(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】試料装填カートリッジ
(51)【国際特許分類】
G01N 35/02 20060101AFI20240104BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20240104BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
G01N35/02 A
G01N37/00 101
G01N1/00 101G
(21)【出願番号】P 2021513239
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(86)【国際出願番号】 SE2019050894
(87)【国際公開番号】W WO2020060475
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-08-08
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】517180431
【氏名又は名称】アストレゴ ダイアグノスティクス エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】オーマン,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】ロヴマー,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ソーダーバーグ,ロヴィサ
(72)【発明者】
【氏名】オルソン,ミカエル
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-132991(JP,A)
【文献】特表2012-508894(JP,A)
【文献】特表2007-524806(JP,A)
【文献】特開昭62-069139(JP,A)
【文献】特開2009-233532(JP,A)
【文献】特表2010-505096(JP,A)
【文献】特表2008-522793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
G01N 1/00- 1/44
G01N 33/48-33/98
B01J 10/00-12/02
14/00-19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体デバイス用の試料装填カートリッジ(1)であり、
ある容量の液体試料(3)を収容するように構成された試料リザーバ(20)を備えるカートリッジ本体(10)と、
前記試料リザーバ(20)と連通しており、前記液体試料(3)を受容するように構成された試料ポート(30)と、
前記試料リザーバ(20)に接続され、前記試料リザーバ(20)から延在する流出チャネル(40)と、
前記試料リザーバ(20)および前記試料ポート(30)に接続されたフィードバックチャネル(50)と
を備える試料装填カートリッジ(1)であって、
前記カートリッジ本体(10)は、前記フィードバックチャネル(50)内の液体試料(3)の存在の検出を可能にするために、前記フィードバックチャネル(50)の少なくとも一部と位置合わせされた検出部(60)を備え、
液体試料(3)が前記流出チャネル(40)に流入することなく、前記試料ポート(30)内に受容された液体試料(3)を前記フィードバックチャネル(50)に流入させるために、前記フィードバックチャネル(50)の流れ抵抗は前記流出チャネル(40)の流れ抵抗よりも小さい、試料装填カートリッジ(1)。
【請求項2】
前記検出部(60)は、前記フィードバックチャネル(50)への視覚的アクセスを提供するために、前記フィードバックチャネル(50)の少なくとも一部と位置合わせされた窓(60)を備える、請求項1に記載の試料装填カートリッジ。
【請求項3】
前記検出部(60)は、前記フィードバックチャネル(50)にわたって電気的特性を測定するように配置された少なくとも1つの電極(62、64)を備える、請求項1または請求項2に記載の試料装填カートリッジ。
【請求項4】
前記検出部(60)は、前記フィードバックチャネル(50)内の液体試料(3)の存在を検出するように配置されたセンサ(66)を備える、請求項1~請求項3のいずれかに記載の試料装填カートリッジ。
【請求項5】
前記試料ポート(30)は、前記試料リザーバ(20)の天井部(22)に接続され、
前記フィードバックチャネル(50)は、前記試料リザーバ(20)の前記天井部(22)および前記試料ポート(30)に接続される、請求項1~請求項4のいずれかに記載の試料装填カートリッジ。
【請求項6】
前記流出チャネル(40)は、前記試料リザーバ(20)の底部(24)と前記天井部(22)との間に延びる軸(2)に関して前記天井部(22)より下方の前記試料リザーバ(20)の一端側(26)の位置で、前記一端側(26)に接続され、前記一端側(26)から延在する、請求項5に記載の試料装填カートリッジ。
【請求項7】
液体試料(3)が前記流出チャネル(40)に流入することなく、前記試料リザーバ(20)が流体で満たされたときに、前記試料ポート(30)内に受容された液体試料(3)を前記フィードバックチャネル(50)に流入させるために、前記フィードバックチャネル(50)の流れ抵抗は前記流出チャネル(40)の流れ抵抗よりも小さい、請求項1~請求項6のいずれかに記載の試料装填カートリッジ。
【請求項8】
前記フィードバックチャネル(50)の流れ抵抗と前記流出チャネル(40)の流れ抵抗との比率は、1/10未
満である、請求項1~請求項7のいずれかに記載の試料装填カートリッジ。
【請求項9】
前記フィードバックチャネル(50)の流れ抵抗と前記流出チャネル(40)の流れ抵抗との比率は、1/100未満である、請求項8に記載の試料装填カートリッジ。
【請求項10】
前記フィードバックチャネル(50)の流れ抵抗と前記流出チャネル(40)の流れ抵抗との比率は、1/1000未満である、請求項9に記載の試料装填カートリッジ。
【請求項11】
液体試料(3)が前記流出チャネル(40)に流入することなく、前記試料ポート(30)内に受容された液体試料(3)を前記フィードバックチャネル(50)に流入させるために、前記フィードバックチャネル(50)の断面積は前記流出チャネル(40)の断面積よりも大きい、請求項1~請求項
10のいずれかに記載の試料装填カートリッジ。
【請求項12】
前記流出チャネル(40)の断面積と前記フィードバックチャネル(50)の断面積との比率
は、1/50以
下である、請求項
11に記載の試料装填カートリッジ。
【請求項13】
前記流出チャネル(40)の断面積と前記フィードバックチャネル(50)の断面積との比率は、1/75以下である、請求項12に記載の試料装填カートリッジ。
【請求項14】
前記流出チャネル(40)の断面積と前記フィードバックチャネル(50)の断面積との比率は、1/100以下である、請求項13に記載の試料装填カートリッジ。
【請求項15】
前記試料ポート(30)と前記試料リザーバ(20)との間に介在される過充填リザーバ(70)をさらに備え、前記フィードバックチャネル(50)は、前記試料リザーバ(20)および前記過充填リザーバ(70)に接続される、請求項1~請求項
14のいずれかに記載の試料装填カートリッジ。
【請求項16】
前記試料ポート(30)は、漏斗状構造体(35)を備える、請求項1~請求項
15のいずれかに記載の試料装填カートリッジ。
【請求項17】
吐出チャネル(84)を介して前記試料リザーバ(20)と流体連通している吐出チャンバ(80)をさらに備え、前記吐出チャンバ(80)の開口部は、隔壁(82)によって閉鎖される、請求項1~請求項
16のいずれかに記載の試料装填カートリッジ。
【請求項18】
請求項1~請求項
17のいずれかに記載の試料装填カートリッジ(1)と、
流れ流入チャネル(130)と流体接続しているそれぞれの第1の端部(122)および流れ流出チャネル(140)と流体接続しているそれぞれの第2の端部(124)を有する複数のセルチャネル(120)を備える基板(110)の形態のマイクロ流体デバイスと
を備えるデバイス(100)であって、
前記セルチャネル(120)は、前記セルチャネル(120)に流入する標的細胞が前記流れ流出チャネル(140)に到達するのを防止するために、前記それぞれの第2の端部(124)と連通しているそれぞれのチャネル制限部(125)を備え、
前記試料装填カートリッジ(1)の前記流出チャネル(40)は、前記流れ流入チャネル(130)と流体接続している、デバイス(100)。
【請求項19】
前記試料装填カートリッジ(1)は、第1の試料装填カートリッジ(1)であり、
請求項18に記載の前記デバイス(100)は、請求項1~請求項
16のいずれかに記載の第2の試料装填カートリッジ(1)を備え、
前記第1の試料装填カートリッジ(1)の前記流出チャネル(40)は、前記流れ流入チャネル(130)の第1の流入ポート(131)と流体接続しており、
前記第2の試料装填カートリッジ(1)の前記流出チャネル(40)は、前記流れ流入チャネル(130)の第2の流入ポート(133)と流体接続している、請求項
18に記載のデバイス。
【請求項20】
試料装填カートリッジ(1)の装填方法であって、
請求項1~請求項
17のいずれかに記載の試料装填カートリッジ(1)の試料ポート(30)と位置合わせされた試料搬送デバイス(4)を配置するステップ(S1)と、
液体試料(3)がカートリッジ本体(10)の検出部(60)においてフィードバックチャネル(50)内で検出可能になるまで、前記試料ポート(30)を通して液体試料(3)を前記試料搬送デバイス(4)から前記試料装填カートリッジ(1)の試料リザーバ(20)内に移送するステップ(S3)と
を含む、装填方法。
【請求項21】
流体流回路(5)を前記試料ポート(30)に密封接続するステップ(S4)と、
前記流体流回路(5)から前記試料ポート(30)内へ流体流を供給して、前記試料リザーバ(20)内の液体試料(3)を前記試料装填カートリッジ(1)の流出チャネル(40)を通して外へ吐出するステップ(S5)と
をさらに含む、請求項
20に記載の方法。
【請求項22】
針(85)が隔壁(82)を貫通するように、前記針(85)を備える流体流回路(5)を請求項
17に記載の前記試料装填カートリッジ(1)の前記試料ポート(30)および吐出チャンバ(80)の開口部に密封接続するステップ(S4)と、
前記試料リザーバ(20)内の液体試料(3)を前記試料装填カートリッジ(1)の前記流出チャネル(40)を通して外へ吐出するために、前記流体流回路(5)から前記吐出チャンバ(
80)内へ流体流を供給するステップ(S5)と
をさらに含む、請求項
20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には、試料装填カートリッジ、そのような試料装填カートリッジを備えるデバイス、および試料装填カートリッジの装填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単一細胞生物学における近年の発展は、同質遺伝子細胞が、同一の条件下で増殖された場合にも、遺伝子発現および挙動において大きな差異を示し得ることを明らかにした。したがって、経時的に細胞間の表現型における差異を明らかにするための新規なデバイスが必要である。そのようなデバイスは、単一細胞の培養およびモニタリングにおける有効なツールとなるために、特定の基準を満たす必要がある。例えば、これらのデバイスは、装填直後に表現型特性をモニタリングすることができるように、細胞の装填が容易なものでなければならない。さらに、多くの異なる個々の細胞を同時に増殖させて、細胞間の差異を明らかにし、平均化による個々の細胞の特徴付けにおける測定誤差を克服する必要がある。デバイスは、例えば、系統依存性動態をモニタリングするために、一定かつ十分に制御された増殖条件下で長期間にわたって細胞の培養を可能にするように設計されなければならない。デバイスが新しい培地または試験薬に応答した動的変化をモニタリングするために培養条件の変更が可能である場合、さらに好ましい。例えば、同質遺伝子細胞の異なる培地を同時に試験するか、または異なる細胞株の培地変化に対する応答を同時にモニタリングすることが有利であり得る。
【0003】
マイクロ流体デバイスの所望の用途は、標的細胞がマイクロ流体デバイスに装填された直後に、1セットの抗生物質または他の試験薬に対する生体試料中の標的細胞(例えば、細菌)の表現型応答を迅速かつ同時にモニタリングすることである。そのような用途では、分析の速度を上げるために、マイクロ流体デバイスに生体試料を直接装填できることが有利であろう。これは、例えば、マイクロ流体デバイスを試料装填カートリッジに接続することによって管理され得、試料装填カートリッジには、生体試料および/または計量容量の試験薬が予め装填され得る。
【0004】
「Mother Machine」と呼ばれる先行技術のマイクロ流体デバイスは、Wangら著、Current Biology(2010年、20巻、1099~1103頁)に開示されている。Mother Machineは、多くの異なるセルチャネル内の細胞を同時にモニタリングすることを可能にする。しかしながら、この先行技術のマイクロ流体デバイスにはいくつかの欠点がある。例えば、細胞装填は複雑であり、マイクロ流体デバイスにおける培養条件を迅速に変更することは困難である。
【0005】
生体試料の分析に有用な別のマイクロ流体デバイスは、国際公開第2016/007063号パンフレットおよび国際公開第2016/007068号パンフレットに示されている。
【0006】
Baltekinら著、PNAS(2017年、114(34)巻、9170~9175頁)は、マイクロ流体デバイスを使用した高速抗生物質感受性試験(AST)の試験であるFASTestを開示している。
【0007】
多くのマイクロ流体デバイスは、特定の容量の試料または試薬を簡単な方法でマイクロ流体デバイスに装填する精度および再現性に関して欠点を有する。したがって、特に試料および試薬の装填に関して、マイクロ流体デバイスに改良の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一般的な目的は、特定の容量の試料または試薬を、例えばマイクロ流体デバイスに簡単な方法で装填することに関して、高い精度および一貫性を有する試料装填カートリッジを提供することである。
【0009】
この目的および他の目的は、本明細書に開示される実施形態によって達成される。
【0010】
本発明は、独立請求項で定義されている。さらなる実施形態は、従属請求項で定義されている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のマイクロ流体デバイス用の試料装填カートリッジは、ある容量の液体試料を収容するように構成された試料リザーバを備えるカートリッジ本体を備える。試料装填カートリッジはさらに、試料リザーバと連通しており、液体試料を受容するように構成された試料ポートを備える。流出チャネルは、試料リザーバに接続され、試料リザーバから延在し、フィードバックチャネルは、試料リザーバおよび試料ポートに接続される。カートリッジ本体は、フィードバックチャネル内の液体試料の存在の検出を可能にするために、フィードバックチャネルの少なくとも一部と位置合わせされた検出部を備える。本発明によれば、実質的に液体試料が流出チャネルに流入することなく、試料ポート内に受容された液体試料をフィードバックチャネルに流入させるために、フィードバックチャネルの流れ抵抗は流出チャネルの流れ抵抗よりも小さい。
【0012】
デバイスは、上記の試料装填カートリッジと、流れ流入チャネルと流体接続しているそれぞれの第1の端部および流れ流出チャネルと流体接続しているそれぞれの第2の端部を有する複数のセルチャネルを備える基板の形態のマイクロ流体デバイスとを備える。セルチャネルは、セルチャネルに流入する標的細胞が流れ流出チャネルに到達するのを防止するために、それぞれの第2の端部と連通しているそれぞれのチャネル制限部を備える。試料装填カートリッジの流出チャネルは、流れ流入チャネルと流体接続している。
【0013】
試料装填カートリッジの装填方法は、上記の試料装填カートリッジの試料ポートと位置合わせされた試料搬送デバイスを配置するステップを含む。液体試料は、液体試料がカートリッジ本体の検出部のフィードバックチャネル内で検出可能になるまで、試料搬送デバイスから試料ポートを通って試料装填カートリッジの試料リザーバ内に移送される。
【0014】
本発明の試料装填カートリッジは、計量容量の液体試料を正確かつ一貫して装填するように設計される。試料装填カートリッジの正確な充填は、液体試料が確実に流れ流出チャネルに到達するように、また必要に応じて、マイクロ流体デバイスなどの下流側の用途または器具に移送され得る液体試料の正確な容量を得るために、手動または自動でモニタリングされ、検証され得る。特に、試薬が混合される場合、および/または乾燥試薬が試料装填カートリッジ中に溶解される場合、容量を正確に決定することが重要である。
【0015】
実施形態は、そのさらなる目的および利点とともに、添付図面と併せて以下の説明を参照することによって最もよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態に係る、試料装填カートリッジを示す図である。
【
図2】試料装填前の
図1の試料装填カートリッジを示す図である。
【
図3】試料装填中の
図1の試料装填カートリッジを示す図である。
【
図4】試料装填後の
図1の試料装填カートリッジを示す図である。
【
図5】
図4の試料装填カートリッジを上から見た図である。
【
図6】試料吐出前の
図1の試料装填カートリッジを示す図である。
【
図7】一実施形態に係る、試料吐出中の
図1の試料装填カートリッジを示す図である。
【
図8】別の実施形態に係る、試料吐出中の
図1の試料装填カートリッジを示す図である。
【
図9】別の実施形態に係る、試料装填カートリッジを示す図である。
【
図10】さらなる実施形態に係る、試料装填カートリッジを示す図である。
【
図11】さらに別の実施形態に係る、試料装填カートリッジを示す図である。
【
図12】試料装填中の
図11の試料装填カートリッジを示す図である。
【
図13】さらなる実施形態に係る、試料装填カートリッジを示す図である。
【
図14】さらに別の実施形態に係る、試料装填カートリッジを示す図である。
【
図15】試料吐出中の
図14の試料装填カートリッジを示す図である。
【
図16】一実施形態に係る、試料装填カートリッジの装填方法を示すフローチャートである。
【
図17】一実施形態に係る、デバイスを示す図である。
【
図19】別の実施形態に係る、デバイスを示す図である。
【
図20】別の実施形態に係る、試料装填カートリッジを示す図である。
【
図21】試料吐出中の
図20の試料装填カートリッジを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面全体を通して、同様の要素または対応する要素には同じ参照番号を使用する。
【0018】
本発明は、全般的には、試料装填カートリッジに関し、特に、マイクロ流体デバイスを含む種々の用途および器具に対して計量容量の液体試料を正確かつ一貫して装填するために使用され得る、そのような試料装填カートリッジに関する。
【0019】
マイクロ流体デバイスは、典型的には、μmおよびnmの範囲の小さい寸法の流体チャネルを特徴とし、ひいては、そのようなマイクロ流体デバイス内に存在する微小容量の液体試料を特徴とする。正確に計量された容量の液体試料を効率的にかつ簡単に装填することは、特に、マイクロ流体デバイス内への空気または他の駆動流体の導入を回避するときに、寸法および容量が小さいために容易ではない。その結果、正確な容量の液体試料を正確に計量するために複雑で扱いにくい装置が必要とされることが多く、次に、計量容量の液体試料をマイクロ流体デバイスに装填するための装置または別のデバイスが必要とされる。
【0020】
本発明の試料装填カートリッジは、マイクロ流体デバイスなどの種々の下流側の用途および器具に移送され得る液体試料の容量の正確かつ一貫した計量を可能にする。本発明の試料装填カートリッジの正確な充填は、フィードバックチャネルの存在により、および試料装填カートリッジのフィードバックチャネルおよび流出チャネルの設計により、手動でまたは検出装置もしくは検出機器を使用して自動的に、容易にモニタリングされ、検出され、または検証され得る。
【0021】
図1は、マイクロ流体デバイス用の一実施形態の試料装填カートリッジ1の断面図である。試料装填カートリッジ1は、ある容量の液体試料を収容するように構成された試料リザーバ20を備えるカートリッジ本体10を備える。試料装填カートリッジ1の試料ポート30は、
図1に示されているように直接的に、または
図13に示されているように間接的に、試料リザーバ20と連通している。試料ポート30は、液体試料を受容するように構成される。流出チャネル40は、試料リザーバ20に接続され、試料リザーバ20から延在する。試料装填カートリッジ1はさらに、試料リザーバ20に接続され、
図1に示されているように直接的に、または
図13に示されているように間接的に、試料ポート30に接続されたフィードバックチャネル50を備える。カートリッジ本体10は、フィードバックチャネル50内の液体試料の存在の検出を可能にするために、フィードバックチャネル50の少なくとも一部と位置合わせされた検出部60を備える。実質的に液体試料が流出チャネル40に流入することなく、試料ポート30内に受容された液体試料をフィードバックチャネル50に流入させるために、フィードバックチャネル50の流れ抵抗は流出チャネル40の流れ抵抗よりも小さい。
【0022】
したがって、試料装填カートリッジ1は、液体試料が装填されるように構成された試料リザーバ20を備える。試料リザーバ20は、例示的であるが非限定的な例として、立方体、直方体、または円筒などの任意の設計を有し得る。試料リザーバ20の容積は、試料装填カートリッジ1に装填され得る液体試料の容量を画定する。
【0023】
試料ポート30は、試料リザーバ20と流体(好ましくは液体)接続しており、試料ポート30を通って、または試料ポート30から流入したときに試料リザーバ20に液体試料を充填することができる。特定の実施形態では、試料ポート30は、試料リザーバ20の天井部22のポートまたは開口部の形態である。
図1では、このポートまたは開口部は、試料リザーバ20の一端側28と連通した形で、天井部22に設けられる。このような設計では、一般に、一端から試料リザーバ20への液体試料の流入を可能にするのが好ましく、一方で、流出チャネル40およびフィードバックチャネル50は、試料リザーバ20の反対端側26において、または反対端側26と連通した形で試料リザーバ20に接続されるのが好ましい。しかしながら、実施形態はこれに限定されない。例えば、試料ポート30は、一端側26から反対端側28までの任意の位置の天井部22のポートまたは開口であり得る。試料リザーバ20の両端側26、28の一方または長手方向側の一方(
図1には図示せず)で試料リザーバ20に接続された試料ポート30を有することも可能である。このような場合、試料ポート30は、好ましくは、直接または間接的に、天井部22で、または天井部22に近い位置、例えば、天井部22と試料リザーバ20の底部24との間の軸2に関して両側26、28の高い位置で、両端側26、28を通って試料リザーバ20に接続される。
【0024】
試料リザーバ20は、例示的であるが非限定的な例として、円形、楕円形、正方形または長方形などの任意の断面形状を有し得る。
【0025】
フィードバックチャネル50は、好ましくは、試料リザーバ20に接続される。例えば、フィードバックチャネル50は、
図1に示されているように、天井部22において、試料リザーバ20から延在し得る。あるいは、フィードバックチャネル50は、試料リザーバ20の両端側26、28のいずれか、または試料リザーバ20の長手方向側のいずれかで試料リザーバ20に入り得る。このような場合、フィードバックチャネル50は、好ましくは、両端側26、28において、または天井部22の近くで試料リザーバ20に入る。
【0026】
好適な実施形態では、
図1に示されているように、試料ポート30は試料リザーバ20の天井部22に接続され、フィードバックチャネル50は天井部22および試料ポート30に接続される。
【0027】
流出チャネル40は、好ましくは両端側26、28の一方(例えば、両端側26、28の一方または長手方向側の一方)において、試料リザーバ20に接続され、試料リザーバ20から延在する。一実施形態では、流出チャネル40は、試料リザーバ20の両端側26、28の一方に接続され、試料リザーバ20の両端側26、28の一方から(好ましくは、試料ポート30が試料リザーバ20に接続される一端側28の反対端側26から)延在する。したがって、好適な実施形態では、試料ポート30および流出チャネル40は、好ましくは、
図1に示されているように、試料リザーバ20の両端側26、28間に延びる軸6に沿って対向する両端側26、28で試料リザーバ20に接続される。このような場合、フィードバックチャネル50はさらに、好ましくは、流出チャネル40と同じ一端側26において、または同じ一端側26と連通した形で、試料リザーバ20に入る。
【0028】
流出チャネル40は、さらに好ましくは、試料リザーバ20の底部24と天井部22との間に延びる軸2に関して天井部22より下方の位置で、両端側26、28、好ましくは一端側26で試料リザーバ20に入る。つまり、流出チャネル40への入口は、好ましくは、軸2に沿ってフィードバックチャネル50の入口の下方に配置される。例えば、流出チャネル40は、試料リザーバ20の両端側26、28から、好ましくは試料リザーバ20の底部24における、または底部24に近い一端側26から延在し得る。
【0029】
図2は、試料搬送デバイス4が試料ポート30と位置合わせされた(例えば、試料ポート30に接続された)、
図1の試料装填カートリッジ1を示す。試料搬送デバイス4は、試料装填カートリッジ1の試料リザーバ20内に装填される液体試料3を含む任意のデバイスであり得る。例えば、試料搬送デバイス4は、例示的であるが非限定的な例として、ピペット、シリンジ、ブリスターパック、ポンプが接続された事前充填式試料チャンバであり得る。
【0030】
試料リザーバ20の寸法に応じて、試料搬送デバイス4からの液体試料3の試料リザーバ20への充填は、異なる実施形態に従って進行し得る。
【0031】
第1の実施形態では、試料リザーバ20は、大きな寸法を有し、したがって、試料リザーバ20を充填するときの流れ抵抗は、極めて小さい。このような実施形態では、液体試料3が試料搬送デバイス4から試料ポート30を通って試料リザーバ20内に移送されると、液体試料3は、底部24から天井部22に向かって試料リザーバ20を満たし始める。試料リザーバ20内に存在する空気は、フィードバックチャネル50を通って逃出することができ(したがって、フィードバックチャネル50は通気口としても動作する)、任意選択で、流出チャネル40の流れ抵抗に応じて流出チャネル40を通って逃出することができる。
【0032】
図3は、試料リザーバ20の充填中の別の実施形態を示す。この実施形態では、試料リザーバ20は、典型的には、より小さい寸法を有し、したがって、試料搬送デバイス4から移送される液体試料3に対してより大きい流れ抵抗を呈する。この実施形態では、試料リザーバ20は、その一端側28、すなわち、
図3では試料ポート30が試料リザーバ20に流体接続されている一端側28から充填を開始し、その後、反対端側26に向かって進む。
【0033】
液体試料充填中に、流出チャネル40の大きい流れ抵抗は、充填段階で液体試料3が流出チャネル40に流入するのを防止する、または制限する。一方で、明らかに、液体試料3は、試料リザーバ20内に留まり、試料リザーバ20を満たし、それと同時に、空気はフィードバックチャネル50を通って排気される。試料リザーバ20が液体試料3で満たされた時点で、液体試料3はフィードバックチャネル50に流入することになる。したがって、フィードバックチャネル50の流れ抵抗に対して流出チャネル40の比較的大きい流れ抵抗は、実質的に液体試料3が流出チャネル40に流入することなく、試料リザーバ20が液体試料3などの流体で満たされたときに、液体試料3をフィードバックチャネル50に流入させる。
【0034】
一実施形態では、フィードバックチャネル50の流れ抵抗と流出チャネル40の流れ抵抗との比率は、1/10未満、好ましくは1/100未満、より好ましくは1/1000未満である。
【0035】
典型的な実施形態では、実質的に液体試料3が流出チャネル40に流入することなく、試料リザーバ3が液体試料3で満たされたときに、液体試料3はフィードバックチャネル50に流入し始める。そのような実施形態では、液体試料3は、試料リザーバ20の全容積を占める。別の実施形態では、試料リザーバ20を液体試料3で部分的に充填し、次に、試料ポート3を通して別の流体を流入させて、実質的に液体試料3が流出チャネル40に流入することなく、液体試料3をフィードバックチャネル50の中に押しやってもよい。そのような実施形態では、液体試料3は、試料リザーバ20の内部容積の一部のみを占め、追加された他の流体は、試料リザーバ20の残りの部分を占める。この他の流体は、空気などの気体混合物を含む気体であり得る。使用され得る流体の別の例は、液体試料3が水または水性試料である場合、液体試料3に不溶性であり、かつ液体試料3と混ざらない液体、例えば、油または油性液体であり得る。
【0036】
したがって、液体試料3に対する流出チャネル40内の流れ抵抗は、フィードバックチャネル50内の流れ抵抗よりも著しく大きい。フィードバックチャネル50の流れ抵抗よりも大きい流出チャネル40の流れ抵抗は、流出チャネル40の断面積よりもフィードバックチャネル50の断面積を大きくすることによって実現され得る。例えば、流出チャネル40は、1μm~100μmの範囲内、好ましくは5μm~75μmの範囲内、より好ましくは10μm~50μmの範囲内の直径(円形断面形状の場合)または辺(正方形または長方形断面形状の場合)を有し得る。これに対応して、フィードバックチャネル50は、250μm~5mmの範囲内、好ましくは250μm~1mmの範囲内、より好ましくは250μm~750μmの範囲内、例えば約500μmのチャネル直径または辺を有し得る。
【0037】
一実施形態では、流出チャネル40の断面積とフィードバックチャネル50の断面積との比率は、好ましくは1/50以下、好ましくは1/75以下、より好ましくは1/100以下である。
【0038】
フィードバックチャネル50の流れ抵抗よりも大きい流出チャネル40の流れ抵抗はさらに、または代替的に、マイクロメートルまたはナノメートル範囲の流路を有する下流側のマイクロ流体デバイスに流出チャネル40を接続することによって実現され得る。そのような場合、流出チャネル40と下流側のマイクロ流体デバイスまたはチャネルとの間の流体接続部は、流出チャネル40の寸法が大きいマイクロメートル範囲またはミリメートル範囲であっても、流出チャネル40内の液体試料3に対して大きい流れ抵抗を示すことになる。例えば、100μmを超える(例えば、250μmを超える、さらには500μmを超える)直径(円形断面形状の場合)または辺(正方形または長方形断面形状の場合)を有する流出チャネル40が使用され得る。
【0039】
図4は、試料搬送デバイス4内の液体試料3が試料装填カートリッジ1に移送されたときの
図1の試料装填カートリッジ1を示す。図から分かるように、試料リザーバ20が液体試料3で満たされており、したがって、液体試料3を試料リザーバ20内にさらに充填すると、実質的に液体試料3が流出チャネル40に流入することなく、液体試料3をフィードバックチャネル50に流入させることになる。液体試料3がフィードバックチャネル50を充填し始めると、液体試料3は、フィードバックチャネル50と位置合わせされたカートリッジ本体10の検出部60において検出され得る。したがって、検出部60におけるフィードバックチャネル50内の液体試料3の検出により、試料リザーバ20に液体試料3が充填されていることが検証されて確認され、さらなる充填が停止され得る。したがって、検出部60は、試料リザーバ20が充填されたこと、そして試料リザーバ20および、必要に応じて、試料装填カートリッジ1が正確な容積の液体試料3を収容していることを効率的に検証することを可能にする。
【0040】
フィードバックチャネル50内の液体試料3の存在、ひいては試料リザーバ20の正確な充填をモニタリングまたは検出して検証するために、検出部60の様々な実装形態が可能である。一実施形態では、検出部60は、フィードバックチャネル50への視覚的アクセスを提供するために、フィードバックチャネル50の少なくとも一部と位置合わせされた窓60を備える。これは、
図4の試料装填カートリッジ1の上面図である
図5において、より明確に示されている。
【0041】
窓60は、フィードバックチャネル50の少なくとも一部への視覚的アクセスを可能にするために、半透明または透明な窓60の形態であり得る。例えば、窓60は、フィードバックチャネル50の少なくとも一部と位置合わせされたカートリッジ本体10に含まれる半透明または透明な材料で作製され得る。この半透明または透明な材料により、カートリッジ本体10の他の部品12、14、16、18が不透明な材料で作製されていても、フィードバックチャネル50またはその少なくとも一部への視覚的アクセスが可能である。別の実施形態では、試料装填カートリッジ1全体、またはその少なくとも頂部12は、半透明または透明な材料で作製され、フィードバックチャネル50へのアクセスを可能にする。別の解決策は、フィードバックチャネル50の少なくとも一部と位置合わせされたカートリッジ本体10の頂部12に開口部または凹部の形態の窓60を有することである。そのような場合、フィードバックチャネル50への視覚的アクセスは、開口部または凹部を通して可能である。したがって、フィードバックチャネル50は、カートリッジ本体10内の少なくとも部分的に開口したチャネルである。
【0042】
窓60は、
図5に示されているように、フィードバックチャネル50の全長に沿って延在し得る。別の実施形態では、窓60は、試料リザーバ20へとつながるフィードバックチャネル50の入口と連通した部分、試料ポート30へとつながるフィードバックチャネル50の出口と連通した部分、またはフィードバックチャネル50の中間部分などのフィードバックチャネル50の一部のみに沿って延在する。窓60は、単一の(場合によっては延長された)窓60の形態であり得る。別の可能性は、フィードバックチャネル50の異なる部分に沿って延在する複数の別個の窓60を有することである。
【0043】
上記で開示されている実施形態では、フィードバックチャネル50内の液体試料3の存在、ひいては試料リザーバ20の正確な充填は、人間のオペレータなどによって視覚的に検出され得る。したがって、十分な液体試料3が試料装填カートリッジ1および試料リザーバ20内に移送されたときに、人間のオペレータは直接、視覚的フィードバックを得る。
【0044】
窓ベースの実施形態はまた、フィードバックチャネル50内の液体試料3の存在の自動検出を可能にし、ひいては、試料リザーバ20の正確な充填を可能にする。例えば、カメラまたは他の光学機器は、窓60をモニタリングして、そこを通る任意の液体試料3を検出し得る。次に、カメラまたは機器は、液体試料3が窓60を通してフィードバックチャネル50内で検出されると、視覚信号または可聴信号などの信号を生成し得る。この信号は、試料リザーバ20が既に満たされているので、試料装填カートリッジ1の充填を停止するように人間のオペレータに指示する。実際には、試料搬送デバイス4からの液体試料3の充填の制御も可能であり、この場合、充填は、カメラまたは機器によって生成された信号に基づいて制御される(例えば、停止される)。したがって、カメラまたは機器が窓60を通してフィードバックチャネル50内の液体試料3を検出すると、カメラまたは機器は、信号を生成し、試料搬送デバイス4のポンプもしくは他の装置、または試料搬送デバイス4に接続されたポンプもしくは他の装置に信号を送信し、そのことにより、ポンプまたは他の機器に、試料搬送デバイス4から試料リザーバ20内への液体試料3の移送を停止させる。
【0045】
図9は、フィードバックチャネル50内の液体試料3の存在を検出する別の技術を使用する試料装填カートリッジ1の図である。この代替技術は、前述の窓ベースの解決策の代わりに、またはそれを補完するものとして使用され得る。
図9に示されている実施形態では、検出部60は、少なくとも1つの電極62、64(図面には、2つのそのような電極62、64が示されている)を備え、これらは、例えば、少なくとも2つの電極62、64間の電流を測定するように配置される。この実施形態では、液体試料3は導電性である。したがって、液体試料3がフィードバックチャネル50に流入し、少なくとも2つの電極62、64を電気的に相互接続したときに、フィードバックチャネル50内の液体試料3の存在は、少なくとも2つの電極62、64間の電流を測定することによって検証され得る。
【0046】
図9において、2つの電極62、64は、フィードバックチャネル50の天井部および底部に配置され、そのことにより、フィードバックチャネル50を流れる電流を測定するように構成される。別の解決策は、フィードバックチャネル50のそれぞれの長手方向側に2つの電極62、64を配置して(
図9には図示せず)、同様にフィードバックチャネル50を流れる電流を測定することであり得る。さらなる代替策は、電極62、64の一方をフィードバックチャネル50の天井部または底部に配置し、他方の電極64、62を長手方向側の一方に配置すること、または両方の電極62、64をフィードバックチャネル50の天井部に、底部に、または長手方向側の一方に配置することを含む。
【0047】
電極62、64と液体試料3との間に電気回路を形成するために、一方の電極62をフィードバックチャネル50内に配置し、他方の電極64をカートリッジ本体10内の他の場所に配置することも可能である。例えば、他方の電極64は、試料リザーバ20内に配置され得る。
【0048】
2つの電極62、64間の電流を測定する代わりに、フィードバックチャネル50内の液体試料3の存在を検出するために、静電容量、抵抗、周波数または電圧などの他の電気的特性が測定またはモニタリングされ得る。そのような場合、2つの電極62、64間の液体試料3の存在が、静電容量、抵抗、周波数または電圧の変化をもたらし、このような変化がフィードバックチャネル50内の液体試料3の存在を立証するものとなる。
【0049】
2つの電極62、64は、点状電極であり得る、または領域にわたって延在する平面電極であり得る。検出部60は、1対の電極62、64または複数の電極、すなわち、少なくとも2対の電極62、64を含み得る。後者の場合、電極62、64の対は、フィードバックチャネル50に沿って分布され、したがって、フィードバックチャネル50の長さに沿って異なる位置に配置され得る。
【0050】
さらなる実施形態では、検出部60は、フィードバックチャネル50の少なくとも一部における液体試料3の存在を検出するように構成されたセンサ66を含む(
図10参照)。フィードバックチャネル50内の液体試料3の存在を検出するのに、様々なセンサ66が使用され得る。例えば、センサ66は、フィードバックチャネル50の天井部、底部、および/または長手方向側、好ましくはフィードバックチャネル50の底部に配置された圧電センサ66であり得る。そのような場合、液体試料3が圧電センサ66に接触すると、センサ66は、フィードバックチャネル50内の液体試料3の存在を示す、ひいては試料リザーバ20の正確な充填を示す電気信号を生成する。他のセンサの例には、温度センサ、圧力センサ、磁気センサ、蛍光センサまたは化学発光センサなどの光センサが含まれる。
【0051】
上記の電極ベースの実施形態と同様に、1つのセンサ66がフィードバックチャネル50の長さに沿って任意の場所に配置され得る、または複数のセンサ66がフィードバックチャネル50の長さに沿って異なる位置に配置され得る。
【0052】
フィードバックチャネル50内の液体試料3の検出時に信号を生成する実施例、および/または窓ベースの実施形態に関連して上述した試料搬送デバイス4から試料リザーバ20内への液体試料3のさらなる充填を自動的に停止する実施例はさらに、電極ベースおよびセンサベースの実施形態と共に使用され得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、試料装填カートリッジ1は、好ましくは試料リザーバ20内に1つまたは複数の試薬が事前に装填され得、これらの試薬は、試料リザーバ20への液体試料3の添加時に液体試料3中に溶解され、および/または液体試料3と混合される。これらの場合、液体試料3中の試薬の濃度を検証するために、フィードバックチャネル50の検出部60内の窓、電極(複数可)またはセンサが使用され得る。これは、例えば、試薬が染料または蛍光色素分子を含む場合には、目視検査によって行うことができるが、例えば、試薬が液体試料3の電気化学的特性を変化させる場合には電気検知によって行うこともできる。
【0054】
試料装填カートリッジ1には、上述したように、試料リザーバ20内に液体試料3が事前に装填され得る。次に、試料装填カートリッジ1は、試料装填カートリッジ1および試料リザーバ20からマイクロ流体デバイスなどの何らかの下流側の用途または器具に液体試料3を移送する前に、しばらくの間、液体試料3とともに保管され得る。あるいは、試料装填カートリッジ1は、その試料リザーバ20に液体試料3が充填されるとすぐに、液体試料3を下流側の用途または器具に移送するために実質的に直接使用され得る。
【0055】
図6は、試料吐出前の
図1の試料装填カートリッジの概略図である。
図6において、流体流回路5は、試料ポート30に密封接続される。本明細書で使用される「密封接続される」は、流体流回路5と試料装填カートリッジ1との間に流体密または実質的に流体密な接続があることを示す。そのことにより、流体流回路5は、流体流回路5と試料装填カートリッジ1との間、例えば、流体流回路5とカートリッジ本体10の頂部12との間に流体密シールを形成する、Oリングの形態などのシール6を備える。
【0056】
流体流回路5は、
図6のハッチング矢印で示されるように、試料ポート30内に流体流を生成するように配置される。次に、流体流は、試料リザーバ20内の液体試料3を、試料リザーバ20およびフィードバックチャネル50の寸法に応じて、またはより正確には、吐出段階における流れ抵抗に応じて、
図7または
図8に示されているように、流出チャネル40を通して外に吐出する。したがって、
図7は、大きな寸法の試料リザーバ20を用いた試料吐出を示し、
図8は、小さな寸法の試料リザーバ20を用いた試料吐出を示す。
【0057】
流体流回路5は、比較的大きい流れ抵抗を有する流出チャネル40を通して液体試料3を吐出するのに十分な圧力の流体流を生成することができる任意の回路であり得る。使用され得るそのような流体流回路5の非限定的な例としては、Festo社の流量制御弁および流量調整器、例えば、VEMP、VEAA、VEAB、VPCF、VPPX、VPPM、VPPM-NPT、VPWP、MPPES、VPPE、MPYEおよびVPPLが挙げられる。一般に、液体試料3は、任意のユニットまたは回路5からの圧力および/または流体流を使用して、試料リザーバ20から吐出され得る。流体流回路5は、流体流が制御され得る調整流体流回路5であり得る。しかしながら、実施形態はこれに限定されない。例えば、流体流回路5は、必ずしも流体流制御部を有さない加圧流体チャンバであり得る。
【0058】
試料ポート30において流体流を生成することによって試料リザーバ20から液体試料3を吐出する代わりに、またはそれを補完するものとして、流出チャネル40に負圧が印加され、そのことによって流出チャネル40を通して液体試料3を「吸引」することができる。
【0059】
流体流回路5によって生成される流体流中の流体は、液体試料3との相溶性を有する任意の気体、気体混合物または液体であり得る。そのような気体の例示的であるが非限定的な例は、空気である。
【0060】
さらなる実施形態では、可撓性膜(図示せず)が試料ポート30に配置されて、試料ポート30を覆い得る。そのような場合、流出チャネル40を通って外へ流出する液体試料3の流れは、流体または機械的圧力を可撓性膜上に印加することによって誘導され得る。このような場合、カートリッジ本体10の内部は、流れ駆動圧力を生成する装置から隔離され、液体試料3による装置の汚染のリスクが最小限に抑えられる。
【0061】
図11および
図12は、試料装填カートリッジ1の別の実施形態を示す。この実施形態では、試料リザーバ20の天井部22およびフィードバックチャネル50の底部を構成するカートリッジ本体10の構造体15は、楔形であり得る。そのような場合、この構造体15の厚みは、試料ポート30に面する端部の厚みより、一端側26に面する端部の厚みの方が小さい。一実施形態では、構造体15は、片楔の形態であり、すなわち、1つの実質的に平坦な表面および1つの傾斜した表面を有する。例えば、この構造体15の底部、すなわちリザーバ20の天井部22が傾斜し、フィードバックチャネル50の底部を構成する構造体15の頂部が平坦であり得る。あるいは、構造体15の底部が平坦であり、構造体の頂部が傾斜し得る。別の実施形態では、構造体15は、
図11に示されているように、傾斜した頂部および底部を有する両楔の形態である。
【0062】
試料リザーバ20とフィードバックチャネル50とを分離する楔形構造体15を有することにより、
図12に示されているように、試料リザーバの充填中にフィードバックチャネル50を通して空気を外へ排気することが容易になる。
【0063】
図13は、試料装填カートリッジ1の別の実施形態を示す。この実施形態では、試料装填カートリッジ1は、試料ポート30と試料リザーバ20との間に介在される過充填リザーバ70を備える。フィードバックチャネル50は、この実施形態では、試料リザーバ20および過充填リザーバ70に接続される。したがって、この実施形態では、フィードバックチャネル50は、過充填リザーバ70を介して試料ポート30と流体接続しているが、物理的には間接的に接続している。
図13に示されているように、試料ポート30と試料リザーバ20との間に過充填リザーバ70を介在させることにより、試料装填カートリッジ1に液体試料3を過充填するリスクが低減される。したがって、試料リザーバ20に液体試料3が充填され、フィードバックチャネル50が液体試料3で充填され始める場合、過剰な液体試料3は過剰充填リザーバ70に入り、その中に残る。したがって、そのことにより、試料装填カートリッジ1を過充填することで試料ポート30を通して過剰な液体試料3を外へ逃出させるリスクが低減される。したがって、過充填リザーバ70は、試料装填段階で試料装填カートリッジ1、特にカートリッジ本体10の頂部12が液体試料3で汚染されるリスクを低減する
【0064】
過充填および汚染のリスクが低減される試料装填カートリッジ1の別の実施形態が
図14に示されている。この実施形態では、試料ポート30は漏斗状構造体35を備える。漏斗状構造体35は、
図14に示されているように、カートリッジ本体10から延在し得る。漏斗状構造体35は、有利には、試料ポート30の周囲に円周方向に配置され、そのことにより、カートリッジ本体10の頂部12に対して、試料ポート30への漏斗状開口部を形成する延長構造体を形成する。装填段階でフィードバックチャネル50および/または試料リザーバ20から逃出する過剰な液体試料3は、その後、漏斗状構造体35によって画定される余分の容積内に収容されることになる。
【0065】
別の実施形態では、漏斗状構造体35は、カートリッジ本体10内に存在し、カートリッジ本体10からカートリッジ本体10の頂部12の上方に必ずしも延在しない。すなわち、試料ポート30は、漏斗状構造体35の形態であることが好ましいということである。
【0066】
図13および
図14に示されている実施形態を組み合わせることができる。したがって、試料装填カートリッジ1は、
図13に示されるような過充填リザーバ70と、
図14に示されるような漏斗状構造体35とを備え得る。さらに、そのような実施形態のいずれも、
図11および
図12に示されているような楔形構造体15を含み得る。
【0067】
図15は、
図14の試料装填カートリッジ1の試料リザーバ20からの液体試料3の吐出を示す。この実施形態では、流体流回路5は、好ましくは、漏斗状構造体35の周囲に配置され、そのことにより、漏斗状構造体35の外側でカートリッジ本体10の頂部12上に円周方向に配置されたOリングなどのシール6で漏斗状構造体35を取り囲む。
【0068】
図20は、試料装填カートリッジ1のさらなる実施形態を示す。この実施形態は、異なる試料装填カートリッジ1から液体試料3を吐出するために使用され得る流体流回路を使用するときに、異なる試料装填カートリッジ1間の汚染を防止する、または少なくとも最小限に抑えるように設計される。試料装填カートリッジは、吐出チャンバ80を備え、吐出チャンバ80は、例えば試料ポートと吐出チャンバ80とを相互接続する吐出チャネル84を使用して、試料ポート30と流体接続している。このような吐出チャネル84は、好ましくは、吐出チャンバ80を試料リザーバ20から分離するカートリッジ本体10の壁の上部に配置される。吐出チャネル84は、
図20では、例示的な例として、フィードバックチャネル20と実質的に位置合わせされる。しかしながら、実施形態はこれに限定されない。
【0069】
一実施形態では、吐出チャンバ80は、試料装填カートリッジ1の外側への吐出チャンバ80の開口部を閉鎖する、隔壁82によって閉鎖または密閉される。
【0070】
図21は、吐出段階の
図20の試料装填カートリッジ1を示す。この実施形態では、流体流回路5は、カートリッジ本体10の頂部12と密封接触して係合する、1つまたは複数のOリングなどのシール6を備える。より詳細には、シール6は、好ましくは、試料ポート30および吐出チャンバ80の開口部を取り囲むように設けられる。流体流回路5は、好ましくは、
図21に示されているように、吐出チャンバ80の開口部内に、隔壁82を通して貫入される針85または他の中空貫通構造体を備える。次に、流体は、流体流回路5によって、針82を通って吐出チャンバ80内に、さらに吐出チャネル82を通って試料リザーバ20内に吐出され、そのことにより、流出チャネル40を通って液体試料3が吐出され得る。
【0071】
試料装填カートリッジ1のこの設計では、流体流回路5は、試料リザーバ20またはその中に存在する液体試料3と決して接触することはない。一方、明らかに、流体流回路5は、液体試料3が全く存在しない吐出チャンバ80のみに貫入する。すなわち、異なる試料装填カートリッジ1の試料リザーバ20内に収容された液体試料3を吐出するために1つの同じ試料流体流回路5を使用するときの相互汚染のリスクは、流体流回路が試料ポート30を通して試料リザーバ20内に直接流体を吐出するように設計される場合と比較して、最小限に抑えられる、または少なくとも大幅に低減される。したがって、
図20および
図21に示されている実施形態は、相互汚染を最小限に抑えるべき用途において好ましい。
【0072】
【0073】
試料装填カートリッジ1は、任意の液体試料3を装填するために使用され得る。試料は、例えば、デオキシリボ核酸(DNA)分子、リボ核酸(RNA)分子ならびに/もしくはタンパク質などの目的の分子を含む、および/または目的の細胞を含む生体試料であり得る。例えば、生体試料は、例示的であるが非限定的な例として、血液試料、血漿試料、尿試料、唾液試料、糞便試料、脳脊髄液試料、羊水試料、乳試料、喀痰試料またはリンパ液試料であり得る。試料装填カートリッジ1に装填された液体試料3は、代替的には、1つまたは複数の薬品、試験薬または化学物質(例えば、抗生物質)、化学療法剤、標識(例えば、化学発光標識、蛍光標識、放射性標識および色素)、抗体などを含む液体試料(例えば、緩衝液試料または水性試料)であり得る。
【0074】
試料装填カートリッジ1の試料リザーバ20は、液体試料3を充填する前では、空であり得る。別の実施形態では、試料リザーバ20は、液体試料3を充填する前に少なくとも1つの薬剤を含み得る。このような薬剤は、例えば、凍結乾燥製剤、乾燥製剤および/またはこのような薬剤を含むパッドであり得る。液体試料3が試料リザーバ20に流入し、少なくとも1つの薬剤と接触すると、薬剤(複数可)は、液体試料3中に溶解されるか、または少なくとも液体試料3中に懸濁される。
【0075】
一例として、少なくとも1つの薬剤は、検出部60において検出され得る蛍光色素分子または他の検出可能な薬剤であり得る。
【0076】
試料装填カートリッジ1の一実施形態では、検出部60は任意選択であり、したがって省略されてもよい。このような実施形態では、試料リザーバ20に液体試料3が正確に充填されたことを検証するするために検出可能なフィードバックを行うことができない。しかしながら、それにもかかわらず、この実施形態は、流出チャネル40の流れ抵抗よりも小さい流れ抵抗を有するフィードバックチャネル50の存在により、液体試料3を効率的に充填するという利益をもたらす。すなわち、フィードバックチャネル50およびそのより小さい流れ抵抗が、充填段階において液体試料3が流出チャネル40に流入するリスクを効率的に防止する、または少なくとも大幅に低減するということである。
【0077】
試料装填カートリッジ1は、1回の使用のみを意図した使い捨てカートリッジ1であり得る。このような場合、試料リザーバ20内に事前に装填された液体試料3が流出チャネル40を通して吐出されるとすぐに、試料装填カートリッジ1は廃棄される。あるいは、試料装填カートリッジ1は、複数回使用用途で使用するものであり得る、すなわち、少なくとも1回再使用され得る。したがって、そのような場合、試料装填カートリッジ1の試料リザーバ20では、複数のサイクルの試料装填および試料吐出が行われ得る。
【0078】
試料装填カートリッジ1は、一部品で製造され得る、または、例えば、超音波もしくはレーザ溶接、接着、または他の結合形態を使用して試料装填カートリッジ1を形成するように接続された複数の部品で製造され得る。試料装填カートリッジ1およびそのカートリッジ本体10用の材料の例示的であるが非限定的な例としては、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエステル(PES)、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリエポキシド、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フェノールホルムアルデヒド(PF)、メラミンホルムアルデヒド(MF)、尿素-ホルムアルデヒド(UF)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、マレイミド/ビスマレイミド、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド、プラスターチ材料、ポリ乳酸(PLA)、またはそれらの混合物などのプラスチックが挙げられる。また、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)ポリマーおよびスチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)ポリマーなどの他のポリマーが試料装填カートリッジ1およびそのカートリッジ本体10用の材料として使用され得る。試料装填カートリッジ1に使用され得る他の材料としては、アルミニウム、銅、チタン、コバルト、ニッケル、亜鉛およびそれらの合金)、鋼鉄および他の鉄合金、マグネシウム合金、CoP合金、CoC合金およびNAS合金などの金属および金属合金が挙げられる。
【0079】
図16は、試料装填カートリッジ1の装填方法を示すフローチャートである。該方法は、ステップS1おいて、実施形態のいずれかの試料装填カートリッジ1の試料ポート30と位置合わせされた試料搬送デバイス4を配置するステップを含む。該方法はさらに、ステップS3において、液体試料3がカートリッジ本体10の検出部60においてフィードバックチャネル50内で検出可能になるまで、試料ポート30を通して液体試料3を試料搬送デバイス4から試料装填カートリッジ1の試料リザーバ20内に移送するステップを含む。
【0080】
一実施形態では、該方法はさらに、任意選択のステップS2を含み、ステップS2は、検出部60においてフィードバックチャネル50内で検出可能な液体試料3があるかどうかを判定または検証するためにカートリッジ本体10の検出部60をモニタリングするステップを含む。ステップS2におけるこのモニタリングは、本明細書に開示されているような実施形態のいずれかに従って、例えば、人間のオペレータによって視覚的に、例えば、カメラによって光学的に、電気的測定値またはセンサ読み取り値を使用して、行われ得る。ステップS2のモニタリングにおいて液体試料3が検出できない場合、該方法はステップS3に進み、液体試料3が試料搬送デバイス4から試料リザーバ20内に移送される。ステップS2およびステップS3のループは、好ましくは、ステップS2におけるモニタリングが、液体試料3が検出部60においてフィードバックチャネル50内で検出可能であり、したがって試料リザーバ20に液体試料3が正確に充填されていると判定するまで継続される。そのような場合、代わりに、該方法は、直接または後の時点で、ステップS4に進む。このステップS4は、
図6、
図7、
図8または
図15に示されているように、流体流回路5を試料ポート30に密封接続するステップを含む。該方法のこの実施形態はさらに、ステップS5において、流体流回路5から試料ポート30内へ流体流を供給して、試料リザーバ20内の液体試料3を試料装填カートリッジ1の流出チャネル40を通して外へ吐出するステップを含む。このステップS5は、
図7、
図8または
図15に示されているように実行され得る。
【0081】
一実施形態では、ステップS4は、
図21に示されているように、針85が隔壁82を貫通するように、針85を備える流体流回路5を試料装填カートリッジ1の試料ポート30および吐出チャンバ80の開口部に密封接続するステップを含む。この実施形態では、ステップS5は、試料リザーバ20内の液体試料3を試料装填カートリッジ1の流出チャネル40を通して外へ吐出するために、流体流回路5から吐出チャンバ30内へ流体流を供給するステップS5を含む。
【0082】
液体試料3は、流出チャネル40から、マイクロ流体デバイスなどの任意の下流側の用途または器具へ吐出され得る。
【0083】
図17は、いずれかの実施形態の試料装填カートリッジ1を備えるデバイス100の実施形態を示す。デバイス100はさらに、
図18を参照すると、流れ流入チャネル130と流体接続しているそれぞれの第1の端部122および流れ流出チャネル140と流体接続しているそれぞれの第2の端部124を有する複数のセルチャネル120を備える基板110の形態のマイクロ流体デバイスを備える。セルチャネル120は、セルチャネル120に流入する標的細胞が流れ流出チャネル140に到達するのを防止するために、それぞれの第2の端部124と連通しているそれぞれのチャネル制限部125を備える。試料装填カートリッジ1の流出チャネル40は、流れ流入チャネル130と流体接続している。
【0084】
基板110内のセルチャネル120は、好ましくは流れ流入チャネル130および流れ流出チャネルも、好ましくはマイクロチャネルである。したがって、基板110は、好ましくはマイクロ流体基板またはデバイスである。
【0085】
デバイス100の基板110は、国際公開第2016/007063号パンフレット、国際公開第2016/007068号パンフレット、およびBaltekinら著、PNAS(2017年、114(34)巻、9170~9175頁)のいずれかに開示されているように設計され得る。
【0086】
好適な実施形態では、流れ流入チャネル130は、第1の流入ポート131と流体接続している第1の端部132を有し、第1の流入ポート131は、流出チャネル40と流体接続している。流れ流入チャネル130はさらに、第2の端部134を有し、第2の端部134は、任意選択的に第2の流入ポート133と流体接続し得る。基板110内の流れ流出チャネル140は、流出ポート141と流体接続している。
【0087】
別の実施形態では、
図19を参照すると、流れ流入チャネル130の第1の流入ポート131は、第1の液体試料を含む第1の試料装填カートリッジ1の流出チャネル40と流体接続している。次に、流れ流入チャネル130の第2の流入ポート133は、第2の液体試料を含む第2の試料装填カートリッジ1の流出チャネル40と流体接続し得る。第1の液体試料および第2の液体試料は、同じ種類の液体試料または異なる液体試料であり得る。例えば、第1の液体試料は、抗生物質などの試験薬を含む尿試料などの生体試料であり得、第2の液体試料は、試験薬を含まない生体試料である。
【0088】
これらの実施形態のいずれにおいても、流出ポート141は、第3の試料装填カートリッジ1の流出チャネル40と流体接続し得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、基板110は、それぞれの流れ流入チャネル130および流れ流出チャネル140を有する少なくとも2組のセルチャネル120を備え得る。そのような場合、少なくとも流れ流入チャネル130のそれぞれの第1の流入ポート131は、第1の液体試料を含む共通の試料装填カートリッジ1の流出チャネル40と流体接続し得る。次に、少なくとも2つの流れ流入チャネル130のそれぞれの第2の流入ポート133は、好ましくは、第2の液体試料、第3の液体試料などを含む異なる試料装填カートリッジ1の流出チャネル40と流体接続している。したがって、共通の試料装填カートリッジ1が各々の第1の流入ポート131に接続されるが、それぞれの第2の流入ポート133は、それぞれの試料装填カートリッジ1と流体接続している。第1の液体試料、第2の液体試料および/または第3の液体試料は、同じ種類の液体試料または異なる液体試料であり得る。例えば、第1の液体試料は、細菌を含む尿試料などの生体試料であり得るが、第2の液体試料は、抗生物質などの試験薬を含む増殖培地であり、第3の液体試料は、試験薬を含まない増殖培地である。
【0090】
動作中、試料リザーバ20に標的細胞を含む生体試料が事前に装填されている場合、生体試料は、試料リザーバ20から流出チャネル40を通って流れ流入チャネル130の第1の流入ポート131内へ吐出される。生体試料は、セルチャネル120を通って流され、さらに流れ流出チャネル140に入って、流出ポート141を通って外へ流される。次に、セルチャネル120内のそれぞれのチャネル制限部125は、生体試料中に存在する標的細胞がそれぞれのチャネル制限部125を通過して流れ流出チャネル140に流入するのを効率的に防止する、または少なくとも制限する、または阻止することになる。したがって、生体試料中に存在する標的細胞は、セルチャネル120内に捕捉される。
【0091】
上述の実施形態は、本発明のいくつかの例示的な例として理解されるべきである。本発明の範囲から逸脱することなく、実施形態に対して様々な修正、組み合わせ、および変更を行うことができることは当業者には理解されよう。特に、異なる実施形態における異なる部分的解決策は、技術的に可能であれば、他の構成において組み合わせることができる。しかしながら、本発明の範囲は、添付の請求項によって定義される。