(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】糸のインライン処理のための処理ユニット
(51)【国際特許分類】
D06H 3/08 20060101AFI20240104BHJP
D06B 11/00 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
D06H3/08
D06B11/00 C
(21)【出願番号】P 2021513888
(86)(22)【出願日】2019-08-27
(86)【国際出願番号】 SE2019050795
(87)【国際公開番号】W WO2020055301
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-07-26
(32)【優先日】2018-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】517441044
【氏名又は名称】カラーリール グループ アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】エクリンド マルティン
(72)【発明者】
【氏名】スタベルク ヨアキム
【審査官】中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-304359(JP,A)
【文献】特開平06-299458(JP,A)
【文献】特開2006-240082(JP,A)
【文献】特開2014-040678(JP,A)
【文献】特開平08-311753(JP,A)
【文献】特開2002-082062(JP,A)
【文献】特開平11-316196(JP,A)
【文献】特開2012-057978(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0098200(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06H、D06B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸消費ユニット(15)とともに使用するための糸(20)のインライン処理のためのシステム(10)であって、
少なくとも1つの糸(20)に沿って配置され、作動時に、少なくとも1つまたは複数のコーティング物質を前記少なくとも1つの糸(20)の上に分配するように構成された少なくとも2つのノズル(152a~f)を備える少なくとも1つの排出デバイス(150)を備える処理ユニット(100)と、
前記少なくとも1つの糸(20)が照らされたときに前記少なくとも1つの糸(20)から反射される光を受け取るために、前記少なくとも1つの糸(20)を照らすための光検出システム(60)と、
前記光検出システム(60)からデータを受信し、受信した前記データに基づいて、前記少なくとも1つの排出デバイス(150)および/または前記ノズル(152a~f)の少なくとも1つに関連する糸(20)の位置を決定するように構成された制御ユニット(190)と、
を備える、システム(10)。
【請求項2】
前記光検出システム(60)は、前記少なくとも1つの糸(20)の進行方向に沿って前記排出デバイス(150)の下流側に配置される、請求項1に記載のシステム(10)。
【請求項3】
前記光検出システムが、少なくとも1つの光源(62)および少なくとも1つのセンサ(64)を備える、請求項1または2に記載のシステム(10)。
【請求項4】
前記制御ユニット(190)が、
受信した前記データに基づいて、前記処理ユニット(100)の動作を制御および/または評価する、
ように、さらに構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項5】
前記処理ユニット(100)の動作は、前記ノズル(152a~f)のうちの少なくとも1つの位置を調整することによって制御される、請求項4に記載のシステム(10)。
【請求項6】
前記
ノズル(152a~f)のうちの少なくとも1つおよび/または前記糸(20)が第一の位置および第二の位置に配置されるように構成され、前記制御ユニット(190)は、前記光検出システム(60)からの入力に基づいて、前記
ノズル(152a~f)および/または前記糸(20)が前記第一の位置または前記第二の位置にあるかを決定するように構成される、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項7】
前記第一の位置では、前記ノズル(152a~f)のうちの前記少なくとも1つと前記少なくとも1つの糸(20)とが整列し、前記第二の位置では、前記ノズル(152a~f)のうちの前記少なくとも1つと前記少なくとも1つの糸(20)とが整列しない、請求項
6に記載のシステム(10)。
【請求項8】
前記ノズル(152a~f)のうちの前記少なくとも1つは、前記第一の位置と前記第二の位置との間の前記少なくとも1つの糸(20)に対して移動可能である、請求項6
または7に記載のシステム(10)。
【請求項9】
前記制御ユニット(190)が、前記
ノズル(152a~f)および/または前記糸(20)が前記第一の位置にあると決定した場合、前記制御ユニット(190)は、
前記処理ユニット(100)が前記1つまたは複数のコーティング物質を前記少なくとも1つの糸(20)に分配しているときに、前記ノズル(152a~f)のうちの前記少なくとも1つのノズル位置を決定するステップと、
前記ノズル位置を記憶するステップと、
を含むように、さらに構成される、請求項6~
8のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項10】
前記制御ユニット(190)は、前記
ノズル(152a~f)および/または前記糸(20)が前記第二の位置にあると決定した場合、前記制御ユニット(190)は、
前記処理ユニット(100)のノズル(152a~f)が、1つまたは複数のコーティング物質を前記少なくとも1つの糸(20)にもはや分配していないことを決定し、
その時点でのそのノズル(152a~f)位置を決定し、
前記ノズル位置を記憶するように、
さらに構成される、請求項6~
8のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項11】
前記制御ユニット(190)が、
記憶された前記ノズル位置のアベレージを計算することにより、前記少なくとも1つの糸(20)の中心点を決定し、
前記中心点の値に基づいて、前記ノズル(152a~f)のうちの少なくとも1つの位置を変更するように、
さらに構成される、請求項
9または10に記載のシステム(10)。
【請求項12】
前記制御ユニット(190)が、
記憶された前記ノズル位置に基づいて、前記少なくとも1つの糸(20)に対する前記少なくとも2つのノズル(152a~f)の角度を決定し、
前記角度に基づいて、前記少なくとも2つのノズル(152a~f)の位置を変更するように、
さらに構成される、請求項
9および
10または
11に記載のシステム(10)。
【請求項13】
前記制御ユニット(190)が、
前記光検出システム(60)からの入力に基づいて、前記少なくとも1つの糸(20)に分配される前記1つまたは複数のコーティング物質の少なくとも1つの特性を決定するように、
さらに構成される、請求項6~
12のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項14】
前記制御ユニット(190)が、
決定された前記少なくとも1つの特性を少なくとも1つの所定の特性と比較し、
決定された前記少なくとも1つの特性および少なくとも1つの所定の特性が許容限界内で一致しない場合、警報信号を生成するように、
さらに構成される、請求項
13に記載のシステム(10)。
【請求項15】
前記センサ(64)が光学センサである、請求項3に記載のシステム(10)。
【請求項16】
前記光学センサ(64)が、モノクロセンサ、カラーセンサ、または分光光度計のうちの1つである、請求項
15に記載のシステム(10)。
【請求項17】
前記ノズル(152a~f)がインクジェットノズルである、請求項1~
16のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項18】
前記コーティング物質が着色物質である、請求項1~
17のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項19】
糸消費ユニット(15)をさらに備える、請求項1~
18のいずれか一項に記載のシステム(10)。
【請求項20】
前記糸消費ユニット(15)が、刺繍機、縫製機、編み機、織機、タフティング機
、またはこれらの任意の組合せである、請求項
19に記載のシステム(10)。
【請求項21】
少なくとも1つの糸(20)のインライン処理を提供するための方法であって、
前記少なくとも1つの糸(20)に対して異なる位置に配置された少なくとも2つのノズル(152a~f)を備える少なくとも1つの排出デバイス(150)を備える処理ユニット(100)を提供するステップであって、前記少なくとも1つの糸(20)は、使用中に移動しており、各ノズルは、作動時に前記少なくとも1つの糸に1つまたは複数のコーティング物質を分配するように構成されている、ステップと、
前記少なくとも1つの糸(20)が照らされたときに前記少なくとも1つの糸(20)から反射される光を受け取るために、前記少なくとも1つの糸(20)を照らすための光検出システム(60)を提供するステップと、
前記光検出システム(60)からデータを受信し、受信した前記データに基づいて、前記少なくとも1つの排出デバイス(150)および/または前記ノズル(152a~f)のうちの少なくとも1つに関連する糸(20)の位置を決定するように構成された制御ユニット(190)を提供するステップと、
を含む、方法。
【請求項22】
ノズル(152a~f)および/または糸(20)が、第一の位置および第二の位置に配置されるように構成され、前記第一の位置では、前記ノズル(152a~f)のうちの少なくとも1つと前記少なくとも1つの糸(20)とが整列し、前記第二の位置では、前記ノズル(152a~f)のうちの少なくとも1つと前記少なくとも1つの糸(20)とが整列せず、
前記方法は、
前記光検出システム(60)からの入力に基づいて、前記
ノズル(152a~f)および/または前記糸(20)が前記第一の位置または前記第二の位置にあるかを決定するステップ
をさらに含む、請求項
21に記載の方法。
【請求項23】
前記方法が、
前記処理ユニット(100)が1つまたは複数のコーティング物質を少なくとも前記1つの糸(20)に分配しているときに、前記ノズル(152a~f)のうちの少なくとも1つのノズル位置を決定するステップと、
前記処理ユニット(100)が1つまたは複数のコーティング物質をもはや少なくとも前記1つの糸(20)に分配していないときに、前記ノズル(152a~f)のうちの少なくとも1つのノズル位置を決定するステップと、
をさらに含む、請求項
22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸消費デバイスの技術分野に関する。特に、本発明は、そのような糸消費デバイスに関連して使用される処理ユニットを備えるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
刺繍機などの糸消費デバイスに、糸に特定の処理を提供するように設計されたインライン装置を提供することが提案されてきた。そのようなインライン装置は、例えば、糸を着色するために使用され、これにより、刺繍機を使用してマルチカラーパターンを作成するときに、複数のカラーノズルが複数の事前に着色された糸の現在の使用を置き換えることができる。異なる色の糸が使用される従来技術のシステムでは、第一の指定された色を有する1つの糸がいくつかの縫い目に使用され、第二の指定された色を有する別の糸が他の縫い目に使用される。
【0003】
異なる色の複数の糸に対する要件の明らかな欠点を排除するために、本出願人は、特許文献1および特許文献2などの糸のインライン着色の技術に関するいくつかの特許出願を提出してきた。提案された解決策は、色品質の点で改善を提供し、糸消費デバイスの複雑さも軽減する。
【0004】
しかしながら、糸のインライン着色の品質および効率をさらに改善するために、インライン着色装置が、インライン着色装置で1つまたは複数のノズルの保守が必要かどうかを決定することができれば有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2016/204687号パンフレット
【文献】国際公開第2016/204686号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、従来技術の不利な点を克服する解決策を提供することである。より具体的には、本発明は、糸のインライン処理のためのシステムが、処理される糸の情報を提供するように配置された光検出システムを備える解決策を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の態様では、糸消費デバイスとともに使用するための糸のインライン処理のためのシステムが提供される。このシステムは、少なくとも1つの糸に対して異なる位置に配置された少なくとも2つのノズルを備える少なくとも1つの排出デバイスを備える処理ユニットを備え、前記少なくとも1つの糸は使用中に移動しており、各ノズルは、作動時に、少なくとも1つまたは複数のコーティング物質を前記少なくとも1つの糸の上に分配するように構成される。このシステムは、前記少なくとも1つの糸が照らされたときに前記少なくとも1つの糸から反射される光を受け取るために、少なくとも1つの糸を照らすための光検出システムをさらに備える。
【0008】
光検出システムから収集された情報に基づいて、インライン着色装置の1つまたは複数のノズルが保守を必要としているかどうかを決定することが可能になる。さらに、排出デバイスとそのノズルの位置、排出デバイスとそのノズルの整列、およびコーティングの分配における欠陥を検出することが可能である。さらに、光検出システムによって収集された情報は、較正のために使用され得る。例えば、トリガとコーティングの実際の分配との間のタイマを較正するため、コーティング物質(インクなど)の量を較正するため、糸の速度測定値を較正するため、および/または糸の測定値を較正するために、使用され得る。
【0009】
第二の態様では、糸消費デバイスとともに使用するための少なくとも1つの糸をインライン処理するための方法が提供される。この方法は、少なくとも1つの糸に対して異なる位置に配置された少なくとも2つのノズルを備える少なくとも1つの排出デバイスを備える処理ユニットを提供するステップを含み、前記少なくとも1つの糸は、使用中に移動しており、各ノズルは、作動時に前記少なくとも1つの糸に1つまたは複数のコーティング物質を分配するように構成されている。この方法は、前記少なくとも1つの糸が照らされたときに前記少なくとも1つの糸から反射される光を受け取るために、前記少なくとも1つの糸を照らすための光検出システムを提供するステップをさらに含む。
【0010】
一実施形態では、システムは、第一の位置および第二の位置に配置されるように構成され、第一の位置において、少なくとも1つのノズルと少なくとも1つの糸とが整列し、第二の位置において、少なくとも1つのノズルと少なくとも1つの糸とが整列せず、この方法は、光検出システムからの入力に基づいて、システムが第一の位置にあるか第二の位置にあるかを決定するステップをさらに含む。
【0011】
この方法は、処理ユニットが1つまたは複数のコーティング物質を少なくとも1つの糸に分配しているときに、少なくとも1つのノズルのノズル位置を決定するステップと、処理ユニットが1つまたは複数のコーティング物質をもはや少なくとも1つの糸に分配していないときに、少なくとも1つのノズルのノズル位置を決定するステップと、をさらに含み得る。
【0012】
(定義)
この文脈において、「糸消費デバイス」とは、使用時に糸を消費する任意の装置である。例えば、刺繍機、織り機、縫製機、編み機、タフティング機、または任意の他の糸消費装置であってもよく、これらは、表面処理もしくはコーティング、または染色のように糸を物質にさらすことを含むその他のプロセスから恩恵を受けることができる。
【0013】
この文脈において、「処理」とは、糸の性質を変更するように設計された任意のプロセスである。そのようなプロセスには、着色、湿潤、潤滑、洗浄、固定、加熱、硬化、染色などが含まれるが、これらに限定されない。
【0014】
この文脈において、「糸」とは、幅および高さ方向に薄く、本明細書に記載のシステムの任意のパーツの長手方向延在部よりも、またその幅および高さ寸法よりも極めて長い長手方向延在部を有する可撓性の細長い部材または基材である。典型的には、「糸」は複数のプライが一緒に撚られて構成され得る。したがって、「糸」という用語は、ガラス繊維、羊毛、綿、ポリマーのような合成材料、金属、ポリエステル、ビスコース、あるいは、例えば羊毛、綿、ポリマーまたは金属の混合物、またはこれらの任意の組合せなどの多様な異なる材料から製造された、ヤーン、ワイヤ、ストランド、フィラメントなどを含む。
【0015】
本明細書において、「上流側」および/または「下流側」に関する言及は全て、糸消費デバイスの通常の動作中に、即ち、デバイス内を通常の動作方向に連続して移動する糸のような細長い基材を処理するように、デバイスが動作しているときの相対位置として解釈されるべきである。したがって、上流側の構成要素は、糸の特定部分が下流側の構成要素を通過する前に、上流側の構成要素を通過するように配置される。
【0016】
本発明の実施形態は、本発明の以下の説明で、本発明の概念をどのように実施することができるかについての非限定的な例を示す添付の図面を参照しながら、記載される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1a】一実施形態による糸のインライン処理のためのシステムの概略図である。
【
図1b】一実施形態による糸消費デバイスおよび処理ユニットを有するシステムの斜視図である。
【
図2】一実施形態によるシステムとともに使用するための処理ユニットの概略図である。
【
図3】処理ユニットの一部を形成する排出デバイスの概略図である。
【
図4a】一実施形態による排出デバイスの一部の概略上面図である。
【
図4b】一実施形態による排出デバイスの一部の概略上面図である。
【
図5a】一実施形態による光検出システムを備えた処理ユニットの概略図である。
【
図5b】一実施形態による
図5bの光検出システムの概略図である。
【
図6a】一実施形態によるシステムが第一の位置に配置されたときを示す概略図である。
【
図6b】一実施形態によるシステムが第二の位置に配置されたときを示す概略図である。
【
図7a】一実施形態による較正方法の概略図である。
【
図7b】一実施形態による整列方法の概略図である。
【
図7c】一実施形態による故障検出方法の概略図である。
【
図8a】一実施形態によるシステムの概略図である。
【
図8b】一実施形態によるシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のアイデアは、糸消費デバイスと関連して使用するために、制御された方法でコーティング物質を糸に分配するためのシステムおよび方法を提供することである。
図1aから始めて、糸のインライン処理のためのシステム10の概略図が示されている。システム10は、1つまたは複数のコーティング物質を少なくとも1つの糸に分配するための処理ユニット100を備える。システム10は、少なくとも1つの糸消費デバイス15をさらに備え、これは、例えば、1つまたは複数の刺繍機、織り機、縫製機、編み機、タフティング機
、などの形態であり得る。これにより、システムは、少なくとも1つの糸消費デバイス15および処理ユニット100を含む糸消費ユニットを形成する。糸消費デバイスでは、複数の糸を使用できることに留意されたい。
【0019】
システムのいくつかの態様が本明細書内に記載されており、それらは糸消費デバイス15を含めることを必要としないことに留意されたい。以下からさらに理解されるように、すべての実施形態において、糸のインライン処理のためのシステムは、糸消費デバイスとともに使用される処理ユニット100と、少なくとも1つの糸20を照らすための光検出システム60(例えば、
図5a~bを参照)とを必要とする。
【0020】
ここで
図1bに目を向けると、糸消費デバイス15は、刺繍機として例示され、ここでは、処理ユニット100備えたシングルヘッド刺繍機として示されている。刺繍機は、刺繍される布を運ぶ可動ステージ2bを備える。動作中、可動ステージ2bは、その位置をX方向およびY方向(すなわち、この場合は、水平面であるが、垂直面でもあり得る)に急速に変化させるように制御される。
【0021】
処理ユニット100は、従来の刺繍機に必要とされるように、独特に事前に着色された糸を提供することなく、刺繍機15が作動することを可能にする。代わりに、処理ユニット100は、着色された刺繍を製造することができるように、所定の着色パターンに従って糸20のインライン着色を提供する。したがって、処理ユニット100は、従来技術のシステムに存在するように、個々の糸リールを置き換える。
【0022】
図1bに示されるように、処理ユニット100と刺繍機15との間の唯一の接続は、糸20であり、また電気的接続(図示せず)である。したがって、処理ユニット100は、可動ステージ2bとの機械的接続を有さないスタンドアロンユニットとして提供される。オプションの実施形態では、スタンドアロン処理ユニット100は、処理ユニット100への振動の伝達を低減するための懸架装置を介して、糸消費デバイス15に取り付けられている。
【0023】
処理ユニット100の様々な構成要素を
図2に示す。
図2に見られるように、構成要素の大部分は、ハウジング105の内部に配置される。糸リール120のすぐ下流に、処理ユニット100を介して糸を前方に引っ張るように構成された糸フィーダ130を配置することができる。糸フィーダ130は、本明細書ではこれ以上説明しないが、より一般的な理解のために、糸フィーダ130は、糸20を受け取り、前進させる。このため、糸フィーダ130は、以下でさらに説明する制御ユニット190によって制御される。糸フィーダ130は、また、好ましくは、例えば、従動ローラ、エンコーダホイール、および1つまたは複数の糸ガイドによって、糸張力を制御するように構成される。糸フィーダ130を通過した後、糸20は、糸案内デバイス140と係合する。糸案内デバイス140は、例えば、1つまたは複数の案内ローラ142、144または他の適切な手段の形態であり得、糸20が少なくとも1つの排出デバイス150の一部を形成する1つまたは複数の処理ノズルと整列することを確実にする。
【0024】
排出デバイス150は、着色物質などの処理物質が排出デバイス150を通過する際に、その物質を糸20上に排出するように構成されている。このため、ノズルは、
図3および
図4に関連してさらに説明されるように、好ましくは、糸20の長手方向に配置される。
【0025】
排出デバイス150、またはプリントヘッド151a~dなどの排出デバイス150の一部は、駆動ユニット(図示せず)によって移動可能であり得る。駆動ユニットを有することにより、例えば、コーティング物質を糸に分配する第一の状態と、洗浄セッション、または他の保守またはアイドリングを実行する第二の状態など、異なるタスクを実行するために、排出デバイス150または排出デバイス150の一部を異なる動作状態に配置することが可能になる。このために、駆動ユニットは、排出デバイス150またはその一部に接続され得る。駆動ユニットは、アイドル位置から動作位置への移動中に、異なる伝達比を有するトランスミッションによって、排出デバイス150またはそのプリントヘッドをアイドルまたは保守位置と動作位置との間で移動させるように構成され得る。
【0026】
排出デバイス150の下流には、別の糸案内デバイス160が設けられている。第二の糸案内デバイス160は、排出デバイス150に沿って移動する間、糸20の位置が正しいように、第一の糸案内デバイス140と協働している。第二の糸案内デバイス160は、例えば、1つまたは複数の案内ローラ162、164の形態であり得るが、それはまた、その長手方向軸に沿って糸20の回転を誘発するように設計され得る。この追加の機能は、以下で説明するように、着色に利点を提供することができる。
【0027】
システム10は、システム10を通過する糸20の速度を測定するように構成された糸速度センサ(図示せず)をさらに備えてもよい。
【0028】
さらに、光検出システム60は、排出デバイス150の下流に、少なくとも1つの糸20の進行方向に沿って、配置されている。光検出システム60は、
図5~
図7を参照して以下でより詳細に説明される。
【0029】
次に、糸20は、処理物質を糸20に固定するために提供される1つまたは複数の固定ユニット170を通過するように前方に供給される。固定ユニット170は、好ましくは、熱風供給要素または加熱要素などの加熱手段、または処理物質、例えば、着色物質を硬化するか、あるいは糸20に固定するようなUV光源を備える。
図2に示すように、固定ユニット170は、水平、垂直、または水平と垂直の間のある角度のいずれかに配置することができる。
【0030】
ハウジング105を出る前に、糸20は、超音波浴などの洗浄ユニット180を通過し、そこで糸20から不要な粒子を除去する。処理物質が糸20に固定されると、洗浄ユニット180は、処理物質に影響を与えないままにする。
【0031】
処理ユニット100は、ハウジング105の内部に配置された潤滑ユニット185をさらに備えてもよい。追加の糸バッファおよび糸フィーダ(図示せず)も、また、糸経路の様々な位置に配置された処理ユニット100に含まれることもある。
【0032】
糸20は、好ましくは、開口部または同様のものを通って処理ユニット100を出て、それによって、糸20は、
図1aおよび
図1bに示されるように、刺繍機15などの関連する糸消費デバイスに送られる。
【0033】
動作中に糸20と係合する糸フィーダ130および他の構成要素は、好ましくは、糸20を処理ユニット100から引っ張るのに必要な力、すなわち、下流の刺繍機15によって加えられる引っ張り力が、処理ユニット100が従来技術の糸リールと交換されたかのように。ほぼ同じになるように構成される。
【0034】
パワーエレクトロニクス、通信モジュール、メモリなどの関連する電子機器を備えた制御ユニット190も提供される。制御ユニット190は、糸フィーダ130、排出デバイス150、および固定ユニット170に接続され、これらの構成要素の動作の制御を可能にする。さらに、制御ユニット190は、洗浄ユニット180、潤滑ユニット185、糸20の分裂、処理ユニット100に沿った様々な位置での糸速度、糸バッファなどを含む処理ユニット100全体の動作を制御するように構成される。制御ユニット190は、また、処理ユニット100の1つまたは複数の構成要素から制御信号、例えば、特定の制御をトリガするための制御信号、または、例えば、刺繍機15による糸消費量に関連する他の情報を受信するように構成され得る。
【0035】
制御ユニット190は、任意の市販のCPU(「中央処理装置」)、DSP(「デジタル信号プロセッサ」)または任意の他の電子プログラマブルロジックデバイス、あるいはそのようなプロセッサまたは他の電子プログラマブルロジックデバイスの組合せによって実装され得る。制御ユニット190は、例えば、そのようなプロセッサによって実行されるコンピュータ可読記憶媒体(ディスク、メモリなど)に記憶され得る汎用または専用プロセッサにおいて実行可能なコンピュータプログラム命令を使用することによって、ハードウェア機能を可能にする命令を使用して実装され得る。
【0036】
一実施形態では、好ましくはハウジング105の前端に配置されたディスプレイ195を介して、ユーザインターフェースも提供される。ディスプレイ195は、ユーザが制御ユニット190と相互作用することを可能にし、したがって、それに接続され、その結果、糸フィーダ130、排出デバイス150、固定ユニット170などの制御パラメータは、プロセス仕様に応じて、設定することができる。ディスプレイ195は、また、好ましくは、クリティカルな状況をユーザに警告するために使用され得、それにより、ディスプレイ195は、制御ユニット190が警報などを発するために使用され得る。
【0037】
上記の構成要素は、必ずしもスタンドアロン処理ユニット100に含まれ得るとは限らず、代わりに、処理ユニット100の構成要素は、少なくとも1つのユニットがスタンドアロンユニットであるいくつかのユニットに分離され得ることに留意されたい。好ましくは、スタンドアロンユニットは、少なくとも1つの排出デバイス150を少なくとも含む。
【0038】
図3には、上記のように処理ユニット100の一部を形成する排出デバイス150が示されている。使用中の糸20の移動方向は、
図3に実線の矢印で示されている。すぐに詳細に説明するように、排出デバイス150は、使用中に処理ユニット100を通過する糸20に沿って、異なる長手方向位置(例えば、距離d1だけ離間)に配置された複数のノズル152a~fを備える。
【0039】
各ノズル152a~fは、ノズルが作動したときに、インクなどのコーティング物質を糸20に分配するように配置される。コーティング物質は、糸20がその長手方向軸の周りでねじれるとき、例えば、糸20の異なる円周方向位置で、糸20によって吸収される。コーティング物質が隣接して分配された2つの液滴の相対位置は、液滴が重なるように選択され得る。
【0040】
処理ユニット100は、1つまたは複数の排出デバイス150を備える。各排出デバイス150は、好ましくは、一連のインクジェットプリントヘッド151a~dとして形成され、各プリントヘッド151a~dは、1つまたは複数のノズルアレイを有する。各ノズルアレイは、通常、数千のノズルを備える。説明のために、1つのプリントヘッド151a~dについて6つのノズル152a~fのみが示されている。しかしながら、各ノズルアレイは、それぞれ数千のノズル152を備えていてもよいことを理解されたい。一例として、各プリントヘッド151a~dは、単一の色に関連付けられ得る。示されている例では、排出デバイス150は、4つのプリントヘッド151a~dを有し、各プリントヘッド151a~dは、CMYK規格に従って特定の色に関連付けられている。しかしながら、他の着色モデルを使用することもできる。
【0041】
処理ユニット100の正確な構成は、変化し得る。例えば、処理ユニット100は、複数のプリントヘッド151a~dを有する単一の排出デバイス150を備えている。次いで、各プリントヘッド151a~dは、複数のノズル152a~fを備えている。
【0042】
別の実施形態では、処理ユニット100は、直列または並列のいずれかに配置されたいくつかの排出デバイス150を備えている。次いで、各排出デバイス150は、複数のプリントヘッド151a~dを備えている。直列に配置された場合、上流の排出デバイス150は、特定の色標準の1つまたは複数の色に関連付けられたプリントヘッド151a~dを有し得、一方、下流の排出デバイス150は、同じ色標準の他の色に関連付けられたプリントヘッド151a~dを有する。並列に配置された場合、各排出デバイス150は、特定の色標準のすべての色に関連付けられるが、異なる糸20に関連付けられたプリントヘッド151a~dを有し得る。そのような実施形態では、2つの別個の糸20を同時に、並列に扱うことができる。当然、並列/直列構成の組合せも可能である。
【0043】
さらに別の実施形態では、排出デバイス150は、単一のプリントヘッド151a~dのみを有する。その場合、糸20の動的着色は、処理ユニット100のいくつかの排出デバイス150を必要とするであろう。
【0044】
各ノズル152a~fは、原色がシアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックであるCMYKカラーモデルに従った色を有するコーティング物質を分配することができる。したがって、特定の長さの糸20の総着色物質がノズル152a~fによって分配される着色物質の混合物となるように、ノズル152a~fを作動することによって、多種多様な色を糸に分配することが可能であり得る。先に説明したように、これは、好ましくは、いくつかのプリントヘッド151a~dを直列に配置することによって達成され、それによって、特定のプリントヘッド151a~dのノズル152a~fは、単色専用である。
【0045】
別の実施形態では、各ノズル152a~fは、CMYKカラーモデルの2つ以上の原色の混合物を含む色を有するコーティング物質を分配する。
【0046】
制御ユニット190は、コーティング物質が処理ユニット100を通過するとき、特に排出デバイス150を通過するときに、コーティング物質が糸20に排出されるように、ノズル152a~fの作動を制御するように構成される。このような構成により、糸20の非常に正確な着色が可能であり、処理ユニット100によって提供される着色によって、例えば、視覚的に非常に洗練された高度な刺繍パターンを提供することができる。
【0047】
着色動作の場合、制御ユニット190は、所望の色および/または着色効果を指定する1つまたは複数の入力信号を受信する。色入力は、好ましくは、正確な色と、その特定の色の糸20の長手方向の開始位置および停止位置とに関する情報を含む。糸速度が決定された場合、長手方向の開始位置と停止位置は、特定の時間値で表すことができる。
【0048】
図4a~
図4bは、プリントヘッド151aのそれぞれの上面図を示している。プリントヘッド151aは、ノズル152が配置される平面を有する。上述のように、単一のプリントヘッドのノズル152の総数は、数センチメートルのサイズのプリントヘッド151a上に提供される場合、最大で数千になり得る。示されている例では、はるかに少ない数のノズル152が示されている。ノズル152は、1つまたは複数のノズルアレイ153に分配することができる。
図4aでは、ノズル152は、2つの平行なアレイ153に分配される。アレイ153は、1つのアレイ153のノズル152が他のアレイ153のノズル152に隣接して配置されるように、互いに整列する。
【0049】
図4bは同様の例を示しているが、2つのアレイ153の間に長手方向のオフセットがある。
【0050】
図5a~
図5bは、光検出システム60の概略図である。光検出システム60は、糸20が照らされたときに糸20から反射される光を受け取るために、糸20を照らすように構成されている(
図5a~
図5bに示されているように)。光検出信号から収集された情報は、例えば、排出デバイス150、および/またはそのノズル152a~fに対する糸の位置、糸20の幅、および/または糸20の特性を決定するために使用され得る。この情報は、例えば、保守が必要なノズルを検出するため、ノズルの位置を変更する必要があること、および/またはコーティング物質の変動を検出するために使用することができる。情報は、追加または代替として、例えば、適切に動作していないノズルを検出することによって処理ユニットを制御するために、および/またはノズル152a~fの作動タイミングを変更するために、制御ユニット190によって使用され得る。
【0051】
図2に見られるように、光検出システム60は、少なくとも1つの糸20の進行方向に沿って排出デバイス150の下流に配置される。光検出システム60は、既知の位置を有する光検出システム60に糸が導かれるように配置される。位置は、好ましくは、光検出システム60に関連して知られている。
【0052】
一実施形態では、光検出システム60は、少なくとも1つの光源62および少なくとも光学センサ64を備える。好ましい実施形態では、光学センサ64は、光強度の差を検出するように構成される。追加または代替として、光学センサ64は、受信光の波長に関連する差を検出するように構成される。
【0053】
光源62は、任意の種類の適切な光源、例えば、1つまたは複数の発光ダイオード(LED)であり得る。複数の発光ダイオードが使用される場合、光源のそれぞれが、可視スペクトルに間隔を置いて配置された実質的に異なる波長帯域の光を放出することが好ましい。
【0054】
光学センサ64は、例えば、モノクロセンサ、カラーセンサ、または分光光度計であり得る。光学センサ64は、さらに、光伝導セル、フォトダイオード、フォトレジスタ、フォトスイッチ、フォトトランジスタ、光電管、光電池、光から周波数への変換器、または光を電気信号に変換することができる任意の他のタイプの光学センサなどの光検出器であり得る。
【0055】
モノクロセンサ64を使用して、色の強度を測定することが可能である。モノクロセンサ64が異なる種類の光源62、異なる波長と組み合わされる場合、および/または光源62が光をフィルタリングするように構成される場合、モノクロセンサを使用して、糸の色を検出および/または測定することができる。
【0056】
一実施形態では、モノクロセンサ64は、異なる波長間隔を有する異なる種類の光源62と組み合わされる。異なる光源62が別の方法で糸を照らすように構成されている場合、制御ユニット190は、測定された基材がどの色で配置されているかを決定するように構成され得る。
【0057】
カラーセンサは、糸の色を高精度に判別できるというメリットを有する。最後に、分光光度計は、基材の欠陥のある色を検出する可能性を高め、色の読み取りの精度を高めるカラースペクトルを生成できるというメリットを有する。さらに、分配される各色の欠陥を検出する可能性を高めるというメリットも有する。
【0058】
ほとんどのセンサは、所定のテストパターンにコーティングを塗布しないノズルを検出できる。分光光度計のもう1つのメリットは、特定の所定のパターンでディスペンスが実行されなくても、ノズルの障害を検出できることである。代替の実施形態では、光検出システム60は、光源としても機能するように構成された光学センサ64を備える。したがって、光源は、光学センサに統合することができる。
【0059】
システム10は、第一の位置および第二の位置に配置されるように構成される。少なくとも1つの糸20と少なくとも1つのノズル152a~fとの間の相対位置は、システムが第一の位置にあると見なされるか、第二の位置にあると見なされるかを決定する。これは、
図6a~
図6bに概略的に示されている。
図6aは、システム10が第一の位置に配置されていることを示し、
図6bは、システム10が第二の位置に配置されていることを示している。
【0060】
好ましい実施形態では、異なる位置は、移動可能な方法で(好ましくは駆動ユニットによって)排出デバイス150の少なくとも一部を配置することによって達成され、その結果、排出デバイス150の少なくとも一部、例えば、プリントヘッド151a~dが、第一の位置と第二の位置との間の少なくとも1つの糸20に対して移動可能である。別の実施形態では、ノズル152a~fは静止しており、少なくとも1つの糸20が、第一の位置と第二の位置との間に移動可能に配置されている。さらに一実施形態では、ノズル152a~fおよび少なくとも1つの糸20の両方が可動である。
【0061】
第一の位置では、複数のノズル152a~fのうちの少なくとも1つおよび少なくとも1つの糸が互いに整列している。複数のノズル152a~fのうちの少なくとも1つと少なくとも1つの糸が整列している場合、少なくとも1つのノズル152a~fから分配されるもう1つのコーティング物質は、高い確率で、少なくとも1つの糸20に当たる。したがって、第一の位置は動作位置と見なされる。第一の位置は、整列位置と見なすこともできる。
【0062】
第二の位置では、複数のノズル152a~fのうちの少なくとも1つおよび少なくとも1つの糸は、互いに整列していない。ノズル152a~fのうちの少なくとも1つおよび少なくとも1つの糸が整列していない場合、少なくとも1つのノズル152a~fから分配されるもう1つのコーティング物質は、少なくとも1つの糸20に当たらない可能性が高い。したがって、第二の位置は、糸がコーティング物質によって正確に着色できない位置である。この位置は、保守位置または較正位置と見なすことができる。第二の位置は、非整列位置と見なすこともできる。
【0063】
言い換えれば、第一の位置では、分配されたコーティング物質が糸20に当たる可能性が最も高い。この位置からの距離が長くなると、ノズルが糸20にコーティングを分配する可能性が低くなる。
【0064】
制御ユニット190は、光検出システム60から受信した入力に基づいて、システム10が第一の位置にあるか第二の位置にあるか(すなわち、ノズルと糸が整列しているか、整列していないか)を決定するように構成される。
【0065】
図7aは、光検出システム60から受け取った入力を使用して、少なくとも1つの糸20に対するノズルの相対位置を較正する状況を示している。この例示的な状況では、ノズルは糸に対して移動可能であるが、この方法は、糸がノズルに対して移動可能である反対の状況にも、糸とノズルの両方が移動可能である状況にも適用可能である。
【0066】
第一のステップ210において、ノズルは、ノズルと糸が整列していない位置で停止される。この位置に来ると、1つまたは複数のノズルがコーティング物質を1回または数回排出する220。次のステップでは、糸を徐々に240前方に供給する230。最初に、ノズルは、糸がノズルと整列するまで、糸に向かって徐々に移動する。ノズルが糸に向かって移動するにつれて、糸がコーティング物質に当たる可能性が高くなる。したがって、糸が通過した後の動きは、ノズルを糸20から遠ざけるように動かす。ノズルが糸から長く動くほど、分配された物質が糸に当たる可能性は低くなる。
【0067】
以下の手順が作動している間、コーティング物質を排出するステップ220と、糸を供給するステップ230と、ノズルを移動させるステップ240とが繰り返される。
【0068】
光検出システム60は、糸20からの反射光を受け取る250。この情報は、システム10が第一の位置または第二の位置(すなわち、整列または非整列)にあるかどうかを決定するために使用される260。システムは、システムが第一の位置から第二の位置に向かって移動しているかどうか、またはシステムが第二の位置から第一の位置に向かって移動しているかどうかを決定するように、さらに構成される。言い換えると、ノズルは、最初に糸が整列するまで糸に向かって移動し、次に糸を通過して糸から離れるまで移動を続ける。
【0069】
システムが第一の位置から第二の位置に向かって移動している状況では、糸はノズルと整列しており、したがって、糸にはコーティングが分配される。ノズルは、糸を通過することによって整列位置から離れ、糸から離れて同じ方向に進み続け、糸がコーティングに当たる可能性が低い位置に向かう。
【0070】
システムが第二の位置から第一の位置に向かって移動している状況では、糸はノズルと整列しておらず、したがって、コーティングは糸に分配されていない。ノズルは、分配されたコーティングが糸に当たる整列位置に向かって移動している。
【0071】
光検出システム60から受信した情報は、コーティング物質が糸20に当たるかどうかを決定するために使用されるように構成される。追加または代替として、収集された情報は、コーティングがいつ、場合によってはどの位置で糸20に当たるかを視覚的に検査するために使用され得る。
【0072】
制御ユニット190は、さらに、最良のコーティング物質がいつ糸に発生したかを決定するように構成され得る。これは、ノズルを糸の前の位置から糸とノズルが整列する位置に向かって移動させ、さらに糸の後ろに位置する位置に移動させることによって達成される。
【0073】
一実施形態では、糸が整列していない位置から糸が整列している位置に向かってシステムが移動したと、システムが決定した場合、制御ユニット190は、少なくとも1つのノズルが1つまたは複数のコーティング物質を糸20に分配しているとシステムが決定したときに、少なくとも1つのノズル152a~fのノズル位置を決定するように270a、さらに構成される。分配位置のノズル位置は、制御ユニット190の関連するメモリに保存される280a。
【0074】
システムが第一の位置から第二の位置(非整列位置)に移動したと、システムが決定したとき260b、制御ユニット190は、少なくとも1つのノズルが、もはや1つまたは複数のコーティング物質を糸20に分配していないときに、少なくとも1つのノズル152a~fのノズル位置を決定するように270b、さらに構成される。非分配位置のノズル位置は、制御ユニット190の関連するメモリに保存される280b。
【0075】
いくつかの実施形態では、制御ユニット190は、満足のいく精度が達成されるまで、第一および第二の位置のノズル位置を決定する手順を繰り返すように構成される。
【0076】
整列位置と非整列位置のノズル位置は、糸20の中心点、すなわち、ノズルが糸の中心に配置された点を決定するために使用される290。これは、分配位置と非分配位置のノズル位置の平均値または平均値を計算することによって達成される。
【0077】
計算された中心点は、好ましくは、制御ユニット190の関連するメモリに保存される。計算された中心点は、較正されたシステムにおける新しい動作位置として使用することができる。したがって、少なくとも1つのノズルの位置は、中心点の値に基づいて変更され得る295。
【0078】
図7bは、ノズルを糸20に整列する方法を示している。この例示的な状況では、ノズルは糸に対して移動可能であるが、この方法は、糸がノズルに対して移動可能である反対の状況にも適用可能である。
【0079】
第一のステップ310において、ノズル152は、ノズル152と糸20とが整列していない位置で停止される。この位置に入ると、ノズルアレイ(ノズルアレイの各端に1つ)またはプリントヘッド(プリントヘッドの各端に1つ)に、またはその最外端の近くに配置された2つのノズル152は、コーティング物質を1回または数回排出するように構成される320。次のステップでは、糸が前方に供給され330、それぞれのノズルがコーティング物質を糸に排出し、光検出システム60が処理ユニット100の下流での糸の排出を表す光を受け取ることができるようにする。次のステップでは、ノズル152が動かされて、それぞれのノズルがコーティング物質を糸に排出し、光検出システム60が、処理ユニット100の下流での糸の排出を表す光を受け取ることができるようにする。
【0080】
以下の手順が作動している間、コーティング物質を排出するステップ320と、糸を供給するステップ330と、ノズルを移動させるステップ340とが繰り返される。
【0081】
光検出システム60は、糸20からの反射光を受信する350。この情報は、システム10が第一の位置または第二の位置にあるかどうかを決定するために使用される360。
【0082】
糸が第二の位置から第一の位置(整列位置)に向かってシステムが移動したと、システムが決定した場合、制御ユニット190は、少なくとも1つのノズルが1つまたは複数のコーティング物質を糸20に分配しているとシステムが決定したときに、少なくとも1つのノズル152a~fのノズル位置を決定するように370a、さらに構成される。分配位置のノズル位置は、制御ユニット190の関連するメモリに保存される380a。制御ユニット190は、検出されたノズルであったノズル152a~fのうちのどれ(したがって、アレイまたはプリントヘッドの最初または最後のノズル)であるかを決定するように、さらに構成される382a。
【0083】
システムが第一の位置から第二の位置(非整列位置)に移動したと、システムが決定したとき360b、制御ユニット190は、少なくとも1つのノズルが、もはや1つまたは複数のコーティング物質を糸20に分配していないときに、少なくとも1つのノズル152a~fのノズル位置を決定するように270b、さらに構成される。非分配位置のノズル位置は、制御ユニット190の関連するメモリに保存される380b。制御ユニット190は、検出されたノズルであったノズル152a~fのうちのどれ(したがって、アレイまたはプリントヘッドの最初または最後のノズル)であるかを決定するように、さらに構成される382b。
【0084】
いくつかの実施形態では、制御ユニット190は、満足のいく精度が達成されるまで、第一および第二の位置のノズル位置を決定する手順を繰り返すように構成される。
【0085】
制御ユニット190は、記憶されたノズル位置に基づいて、少なくとも1つの糸に対する少なくとも2つのノズルの角度を決定するように、さらに構成される。この角度は、ノズル152a~fと糸との間の関係を変更するために使用される。このようにして、検出された差は、減少するか、除去される。ノズル位置の変更は、システム10によって自動的に実行されるか、あるいはオペレータによって手動で実行され得る。
【0086】
位置の変更が手動で行われる場合、制御ユニット190が、検出された角度に基づいて、検出された角度をオペレータに通知することが好ましい。これは、ディスプレイ195に角度または角度に関連する他のフィードバックを表示することによって実行することができる。
【0087】
次に、整列位置と非整列位置のノズル位置は、糸20の中心点、すなわち、ノズルが糸の中心に配置された点を決定するために使用される390。これは、分配位置と非分配位置のノズル位置の平均値またはアベレージ値を計算することによって達成される。
【0088】
計算された中心点は、好ましくは、制御ユニット190の関連するメモリに保存される。計算された中心点は、較正されたシステムにおける新しい動作位置として使用することができる。したがって、少なくとも1つのノズルの位置は、中心点の値に基づいて変更され得る395。
【0089】
図7cは、作動していないノズルまたは正常に作動していないノズルを検出する方法を示している。この例示的な状況では、ノズルは糸に対して移動可能であるが、この方法は、糸がノズルに対して移動可能である反対の状況にも適用可能である。
【0090】
評価されるノズルは、第一の位置に配置され、したがって、糸20と整列する。第一のステップにおいて、試験されるノズルは、コーティング物質を糸の所定の距離に分配するように構成される。距離は、例えば、5mmであり得る。
【0091】
さらなるステップにおいて、試験される別のノズルが第一の位置に配置され、コーティング物質を糸の別の所定の位置に分配するように構成される425。
【0092】
上記のステップ415、425は、試験されるすべてのノズルがコーティング物質を糸に分配するまで繰り返される。同時に、以下のステップを実行する。
【0093】
光検出システム60は、制御ユニット190とともに、糸20に提供されたパターン、すなわちコーティング物質を検出するように構成されている435。制御ユニット190は、データを評価し、それを所定のパターンと比較する。測定データが所定のパターンと一致しない場合、システムは、ノズルの少なくとも1つが正しく機能していないことを検出する。次に、制御ユニット190は、どのノズルが機能していないか、または適切に機能していないかを決定するように構成される。
【0094】
このパターンは、ユーザが要求した順序で発生することも、あるいはシステムによって自動的に発生することもあるが、刺繍の見えない部分の動作中に使用することもできる。
【0095】
制御ユニット190は、ノズルが適切に機能していないと判断された場合、そのノズルまたはプリントヘッドに対して洗浄シーケンスを開始するように構成され得る。洗浄シーケンスが完了すると、ステップ415~445が再び実行される。このようにして、ノズルが現在正常に機能しているかどうか、あるいはさらに保守手順が必要かどうかを決定することができる。
【0096】
決定された場合、洗浄シーケンスが完了し、評価ステップ415~445が実行された後、コントローラ190は、この特定のノズルを非作動ノズルとしてマークするように構成される。処理ユニット100は、非作動としてマークされたノズルを無視し、したがって、非作動ノズルは、糸20のインライン処理の品質に影響を及ぼさない。
【0097】
一実施形態では、光検出システム60から受信したデータは、追加または代替として、コーティングされた糸20の逸脱した特性を検出するために使用される。制御ユニット190は、少なくとも1つの糸20に分配された1つまたは複数のコーティング物質の少なくとも1つの特性を決定するように構成される。これは、光検出システム60から受信したデータに基づいて決定される。制御ユニット190は、前記少なくとも1つの決定された特性を少なくとも1つの所定の特性と比較するように、さらに構成され得る。前記少なくとも1つの決定された特性と少なくとも1つの所定の特性が許容限界内で一致しない場合、制御ユニット190は、警報信号を生成するように構成され得る。警報信号は、例えば、ディスプレイ195に表示され得、および/または可聴警報、および/または、例えば、光などを照らすことによる視覚警報であり得る。追加または代替として、決定された特性と所定の特性とが許容限界内で一致しない場合、制御ユニット190は、システム10の異なる構成要素の位置を調整するように構成され得る。システム10の異なる構成要素(例えば、糸、ノズルなど)の位置を調整することによって、および/または分配パターンを制御することによって、システム10は、糸の長さが変更される可能性(縮んでいる、または延びている)を考慮することができる。
【0098】
糸に分配される物質の特性は、例えば、色であり得る。したがって、制御ユニット190は、糸に分配された着色物質の色を決定するように構成され得る。好ましい実施形態では、制御ユニット190は、少なくとも1つの糸20の特定のセクションに分配された着色物質の色を決定するように構成される。制御ユニット190は、決定された色を、糸に適用される色が所定の許容限界内にあるかどうかを決定するために、決定された色を所定の配色と比較するように、さらに構成され得る。制御ユニット190が、色が許容限界に近いことを検出した場合、制御ユニット190は、色の誤差が低減または排除されるように、排出デバイス150の動作を適合させるように構成される。言い換えれば、制御ユニット190は、正しい色が糸の正しい部分に適用されているかどうかを決定するように構成され、適用されていなければ、システム10の動作を変更する。
【0099】
本発明は、主に、1つの処理ユニット100および1つの糸消費デバイス15を備えるシステムを参照して説明されてきたが、本発明の特徴は他のシステムにも適用できることを当業者は理解すべきである。
図8a~bは、そのような代替システムの2つの例を示している。
【0100】
図8aでは、システム10は、第一および第二の処理ユニット100a、100bと、第一および第二の糸消費デバイス15a~bとを備える。各処理ユニット100a、100bは、各糸消費デバイス15a~b上で動作を制御し、実行している。第一および第二の処理ユニット100aは、分離されていても、1つまたは複数の構成要素を共有し得ることに留意されたい。一実施形態では、制御ユニット190は、第一および第二の処理ユニット100a、100bとは別個のユニットとして配置され、したがって、1つの制御ユニット190は、両方の処理ユニット100a、100bの動作と、対応して両方の糸消費デバイス15a~bの動作を制御するように構成される。
【0101】
図8bでは、システム10は、1つの処理ユニット100aと、第一および第二の糸消費デバイス15a~bとを備える。この実施形態では、1つの処理ユニット100aは、2つの糸消費デバイス15a~bの動作を制御して、実行するように構成される。
【0102】
図8aには2つの処理ユニットおよび2つの糸消費デバイスのみが示され、
図8bには1つの処理ユニットおよび2つの糸消費デバイスのみが示されているが、任意の合理的な数の処理ユニットおよび/または糸消費デバイスがシステム10に存在し得ることについて理解されるべきであることに留意されたい。
【0103】
本発明は、特定の実施形態を参照して上で説明されてきたが、本明細書に記載の特定の形態に限定されることを意図するものではない。むしろ、本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限される。
【0104】
特許請求の範囲において、用語「備える/備えている」は、他の要素またはステップの存在を除外しない。さらに、個々の特徴が異なる請求項に含まれることもあるが、これらは、おそらく有利なように組み合わされてよく、また異なる請求項へに含めることは、特徴の組合せが実現可能でないこと、および/または有利でないことを意味するものではない。さらに、単一の参照は、複数を除外しない。用語「1つの(a、an)」、「第一の」、「第二の」などは、複数を排除しない。特許請求の範囲における参照符号は、単に明確にする例として設けられ、いかなる形であれ、特許請求の範囲を制限するものとして解釈されてはならない。