(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】特に固体レーザを用いたスパッタフリー溶接のための方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/21 20140101AFI20240104BHJP
B23K 26/073 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
B23K26/21 A
B23K26/073
(21)【出願番号】P 2021525677
(86)(22)【出願日】2019-11-11
(86)【国際出願番号】 EP2019080878
(87)【国際公開番号】W WO2020099326
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-10-19
(31)【優先権主張番号】102018219280.4
(32)【優先日】2018-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506065105
【氏名又は名称】トルンプフ レーザー- ウント ジュステームテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Laser- und Systemtechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Johann-Maus-Strasse 2, D-71254 Ditzingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ハウク
(72)【発明者】
【氏名】ニコライ シュペーカー
(72)【発明者】
【氏名】マルコ オプティツ
(72)【発明者】
【氏名】ティム ヘッセ
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-219590(JP,A)
【文献】特開2009-178768(JP,A)
【文献】国際公開第2012/132024(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/21
B23K 26/073
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピース(3)をレーザビーム溶接するための方法であって、
前記ワークピース(3)上に、少なくとも、第1のレーザビーム(1)を用いて第1のビーム面(4)が生成され、第2のレーザビーム(2)を用いて第2のビーム面(5)が生成され、前記第1のビーム面(4)及び前記第2のビーム面(5)は、前記ワークピース(3)に対して進行方向(VR)に沿って案内され、
前記第1のビーム面(4)及び前記第2のビーム面(5)の面重心(4a,5a)は一致せず、前記第1のビーム面(4)は、前記第2のビーム面(5)に先行し、
前記進行方向(VR)を横切って測定された前記第1のビーム面(4)の縦方向延在長さLE
1は、前記第2のビーム面(5)の縦方向延在長さLE
2以上である、
方法において、
前記第1のビーム面(4)の面積は、前記第2のビーム面(5)の面積よりも大きく、
前記進行方向(VR)に沿って測定された前記第1のビーム面(4)の横方向延在長さBE
1は、前記第2のビーム面(5)の横方向延在長さBE
2以上であり、
前記第1のレーザビーム(1)のレーザ出力は、前記第2のレーザビーム(2)のレーザ出力よりも大きく、
前記第2のレーザビーム(2)は、前記第1のレーザビーム(1)によって生成された溶融池(7)に照射され、
少なくとも前記進行方向(VR)を横切る方向の前記第2のレーザビーム(2)の焦点径FD
2について、以下の関係式
FD
2≧d
Min
が適用され、ここで、
【数1】
k
d,Min:3乃至30mm
2/sの間の材料固有の定数、
s:溶接すべきワークピース厚さ、
v:レーザビーム溶接の進行速度、
であ
り、
前記ワークピース(3)が軟鋼又はステンレス鋼からなる場合、定数k
d,Min
は、軟鋼については、8乃至20mm
2
/sの間であり、ステンレス鋼については、5乃至20mm
2
/sの間である、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1のレーザビーム(1)及び前記第2のレーザビーム(2)は、1つ又は複数の固体レーザを用いて生成される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のレーザビーム(2)の焦点径FD
2は、前記第1のレーザビーム(1)の焦点径FD
1よりも小さく、前記第2のレーザビーム(2)の出力密度は、前記第1のレーザビーム(1)の出力密度よりも大きい、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のビーム面(4)の縦方向延在長さLE
1について、以下の関係式
LE
1≧b
Min
が適用され、ここで、
b
Min=2*d
Min
である、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記進行方向(VR)に沿った前記第1のビーム面(4)及び前記第2のビーム面(5)の前記面重心(4a,5a)間の距離aについて、以下の関係式
a≧a
Min
が適用され、ここで、
a
Min=2*d
Min
である、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ワークピース厚さ(s)の異なる複数のワークピース(3)が、レーザビーム溶接にかけられ、前記進行方向(VR)に沿った前記第1のビーム面(4)及び前記第2のビーム面(5)の前記面重心(4a,5a)間の距離aは、より大きいワークピース厚さ(s)を有するワークピース(3)のためにより大きく選択される、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のビーム面(4)及び前記第2のビーム面(5)は、重なり合っている、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のビーム面(4)及び前記第2のビーム面(5)は、互いに分離されている、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のビーム面(4)は、前記進行方向(VR)を横切る方向に並んで互いに分離された少なくとも2つの部分ビーム面(31,32)を含み、特に、前記部分ビーム面(31,32)は、円形に形成されている、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のビーム面(4)は、前記進行方向(VR)に並んで互いに分離された少なくとも2つの部分ビーム面(71,72,73)を含み、特に、前記部分ビーム面(71,72,73)は、矩形又は輪形セグメント形状に形成されている、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のビーム面(4)の前記進行方向(VR)において最前部の部分ビーム面(71)及び前記第2のビーム面(5)の面重心(71a,5a)の間の距離a’について、以下の関係式
a’≧a
Min
が適用され、ここで、
a
Min=2*d
Min
である、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
異なるワークピース厚さ(s)の複数のワークピース(3)がレーザビーム溶接にかけられ、前記進行方向(VR)に並んだ前記部分ビーム面(71,72,73)の数NVは、ワークピース厚さ(s)の増加に伴って多くなるように選択される、
請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記進行方向(VR)に並んだ前記部分ビーム面(71,72,73)は、前記進行方向(VR)を横切って測定された、前記第2のビーム面(5)に向かって減少すべき縦方向延在長さを有する、
請求項10乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記レーザビーム溶接は、貫通溶接として操作される、
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ワークピース(3)がステンレス鋼からなる場合、定数k
d,Minは、ステンレス鋼については、10mm
2/sである、
請求項1乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークピースをレーザビーム溶接するための方法であって、ワークピース上に、少なくとも、第1のレーザビームを用いて第1のビーム面が生成され、第2のレーザビームを用いて第2のビーム面が生成され、これらのビーム面は、ワークピースに対して進行方向に沿って案内され、第1のビーム面及び第2のビーム面の面重心は一致せず、第1のビーム面は、第2のビーム面に先行し、進行方向を横切って測定された第1のビーム面の縦方向延在長さLE1は、第2のビーム面の縦方向延在長さLE2以上である、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような方法は、独国特許出願公開第102015112537号明細書から公知である。
【0003】
レーザビーム溶接は、構成部品を、高速な溶接速度により、かつ、狭くて細い溶接シーム形状により、かつ、微少な熱歪みにより溶接すべき場合に、使用される。レーザビームによれば、接合すべきワークピース部品間の継ぎ目領域に液状の溶融池が生じる。この溶融池が固化した後、これらの部品は、互いに堅固に結合される。レーザビーム溶接の周知のレーザタイプは、特に、CO2レーザ、固体レーザ及びダイオードレーザである。
【0004】
金属のレーザビーム溶接は、典型的には、深溶け込み溶接として行われる。レーザビーム深溶け込み溶接においては、レーザビームとワークピースとの間の相対運動により、液状の溶融池を介して蒸気毛管(キーホール)が移動する。この場合、進行速度が過度に速いと、溶融スパッタが多く放出され、ノッチの形成によって溶接シームの品質も低下する。基本的には、吸収エネルギーの増加に伴い、溶融流の動特性が増加し、臨界値に達したときには、上述した悪影響が発生する。これは、シームの質量の損失、及び/又は、顕著で周期的な溶融流特性を引き起こす。
【0005】
高輝度で焦点径が小さい固体レーザのレーザビームを使用すると、CO2レーザよりも高い出力密度に基づいて、低スパッタ溶接シーム品質のための限界は、より低速側の進行速度にシフトする。溶融流速度及び溶融池動特性(乱流)は増加し、このことは、溶接シーム欠陥につながる可能性を増加させる。
【0006】
例えば、ワークピースの全厚にわたって延在する溶接シームが生成される突合せ継手などの貫通溶接プロセスには、通常、CO2レーザが使用される。ただし、エネルギーコストの節約を達成するためには、CO2レーザを固体レーザに置き換えることが望ましい場合がある。
【0007】
重ね継手溶接については、より大きい焦点径の第1のレーザビームと、より小さい焦点径の第2のレーザビームとを同軸に重ね合わせることにより、溶融池から上方に放出されるスパッタの形成を大幅に低減することが可能であることが示され、これについては、独国特許出願公開第102016222357号明細書又は国際公開第2018/011456号が参照される。
【0008】
しかしながら、深溶け込み溶接又は貫通溶接について、この方法を使用する試みにおいては、本発明者らは、第2のビーム(コアビーム)の小さい直径は、シーム下面でのスパッタにつながり、そのため、この方法は、シーム上面及びシーム下面の高品質な貫通溶接には適していないことを観察した。
【0009】
溶融池動特性に作用するために、従来技術においては、種々のさらなる方法が提案されてきた。
【0010】
独国特許出願公開第10261422号明細書からは、レーザビームが別個に集束可能な少なくとも2つの部分ビームに分割され、部分レーザビームの強度及び入射箇所の分割を、可変の光学アレイによって設定することができるレーザ溶接及びはんだ付け方法が公知である。
【0011】
欧州特許第1007267号明細書、特開2004-358521号公報及び特開2004-154813号公報からは、種々のレーザビーム又はレーザビームの部分ビームがワークピース上でそれらの焦点がワークピース内部でビーム伝搬方向において互いにずらされて配置されるように収束される、レーザ溶接方法が公知である。ここでは、レーザビーム又は部分ビームのビーム軸線は、互いにずらすことができ、即ち、互いに非同心的に配置されるものとし得る。
【0012】
独国特許出願公開第102015207279号明細書からは、直径の異なる複数の平行に相隣接するファイバコアを備えたマルチコアファイバが、レーザビームのための搬送ファイバとして使用され、それによって、ワークピース表面に、より大きい焦点面(一次ポット)に先行する2つのより小さい焦点面(二次スポット)が、より小さいレーザ出力で形成される、レーザ溶接方法が公知である。
【0013】
独国特許出願公開第102015112537号明細書からは、ワークピース上に円形又は矩形の一次スポットと、横切るように先行する線状焦点又は比較的狭幅な2つの二次スポットとが形成されているレーザ溶接方法が公知である。一次スポット及び二次スポットへのレーザ出力の分割は、ビーム成形光学モジュールのシフト動作によって設定可能である。
【0014】
隣接して配置された複数の円形の二次スポットから構成され得る先行する線状焦点は、独国特許出願公開第102016218938号明細書からも公知である。
【0015】
米国特許出願公開第2017/0368638号明細書及び米国特許出願公開第2018/0217408号明細書からは、先行する弧状スポットが公知である。
【0016】
国際公開第2018/099851号及び独国特許出願公開第102016105214号明細書からは、回折又は屈折光学素子を用いて溶接又ははんだ付けするための一次スポットと2つの二次スポットとを生成することが公知である。国際公開第2018/054850号からは、スキャナ光学系を用いて焦点面に所望のエネルギー分布を生成するためにビーム成形を行うことが公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】独国特許出願公開第102015112537号明細書
【文献】独国特許出願公開第102016222357号明細書
【文献】国際公開第2018/011456号
【文献】独国特許出願公開第10261422号明細書
【文献】欧州特許第1007267号明細書
【文献】特開2004-358521号公報
【文献】特開2004-154813号公報
【文献】独国特許出願公開第102015207279号明細書
【文献】独国特許出願公開第102016218938号明細書
【文献】米国特許出願公開第2017/0368638号明細書
【文献】米国特許出願公開第2018/0217408号明細書
【文献】国際公開第2018/099851号
【文献】独国特許出願公開第102016105214号明細書
【文献】国際公開第2018/054850号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
発明の課題
本発明の課題は、ワークピースの全厚にわたって良好なシーム品質でワークピースを高速な進行速度で溶接することができる溶接方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
発明の概要
この課題は、本発明により、冒頭で述べたタイプの方法によって解決され、この方法は、第1のビーム面の面積が、第2のビーム面の面積よりも大きく、進行方向に沿って測定された第1のビーム面の横方向延在長さBE1は、第2のビーム面の横方向延在長さBE2以上であり、第1のレーザビームのレーザ出力は、第2のレーザビームのレーザ出力よりも大きく、第2のレーザビームは、第1のレーザビームによって生成された溶融池に照射されることを特徴としている。
【0020】
第1のレーザビーム及び第2のレーザビームは、ここでは、相互に依存することなく生成することができ、又は、共通の元のレーザビームを分割することによって生成することもできる(元のレーザビームの部分ビームへの分割)。
【0021】
本発明は、ワークピース上に、先行するより大きい第1のビーム面(先行スポット)及び後続するより小さい第2のビーム面(後続スポット)を生成し、それらの中心(面重心)は一致せず、ここで、先行するスポットの(進行方向を横切る)縦方向長さと、(進行方向に沿った)横方向長さとが、少なくとも後続スポットの直径又は対応する寸法と同等の大きさであり、ここで、先行するレーザビームのレーザ出力は、後続するレーザビームのレーザ出力よりも大きいことを提案する。
【0022】
本発明者らは、速い進行速度と同時にシーム上面及びシーム下面の良好な品質のためには、先行するスポットが十分に大きい直径又は十分に大きい面積の溶融池の形成を(進行方向に沿って及び進行方向を横切って)開始する必要があることを認識した。その他に、先行するビームは、ワークピース表面において関連する溶融膜を生成するために十分に大きいレーザ出力を備える必要がある。そのように形成された溶融池には第2のビームが集束される。
【0023】
本発明の枠内においては、ワークピース内への又は溶接すべきワークピース部品内へのエネルギー入射を少量に保持することができ、微少な溶融池動特性を達成することができる。特に、シーム下面におけるスパッタ形成を最小限に抑制することができる。
【0024】
本発明に係る方法は、このようにして、深溶け込み溶接又は貫通溶接として動作させることができ、即ち、ワークピースは、溶接プロセス中にワークピース下面まで溶融される。この方法は、深溶け込み溶接において行われ、即ち、溶融池において蒸気毛管(キーホール)が生成される。好適には、レーザビームは、ワークピース下面において、ワークピースから出射されるのではなく、むしろ、蒸気毛管(キーホール)は、ワークピース下面において閉じられたままである。
【0025】
ワークピースに対してレーザビームを案内する場合、レーザビーム及び/又はワークピースを移動させることができる。
【0026】
第1のビーム面は、典型的には矩形若しくは輪形セグメント形状に形成されている又は典型的には矩形若しくは輪形セグメント形状に形成されている複数の部分ビーム面から構成されている。第1のビーム面が、別個の部分ビーム面から構成されている場合、本発明による第1のビーム面の条件は、部分ビーム面全体(合計)に適用される。第2のビーム面は、典型的には円形若しくは正方形に形成されている。第1のビーム面及び第2のビーム面は、典型的には両方とも、進行方向を含む平面に対して鏡面対称に配置されている。
【0027】
第1のビーム面の面重心が、進行方向に関して第2のビーム面の面重心の前にある場合、第1のビーム面は、第2のビーム面よりも先行しているものとみなされ、これらの2つのビーム面は、本発明の枠内においては、完全に又は部分的に重なり合うように配置されるものとしてもよいし、又は、好適には互いに分離するように(重なり合わないように)配置されるものとしてもよい。
【0028】
好適には、第1のレーザビームのビーム発散と第2のレーザビームのビーム発散とは同等であり、又は、第2のレーザビームのビーム発散が第1のレーザビームのビーム発散よりも小さい。このことは、第2のビームのエネルギーが蒸気毛管の下部ゾーン内において初めて吸収されることをもたらしている。
【0029】
好適には、ビーム面の縦方向延在長さについて、関係式LE1≧1.5*LE2、特に好適にはLE1≧2*LE2が適用され、さらに、ビーム面の横方向延在長さについて、好適には関係式BE1≧1.5*BE2が適用される。好適には、第1のレーザビームのレーザ出力LL1(場合によっては、すべての部分ビーム面にわたって合計される)及び第2のレーザビームのレーザ出力LL2についても、さらに関係式LL1≧1.2*LL2、特に好適にはLE1≧1.5*LL2が適用される。好適には、第1のビーム面の(場合によっては合計された)面積FI1及び第2のビーム面の面積FI2についても、関係式FI1≧2*FI2、特に好適にはFI1≧3*FI2、極めて好適にはFI1≧5*FI2が適用される。
【0030】
本発明に係る方法は、特に、溶接すべきワークピース部品の突合せ継手を備えたワークピースの製造のために使用することができる。特に、チューブ、成形物及びテーラード溶接ブランクは、再加工処理なしで製造することができる。特に0.5mm乃至3mmの間の厚さを有するワークピースについて、非常に良好なシーム品質が得られている。
【0031】
本発明に係る方法の好適な変形形態
本発明に係る方法の好適な変形形態においては、レーザビームが1つ又は複数の固体レーザを用いて生成されることが想定されている。固体レーザは、比較的高い輝度と小さい焦点径とを有するレーザビームの生成が可能であり、これにより、通常は、シーム上面及びシーム下面におけるスパッタ形成の傾向が高まり、一般的に溶接シーム欠陥の頻度が増加する。本発明に係る方法の枠内においては、固体レーザが使用される場合でさえ、貫通溶接における高速な進行速度で、良好なシーム品質に活用することができる。
【0032】
第2のレーザビームの焦点径FD2が第1のレーザビームの焦点径FD1よりも小さく、第2のレーザビームの出力密度が第1のレーザビームの出力密度よりも大きい変形形態も好適である。この出力密度分布は、シーム品質について有利であることが証明されている。第2のレーザビームの領域においては、蒸気毛管がワークピース内へより深く浸透し、ワークピース材料の溶融がワークピース下面まで作用する可能性がある。一般に、第1及び第2のレーザビームは、典型的にはワークピース表面に集束されるが、例えば、ワークピース表面下方の集束位置を選択することも可能である。
【0033】
少なくとも進行方向を横切る方向の第2のレーザビームの焦点径FD
2について、以下の関係式
FD
2≧d
Min、
が適用される変形形態は、特に好適であり、ここで、
【数1】
k
d,Min:3乃至30mm
2/sの間の材料固有の定数、
s:溶接すべきワークピース厚さ、
v:レーザビーム溶接の進行速度、
である。この条件が順守される場合、シーム下面におけるスパッタ傾向が特に微少になる。ワークピースが厚いほど、(少なくとも)選択すべき第2のレーザビームの焦点径FD
2は大きくなる。進行速度vが速いほど、選択可能な焦点径FD
2は小さくなる。軟鋼については、k
d,Minは、8乃至20mm
2/sの間であり、ステンレス鋼については、5乃至20mm
2/sの間である。第2のレーザビームの焦点が円形である場合、上記条件が一般的に適用され、レーザビームが異なる方向において異なる直径を有すべき場合には、FD
2についての上記条件は、進行方向を横切る第2のレーザビームの直径に適用される。進行方向においては、直径d
Minを下回ることができる。
【0034】
この変形形態の好適なさらなる発展形態においては、第1のビーム面の縦方向延在長さLE1について、以下の関係式
LE1≧bMin
が適用され、ここで、
bMin=2*dMin
である。これにより、シーム品質のさらなる向上を達成することができる。ワークピースが厚いほど、(少なくとも)選択すべき縦方向延在長さLE1は長くなる。進行速度vが速いほど、選択可能な縦方向延在長さLE1は短くなる。第1のビーム面が別個の部分ビーム面を含む場合、縦方向延在長さLE1は、進行方向を横切る方向において互いに最も離れたところにある部分ビーム面の縁部間において決定される。
【0035】
同様に、進行方向に沿った第1のビーム面及び第2のビーム面の面重心間の距離aについて、以下の関係式
a≧aMin
が適用される、上記変形形態のさらなる発展形態も好適であり、ここで、
aMin=2*dMin
である。これによっても、シーム品質のさらなる向上を達成することができる。ワークピースが厚いほど、(少なくとも)選択すべき距離aは長くなる。進行速度vが速いほど、選択可能な距離aは短くなる。第1のビーム面が別個の部分ビーム面を含む場合、第1のビーム面の面重心は、部分ビーム面の全体について決定される。
【0036】
ワークピース厚さが異なる複数のワークピースがレーザビーム溶接にかけられ、ワークピースのワークピース厚さが厚いほど、進行方向に沿った第1のビーム面及び第2のビーム面の面重心間の選択される距離aが長くなることを想定した変形形態も好適である。この手順により、異なるワークピース又はそれらのワークピース厚さへの適合化を行うことができ、これによって、最適化されたシーム品質と進行速度とを達成することができる。
【0037】
本方法の一変形形態においては、第1のビーム面及び第2のビーム面は、重なり合っている。
【0038】
代替的な変形形態においては、第1のビーム面及び第2のビーム面は、互いに分離されている。第1のレーザビームと第2のレーザビームとの間の空間的な距離により、第1のレーザビームの作用から第2のレーザビームの作用までの熱伝導及び溶融プロセスをワークピース内において進めることができ、これにより、ワークピース内の条件を第2のレーザビームの作用のために最適化することができる。さらに、特に、2つのレーザの出力密度がどこにも加算されず、ひいては局所的な出力密度ピークが低減されるため、多くの場合、より低い溶融池動特性が達成される。
【0039】
第1のビーム面が、進行方向を横切る方向に並んで互いに分離された少なくとも2つの部分ビーム面を含み、ここで、特にこれらの部分ビーム面は円形に形成されている変形形態は特に好適である。進行方向を横切るように延在する第1のビーム面の生成は、例えば個々のレーザビームからなるアレイ発生器を用いて並んだ部分ビーム面を介せば特に簡単である。進行方向を横切るように並んだ部分ビーム面は、好適には、第2のビーム面に対して対称に配置される。
【0040】
第1のビーム面は、進行方向に並んで互いに分離された少なくとも2つの部分ビーム面を含み、特に、これらの部分ビーム面が矩形又は輪形セグメント形状に形成されている変形形態は、好適である。進行方向に並んだ部分ビーム面を使用することにより、特にワークピース厚さを考慮して、エネルギー入力と溶融池形成とを第2のレーザビーム前に所期のように設定することができる。典型的には、第1のビーム面の進行方向に並んだすべての部分ビーム面は、進行方向に関して第2の部分ビーム面の前に配置されている。
【0041】
進行方向を横切る少なくとも1つの方向の第2のビーム面の焦点径FD2について、関係式FD2≧dMinが適用される当該変形形態の、さらに第1のビーム面の進行方向において最前部の部分ビーム面及び第2のビーム面の面重心間の距離a’について、以下の関係式
a’≧aMin
が適用されるさらなる発展形態は好適であり、ここで、
aMin=2*dMin
である。これにより、特に良好なシーム品質を再び達成することができる。ワークピースが厚いほど、(少なくとも)選択すべき距離a’は長くなる。進行速度vが速いほど、選択可能な距離a’は短くなる。
【0042】
さらに、異なるワークピース厚さの複数のワークピースがレーザビーム溶接にかけられ、進行方向に並んだ部分ビーム面の数NVは、ワークピース厚さの増加に伴って多くなるように選択されることを想定した、上記変形形態のさらなる発展形態も好適である。この手順により、異なるワークピース又はそれらのワークピース厚さへの適合化を行うことができ、これによって、最適化されたシーム品質と進行速度とを達成することができる。
【0043】
好適な変化形態においては、レーザビーム溶接は、貫通溶接として操作される。ワークピースは、溶接プロセス中にワークピース下面まで溶融される。好適には、レーザビームは、ワークピース下面において、ワークピースから出射されるのではなく、むしろ、蒸気毛管(キーホール)は、ワークピース下面において閉じられたままである。本発明の枠内においては、ワークピース下面におけるスパッタ形成を最小限に抑制することができ、高いシーム品質を達成することができる。
【0044】
本発明のさらなる利点は、説明及び図面から明らかになる。同様に、上記において言及した特徴及び以下においてさらに説明する特徴は、本発明に従って、それぞれ個別にそれ自体で使用することができ、または、複数の任意の組合せにより使用することができる。図示され、説明される実施形態は、網羅的なリストとして理解されるべきではなく、むしろ、本発明の説明のための例示的な特徴を備えるものである。
【0045】
発明及び図面の詳細な説明
本発明は、図面に概略的に示され、実施例を用いてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】本発明に係る溶接方法の変形形態に対する溶接シームに沿ったワークピースの断面図を示す。
【
図2】先行する矩形スポットと、後続する円形スポットとを有する変形形態における、本発明に係る方法の第1のビーム面及び第2のビーム面(ビームパターン)の概略的平面図を示す。
【
図3】先行するスポットを含む2つの円形部分スポットと、後続する円形スポットとを有する変形形態における、本発明に係る方法の第1のビーム面及び第2のビーム面の概略的平面図を示す。
【
図4】大きい円形の第1のビーム面及び第1のビーム面の内部にある小さい円形の第2のビーム面を有する変形形態における、本発明に係る方法の第1のビーム面及び第2のビーム面の概略的平面図を示す。
【
図5】大きい円形の第1のビーム面及び第1のビーム面とは別個にある小さい円形の第2のビーム面を有する変形形態における、本発明に係る方法の第1のビーム面及び第2のビーム面の概略的平面図を示す。
【
図6】輪形セグメント形状の第1のビーム面及び円形の第2のビーム面を有する変形形態における、本発明に係る方法の第1のビーム面及び第2のビーム面の概略的平面図を示す。
【
図7】第1のビーム面の複数の矩形の部分ビーム面及び円形の第2のビーム面を有する変形形態における、本発明に係る方法の第1のビーム面及び第2のビーム面の概略的平面図を示す。
【
図8】第1のビーム面の複数の輪形セグメント形状の部分ビーム面及び円形の第2のビーム面を有する変形形態における、本発明に係る方法の第1のビーム面及び第2のビーム面の概略的平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1は、本発明に係る溶接方法中に溶接すべきワークピース3をレーザビーム1,2の進行方向VRに沿った断面図において示している。このワークピース3は、2つのワークピース部品からなり、そのうちの第1のワークピース部品は、図平面の上方にあり、第2のワークピース部品は、図平面の下方にある。
図1の図平面には、突合せ継手で相互に溶接されるワークピース部品の接触面がある。ワークピース3は、ワークピース厚さsを有する。
【0048】
第1のレーザビーム1は、ワークピース3の上面6に第1のビーム面4を生成し、第2のレーザビーム2は、ワークピース3の上面に第2のビーム面5を生成する。図示の変形形態においては、2つのビーム面4,5は、(
図1の投影では)上面6において互いに真っ直ぐに隣接し、レーザビーム1,2は、ワークピース3の上面6に対して垂直に延在するビーム軸線を有する。
【0049】
2つのレーザビーム1,2は、ワークピース3内に拡張する溶融池7を生成し、この溶融池7の内部に蒸気毛管(キーホール)8を生成する。図示の変形形態においては、「結合された」蒸気毛管8が存在し、この蒸気毛管8は、第1のレーザビーム1の領域にも、第2のレーザビーム2の領域にも延在し、さらにまた、それらをわずかに超えて延在している。即ち、レーザビーム1,2の各々の出力密度は、ワークピース材料を局所的に蒸発させるのに十分である。ただし、蒸気毛管8は、第2のレーザビーム2の領域においてワークピース3内部へより深く浸透している。
【0050】
溶融池7は、ここでは、ワークピース3の下面9まで達し、即ち、ワークピース3は、下面9まで、当該下面9も含めて溶融される(「貫通溶接」)。蒸気毛管8は、図示の変形形態においては、下方に向けて溶融池7又は溶融されたワークピース材料によって完全に取り囲まれている。即ち、蒸気毛管8は、下方に向けて開口しておらず、レーザビーム1,2は、ワークピース3の下面9から出射しない。
【0051】
溶融池7は、レーザビーム1,2の先行側よりもレーザビーム1,2の後続側(即ち、進行方向VRに関してレーザビーム1,2の後ろ側、
図1ではレーザビーム1、2の右側)において、著しく幅広に拡張している。この溶融池7は、溶融池7の後ろ側で再び固化し、それによって、溶接シーム10が形成される。
【0052】
図示の変形形態においては、レーザビーム1,2は、ワークピース3の上面6のやや下方に集束されており、ここでは、同等の高さに集束されている(焦点位置11,12参照)。
【0053】
本発明によれば、先行する第1のレーザビーム1の第1のビーム面4の面積は、後続する第2のレーザビーム2の第2のビーム面5の面積よりも大きい。第1のレーザビーム1の集積されたレーザ出力は、第2のレーザビーム2の集積されたレーザ出力よりも大きい。第1のレーザビーム1の焦点径FD1は、第2のレーザビーム2の焦点径FD2よりも大きいが、第1のレーザビーム1の(ほぼ焦点位置11で測定される)出力密度(即ち、単位面積当たりの出力)は、第2のレーザビーム2の(ほぼ焦点位置12で測定される)出力密度よりも小さい。
【0054】
種々の変形形態における本発明の第1のビーム面4及び第2のビーム面5の面積比及びサイズ比は、
図2乃至
図8においてより詳細に説明される。
【0055】
本発明の枠内においては、先行する第1のレーザビーム1は、拡張する溶融池7を生成し、この溶融池7には、第2のレーザビーム2が入射される。本発明による条件、特にビーム面4,5の寸法及び照射されるレーザ出力についての条件を順守することにより、ワークピース3又は溶融池7への比較的少ないエネルギー入力により貫通溶接を行い得ることが達成され、さらに、ワークピース3の上面6においても下面9においても特にスパッタ形成をより少量にして高いシーム品質が高速な進行速度で(進行方向VR参照)達成される。
【0056】
図2は、第1のビーム面4がほぼ矩形に形成され、第2のビーム面5がほぼ円板形状に形成されている変形形態において、本発明に係るレーザ溶接方法のためのワークピースの上面に第1のビーム面4及び第2のビーム面5を含むビームパターンを概略的に示している。
【0057】
それぞれ進行方向VRに対して垂直方向において測定された、第1のビーム面4の縦方向延在長さLE1は、ここでは、第2のビーム面5の縦方向延在長さLE2の約2.8倍である。それに応じて、第1のビーム面4を用いて溶融池を生成することができ、これは、進行方向VRを横切る方向において第2のビーム面5よりも顕著により幅広である。
【0058】
図示の変形形態においては、進行方向VRに沿った第1のビーム面4の横方向延在長さBE1は、第2のビーム面5の横方向延在長さBE2と同程度の大きさである。これにより、第2のレーザビームが同時に作用するワークピース材料の幅にわたって、事前に既に第1のレーザビームも同時に作用し、対応する予備熱伝播又は対応する予備溶融も既に行われることが達成される。
【0059】
第1のビーム面4の面積は、ここでは、第2のビーム面5の面積の約3倍である。
【0060】
第1のビーム面4の面重心4aは、ここでは、第2のビーム面5の面重心5aよりも距離aだけ先行し、これらのビーム面4,5は互いに分離しており、重なり合わない。
【0061】
レーザ出力P1=4500Wの第1のレーザビームと、レーザ出力P2=3000Wの第2のレーザビームとを用いて、進行速度v=12m/min及びワークピース厚さs=2mmにより、ワークピースの上面(表面)の高さに2つのレーザビームを集束させる場合、ステンレス鋼からなるワークピース3において非常に良好なシーム品質を達成することができる。
【0062】
使用するステンレス鋼についての典型的な材料定数k
d,Minが10mm
2/sで、ワークピース厚さが2mm、進行速度が12m/minの場合、以下の関係式
【数2】
に関する値は、ここでは約0.32mmとなる。本発明によれば、進行方向VRを横切る方向の第2のビーム面5の焦点径(この焦点径は、ここではLE
2に対応する)は、d
Min以上であるように選択されるべきである(ここでは、第2のビーム面5が円形であるため、第2のビーム面5の焦点径は、あらゆる方向において同等となり、特にLE
2=BE
2の関係性に着目すべきである)。提示された変形形態においては、上記の条件に一致させて、LE
2は約0.35mmである。さらに、本発明によれば、距離aを少なくとも2*d
Minに選択することが推奨される。提示された変形形態においては、この条件に一致させて、aが約0.8mmに選択された。最後に、本発明によれば、縦方向延在長さLE
1を少なくとも2*d
Minに選択することがさらに推奨される。提示された変形形態においては、この条件に一致させて、LE
1は約0.9mmに選択された。
【0063】
図3は、第1のビーム面4が2つの部分ビーム面31,32を含む、本発明の変形形態のビームパターンを概略的に示している。これらの部分ビーム面31,32は、ここでは円板形状に形成され、進行方向VRを横切るように並んで互いに離間されている。第1のビーム面4の縦方向延在長さLE
1は、部分ビーム面31,32の全体にわたって、即ち、それらの対向する外縁にわたって決定され、ここでは、第2のビーム面5の縦方向延在長さLE
2の約2.2倍である。横方向延在長さBE
1及びBE
2は、ここでも同等である。第1のビーム面4の面重心4aは、ここでは、部分ビーム面31,32の間において、第2のビーム面5の面重心5a前から距離aのところにある。第1のビーム面4の面積は、ここでは、第2のビーム面5の面積の2倍である。
【0064】
図4は、1つのビームパターンを示しており、図示の変形形態においては、第1のビーム面4は円板形状で大きく形成され、第2のビーム面5は円板形状で小さく形成され、この場合、第2のビーム面5は、完全に第1のビーム面4の内部に配置されている。第2のビーム面5の領域においては、2つのレーザビームからの(局所的な)レーザ出力がワークピースに加算される。
【0065】
進行方向VRに関して、第1のビーム面4の面重心4aは、第2のビーム面5の面重心5aよりも前に進んでいる。距離aは、ここでは、a=BE1/2-BE2/2である。図示の変形形態においては、横方向延在長さBE1は、横方向延在長さBE2の約3倍であり、同様のことは、縦方向延在長さLE1及びLE2についても当てはまる。
【0066】
図5は、第1のビーム面4が円板形状で大きく形成され、第2のビーム面5は円形で小さく形成され、この場合、第2のビーム面5は、完全に外側において(進行方向VRに関して)第1のビーム面4の後方に配置されている変形形態のビームパターンを示している。同様に、面重心4a,5a間の距離aは、ここでは、BE
1/2+BE
2/2の合計よりも大きくなっている。縦方向延在長さLE
1は、ここでは、LE
2の約2.4倍であり、同様のことは、横方向延在長さBE
1,BE
2についても当てはまる。
【0067】
図6には、第1のビーム面4が輪形セグメント形状で形成され、第2のビーム面5は円板形状である変形形態のビームパターンが示されている。図示の変形形態においては、ビーム面4,5の関連する円中心は、詳細には、第2のビーム面5の面重心5aで一致しているが、ただし、これらのビーム面4,5は互いに別個である。第1のビーム面4の面重心4aは、ここでは、ほぼビーム面4の後縁にあり、進行方向VRを横切る方向に関しては中央にある。第1のビーム面4の横方向延在長さBE
1は、ここでは、第2のビーム面5の横方向延在長さBE
2の約1.33倍である。それに対して、第1のビーム面4の縦方向延在長さLE
1は、第2のビーム面5の縦方向延在長さLE
2の約2.9倍である。面重心4a,5a間の距離aは、ここでは、第2のビーム面5の横方向延在長さBE
2の約0.9倍である。
【0068】
輪形セグメント形状の第1のビーム面4により、非常に均一な熱伝播と、第2のビーム面5の領域に向けて均一な溶融とを得ることもできる。
【0069】
図7には、第1のビーム面4が、進行方向VRに関して相前後して並んで配置された3つの別個の部分ビーム面71,72,73を含む変形形態のビームパターンが示されている。これらの部分ビーム面71~73は、それぞれほぼ矩形に形成され、この場合、進行方向VRを横切る方向において最大の部分ビーム面71が最前部に配置され、さらなる部分ビーム面72,73は、後方に向かって(進行方向VRとは逆方向に)縦方向延在長さが減少している。第1のビーム面4全体について、最前部の部分ビーム面71は、縦方向延在長さLE
1を決定する。第1のビーム面4全体の横方向延在長さBE
1は、部分ビーム面73及び71の(進行方向VRに関する)外縁間において決定される。本発明によれば、LE
1は、LE
2の約2倍であり、さらにBE
1は、BE
2の約2.4倍である。
【0070】
図示の変形形態においては、第1のレーザビームを用いて大面積にわたって比較的大きいレーザ出力をワークピース内にもたらすために、3つの部分ビーム面71,72,73すべてが同時に使用される。良好なシーム品質のためには、第1のビーム面4の最前部の部分ビーム面71の面重心71aと、第2のビーム面5の面重心5aとの間の距離a’は、少なくとも2*d
Minに選択されるべきである(d
Minの定義については、先の
図1参照)。好適には、第1のビーム面4全体の面重心4a(ここでは、第2の部分ビーム面72内にある)と、第2のビーム面5の面重心5aとの間のより短い距離aについても、この距離aが、同様に少なくとも2*d
Minになることが適用される。
【0071】
好適な実施形態においては、第1のビーム面4の同時に使用される部分ビーム面71~73の数は変更することができ、及び/又は、使用される部分ビーム面71~73の選択は、特に、ワークピースのタイプに応じてワークピースのそれぞれ溶接すべきワークピース厚さsに適合化させるために行うことができる。ワークピースが厚いほど、相応に、より長い距離a’又はaを設定するために、使用すべき部分ビーム面71~73は第2のビーム面5の前からさらに前方になる。ワークピースが厚いほど、使用すべき先行する部分ビーム面はより多くなる。
【0072】
図8は、第1のビーム面4が2つの部分ビーム面71,72を含み、これらの部分ビーム面71,72が再び進行方向VRに関して相前後して並んで配置されている変形形態のビームパターンを示している。第2のビーム面5は、円板形状に形成されている。
【0073】
これらの部分ビーム面71,72は、それぞれほぼ輪形セグメント形状に形成されており、ここで、進行方向VRを横切る方向において最大の部分ビーム面71が最も前方に配置されており、これらの部分ビーム面71,72及び第2のビーム面5の関連する円中心は、第2のビーム面5の面重心5aにおいて一致している。第1のビーム面4全体について、最前部の部分ビーム面71が縦方向延在長さLE1を決定する。第1のビーム面4全体の横方向延在長さBE1は、部分ビーム面72及び71の(進行方向VRに関する)外縁間において決定される。本発明によれば、LE1は、LE2の約4.8倍であり、さらにBE1は、BE2の約2.3倍である。
【0074】
この変形形態においては、(第1の部分ビーム面71の面重心71aと、第2のビーム面5の面重心5aとの間の)距離a’及び(第1のビーム面4全体の面重心4aと、第2のビーム面5の面重心5aとの間の)距離aは、それほど大きく異なっておらず、そのため、これによって、条件a’≧2*dMin及びa≧2*dMinを同時に順守することは容易である。この変形形態においても、第1のビーム面4の部分ビーム面71,72の数及び選択は、ワークピースのタイプに応じて、特にワークピース厚さsに応じて行うことができる。
【0075】
本発明に係る方法は、特に、異なるビーム面4,5又はスポットが、異なるレーザビームから生成される、又は、1つのレーザビームを2つ以上の部分ビームに分割することによって生成されるシステムにより、実現することができる。同様のことは、部分ビーム面についても適用される。好適な変形形態は、例えば、以下のもの、
・直径の異なる2つ以上の平行に相隣接するファイバコアを備えたダブルコアファイバ、
・コアファイバが周囲の環状ファイバに対して偏心して配置されたダブルコアファイバ、
・所望の強度特性(ビームパターン)を生成し、その際、場合によっては(例えば光軸を中心として回転する場合に)変更可能な種々の強度特性(ビームパターン)を生成することができる、レーザ加工処理ヘッド内の回折光学素子、
を使用して可能である。
【0076】
例えば、レーザ加工処理ヘッド内に配置された回転可能な光学素子によって、第1及び第2のビーム面の共通の回転、又は、第2のビーム面周りの第1のビーム面(若しくはその部分ビーム面)の回転を行うことができる。このことは、湾曲して(非線形に)延在する溶接継手へのビーム面の配列の適合化を可能にする。
【0077】
本発明に係る方法を用いれば、特に、チューブ、成形物及びテーラード溶接ブランクは、再加工処理なしで製造することができる。スパッタは、全く又はほとんど発生しないため、これによって、システムの停止状態期間が短縮される。(第1のビーム面及び第2のビーム面の面重心を進行方向において互いにずらすことによって)偏心させる取り組みは、レーザ溶接に必要なエネルギーを低減し、さらに(より高速な進行速度を介して)生産性を向上させる可能性も存在する。
【符号の説明】
【0078】
1 第1のレーザビーム
2 第2のレーザビーム
3 ワークピース
4 第1のビーム面
4a 第1のビーム面の面重心
5 第2のビーム面
5a 第2のビーム面の面重心
6 ワークピースの上面
7 溶融池
8 蒸気毛管
9 ワークピースの下面
10 溶接シーム
11 第1のレーザビームの焦点位置
12 第2のレーザビームの焦点位置
31 第1のビーム面の部分ビーム面
32 第1のビーム面の部分ビーム面
71 第1のビーム面の最前部の部分ビーム面
71a 最前部の部分ビーム面の面重心
72 第1のビーム面の部分ビーム面
73 第1のビーム面の部分ビーム面
a 第1のビーム面及び第2のビーム面の面重心間の距離
a’ 第1のビーム面の最前部の部分ビーム面及び第2のビーム面の面重心間の距離
BE1 第1のビーム面の横方向延在長さ
BE2 第2のビーム面の横方向延在長さ
FD1 第1のレーザビームの焦点径
FD2 第2のレーザビームの焦点径
LE1 第1のビーム面の縦方向延在長さ
LE2 第2のビーム面の縦方向延在長さ
VR 進行方向