(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】放射性核種錯体を調製するための方法およびキット
(51)【国際特許分類】
C07D 213/69 20060101AFI20240104BHJP
C07B 59/00 20060101ALI20240104BHJP
C07F 5/00 20060101ALI20240104BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240104BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20240104BHJP
A61K 51/04 20060101ALI20240104BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240104BHJP
G01N 33/534 20060101ALI20240104BHJP
G01N 33/60 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
C07D213/69
C07B59/00
C07F5/00 H
A61K47/22
A61K47/54
A61K51/04 100
A61K51/04 200
A61P35/00
G01N33/534
G01N33/60
(21)【出願番号】P 2022114907
(22)【出願日】2022-07-19
(62)【分割の表示】P 2021085830の分割
【原出願日】2016-03-09
【審査請求日】2022-07-19
(32)【優先日】2015-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517316029
【氏名又は名称】セラグノスティクス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】THERAGNOSTICS LIMITED
【住所又は居所原語表記】c/o Ignition Law, Moray House First Floor, 23-31 Great Titchfield Street, London, W1W 7PA, United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100159916
【氏名又は名称】石川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ブロワー
(72)【発明者】
【氏名】クレゴリー ミューレン
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-526745(JP,A)
【文献】特表2014-524423(JP,A)
【文献】特表2014-501714(JP,A)
【文献】特表平06-510539(JP,A)
【文献】国際公開第2014/178229(WO,A1)
【文献】特許第6889665(JP,B2)
【文献】特許第7109627(JP,B2)
【文献】Matthias Eder et al.,68Ga-Complex Lipophilicity and the Targeting Property of a Urea-Based PSMA Inhibitor for PET Imaging,Bioconjugate Chemistry,vol.23,2012年,pp.688-697
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C07F
C07B
A61K
A61P
G01N
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線治療法にまたは医用イメージング法に使用するためのガリウムの放射性同位元素を含む錯体の調製方法であって、前記方法が、ガリウム放射性核種ジェネレータから直接得られたガリウム放射性同位元素溶液を、薬学的に許容される緩衝剤と、pHを3~8の範囲のレベルに上げるのに十分な量での、任意選択的にまた薬学的に許容される塩基性試薬とを含む組成物に添加する工程を含み、ここで、前記組成物が、前記pH範囲内でおよび10~30℃の温度で放射性ガリウムをキレート化することができるキレート剤をさらに含み、前記キレート剤が、生物学的標的指向性剤に任意選択的に結び付いており、
前記キレート剤が、式(I)
【化1】
の化合物またはその塩[式中、XおよびYの1つはC=Oであり、他はNRであり;
Rは、水素またはC
1~4
アルキル基であり;各mおよびpは独立して、0~6から選択され;R
1は、放射性核種をキレート化することができるキレート化基であり、そして
【化2】
(式中、R
2、R
3およびR
4は独立して、水素または任意選択的に置換されたC
1~7アルキル基である)
から選択され;
そしてZは、水素または式-B’-H、-B’-Aの基、または基-B’-A
*-Tであり、ここで、
Tは、被験者における興味のある標的に結合することができる標的指向性基であり;
Aは、基Tへのカップリングを可能にする反応基であり、
A
*は、反応した反応基Aであり;
B’は、キレート化基を反応基Aに結び付けるためのリンカー基であり、そして式:
【化3】
(式中、各Qは独立して、-NR
5-、-C(O)NR
5-、-C(O)O、-NR
5C(O)NR
5-、-NR
5C(S)NR
5-および-O-からなる群から選択され、各R
5は独立して、水素または任意選択的に置換されたC
1~7アルキル基であり、各qおよびsは独立して、0~6から選択され、各rは独立して、1~6から選択される)
で表される]から選択されるか、または、前記キレート剤が、前記生物学的標的指向性剤に結び付いているDKFZ-PSMA-11であり、
前記キレート剤、前記緩衝剤、及び、前記塩基性試薬が、凍結乾燥形態またはフリーズドライド形態にある、方法。
【請求項2】
放射線治療法にまたは医用イメージング法に使用するためのガリウムの放射性同位元素を含む錯体の調製方法であって、前記方法が、精製または濃縮の追加工程なしでガリウム放射性核種ジェネレータから直接得られたガリウム放射性同位元素溶液を、薬学的に許容される緩衝剤と、pHを3~8の範囲のレベルに上げるのに十分な量での、任意選択的にまた薬学的に許容される塩基性試薬とを含む組成物に添加する工程を含み、ここで、前記組成物が、前記pH範囲内でおよび10~30℃の温度で放射性ガリウムをキレート化することができるキレート剤をさらに含み、前記キレート剤が、生物学的標的指向性剤に任意選択的に結び付いており、
前記キレート剤が、DFO(desferrioxamine-B)、HBED(N,N’-bis(2-hydroxybenzyl)ethylenediamine-N,N’-diaceticacid)、NOTP(1,4,7-triazacyclononane-1,4,7-tri(methylenephosphonic acid))、および、式(I)
【化4】
の化合物またはその塩[式中、XおよびYの1つはC=Oであり、他はNRであり;
Rは、水素またはC
1~4
アルキル基であり;各mおよびpは独立して、0~6から選択され;R
1は、放射性核種をキレート化することができるキレート化基であり、そして
【化5】
(式中、R
2、R
3およびR
4は独立して、水素または任意選択的に置換されたC
1~7アルキル基である)
から選択され;
そしてZは、水素または式-B’-H、-B’-Aの基、または基-B’-A
*-Tであり、ここで、
Tは、被験者における興味のある標的に結合することができる標的指向性基であり;
Aは、基Tへのカップリングを可能にする反応基であり、
A
*は、反応した反応基Aであり;
B’は、キレート化基を反応基Aに結び付けるためのリンカー基であり、そして式:
【化6】
(式中、各Qは独立して、-NR
5-、-C(O)NR
5-、-C(O)O、-NR
5C(O)NR
5-、-NR
5C(S)NR
5-および-O-からなる群から選択され、各R
5は独立して、水素または任意選択的に置換されたC
1~7アルキル基であり、各qおよびsは独立して、0~6から選択され、各rは独立して、1~6から選択される)
で表される]から選択され、
前記キレート剤、前記緩衝剤、及び、前記塩基性試薬が、凍結乾燥形態またはフリーズドライド形態にあり、
前記組成物は、ガリウム以外の金属を阻害する試剤を含まない、方法。
【請求項3】
前記ガリウム溶液が、ガリウム-68放射性核種ジェネレータから直接得られた溶出液である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶出液が、2未満のpHにある請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物が、薬学的に許容される塩基性試薬を含む請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記薬学的に許容される塩基性試薬が、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩および重炭酸塩から選択される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記薬学的に許容される塩基性試薬が、ナトリウムもしくはカリウムの水酸化物、炭酸塩および重炭酸塩から選択される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記キレート剤が、生物学的標的指向性剤に結び付いている請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記キレート剤が、式(I)の前記化合物である請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
式(I)の前記化合物において、式中のR
1が、請求項1または2に定義された部分式(iii)の基である請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
式(I)の前記化合物が、式(II)
【化7】
(式中、T、A
*、B、X、Y、R
1、mおよびpは、請求項1または2に定義された通りである)
の化合物またはその塩である請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記基A
*が、マレイミド基であるかまたはイソチオシアネート基を含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記薬学的に許容される緩衝剤が、リン酸緩衝剤、重炭酸塩もしくは炭酸塩緩衝剤、コハク酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、カコジル酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、双性イオン緩衝剤、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)緩衝剤、モルホリンプロパンスルホン酸(MOPS)、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’(2-エタンスルホン酸)(HEPES)、酒石酸、アルギニンまたは酢酸緩衝剤である請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記キレート剤が、生物学的標的指向性剤を含む請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記生物学的標的指向性剤が、がん特異的マーカーを標的にする配位子である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記生物学的標的指向性剤が、前立腺特異的膜抗原(PSMA)に特異的である請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記酸性ガリウム溶液が、
68Ga放射性核種カラムを無機酸で溶出することによって得られる請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記無機酸が塩酸である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載の方法に使用するためのキットであって、前記キットが、薬学的に許容される緩衝剤と、3~8のpH範囲内でおよび10~30℃の温度で放射性ガリウムをキレート化することができるキレート剤(前記キレート剤は、生物学的標的指向性剤と任意選択的に結び付いている)と、任意選択的にまた薬学的に許容される塩基性試薬とを含む組成物を含み、ここで、前記組成物が、ガリウム放射性核種ジェネレータから直接得られた溶液がそれに添加される場合に3~8の範囲のpHを有する溶液を生成し、
前記キレート剤が、式(I)
【化8】
の化合物またはその塩[式中、XおよびYの1つはC=Oであり、他はNRであり;
Rは、水素またはC
1~4
アルキル基であり;各mおよびpは独立して、0~6から選択され;R
1は、放射性核種をキレート化することができるキレート化基であり、そして
【化9】
(式中、R
2、R
3およびR
4は独立して、水素または任意選択的に置換されたC
1~7アルキル基である)
から選択され;
そしてZは、水素または式-B’-H、-B’-Aの基、または基-B’-A
*-Tであり、ここで、
Tは、被験者における興味のある標的に結合することができる標的指向性基であり;
Aは、基Tへのカップリングを可能にする反応基であり、
A
*は、反応した反応基Aであり;
B’は、キレート化基を反応基Aに結び付けるためのリンカー基であり、そして式:
【化10】
(式中、各Qは独立して、-NR
5-、-C(O)NR
5-、-C(O)O、-NR
5C(O)NR
5-、-NR
5C(S)NR
5-および-O-からなる群から選択され、各R
5は独立して、水素または任意選択的に置換されたC
1~7アルキル基であり、各qおよびsは独立して、0~6から選択され、各rは独立して、1~6から選択される)
で表される]から選択されるか、または、前記キレート剤が、前記生物学的標的指向性剤に結び付いているDKFZ-PSMA-11であり、
前記キレート剤、前記緩衝剤、及び、前記塩基性試薬が、凍結乾燥形態またはフリーズドライド形態にある、キット。
【請求項20】
成分が、1つもしくは複数の治療手段または分子イメージング法を実施するのに十分な量で存在し、容器内に保持されている請求項19に記載のキット。
【請求項21】
前記キレート剤が、請求項1~12のいずれか一項に定義された化合物である請求項19または20に記載のキット。
【請求項22】
請求項1~18のいずれか一項に記載の方法に使用するためのユニタリー組成物であって、前記組成物が、(i)pH3~8でおよび10~30℃の温度で、生物学的標的指向性剤に任意選択的に結び付いた、ガリウム放射性核種とキレート形成することができるキレート剤と、(ii)薬学的に許容される緩衝剤と、任意選択的にまた(iii)薬学的に許容される塩基性試薬とを含み、ここで、(ii)および
(iii)が、ガリウム放射性核種ジェネレータから直接得られた溶液がそれに添加される場合に3~8の範囲のpHをもたらすのに十分な量で前記組成物中に存在し、
前記キレート剤が、式(I)
【化11】
の化合物またはその塩[式中、XおよびYの1つはC=Oであり、他はNRであり;
Rは、水素またはC
1~4
アルキル基であり;各mおよびpは独立して、0~6から選択され;R
1は、放射性核種をキレート化することができるキレート化基であり、そして
【化12】
(式中、R
2、R
3およびR
4は独立して、水素または任意選択的に置換されたC
1~7アルキル基である)
から選択され;
そしてZは、水素または式-B’-H、-B’-Aの基、または基-B’-A
*-Tであり、ここで、
Tは、被験者における興味のある標的に結合することができる標的指向性基であり;
Aは、基Tへのカップリングを可能にする反応基であり、
A
*は、反応した反応基Aであり;
B’は、キレート化基を反応基Aに結び付けるためのリンカー基であり、そして式:
【化13】
(式中、各Qは独立して、-NR
5-、-C(O)NR
5-、-C(O)O、-NR
5C(O)NR
5-、-NR
5C(S)NR
5-および-O-からなる群から選択され、各R
5は独立して、水素または任意選択的に置換されたC
1~7アルキル基であり、各qおよびsは独立して、0~6から選択され、各rは独立して、1~6から選択される)
で表される]から選択されるか、または、前記キレート剤が、前記生物学的標的指向性剤に結び付いているDKFZ-PSMA-11であり、
前記キレート剤、前記緩衝剤、及び、前記塩基性試薬が、凍結乾燥形態またはフリーズドライド形態にある、組成物。
【請求項23】
前記ガリウム放射性核種キレート剤が、請求項1~12のいずれか一項に定義された式(I)の化合物である請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
溶液において、3.0~8のpH範囲を有する、請求項22または23に記載の組成物。
【請求項25】
薬学的に許容される塩基性試薬を含む請求項22~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記薬学的に許容される塩基性試薬が、アルカリ金属水酸化物である請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記薬学的に許容される塩基性試薬が、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムから選択される請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記薬学的に許容される緩衝剤が、リン酸緩衝剤、重炭酸塩もしくは炭酸塩緩衝剤、コハク酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、カコジル酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、双性イオン緩衝剤、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)緩衝剤、モルホリンプロパンスルホン酸(MOPS)、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’(2-エタンスルホン酸)(HEPES)、酒石酸、アルギニンまたは酢酸緩衝剤である請求項22~27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
前記生物学的標的指向性剤が、がん特異的マーカーを標的にする配位子である請求項22~28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記生物学的標的指向性剤が、前立腺特異的膜抗原(PSMA)に特異的である請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
フリーラジカル捕捉剤をさらに含む、請求項22~30のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療または診断に、例えば分子イメージング法に使用するための放射性ガリ
ウム錯体の調製方法に、これらの方法に使用するためのキットに、およびそれらに使用さ
れる新規組成物にならびに組成物またはキットを使用して実施される分子イメージングお
よび治療に関する。
【背景技術】
【0002】
分子イメージングは、よく知られており、インビボ診断法用の有用な技術である。それ
は、遺伝子発現、血流、生理学的変化(pHなど)、免疫反応および細胞輸送などの分子
プロセスの3次元マッピングなどの多種多様な方法に使用され得る。それは、病気を検出
し、そして診断する、最適治療を選択するために、ならびに治療の効果をモニターして効
き目の早期読み出しを得るために使用することができる。
【0003】
多数の別個の技術を、ポジトロン放出型断層撮影(PET)、単一光子放出型断層撮影
(SPET)、光学(01)磁気共鳴映像(MRI)、X線コンピューター断層撮影(C
T)およびチェレンコフ(Cerenkov)発光イメージング(CLI)などの、分子
イメージングのために原則として用いることができる。これらのモダルティの組み合わせ
、例えばPET/CTおよびSPET/CT(「マルチモーダルイメージング」)が、改
善された臨床応用を提供するために現れつつある。
【0004】
PETおよびSPETでイメージングする放射性核種は、極めて高い感度およびインビ
ボ分子プロセスを混乱させない、少量の(例えばインビボでピコモルの)投与造影剤とい
う利点を有する。さらに、放射性核種イメージングのターゲティング原理はまた、放射性
核種治療の標的化デリバリーにも適用することができる。典型的には、分子イメージング
または治療に放射性核種として使用される同位元素は、被験者にとって薬学的に許容され
る放射性追跡子を生成するために分子中へ組み込まれる。
【0005】
ほとんどの放射性追跡子は、比較的短い半減期を有し、だから滅菌条件下で、その場で
、例えば関連病院のラジオファーマシー部門で製造されなければならない。いくつかの病
院は、それらが専門的な放射化学研究室を持たない場合にはこれに関して苦労し、それ故
PETなどの治療を提案する病院の能力は、制限され得る。
【0006】
反応しやすい官能基を持った放射性追跡子を調製することは困難であり得る。例えば、
放射性追跡子への放射性同位元素の組み込みは、タンパク質構造を破壊し、そして望まし
くない複雑さを標識化プロセスに追加するであろう高温を伴い得る。反応しやすい官能基
を放射性追跡子に含めることは望ましいことであり得るし、だから穏和な条件を用いて調
製され得る放射性追跡子を提供することが必要である。さらに、使用時の標識化プロセス
は、放射性材料の最小の操作数、操作を行うための費用のかかる設備の最小限の必要性、
および調製の可能な最短時間で、できるだけ簡単であることが望ましい。結果として、改
善された機能性および改善された分子イメージング特性を持ったイメージング結合体(c
onjugate)が生み出された。
【0007】
1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N’’,N’’’-四酢酸
(DOTA)は、分子イメージングおよび標的化放射性核種治療に使用されるガリウム-
68(およびGa-67、In-1ll、Cu-64、Lu-177、Y-90などの他
の金属放射性同位元素)用の一般的なキレート剤である。しかしながら、DOTAは、(
68Gaの半減期約68分と比べて)約30~60分の長い放射標識化時間を有し、それ
は、追跡子の有用寿命を縮める。さらに、DOTA誘導体によるガリウムのキレート化は
多くの場合、バイオトレーサーに関連した任意の生物学的標的指向性剤に損傷を与え得る
、約95℃の高い標識化温度および酸性pHを必要とする。
【0008】
国際公開第2012/063028号パンフレットは、生物学的環境での解離に対して
安定性を保持しながら、放射性核種を室温で速くキレート化することができる幅広い二官
能性分子を記載している。金属キレート化部分に加えて、二官能性分子は、二官能性分子
を、例えば、身体中の細胞、組織または生体分子を標的にすることができる標的指向性基
などの、官能基に連結するための反応性部分を有する。それらは、中性pHでキレート形
成する。これらの二官能性分子と放射性核種とを含むキットもまた記載されている。
【0009】
しかしながら、残留問題が、放射性核種それら自体に関して生じる。これらは一般に、
ジェネレータからの溶出によって得られる。68Gaなどの、これらの同位元素の多くは
、低いpHで、例えば、約1などの、2未満のpHで溶出するにすぎないであろう。現在
のところ、それらは、放射性追跡子を生成するためのキレート剤の添加前にまたは添加後
にpHを上げるための複雑な前処理手順を必要とする。特に、ガリウムは、中性から高p
Hで溶液から沈澱する傾向があり、だから特定のハンドリングを必要とする。典型的には
、例えば68Gaジェネレータからの溶出液は、それがキレート剤と接触させられ得る前
にカチオン交換カートリッジの通過による精製工程に先ずかけられる。多くの場合に、標
識化手順もまた複雑である。例えば、キレート化化合物とともに緩衝剤および酸を添加し
、そして次に、標識化を達成するために、混合物を比較的高い、例えば100℃の温度に
加熱することが必要であり得る。次に生成物は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液に
希釈され、そして滅菌フィルターを通過させられる前に、SEP-Pak C-18カー
トリッジなどのさらなる精製カートリッジを通過する工程を必要とし得る。これはすべて
、複雑な、専用の装置を必要とし、要する時間は、放射性核種の有用寿命を損なう。
【0010】
国際公開第2012/063028号パンフレットは、68Ga溶出液が、緩衝液で処
理され、そして放射性追跡子を形成するために二官能性分子に添加される前に、さらに酸
性化され、それを濃縮するためにアニオン交換カラムをパスダウンされなければならない
と記載している。そのような手順は、熟練したスタッフと、必ずしも入手可能であるとは
限らない複雑な設備とを必要とする。それらは、厳密に滅菌した環境で実施されなければ
ならない。さらに、67Ga放射標識化は、先ず(酸性pHのものである)クエン酸67
Gaをキレート剤錯体と反応させる工程と、引き続く、2つの工程を再び含む、後続の緩
衝液で処理する工程とによって実施された。
【0011】
いわゆる「コールドキット」は、テクネチウム放射性標識で使用するために以前に製造
された。これらは、使用するのが比較的簡単であり、放射性核種の重要なハンドリングを
必要としない。しかしながら、68Gaとは対照的に、テクネチウムは、典型的には約4
~8、通常約7の、中性pHの近くでジェネレータから直接得られる。
【0012】
本出願人は、標的指向性基に任意選択的に結合してもよい、ある種のタイプの放射性核
種キレート剤群が、特に低いpHでのものか、中性pHかのどちらかで、それらを放射性
核種溶出液などのガリウム溶液とともに直接利用することを可能にする方法で配合できる
方法を開発した。結果として、本組成物は、病院でなどの臨床的状況で用いられ得る、長
持ちする、万能の、そして使用するのが容易な「キット」を提供するために使用すること
ができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1態様によれば、放射線治療法にまたは医用イメージング法に使用するため
のガリウムの放射性同位元素を含む錯体の調製方法であって、前記方法が、ガリウムジェ
ネレータから直接得られたガリウム放射性同位元素溶液を、薬学的に許容される緩衝剤と
、pHを3~8の範囲のレベルに上げるのに十分な量での、任意選択的にまた薬学的に許
容される塩基性試薬とを含む組成物に添加する工程を含み、ここで、組成物が、前記pH
範囲内でおよび適度な温度で放射性ガリウムをキレート化することができるキレート剤を
さらに含み、前記キレート剤が、生物学的標的指向性剤に任意選択的に結び付いている方
法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の方法を用いる幅広いキレート剤のキレート化効率の比較の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本出願人は、有効なガリウム放射標識化が、ガリウム溶液、特に、一般に2未満のpH
に、例えば1のpHにある68Ga放射性核種ジェネレータから得られる高酸性溶液など
の酸性溶液との接触によって直接達成され得ることを見いだした。適切でないガリウム沈
澱はまったく起こらない。結果として、ガリウム標識化手順は、例えばイオン交換カラム
または膜を使用する精製または濃縮工程などの追加の工程を回避することによって簡略化
され得る。特定の実施形態では、ガリウム放射性同位元素溶液がジェネレータからの68
Ga溶液である場合、それを最初の濃縮工程にかける必要はまったくなく、かつ、溶液を
イオン交換媒体に通す必要はまったくない。
【0016】
ガリウム放射性同位元素溶液を供給するために使用され得る好適なガリウム-68ジェ
ネレータには、Eckert & Ziegler’s GallaPharm 9,I
RE-Elite Galli Eo(商標)およびParsisotope Gall
uGENが含まれる。
【0017】
本方法はまた、サイクロトロンから生成し得る、クエン酸ガリウムなどの、67Ga塩
の溶液にも適用できる。結果として生じた放射標識生成物は、放射線治療または分子イメ
ージングなどの医療処置に直接使用され得る十分に高純度のものであり得る。この場合に
は、サイクロトロンの生成物が、本発明の方法によって必要とされるような「ガリウムジ
ェネレータから直接得られたガリウム放射性同位元素溶液」である。
【0018】
溶出液などの酸性溶液が、薬学的に許容される緩衝剤およびキレート剤ならびにまた、
要求されるまたは必要である場合、薬学的に許容される塩基性試薬の両方を含む組成物に
添加される。本明細書で用いるところでは、用語「塩基性試薬」は、酸性物質と接触させ
られた場合に中和効果を生み出し得る化合物を意味する。
【0019】
したがって、キレート剤は、「プレミックス」として薬学的に許容される緩衝剤と薬学
的に許容される塩基性試薬とを含む組成物中に存在する。これは、キレート化および中和
が同時に起こるように酸性ガリウム溶液がプレミックス組成物に直接添加される、効率的
な「単一段階」手順を提供する。
【0020】
放射性核種のためのキレート剤は、適度な温度、例えば10~30℃の温度で、好適に
は周囲温度で、例えば3~8の、適度なpHで、そして低濃度(例えば1~10μM)で
有効であり、かつ、短時間(例えば1~5分)で許容される収率に達する任意のキレート
剤であってもよい。この場合に、錯体の許容される収率は、投与された放射性標識の少な
くとも60%、例えば少なくとも70%、80%、90%または95%であろう。
【0021】
キレート化は、加熱工程または段階が回避され得るように、適度な温度で、特に周囲温
度で達成され得るし、このようにして手順を簡略化し、そしてガリウムの放射活性が良好
なレベルに留まることを確実にする。中性pHでならびに低いpHで有効である、このタ
イプの万能なキレート剤は、当技術分野で公知である。
【0022】
例えば、好適なキレート剤には、HBED、DFO、DTPA、DOTA、TRAP、
NOTA、NOPO、NODAGA、MPO、6SS、B6SS、PLED、TAME、
NTP、およびBAPENが含まれる。
【0023】
特に、放射性核種キレート剤は、式(I)
【化1】
の化合物またはその塩[式中、XおよびYの1つはC=Oであり、他はNRであり;各m
およびpは独立して、0~6から選択され;R
1は、放射性核種をキレート化することが
できるキレート化基であり、そして
【化2】
(式中、R、R
2、R
3およびR
4は独立して、水素または任意選択的に置換されたC
1
~7アルキル基である)
から選択され;
そしてZは、水素または式-B’-H、-B’-Aの基、または基-B’-A
*-Tであ
り、ここで、
Tは、被験者における興味のある標的に結合することができる標的指向性基であり;
Aは、基Tへのカップリングを可能にする反応基であり、
A
*は、反応した反応基Aであり;
B’は、キレート化基を反応基Aに結び付けるためのリンカー基であり、そして式:
【化3】
(式中、各Qは独立して、-NR
5-、-C(O)NR
5-、-C(O)O、-NR
5C
(O)NR
5-、-NR
5C(S)NR
5-および-O-からなる群から選択され、各R
5は独立して、水素または任意選択的に置換されたC
1~7アルキル基であり、各qおよ
びsは独立して、0~6から選択され、各rは独立して1~6から選択される)
で表される]
の化合物である。
【0024】
式(I)のキレート剤は、3~8の範囲のpHで非常に高い効率で、そして低濃度で短
時間に適度な温度でガリウム放射性核種などの放射性核種をキレート化することができる
。この一般タイプのキレート剤は、低いpHで働くにすぎない、それ故薬学的応用に好適
ではない組成物をもたらした、以前に知られたキレート剤の多くよりも有用な進歩を提供
する。このタイプのキレート剤と、中和アルカリ性塩および緩衝剤とを、特に単一のユニ
タリー組成物において、最初から組み合わせることによって、本出願人は、本組成物が、
複雑な準備または精製工程を必要とすることなく、サイクロトロンから得られる、67G
a塩、例えばクエン酸67Gaの溶液などの、酸性pHの範囲を有するガリウム溶液、な
らびに、これが低い、例えば2以下のpHにある場合でさえも、68Ga放射性核種ジェ
ネレータからの溶出液とともに直接使用され得ることを見いだした。これは、製造プロセ
スを簡略化し、最小限の操作で、特にガリウム放射性核種で使用するための「コールドキ
ット」を形成する可能性を与える。
【0025】
特定の実施形態では、本方法に使用される試薬(キレート剤、緩衝剤および塩基性試薬
)は、固体形態に、特に凍結乾燥(lyophilized)形態またはフリーズドライ
ド形態にある。これは、それらが、その場で放射性追跡子を生み出すためにいつでも使用
できる状態で貯蔵または輸送され得る安定した混合物を形成することを可能にする。一実
施形態では、緩衝剤および塩基性成分は、ガリウム放射性核種ジェネレータからの溶出液
がそれに添加されてもよい、1つの容器またはバイアルに含有される。このバイアルの内
容物は次に、固体キレート剤を含有する第2バイアルまたは容器に単に添加されてもよい
。別の特定の実施形態では、試薬はすべて、単一のユニタリー組成物で組み合わせられる
。好適には、ユニタリー組成物は、単一のイメージング操作にとって十分なキレート剤を
含有する単位へ分けられる。この場合には、ジェネレータは、ユニタリー組成物を保持す
るバイアルなどの容器中へ直接溶出されてもよい。
【0026】
本方法に使用される、薬学的に許容される緩衝剤および、必要な場合、任意の塩基性試
薬の量は、68Ga放射性核種ジェネレータからの溶出液などの、酸性ガリウム溶液の添
加時に形成される混合物のpHを、薬学的に許容されるレベル、例えば、3~8、例えば
、5.5~7などの4~7、特に、再構成時に6~7.5またはpH6.0~7.0の範
囲に上げ、そして維持する、ならびにキレート剤がガリウム放射性核種をキレート化する
のに有効であろうレベルに維持するのに好適であるべきである。本出願人は、これらの状
況下で、キレート剤の活性は、低いpHへの直接暴露によって有意に低下しないことを見
いだした。さらに、特にガリウム溶液を取り扱う場合に関連して以前に遭遇した問題であ
る、ガリウムの望ましくない沈澱は、高いpHへの暴露の結果としてまったく起こらない
。このpH範囲の組成物は、高酸性によって引き起こされる過度の苦痛なしに直接患者に
投与され得る。
【0027】
本方法に使用され、そして本組成物中にそのように存在するキレート剤の量は、キレー
ト剤の厳密な特質、キレート化されるべき放射性核種の特質、ならびに着手中の治療また
はイメージングプロセスの特質などの因子に非常に依存するであろう。しかしながら、典
型的には、単一の治療処置またはイメージング法を実施するための組成物中の必要とされ
るキレート剤の量は、0.1~10μモルの範囲にある。液体組成物、例えば、固体組成
物を形成するための凍結乾燥用に製造されたものまたは投与のための再構成後のものでは
、キレート剤の濃度は好適には、5μM超、例えば、10~100μMである。
【0028】
好適な薬学的に許容される緩衝剤には、無機および有機緩衝剤が含まれる。無機緩衝剤
の例としては、リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、リン酸カリウムおよびリ
ン酸アンモニウムなどの、リン酸緩衝剤;重炭酸塩もしくは炭酸塩緩衝剤;コハク酸二ナ
トリウム六水和物などのコハク酸緩衝剤;ホウ酸ナトリウムなどのホウ酸緩衝剤;カコジ
ル酸緩衝剤;クエン酸ナトリウムもしくはクエン酸カリウムなどのクエン酸緩衝剤;塩化
ナトリウム、塩化亜鉛、双性イオン緩衝剤が挙げられる。有機緩衝剤の例としては、トリ
ス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)緩衝剤、例えばTris HCl、T
ris EDTA、Trisアセテート、TrisホスフェートまたはTrisグリシン
など、モルホリンプロパンスルホン酸(MOPS)、およびN-(2-ヒドロキシエチル
)ピペラジン-N’(2-エタンスルホン酸)(HEPES)、デキストロース、ラクト
ース、酒石酸、アルギニンまたは酢酸アンモニウム、ナトリウムもしくはカリウムなどの
酢酸緩衝剤が挙げられる。特定の実施形態では、緩衝剤は、酢酸緩衝剤以外、そして酢酸
ナトリウム緩衝剤以外である。
【0029】
好適には、緩衝剤は、リン酸ナトリウム緩衝剤などの、リン酸緩衝剤である。緩衝剤は
、1つもしくは複数のリン酸塩を含んでもよく、特に一塩基性および二塩基性リン酸ナト
リウム塩を含んでもよい。例えば、好適な緩衝剤は、一塩基性リン酸ナトリウム無水と、
二塩基性リン酸ナトリウム七水和物とを、約1.5:1~2.5:1の比で含む。
【0030】
存在する緩衝剤の総量は、緩衝剤の特定の特質および錯体の特質ならびに実施されるべ
きである特定の分子イメージング法などの因子に依存するであろう。しかしながら典型的
には、緩衝剤は、5~95モルパーセントの量で乾燥組成物中に存在する。したがって、
液体組成物、例えば、固体組成物を形成するための凍結乾燥用に製造されたものまたは投
与のための再構成後のものでは、緩衝剤試薬の濃度は、好適には0.01~0.6M、例
えば0.1~0.5Mの範囲に、例えば約0.2M(20mM)にある。
【0031】
いくつかの実施形態では、緩衝剤が酢酸アンモニウムなどの特に「強い」緩衝剤である
場合には特に、薬学的に許容される塩基性試薬を含むことは必要ではないかもしれない。
しかしながら、特定の実施形態では、薬学的に許容される塩基性試薬は、溶出液の中和を
容易にするために緩衝剤に添加される。好適な薬学的に許容される塩基性試薬には、ナト
リウム、カリウム、カルシウムもしくはマグネシウムなどの、アルカリもしくはアルカリ
土類金属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩もしくは酸化物などのアルカリ性塩、またはアン
モニウム塩もしくは塩基性有機試薬が含まれる。例えば、好適な試薬は、水酸化ナトリウ
ム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マ
グネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、ト
リエタノールアミン、またはそれらの任意の組み合わせから選択されてもよい。特に、薬
学的に許容される塩基性試薬は、アルカリ金属水酸化物、特に水酸化ナトリウムもしくは
カリウムなどの、アルカリ金属塩である。代わりの実施形態では、塩基性試薬は重炭酸ナ
トリウムである。
【0032】
組成物中に存在する薬学的に許容される塩基性試薬の量は、試薬の厳密な特質、キット
の意図される使用およびこうして、それとともに使用することを意図される特定の放射性
核種ジェネレータの溶出液のpHなどの因子に非常に依存するであろう。しかしながら典
型的には、単一の治療またはイメージング操作に使用するための組成物中のそのような試
薬の量は、0.5~0.75ミリモルである。したがって、液体組成物、例えば、固体組
成物を形成するための凍結乾燥用に製造されたもの、または投与のための再構成後のもの
では、塩基性試薬の濃度は好適には、0.01~0.6M、例えば0.1~0.15Mの
範囲にある。
【0033】
特定の実施形態では、式(I)のキレート剤は、上に定義されたような標的指向性部分
Tに結び付くことになる可能性があるか、または可能性を有する。
【0034】
本発明の組成物に使用される錯体は好適には、特に上に記載されたように共有結合で、
キレート剤に結合している生物学的標的指向性剤を含むであろうし、ここで、式(I)の
化合物は、基「T」を含むが、さもなければ、生物学的標的指向性剤は、他の手段によっ
て、例えば結合によって式(I)の化合物と結合していてもよい。特に、生物学的標的指
向性剤は、キレート剤に共有結合しており、キレート剤は、式(II)(式中、Zは基-
B’-A
*-Tである)
【化4】
の化合物またはその塩であり;式中、T、A
*、B’、X、Y、R
1、mおよびpは、上
に定義された通りである。
【0035】
別の実施形態では、キレート剤は、標的指向性基を反応させることができる化合物であ
り、それ故式(III)
【化5】
の化合物またはその塩であり;式中、T、A、B’、X、Y、R
1、mおよびpは、上に
定義された通りである。
【0036】
式(I)の特に好ましい例は、国際公開第2012/063028号パンフレットに記
載されている。
【0037】
特定の実施形態では、R1は、上に定義されたような部分式(i)または(ii)の基
、例えば部分式(i)の基などである。
【0038】
好適には、R3およびR4は、水素またはメチルなどの低級C1~4アルキル基から選
択される。特定の実施形態では、R3は水素である。別の特定の実施形態では、R4はメ
チルである。
【0039】
特定の実施形態では、各X、Y、m、p、Q、s、rおよびqは同様である。
【0040】
特定の実施形態では、XはC(O)であり、YはNRである。好適には、Rは、水素ま
たはC1~4アルキル基であり、特に水素である。
【0041】
特定の実施形態では、pは1である。別の特定の実施形態では、mは2である。
【0042】
特定の実施形態では、qは0である。
【0043】
好適には、基B内で、Qは基-C(O)NR5である。特にR5は、水素などの、水素
およびC1~4アルキル基から選択される。
【0044】
本発明の組成物に使用するための式(I)中の好適な生物学的標的指向性部分Tは、問
題になっている生体系での興味のある、異なる標的に分子を導くことができる基であろう
。一般に、これらはそれ故、標的指向性部分と興味のある標的とが、互いに対して特定の
特異性を有するように、興味のある標的と「特異的な結合ペア」を形成するだろうし、そ
してそれらは、正常な条件で他の分子への結合よりもむしろ互いに結合する。特異的な結
合ペアの例は、当技術分野でよく知られており、例えば、レセプターおよび配位子、酵素
および基質、ならびに抗体などの免疫グロブリンおよび抗原を含む。したがって、標的指
向性部分Tは、ペプチド、タンパク質もしくはアプタマーなどの、他の生体分子、または
、特異的なインビボ分子標的に結合する、小分子配位子であってもよい。興味のあるクラ
スの標的には、罹患した細胞もしくは組織上に発現する配位子もしくはレセプターもしく
は輸送体、病状に関連した細胞表面抗原、または腫瘍マーカー、例えばがん特異的マーカ
ーもしくは組織特異的マーカーが含まれる。
【0045】
特定の実施形態では、標的指向性部分Tは、前立腺特異的膜抗原(PSMA)などのが
ん特異的マーカーを標的にする配位子である。そのような配位子には、DKFZ-PSM
A-11(Eder M.ら,Bioconjugate Chem.2012,688
)が含まれる。
【0046】
あるいはまた、標的指向性部分Tは、骨髄単球性系統の細胞および白血病細胞などのC
D33を発現させるがん細胞を画像化するための、anti-CD33抗体などの抗体、
またはその結合断片を含んでもよい(Embersonら,J.Immunol.Met
hods.305(2):135-51、2005を参照されたい)し、または糖タンパ
ク質のこの族のメンバーとしての糖タンパク質がん胎児性抗原(CEA)に結合すること
ができる抗体は、大腸がん細胞、胃がん細胞、膵臓がん細胞、肺がん細胞、甲状腺髄様が
ん細胞および乳がん細胞、ならびにanti-PSMA抗体およびそれらの結合断片上に
発現する。他の好適な抗体は、細胞接着分子への親和性を示し得る。これらには、マクロ
ファージ接着分子、シアロアドヘシンに結合する、モノクローナル抗体、SER 4が含
まれる。シアロアドヘシンは、マクロファージの表面上に、例えば、大量に脾臓、肝臓、
リンパ節、骨髄結腸および肺のマクロファージ上に見いだされる。
【0047】
好適なT基のさらなる例は、TIMP-2などの、メタロプロテイナーゼの組織阻害剤
(TIMP)であり、それは、メタロプロテイナーゼの発現が転移プロセスに関与してい
るので、メタロプロテイナーゼ発現のイメージングマトリクスを可能にさせる(Gier
singら,Bioconjug Chem.12(6):964-71,2001を参
照されたい)。その上さらなる実施形態では、標的指向性部分Tは、補体レセプター2(
CR2)などのポリペプチドであってもよい。その上さらなる例は、腫瘍、アテローム性
動脈硬化プラークに一般に見られるように血管形成を受けつつある、そしてRGDペプチ
ド誘導体を、好適な反応基Aによって二官能性化合物に結び付けることによって、梗塞し
た心筋層などの罹患組織を修復しつつある組織の内皮に高度に発現する[アルファ][ニ
ュー][ベータ]3インテグリンに対する親和力またはペプチドシーケンス・アルギニン
-グリシン-アスパラギン酸(RGD)を利用する。他のT基は、例えばカルチノイド、
甲状腺髄様がんおよび他の神経内分泌腫瘍でのがん細胞の表面で高度に発現したソマトス
タチンレセプターへの親和性を有するソマトスタチンのペプチドオクトレオチドまたは関
連類似体を含んでもよい。
【0048】
別の実施形態では、標的指向性基Tは、結果として生じた錯体をアポトーシスまたは細
胞死イメージング研究に用いることができるように、ホスファチジルセリン(PS)に結
合することができるポリペプチドである。そのようなポリペプチドの例としては、Ann
exin(アネキシン)VとシナプトタグミンのC2ドメインとが挙げられる。1つもし
くは複数のC2ドメインを含むポリペプチドは、当技術分野でよく知られている。いくつ
かのポリペプチドはたった1つのC2ドメインを有するが、他は、2つもしくはそれ以上
のC2ドメインを有し、これらのドメインは一般に、名称の終わりに(アルファベット順
に)文字を付けることによって表される(例えば、C2A、C2Bなど)。たった1つの
C2ドメインを含有するタンパク質については、ドメインはC2ドメインと単に言われる
。特定の例としては、ラット・シナプトタグミンIのC2Aドメインまたは別の種のシナ
プトタグミンのC2Aドメインが挙げられる。C2ドメインを含有するタンパク質のさら
なる例としては、シナプトタグミン1-13、セリン/トレオニンキナーゼのタンパク質
キナーゼC族メンバー、ホスホリパーゼA2、ホスホリパーゼ51、因子VおよびVII
Iなどの凝固カスケードにおける補因子、ならびにコピン(copine)族のメンバー
が挙げられるが、それらに限定されない。人間シナプトタグミンには、シナプトタグミン
1-7、12および13が含まれる。
【0049】
他の好適な標的指向性部分Tは、ボンベシン、ガストリン、またはVCAM標的指向性
ペプチドである。
【0050】
標的指向性部分Tは、好適なリンカー基A*によってキレート剤分子と結び付いて式(
I)の化合物を形成する。リンカー基A*の特質は、標的指向性部分Tの特質に依存し、
従来化学を用いて決定されるであろう。
【0051】
あるいはまた、それらは、骨、特に骨肉腫を標的にする、ビスホスホネート誘導体など
のカルシウムキレート化基を含んでもよい。
【0052】
代わりの実施形態では、キレート剤は、標的指向性基を含まなくてもよいが、腎機能の
モニタリングにおけるなどの、一般的な放射化学モニタリング用の、金属キレート剤とし
て単に働く。
【0053】
典型的には、リンカー基A*は、特定の実施形態では、タンパク質反応性官能基である
反応基Aから形成される。タンパク質反応基は、タンパク質もしくは変性タンパク質もし
くはペプチドまたはこの目的のために誘導体化された他のビヒクルと反応し得る。好まし
くは、タンパク質反応基Aは、マレイミド基、アルキルもしくはアリールイソチオシアネ
ートなどのイソチオシアネート基、アルデヒド、エステル、またはアルキン、アジド、ア
ルケン、ヒドラジン、ヒドラジン誘導体、アルコキシアミン、アルコキシアミン誘導体、
アミノキシ、チオール基などの「クリック」試薬であるか、またはそれらを含む。マレイ
ミド、イソチオシアネート、アルデヒドおよびエステル基は、ペプチドチオール-または
アミン-含有残基(システイン、リジン)と効率的に反応し、だから結合体は容易に生じ
ることができる。他のバイオ直交型官能基を、それらをアルキン、アジド、アルケン、ヒ
ドラジン、アミノキシまたはチオール基と結合させるという目的で巧みに処理してペプチ
ドおよびタンパク質中に入れることができる。
【0054】
本明細書で用いるところでは、用語「アルキル」は、特に明記しない限り、1~10、
好適には1~7個の炭素原子を含有する、直鎖もしくは分岐の基を意味する。用語「アリ
ール」は、アルキル基に任意選択的に結び付いた、例えばフェニル基を含む芳香族基を意
味する。
【0055】
式(I)の化合物は、国際公開第2012/063028号パンフレットに記載されて
いる方法を用いて調製され得る。
【0056】
例えば、上の式(II)の化合物は、一般論として、基Aを、標的指向性部分Tか、キ
レート剤分子かのどちらかに結び付けることによって得られ、次にこれらの他のものに連
結される。したがって例えば、それらは、反応させられる、上の式(III)の化合物を
、式(IV)
T-H
(IV)
(式中、Tは、上に定義された通りである)
の化合物と反応させることによって得られ得る。好適な反応条件は、基A、Tなどの厳密
な特質などの因子に依存し、熟練した化学者に決定可能であろう。
【0057】
式(III)の化合物はそれら自体、例えば国際公開第2012/063028号パン
フレットの実施例5に示されているように、式(V)
【化6】
の化合物と、マレイミド基などの反応基とのカップリングによって製造されるであろう。
【0058】
式(V)(式中、Bは、基H
2N(CH
2)
2C(O)NHである)の特定の化合物は
、Zhou T.ら,J.Med Chem.2006,49,4171-4182に示
されている(下のスキームの化合物(I)を参照されたい)。この化合物は、式
【化7】
CP256
のものである(THPとしても知られ得る)トリス(ヒドロキシピリジノンキレート剤C
P256の誘導体である。
【0059】
これは、国際公開第2012/063028号パンフレットに記載されているように誘
導体化して上の式(III)(式中、Aはマレイミド基である)の化合物を形成し得る。
したがって、式(III)の特定の化合物は、次の通り:
【化8】
式YM103のもの、またはその塩のものである。
【0060】
式IIIの代わりの化合物は、式(I)(式中、Aは、第一級アミンに結合することが
できる、イソチオシアネート基を含む)の化合物である。
【0061】
そのような化合物の例としては、示された式H
3THP
1およびH
3THP
2の化合物
またはそれらの塩が挙げられる。
【化9】
【0062】
これらの化合物は、例えば次の反応スキーム:
【化10】
に示されるような国際公開第2012/063028号パンフレットに記載されているも
のに似た方法を用いて調製され得る。
【0063】
上のスキームにおいて、Zhouら(上記を参照)に記載されているような化合物(1
)は、エタノール中でトリエチルアミンおよび二硫化炭素と反応させられて、水添加時に
沈澱したジチオカルバメート中間体を与える(Munchら,Tetrahedron
Letters(2008),49,3117。沈澱した中間体は、二硫化炭素/エタノ
ールの溶液に再懸濁させられ、ジ-tert-ブチルジカーボネートと触媒量の4-ジメ
チルアミノピリジンとの添加は、(2)の形成をもたらした。DCM中のBCl3でのベ
ンジル基のその後の除去、引き続きトリフルオロエタノールの添加は、H3THP1をも
たらし、それは、逆相半分取HPLCを用いて精製されて生成物をトリフルオロ酢酸塩と
して与える。
【0064】
H3THP2を合成するために、DMF中の過剰のp-フェニレンジイソチオシアネー
トとジイソプロピルエチルアミンとが(1)の溶液に添加され、これに、逆相半分取HP
LCを用いる(3)の単離が続く。(2)と同様に、(3)のベンジル基は、DCM中の
BCl3を使用して除去され、これに、メタノールの添加が続いて、二官能性キレート剤
H3THP2の塩化物塩をもたらす。
【0065】
好適な塩は、ハロゲン化物塩、特に塩化物などの薬学的に許容される塩である。そのよ
うな化合物は、室温および生理学的pHで、68Gaでの速い放射標識化(5分未満)を
生じさせることが分かった。そのようなpHは、68Gaジェネレータからの直接の物質
を使用する本発明の組成物で達成することができる。
【0066】
本発明の組成物は、当技術分野で理解され得るような賦形剤または薬学的に許容される
キャリアまたはフィラー、ならびに安定剤、抗菌剤、抗凍結剤、酸化防止剤、フリーラジ
カル捕捉剤、可溶化剤、等張化剤(tonicifying agent)、界面活性剤
および、凍結乾燥に使用される、崩壊温度調整剤などの試薬をさらに含み得る。
【0067】
本調合物に使用するための好適なフィラーには、例えば、マンニトール、ラクトース、
サッカロース、トレハロース、ソルビトール、グルコース、もしくはラフィノースなどの
糖類、またはアルギニン、グリシンもしくはヒスチジンなどのアミノ酸、ならびにデキス
トランもしくはポリエチレングリコール(PEG)などのポリマーが含まれる。
【0068】
好適なフリーラジカル捕捉剤は、アスコルビン酸またはゲンチシン酸などの、自己放射
線分解から保護するものである。本組成物に添加されてもよいフリーラジカル捕捉剤の量
は、使用される捕捉剤の特質および組成物の特質などの因子に依存するであろう。典型的
な実施形態では、キットは、1~4重量/重量%のフリーラジカル捕捉剤を含有してもよ
い。
【0069】
等張化剤は、例えば、塩化ナトリウム、サッカロース、マンニトールまたはデキストロ
ースから選択されてもよい。
【0070】
抗菌剤は、ベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、メチルパラベンまたは
エチルパラベンから選択されてもよい。
【0071】
界面活性剤には、ポリソルベート80などのポリソルベートが含まれてもよい。
【0072】
崩壊温度調整剤は、例えば、デキストラン、ヒドロキシエチルデンプン、Ficoll
(フィコール)またはGelatin(ゼラチン)から選択されてもよい。
【0073】
特定の実施形態では、本組成物は、ベルギー国特許第1021191号明細書、国際公
開第2016030103号パンフレットまたは国際公開第2016030104号パン
フレットに記載されているような、ガリウム以外の金属を阻害し得る試剤を含まない。そ
のような試剤は、単糖類、二糖類または多糖類ならびにそれらの誘導体などの糖類である
。特定の例は、グルコース、フラクトース、β-シクロデキストリン、マンノースおよび
フコイダンである。本出願人らは、そのような試剤が本発明の組成物に必要とされないこ
とを見いだした。
【0074】
これらの組成物は、医用イメージング法に使用するためのキットの形にされてもよく、
そのようなキットは、本発明のさらなる態様を形成する。したがって、本発明は、上に記
載されたような方法に使用するためのキットであって、前記キットが、薬学的に許容され
る緩衝剤と、任意選択的にまた薬学的に許容される塩基性試薬と、3~8のpH範囲内で
および適度な温度で放射性ガリウムをキレート化することができるキレート剤(前記キレ
ート剤は、生物学的標的指向性剤に任意選択的に結び付いている)とを含む組成物を含む
キットをさらに提供する。キレート剤は、キットにおいて緩衝剤組成物との混ぜ物にある
。それらは、溶液、特に滅菌溶液の形態で提供されてもよいが、キットの成分は好適には
、固体形態、特に凍結乾燥形態またはフリーズドライド形態にある。各キットは好適には
、容器内に保持された、1つもしくは複数の分子イメージング法を実施するのに十分な試
薬を含む。容器は、滅菌密封容器であり、窒素ガスなどの不活性雰囲気で満たされてもよ
い。そのようなキットは、使用説明書および外側パッケージングなどの要素をさらに含ん
でもよく、適切なジェネレータ中に存在するガリウム放射性標識の供給を用いる、その場
再構成のために病院またはクリニックに供給されてもよい。
【0075】
これらのキットに使用される、ある種の組成物は新規であり、これらは、本発明のさらなる態様を形成する。したがって、本発明は、上に記載された方法に使用するためのユニタリー組成物であって、前記組成物が、(i)pH3~8でおよび適度な温度で、生物学的標的指向性剤に任意選択的に結び付いた、ガリウム放射性核種とキレート形成することができるキレート剤と、(ii)薬学的に許容される緩衝剤と、任意選択的にまた(iii)薬学的に許容される塩基性試薬とを含み、ここで、(ii)および任意選択的に(iii)が組成物中に、ガリウムジェネレータから直接の溶出液が組成物に添加される場合に3~8の範囲のpHをもたらすのに十分な量で存在する組成物をさらに提供する。
【0076】
特に、ガリウム放射性核種キレート剤は、上に記載されたような式(I)の化合物であ
る。組成物は、溶液に、例えば滅菌溶液にあってもよいが、好適には固体形態に、例えば
凍結乾燥形態またはフリーズドライド形態にある。
【0077】
本発明の組成物は、ガリウムジェネレータから直接得られた酸性ガリウム溶液の添加後
に、溶液において、3~8の範囲のpHを有するものである。それは好適には、上に記載
されたような薬学的に許容される緩衝剤と、また上に記載されたような、また薬学的に許
容される塩基性試薬とを含む。
【0078】
さらなる態様では、本発明は、上に記載されたような本発明の組成物の製造方法であっ
て、前記方法が、上に定義されたようなキレート剤を、好適な量の薬学的に許容される塩
基性緩衝剤および任意選択的にまた薬学的に許容される塩基性試薬と混合する工程と、結
果として生じた混合物を任意選択的に凍結乾燥させる工程とを含む方法を提供する。
【0079】
特定の実施形態では、本組成物は、水溶液中で上に記載されたような成分を一緒に混合
することによって調製される。溶液は好適には、必要に応じて上に記載されたようなフィ
ラーおよび他の賦形剤と一緒に、5μM超の、例えば10~100μMの濃度での式(I
)のキレート剤と、01.~0.6Mの濃度での塩基と、0.01~0.6Mの濃度での
緩衝剤とを含む。その後、組成物は好適には、乾燥組成物を生成するために、当技術分野
で理解され得るような凍結乾燥手順にかけられる。
【0080】
凍結乾燥手順にかけられる組成物の量は、1つもしくは2つの治療操作またはイメージ
ング操作にとって十分なものを生成するのに十分であってもよい。そのような場合には、
組成物をバイアル、特にガラスバイアルで凍結乾燥させることが好ましいかもしれない。
あるいはまた、より大量の組成物が乾燥にかけられる場合には、乾燥組成物は、個々の投
与量単位へその後分けられてもよい。
【0081】
このようにして製造されるとすぐに、組成物は、その場で、放射性標識ジェネレータか
らの68Ga溶出液などの、酸性ガリウム溶液でいつでも再構成できる状態で、分配のた
めに梱包され、貯蔵されてもよい。
【0082】
そのようなジェネレータにおいて、68Ga放射性核種はカラム上に供給され、カラム
は、イメージング法に使用するための68Ga放射性核種を得るために、酸、特におよび
0.05M~1M、例えば0.05~0.6M HClの濃度での、特に約m0.1M
HClでの、塩酸などの無機酸で溶出される。
【0083】
分子イメージングまたは治療に使用され得る、67Ga放射性核種は一般に、サイクロ
トロン手順で製造され、クエン酸67Gaなどの酸塩の形態で供給される。生成した溶液
は、本発明の方法に酸性ガリウム溶液として使用され得る。
【0084】
本発明に従って、得られた生成物は、溶出液のpHが標識化プロセスと同時に塩基およ
び緩衝剤の存在によって上方へ調整されるので、イメージング法または治療などの生理学
的方法に直接使用可能である。本方法は、迅速で、かつ、少ないハンドリング段階で操作
するのが容易である。これは、操作者への最小限の放射線暴露、微生物汚染の最小限の機
会、ならびに複雑なおよび費用のかかる設備の最小限の必要性で、放射性核種の半減期が
損なわれる前に、試薬が良好な有用寿命を有することを確実にする。
【0085】
試薬に添加される溶出液の量は、溶出液および組成物の厳密な特質、イメージング法に
とって必要とされる試薬の必要量、組成物が投与されるべき患者のサイズおよび特質など
の因子に依存して変わるであろう。しかしながら、典型的には、約3~7ml、例えば約
5mlの溶出液が、好適な投与量単位を生成するために添加されるであろう。
【0086】
要求される場合、本発明の乾燥組成物は、溶出液の添加前に、滅菌水または生理食塩水
で再水和させられてもよいが、特定の実施形態では、溶出液は直接乾燥試薬に添加される
。
【0087】
さらなる態様では、本発明は、分子イメージング法または放射性核種治療法に使用する
ための上に記載されたような方法によって得られた放射標識生成物を提供する。好適な分
子イメージング法は、当技術分野でよく知られており、PETおよびSPECT法ならび
にX線コンピューター断層撮影(CT)およびチェレンコフ発光イメージング(CLI)
を含む。
【0088】
したがって、さらなる態様では、本発明は、患者の分子像の取得方法であって、前記方
法が、上に記載されたような放射標識生成物を生み出すためのプロセスを実施する工程と
、この生成物を、それを必要としている患者へ投与する工程と、分子イメージング技術を
用いて結果をモニターする工程とを含む方法を提供する。
【0089】
その上さらなる態様は、患者を放射性核種で治療する方法であって、前記方法が、上に
記載されたような67Ga放射標識生成物を生み出すためのプロセスを実施する工程と、
この生成物を、それを必要としている患者へ投与する工程を含む方法を提供する。
【0090】
投与される放射標識生成物の量は、患者および組成物中の標的指向性部分によって標的
にされる器官または組織の特質、放射性標識および用いられる特定のイメージング技術ま
たは治療の特質などの因子に依存して変わるであろう。正確な投与量は、通常の臨床診療
に従って決定されるであろう。
【0091】
したがって、本発明は、ガリウム、特に68Gaが利用される幅広い臨床的状況に使用
するための有効な「コールドキット」を提供する。生理学的に許容される生成物は、室温
で迅速に、かつ、容易に生み出され得るし、だから放射性標識の利用可能な半減期は最大
にされる。そのようなキレート剤、特に、式(I)の化合物を使用する標識化のレベル(
放射化学的純度)は、典型的には95%を超えて、特に有効であり、それ故、有意な精製
手順は回避され得る。
【0092】
本発明はこれから、添付図面に関連して実施例によって具体的に説明され、図面におい
て:
図1は、本発明の方法を用いる幅広いキレート剤のキレート化効率の比較の結果を示
すグラフである。
【0093】
しかしながら、具体的な詳細が本発明を実行するために必要とされないことは当業者に
は明らかであろう。本発明の具体的な実施形態の以下の記載は、例示および説明の目的の
ために提示される。それらは、本発明について網羅的であることを、または開示される厳
密な形態に本発明を限定することを意図しない。多くの修正および変形が、上の教示を考
慮して可能である。実施形態は、本発明の原理およびその実用的応用を最良に説明するた
めに、それによって当該技術に熟達した他者が、本発明および様々な修正を加えた様々な
実施形態を、考えられる特定の使用に適しているように最良に利用することを可能にする
ために示され、記載される。
【実施例】
【0094】
実施例1
68Ga標識試薬の調製
下の表1に示されるように様々な濃度の薬学的に許容される緩衝剤(リン酸ナトリウム
緩衝剤)と、薬学的に許容される塩基性試薬(水酸化ナトリウム)とを含有する、キレー
ト剤CP256を含む幅広い組成物を調製した。混合物を、一晩真空下で凍結乾燥させた
。
【0095】
EckertおよびZeigler 68Gaジェネレータを、0.1M HClで溶
出して、1溶出当たり300MBqの5ml溶離液を生成した。溶離液の部分(1ml)
を、室温で組成物のそれぞれに添加した。
【0096】
結果として生じた溶液のpHを測定した。CP256(THP)の%放射標識化を、T
LCを用いて詳細に調べた。結果を、下の表1にまた示す。
【0097】
【0098】
結果は、放射標識CP256が2分間で高レベルの効率で得られたことを示す。高レベ
ルの純度はいくつかの場合には、患者への投与前にガリウムをさらに精製する必要がまっ
たくないことを意味するであろう。
【0099】
実施例2
68Ga標識試薬の調製
実施例1の方法論を、0.13M重炭酸ナトリウムと、0.1Mリン酸緩衝剤(PBS
)と、以下の表にリストアップされるような幅広いCP256濃度とを含む幅広い調合物
を使用して繰り返した。高効率の標識化が、表2および2aに例示されるような濃度のキ
レート剤に関して達成された。
【0100】
【0101】
【0102】
実施例3
異なるキレート剤を使用する放射標識化の比較
実施例1の方法を、様々な濃度での幅広い異なるキレート剤(DOTA、NOTA、T
RAP、NOTP、HBED、DFOおよびTHP)を使用して繰り返した。リン酸緩衝
剤および水酸化ナトリウムの量は、0.1M溶出液の添加時に4か7かのどちらかのpH
を与えるように調整した。溶液を、10分間室温でインキュベートした。
【0103】
pH7での結果を
図1に示す。95%を超える、許容される標識化効率は、THPおよ
びDFOで見いだされたにすぎなかった。すべての他のキレート剤は、pH7.0で95
%超標識化しなかった。さらに、ほとんどの他のキレート剤の濃度は、90%超の標識化
を達成するために非常に高くなければならなかった。
【0104】
実施例4
凍結乾燥キット
上に記載されたように調製された、そしてPSMA標的指向性剤(30ナノモル)に結
び付いたCP256(THP)(40μg)と、重炭酸ナトリウム(42mg)と、一塩
基性リン酸ナトリウム無水(8.2mg)と二塩基性リン酸ナトリウム七水和物(8.5
mg)とを含む、凍結乾燥試薬混合物を含むバイアルを調製する。それは、Eckert
およびZeigler 68Gaジェネレータから得られた0.1M HCl溶出液(5
ml)を使用して再構成して、治療にまたは分子イメージングに使用され得る、pH6.
5~7.0の溶液を生成することができた。
【0105】
実施例5
代わりの凍結乾燥キット
実施例4に記載されたような、しかし1~2mgのアスコルビン酸をまた含有する凍結
乾燥試薬混合物を含むバイアルをまた調製し得る。このキットはまた、Eckertおよ
びZeigler 68Gaジェネレータから得られた0.1M HCl溶出液(5ml
)を使用して再構成して、治療にまたは分子イメージングに使用され得る、pH6.5~
7.0の溶液を生成することができる。