20060101AFI20240104BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20240104BHJP
   B01D 69/04 20060101ALI20240104BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20240104BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20240104BHJP
   B01D 71/78 20060101ALI20240104BHJP
   C08F 292/00 20060101ALI20240104BHJP
   C08F 2/00 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
B01D67/00
B01D71/02
B01D69/04
B01D69/10
B01D69/12
B01D71/78
C08F292/00
C08F2/00 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021503066
(86)(22)【出願日】2019-07-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 EP2019068458
(87)【国際公開番号】W WO2020016068
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-06-15
(31)【優先権主張番号】18184449.9
(32)【優先日】2018-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514195481
【氏名又は名称】フェート・エンフェー (フラームス・インステリング・フーア・テクノロジシュ・オンダーゾエク・エンフェー)
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マチュー・ドルベック
(72)【発明者】
【氏名】アニタ・ビュケンホート
(72)【発明者】
【氏名】マイデル・コロマ・ヒメネス
(72)【発明者】
【氏名】ピーテル・ヴァンデザンデ
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-182690(JP,A)
【文献】特表2012-532966(JP,A)
【文献】国際公開第2018/075457(WO,A1)
【文献】特開平06-142476(JP,A)
【文献】特表平06-502116(JP,A)
【文献】特開平06-238140(JP,A)
【文献】特表2002-502692(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0231351(US,A1)
【文献】特開2011-162718(JP,A)
【文献】RENAUD B MERLET; ET AL,GROWING TO SHRINK: NANO-TUNABLE POLYSTYRENE BRUSHES INSIDE 5NM MESOPORES,JOURNAL OF MEMBRANE SCIENCE,NL,2018年11月24日,VOL:572,PAGE(S):632 - 640,http://dx.doi.org/10.1016/j.memsci.2018.11.058
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
C08F 292/00
C08F 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TiO及び/又はZrOで作られたメソ多孔質第1層(21)並びに酸化アルミニウムで作られた、前記メソ多孔質第1層に隣接した多孔質第2層(22)を含む支持構造物(20)を提供する工程と、
ホスホン酸基、グリニャール試薬、サリチル酸基及びフタル酸基からなる群から選択される固定基を前記メソ多孔質第1層の孔内にグラフトする工程であって、前記多孔質第2層は前記グラフトする工程に不活性である工程と、
表面開始原子移動ラジカル重合反応のための開始剤を前記固定基に共有結合する工程と、
前記支持構造物にモノマー及び溶媒を含浸させる工程と、
触媒を含むフィードを前記メソ多孔質第1層に通す工程を含み、前記モノマーは前記触媒の存在下で前記開始剤からグラフトすることによって前記表面開始原子移動ラジカル重合反応を開始するように構成されている、重合反応と、
を含む、ナノろ過膜の製造方法。
【請求項2】
不活性剤で前記支持構造物(20)を洗い流すことによって前記触媒を不活性化する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
記メソ多孔質第1層(21)が前記支持構造物の外表面(23)に位置し、前記触媒を含む前記フィードが前記多孔質第2層から前記メソ多孔質第1層に向かって通される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記重合反応の間、前記触媒を含む前記フィードが前記支持構造物に通され、前記重合反応の間、前記支持構造物を通過する前記フィードの流速が測定され、前記流速が所定の基準値に達する時に前記触媒を不活性化するように構成された不活性剤が注入される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記触媒を含む前記フィードを通す工程が、前記支持構造物(20)の第1の側面で前記触媒を前記多孔質第2層(22)から前記メソ多孔質第1(21)に向かって注入して濃度勾配を得る工程を含み、前記濃度勾配の作用下で前記触媒を前記メソ多孔質第1層(21)を通して拡散させる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記触媒を含む前記フィードを通す工程が、前記支持構造物(20)の第1の側面で前記触媒を前記多孔質第2層(22)から前記メソ多孔質第1層に向かって注入する工程を含み、前記支持構造物(20)の第2の側面は前記第1の側面の反対側にある、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
多孔質支持層及び前記多孔質支持層に取り付けられているナノろ過層を含むナノろ過膜であって、前記ナノろ過層はTiO及び/又はZrOで作られたマトリクスを含み、前記多孔質支持層は酸化アルミニウムで作られており、前記マトリクスが前記マトリクスに共有結合しているポリマーで少なくとも部分的に満たされているメソ多孔質サイズの空間を囲んでおり、前記多孔質支持層は、ポリマーを含まない、ナノろ過膜。
【請求項8】
前記ポリマーが、前記マトリクスから前記メソ多孔質サイズの空間中へとブラシ状に伸びている、請求項7に記載のナノろ過膜。
【請求項9】
前記メソ多孔質サイズの空間が部分的に空洞である、請求項7又は8に記載のナノろ過膜。
【請求項10】
管状である、請求項7からのいずれか一項に記載のナノろ過膜。
【請求項11】
ルーメン及び前記ルーメンと接合する内壁を含み、前記ナノろ過層は前記内壁に配置されている、請求項1に記載のナノろ過膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックナノろ過膜及び前述の膜の製造方法に関する。特に、膜はセラミック骨格(backbone)及び混合セラミック/ポリマーナノろ過層を含む。
【背景技術】
【0002】
骨格の最上部で成長するナノろ過層を含むナノろ過膜、典型的には限外ろ過膜が公知である。ほとんどのナノろ過膜は、特に骨格及びナノろ過層の両方が、完全にポリマーである。その結果、これらのナノろ過膜は高温用途で使用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2010106167号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多くの用途にとって、特に化学プロセスにおいて、例えば100℃~150℃以上の温度等の昇温に対する優れた耐性を有するナノろ過膜を使用することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明の第1の態様によると、添付した特許請求の範囲に記載したナノろ過膜の製造方法が提供される。
【0006】
ナノろ過膜は、層状多孔質支持体から開始して作られ、酸化チタン及び/又は酸化ジルコニウムで作られた第1のメソ多孔質層と、別の有利なセラミック材料、例えば限定されないが酸化アルミニウム等で作られた第2の(骨格)層とを含む、又は、それらからなる。第1の層及び第2の層は互いに接する。有利には、第1のメソ多孔質層は、多孔質支持体の表層を形成する、すなわち、支持体の外表面に位置する。
【0007】
以下の工程において、ポリマーは、第1の層の細孔の壁からグラフトする重合反応、すなわち、セラミックTiO材料及び/又はセラミックZrO材料からグラフトする重合反応によって、第1のメソ多孔質層で成長させられ、一方で、骨格層ではポリマーは成長しない。これは、驚くべきことに、第1のメソ多孔質層のセラミック材料にグラフトする又は共有結合することを可能にする層状支持体の材料の適切な選択、並びに/又は固定基及び/若しくは開始基の適切な選択によって可能となり、一方で、第2の層の材料はこのグラフト又は結合反応に不活性である。そうすることにより、その後の重合反応は、固定基/開始基のみから進行させられ得、したがって、第1のメソ多孔質層でのみ進行し得、一方で、第2の骨格層はポリマーを一切含まないままである。
【0008】
メソ多孔質層の細孔内でポリマーが成長するため、(セラミックマトリクスの)細孔はポリマーで満たされ、空間は小さくなる。重合反応は、有利には、触媒の存在下で実行され、触媒を不活性化することによって、例えば、酸素又は空気等の不活性剤で洗い流すことによって重合反応を容易に停止することを可能にする。
【0009】
触媒の使用は、どこで重合反応を開始させるかを制御できるようにするため、さらに有利である。触媒は、有利には溶媒等の液状混合物で供給される。触媒は、正確な位置、例えば支持体又は第1のメソ多孔質層の一方の側で注入され得、そこから、例えば多孔質支持体を通過する流れを維持することによって、又は濃度勾配による拡散によって、第1の層全体に触媒を拡散させることができる。そうすることにより、重合反応を、メソ多孔質層の内側から、例えば第2の層との接合面(interface)で開始させることが可能となり、多孔質支持体の外表面であり得る反対側に向かって進行させることが可能となる。これにより、外表面で起こる重合の量を減らすことができ、ナノろ過層のための高いフラックスを維持するために有益である。
【0010】
高密度で多孔質のナノろ過層が、本発明の方法で得られ得る。
【0011】
本発明の第2の態様によると、添付した特許請求の範囲に記載したナノろ過膜が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明による方法のフローダイアグラムを表す。
図2】本発明による方法で有用である層状支持構造物の断面を表す。
図3】天然の膜による除去と比較した、本発明の方法によって調製した膜による75℃のトルエン中のDPA(ジフェニルアントラセン MW=330)の除去を図式で示す。
図4】本発明の実施形態による重合反応を行うための装置のダイアグラムを概略的に表す。
図5】メソ多孔質TiO層(緑色標識)を示す、本発明による膜の横断図のEDX写真。
図6】本発明の方法を用いてメソ多孔質層に取り付けられたホスホン酸固定基(紫色標識)を示す、本発明による膜の横断図のEDX写真。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の態様によるナノろ過膜の製造方法は、TiO及び/又はZrOで作られた第1のメソ多孔質層並びにTiO及び/又はZrOとは異なる材料、特に酸化アルミニウムで作られた、メソ多孔質層に隣接した第2の多孔質層を含む支持構造物を提供する工程を含む。固定基は第1のメソ多孔質層の細孔内にグラフトされ、ここで、第2の層はグラフトする工程に不活性である。表面開始原子移動ラジカル重合反応のための開始剤は、固定基に共有結合している。支持構造物は、モノマー及び溶媒が含浸される。モノマーは、好ましくは表面開始原子移動ラジカル重合反応に適合する。触媒を含むフィードをメソ多孔質層に通す工程を含みながら重合反応は行われ、モノマーは触媒の存在下で開始剤からグラフトすることによって重合反応を開始するように構成されている。
【0014】
図1を参照すると、本発明の態様による方法は、層状支持構造物が提供される第1の工程11を含む。図2を参照すると、層状支持構造物20は、TiO及び/又はZrOで作られた第1のメソ多孔質層21並びにメソ多孔質層21に隣接した、有利には接している第2の多孔質層22を含む。第2の層は、TiO及び/又はZrOとは異なる材料で、有利には酸化アルミニウム等の様々なセラミック材料で作られている。有利には、第1の層21及び第2の層22は、共通の接合面23で接している。図2において、多孔質構造物20は、単に例示を目的として、管状の膜として示されている。平面構造等の多孔質支持構造物の他の形状が考えられ得る。
【0015】
第1の層21は、メソ多孔質である。IUPAC命名法によると、メソ多孔質材料は、2から50nmの直径を有する細孔を含む材料である。比較して、IUPACは、直径が2nmより小さい細孔を有する材料をマイクロ多孔質材料と定義し、直径が50nmより大きい細孔を有する材料をマクロ多孔質材料と定義している。メソ多孔性(mesoporosity)は、有利には、本明細書で以下に記載されるその後の方法の工程において、優れた拡散及び均一なグラフトを確実にする。
【0016】
第2の層22も、多孔質である。層22は、層21と同様にメソ多孔質であり得る。あるいは、層22はより大きな多孔性を有することができ、例えば層22はマクロ多孔質であり得る。
【0017】
有利には、第2の多孔質層はセラミック材料、有利には酸化アルミニウムで作られている。
【0018】
多孔質構造物20は、有利にはセラミック限外ろ過膜であり、特にTiO及び/又はZrO限外ろ過層を有するものである。特に好適な膜は、管状(モノ/マルチチャンネル)膜である。
【0019】
本発明の態様によると、多孔質構造物20は、第1のメソ多孔質層21内でナノろ過層が成長することを可能にするために、表面開始原子移動ラジカル重合(SI-ATRP)に供される。SI-ATRP法は、有利には「grafting-from」法に従って適用される。
【0020】
可逆的不活性化ラジカル重合(RDRP)又は精密ラジカル重合(CRP)は、連鎖移動又は連鎖停止を抑制し、従来のラジカル重合の制御不能な性質の問題を解決する方法である。ATRPは、別名原子移動ラジカル重合として知られ、ラジカルの可逆的不活性化を利用して後で再活性化され得る休止種を形成するCRP法の一種である。これは、特定の性質に適合した(tailor)機能性を備えたポリマーを一つ一つ作るために使用され得る、広く普及したCRP技術である。
【0021】
SI-ATRP、又は表面開始原子移動ラジカル重合は、特定の種類のATRPである。重合反応は依然としてATRPの経路に従うが、この方法には重要な空間的制限が存在する。SI-ATRPは、表面から開始する場合のポリマーの形成に基づいたグラフト法である。この方法は、文献において「grafting from」と呼ばれることが多い。別のタイプのグラフト法が存在する。それは、「grafting to」又は「grafting onto」と呼ばれ、異なる戦略に従う。grafting-from法を使用する場合、表面の調製が必要である。固定基があらかじめ形成されたポリマーに取り付けられる。次に、この固定基が表面のヒドロキシ基と反応してブラシ(brush)が形成される。
【0022】
したがって、本発明の態様によるSI-ATRP法の第1の工程12は、第1のメソ多孔質層21の細孔内に固定基をグラフトする工程を含む。固定基及び/又は第2の層22の材料若しくは構造体は、有利には、固定基が第2の層22上にグラフトするのを防ぐように選択される。固定基は、有利には、第1の層21の内部の細孔の壁上にグラフトされる。
【0023】
固定基は、有利に安定した方法において共有結合で取り付けられなければならない。TiO及び/又はZrO材料のための好適な固定基の例は、ホスホン酸固定基、及びさらに安定であることで知られるグリニャール試薬(有機マグネシウム試薬)である。固定基としてグリニャール試薬を導入することは、例えば、VITOの先願特許である国際公開第2010106167号に記載されているFunMem(登録商標)技術を使用して実行され得る。固定基の追加の例は、TiO上で非常に安定であることで知られる、カテコール、サリチル酸誘導体及びフタル酸誘導体である。
【0024】
より詳細には、固定基は、ホスホン酸基、グリニャール試薬、カテコール、サリチル酸基、炭水化物又はフタル酸基であり;有利には、ホスホン酸基、グリニャール試薬、サリチル酸基、又はフタル酸基であり;有利には、ホスホン酸基又はグリニャール試薬である。
【0025】
工程12の一例として、TiOメソ多孔質材料の表面上の機能化(functionalized)固定基としてのアミノプロピルホスホン酸のグラフティングを、以下の反応スキームで示す。
【0026】
【化1】
【0027】
次の工程13において、固定基は、重合反応(SI-ATRP)を開始するように構成された開始剤に共有結合している。有用な開始剤前駆体の一つの例はBIBB(α-ブロモイソブチリルブロミド)であり、好適な開始剤の別の例はEBIB(2-ブロモイソ酪酸エチル(ethyl 2-bromoisobutyrate))である。明らかに、SI-ATRPの分野で公知の開始剤が使用され得る。BIBB及びEBIBに加えて、好適な開始剤は以下の構造を含む:
【0028】
【化2】
【0029】
【化3】
【0030】
【化4】
【0031】
工程13の一例として、(先の工程12においてTiOメソ多孔質材料の表面上にグラフトされた)固定基にα-ブロモイソブチリルが開始剤として共有結合で付いている反応スキーム以下に示し、SI-ATRP法で使用され得る活性化セラミック表面が得られる。
【0032】
【化5】
【0033】
メソ多孔質材料は、第1のメソ多孔質層21の細孔壁上及び最上層上の連結開始剤の優れた拡散及び均一な分布を確実にするように選択される。
【0034】
前述した工程12及び工程13の代わりに、ホスホン酸/エステルに結合している開始剤が、初めに調製され、精製され、その後得られた化合物は一つの工程でセラミック膜にグラフトされ得る。
【0035】
したがって、次の工程14において、処理されたメソ多孔質材料は重合反応に供されるために調製される。調製は、工程13から得られた多孔質構造物20を好適な溶媒中のモノマーで含浸することを含む。SI-ATRPのための好適なモノマーの例には、限定されないが、スチレン、メチルアクリレート、N-ビニルホルムアミド、ビニル-2-ピロリドン、MMA、BMA、MES、3-スルホプロピルメタクリレート、アミノエチルメタクリレート、アミノ酸置換アクリレート、N-(3-スルホプロピル)アンモニウムベタイン、アリルグルコシド、D-グルコンアミドエチルメタクリレート等が含まれる。好適な溶媒の例は、DMF、アニソール、エチルアセテート及びトルエンである。
【0036】
有利には、多孔質構造物20全体が、モノマー/溶媒の組み合わせで含浸される。有利には、どこで重合が起こるかの制御が重合工程で行われるため、構造物を通過するモノマーの分散及び/又は拡散は特に制御される必要が無い。
【0037】
工程15において、重合反応が実行される。好適な重合反応は、触媒の存在下で実行されるものである。
【0038】
有利には、第1のメソ多孔質層は第2の多孔質層の外表面上に存在し、触媒は第2の多孔質層から第1のメソ多孔質層に向かって通される。
【0039】
有利には、重合反応は触媒が不活性化される時及び/又は取り除かれる時に停止する。これにより、どこで重合が起こるか及びいつ重合が起こるかを容易に制御できる。
【0040】
触媒は、有利には不活性化され得るものであり、特に酸素などの不活性剤の供給を通して(又は酸素などの不活性剤で多孔質構造物20を洗い流すことによって)不活性化され得るものである。
【0041】
有利には、本発明の態様において好適な重合反応には、限定されないが、アクリレート、メタクリレート、メタクリルアミド、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸ブチル(BMA)、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸、3-スルホプロピルメタクレリート、コハク酸(メタクリロイルオキシ)エチル(MES)、アミノエチルメタクリレート、アミノ酸置換アクリレート、メタクリロイル-2-ヒドロキシプロパン、N-ビニルホルムアミド、ビニル-2-ピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、ジエチレングリコールメタクリレート、メトキシジエチレングリコール-メタクリレート、トリエチレングリコールメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート(Methoxyldiethyleneglycolmethacrylate)、テトラエチレングリコールメタクリレート、メトキシテトラエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、ジエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、トリエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、N-(3-スルホプロピル)アンモニウムベタイン、アリルグルコシド、D-グルコンアミドエチルメタクリレート、D-グルコンアミドエチルアクリレート、糖置換アクリレート、糖置換メタクリレート、スチレン、アルファ-メチルスチレン及びアルファ-クロロスチレン等のスチレン誘導体、又はピリジン置換スチレン誘導体、の重合が含まれる。
【0042】
有利には、本発明の態様において、重合反応を実行するための(又は重合反応で使用するための)好適な触媒は、PMDETA(N,N,N′,N′,N′′-ペンタメチルジエチレントリアミン)、bpy:2,2′-ビピリジン、dNbpy:4,4′-ジ-5-ノニル-2,2′-ビピリジン、TREN:トリス(2-アミノエチル)アミン、又はMeTREN:トリス(2-ジメチルアミノエチル)アミンである。
【0043】
工程15の一例として、第1のメソ多孔質層21の最上層上の、及び細孔内のスチレンの表面開始重合の反応スキームを以下に示す:
【0044】
【化6】
【0045】
有利には、重合反応の間、触媒を含むフィードが支持構造物に通され、重合反応の間、支持構造物を通過するフィードの流速が測定され、流速が所定の基準値に達する時に触媒を不活性化するように構成された不活性剤が注入される。
【0046】
触媒がメソ多孔質層21に向かって流れるように、有利にはメソ多孔質層21を通過して流れるように、第2の層22から触媒を含むフィードを注入することによって、触媒を含むフィードは有利には支持構造体20に通される。あるいは、又はさらには、触媒を含むフィードは、特に、触媒が第2の層22に向かって流れるようにメソ多孔質層21から触媒を含むフィードを注入することによって、反対の方向に、支持構造物20に通され得る。フィードは、第2の層22と接合している側面23の反対側のメソ多孔質層21の側面(例えば、外表面)から注入され得る。触媒を含むフィードは、(接合面23に向かって)両方の側面から同時に又は交互に支持構造物20に通され、それぞれ、メソ多孔質層21を通過するフィードの収束する(converging)又は交互に流れる(alternating)流れ方向を得ることができる。
【0047】
より有利には、触媒を通過させることは、メソ多孔質層の反対側の支持構造物の側面で触媒を注入して濃度勾配を得ることを含み、ここで触媒は、濃度勾配の作用下で、特に第2の層から第1のメソ多孔質層に向かって、メソ多孔質層を通して拡散させられる。
【0048】
有利には、工程15の重合反応はモジュール内で実行され、モジュールは、膜(有利には、管状の膜)のルーメンが、膜の外側(透過側)から分離されている膜機能化リアクター(membrane functionalization reactor)である。溶媒及びモノマーは、例えば、膜の両方の側面(透過及び保持(retentate))において、膜リアクター内に添加され、細孔内のモノマーで膜を含浸させることができる。工程15の重合反応は、例えば、耐溶剤性Oリングが装備されているステンレス鋼製モジュール内で実行され得る。
【0049】
本発明の方法によって、市販されている(比較的安価であることが多い)限外ろ過セラミック膜(5nm以降(onwards))は、限定されないが、荷電、疎水性vs親水性、芳香族、キラル、高密度、ハイブリッド等の個々に適した(tailor-made)表面-細孔特性を有するナノろ過膜に変えられ得る。望ましい特性に応じて、以下に記載する、モジュール内で重合反応を実行するいくつかの方法が可能である。
【0050】
有利には、含浸する工程の後に、触媒、任意選択で例えばEBIB等の犠牲(遊離)開始剤(sacrificial(free)initiator)、及び高酸化状態の遷移金属錯体を還元することで活性遷移金属錯体を(再)生成するための、限定されないが、[Sn(EH)]等の還元剤が、添加される。これらの試薬は、膜の両側(ルーメン及び外側)で添加される。この場合、膜リアクターは混合を確実にするために密閉されて攪拌される。試薬の優れた拡散を確実にするために、及び形成されたポリマーがガラス状にならないことを確実にするガラス転移温度Tよりも高くなるように、温度は使用される。柔らかくて柔軟性のあるポリマーは、膨潤することができ、成長段階(ポリマー成長)の間、細孔内のモノマー及び触媒の拡散を確実にする。この技術により、高密度な材料を得るまで細孔内のポリマーを成長させることが可能になる。さらに、成長は、エントロピー的により多くの、2つの活性鎖末端の組み合わせによってその後停止される可能性を有する。この疑似の「架橋」現象は、閉じ込められることによって細孔内でより起こりやすく、より安定したハイブリッド材料をもたらす。あるいは、重合反応は、必須ではないが高密度の材料が得られるまで、細孔の縮小を可能にするより低い温度において実行される。天然の(機能化されていない)膜と比較して、本発明の方法により調製された膜(MCJ019、100℃、1.4Mのモノマー、20時間;MCJ018、100℃、4.3Mのモノマー、4時間;MCJ017(両方の膜)、100℃、4.3Mのモノマー、20時間)による、75℃のトルエン中のDPA(ジフェニルアントラセン MW=330)の除去を示している図3で示されているように、濃度、時間及び温度を調整することで、機能化は制御され得る。この図で示されている結果から、本発明の方法を用いて得られた膜は、反応条件に応じて、実質的に完全にDPAを保持する能力(95から99%の除去)を有し、一方で、天然の膜はわずか15から25%のDPAのみを保持することが明確に示されている。ちなみに、同様に図3に示されているように、本発明の方法を用いて得られた膜の浸透性は、天然の膜と比較して実質的により低い。
【0051】
別の代替実施形態において、含浸する工程の後に、触媒(及び触媒還元剤、及びEBIB等の遊離開始剤)は、透過側(外側)でのみ添加される。反応は、直接細孔から開始される。濃度勾配を通過して、触媒は最上層まで細孔を通り抜ける。それにより、最上層の機能化を制限しながら細孔内の制御された成長が可能になり、より高いフラックスで低MWCOを示すナノろ過膜をもたらす。
【0052】
さらに別の代替実施形態において「ダミー」が使用される、すなわち、管状ルーメンに完全に適合するステンレス鋼製要素(element)が、リアクター内の膜と一緒に配置される。溶媒及びモノマーは、膜の両側面(透過及び保持)においてリアクター内に添加され、したがって、膜は細孔内にモノマーを含浸される。次に、ダミーを配置し、透過側(外側)でのみ触媒(並びに触媒還元剤及びEBIB等の遊離(犠牲)開始剤)が添加される。その後、重合は細孔内でのみ行われ、外側の最上層を未修飾とする。
【0053】
さらなる代替実施形態は、膜リアクター31及び膜30が配置されるろ過ユニット32を使用する。図4は、その装置のダイアグラムを概略的に表し、その中の参照符号は以下の特徴を説明している:膜30、膜リアクター(膜ユニット)31、ろ過ユニット32、不活性ガス33、マスフローメーター34及び34′、フィードタンク35、ダイアフィルトレーションタンク36、ポンプ37及び38、弁39及び40。この図を参照すると、ろ過ユニット32には循環ポンプ37が装備されており、圧力が不活性ガス33(Ar又はN)で供給される。(フィードタンク35からの)モノマー溶液は、0.1から20barの圧力で初めに循環される。膜30は、溶液が透過側から細孔を通って循環し、管状膜のルーメンに達するような方法で取り付けられる。次に、ブリード(bleed)がフィードに戻され、溶液中に存在する全ての溶質が再利用されることを確実にする。まだ浸透されていない溶液は、フィードに戻されて循環される。それが、プロセスの間、追加の試薬の添加を必要とせずに全ての試薬が連続的に循環される閉鎖した系を確実にする。この含浸する工程の後、触媒はフィード側に導入される。反応混合物は、前述のように循環される。ポリマー成長は、初めに細孔内で起こる。プロセス分析ツールが実施され得る:マスフローメーター34は、ブリード側に配置される。重合が起きる時、細孔の収縮によって流れ(flow)は減少する。マスフローメーター34は、修飾(modification)のin situ状態を示すフラックスの変化を検出する。一定のフラックスが得られた時、系を開くことによって機能化反応はすぐに停止され得る。空気は触媒を不活性化し得る。より高密度な(tight)膜が望ましい場合は、より高い圧力が設定され得、フラックスが増加し、試薬の優れた循環を確実にすることができる。それにより期待される特性を有するまでポリマー鎖をさらに成長させることが可能となる。
【0054】
本発明の態様によるTiO/ZrOメソ多孔質膜へのSI-ATRPの制御された適用は、有利には、MWCO(分画分子量、molecular weight cut-off)を例えば1500Da以下に減少させることができ、耐熱性の及び耐薬品性の頑丈なセラミックバルク材料を有しながら、(細孔を通過する対流(convexion)現象ではなく、拡散輸送機構を通して)アフィニティ分離を行うことができる。結果として、広い温度範囲を有するプロセスで使用され得る、特にほとんどの市販の膜が使用できない高い温度で使用され得る、ハイブリッド有機溶媒ナノろ過膜が得られる。ポリマー材料と共に存在する膨潤効果は、セラミック骨格(scaffold)のおかげで本発明の膜において有利にはかなり低減される。重合がなされ得る多数のモノマーが市販で入手できることは、個々に合わせた特性を有する無数の新たな膜の合成を可能にする。
【0055】
本発明の別の態様によると、多孔質支持体及び多孔質支持体と接するナノろ過層を含むナノろ過膜が提供され、ここで、ナノろ過層はTiO及び/又はZrOで作られたマトリクスを含み、多孔質支持体はTiO及び/又はZrOとは異なる材料で作られており、マトリクスが、マトリクスに共有結合しているポリマーで少なくとも部分的に満たされているメソ多孔質サイズの空間(volume)を囲んでいる。
【0056】
有利には、ナノろ過膜の多孔質支持体は、セラミック材料、特に酸化アルミニウムで作られている。
【0057】
有利には、ポリマーは、マトリクスからメソ多孔質サイズの空間中にブラシ状に伸びている。
【0058】
有利には、ナノろ過層は高密度である。あるいは、メソ多孔質サイズの空間は、部分的に空洞である。
【0059】
有利には、ナノろ過膜の多孔質支持体は、ポリマーを含まない。
【0060】
有利には、ナノろ過膜は管状である。より有利には、ナノろ過膜はルーメン及びルーメンと接合する内壁を含み、ここで、ナノろ過層は内壁から外表面に向かって伸びている。
【0061】
図5及び図6は、本発明による膜の横断図のEDX写真である。EDX写真を得るための好適な手順は、当業者にとって明白であるだろう。図5及び図6を得るために、例えば、エネルギー分散型X線(EDX)分析を伴う走査型電子顕微鏡(SEM)がJEOL JSM-6340F顕微鏡を用いて実行され、20kVの加速電圧で操作された。図5及び図6は、それぞれ、メソ多孔質TiO層(緑色標識、図5)、及びどのようにして本発明の方法を用いてホスホン酸固定基(紫色標識、図6)がこのメソ多孔質層にうまく閉じ込められている(confined to)かを、明確に示している。
【0062】
本発明の態様によるナノろ過膜は、ナノろ過及びパーベーパレーションの用途にとりわけ有用であり、特に昇温が起きる場合及び/又は優れた耐薬品性が必要である場合に有用である。
【実施例
【0063】
<実験1.アミノプロピルホスホン酸修飾>
【0064】
アミノプロピルホスホン酸(0.11g、10mM)をRO水(80mL)に溶解し、室温で5分間攪拌した。膜(I5Ti16119-SG2123、これは、図2のように構造された、12cmの長さの単管状の市販の膜であって、5nmの細孔を有するTiOメソ多孔質層21が、Alの第2の多孔質層22の最上部にあり;膜は約20cmの膜表面を有する膜である)を、(撹拌機が装備されている)T-リアクター内に配置し、次に、反応混合物をそれに注いだ。T-リアクターを加熱ジャケットで覆い、温度計を溶液内に置き、混合物を50℃で4時間攪拌した。続いて、溶液を注意深く取出し、リアクター及び膜(reactor+membrane)をRO HO(×2)で洗った:RO水(80mL)をT-リアクターに添加し室温で30分間攪拌させた。次に、RO水(80mL)を3回T-リアクターに添加し、室温で一晩攪拌させた。
【0065】
続いて、膜を取出し、オーブン内で膜を100℃で2時間乾燥させ、その後、室温でそれを冷却した。
【0066】
膜を、真空ライン(10-4mbar)内で、65℃で2時間乾燥させた。
【0067】
<実験2.α-ブロモイソブチリルブロミド修飾>
【0068】
実験1から得られた膜を、T-リアクター内に配置し、窒素で洗い流して反応槽の不活性化及び膜の冷却を確実にした。α-ブロモイソブチリルブロミド(1.84g、0.1M)をDCM(80mL)中に溶解し、T-リアクター内に注いだ。系を氷浴で0℃まで冷却して、次に、EtN(1.05g、0.13M)をN雰囲気下で滴下した。T-リアクターを閉じて、それに窒素を10分間流し込み、その後系を完全に閉じた。攪拌しながら反応を一晩進行させた。
【0069】
20時間の反応持続時間の後、溶液の色は茶色であった。溶液を捨て、膜及びリアクターの系をDCMで2回洗い流した。DCM(80mL)を系に添加し、4時間攪拌させた。DCM(80mL)を再び添加し、20時間攪拌させた。
【0070】
無色のDCM溶液をT-リアクターから取り除いた。その後、膜を30mLのDCMで2回洗い流した。膜をモジュールから取出し、ドラフトチャンバー内で、室温で乾燥させた。
【0071】
【表1】
【0072】
<実験3.モノマーとしてスチレンを用いるSI-ATRP重合>
【0073】
実験2で得られた膜を、異なる反応条件下で、モノマーとしてスチレンを用いるSI-ATRPに供した。
【0074】
<実験3.1>
【0075】
【表2】
【0076】
ガラス品(glass-ware)及びモジュールを、夜の間に100℃で乾燥させた。洗浄されたはかりを洗浄された攪拌プレートと一緒にグローブボックスの中に導入した。実験2の膜を真空ライン内で2時間乾燥させた。
【0077】
乾燥させた膜を、2つの耐溶剤性の「Oリング」と一緒に、ステンレス鋼製の管状膜モジュール内に配置した。EBIB(0.077g)をDMF(10mL)に溶解し、次にスチレン(10mL)を添加した。5分間溶液を攪拌した後、パスツールピペットを用いてそれをモジュール内に(初めに膜の内側に、次に外側に)注いだ。15mLの溶液の全量がモジュール全体を満たすために必要であった。モジュールを閉め、水平位置で2時間静置した。
【0078】
[Sn(EH)](0.075g)をビーカーに秤量し、モジュール内の溶液(2パスツールピペット)に溶解した。その後、それをモジュールに(溶液の半分を膜の内側の部分に、残りの半分を外側に)添加した。モジュールを閉め、少し振動させた。
【0079】
CuCl(0.042g)及びPMDETA(0.053g)をビーカーに秤量し、モジュール内の溶液(2パスツールピペット)で溶解した。溶液は青色に変化した。その後、溶液をモジュールに(溶液の半分は膜の内側の部分に、残りの半分を外側に)添加した。モジュールを閉め、少し振動させた。
【0080】
最後に、モジュールをグローブボックスから取出し、水平位置で20時間、ヒートジャケットを用いて110℃まで加熱した。
【0081】
20時間後、系を開いて空気にさらし(open to air)、溶液(緑色の溶液)をモジュールから取り出した。膜をT-リアクター内に配置し、DMF(×2)で洗い流した:DMF(80mL)を添加して、それを1時間攪拌させた。その後、溶液を取り除き、膜を含有するT-リアクターを水(×2)で洗い流した:水(80mL)を添加して、20分間攪拌させた。
【0082】
膜を、2つの耐溶剤性「Oリング」と一緒にステンレス鋼製の管状膜のモジュール内に配置し、5バールの圧力源として窒素を用いて、dead-endモードでDMFによって洗浄した。約20mLの浸透液を得た後、膜をモジュールから取り出した。
【0083】
膜を、T型管内で一晩DMF(80mL)で洗浄した。その後、水(3×80mL)で1時間、それぞれ洗浄した。
【0084】
膜を、5バールのクロスフローシステムで、水で洗浄した。
【0085】
膜の特性評価:
・水のフラックス。膜は、65℃で(パームポロメトリーの直前の)2時間の真空によって乾燥させた。
・パームポロメトリー
【0086】
<実験3.2>
【0087】
【表3】
【0088】
ガラス品及びモジュールを、夜の間に100℃で乾燥させた。洗浄されたはかりを洗浄された攪拌プレートと一緒にグローブボックスの中に導入した。膜を真空ライン内で2時間乾燥させた。
【0089】
乾燥させた膜を、2つの耐溶剤性の「Oリング」と一緒に、ステンレス鋼製の管状膜モジュール内に配置した。EBIB(0.076g)をDMF(10mL)中に溶解し、次にスチレン(10mL)を添加した。5分間溶液を攪拌した後、パスツールピペットを用いてそれをモジュール内に(初めに膜の内側に、次に外側に)注いだ。15mLの溶液の全量がモジュール全体を満たすために必要であった。モジュールを閉め、水平位置で2時間静置した。
【0090】
[Sn(EH)](0.063g)をビーカーに秤量し、モジュール内の溶液(2パスツールピペット)に溶解した。その後、それをモジュール内に(溶液の半分を膜の内側の部分に、残りの半分を外側に)加えた。モジュールを閉め、少し振動した。
【0091】
CuCl(0.041g)及びPMDETA(0.060g)をビーカーに秤量し、モジュール内の溶液(2パスツールピペット)で溶解した。溶液は青色に変化した。その後、溶液をモジュールに(溶液の半分は膜の内側の部分に、残りの半分を外側に)添加した。モジュールを閉め、少し振動させた。
【0092】
最後に、モジュールをグローブボックスから取出し、水平位置で4時間、ヒートジャケットを用いて110℃まで加熱した。この時間の後、系を開いて空気にさらし、溶液(緑色の溶液)をモジュールから取り出した。膜(活性部分は青色であった)をT-リアクター内に配置し、DMF(×2)で洗い流した。DMF(80mL)を添加して、それを一晩攪拌させた。
【0093】
溶液は青色に変化し、膜を全体的に洗浄した(白色)。溶液を取り除き、T-リアクターをDMF(×2)で洗い流し、その後DMFを再び加えて1時間攪拌させた。その後、溶液を取り除き、T-リアクターを水(×2)で洗い流した。水(80mL)を添加して2回、2時間攪拌させた。その後、膜を室温で乾燥させた。
【0094】
膜の特性評価:
・水のフラックス。膜は、65℃で(パームポロメトリーの直前の)2時間の真空によって乾燥させた。
・パームポロメトリー
【0095】
<実験3.3>
【0096】
【表4】
【0097】
ガラス品及びモジュールを、夜の間に100℃で乾燥させた。洗浄されたはかりを洗浄された攪拌プレートと一緒にグローブボックスの中に導入した。膜を真空ライン内で2時間乾燥させた。
【0098】
乾燥させた膜を、2つの耐溶剤性の「Oリング」と一緒に、ステンレス鋼製の管状膜モジュール内に配置した。EBIB(0.0325g)をDMF(17.5mL)中に溶解し、次にスチレン(3.5mL)を添加した。5分間溶液を攪拌した後、パスツールピペットを用いてそれをモジュール内に(初めに膜の内側に、次に外側に)注いだ。14mLの溶液の全量がモジュール全体を満たすために必要であった。モジュールを閉め、水平位置で2時間静置した。
【0099】
[Sn(EH)](0.0216g)をビーカーに秤量し、モジュール内の溶液(2パスツールピペット)に溶解した。その後、それをモジュールに(溶液の半分を膜の内側の部分に、残りの半分を外側に)添加した。モジュールを閉め、少し振動させた。
【0100】
CuCl(0.0130g)及びPMDETA(0.0196g)をビーカーに秤量し、モジュール内の溶液(2パスツールピペット)で溶解した。溶液は青色に変化した。その後、溶液をモジュールに(溶液の半分は膜の内側の部分に、残りの半分を外側に)添加した。モジュールを閉め、少し振動させた。
【0101】
最後に、モジュールをグローブボックスから取出し、水平位置で20時間、ヒートジャケットを用いて110℃まで加熱した。
【0102】
20時間後、系を開いて空気にさらし、溶液(緑色の溶液)をモジュールから取り出した。膜をT-リアクター内に配置し、DMF(80mL)を添加して、それを4時間攪拌させた。溶液(青色、blueish)を取り除き、DMFを再び添加して一晩攪拌させた。
【0103】
溶液は無色であり、膜は白色であった。溶液を取り除き、T-リアクターを水(×2)で洗浄した。水(80mL)を添加して2回、2時間攪拌させた。その後、膜を室温で乾燥させた。
【0104】
膜の特性評価:
・水のフラックス。膜は、65℃で(パームポロメトリーの直前の)2時間の真空によって乾燥させた。
・パームポロメトリー
【0105】
<膜の特性評価>
【0106】
以下の試験は、修飾された膜及び修飾されていない膜の両方で行った。
【0107】
<浸透性>
【0108】
水のフラックス及び浸透性は、修飾の前後で測定した。これらのパラメーターの変化が、変化した表面の指標である。測定結果の差は、疎水性の変化又は広範囲の重合による細孔の閉鎖の結果であり得る。生じたデータをよりよく理解するために、パームポロメトリーが実行され得る。
【0109】
溶媒のフラックスもまた、これらの膜を用いて試験され得る。いかなる性質の変化も好ましい。
膜のフラックス
・実験3.1の膜:スチレン、DMF、1:1、20時間
【0110】
【表5】
【0111】
【表6】
【0112】
・実験3.2の膜:スチレン、DMF、1:1、4時間
【0113】
【表7】
【0114】
【表8】
【0115】
<膜パームポロメトリー>
【0116】
両方の修飾された膜に対して、窒素フラックスが検出されなかったため(高密度材料)、膜パームポロメトリーは測定できなかった。パームポロメトリーの間、低膜透過圧力(パームポロメトリー測定の間、典型的には0.1バール)において測定された、前述の実験で使用された修飾されていない膜を通過する窒素のフラックスは、膜に供給される窒素の流量が約1000ml/分である場合、典型的には300ml/分より大きくなる。本実施例の修飾された膜を測定する時、同じ測定条件で膜を通過する窒素のフラックスは、検出限界未満であり、約5ml/分である。この場合、膜が「高密度」である、すなわち、膜の細孔がグラフトされたポリマーで満たされているとみなす。類似の測定条件で流量が検出限界を超える場合においては、グラフトされたポリマーは細孔を完全に満たさずに、いくらかの空隙を残し、したがって、修飾されていない膜と比較して、減少した細孔のサイズを有する多孔質膜をもたらす。
【0117】
<他の試薬の組み合わせ>
【0118】
他の可能な試薬の組み合わせを、以下の表9にまとめている。添加順序1:SM、溶媒、CuBr、EBIB、リガンド、スチレン。添加順序2:CuBr、リガンド、溶媒、SM、EBIB、スチレン。添加順序3:CuCl、リガンド、溶媒、SM、スチレン、[Sn(EH)](該当する場合)、EBIB。この反応で使用されるスチレンはその高い粘性により重合したものである可能性が高い。
【0119】
【表9】
【表10】
図1
図2
図3
図4
図5
図6