(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】1つ以上の生物学的材料またはその混合物から生成物を製造する方法、該方法により製造された生成物、およびかかる生成物の使用
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20240104BHJP
A23J 3/00 20060101ALI20240104BHJP
A23L 11/00 20210101ALI20240104BHJP
A23L 11/45 20210101ALI20240104BHJP
A23C 20/02 20210101ALN20240104BHJP
A23L 7/109 20160101ALN20240104BHJP
A23L 35/00 20160101ALN20240104BHJP
【FI】
A23L5/00 A
A23J3/00 502
A23L5/00 J
A23L11/00 Z
A23L11/45 Z
A23C20/02
A23L7/109 A
A23L35/00
(21)【出願番号】P 2021547572
(86)(22)【出願日】2019-07-23
(86)【国際出願番号】 EP2019000226
(87)【国際公開番号】W WO2020164680
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-07-22
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】521358198
【氏名又は名称】ルーヤ フーズ アー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Luya Foods AG
【住所又は居所原語表記】Laenggasse 85, 3052 Zollikofen, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ デンケル
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ハイネ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ホワイト
(72)【発明者】
【氏名】カルロッタ サルトーリ
(72)【発明者】
【氏名】トビアス キストラー
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公告第01277002(GB,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0342036(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の生物学的材料またはその混合物から生成物を製造する方法であって、前記生物学的材料またはその混合物を
、固形分を調整し
た後、押出成形し、ストランド(5,6,8)の押出成形プロセスにより出発マトリックスが形成されるように配置し、前記出発マトリックスは、外側に完全または部分的に開口したチャネル、ポアまたはボイドを有し、前記チャネル、ポアまたはボイドの中またはその間で、押出成形プロセスの前、間または後に栄養的または永続的な形態で前記出発マトリックスの中または上に導入または施与される1つ以上の菌類(16
)が成長し、前記菌類は、前記出発マトリックスと架橋しかつ/または前記出発マトリックスの中へと成長し、その間に、前記出発マトリックスを発酵プロセスまたは共発酵プロセスに供し、前記菌類の架橋および/または成長が前記生成物のテクスチャーおよび/または強度を決定的に生み出しかつ/またはそれに影響を与え、前記出発マトリックスから製造された生成物を、次いで必要に応じて所定の寸法に分割し、包装し、さらなる使用目的に供給し、その際、可食性生成物において、香味および/またはテクスチャーを、前記ポア、チャネルおよび/もしくはボイド(23)の中へと成長した前記菌類(16)によって、および/または前記ポア、チャネル、ボイドおよび/もしくは前記出発材料に導入されたさらなる微生物によって、および/または前記発酵プロセスの期間および/もしくは温度推移によって、および/または前記発酵の間もしくは後の前記生成物の水分量の調節によって、および/または前記生物学的出発材料の組成によって、および/または前記出発マトリックス中のポア、チャネル、ボイドの体積割合によって、および/または前記ポア、チャネル、ボイドの配置によって、および/または前記ストランド全体と前記ポア、チャネル、ボイド全体との間の界面の量によって、および/または前記ストランドの直径によって、および/または環境とのガス交換によって、および/または前記出発材料のレオロジーを調節するプロセス技術的な前処理によって、制御し
、ダイと、前記ダイから吐出された前記出発材料が載置される支持体とは、互いに移動可能であるため、吐出された前記マトリックスストランドがランダムなばら材(18)を形成して無秩序に分布するか、または吐出された前記マトリックスストランドが互いに所定の角度で配置されて所定の分布を形成するかのいずれかである、方法。
【請求項2】
満たされていないキャビティ(開口したチャネル、ポアまたはボイド)(23)が通り、固形でかつ発酵させられており、調整可能な塊状物(出発材料と同義)をベースとして形成されている構造化物体(15)の製造方法であって、
(a)前記物体を構成し、レオロジーおよびテクスチャーを調節できる少なくとも1つの調整可能な塊状物が、配置を広範囲で自由に調節できる配向性または無配向性のメゾ構造体(出発マトリックスと同義)を形成し、前記メゾ構造体は、基材(出発マトリックスと同義)を形成するとともに、1回以上の発酵のための前記キャビティ(ポア、チャネル、ボイドと同義)、およびテクスチャー全体を決定づける基本構造(出発マトリックスと同義)をも形成し、
(b)少なくとも1つの共同的および/または重畳的な微細構造(菌類の菌糸または網目構造体と同義)を1回以上の発酵により誘発して導入することで、菌類の成長により生じる部分的または完全に連結したフィラメント状の網目構造体(16)(ミクロレベルと同義)を、前記メゾ構造体要素(5)(押出成形ストランドまたはストランド断片と同義)の中、上および間に生成し、
(c)造形体全体に占める、満たされていないボイド、チャネルまたはポア、区画の体積割合を選択し、それらの配置を選択し、かつメゾ構造体の表面積とメゾ構造体の体積との比を選択することにより、全体的な菌糸(16)の成長、前記メゾ構造体への菌糸の貫入および方向、したがってその全体において前記網目構造体を調節することができ、
(d)構造化要素全体がミクロレベルおよびメソレベルで相互に作用することで、調節可能な(i)固化、(ii)レオロジー特性、および(iii)感覚に関連したテクスチャー化が生じることを特徴とする、方法。
【請求項3】
押出成形プロセスにより同時に、および/または並行するおよび/もしくは後続の押出成形プロセスステップにおいて、物体(15)を出発マトリックスとして製造し、前記物体(15)は、上下に重なっておよび/または横に並んでおよび/または前後に並んで隣り合う複数の押出成形ストランドからなり、前記ストランドは、その互いに接する表面上で材料的または機能的に結合して一体となり、前記ストランドの間にボイド、チャネルまたはポアを形成し、前記ボイド、チャネルまたはポアの中に前記菌類(16)が配置されている、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
それぞれの前記出発材料に対して予定された期間の後に、前記菌類(16)の前記成長および/または前記代謝活性を中断および/または変更および/または制御する、あるいは中断および/または変更および/または制御されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記発酵後に前記菌類の菌糸(16)が貫入した、以前は空であった前記ポア、チャネルまたはボイド(23)に、流動性のおよび/または部分的もしくは完全に固化している材料を部分的または完全に施与し、前記固化を、さらなる生物活性生物を用いた追加の発酵により、酵素により、熱可逆性機序により、イオンにより誘導して、加熱により、または他のプロセスにより行う、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記出発マトリックスの前記出発材料を、押出成形プロセス、共押出成形プロセスまたは多重押出成形プロセスによって押出成形して、生成物ストランドおよび/または生成物ストランド断片を形成し、前記生成物ストランドをその後、連続ストランドとして保持するか、または個々の断片に崩しおよび/もしくは分割し、前記ダイまたは多孔板出口の直後の前記生成物ストランドおよび/または前記生成物ストランド断片の温度は、2~99.5[℃
]である、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記押出成形ストランドまたはストランド断片が
、圧縮ガスの膨張により、または発酵過程で
のガスの形成により、吐出して前記生成物とする前
の前記材料の発泡により、また
は化学反応により、または前記ストランドもしくはストランド断片内での水から水蒸気への膨張により生じるガス封入物により発泡している、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記発酵に使用される前記菌類/菌類胞子/糸状菌/糸状菌胞子は、リゾープス(Rhizopus)属
、および/またはアクチノムコール(Actinomocur)属
、および/またはアスペルギルス(Aspergillus)属
、および/またはペニシリウム(Penicillium)属
、および/またはゲオトリクム(Geotrichum)属
、および/または生成物のテクスチャーおよび/もしくは官能特性を変化させるのに適した他の属に由来し、微生物による発酵または共発酵に使用される微生物は、バチルス(Bacillus)属
、および/またはニューロスポラ(Neurospora)属
、および/またはラクトバチルス(Lactobacillus)属
、および/またはラクトコッカス(Lactococcus)属
、および/またはプロピオニバクテリウム(Propionibacterium)属
、および/またはザイモモナス(Zymomonas)属
、および/またはロイコノストック(Leuconostoc)属
、および/または生成物のテクスチャーおよび/もしくは官能特性を変化させるのに適した他の属に由来する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記出発マトリックスへの菌類の菌糸および/または菌類胞子および/または糸状菌の菌糸および/または糸状菌胞子の播種/接種
を行う、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記出発材料を、前記押出成形プロセスにおいて、0.4~9[mm
]の内径を有する
、ダイまたは開口部を通して押し出し、その際、前記開口部の前記直径は、並行したまたは連続した押出成形プロセスの場合には、同じまたは異なる直径を有する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記生成物が、肉の代替品として用いられる生成物である、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ以上の生物学的材料またはその混合物から生成物を製造する方法に関する。
【0002】
さらに、本発明は、本発明による方法により製造された生成物に関する。
【0003】
また、本発明は、かかる生成物の使用に関する。
【0004】
従来技術
ベジタリアンやビーガン向けの肉のような構造化生成物を押出成形法で製造することが知られている。この方法では、その組成的に同位体の材料を高温および高せん断力で処理して蒸解させ、その後、温度を下げて、外側から内側に向けられたせん断勾配と、それによって生じる押出成形体の様々な領域の相対的な変位とによって構造化させる。このような生成物は、例えば「Beyond Meat」という名称で知られている。このような押出成形法の欠点は、製造される生成物の熱負荷が高いことである。生成物の組成は、望ましい生成物構造によって定められることが多い。例えば、多くの場合、ダイズ、コムギ、またはエンドウ豆のタンパク質に、様々なハイドロコロイド混合物や香料を加えたレシピに合わせるには、最適なプロセスおよび生成物設計に向けた大規模で高コストの試験が必要となる[1]。
【0005】
これに関連して、乾燥した単離体や高濃度の濃縮物からそのような生成物を製造することが知られているが、この場合、プロセスに関連して高いエネルギー入力が必要となる。また、調理用の押出成形プロセスは、高圧、高温になるため生成物に優しくないとされており、例えばスイスではオーガニック生成物の製造には使用できない[2]。
【0006】
場合によっては、主に植物性の流体を凝集、濃縮した後に固化させるプロセスを経ただけの生成物も、肉の代替品と呼ばれる、あるいは認識される。その一例が豆腐である。その欠点は、生成物の構造化が、流体の不溶化された成分のランダムな内部組織に起因しており、その構造を等方的と表現しなければならないことである。生成物の強度は、沈殿した物質をプレスする際に調節される固形分から間接的に得られる。原則として、可溶性のタンパク質を不溶性にしたものを構造化に使用する。炭水化物、繊維、または不溶性タンパク質などの他の成分はいずれも通常は使用されないため、副産物が生じる[3]。
【0007】
肉の代替品と呼ばれるあるいは認識される生成物のさらなる一例は、タンパク質が豊富な豆類をベースとする自然発酵製品である。ダイズをベースとするテンペでは、リゾープス・オリゴスポラス(Rhizopus oligosporus)という糸状菌の菌糸の成長を利用して、播種したダイズを生成物に典型的な構造に導く。生成物の構造化は、菌類の菌糸によって相互に接続された基材要素のランダムな組織に起因する。テンペの特徴は、特にダイズの隙間で菌糸が成長することである。他の多くの生成物と比較して不利な点は、使用されるダイズが粉砕されていないか、場合によっては部分的に粉砕されているが、成分的にはむしろ完全なものであり、生成物は通常、感覚的に非常に典型的な「ダイズの香り」を有することである[4]。
【0008】
生成物の強度は主にダイズの比較的高い固形分に起因し、テクスチャーは優先的にダイズまたはその断片(「ニブ」)のテクスチャー特性に起因する。菌類が成長できるキャビティは、ダイズのランダムな組織および形状によって決まり、テンペの場合はほとんど影響を受け得ない。また、発酵には、ダイズの膨潤の段階を長くすることが必要である。文献では、おからをベースとするテンペについても言及されているが、ここでは構造化領域の構造化や組み合わせに特別な注意を払うことなく、材料全体を発酵させている[5]。
【0009】
また、通常は、柔らかくしたダイズを発酵させるためにアジアにおいて典型的に使用されるリゾープス・オリゴスポラス(Rhizopus oligosporus)という糸状菌を用いて発酵させたものと理解される生成物もテンペという名称で知られている。また、この概念よりも若干広義でとらえることも知られており、それによれば、テンペは、ダイズに加えて穀物や他の食品加工副産物を発酵させたものとも理解される。ダイズをまず清浄化し、次いで5~10分煮て、その後15~17時間膨潤させた後、皮を取り除き、洗浄し、水切りを行い、その後、リゾープス・オリゴスポラス(Rhizopus oligosporus)の接種物を加え、次いで35~37時間発酵させてテンペを完成させる方法が知られている。この生成物の製造方法に関する欠点として、まず生成物の組成に関する操作の自由度が制限されることが挙げられる。口内では生成物が締まるため、例えばミートパティのような口当たりにするためには、さらなるプロセスステップにより加工する必要がある。また、生成物がジューシーさに欠けることも欠点である。もう1つの欠点は、発酵が表面的である(菌類の菌糸はダイズの一番外側の表層にしか貫入しない)ため、基材中に存在する抗栄養物質を部分的にしか酵素分解させることができず、生成物の消化率に好影響を与えることができないことである[6]。
【0010】
課題
本発明は、第一に、様々に構成された固形分を有する1つ以上の生物学的材料から、生成物、特に、従来の生成物とは対照的に、生成物の適用分野に応じてテクスチャーや口当たりなどの官能特性に関する調整が可能な食品/医薬品/化粧品を製造する方法を創出するという課題に基づく。
【0011】
さらに、本発明は、本発明による方法により製造された生成物であって、多岐にわたって、例えば食品や化粧品の分野で、または製薬業界で、ここでは特に医薬品に使用することができる生成物を提供するという課題に基づく。
【0012】
最後に、本発明は、本発明による方法により製造された生成物を、多岐にわたって、例えば、肉の代替品として、またはスープ、カレーおよび他のソースにおける構造化要素として、またはフレッシュチーズ品の代替品として、または体内もしくは皮膚上で活性物質を吸収および放出するためのマトリックスとして使用するという課題に基づく。
【0013】
方法に関する課題解決
前述の課題は、1つ以上の生物学的材料またはその混合物から生成物を製造する方法であって、生物学的材料またはその混合物を、任意に清浄化した後、固形分を調整し、その後、任意に、例えば煮るなどの後続の熱処理および粉砕を行い、任意に、出発材料の材料特性および/または栄養生理学的特性を変化させるためのさらなる前処理を行い、押出成形し、ストランドの押出成形プロセスにより出発マトリックスが形成されるように配置し、出発マトリックスは、外側に完全または部分的に開口したチャネル、ポアまたはボイドを有し、チャネル、ポアまたはボイドの中またはその間で、押出成形プロセスの前、間または後に栄養的または永続的な形態で出発マトリックスの中または上に導入または施与される1つ以上の菌類および任意にさらなる発酵性微生物が成長し、前述の菌類は、出発マトリックスと架橋しかつ/または出発マトリックスの中へと成長し、その間に、前述の出発マトリックスを発酵プロセスまたは共発酵プロセスに供し、菌類の架橋および/または成長が生成物のテクスチャーおよび/または強度を決定的に生み出しかつ/またはそれに影響を与え、出発マトリックスから製造された生成物を、次いで必要に応じて所定の寸法に分割し、包装し、さらなる使用目的に供給し、その際、可食性生成物において、香味および/またはテクスチャーを、ポア、チャネルおよび/もしくはボイドの中へと成長した菌類によって、および/またはポア、チャネル、ボイドおよび/もしくは出発材料に導入されたさらなる微生物によって、および/または発酵プロセスの期間および/もしくは温度推移によって、および/または発酵の間もしくは後の生成物の水分量の調節によって、および/または生物学的出発材料の組成によって、および/または出発マトリックス中のポア、チャネル、ボイドの体積割合によって、および/またはポア、チャネル、ボイドの配置によって、および/またはストランド全体とポア、チャネル、ボイド全体との間の界面の量によって、および/またはストランドの直径によって、および/または環境とのガス交換によって、および/または出発材料のレオロジーを調節するプロセス技術的な前処理によって、制御し、ダイと、ダイから吐出された出発材料が載置される支持体とは、互いに移動可能であるため、吐出されたマトリックスストランドがランダムなばら材を形成して無秩序に分布するか、または吐出されたマトリックスストランドが互いに所定の角度で配置されて所定の分布を形成するかのいずれかである、方法によって解決される。
【0014】
発酵のための基材である粉砕された出発材料は、プロセスによって破壊されているため、例えばテンペの発酵の場合のダイズよりも、菌類および/または微生物がより良好に浸透することができる。貫入深さは、ストランドの太さにより制御することができる。テンペの製造では、豆や豆の断片が生成物を構成する要素であるが、新規の方法では、1つ以上のダイに通して出発材料を押出成形することでこれらの要素が生成される。また、出発マトリックスや出発材料の組成(例えば、栄養生理学的、味覚的に最適化されたもの、または消費者の希望に沿ったもの)と同様に、出発マトリックス中のポア、チャネル、およびボイドの体積と、ストランドおよび/またはストランド断片で満たされた体積との比を調整することができ、これが生成物のテクスチャーに大きく影響を与える。発酵およびストランド同士の架橋に利用できる界面を調整することで、機械的な生成物特性/テクスチャーを調整することができる。例えば上流での押出成形による前処理は、例えば弾性の増加など、出発材料の機械的および/またはレオロジー特性を変化させるのに適している。この場合、生成物の全体的なテクスチャーは、この前処理、すなわち重畳的な菌類発酵によってより強く生み出され得るが、テクスチャー特性にとっても、ならびに/または味覚的および/もしくは栄養生理学的特性にとっても、依然として菌類発酵の量が重要である。菌類の菌糸は、これに限るものではないが特にテクスチャーの調整に望ましく、微生物との共発酵によって生成物を、これに限るものではないが特に栄養生理学的および/または味覚的に改変することができる。菌類やその胞子/永続的な形態は、押出成形される出発材料に混入されるか、または押出成形プロセスの後に出発材料に施与される。さらなる微生物についても同様であり、さらなる微生物は、特に出発マトリックスの中または上で成長し、任意に、満たされていない空間に分泌生成物を分泌し、一方で菌類は、出発マトリックスの中へ、その上で、またはそこから外に向かって成長するだけでなく、出発マトリックスのストランド間で満たされていない空間を通って成長し、生成物のさらなる構造化構成要素を作り出す。この技術的アプローチは全体として、列挙した菌類のうち少なくとも1つが成長でき、チャネル、ポアおよび/またはボイドを有するマトリックスが形成されるように配置できるものであれば、原理的には、考え得るどのような出発材料にも適用できる。この方法の大きな利点はさらに、肉のような構造/テクスチャーを作り出すために最小限の実施形態で必要なものが、例えばおからなどの出発材料、および菌類や菌類胞子のみであることであり、これは、特に増粘剤や安定剤などの様々な材料から構成されていることが多い他の肉の代替品とは大きく異なる点である。
【0015】
テクスチャーおよび/またはアロマは、様々な因子の相互作用によって可変的に調節することができ、その際、同じ原理のアプローチで異なるテクスチャーおよび/または官能特性を得ることができ、または異なる出発材料を加工して同様の官能特性および/またはテクスチャー特性を有する生成物を得ることができる。
【0016】
第1の方法は、迅速かつ安価であるが、ストランドの所定の配置が可能ではないため、構造/テクスチャー特性を比較的狭い範囲で調節することができる。第2の方法は、はるかに時間がかかるが、ストランドの配列、ひいてはテクスチャーの生成に関する幅を広くすることができる。第2の方法は、ある1つの生成物において異なるテクスチャーおよび/またはアロマの知覚を空間的に分けて生じさせたい場合、つまり1つ以上の出発材料の異方的な分布が必要であるかまたは望まれる場合に、特に有利である。第1の方法は、生成物ストランド/ストランド断片のランダムな分布を目指して設計されており、非常に限られた異方性構造しか許容しない。
【0017】
共押出成形により、中央のストランド断片の周囲に、共押出成形物の胞子の少なくとも80%を含む同心円状の層を押出成形することができ、この層は、共押出成形ストランドに対して、生成物ストランドまたはストランド断片の断面積の25~70%、好ましくは40~60%を占める。とりわけ、このようなプロセスは、必要な接種材料の量を減らせるようにするために、または複数の菌類および/もしくは微生物を用いた発酵の場合には、発酵の開始時にそれらを空間的に互いに分離するのに、特に有利である。
【0018】
本発明によるさらなる実施形態
請求項2には、満たされていないキャビティ(開口したチャネル、ポアまたはボイド)が通り、固形でかつ発酵させられており、調整可能な塊状物(出発材料と同義)をベースとして形成されている構造化物体の製造方法であって、
(a)物体を構成し、レオロジーおよびテクスチャーを調節できる少なくとも1つの調整可能な塊状物が、配置を広範囲で自由に調節できる配向性または無配向性のメゾ構造体(出発マトリックスと同義)を形成し、メゾ構造体は、基材(出発マトリックスと同義)を形成するとともに、1回以上の発酵のためのキャビティ(ポア、チャネル、ボイドと同義)、およびテクスチャー全体を決定づける基本構造(出発マトリックスと同義)をも形成し、
(b)少なくとも1つの共同的および/または重畳的な微細構造(菌類の菌糸または網目構造体と同義)を1回以上の発酵により誘発して導入することで、菌類の成長により生じる部分的または完全に連結したフィラメント状の網目構造体(ミクロレベルと同義)を、メゾ構造体要素(押出成形ストランドまたはストランド断片と同義)の中、上および間に生成し、
造形体全体に占める、満たされていないボイド、チャネルまたはポア、区画の体積割合を選択し、それらの配置を選択し、かつメゾ構造体の表面積とメゾ構造体の体積との比を選択することにより、全体的な菌糸の成長、メゾ構造体への菌糸の貫入および方向、したがってその全体において網目構造体を調節することができ、
(d)構造化要素全体がミクロレベルおよびメソレベルで相互に作用することで、調節可能な(i)固化、(ii)レオロジー特性、および(iii)感覚に関連したテクスチャー化が生じる、方法が記載されている。
【0019】
請求項3によれば、本方法は、押出成形プロセスにより同時に、および/または並行するおよび/もしくは後続の押出成形プロセスステップにおいて、物体を出発マトリックスとして製造し、この物体は、上下に重なっておよび/または横に並んでおよび/または前後に並んで隣り合う複数の押出成形ストランドからなり、これらのストランドは、その互いに接する表面上で材料的または機能的に結合して一体となり、これらのストランドの間にボイド、チャネルまたはポアを形成し、これらのボイド、チャネルまたはポアの中に菌類が配置されていることを特徴とする。接触面が点状であるため、発酵のために可能な限り大きな表面積が存在し、これによりストランド間の架橋が生じ得る。さらに、ボイド、チャネルおよびポアの網目によって環境とのガス交換が可能となるため、特に菌類にも酸素が供給される。ストランドおよび/またはストランド断片の配置は、プロセス工業的な措置によって制御することができ、すなわち、例えばテクスチャーなどの生成物特性もこれにより制御することができる。ボイド、チャネルおよびポアの中で成長する菌類の菌糸は、1つまたは追加の弾性生成物成分の形成を提供し、生成物および特性に応じて、咀嚼中に生成物の塊状物において噛み切り抵抗および/または弾性成分の認識を可能にする。
【0020】
請求項4によれば、それぞれの出発材料に対して予定された期間の後に、菌類の成長および/または代謝活性を中断および/または変更および/または制御することができる。広範囲にわたるボイドにより、毛細力も利用して流体を結合させることができるため、例えばマリネ液を生成物に問題なく浸透させることができ、味の調節が迅速かつ容易に行われる。
【0021】
請求項5には、発酵後に菌類の菌糸が貫入した、以前は空であったポア、チャネルまたはボイドに、流動性のおよび/または部分的もしくは完全に固化している材料を部分的または完全に施与する方法であって、この固化を、さらなる生物活性生物を用いた追加の発酵により、酵素により、熱可逆性機序により、イオンにより誘導して、加熱により、または他のプロセスにより行う方法が記載されている。詰め物をすることで、感覚的知覚やテクスチャーを再び改変することができ、特にジューシーさが向上することも考えられ、これは例えば、肉のような生成物を製造する際に大きな利点となる。さらに、第一印象を左右するアロマの特徴が、発酵させた出発マトリックスに比べて詰め物からより容易に現れることができれば、こうした特徴をはっきりと強調することができる。さらに、発酵プロセス中に存在すると菌類の成長を変化させることのできる物質、アロマまたは材料を生成物に加えることもできる。一方で、間接的に発酵へと導くこともできる。
【0022】
押出成形ストランドは、塊状物中に含まれる粒子または構造体の直径/等価直径に対するダイ直径の比が、1.5未満、好ましくは2未満、特に5未満、さらに好ましくは10未満であり得る。押出成形プロセスでは、ダイが閉塞しないことを保証することが望ましい。粒子または構造体の材料ならびにレオロジー特性および形状特性に応じて、前述の下限臨界比は異なる。
【0023】
出発マトリックスの出発材料は、押出成形プロセス、共押出成形プロセスまたは多重押出成形プロセスによって押出成形されて、生成物ストランドおよび/または生成物ストランド断片が形成され、生成物ストランドはその後、連続ストランドとして保持されるか、または個々の断片に崩されおよび/もしくは分割され、ダイまたは多孔板出口の直後の生成物ストランドおよび/または生成物ストランド断片の温度は、2~99.5[℃]、好ましくは5~99[℃]、より好ましくは7~80[℃]、より好ましくは10~70[℃]、より好ましくは12~60[℃]、より好ましくは12~45[℃]、最も好ましくは15~25[℃]である - 請求項6。この分割には、ランダムなばら材の場合、チャネル/ボイドと押出成形ストランドとの体積比を変化させることができ、またチャネル/ボイドの平均直径も変化させることができるという利点がある。しかし、出発材料、特に選択された固形分によっては、押出成形ストランドは、排出後の時点ですでに自然と崩壊することがあり、または所定の押出成形の際にストランドが堆積している間にレオロジー作用によってランダムになることもある。共押出成形プロセスまたは多重押出成形プロセスには、ストランドのレオロジー特性や機能性を変化させることができるという利点がある。例えば、菌類および/または微生物の成長、ひいては全体的なアロマの形成やテクスチャーの形成を制御するために、成長を促進する出発材料と成長を抑制する出発材料とを組み合わせることができる。また、官能特性に問題のある出発材料を、共押出成形ストランドの内側の材料として覆い隠すこともでき、一方で、外側の材料はより強調した作用を示す。生成物の視覚的なレイアウトについても同じことが該当する。多重押出成形の場合には、異なる出発材料を事前に混合する必要なく合して1つの生成物とすることができ、このことは、生成物のテクスチャーに有利な影響を与え得る。同様に、実際には、弾性などのレオロジー特性をプロセス工業的に調節するために、機械的なエネルギー入力を伴うかまたは伴わずに上流での加熱を行うことができる。
【0024】
請求項7には、押出成形ストランドまたはストランド断片が、例えばCO
2
、N
2
O、O
2
といった圧縮ガスの膨張により、または発酵過程での例えばCO
2
などのガスの形成により、吐出して生成物とする前の例えばCO
2
、O
2
、N
2
、空気による材料の発泡により、または例えば炭酸塩と酸との化学反応のような化学反応により、またはストランドもしくはストランド断片内での水から水蒸気への膨張により生じるガス封入物により発泡している方法が記載されている。これによって、カロリーを抑えることができ、またテクスチャーも変化し、ガスによっては内部発酵も促進され、これによって、官能特性に加えてテクスチャーも変化し得る。
【0025】
発酵中に生成された酸素は、発酵する出発マトリックスに加えられる。菌類/糸状菌の多くは成長に酸素を必要とするため、酸素を加えることで成長を促進することができる。
【0026】
出発マトリックスの生物学的材料は、熱、またはPEFや高圧などの他の処理に供され、初期菌含有量に対する総菌数が、50[%]、好ましくは90[%]、さらに好ましくは99[%]、または99.9[%]、または99.99[%]、または99.999[%]減少される。その結果、例えばオフフレーバーの発生を招く自然発酵が低減する。さらに、病原性を有する可能性のある微生物が成長するリスクも低減することができる。粉砕に備えて材料を膨潤させることで、押出成形性が向上する。
【0027】
有利なことに、請求項8によれば、発酵に使用される菌類/菌類胞子/糸状菌/糸状菌胞子は、リゾープス(Rhizopus)属、例えば、リゾープス・オリゴスポラス(Rhizopus oligosporus)、リゾープス・ストロニフェル(Rhizopus stolonifer)、リゾープス・オリゼ(Rhizopus oryzae)、リゾープス・アリズス(Rhizopus arrhizus)、および/またはアクチノムコール(Actinomocur)属、例えば、アクチノムコール・エレガンス・メイトゥザ(Actinomocur elegans spp. meitauza)、および/またはアスペルギルス(Aspergillus)属、例えば、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、および/またはペニシリウム(Penicillium)属、例えば、ペニシリウム・キャンディダム(Penicillium candidum)、ペニシリウム・カマンベルティ(Penicillium camemberti)、ペニシリウム・ロケフォルティ(Penicillium roqueforti)、ペニシリウム・グラウクム(Penicillium glaucum)、および/またはゲオトリクム(Geotrichum)属、例えば、ゲオトリクム・キャンディダム(Geotrichum candidum)、および/または生成物のテクスチャーおよび/もしくは官能特性を変化させるのに適した他の属に由来し、微生物による発酵または共発酵に使用される微生物は、バチルス(Bacillus)属、例えば、バチルス・サブチリス・ナットー(Bacillus subtilis spp. natto)、および/またはニューロスポラ(Neurospora)属、例えば、ニューロスポラ・インテルメディア(Neurospora intermedia)、および/またはラクトバチルス(Lactobacillus)属、例えば、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、および/またはラクトコッカス(Lactococcus)属、例えば、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)、および/またはプロピオニバクテリウム(Propionibacterium)属、例えば、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ(Propionibacterium freudenreichhii)、および/またはザイモモナス(Zymomonas)属、例えば、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)、および/またはロイコノストック(Leuconostoc)属、例えば、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)、および/または生成物のテクスチャーおよび/もしくは官能特性を変化させるのに適した他の属に由来する。微生物によって、生成物の異なる官能特性やテクスチャーが得られる。
【0028】
請求項9によれば、出発マトリックスへの菌類の菌糸および/または菌類胞子および/または糸状菌の菌糸および/または糸状菌胞子の播種/接種を、これらが、例えば出発材料に混入されており、かつ/またはこれらを出発マトリックスに噴霧し、かつ/または生成物を、前述の菌類の菌糸および/もしくは前述の菌類胞子および/もしくは前述の糸状菌の菌糸および/もしくは前述の糸状菌胞子の懸濁液中におよび/もしくはそれを用いて浸漬するというように行う。粉砕された菌糸断片または菌類胞子から菌類の菌糸が形成されることにより、出発マトリックスの架橋が行われる。多くの押出成形技術では、例えば高温を用いた場合に接種材料が損傷を受けずに押出成形プロセスに耐えることができないため、後から生成物に接種材料を加えなければならないという状況が、様々なバリエーションで考慮される。
【0029】
発酵生成物は、発酵後に構造破壊処理に供され、その際、発酵の間に発酵した出発マトリックスから形成された生成物が、粉砕、乱切り、または分割により、より小さな単位に分けられる。粉砕された材料は、さらなる生成物のための事前に構造化された出発材料として使用することができ、これらの生成物は、より包括的な様式で構造化され、新たな様式でまとめられ、互いに架橋される。
【0030】
出発マトリックスの製造には、食品製造の副産物が、天然繊維や非水溶性タンパク質などの主に不溶性の成分とともに使用される。
【0031】
押出成形ストランドは、その長手方向の軸線に直交する断面において異なるストランドの異なる直径を有する出発マトリックスを有する。ストランドは、網目状に上下に重ねて配置されており、それらの間にチャネル、ポアまたはボイドを形成している。
【0032】
請求項10に記載の方法様式では、出発材料は、押出成形プロセスにおいて、0.4~9[mm]、好ましくは0.5~7[mm]、好ましくは0.8~5[mm]、好ましくは1~3.5[mm]、より好ましくは1~2.5[mm]、特に1.1~2[mm]の内径を有する、例えば多孔板などにおけるダイまたは開口部を通して押し出され、その際、開口部の直径は、並行したまたは連続した押出成形プロセスの場合には、同じまたは異なる直径を有する。ストランドの直径が異なり、その結果、菌類の相対的な貫入深さが異なることに基づいて、発酵生成物の機械的特性を大幅に変化させることができる。構造の崩壊性が異なることに起因して口内での構造破壊挙動が変化すると、同様に、異なるテクスチャーがもたらされる。また、無秩序なばら材の場合、同じ生成物の中に厚さの異なる生成物ストランドや生成物ストランド断片があることも同様に、テクスチャーを変化させるのに適している。なぜならば、前述の相対的な貫入深さの相違と、大きさの異なるチャネル、ボイド、ポアとの組み合わせによって、テクスチャーが変化するためである。
【0033】
発酵させる出発マトリックスを形成するストランドは、出発材料を、0.4~9[mm]、好ましくは0.5~7[mm]、好ましくは0.8~5[mm]、好ましくは1~3.5[mm]、さらに好ましくは1~2.5[mm]、特に1.1~2[mm]の開口部を有する多孔板に通して押出成形することによって製造され、開口部の直径は、同じ直径または異なる直径を有する。多孔板による押出成形では、多数のストランドを並行して押出成形することができるため、製造速度が大幅に向上する。直径が異なると、ばら材の充填密度が高まるだけでなく、発酵による架橋を調節することもでき、これは、官能特性やテクスチャーに影響を与える。
【0034】
多孔板の開口部は、様々に定められている。
【0035】
統計的にランダムに配置されたストランドおよび/またはストランド断片のばら材は、押出成形プロセスの後に成形および/または締め固められ、その際、ストランドまたはストランド断片は、部分的に互いに押し付けられ、表面近傍で材料的または機能的に互いに結合されて一体となる。これにより、生成物への成形と相まって、製造速度が向上する。発酵用の出発マトリックスの生成と、成形とは、互いに分離される。予め締め固めておくことによって出発マトリックスの内部構造を変化させることができ、これは、発酵中の架橋やテクスチャー全体に影響を与える。
【0036】
重量割合を、共押出成形して発酵させるべき出発マトリックスにおいて、押出成形ストランド全体に対して、押出成形プロセスの間に少なくとも1回、相対的に変化させる。これにより、1回の押出成形プロセスで1本のストランドにおいて、局所的に異なる出発材料の比率を実現することができる。
【0037】
共押出成形によって、ストランド/ストランド断片の周囲を、共押出成形物の胞子の少なくとも80%が含まれている同心円状の層で覆うことができ、この層は、共押出成形ストランドに対して、ストランド/ストランド断片の断面積の25~75%、好ましくは40~60%を占める。
【0038】
発酵は、生成物の周囲の雰囲気に対して、40~100%、好ましくは50~99%、さらにより好ましくは60~99%、さらに好ましくは70~98%、特に75~95%の相対周囲湿度で行われる。
【0039】
基材相は、配向性または無配向性の3D押出成形によって吐出される。
【0040】
物体の寸法は、すべての空間方向において、メゾ構造体要素の特性直径の少なくとも3倍、好ましくは少なくとも5倍、さらにより好ましい実施形態では10倍、さらにより好ましい実施形態では20倍に相当する。
【0041】
メゾ構造体の生成に使用される相は、降伏点を有する押出成形可能なペースト状の塊状物であり、これは、例えば、植物性でタンパク質を含み、繊維を含む生成物、例えば、おから、かす、絞りかすなどをベースとする。押出装置から排出された後、ストランドの形状は十分に維持され、通常は不可避である降伏点が与えられても崩れることはない。
【0042】
生物学的材料またはその混合物は、任意にさらなる材料が加えられた状態で、菌類あるいはその胞子/永続的な形態、および任意に微生物あるいはその永続的な形態に対し、物質組成および調節された固形分および/または適したさらなる処理ステップに基づいて、望ましい発芽および/または成長および/または代謝活性を可能にしかつ/または促進する材料を含み、例えば、生物学的材料またはその混合物は、固形分中のタンパク質含有量が高められているもの、例えば、エンドウ豆、ダイズ、キヌア、ヒヨコ豆、豆腐、セイタン、グルテン、フレッシュチーズ塊状物、プロセスチーズ塊状物、リコッタなど、および/または固形分中の繊維含有量が高められているもの、例えば、おから、かす、全粒穀物生成物、脂肪/タンパク質抽出で生じた主に不溶性の残渣など、および/または固形分中の脂肪含有量が高められているもの、例えば、アーモンド、カシュー、ダイズなど、および/または固形分中の炭水化物含有量が高いもの、例えば、コムギ、もしくは他の穀類、または擬似穀類など、および/またはハイドロコロイドをベースとするもの、例えば、ゼラチン、ペクチン、デンプンをベースとするゲルなどであって、任意にさらなる添加剤を加えたもの、および/またはペーストをベースとするもの、例えば、乳タンパク質、乳清タンパク質分離物、または植物性タンパク質濃縮物もしくは植物性タンパク質分離物などの任意の粉末または粉末混合物の濃縮分散物をベースとするペーストなどであって、任意にさらなる添加剤を加えたもの、および/またはすでに発酵させられており、次いで再度粉砕された材料であり、その際、それぞれ、水分量の調節は、材料が降伏点を有するように、または降伏点が熱により、例えば熱可逆ゲル化の形で誘発されるように行われる。原理的には、少なくとも使用する菌類を、該菌類が成長して菌糸を形成するような成長条件におくことができる、あらゆる材料/物質が考えられる。固形分は、非常に多岐にわたることができ、ハイドロコロイドの場合には、1重量%未満の固形分ですでにゲル状の構造を形成することができるが、多くの非常に含油量の高い種子の場合には、60重量%超の固形分でも押出成形による出発マトリックスの形成に有効であり得る。出発材料は、例えば、種子のようなインタクトな生物学的材料だけでなく、完成した生成物から生成される出発材料として、例えば、沈殿後のまだ成形可能な豆腐の塊状物やプロセスチーズ塊状物など、プロセスの中間生成物であってもよい。
【0043】
出発マトリックスのポア、チャネルもしくはボイド内で成長する菌類、および/またはストランド/ストランド断片の中、上もしくは間で成長するもしくは代謝活性を有する微生物の成長および/または代謝活性は、熱的に、および/または例えばCO2、N2もしくはそれらの混合物でのガス処理によって、および/または相対空中湿度および/もしくは温度などの発酵条件の変更によって、および/またはポア、チャネル、ボイドを満たすことによって、および/または高圧処理によって、および/または冷却によって、および/または凍結によって、および/または他の適切な方法によって、発酵の間もしくは後に制御され、かつ/または部分的もしくは完全に終了される。これにより、有利な、あるいは安定した、もしくは十分に安定したテクスチャー、または有利な、あるいは安定した、もしくは十分に安定したアロマ/アロマプロファイルを、このような措置で達成することができ、また、さらなる変化プロセスの遅延、適合、または完全な排除を行うことができる。これにより、望ましいアロマおよび/またはテクスチャーの形成を誘導し、また、望ましくないアロマおよび/またはテクスチャー変化の発生を遅延または完全に排除することができる。
【0044】
発酵プロセスの間または後に、出発マトリックスの水分量を変化させる。生成物のテクスチャー特性は、発酵の間または後に、菌類および/または微生物の成長および/または代謝活性と同様に、制御または同時制御することができる。発酵および/または下流の変更プロセスを制御することができる。
【0045】
生物学的出発材料は、次いで、押出成形プロセス中に連続ストランドの形態で所定のサイズに粉砕される。局所的に予め定められたストランド配置に比べて、上記のように製造されたストランド断片をランダムに配置することで、特定のテクスチャーを得ることができ、製造速度がより高く、製造コストがより低いという利点がある。ストランド断片の平均長さを選択することで、ポア、チャネルおよびボイドの平均直径を制御することができ、これにより生成物のテクスチャーが変化する。また、長さおよび/または太さの異なるストランドにより、出発マトリックスの充填度を調節することもできる。
【0046】
菌類によって満たされていないポア、チャネルまたはボイドは、発酵プロセスの間または後に、香味剤および/またはビタミンおよび/または酸化防止剤で完全または部分的に満たされる。
【0047】
菌類によって満たされていないポア、チャネルまたはボイドは、発酵プロセスの間または後に、例えば薬用軟膏、抗生物質、火傷用軟膏などの医薬品および/または創傷治癒剤で完全または部分的に満たされるか、またはそれらが施与される。
【0048】
出発材料であるおからから出発マトリックスは、以下のように製造される:
- ステップ1:豆乳および豆腐の製造で得られるような、固形分15~25[重量%]のおからを原料として使用する;
- ステップ2:おからを常に撹拌しながら95±1[℃]に加熱し、この温度で60±1[分]保持する。次いで、この塊状物をさらに撹拌し、40±1[℃]に冷却する;
- ステップ3:乳酸(80[重量%])の添加により、おからの塊状物のpHを5.2±0.1に調節する;
- ステップ4:処理したおからをメッシュサイズ0.5[mm]のフィルタークロスでプレスし、固形分を25±0.5[重量%]とする;
- ステップ5:この塊状物を、パコジェット(Pacojet)容器に詰め替え、-22~-25[℃]に凍結させ、凍結した塊状物を、Pacojet PJ2E(Pacojet AG、スイス、ツーク)で「標準」のパコシエブレードおよびプレスクレーパー付きスプラッシュガードを使用して粉砕し、その際、粒子径をD90=600~800[μm]に低下させ、粒子径測定を、Beckmann Coulter Counter LS 13320にて、湿式モジュールを用いて20±1[℃]で行う;
- ステップ6:おからの塊状物1500±10[g]あたり、10±0.1[g]のリゾープス・オリゴスポラス(Rhizopus oligosporus)スターター培養物(Makrobiotik Hohrenk、ドイツ)を加える;
- ステップ7:この塊状物を、Kennwood Major Swiss Edition Mixerで、段階5で5[分]混合した後、層厚25[mm]の滅菌プラスチック袋に詰め替え、圧力200[mBar]にして真空にし、温度を20±1[℃]とする;
- ステップ8:プラスチック袋の角を切断し、可能な限り空気が入らないようにして、この塊状物をチューブ状の押出成形カートリッジに詰め替える;
- ステップ9:詰め替えたおからの塊状物(基材ともいう)を20±1[℃]に保持し、押出成形の準備が整う;
- ステップ10:次いで、この塊状物を1.8[mm]のダイに通して押出成形し、ガラス板、鋼板またはプラスチック板の上に、CADプログラムにより定められた造形体を層ごとに積み上げ;このプロセスを、2次元の層を積み重ねて3次元の造形体を生成する3D印刷の熱溶解積層法と同様に行い;これを、周囲温度20±1[℃]、空中湿度85[%]で行う;
- ステップ11:生成された造形体を、インキュベーター(Binder APT.line(商標)、マイクロプロセッサプログラムRD3搭載、Binder GmbH、ドイツ)に移し、25±1[℃]、空中湿度85[%]で48±2[時間]発酵させる。発酵中に、造形体を、ベーキング用の剥離紙(種類は重要でない)で覆う;
- ステップ12:発酵後、造形体を滅菌プラスチック袋に移し、200[mBar]で真空にする;
- ステップ13:充填して真空にした袋を、-17~-19[℃]に瞬間凍結させ、使用するまでこの温度で保存する。
【0049】
リゾープス・オリゴスポラス(Rhizopus oligosporus)は、ダイズベースで安全な菌体であると考えられており、欧州ではノベルフード(Novel Food)の規定の意味での承認上の問題はないと考えられる。現在、おからは有意義な利用法がないため、世界中で年間約300万トンのおからが動物の餌やバイオガスに利用されている。おからは繊維を多く含むため、栄養生理学的に優れていると言われている。
【0050】
押出成形ストランドを、下流のプロセスで、例えばストランド出口の後の回転ナイフによって所定のサイズに分割することができる。
【0051】
生成物の発酵プロセスは、10~50[℃]、好ましくは12~45[℃]、さらに好ましくは15~35[℃]、さらに好ましくは15~32[℃]、特に18~28[℃]の温度で行われ、一部の発酵では、発酵中に温度を変化させる。微生物の成長および代謝は、温度によって制御することができる。複数の生物で構成される発酵では、互いに比較した相対的な成長や、1つの生物の時間的な優位性を制御することができ、これが官能特性やテクスチャーに影響を与える。
【0052】
発酵は、生成物の周囲の雰囲気に対して、30~100[%]、好ましくは30~98[%]、特に40~95[%]、さらに好ましくは55~95[%]、例えば特に70~95[%]の相対周囲湿度で行うことができる。発酵中に固形分を変化させることで、菌類および/または微生物の成長や生成物の微細構造が有利に変化する。例えば、出発材料によるが、調理過程で水分量が減ると、生成物の柔らかさが損なわれる、あるいは噛みごたえが残るなどの違いがある。
【0053】
生成物の周囲の雰囲気のオーバーフロー速度は、生成物の周囲で50[cm/s]未満、好ましくは15[cm/s]未満、より好ましくは5[cm/s]未満、さらにより好ましくは1[cm/s]未満、特に0.5[cm/s]未満、例えば0.1[cm/s]未満である。特にリゾープス・オリゴスポラス(Rhizopus oligosporus)の場合には、空気/ガスのオーバーフローを避ける必要がある。なぜならば、さもなくば、菌糸が胞子形成し始めるためである(生成物の表面が灰色/黒色に着色する)。その一方で、空気がオーバーフローすると水の除去が規制されかねない。妥協策として、テンペの製造時に行われるのと同様に、穿孔された袋に出発マトリックスを詰めて発酵させることもできるが、その場合は環境との水の交換が犠牲になる。
【0054】
発酵の開始時の生成物の固形分は、好ましくは0.5~70[重量%]、より好ましい実施形態では1~60[重量%]、さらにより好ましい実施形態では1.5~55[重量%]、さらにより好ましい実施形態では2~50[重量%]、さらにより好ましい実施形態では3~50[重量%]、さらにより好ましい実施形態では5~45[重量%]、さらにより好ましい実施形態では7~40[重量%]、最も好ましくは15~40[重量%]である。目的の生成物に応じて、固形分を、非常に様々に異なって選択することができ、また、使用する材料、特に低分子量成分の量や脂肪分にも大きく依存する。
【0055】
満たされていない空間と満たされている空間との比率を調節することで、菌類の成長だけでなく生成物の全体的な機械的特性も変わるため、テクスチャー全体を調整することができる。
【0056】
使用される塊状物は、少なくとも1つ以上の異なる塊状物であり、それぞれが1つ以上の、好ましくは共押出成形された相で構成されており、組成は、吐出プロセス中に動的に変化し得る。複数の出発材料を混合せずに組み合わせることで、生成物のテクスチャーに直接影響を与えることができる。異なる塊状物を共押出成形することで、機械的特性や菌糸のストランドへの貫入性を調節し、テクスチャー全体に相応の影響を与えることができる。また、生成物の全体的な官能特性も同様に調節される。
【0057】
物体には、菌類の成長により生じるフィラメント状の網目構造体が通される。菌類の菌糸により、生成物の機械的特性に関して弾性成分が導入される。これは、菌糸同士や菌類が成長する基材との広範な架橋に基づいている。
【0058】
菌類の成長により生じる部分的または完全に連結したフィラメント状の網目構造体を形成する発酵は、1つ以上の菌類培養物を用いて行われ、この発酵は、満たされていないキャビティの体積に対する、少なくとも0.1[%]の体積割合を含む。
【0059】
菌糸を形成する胞子は、塊状物において、それから形成されたメゾ構造体要素の典型的な断面に等方的に分布しており、かつ/またはメゾ構造体要素の外側40%(v/w)に主に集中しており、かつ/または形成されたメゾ構造体要素の典型的な断面における胞子の分布は、中心から、中心からの距離が最大である位置に向かって勾配を示しているか、またはメゾ構造体要素の表面上に少なくとも95%存在している。
【0060】
生成物の内部では、例えばリゾープス・オリゴスポラス(Rhizopus oligosporus)、アクチノムコール・エレガンス(Actinomocur elegans)といった、異なる属の菌糸形成性の糸状菌の胞子や、場合によってはさらに、例えばプロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ(Propionibacterium freudenreichhii)、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)などの微生物の胞子が使用されており、これらの胞子の物体内での好ましい空間的局在は、等方性または所定の異方性であると言える。発酵生物の分布が空間的に異なることで、局所的に異なるテクスチャーを得ることができ、それが、包括的なテクスチャー知覚の変化となって現れる。また、隣り合った場合と別々に存在した場合とで、全体的なアロマの特性に関する挙動が異なる微生物を用いて共発酵を行うことも考えられる。
【0061】
複数の異なる属の胞子形成性の菌類(特に糸状菌)を使用する場合、これらは発酵開始前に同じまたは異なる区画に存在することが好ましい。
【0062】
生成物に関する課題解決
請求項11は、可食性生成物において、香味および/またはテクスチャーが、ポア、チャネルおよび/もしくはボイドに導入された菌類によって、および/またはポア、チャネル、ボイドおよび/もしくは出発材料に導入されたさらなる微生物によって、および/または発酵プロセスの期間および温度推移によって、および/または発酵の間もしくは後の生成物の水分量の調節によって、および/または生物学的出発材料の組成によって、および/または出発マトリックス中のポア、チャネル、ボイドの体積割合によって、および/またはポア、チャネル、ボイドの配置によって、および/またはストランドとポア、チャネルおよびボイドとの間の界面の量によって、および/またはストランドの直径によって、および/または環境とのガス交換によって、および/または出発材料のレオロジーを調節するプロセス技術的な前処理によって、定められていることを特徴とする。テクスチャーおよび/またはアロマは、様々な因子の相互作用によって様々な特性を示すことができ、その際、同じ原理のアプローチで異なるテクスチャーおよび/または官能特性を得ることができ、または異なる出発材料を加工して同様の官能特性および/またはテクスチャー特性を有する生成物を得ることができる。
【0063】
請求項12には、押出成形生成物ストランドの複数のレイヤーまたは層が、所定のまたは無秩序な角度配置で、上下に重なっておよび/または横に並んでおよび/または前後に並んで配置されている生成物が記載されている。これにより、速度が異なり、かつストランドの位置決めに関する精度が異なる方法で、異なるテクスチャーが得られるという利点が生じる。
【0064】
請求項13に記載の生成物は、出発マトリックスの出発材料が、生物学的材料またはその混合物からなり、これらの生物学的材料またはその混合物が、菌類あるいはその胞子/永続的な形態、および任意に微生物あるいはその永続的な形態に対し、物質組成および調節された固形分および/または適したさらなる処理ステップに基づいて、望ましい発芽および/または成長を可能にしかつ/または促進し、例えば、生物学的材料は、固形分中のタンパク質含有量が高められているもの、例えば、エンドウ豆、ダイズ、キヌア、ヒヨコ豆、豆腐、セイタン、フレッシュチーズ塊状物、プロセスチーズ塊状物、リコッタなど、および/または固形分中の繊維含有量が高められているもの、例えば、おから、かす、全粒穀物生成物、脂肪/タンパク質抽出で生じた主に不溶性の残渣など、および/または固形分中の脂肪含有量が高められているもの、例えば、アーモンド、カシュー、ダイズなど、および/または固形分中の炭水化物含有量が高いもの、例えば、コムギ、もしくは他の穀類、または擬似穀類など、および/またはハイドロコロイドゲル、例えば、ゼラチン、ペクチン、デンプンをベースとするゲルなど、および/またはペースト、例えば、乳タンパク質、乳清タンパク質分離物、または植物性タンパク質濃縮物もしくは植物性タンパク質分離物などの任意の粉末の濃縮分散物などであり、その際、それぞれ、水分量の調節は、材料が降伏点を有するように行われることを特徴とする。生成物には異なる出発材料を使用することができるため、当該の材料や他の任意の添加剤/成分を混合することで、生成物全体を栄養生理学的に最適化することもできる。
【0065】
チャネル、ポアまたはボイドは、菌類および/または微生物、あるいはそれらの分泌生成物によって部分的にのみ満たされており、残りのボイドなどには、例えば、香味増強剤および/またはビタミンおよび/または酸化防止剤および/または着色料および/または香料といった別の物質が配置されている。生成物の構造上、要求に応じて異なる物質を後から生成物に加えることができるため、例えば、同じマトリックスを利用して、異なる風味づけがなされた生成物を生成することができる。
【0066】
ボイド、チャネルまたはポアには、抗炎症薬および/または治癒薬が施与されている。
【0067】
菌類によって満たされていないボイド、チャネルまたはポアには、化粧品活性物質、例えば、クリーム、アンチエイジング剤などが施与されている。
【0068】
有利なことに、請求項14に記載の生成物は、ボイド、チャネルまたはポアの割合が、20~85[体積割合%]、好ましくは20~75[体積割合%]、より好ましくは25~75[体積割合%]、より好ましくは25~70[体積割合%]、特に好ましくは25~60[体積割合%]、最も好ましくは30~55[体積割合%]であることを特徴とする。ポア、チャネルおよびボイドの体積割合(およびその分布)は、それにより菌糸の成長およびその全体的な機械的特性を制御することができるため、実質的にテクスチャー全体を決定づける。
【0069】
請求項15は、基礎となる発酵前の出発マトリックスの強度と比較して、発酵後に測定された生成物の強度が、少なくとも20倍、好ましくは少なくとも12倍、より好ましくは少なくとも8倍、さらにより好ましくは少なくとも5倍、さらにより好ましくは少なくとも3.5倍、さらにより好ましくは少なくとも2倍、さらにより好ましくは少なくとも1.5倍、さらにより好ましくは少なくとも1.2倍、最も好ましくは少なくとも1.1倍増加し、その際、強度は、直径8mmの平坦な丸い円筒形状を用いて、室温で20mm×20mm×20mmの寸法の生成物物体に10mmの貫入深さで毎秒0.5cmの速度で貫入させる貫入測定による最大力として求められることを特徴とする。
【0070】
生成物は、材料的または機能的に互いに結合して一体となった押出成形ストランドまたはストランド断片の少なくとも1つのレイヤー、好ましくは2つ以上のレイヤーからなり、前述の押出成形ストランドまたはストランド断片は、1つ以上の生物学的材料と、1つ以上の菌類/糸状菌と、任意に微生物とから構成されており、出発マトリックスの隣接する押出成形ストランドの間には、外側に完全または部分的に開口したボイド、ポアまたはチャネルが存在し、前述のボイド、ポアまたはチャネルは、当該の菌類/菌類の菌糸および/または微生物、あるいはその分泌生成物によって完全または部分的に満たされている。押出成形プロセスで出発材料が吐出されることにより、(a)発酵のための接触領域を定めることができ、(b)菌類の菌糸の成長および/もしくは微生物の成長および/または分離された生成物の蓄積のためのスペース、ひいては、口内での構造破壊挙動、アロマの知覚、および生成物の機械的特性を調節することができる。十分に連結したボイド、ポア、チャネルが生成物の表面に接続されていることにより、酸素を必要とする発酵が可能となる。また、直接連結していない複数の独立した出発マトリックスを生成し、それらを発酵によって互いに結合させることも考えられ、例えば、直径の異なる複数の入れ子状の中空円筒体(Hochzylinder)を生成し、それらは互いに接触していないが、発酵の過程で菌類の菌糸との合体/結合がなされることが考えられる。菌糸で空間を部分的に埋めることで、生成物にその後、アロマやその他の感覚に関連した機能を有するさらなる相を備えることができる。
【0071】
使用に関する課題解決
請求項16に記載の使用は、生成物が肉の代替品として使用可能であることを特徴とする。
【0072】
生成物は、創傷治療用のドレッシング材またはドレッシングパッドとして使用することができる。また、生成物は、様々な化粧品用途に使用することもでき、例えば、生成物はフェイスマスクとして使用することができ、皮膚をケアする物質を含む。
【0073】
本発明による生成物は、肉のようなパティとして使用可能であり得る。
【0074】
生成物は、塗ることができる構造化された塊状物として使用され、例えばフレッシュチーズまたはスプレッドとして使用可能である。
【0075】
生成物は、ラザニアシート、ヌードル、または他のパスタに類似した生成物として利用可能である。
【0076】
生成物は、香味を付与する粉末として、粉砕後に、スープにおいて、ソースにおいて、または調味料として使用可能である。
【0077】
使用される塊状物は、それぞれ固形分に対して、脂質含有量を0~70[重量%]、窒素として測定されるタンパク質含有量を0~95[重量%]、繊維割合を0~80[重量%]、および炭水化物割合を0~95[重量%]、ならびに他の成分を含む。
【0078】
塊状物は、その組成に基づいて、菌類の成長により生じる連結したフィラメント状の網目構造体を形成する生物の成長を阻害または促進するように構成または空間的に構築されている。
【0079】
相を調製するために、オズボーン分画の意味で可溶性であるアルブミンおよびグロブリン、ならびにオズボーン分画の意味で非水溶性であるプロラミンおよびグルテリンがタンパク質成分であり、これらのタンパク質は、すべての精製段階で、発酵前の基材中で全窒素として測定した場合に、0.01%超、好ましい実施形態では0.1%超、さらにより好ましい実施形態では1%超、さらにより好ましい実施形態では5%超のタンパク質含有量から、好ましい実施形態ではオリゴペプチド以上として、さらにより好ましい実施形態ではポリペプチド以上として、それぞれ単独でまたは混合して重量的に主要な成分として使用される。
【0080】
また、降伏点を有する塊状物によるメゾ構造体化と、1回以上の発酵による微細構造化との組み合わせも提案される。メゾ構造体は、(a)菌類および/または他の発酵のための発酵足場および基材として、ならびに(b)全体的なテクスチャーおよび官能特性に寄与する相として機能する。例えば空間内でのストランド状の3Dマイクロ押出成形により、発酵生物の基材、例えば繊維質の多い植物性の塊状物をそれぞれx、y、z方向に配置して3D構造体および3D形状とすることで、菌類の成長の程度および構造を制御する。本発明によれば、満たされていないキャビティを構造体内に設けることで、使用される菌類および/または他の微生物のオーダーメイドの成長条件(オーダーメイドの栄養分および/もしくは酸素の供給ならびに/または水分の分配ならびに/または保持)を調節することができ、その結果、基材間や基材中への、菌類の菌糸の所定の配向性の成長を調節することができる。
【0081】
好ましくは、すべての空間方向における物体の寸法は、メゾ構造体要素の特性直径の少なくとも3倍、好ましくは5倍、さらにより好ましい実施形態では10倍、さらにより好ましい実施形態では20倍に相当する。
【0082】
生成物の固形分は、好ましくは1~50%(w/w)、より好ましい実施形態では3~45%(w/w)、さらにより好ましい実施形態では5~40%(w/w)、さらにより好ましい実施形態では7~35%(w/w)である。
【0083】
使用されるメゾ構造体要素はそれぞれ、少なくとも1つ以上の異なる塊状物を含み、これらの塊状物はそれぞれ、複数の、好ましくは共押出成形された相で構成されていてよく、組成は、吐出プロセス中に動的に変化し得る。
【0084】
物体には、有利には、菌類の成長により生じるフィラメント状の網目構造体が3次元的に通っており、その際、菌類の成長により生じる部分的または完全に連結したフィラメント状の網目構造体を形成する発酵は、1つ以上の菌類培養物を用いて行われ、この発酵は、満たされていないキャビティの体積に対する、少なくとも0.1%の体積割合を含む。
【0085】
有利に、(i)菌糸を形成する胞子は、塊状物において、それから形成されたメゾ構造体要素の典型的な断面に等方的に分布しており、かつ/または(ii)メゾ構造体要素の外側40%(v/w)に主に集中しており、かつ/または(iii)形成されたメゾ構造体要素の典型的な断面における胞子の分布は、中心から、中心からの距離が最大である位置に向かって勾配を有するか、または(iv)メゾ構造体要素の表面上に少なくとも95%存在している。
【0086】
生成物の内部では、例えばリゾープス・オリゴスポラス(Rhizopus Oligosporus)、アクチノムコール・エレガンス(Actinomucor Elegans)といった、異なる属の菌糸形成性の糸状菌の胞子、または例えばプロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ(Propionibacterium Freudenreichhii)、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas Mobilis)などの微生物の胞子を使用することができ、これらの胞子の物体内での好ましい空間的局在は、等方性または所定の異方性であると言える。
【0087】
複数の異なる属の胞子を使用する場合、これらは発酵開始前に同じまたは異なる区画に存在することが好ましい。
【0088】
少なくとも1つの塊状物は、脂質含有量を0~70%(w/w)、窒素として測定されるタンパク質含有量を0~50%(w/w)、および炭水化物割合を0~80%(w/w)有する。
【0089】
塊状物はさらに、その組成に基づいて、菌類の成長により生じる連結したフィラメント状の網目構造体を形成する生物の成長を全体的にまたは空間的に局所的に阻害または促進するように構成または空間的に構築されていてよい。
【0090】
このような成長の調節性は、例えば、基材体積と満たされていないキャビティの体積との比によって、表面積と基材体積との比によって、基材の全体的な構造によって、基材ストランドの絶対的な直径によって、基材の組成および基材の固形分、ならびに基材および空の/満たされていないキャビティの空間的な配置、ならびに造形体/物体の周囲の雰囲気とあらゆる種類のガス交換を行うことができる構造の適合性(強制的または非強制的、直接的または連結した菌糸構造を介して)によって生じる。
【0091】
狙いどおりに生成された、基材を有しないボイドは、好ましくは互いに結合されており、このボイドによって、基本的に造形体の周囲の雰囲気とのガス交換が可能となり、これによって、発酵に必要な酸素が生成物内に移行できるだけでなく、生成物内のガス雰囲気を調節することもできる。微視的および/またはメゾスコピックおよび/または巨視的に連結したおよび/または相互貫入する菌類の菌糸が成長することで、基材が固化され、個々の基材要素/基材ストランドが互いに結合され、造形体全体がレオロジーの観点から著しくより強く、より弾性的になる。テンペの製造と比較して、本発明による方法は、基材の選択および組成に関して、例えば官能特性、促進物質および阻害物質による成長調整、基材特性、ならびに三次元的な基材配置と重畳的な菌類発酵との組み合わせによる全体的な構造および全体的な強度および全体的なテクスチャーの配向性でかつ狙いどおりに調節可能な形成に関して、自由度が高い。従来のダイズをベースとするテンペのプロセスに対してさらに有利な点は、不溶性タンパク質や繊維、および天然のマトリックスに由来するその他の成分を、どのような混合物でも、有利に従来の製造の乾燥されていない水分を含む副産物から直接、使用できることである。例えば、豆乳や豆腐の製造の副産物としてのおからを、基材として使用することができる。つまり、非常に好都合な基材を使用することができ、また、他の塊状物と混ぜることで栄養生理学的に最適化することができる。3D基材配置と菌類発酵とを組み合わせることで、新規のクラスの構造化された造形体/生成物が生まれ、これを特に肉の代替品としてさらに発展させることができる。
【0092】
x、y、z方向への押出成形による3D基材配置の代わりに、より高いスループットの製造に向けて、1つ以上の基材相を、例えば多孔板を通してx、y方向に押出成形して、任意の直径、直径分布の理論的には無限の長さの平行なストランドを形成し、限られた範囲でz方向にも、回転するまたは押出成形方向に周期的に振動する送り装置によって押出成形し、それにより配向させることも可能である。任意に、平行なストランドをランダムに配置して造形体を形成し、そのような造形体をさらに適切な措置により成形および/または締め固めてもよい。
【0093】
吐出された基材塊状物の構造は、特に小さな生成物物体の場合には、繰り返し要素を有するが、巨視的に見て異方性のある構造体要素が存在する場合もある。塊状物は、例えばストランド単位の押出成形によって吐出されるが、他のプロセスによっても同等の結果を得ることができる。
【0094】
基本的な実施形態では、基材相とは、エマルション、懸濁液またはサスポエマルションと解釈することができる。可能な一実施形態では、基材相が泡として吐出される。オーバーランは、1~200%であり、好ましくは、溶存ガスの膨張、または例えば化学物質からのガス放出によっても生じるが、さらなる実施形態では、先行する圧力段階に付随した水の蒸発によっても生じる。
【0095】
基材塊状物の三次元構造は、菌類発酵によって形成される全体的な構造を間接的に定め、菌類の菌糸による内部の架橋を指示する。ダイズを用いた古典的なテンペの発酵とは異なり、生じる生成物の構造およびテクスチャーを制御することができる。基材ストランドを特別に配置し、これが基材塊状物のレオロジー特性の調節と相まって、部分的には肉のようとも言える、異なる構造およびテクスチャーの知覚を作り出すことができる。
【0096】
基材としては、タンパク質(0~100%)および/または炭水化物(0~100%)および/または脂肪(0~50%)、および他の副次的成分(10%未満)から構成されており、かつ押出成形可能である、様々な塊状物が適している。例えば、0.1~30mmの範囲でダイから押出成形することができ、その際、塊状物を、ダイに適合させる。好ましくは、例えば、おから、穀類のふすま、油抽出から得られるプレスケーキ、およびその混合物、果物および野菜の搾りかす、ビールかす、甜菜の搾りかすなど、従来の製造からの副産物である塊状物が使用される。これらの塊状物の栄養生理学的または感覚的な欠陥は、好ましくは他の塊状物との混合によって修正される。このような塊状物の典型的な固形分は、15~85%(w/w)であり、これらの固形分は、機械的な脱水だけでなく、部分的な熱プロセスやその組み合わせによっても調節することができる。菌類の菌糸または他の(部分的な)発酵のための栄養分の利用可能性を高め、塊状物の流動特性および/または粒度分布を改変するために、塊状物をさらに(例えば、微粉砕、ボールミル処理、またはパコジェットでの処理のようなクライオメカニカル・アブレシブ・プロセスなどによって)機械的に蒸解させることができる。衛生上および技術上の理由から、塊状物は、基材として使用する前に、例えば熱処理やPEF、高圧、US、またはそれらの組み合わせの使用など、菌数を減少させるステップに供することができる。このような処理のさらなる効果は、蒸解と、それに伴う菌類の菌糸による基材成分の使用/利用の容易化、あるいは感覚に関連した化合物やその前駆体、さらには発酵活性による生成物の官能特性の望ましい調節につながる化合物の形成、分解、または除去であり得る。
【0097】
例えば、炭水化物、ハイドロコロイド、架橋イオンなどのさらなる材料/物質を組み込むことで、基材相をさらに改変することができる。さらなる実施形態では、例えば、発酵する微生物および/または菌類および/または酵素を加えることができ、これにより、発酵の前、間または後に、基材相の架橋および/または固化および/またはレオロジー特性の変更をもたらすことができる。
【0098】
メゾ構造体の生成に使用される基本的な相は、降伏点を有する押出成形可能なペースト状の塊状物であり、これは、例えば、おから、かす、絞りかすなど、植物性で繊維を含む生成物をベースとし、例えば、豆腐の塊状物、グルテン、または他のタンパク質が豊富な塊状物などのタンパク質が豊富な生成物をベースとし、そのタンパク質は、可溶性であっても不溶性であってもよく、異なる濃度で存在し、乾燥状態であるか、または流動性の濃縮物もしくは単離体として存在する。
【0099】
酸素は、満たされていないキャビティの十分に連続的に連結した網目を通して造形体に供給される。満たされていないキャビティに対応する体積割合は10%~80%であり、基材網目の配置によって決まる。満たされていないキャビティは、制限された基材ストランド間の距離や成長条件に応じて、菌類の菌糸が通り、かつこれで満たされる。成長を制御することで、一方では、基材への貫入に加え、基材ストランドの結合、ひいては全体的な生成物特性を定めることができる。また、酸素分圧や利用可能な酸素の絶対量によっても成長を調整することができる。造形体の内部では、基材相と気相との比を局所的に変えることで、異なる成長条件を設定し、目標とするマクロ構造を生成することができる。
【0100】
基材の選択が自由であることの利点の1つは、2つ以上の異なる基材相をそのまま使用できることである。この選択肢の大きな利点は、ミクロ、メゾ、およびマクロ構造を狙いどおりに変化させることができ、それがテクスチャー、官能特性、および光学特性に影響を与えることである。このように、単純な実施形態では、同じ材料の異なる濃度の相を使用することができる。より複雑な実施形態では、異なる材料を使用することもできる。例えば、豆腐の塊状物とおからの塊状物とを共通の生成物に加工し、その際、別々の相を構造化補助剤として同時に使用することができる。なぜなら、これらの相はその組成に基づいて異なるレオロジー特性およびテクスチャー特性を有することができ、一方で、これらの相には、菌類の菌糸が異なる程度で貫入することができ、これもレオロジーおよびテクスチャーの違いにつながり得る。
【0101】
テクスチャーおよび/またはレオロジーの特徴を調節するために、菌類の菌糸による貫入や架橋に関して、成長を促進する基材相と成長を阻害する基材相と(あるいは、成長に有利な基材相、または成長に不利な基材相)を狙いどおりに使用することができる。異なる相は、共通の出発材料を分離して生成することもできるし、まったく異なる出発材料を含むこともできる。抗栄養因子の使用に加えて、使用する基材の脂肪含有量の増加も成長阻害要因として考えられる。脂肪を分散して存在させることに加えて、脂肪は、コーティング/被覆された部位での基材相への成長を困難にするまたは防止するために、完全または部分的に基材ストランドのコーティングとして使用することもできる。成長を促進する相と成長を阻害する相とを一緒に配置する代わりに、これらを前述の脂肪相と同様に共押出成形することもでき、成長を阻害する相がストランドのコアに存在することを条件に、2相の基材ストランドへの菌類の菌糸の成長を制限することができる。これは、テクスチャーを調節したり、本質的なテクスチャー調節やレオロジーの特性を犠牲にする必要なく菌類の菌糸の量を総じて制限したりするために望ましいことであり得る。
【0102】
本発明の可能な一実施形態では、基材相または菌類の菌糸で満たされていない造形体のすべての区画は、(第1の)発酵後にさらなる流動性の相で満たされ、異なる程度に固化される。固化は、(i)継続的な菌類発酵により、(ii)さらなる生物活性生物を用いた追加の発酵により、(iii)酵素により、(iv)熱可逆性機序により、(v)イオンにより誘導して、またはその他のプロセスによって行うことができ、造形体の内部では表面近傍の領域とは異なる場合がある(例:固化した最終的な第2の相が、内部ではまだ流動性である)。流動性の相は、異なる組成、異なる固形分、および異なるレオロジー特性を有することができる。好ましくは、連続した基材相をすでに構成しているものと同じ材料が使用され、同様に好ましくは、先行する1つ以上のステップで基材相として使用された材料から部分的または完全に分離された材料を、さらなる材料と混合したまたは混合していないもの、特に強度やレオロジー特性をゲル化/固化状態で調整できるものや、特に初めてそれを可能にするものが使用される。特に、脂肪および/またはハイドロコロイドおよび/または炭水化物を乳化あるいは分散させたものを加えることで、官能特性を調整することができる。区画への充填は、必要に応じて菌類の菌糸の固化活性を利用できるように、基材相の発酵の異なる時点に、菌類の菌糸の異なる特性を利用して行うことができる。さらなる実施形態では、充填は、例えば、さらなる処理の前や消費者が行うなど、後の任意の時点になってから行うこともできる。さらなる実施形態では、その後、菌類の菌糸や基材相の特性や成長を変化させる材料/物質を充填相に加えることができる。
【0103】
例示的な実施形態では、初期固形分18%のおからを機械的なプレスで固形分21%に調節し、ダイズ油(5%、w/w)と混合してホモジナイズし、95℃で60分間加熱して冷却し、菌類胞子(リゾープス・オリゴスポラス(Rhizopusoligosporus))と混合し、真空にしてカートリッジに充填する。基材ストランドをそれぞれ一層ずつ互いに90°回転させて配置し、ストランド間の平均間隔が等しくなるようにストランドを規則的なパターンで配置することにより、20×20×20mmのサイズの造形体を、気相割合50%で積層して生成する。この造形体を25℃、相対空中湿度90%で72時間インキュベートした後、包装して真空にし、涼所に保管するかまたは冷凍する。
【0104】
さらなる例示的な実施形態では、固形分18%のおからをプレスし、固形分を28%に調節し、ダイズ油(5%、w/w)を加え、95℃で60分間加熱し、冷却し、菌類胞子を加え、真空にしてカートリッジに充填する。基材ストランドを常に一方向に配向させ、最大振動点で層から層へとストランド同士が接触するように、位置に対して水平に振動させながら吐出することで、100×50×18mmのサイズの楕円形の造形体を、気相割合25%で積層して生成する。この造形体を25℃、相対空中湿度90%で72時間インキュベートする。発酵終了後、TS25%に濃縮した豆乳をボイドに充填し、GDLを用いて25℃で5~10時間ゲル化させる。ゲル化後、造形体を引き続き包装して真空にし、涼所に保管するかまたは冷凍する。
【0105】
発酵は、温度15~40℃、相対空中湿度20~99%で行うのが好ましい。菌類や菌類の組み合わせで発酵させる場合や、例えば乳酸菌などの微生物と共発酵させる場合には、最適な成長に加えて、胞子形成を回避できるように発酵温度を選択する。
【0106】
発酵に使用可能な菌種は、リゾープス(Rhizopus)属(例えば、リゾープス・オリゴスポラス(Rhizopusoligosporus)、リゾープス・ストロニフェル(Rhizopusstolonifer)、リゾープス・オリゼ(Rhizopusoryzae)、リゾープス・アリズス(Rhizopusarrhizus))、アクチノムコール・エレガンス(Actinomucorelegans)(典型的には、メイトゥザ(Meitauza)の製造に使用される)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)(典型的には、醤油の製造に使用される)、バチルス・ナットー(Bacillus natto)(典型的には、納豆の製造に使用される)、ニューロスポラ・インテルメディア(Neurospora intermedia)(典型的には、「オンコム」または「オンジョム」、すなわち、発酵したピーナッツプレスケーキの製造に使用される)の糸状に成長する菌類である。さらに、このような細菌叢は、発酵した最終生成物が、自然に例えばビタミン含有量の増加や消化率の向上といった栄養面での利点を有することにも寄与し得る(リゾープス・オリゴスポラス(Rhizopusoligosporus)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae))。発酵に使用可能な細菌種は、例えば、乳酸菌(例えば、Lc.ラクチス(Lc. Lactis)、Lb.ブルガリクス(Lb. Bulgaricus)、Prop.bact.フロイデンライヒ(Prop.bact. freudenreichii)、Lb.ロイテリ(Lb. Reuteri))、またはザイモモナス・モビリス(Zymomonasmobilis)である。
【0107】
本発明の趣意における発酵は、菌糸形成性菌類による少なくとも1回の発酵を必要とするが、さらなる菌糸形成性または非菌糸形成性の菌類、および非菌糸形成性の微生物を含んでいてもよい。発酵は、単一の発酵として行うことも、共発酵または多重発酵として行うこともできる。菌類は、例えば、構造化(微細構造の形成)、栄養生理学的に価値のある化合物/物質(例えばビタミン)の富化、消化性の調節のほか、(例えば、望ましくない化合物の分解、官能的に有益な化合物の分離、または他の発酵培養でさらに利用可能な物質の提供による)香味形成に使用され、微生物は、例えば、香味形成(例えば、官能的に有効である不利な化合物の分解、官能的に有利な化合物の分解、それらの組み合わせ、他の発酵培養でさらに利用可能な物質の提供)、(例えば、pH値の変更、基材内の構造の架橋による)構造化、基材の部分的な分解および/または分解およびまたは分泌により菌類の成長を調整する物質の放出、見た目の変化(例えば、色)、栄養生理学的に有利な化合物/物質(例えば、ビタミン)の富化、消化性の調節、または保存性の向上に使用される。全体的に見て、主に官能特性(香味、テクスチャー)をオーダーメイドに調節できるように組み合わせが選択される。共発酵または多重発酵では、生物は、互いに機能的に補完するまたは相乗的に作用することができる。共発酵または多重発酵を適切に組み合わせることで、肉のような官能特性(特に香味の面ではチキンフレーバー、また繊維質のテクスチャー/構造)が得られる。
【0108】
別の実施形態では、菌類胞子は造形体の中で異方的に分布しており、造形体の中のある位置では、他の位置に比べて基材に含まれる胞子が著しく少ない。異方性の程度は、例えば、2つの相を互いに別々に押出成形して、1つの造形体において、胞子を含まないかまたは胞子の少ない相と胞子の多い相とを組み合わせることによって達成される。さらなる実施形態では、胞子を含まないかまたは胞子の少ない相と胞子の多い相という2つの基材相を共押出成形することにより、胞子が基材ストランド内で異方的に分配され、好ましくは外相では内相に比べて胞子の濃度が高い。
【0109】
さらなる実施形態では、胞子の播種は、押出成形と造形体の組み立ての後に、胞子を含む霧状の液体を界面に吹き付けるか、または胞子を含む流体に造形体全体を浸して濡らすことで行われ、これは特に、前処理段階で胞子の活性に重要な温度を超えた場合に行われる。異方的な分布は、生成物に複数の種類の菌類胞子を接種し、胞子を別々の基材塊状物に導入し、造形体の中で異なる位置に配置した場合にも同様に得られる。
【0110】
製造された生成物は、特に、通常は発酵時間の経過とともに機械的強度が増すことを特徴とする。さらに調製すると、通常は造形体の強度が低くなるが、減少の程度は調製方法に依存する。好ましい実施形態では、造形体は、水中で沸騰させたり、蒸気で調理したりしても、形状が安定しており、膨張しない。
【0111】
可能な一実施形態では、基材相は、基材相によって2つの空間方向で制限され、第3の次元では無制限であるチューブ状構造が生じるように、独立して、またはデバイスを用いて配置される。第1のステップでは、発酵によって菌糸が形成され、基材相が固化され、さらなるステップでは、チューブ状の構造体に流体が流されるかまたは充填される。後続の発酵では、菌類の菌糸との相互作用および/または基材相との相互作用により、流動するまたは滞留する流体の組成あるいは化学的および物理的特性が改変される。菌類の菌糸への酸素の供給は、基材相により形成されたチューブの外側から行われる。チューブの形成は、穴の開いた材料を適用することで支援することができる。この材料は、一方ではチューブ内の菌類の菌糸への酸素の供給を可能にし、他方ではチューブ内の液体の漏出を低減または防止し、構造全体に最低限の強度を与える。発酵後、再び流体を分離し、ろ過して乾燥させる。
【0112】
さらなる実施形態では、基材相のランダムな配置を選択し、造形体を発酵させた後、流体で完全に満たし、さらなる期間にわたって発酵させる。発酵後、再び流体を分離し、ろ過して乾燥させる。このような流体は、菌糸の酵素活性により特にタンパク質が部分的に加水分解され、その結果、官能特性が変化していることが特徴である。
【0113】
これら双方の発酵造形体、またはこの目的のために特別に製造された造形体も、発酵後に再び部分的または完全な構造破壊ステップに供することができる。例えば、かなり粗く粉砕された造形体はミートパティの基本的な塊状物を表し、かなり細かく粉砕された造形体や、かなりまたは非常に粗く粉砕された造形体は、広い温度範囲での後続の湿式押出成形に向けた塊状物として使用することができる。
【0114】
よって、発酵を目的とし、発酵中に満たされていないキャビティが通り、固形でかつ発酵させられており、調整可能な塊状物をベースとして形成されている構造化物体の製造方法であって、
(a)物体を構成し、レオロジーおよびテクスチャーを調節できる少なくとも1つの調整可能な塊状物が、配置を広範囲で自由に調節できる配向性または無配向性のメゾ構造体を形成し、メゾ構造体は、基材を形成するとともに、1回以上の発酵のためのキャビティ、およびテクスチャー全体を決定づける基本構造をも形成し、
(b)少なくとも1つの共同および/または重畳的な微細構造を1回以上の発酵により誘発して導入することで、菌類の成長により生じる部分的または完全に連結したフィラメント状の網目構造体を、メゾ構造体要素の中、上および間に生成し、
(c)造形体全体に占める、満たされていない区画の体積割合を選択し、それらの配置を選択し、かつメゾ構造体の表面積とメゾ構造体の体積との比を選択することにより、全体的な菌糸の成長、メゾ構造体への菌糸の貫入および方向、
(d)したがってその全体において網目構造体を調節することができ、
構造化要素全体がミクロレベルおよびメソレベルで相互に作用することで、調節可能な(i)固化、(ii)レオロジー特性、および(iii)感覚に関連したテクスチャー化が生じる、方法が考えられる。
【0115】
基材相を、配向性または無配向性の3D押出成形によって吐出すことができる。
【0116】
菌類の成長により生じる部分的または完全に連結したフィラメント状の網目構造体を形成する発酵は、1つ以上の菌類培養物を含み、満たされていないキャビティの体積に対する、少なくとも0.1%の体積割合を含む。
【0117】
菌糸を形成する胞子は、塊状物において、それから形成されたメゾ構造体要素の典型的な断面に等方的に分布しており、かつ/または(ii)メゾ構造体要素の外側40%(v/w)に主に集中しており、かつ/または(iii)形成されたメゾ構造体要素の典型的な断面における胞子の分布は、中心から、中心からの距離が最大である位置に向かって勾配を示しているか、または(iv)メゾ構造体要素の表面上に少なくとも95%存在している。
【0118】
使用される塊状物は、脂質含有量を0~70%(w/w)、窒素として測定されるタンパク質含有量を0~50%(w/w)、および炭水化物割合を0~80%(w/w)、ならびに他の成分を含む。
【0119】
図面において、本発明を、例示的実施形態により部分的に概略的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【
図1】押出機から吐出された複数の押出成形マトリックスストランドの出口の一部を破断した状態で示す図である。
【
図2】押出成形マトリックスストランドをダイにより別のストランド層に施与したものを、破断した状態で示す図である。
【
図3】並列に接続された複数の押出成形ダイを示す図である。
【
図4】材料ストランドを排出することができる異なる形状の開口部を有する多孔板を示す図である。
【
図5】異なる押出成形ダイと、押出成形ストランドの搬送方向の下流側のモータ駆動式回転ナイフとを備えた押出成形装置を示す図である。
【
図6】押出成形材料ストランドの無秩序なばら材を示す図である。
【
図7】無秩序に配置されたストランド断片を示す図である。
【
図9】押出成形材料ストランドが異なる面に互いに直交するように配置されたマトリックス物体の側面図である。
【
図11】材料ストランドが互いに角度をなすように配置されたさらなる実施形態を示す図である。
【
図12】
図9と同様の図をより大きなスケールで遠近法により示す図である。
【
図13】出発材料の準備、および出発マトリックスの形成、発酵、包装を示す図である。
【
図14】出発材料の準備、および出発マトリックスの形成、発酵、包装を示す図である。
【
図15】出発材料の準備、および出発マトリックスの形成、発酵、包装を示す図である。
【0121】
参照符号1は、詳細は図示されていない複数の排出ダイを備えた押出機の一部を示しており、図示の実施形態では、そこから合計4本の生成物ストランド2が排出され、それらが重力の影響を受けて結合して、無秩序なばら材3を形成している。必要に応じて、生成物ストランド2を時間または体積に応じて細分化、特に切断することができ、その後、ばら材3は断続的に搬出される。
【0122】
図2による実施形態では、必要に応じてモータにより移動可能なダイ4が図示されており、その際、複数の生成物ストランド5が互いに平行かつ距離を置いて配置されている。図示の実施形態では、ダイ4は、生成物ストランド5の長手方向の軸線に対して直角に生成物ストランド6を吐出する。生成物ストランド5,6のいくつかのそのようなレイヤーが上下に重ねておよび/または横に並べて配置されており、互いに補完して物体を形成することができる。
【0123】
図3に示す実施形態では、4つのダイ7が互いに平行かつ距離を置いて配置され、図示されていない1つの押出機に付属しており、そこから生成物ストランド8が排出され、例えば、時間制御または体積制御された様式で分離される。生成物ストランド8は、結合して無秩序なばら材9を形成することも、他の様式で結合して生成物物体を形成することもできる。
【0124】
図4に、図示されていない押出機に付属する多孔板10を示す。多孔板10は、直径が異なる排出開口部11を備え、ここから生成物ストランドが排出される。
【0125】
図5の図示では、12は、直径が同じかまたは異なるダイ13を備えた押出機の一部を示し、これらのダイ13から生成物ストランドが排出される。搬送方向の下流には、生成物ストランドを分割する回転ナイフ14が存在する。その後、生成物ストランドを個々に搬出することも、互いに任意の角度でまとめて1つの物体を形成することもできる。
【0126】
図12に、生成物ストランドを上下に重ねて配置した複数の層からなる生成物15を示す。図示の実施形態では、ボイドの間に菌類の菌糸16が成長する。簡略化のために、これを2か所のみ図示する。当然のことながら、生成物物体15の異なるボイド内で対応する菌類が成長する。
【0127】
図6に、実質的に連続したストランドから構成されるさらなる無秩序なばら材17を示し、
図7には、分割された生成物ストランドから構成されるばら材18が図示されている。
図8では、ばら材19は、分割された生成物ストランドからなる。
【0128】
図9、
図10、および
図11に、異なる生成物物体を示す。例えば、
図9の生成物物体20は、
図12の生成物物体と同様の構造を有しており、かつそれぞれその長手方向の軸線に対して互いに直交するように延在する生成物ストランドの複数のレイヤーからなり、これは
図10による実施形態にも当てはまるが、一方で、
図11による実施形態では、生成物物体21は、互いに鋭角に延在する生成物ストランド22からなる。しかし、その角度はレイヤーごとに異なっていてもよい。
【0129】
特許請求の範囲および本明細書に記載されている特徴、ならびに図面から明らかである特徴は、個別にも任意の組み合わせでも本発明の実現に不可欠であり得る。
【0130】
参考文献
[1]Heine, D., Rauch, M., Ramseier, H., Mueller, S., Schmid, A., Kopf-Bolanz, K., Eugster, E. (2018). Pflanzliche Proteine als Fleischersatz: eine Betrachtung fuer die Schweiz. Agrarforschung Schweiz 9(1), 4-11.
[2]Bio Suisse - Richtlinien fuer die Erzeugung, Verarbeitung und den Handel von Knospe-Produkten(2019年1月1日版)、リンク:https://www.bio-suisse.ch/media/VundH/Regelwerk/2019/DE/rl_2019_1.1_d_gesamt__11.12.2018.pdf
[3]O’Toole, D.K. (2004). Soymilk, Tofu, and Okara. In: Encyclopedia of Grain Science (2004). Edited by Wrigley, C.W., Corke, H., and Walker, C.E. Academic Press.
[4]Shurtleff, W., and Aoyagi, A. (1979). The Book of Tempeh. A Cultured Soyfood.
[5]Zieger, T. (1986). Versuche zur Herstellung von Tempe gembus und Meidouzha.ホーエンハイム大学の食品技術研究所にて詳述された学位論文
[6]英国特許出願公告第1277002号明細書
[7]米国特許第3,885,048号明細書
[8]英国特許出願公開第2007077号明細書
[9]DATABASE GNPD [Online] MINTEL; 2015年5月27日, 無著者名: “Light Manioc Pasta”, XP055633351
【符号の説明】
【0131】
1 押出機
2 生成物ストランド、ストランド、マトリックスストランド、メゾ構造体要素、構造化要素
3 ばら材
4 ダイ
5 生成物ストランド、ストランド、マトリックスストランド、メゾ構造体要素、構造化要素
6 生成物ストランド、ストランド、マトリックスストランド、メゾ構造体要素、構造化要素
7 ダイ
8 生成物ストランド、ストランド、マトリックスストランド、メゾ構造体要素、構造化要素
9 ばら材
10 多孔板
11 排出開口部
12 押出機
13 ダイ
14 ナイフ
15 生成物、生成物物体、物体
16 菌類、菌類の菌糸、微生物、網目構造体
17 ばら材
18 ばら材
19 ばら材
20 生成物物体、生成物、物体
21 生成物物体、生成物、物体
22 生成物ストランド、ストランド、マトリックスストランド、メゾ構造体要素、構造化要素
23 チャネル、ポア、ボイド、満たされていないキャビティ