(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】特に金属および/またはセラミックに適用可能である硬化方法および装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/106 20170101AFI20240104BHJP
B29C 64/188 20170101ALI20240104BHJP
B29C 64/295 20170101ALI20240104BHJP
B29C 64/364 20170101ALI20240104BHJP
B29C 64/40 20170101ALI20240104BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240104BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240104BHJP
【FI】
B29C64/106
B29C64/188
B29C64/295
B29C64/364
B29C64/40
B33Y10/00
B33Y30/00
(21)【出願番号】P 2021510407
(86)(22)【出願日】2019-08-27
(86)【国際出願番号】 IL2019050957
(87)【国際公開番号】W WO2020044336
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-07-19
(32)【優先日】2018-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519383061
【氏名又は名称】トリトン テクノロジーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TRITONE TECHNOLOGIES LTD.
【住所又は居所原語表記】12 Amal Street, Park Afek Industrial Zone, Rosh HaAyin, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベン-ツァー オフェル
(72)【発明者】
【氏名】ペレド ハガイ
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0311167(US,A1)
【文献】米国特許第10137642(US,B1)
【文献】特表2016-536178(JP,A)
【文献】特開2017-087244(JP,A)
【文献】特開2016-132102(JP,A)
【文献】特開2016-221894(JP,A)
【文献】特開2018-059131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
B33Y 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化したペーストの連続層から製品を構築プレート上に形成する方法であって、
前記製品の1つの層を定義するために第1の型を前記
構築プレート上に印刷することと、前記第1の型にペースト材料を充填して、第1の層を形成することと、を備える、
前記構築プレート上にペーストから層を形成することと、
前記層を前記
層の形
成位置に配置させた状態で、前記層を覆う密封エンクロージャを前記
構築プレート上に下げることと、
前記密封エンクロージャ内の前記層の周囲の空間を密封することと、
前記密封エンクロージャ内の前記層に、室温でペースト内の液体を沸騰させることができる十分な低圧である真空を適用することと、
所定の時間、前記密封エンクロージャ内の前記真空を保持することと、
前記保持に続いて、前記真空を除去することと、
前記密封エンクロージャを前記
構築プレートから上げて、前記密封を除去することと、
前記構築プレート上の前記層の形成位置において、連続するさらなる複数の層を、それぞれの前の層の上に印刷し、各層に対して、型の印刷、ペーストの充填、密封、真空の適用、真空の除去、および密封の除去を繰り返し行い、
前記構築プレート上に硬化した複数の層
の製品を形成することと、
を備える、方法。
【請求項2】
前記第1の層を形成した後、第2の型を印刷する前に前記第1の層を平滑化または平坦化することによって前記第1の層の仕上げ面に第2の層を形成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
密封する前に各層を温風で加熱することを備える、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
10秒から150秒の間または約30秒の間、前記温風を適用し続けることを備える、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記型の印刷材料は、前記ペースト材料の融点よりも低い、型の融点を有する、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記温風は、前記型の融点より低い温度である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記真空は、前記温風の温度の液体を沸騰させるのに十分な低圧である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記真空は、前記ペーストから残留液体を引き出すのに十分な低圧である、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記真空は、0.01ミリバールから100ミリバールの間、または0.1ミリバールから25ミリバールの間、または約1ミリバールの絶対圧を備える、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記真空の時間は、10秒から150秒、または約30秒である、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の層の少なくともいくつかのそれぞれに対して、前記密封、前記真空の適用および除去、および前記密封の除去のサイクルを複数回実施することを備える、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記複数の層の少なくともいくつかのそれぞれに対して、前記加熱、前記密封、前記真空の適用および除去、および前記密封の除去のサイクルを複数回実施することを備える、請求項3または4に記載の方法。
【請求項13】
所定の硬度に達するまで、それぞれの層で前記サイクルが繰り返される、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記型にペースト材料を充填することは、スキージを使用して前記型に前記ペースト材料を塗り広げることを備える、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
異なる層に少なくとも2種類の異なるペースト材料を使用することを備える、請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記密封は、それぞれの層の周りで真空エンクロージャを閉じることを備える、請求項1から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
型の壁内でペーストを硬化させる装置であって、
構築プレートと、
前記
構築プレート上の層が形成される位置に配置された前記型内に、ペーストを塗布することができる第1の位置に開き、前記型および前記ペーストを前記
構築プレート上の前記層が形成される位置に配置させた状態で、前記型および前記型内に塗布された前記ペーストの周りで密封を提供するために前記
構築プレート上で閉じるように構成された密封エンクロージャと、
前記閉じる位置にある前記密封エンクロージャから空気を排出して、所定の時間、前記層が形成される位置にある前記ペーストに真空を適用することによって、前記ペーストを硬化させて、製品の1層または製品の部分を提供するように構成された真空源と、
を備え、
複数の層の製品または部品のための複数の層を提供するように構成される、
装置。
【請求項18】
前記型は型の融点を有し、前記装置は、温風を用いて、密封前の前記ペーストを前記温風の温度まで加熱するヒータをさらに備え、
前記温風の温度は、室温よりも高く、前記型の融点よりも低い、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
1回につき、10秒から150秒の間または約30秒の間、加熱を適用するように構成されている、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記真空源は、所定の真空の時間の間、前記真空を適用するように構成される、請求項17から19のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
前記所定の真空の時間は、10秒から150秒の間、または約30秒である、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記真空は、前記温風の温度の液体を沸騰させるのに十分な低圧である、請求項18に記載の装置。
【請求項23】
前記真空は、前記ペーストから残留水を引き出すのに十分な低圧である、請求項17から22のいずれか1項に記載の装置。
【請求項24】
前記真空は、0.01ミリバールから100ミリバールの間、または0.1ミリバールから25ミリバールの間、または約1ミリバールの絶対圧を提供する、請求項17から23のいずれか1項に記載の装置。
【請求項25】
前記密封エンクロージャは、前記複数の層の少なくともいくつかのそれぞれに対して、前記密封、前記真空の適用および除去、および前記密封の除去を、複数回行うように構成される、請求項17から24のいずれかに記載の装置。
【請求項26】
前記ヒータは、前記複数の層のそれぞれに対して、加熱を複数回行うように構成される、請求項18に記載の装置。
【請求項27】
前記ペースト材料を前記型に塗り広げるスキージをさらに備える、請求項17から26のいずれか1項に記載の装置。
【請求項28】
硬化後の各層を平坦化するためのプレーナをさらに備える、請求項17から27のいずれか1項に記載の装置。
【請求項29】
前記ヒータは、温風の送風機または赤外線の放射源である、請求項18
または19に記載の装置。
【請求項30】
前記密封エンクロージャのベースの周りにガスケットをさらに備える、請求項18から29のいずれか1項に記載の装置。
【請求項31】
層の硬度を測定するための硬度測定装置を備える、請求項18から30のいずれか1項に記載の装置。
【請求項32】
型の壁内でペーストを硬化させる装置であって、
前記型内にペーストを塗布することができる第1の位置に開き、前記型および前記型内に塗布された前記ペーストの周りで密封を提供するために閉じるように構成された密封フードと、
前記閉じる位置にある前記密封フードから空気を排出して前記ペーストに真空を適用することによって、前記ペーストを硬化させるように構成された真空源と、
前記ペーストの硬度を測定するための硬度測定装置と、
を備え、
複数の層の製品または部品のための複数の層を提供するように構成される、
装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、2018年8月29日に出願された米国仮特許出願第62/724,120号からの優先権の利益を主張する。その内容は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[発明の分野と背景]
本発明は、そのいくつかの実施形態において、金属およびセラミック部品の積層造形のための工程および装置に関するものである。
【0003】
積層造形(Additive Manufacturing)(3D印刷)は、今日、試作品の作成や小規模な製造に広く利用されている。その中でも広く使われているのが熱溶解積層方式(FDM,Fused Deposition Modeling)と呼ばれる技術で、プラスチックのフィラメントをコイルから巻き出して融解し、ノズルに通して平らな糸状に敷き詰めて層を形成し、そこから3Dオブジェクトを作り出すものである。
【0004】
利用されるもう一つの手法として、ステレオリソグラフィーがある。ステレオリソグラフィーは、紫外線(UV)レーザをフォトポリマー樹脂の槽に照射することによって機能する積層造形工程である。コンピュータ支援製造またはコンピュータ支援設計ソフトウェア(CAM/CAD)の支援をもって、UVレーザでフォトポリマー樹脂槽の表面にあらかじめプログラムされたデザインや形状を描く。フォトポリマーは紫外線に感光するため、樹脂は固化し、目的の3Dオブジェクトの単層を形成する。この工程は、3Dオブジェクトが完成するまで、デザインの各層ごとに繰り返される。
【0005】
選択的レーザ焼結(SLS)も積層造形層技術の一つで、炭酸ガスレーザなどの高出力レーザを用いて、プラスチックの小さな粒子を融合させ、目的の3D形状を持つ塊にする技術である。レーザは、部品の3Dデジタル記述(例えばCADファイルやスキャンデータ)から生成された断面を粉末床の表面でスキャンすることにより、粉末材料を選択的に融合させる。各断面をスキャンした後、粉末床を1層分下げ、その上に新しい材料層を塗布し、部品が完成するまでこの工程を繰り返す。
【0006】
金属やセラミックは、融点が比較的高いため、積層造形手順に使用するのがより困難である。
【0007】
積層造形技術は、部品を1層ずつ形成していく構築工程のため、機械加工などの従来の生産工程に比べて一般的に時間がかかる。
【0008】
さらに、単純な積層造形では実現できない形状もある。これらの形状には、支持部分を印刷してから除去することで実現できるものもある。
【0009】
金属印刷技術として広く使われているのが、直接金属レーザ焼結(DMLS)である。印刷したい表面にごく薄い金属の粉末を敷き詰める。表面に亘ってレーザをゆっくりかつ着実に動かして粉末を焼結し、次いで粉末の追加の層を塗布および焼結することで、一度に1つの断面、オブジェクトを「印刷」する。このようにDMLSでは、一連の非常に薄い層を介して、徐々に3Dオブジェクトを作り上げる。
【0010】
3D金属印刷のもう一つの方法は、高出力のレーザが金属粉の各層を焼結するのではなく完全に溶融する、選択的レーザ溶融(SLM)である。選択的レーザ溶融は、非常に高密度で強度の高い造形物を得ることができる。選択的レーザ溶融は、特定の金属にしか使用できない。この技術は、ステンレス鋼、工具鋼、チタン、コバルトクロム、アルミニウムの部品の積層造形に使用できる。選択的レーザ溶融は、金属粉末の各層をその金属の融点以上に加熱しなければならないため、非常に高エネルギーの工程である。また、SLM製造時に発生する高い温度勾配は、最終製品の内部に応力や転位を発生させ、その物理的特性を損なう可能性がある。
【0011】
電子ビーム溶融(EBM)は、選択的レーザ溶融と非常に類似する積層造形工程である。SLMと同様に、非常に密度の高いモデルを作製することができる。この2つの技術の違いは、EBMではレーザではなく電子ビームを使って金属粉末を溶融することである。現在、電子ビーム溶融は、限られた種類の金属にしか使用できない。この工程の主な出発材料はチタン合金であるが、コバルトクロムも使用することができる。
【0012】
上述の金属印刷技術は、高価で、非常に時間がかかり、造形サイズや使用できる材料に制限がある。
【0013】
バインダジェット3D印刷は、鋳物用の砂型の印刷や、複雑なセラミック部品の生成に広く使われている。バインダジェット3D印刷は、金属積層造形技術としても知られている。選択的レーザ溶融法(SLM)や電子ビーム溶融法(EBM)のように材料を溶かすのではなく、金属粉末を接着剤インクで選択的に接合する。この「グリーン」部品は、その後、脱結合や焼結などの熱的工程を経て、場合によっては追加の材料を浸透させる。
【0014】
非特許文献1には、セラミックスの印刷技術が開示されている。この技術では、金属の場合と同様に、阻害物質が、セラミック粉末層の周りに縁部を定義する輪郭を形成し、次いで、セラミック粉末層が焼結される。その後、阻害層が除去される。
【0015】
Stuart Uramに対する特許文献1は、積層造形を用いて作製された型内にスリップ混合物を適用し、その後、混合物を内部に有する型を焼成することを含む、型鋳造を用いてオブジェクトを製造する方法を開示している。この開示では、10~60重量%のアルミン酸カルシウムと充填剤とを含む組成物について述べている。
【0016】
粉体射出形成(PIM)とは、微細に粉末化した(MIM、金属射出成型における)金属や(CIM、セラミック射出成型における)セラミックを、一定量のバインダ剤と混合し、射出形成が可能な状態にしたものを原料とする工程である。この形成工程により、原料中のバインダ剤の存在により大型化され膨らんだ複雑な部品を、ワンステップで大量に形成することができる。
【0017】
形成後、粉体とバインダの混合物は、バインダを除去する脱バインダ工程と粉体を高密度化する焼結工程とを経る。最終製品は、様々な産業や用途で使用される小さな部品である。PIMの原料の流れの性質は、レオロジを用いて定義される。現在の設備能力では、1回のショットで100g以下の典型的な量の型を使って形成できる製品に、加工を限定する必要がある。しかし、PIM原料内で実施可能な素材の種類は多岐にわたる。形成された形状に対して後続のコンディショニング作業が行われ、バインダ材料が除去され、金属やセラミックの粒子が拡散結合され、各寸法で通常15%の収縮率で目的の状態に緻密化される。PIMの部品は、プラスチックと同じように精密な射出形成で作られるため、ツールが非常に高価になる。そのため、PIMは通常、生産量のより多い部品にのみ使用される。
【0018】
本出願人に対する国際特許出願第PCT IL(73292)号は、比較的高速で、複雑な形状を作成することができ、多種多様な材料と互換性のある、セラミックや金属を使用した積層造形を行う方法を開示する。開示では、従来の形成技術や機械加工技術では不可能な形状を構築するために、あるいは既知の積層造形技術では使用が困難または不可能な材料を使用するために、あるいは既知の積層造形技術で可能な速度よりも速く形状を構築するために、積層造形を形成技術と組み合わせることを提案する。一例として、積層造形を用いて型を作り、その型に最終製品の材料を充填する。いくつかの変形例では、最終製品の層が個別の型で別々に構築され、以前に形成された層の上に後続の層が作られる。先に形成された層は、実際には新しい層の型を支持し、また新しい層のための床を提供することができる。
【0019】
1つの変形例では、型を形成するための材料を3D印刷するための第1のノズルと、充填剤を提供するための第2の別のノズルを有する印刷ユニットと、が提供される。第2のノズルは、異なるサイズの型を効率的に充填するために、異なるサイズの開口部を提供するように調整することができる。他の変形例では、2つの独立したアプリケータが用意される。1つは、3D印刷に必要な3つの自由度を持つ、型を印刷するためのもので、もう1つは、型が形成された後に充填するためのものである。
【0020】
一つの変形例は、インクジェット印刷ヘッドを使用して、ワックスやその他のホットメルトまたはサーモセット材料を使用して型を印刷することと、自己平坦化鋳造材料を使用してペースト鋳造の堆積層を平坦化することである。鋳造を平坦化するための代替例は、鋳造材料を成型直後に振動させることによるものであり、さらなる代替例は、スキージやブレードなどの機械的なツールを使用して型を充填し、平坦化することによるものである。
【0021】
この変形例では、金属またはセラミックのペーストは、液状であり、ドクターブレードやスキージを使って型内に塗布し、薄い層を形成する。平坦化工程によって、硬化したペーストをカッターやプレーナで機械加工し、滑らかな表面を形成する。
【0022】
平坦化工程の前に、ペーストは乾燥工程を経てもよい。乾燥工程では、ペースト中の液体の一部が除去されてもよく、部品の製造を遅らせないためにも、乾燥は比較的早いことが望ましい。積層造形は、いずれにせよ比較的時間のかかる工程であり、それを速めることができるものは、何でも望まれる。
【0023】
ペーストを乾燥させるためには、熱風などで温度を上げるのが一般的である。しかし、今回の場合、製造工程の最後に簡単に取り出せるように、外型がワックスなどの低融点材料で作られている。形成済みの層のための型は、次の層のためにその場で必要とされることが多いため、製造がまだ進行中の段階で型を除去することは一般的には不可能である。そのため、乾燥には50℃を超えるような温度を使用することができない。
【0024】
型が溶融する可能性があるかどうかにかかわらず、温度を上げることは一般的に推奨されない。何故なら、型と部品の構築材料との熱膨張率が異なるため、部品が破損する、または少なくともその機械的特性が弱くなる可能性があるからである。
【0025】
このように、まとめると、新しいレベルの塗布や平坦化の前には、既存のレベルを乾燥させる必要がある。一般的に乾燥は加熱して行われるが、ワックスなどの低融点材料があると、使用できる温度が制限され、温度が低いほど乾燥に時間がかかる。層ごとの製造は、次の層を製造する前に、各層で乾燥のために一時停止する必要があり、本開示では乾燥の問題、特に乾燥時間の問題に取り組む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【文献】米国特許出願公開第2014/0339745号明細書
【非特許文献】
【0027】
【文献】Ceramics 3D Printing by Selective Inhibition Sintering - Khoshnevis et al.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0028】
本実施形態では、真空を使用して乾燥を補助し、より詳細には、層を形成するための型に使用されるペーストまたは他の充填物の硬化を実施する。より詳細には、各層において、型を形成し、ペーストまたは他の物質を充填した後、新たに充填された層の表面を真空中に置くことで、圧力が急速に低下し、層内の液体の沸点が変化する。その結果、液体が蒸発して層が硬化する。硬化後、真空を解除し、容量を排気する。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、以下を含むペーストから形成された層を硬化させる方法であって、
ペーストから層を形成することと、
密封フードで層を密封することと
密封用フードに真空を適用することと、
所定の時間、真空を保持することと、
を備える方法が提供される。
【0030】
本方法は、
前記製品の1つの層を定義するために第1の型を印刷することと、
前記第1の型にペースト材料を充填して、第1の層を形成することと、
前記保持に続いて、真空を除去することと、
密封を除去することと、
それぞれの前の層の上に、連続するさらなる層を印刷し、各層に対して、型の印刷、ペーストの充填、密封、真空の適用、真空の除去、および密封の除去を繰り返して、形成された層製品を形成することと、
によって、ペーストから前記層を形成することを備えてもよい。
【0031】
本方法は、前記第1の層を形成した後、前記第2の型を印刷する前に、前記第1の層を平滑化または平坦化することによって、前記第1の層の仕上げ面に前記第2の層を形成することを備えてもよい。
【0032】
本方法は、密封する前に各層を温風で加熱することを備えてもよい。
【0033】
本方法は、10秒から150秒の間、または約30秒の間、前記温風を当て続けることを備えてもよい。
【0034】
一実施形態では、型の印刷材料は、前記鋳造材料の融点よりも低い、型の融点を有する。
【0035】
一実施形態では、前記温風は、前記型の融点よりも低い温度である。
【0036】
一実施形態では、前記真空は、前記温風温度の液体が沸騰するのに十分な低圧である。
【0037】
一実施形態では、前記真空は、前記ペーストから残留液体を引き出すのに十分な低圧である。
【0038】
一実施形態では、前記真空は、0.01ミリバールから100ミリバールの間、または0.1ミリバールから25ミリバールの間、または約1ミリバールの絶対圧を備える。
【0039】
一実施形態では、前記真空の時間は、10秒から150秒、または約30秒である。
【0040】
本方法は、複数の前記層の少なくともいくつかのそれぞれに対して、前記密封、真空の適用および除去、および密封の除去のサイクルを複数回実施することを備えてもよい。
【0041】
本方法は、複数の前記層の少なくともいくつかのそれぞれに対して、前記加熱、前記密封、前記真空の適用および除去、および前記密封の除去のサイクルを複数回実施することを備えてもよい。
【0042】
一実施形態では、所定の硬さに達するまで、それぞれの層で前記サイクルが繰り返される。
【0043】
一実施形態では、前記型にペースト材料を充填することは、スキージを使用して前記型に前記ペースト材料を塗り広げることを備える。
【0044】
本方法は、少なくとも2種類の異なるペースト材料を異なる層で使用することを備えてもよい。
【0045】
一実施形態では、前記密封は、それぞれの層の周りで真空フードを閉じることを備える。
【0046】
本発明の第2の態様によれば、型の壁内でペーストを硬化させる装置であって、
前記型内にペーストを塗布することができる第1の位置に開き、前記型および前記型内に塗布された前記ペーストの周りで密封を提供するために閉じるように構成された密封フードと、
前記閉じた位置にある前記密封フードから空気を排出して前記ペーストに真空を適用し、前記ペーストを硬化させるように構成された真空源と、
を備える装置が提供される。
【0047】
一実施形態では、装置は、密封前の前記ペーストを型の融点以下の温度まで加熱するヒータを含む。
【0048】
前記密封フードは、複数の前記層の少なくとも1つのそれぞれに対して、前記密封、真空の適用および除去、および密封の除去を複数回実施するように構成されていてもよい。
【0049】
温風の送風機は、複数の前記層の少なくとも1つのそれぞれに対して、前記加熱を複数回行ってもよい。
【0050】
スキージは、前記ペースト材料を前記型に塗り広げることができる。
【0051】
プレーナは、硬化後の各層を平坦化または平滑化してもよい。
【0052】
ヒータは、温風の送風機であっても、赤外線の照射源であってもよい。
【0053】
真空フードの底面にガスケットが設置されてもよい。
【0054】
硬度測定装置は、層の硬度を測定してもよい。
【0055】
本実施形態は、本明細書に開示された装置または方法を用いて製造された複数の層を含む製品をさらに包含する。
【0056】
特に定義されていない限り、本明細書で使用されているすべての技術的および/または科学的な用語は、本発明が関連する技術分野の通常の技術者によって一般的に理解されているのと同じ意味を持つ。本明細書に記載されたものと同様または同等の方法および材料を、本発明の実施または試験に使用することができるが、例示的な方法および/または材料を以下に記載する。矛盾がある場合は、定義を含む特許明細書が優先される。また、材料、方法、および例は例示に過ぎず、必ずしも限定的であることを意図していない。
【0057】
本発明の実施形態の3D印刷装置の動作は、選択されたタスクを手動、自動、またはそれらの組み合わせで実行または完了することを含むことができる。さらに、本発明の方法および/またはシステムの実施形態の実際の機器および装置によれば、いくつかの選択されたタスクは、ハードウェアによって、ソフトウェアによって、またはファームウェアによって、またはオペレーティングシステムを使用してそれらの組み合わせによって実施され得る。
【0058】
例えば、本発明の実施形態による選択されたタスクを実行するためのハードウェアは、チップまたは回路として実装され得る。ソフトウェアとして、本発明の実施形態による選択されたタスクは、任意の適切なオペレーティングシステムを使用するコンピュータによって実行される複数のソフトウェア命令として実装され得る。本発明の例示的な実施形態では、本明細書に記載された方法および/またはシステムの例示的な実施形態による1つまたは複数のタスクは、複数の命令を実行するためのコンピューティングプラットフォームなどのデータプロセッサによって実行される。任意選択で、データプロセッサは、命令および/またはデータを格納するための揮発性メモリ、および/または、命令および/またはデータを格納するための不揮発性ストレージ、例えば、磁気ハードディスクおよび/またはリムーバブルメディアを含む。任意選択で、ネットワーク接続も提供される。任意選択で、ディスプレイおよび/またはキーボードやマウスなどのユーザ入力デバイスも提供される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
本発明のいくつかの実施形態は、添付の図面を参照して、例示としてのみ説明される。ここで図面を詳細に参照すると、示された特定事項は例示であり、本発明の実施形態の説明を目的としたものであることが強調される。これに関連して、図面を用いた説明は、本発明の実施形態がどのように実施され得るかを当業者に明らかにするものである。
【0060】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態による、型に塗り広げられたペーストから形成された層を硬化させる手順を示す簡略化したフローチャートである。
【
図2】
図2は、個々の層に対して特定の硬化段階が繰り返される、
図1の手順の変形例を示す簡略化したフローチャートである。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態による層形成品または部品を製造する手順を示す簡略化したフローチャートである。
【
図4】
図4は、水の位相特性を示す簡略化した図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態による、型と、その型を用いて層単位で製造される部品と、各層を乾燥させるための真空フードと、を示す。
【
図8】
図8は、本実施形態を用いて製作する部品の構成を示す簡略図である。
【
図9】
図9は、本実施形態による層状製造のための、
図8の部品の例示的なスライスの仕方の1つを示す簡略図である。
【
図10】
図10は、
図8の部品を作製するための、第1の層の印刷された型を示す簡略図である。
【
図11】
図11は、
図8の部品の第1の層を形成するために、
図9で作った型を鋳造する様子を示す簡略図である。
【
図12】
図12は、
図11で形成した層を、本実施形態による急速乾燥のために真空フードに封入した状態である。
【
図13】
図13は、
図8の部品の第2の層のための型の印刷を説明する簡略図である。
【
図15】
図15は、本実施形態により各層で真空乾燥を行うことができる型を取り外した後の、
図8に従って作られた部品を示す簡略図である。
【
図16】
図16は、スキージがペーストを塗り広げて型に充填する、
図8の部品を作製するための装置である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本実施形態は、製造工程中の部品の硬化を促進するために真空を適用することに基づく。
【0062】
物質の沸点は、圧力の関数である。例えば、1バール(1気圧)の場合、水の沸点は約100℃である。しかし、標高4500mの山の上では、気圧が低いため、水は、85℃で沸騰する。
【0063】
真空に近い圧力である20ミリバールでは、水の沸点は約25℃であり、10ミリバールでは約7℃であり、さらに低い圧力である1ミリバールの真空では、沸点がさらに低くなるだけでなく、ペーストや型に残っている液体が取り出される可能性がある。したがって、ペーストの硬化における真空の効果は、単に実際の乾燥だけではなく、閉じ込められた液体の除去でもある。
【0064】
以上のことから、本発明の一実施形態では、まず、例えば、型を印刷して層を形成し、次に、型にペーストを充填する。次いで、構築された部品層を熱風で、例えば、45℃で30秒間加熱してもよい。
【0065】
加熱後、層の周りで真空密封を形成する真空フードで層をキャップする。この密封は、製造された部品の残りの部分の周りに全体的に延長されてもよい。次いで、フード内の容量をポンプで適切なレベルの真空にし、例えば約1ミリバールの圧力レベルにし、低圧を所定の時間(例えば30秒)の間保持する。
【0066】
最後に、容量は、大気圧まで排気される。
【0067】
最初の加熱段階では、部品の表面を励起して、水や様々な溶剤などの液体分子のエネルギーを高めることができる。
【0068】
一実施形態では、加熱の後に真空を適用するサイクルを使用してもよい。さらなる実施形態では、真空を解除するための排気は、温めた空気を用いて行ってもよい。
【0069】
型の壁内でペーストを硬化させる上記の方法を実行するための可能な装置は、型内にペーストを塗布できるように第1の位置まで開き、その後、型と型内に塗布されたペーストとの周りに気密密封を提供するために閉じる密封フードを備える。次いで、真空源が、閉じた位置にある密封フードから空気を排出し、ペーストに真空を適用する。この真空により、ペーストから水分やその他の液体が除去され、ペーストが硬化する。
【0070】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載された、および/または図面および/または実施例に示された、構造の詳細および構成要素の配置および/または方法に必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態、または様々な仕方で実施または実行することが可能である。
【0071】
次に図面を参照すると、
図1は、形成された層製品の製造方法を示す簡略化されたフローチャートである。第1の層は、ペーストを用いて形成される(ボックス200)。以下で説明するように、実施形態では、ペーストが充填されるべき領域を囲む型を印刷してもよく、印刷された型内にペーストを塗り広げて層を形成する。ペーストから層を形成する他の方法を使用してもよい。
【0072】
ボックス202に示されるように、層を加熱する任意選択の段階がある。例えば、温風を新たに形成された層に吹き付けてもよい。ペーストを事前に加熱しなくても真空を用いた硬化は機能するので、加熱は任意選択である。しかし、加熱を行うことで、蒸発速度の効率を高めることができる。型は、印刷後の除去を容易にするために、低融点の材料、または代わりに溶解しやすい材料で作られる。そのため、加熱は型の融点以下の温度に限定することができ、例えば融点より摂氏20℃低い温度に保つことができる。したがって、例えば、型の融点が80℃であれば、加熱は60℃に制限することができる。温風で加熱する場合は、温風は型材料の融点よりも少なくともわずかに低い温度に保たれる。
【0073】
その後、新たに形成された層は、例えば、形成されている部品や製品の新たな構造を覆うように真空フードを閉じることで、気密性の高いチャンバを密封することができる(ボックス204)。
【0074】
次いで、ペーストを硬化させるために、あらかじめ設定された時間、その層に真空を適用することができる。真空は、ペースト内の液体が現在の温度で沸騰するのに十分なものである必要がある。
【0075】
図4は、対数スケールに基づく水の相図で、10ミリバールのような低圧の場合、水の沸点は6.8℃である。さらに低圧の1ミリバールでは、沸点が唯一のメカニズムではなくなり、低圧によってペーストから残留蒸気が引き出される可能性がある。真空は、ボックス208のように、効果的であるように選択される所定の延期時間、例えば30秒の間保持されてもよい。ペーストには水以外の溶媒が含まれている場合があり、それらは独自の相図を持っている可能性があることが指摘される。
【0076】
ボックス210のように、真空を解除して、真空フードを除去してもよい。
【0077】
この工程は、前の層の上に次々と追加の層を印刷することで継続されてもよい(212)。各層には型が印刷され、ペーストが充填される。その層は密封される。真空が適用され、必要な時間だけ保持された後に解除され、最終的には形成された層製品または部品が得られることになる。
【0078】
また、
図3のボックス20に示すように、現在形成中の層に対して平滑化を行ってもよい。硬化前に、ヘラや刃物などで表面をなぞることにより平滑化を行ってもよい。代替的にまたは追加で、硬化後に平坦化工程で不要な突起物を削るなどして平滑化してもよい。さらに、代替的に、硬化前に平滑化を行い、硬化後に平坦化を行ってもよい。いずれの場合も、次の層のための型を印刷するためのベースとして、滑らかな表面を提供することができる。これは、次の層が前の層の仕上げ面上で製造されることを確実にするためである。
【0079】
次に、
図1に示した実施形態の変形例を示す
図2を参照する。
図1と同じ部品には同じ参照番号を付し、本変形例を理解するために必要な場合を除き、再度説明しない。
図2に示すように、密封204、減圧による真空適用206、予め設定された時間の保持208、真空解除、を個々の層に対して繰り返すことで、個々の層に対して2回、3回またはそれ以上の真空適用を行ってもよい。
【0080】
また、加熱202は、2回、3回、またはそれ以上適用してもよい。一実施形態では、真空フードは、サイクルを通して層の上に残る。層は最初に加熱され、その後、真空フードが適用される。真空が適用され、必要な時間保持された後、温められた空気を真空フードに入れることにより、真空が解除される。その後、フード内の温められた空気を排出することで、再び真空が適用される。
【0081】
硬化後の各層で平坦化を行ってもよい。
【0082】
ある実施形態では、1サイクル後に層の硬さを試験する。硬さが所定のレベル以下であれば、さらなるサイクルが実施される。
【0083】
具体的には、型に印刷した後、ペーストを塗布し、スキージで型に充填すると、ペーストは湿った状態である。次の工程である風乾工程で、ペーストに含まれる液体の一部が除去されるが、その層は十分に硬くなく、平坦化工程に耐えられない。
【0084】
真空段階では、構築時に部品に閉じ込められた液体のほとんどを乾燥させ、除去する。
【0085】
真空工程を適用した後、その層は切断(平坦化)工程に耐えられるほど硬くなることがある。硬さと強度には相関関係があり、硬い層はその部品のグリーン強度が強いことを意味する。グリーン強度については、以下で詳しく説明する。
【0086】
硬度を測定するにはいくつかの方法や尺度があり、工学や冶金の分野で使用される一般的な方法は圧痕硬度測定である。一般的な圧子硬さスケールは、とりわけロックウェル、ビッカース、ショア、ブリネルであり、実施形態では、デュロメータを用いてショアA硬度試験が行われる。90ショアA以上のレベルを達成した層は、効果的に平坦化することができた。硬度が90ショアA未満の層は、平坦化工程で損傷する可能性がある。このように、一実施形態では、真空と加熱のサイクルが層を90ショアAまで硬化させない場合、サイクルを繰り返す。必要な硬さに達した場合は、それ以上のサイクルは行わない。
【0087】
さらなる実施形態では、真空フードは、層が形成されるとすぐに、最初に層の上に置かれてもよく、最初の加熱は、フードに温められた空気を挿入することによって行われてもよい。後続の真空は、いくつかの実施形態では、適度に低圧の温められた空気を含んでいてもよい。他の加熱方法としては、赤外線放射を使用することが挙げられる。放射線加熱は、真空の間に適用されてもよい。
【0088】
製品や部品の連続する層は、同じ材料で作られていてもよく、それによって層の融合が容易になることに留意されたい。また、異なる場所で異なる機械的特性が要求される場合などには、異なるペースト材料を異なる層で使用してもよい。
【0089】
次に、本実施形態による形成された層製品の製造方法を示す簡略化されたフローチャートである
図3を参照する。第1のボックス10は、製品の1つの層を定義するための第1の型を印刷することを示す。この型は、既知の積層造形技術を用いて印刷してもよい。ボックス12は、ボックス10で印刷された型に充填するためにペースト材料を塗り広げることを示す。スキージは、ペースト材料を型全体に塗り広げてもよい。
【0090】
このペースト材料は、次いで、最終的に形成される層製品の第1の層を形成するが、ここではかなり液体を含んだ柔らかい状態なので、
図1または
図2に示した手順を適用して層を硬化させてもよい(ボックス13)。
【0091】
ボックス14では、第2の層の型が第1の層および/または第1の形成層上に印刷される。場合によっては、第2の層は少なくとも1つの次元において第1の層よりも小さく、第2の層の型が第1の層のペースト部分に堆積される。詳細は後述するが、ペースト層は、この場合、第2の層の型の印刷を支持するために硬化されている。
【0092】
ボックス16では、製品の第2の層を形成するために、さらにペースト材料が第2の層の型に注がれる。ボックス17に示されるように、
図1または
図2の硬化手順が実施される。ボックス18に示されるように、さらなる層を追加して、必要な数の層を持つ形成された層製品または部品を形成する。
【0093】
注入後、任意に硬化前または硬化後、あるいはその両方で、20、21、22、23に示されるように、任意選択で、鋳造層の新しい表面を仕上げツールで平滑化、仕上げ、平坦化、または研磨してもよい。
【0094】
型は、ペースト材料を保持するのに十分な強度を持つ任意の標準的な型の印刷材料を用いて印刷してもよい。実施形態では、層を鋳造してもよく、その場合、型は、鋳造温度および他の鋳造条件で鋳造材料を保持することが要求されてもよい。
【0095】
型の印刷には、熱溶解積層方式(FDM)やインクジェット印刷など、標準的な3D印刷技術を使用することができる。
【0096】
実施形態では、型印刷材料は、ペーストまたは鋳造または他の充填材料の融点よりも低い融点を有しているため、製品の準備が整ったら加熱して型を除去することができる。代替的に、適切な溶媒に溶かすことで型を除去することもできる。
【0097】
鋳造材料は、型を充填することができ、その後、乾燥または冷却によって、またはエネルギー活性化遷移反応によって硬化させたり、焼結させたりして、製品に必要な特性を付与することができる任意の材料であってもよい。いくつかの実施形態では、鋳造材料は、ワックス、硬化性を付与するために活性化されたモノマーまたはオリゴマー、または鋳造材料を硬化させるために乾燥するポリマーエマルジョンまたは溶解ポリマーと、セラミック粉末または金属粉末のいずれか、または材料の混合物と、であってもよい。実施形態では、ワックスは使用されず、バインダは水性である。最終製品は、次いで、加熱されて型の材料を溶融してもよく、溶媒に浸されて型を溶解して、次いで、溶媒に浸されて添加剤の一部を溶出させてもよく、より高い温度に加熱してバインダ剤を除去してもよく、さらに焼結して粉末を融合させてもよく、さらにHIP(熱間等方圧加圧)などの他の一般的な熱工程を受けてもよい。このように、本実施形態は、形成されたセラミックまたは金属または化合物製品を製造する方法を提供することができる。
【0098】
スリップ、スラリまたはペースト混合物は、水またはポリオレフィン、アルコール、グリコール、ポリエチレングリコール、グリコールエーテル、グリコールエーテルアセテートなどの有機溶媒などの液体担体中のセラミックまたはおよび金属粒子の、任意選択で数個の粉末の混合物の懸濁液であり、鋳造材料は、粉末または粉末混合物の60~95重量%の水または溶媒ベースの組成物などの混合物を備えてもよい。
【0099】
実施形態では、型の印刷材料は、ペースト材料が塗り広げられたときに型がそのまま残るように、ペーストまたは他の充填材料の粘度よりも高い粘度を有してもよい。ペースト材料は、型を充填するための良好な湿潤性を有していてもよい。
【0100】
ペーストの塗り広げ、または鋳造または注ぎ込みは、必要な機械的特性を得るために材料を厳密に制御しながら、高温で行うことができる。注ぎ込みには、ディスペンシングコントロールユニットを備える液体ディスペンシングシステムを使用してもよい。充填材料の量は、容積、オーバーフロー係数などの供給される部分型のパラメータに応じて設定してもよい。次いで、ペースト材料は、前述のスキージやブレードなどの機械的手段、または任意選択の振動手順による自己水平化特性の下で水平化することがきる。
【0101】
その後、アセンブリを高温にさらすか、酸などで化学的に溶解するか、溶媒に浸して型の材料を溶かすか、その他の工程によって、部分型(個々の層の型)が除去されてもよい。ワックスベースの型の場合、適切な温度は100~200℃の範囲内である。
【0102】
脱バインダおよび焼結の段階では、温度を上げて鋳造材料の活性部分の脱バインダおよび焼結を行うことができ、脱バインダおよび焼結のための典型的な温度は、最終製品の正確な材料および要求される機械的特性に応じて、200℃~1800℃の範囲である。
【0103】
本実施形態による提案された工程によれば、ペースト鋳造材料は、高い剪断力の下で、制御された温度の下で鋳造される。本実施形態のペースト鋳造材料は、高粘度、高硬度で鋳造されたスリップ鋳造材料の前の層の上に堆積されてもよく、より低い温度であってもよい。
【0104】
連続する2つの層が同じ材料で構成されている場合、それらは特性を共有することが期待できる。一般的に、ペースト材料は水または有機溶剤をベースにしており、材料の分散を可能にする。
【0105】
乾燥と焼結はオーブンで行うことができ、オーブンは1つの装置に統合されていても、別々に設けられていてもよい。
【0106】
【0107】
スラリやペーストなどの充填材料は、凍結温度よりも高く、型材料の融点よりも低い温度で乾燥および硬化させてもよい。スラリやペーストなどの鋳造材料の第1の層の安定性を確保するために、スラリやペーストは、まだ流動していない材料を硬化させ、必要に応じて、適切な剪断減粘とチキソトロピを含むレオロジ特性を有するように設計し、粘度が変化してもしなくてもよいようにしてもよい。
【0108】
結合材は、スラリやペーストの流動部分であり、機能的な硬化剤として使用される液体キャリアを含んでいてもよく、最終段階で有機添加物を含んでいてもよく、不要になったら除去される。
【0109】
機能性粉体とは、最終製品の本体を構成する金属または/および金属酸化物またはセラミックのことである。この材料は、犠牲材料の消滅後に粉末を融合させて最終的な固体体を形成するために、500℃以上で熱処理するように選択することができるが、
図1に関して上述した硬化工程を考慮すると、これは必ずしも必要ではない。
【0110】
再び
図3を参照すると、工程は、ボックス10のように、3D印刷が、型の部品を形成するためにm.p.>120℃のミネラルワックス、UV/EB硬化アクリル、メタクリル、熱硬化エポキシ、ポリウレタンなどのいずれかを使用することができる、型を構築することを備える。
【0111】
その後、型にペーストやその他の充填材を充填する(12)。ペースト材料は、型の壁との密接な接触を確保し、それによって型の適切かつ完全な充填を確保するために、高い剪断力の下で型に注がれてもよいし、実施形態では注入されてもよい。型自体は、注入力に対応できるだけの機械的な強度があればよい。
【0112】
形成された(n-1)番目の部分部品または層は、次の(n)番目の部分部品のベースを提供する。
【0113】
図1、
図2のようにペーストを硬化させることで、層は、後続の型の材料の層の荷重に耐えられるようにすることができる。
【0114】
次いで、次の型の層を印刷する(14)ことで、工程が継続される。
【0115】
第2の型の層は、前の層の表面に印刷してもよく、前の層からの型の材料の上に構築してもよい。
【0116】
次の段階では、第1の層に対して実施したのと類似の仕方で、第2の型の層を充填する(16)。硬化(17)は、第2の層に対して別途施してもよい。
【0117】
製品に必要な追加の層のそれぞれに対して、印刷、充填、任意選択で加熱、硬化の段階が繰り返される(18)。
【0118】
最終製品や製品部品の形に固まったペーストは、各層に対して作製された型である部分型に埋め込まれる。
【0119】
すべての層が製造された後、最終製品または製品の一部を任意選択で安定化させてもよい。剪断力を止めながら、スラリやペーストの硬化を開始し、鋳造材料にグリーン強度を付与してもよく、グリーン強度を付与するための硬化剤を活性化してもよい。グリーン強度とは、圧縮された粉体が、微細な部分や鋭いエッジを損なわずにプレス後や焼結前に受ける機械的操作に耐えるように付与される機械的強度のことである。
【0120】
その後、型の材料を除去してもよい。製品と型を型の融点まで加熱することで、型の材料は、液体化し、再利用のために回収することができる。代替的に、化学的溶解によって型を除去することもできる。
【0121】
一般的には、
図1および
図2の硬化工程により、ペースト自体から犠牲材料が除去される。しかし、有機添加物などの特定の材料は、ここで最適な温度に制御して加熱することで除去することができる。型はすでに除去されているので、型の融点によって加熱が制限されることはない。
【0122】
犠牲材料を除去した後、活性材料の粉末を融解して固形化してもよい。製品の所望の最終特性を得るために、焼結のような熱処理を行ってもよい。400℃から1800℃の間の例示的な温度が使用されてもよく、特に500℃を超える温度が使用される。
【0123】
真空フードが引き出し位置にある状態で、型内で部品が形成されている様子を示す簡略化された模式図である、
図5を参照する。
【0124】
部品220は、型222内の空間にペーストを塗り広げることで形成される。型は構築プレート224上に置かれる。真空フード226は、ペーストを周囲の空気から密封することができるように、型222の周囲の構築プレート224上にフィットする形状である。T字型接続部228は、真空フードの上部に配置され、2つの開口部を有し、一方は空気(任意選択で温められた空気)用の230であり、他方はフードを排気するための真空源に接続するための232である。
【0125】
図6は、真空フード226を上から見た図であり、
図7は、
図6の線A-Aに沿った断面図である。フードのベースにゴムバンドやガスケット234を走らせることで、真空密封が提供されてもよい。
【0126】
硬化を実行するために、真空フード226は、型の周りの構築プレート224上に下げられ、ガスケット234は、真空密封を提供する。入口230を通して熱風を供給することで型を加熱し、入口232を真空ポンプに接続することで真空を形成してもよい。
【0127】
次に、本実施形態を用いて製造することが望まれる典型的な製品の設計
図30を示す簡略化した図である、
図8を参照する。この製品は、下側リング32、中間リング34、および上側リング36を有し、そのうち下側リングは大きな半径を有し、中間リングは小さな半径を有し、上側リングは中間の半径を有する。
【0128】
次に、製品30を製造する1つの仕方を例示する
図9を参照する。製品を複数の層に分解し、各層を
図1~
図3に示した手順で別々に製造してもよい。1つの可能性は、固定された層の厚さを選択し、固定された厚さの必要な数の層を作製することであるが、そのためには、下部リング32の上部境界38が層の境界に正確に当たる必要があり、したがって、層の厚さが、Z軸における部品寸法の制約を提供するZ軸の解像度となる。
【0129】
他の可能性は、各リング32、34、36を別々の層として製造することであるが、その場合、宙に浮いた状態になる第3層の型を支持する構造が必要になることがある。
【0130】
この場合の例では、リング32は単一の第1の層40として製造され、2つのリング34と36は単一の第2の層42として一緒に製造される。
【0131】
図10を参照すると、下側のリング部分32のために型44が3D印刷されている。この型は、床46とそれを囲むリム48とからなる。
【0132】
図11は、ペースト材料50を充填した
図4の型44を示している。ペースト材料は、バインダ剤および添加剤との組み合わせであって、おそらく金属またはセラミックの粉末であって、リム48内の床46の上で型に充填される。ペースト材料は、以下でより詳細に説明するように、ヘラまたはブレードまたはそれに類する物52を使用して塗り広げてもよい。
【0133】
次に、
図5の真空フード226を構築プレート224の上に下げた状態を示す簡略図である、
図12を参照する。型の壁48に囲まれたペースト材料50で満たされた型44は、ここで真空フード226の内部にあり、真空と温風を交互に適用してもよい。
【0134】
次に、
図2の例による第2の層の印刷を説明する
図13を参照する。上部リング36の半径を超える単一の外側半径を有する単一の型部分60が印刷される。内部的には、型部分60の下部62は、中間リング34の半径に等しい半径を有し、型部分60の上部64は、上部リング36の半径に等しい半径を有する。型部分60は、鋳造層50を注ぐことによって作製された表面上に座り、製品の既存の表面が支持を提供する。第1の層は真空フードを用いて硬化されているので、追加の支持構造は必要ない。
【0135】
図14を参照すると、上側の型部分60には、下側の部分に使用したのと同じペースト材料をさらに使用して充填し、製品の上側および中間リングを形成してもよい。代替的に、異なる層に異なる鋳造材料を使用してもよい。各層にペーストを塗り広げた後、
図12のように真空フードを再び下げ、これまでに形成された製品全体を、結果として得られる真空チャンバ内に配置する。
【0136】
鋳造物を加熱し、脱バウンド(debound)し、または焼結して、バインダ剤を除去し、鋳造物中の粉末を溶融させる。最終的には、
図15に示されるように、製品70が鋳型から出てくる。
【0137】
次に、本実施形態による硬化前に個々の層を形成するための装置の簡略化された概略図である、
図16を参照する。型プレート224は、型部分または部分型162を運び、ペースト164の塊が型を充填するように提供される。スキージ166は、型の上部を横切ってペーストを拭き取り、型内の空間168に押し込み、その結果、型の充填と表面の仕上げとを同時に行う。
【0138】
スキージは、注入ノズル(図示せず)と一緒に組み込まれ、ノズルがペースト164の塊を堆積させ、その後、スキージ166がペーストを押して空間を充填してもよい。
【0139】
本出願から開始した特許の存続期間中に、関連する多くの形成、3D印刷、および鋳造技術が開発されることが予想され、対応する用語の範囲は、そのような新しい技術をすべて先験的に含むことを意図している。
【0140】
「備える」(“comprises”)、「備えている」(“comprising”)、「含む」(“includes”)、「有している」(“having”)およびそれらの結合語は、含んでいるがそれに限定されないことを意味する。
【0141】
「からなる」(“consisting of”)とは、「含み、それに限定される」ことを意味する。
【0142】
「本質的に~からなる」という用語は、組成物、方法、または構造が、追加の成分、段階、および/または部品を含んでもよいが、追加の成分、段階、および/または部品が、特許請求の範囲に記載された組成物、方法、または構造の基本的かつ新規な特性を実質的に変更しない場合に限ることを意味する。
【0143】
本明細書では、単数形の“a”、“an”および“the”は、文脈上明らかに別段の記述がない限り、複数の参照を含む。
【0144】
明確にするために、別々の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されることもあり、本明細書は、そのような組み合わせが本明細書に明示的に記載されているかのように読まれることが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で説明されている本発明の様々な特徴も、別個に、または任意の適切な部分的組み合わせで、または本発明の他の説明された実施形態において適切に提供されてもよく、本明細書は、そのような組み合わせが本明細書に明示的に規定されているかのように読まれるべきである。様々な実施形態の文脈で説明された特定の特徴は、それらの要素がないと実施形態が機能しない場合を除き、それらの実施形態の必須の特徴とはみなされない。
【0145】
本発明をその具体的な実施形態に関連して説明してきたが、多くの代替案、変更、および変形が当業者に明らかになることは明らかである。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨および広い範囲内に入る、すべてのそのような代替例、修正例、および変形例を包含することが意図されている。
【0146】
本明細書中で言及されているすべての刊行物、特許および特許出願は、個々の刊行物、特許または特許出願が参照により本明細書中に組み込まれることが具体的かつ個別に記述されている場合と同じ程度に、参照によりその全体が本明細書中に組み込まれる。また、本願明細書で引用または特定した文献は、当該文献が本発明の先行技術として利用可能であることを自認するものと解釈してはならない。節の見出しが使用されている限りにおいて、それらは必ずしも限定的であると解釈されるべきではない。
【0147】
また、本出願の優先権書類は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。