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特許7412511気相媒質の品質を監視するための方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】気相媒質の品質を監視するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3504 20140101AFI20240104BHJP
【FI】
G01N21/3504
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022188560
(22)【出願日】2022-11-25
(62)【分割の表示】P 2018567082の分割
【原出願日】2017-06-12
(65)【公開番号】P2023011020
(43)【公開日】2023-01-20
【審査請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】102016007825.1
(32)【優先日】2016-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500331909
【氏名又は名称】ハイダック エレクトロニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ホルスト マネバッハ
【審査官】三宅 克馬
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/054594(WO,A1)
【文献】特開2001-242077(JP,A)
【文献】特開2004-239611(JP,A)
【文献】特開2010-032317(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0186447(US,A1)
【文献】特開2007-248369(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0228688(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクステーションから放出された気相媒質の品質を赤外測定装置(42)によって監視するための方法であって、
前記赤外測定装置(42)は、消費機器に達する気相媒質の放出経路に接続されていて、種々異なる波長と圧力赤外線の透過を測定し、それに基づいて品質に影響する不純物の濃度を計算し、少なくとも設定可能な品質パラメータを超えるとそのことが表示されるようにする、方法において、
前記赤外測定装置(42)は、タンクステーションにおける気相媒質の品質を監視するために使用されており、かつ、オンラインで測定を行うために前記気相媒質の前記放出経路に接続されており、
前記気相媒質は水素であり、
前記放出経路に接続された弁装置(46)を使用して試料次々と採取して不純物に関してチェックし、前記タンクステーションから接続された前記消費機器への気相媒質の同時放出が中断されないように、前記赤外測定装置(42)が前記放出経路に接続されており、
耐圧管部材(12)を有する高耐圧赤外キュベット(10)が使用されており、
金めっきされた内管の形態の導波管(14)が前記耐圧管部材(12)の内側に配置され、前記内管は前記耐圧管部材(12)の中に挿入されて取り付けられている、方法。
【請求項2】
前記赤外測定装置(42)によって双極子モーメントに基づき赤外活性である不純物が検出されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記赤外測定装置(42)は、赤外分光法を用いて試料の吸光帯の位置から不純物の種類を決定し、赤外線が試料を透過する際に赤外線が減衰することにも基づいてそれぞれの不純物の濃度を決定することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
試料中のそれぞれの不純物の濃度を決定するためにランベルト・ベールの法則を用いることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記赤外測定装置(42)によって試料分析を、50MPa(500バール)を超える非常に高い圧力で行うことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記赤外測定装置(42)の制御・計算ユニット(52)は、密度が種々異なるそれぞれの試料における透過測定を一時保存して、濃度の決定のために互いに減算すること、及び試料密度を決定するために試料の圧力測定を行い、必要な場合は追加的に試料の温度測定を行うことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
タンクステーションから放出された気相媒質、特に水素の品質を赤外測定装置(42)によって監視するための測定装置(44)であって、
前記赤外測定装置(42)は、消費機器に達する気相媒質の放出経路に接続されていて、種々異なる波長と圧力赤外線の透過を測定し、それに基づいて品質に影響する不純物の濃度を計算し、少なくとも設定可能な品質パラメータを超えるとそのことが表示されるようにする、測定装置(44)において、
前記気相媒質の品質を監視するための前記測定装置(44)は、水素タンクステーションに接続可能である又は組み込まれており、
前記赤外測定装置(42)は、タンクステーションにおける気相媒質の品質を監視するために使用されており、かつ、オンラインで測定を行うために前記気相媒質の前記放出経路に接続されており、
前記気相媒質は水素であり、
前記放出経路に接続された弁装置(46)を使用して試料次々と採取して不純物に関してチェックし、前記タンクステーションから接続された前記消費機器への気相媒質の同時放出が中断されないように、前記赤外測定装置(42)が前記放出経路に接続されており、
耐圧管部材(12)を有する高耐圧赤外キュベット(10)が使用されており、
金めっきされた内管の形態の導波管(14)が前記耐圧管部材(12)の内側に配置され、前記内管は前記耐圧管部材(12)の中に挿入されて取り付けられている、測定装置(44)。
【請求項8】
前記測定装置は、次のコンポーネント、即ち、
高耐圧赤外キュベット(10)、
赤外線エミッタ(28)、
赤外線検出器(40)、
圧力センサー(P)、及び、
制御・計算ユニット(52)を有することを特徴とする請求項7に記載の測定装置。
【請求項9】
前記高耐圧赤外キュベット(10)は、次のコンポーネント、即ち、試料の入口と試料の出口のための接続部(16;18)を有することを特徴とする、請求項8に記載の測定装置。
【請求項10】
前記耐圧管部材(12)は、管端において少なくとも1つのフランジ部分(22;24)を備え、前記少なくとも1つのフランジ部分(22;24)は、耐圧赤外線透過窓(30)及び/又は赤外線反射鏡(56)を有することを特徴とする、請求項9に記載の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクステーションから放出可能な気相媒質、特に水素の品質を監視するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ある特許文献において、高圧下にある水素の粒子負荷を決定するための試験装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この試験装置は、試料室を包含するハウジングを有しており、試料室内には試験フィルターのためのフィルター受容部が設けられており、試験フィルターは試験過程で検査量の水素が貫流でき、試験過程の終了後は粒子の堆積を評価するために試料室から取り出すことができ、さらに試料室内に進入する流れを様々な強さで絞ることを可能にする調節可能な絞り要素がある。
【0003】
公知の装置で試験過程を開始する際に、最初無圧の試料室を高圧下にある水素の放出源、例えば水素充填用の計量器と接続するが、このとき試験フィルターが有害な圧力衝撃に暴露されないように絞り要素で最初の流れを調節できる。このようにして最初の圧力衝撃によって試験フィルターが破損する危険が回避される一方で、その後の本来の試験過程に対して、充填過程が起きている間、試験フィルターの貫流が試験結果にとって最適な、例えば60g/secの範囲、即ち自動車の充填過程に適した範囲の流量で起こるようにする絞り効果が減少する恐れがある。
【0004】
前述のように、そのような装置は主として水素充填システム又はタンクステーションでの使用、具体的に言えば水素を気相燃料として用いるか、又は燃料電池に水素を放出するために用いる自動車用途に利用できる。水素で駆動されるエンジンでは、燃料電池と同様、支障なく運転するために決定的に重要なのは、水素が粒子状異物を全く含んでいないことであり、これはそのような試験装置によって検出可能である。
【0005】
公知の解決策は、水素流中の粒子状不純物を検出するのに非常によく適している。しかしこのようにして、特に燃料電池の形式による水素駆動に同様に有害な影響を与える可能性のある水素の気相不純物を確認することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2013/139462号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それゆえ、本発明の課題は、この先行技術から出発して、タンクステーションから放出可能な気相媒質、特に水素の品質を監視するための、気相不純物も確認できる方法及び装置を提供することである。上記の課題は、特許請求項1の特徴をその全体において有する方法、並びに特許請求項8の特徴を有する装置によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による方法においては、赤外(IR)測定装置が使用され、赤外測定装置は、気相の媒質、特に水素がタンクステーションから出て消費機器に達する放出経路に接続されていて、種々異なる波長と圧力の赤外線若しくは赤外光の透過を測定し、それに基づいて品質に影響する不純物の濃度を計算し、少なくとも設定可能な品質パラメータを超えるとそのことが表示される。
【0009】
水素中の気相不純物は、通常は前段階の調製(改質)又はコンプレッサーの障害から発生し、何よりも自動車駆動装置の敏感な燃料電池に障害を引き起こす。したがってSAEJ2719又はISO/DIS14647-2などの規格は、水素タンクステーションにおける水素の純度要件を定めている。通常の水素の不純物は、水の他に炭化水素である。さらに気相不純物として一酸化炭素及び二酸化炭素が生じる。この他に水素ガス中には不純物としてホルムアルデヒド、ギ酸及びアンモニアもそれぞれ気相で存在する。その他の不純物は酸素、ヘリウム、窒素、アルゴン、ハロゲンの各気体、並びに硫黄ガスからなることがある。上に挙げた全ての水素の気相不純物は水を含めて実験室で確認できるが、化合物が多く限界値が低いために相応の実験室分析を行うことが既に大きな課題であり、複数の測定方法、例えばガスクロマトグラフィーやイオンクロマトグラフィーなど種々異なる方法を必要とする。この実験室測定方法をタンクステーションで水素品質をオンライン測定するためのセンサー装置に転用することは可能ではない。
【0010】
本発明による解決策で意味する特にクリティカルな気相不純物を最も多くカバーする分析方法は赤外分光法である。赤外分光法では、検出しようとする物質が赤外スペクトルの範囲で光を吸収することを利用する。この吸収はそれぞれ物質特有の波長で行われる。この場合、全ての物質が赤外活性というわけではない。即ち、全ての物質が赤外光を吸収するのではなく、赤外活性物質は一般的に双極子モーメントを持たなければならない。対称分子、例えば上に挙げた酸素、ヘリウム、窒素、アルゴン及びハロゲンは双極子モーメントがないため、本発明による測定方法では検知できない。しかしながら水素中に含まれる上記以外の全ての気相不純物は、現場で本発明による赤外測定装置を使用することにより赤外分光法によって検知でき、水素タンクステーションでは充填過程中にオンラインで検知できる。
【0011】
本発明による方法は赤外測定装置を使用することにより、タンクステーションにおいて高圧での水素放出にもかかわらずオンラインで実施でき、充填過程は品質測定によって損なわれないことが、特に有利であることが分かった。このようにしてタンクステーションにおいてオンラインで測定記録を作成することができ、これをタンクステーション利用者に放出された水素の純度に対する証明書として手渡して、その自動車の燃料電池運転が充填された水素で引き続き不都合なく行われることを保証する。このような赤外測定方法を実施するために本発明による装置は、耐圧管部材からなる高耐圧赤外キュベットを有しており、管部材には好ましくは金めっきされた内管が赤外導波管として挿入されそこで固定される。好ましくは試料の入口と出口のための遮断可能な接続部が、適当なエミッタ及び適当な検出器を用いて赤外測定過程のために耐圧管部材に水素を供給し、若しくは耐圧管部材から水素を排出する働きをする。次に決定された値は、例えば測定記録を作成するため、又はアラームを発するために制御・計算ユニットに接続でき、制御・計算ユニットは水素の圧力及び/又は温度の値も取り入れて信号処理をオンライン運転で実行できる。
【0012】
本発明による解決策の別の有利な実施は、その他の従属請求項に記載されている。
【0013】
以下に本発明による方法を、この方法を実施するための本発明による装置に基づいて詳細に説明する。図面は原理図であり、縮尺通りに表現されていない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明による測定装置を示す。
図2図2は、本発明による別の種類の測定装置を示す。
図3図3は、図1に従う実施形態に対して補足された装置の解決策を示す。
図4図4は、一酸化炭素に対する赤外スペクトルを示し、横座標に波数が1/cmでプロットされ、立て座標には吸光度Aがプロットされている。
図5図5は、二酸化炭素に対する赤外スペクトルを示し、横座標に波数が1/cmでプロットされ、立て座標には吸光度Aがプロットされている。
図6図6は、エタンに対する赤外スペクトルを示し、横座標に波数が1/cmでプロットされ、立て座標には吸光度Aがプロットされている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に従う本発明による装置は、耐圧管部材12で高耐圧性に形成された赤外キュベット10を示す。管部材12の内部には赤外導波管14があり、これは好適には金めっきされた内管として形成されて管部材12内に挿入され、そこで図1に示すように固定されている。導波管14の下方では管状接続部16が媒質を案内するように管部材12内に開口し、同様に導波管14の上方では別の管状接続部18が開口している。接続部16は矢印が示すように気相媒質の供給に用いられ、接続部18はそれによって管部材12内に導入された気体量の排出に用いられる。検査のためにそれ自体任意の気相媒質を導入及び導出できるが、以下では引き続き専ら、水素タンクステーション(図示されていない)から赤外キュベット10に試料として非常に高い圧力、例えば70MPa(700バール)の範囲の圧力で供給される水素ガスについて考察する。
【0016】
管部材12の対向する自由端には、1対の互いに関連するフランジ部分20、22及び24、26が隣接している。図1で最上部に配置された第1のフランジ部分20は、高出力赤外線エミッタ28を受容するための連行凹部を有する。その下に位置して第2のフランジ部分22受容部内に受容された赤外透過性高耐圧窓30がある。窓30は、正面側に配置されて管部材12の内部を周囲に対して密封するリングシール32を備えている。図1にさらに略示されているように、両フランジ部分20及び22はボルト接合部34によりリングシール32を介在させて互いに圧密に結合されている。窓30に対する材料として、特に設定可能な波範囲で赤外線を透過するシリコン及びゲルマニウムが用いられる。
【0017】
管部材12を下方に閉じるフランジ部分24はやはり連行凹部を有しており、その中に別の赤外透過性窓36が嵌め込まれている。窓36は、正面側で窓36の上側に配置されたはんだ接合部38によって、管部材12の内部を周囲に対して密封する。その下に位置するフランジ部分26には、当該フランジ部分26の連行凹部に赤外線検出器40が嵌め込まれていて、受信した赤外スペクトルを評価するのに用いられる。したがってそれぞれの窓30、36の後方の無圧領域には赤外線エミッタ28若しくは赤外線検出器40がある。
【0018】
高耐圧キュベット10内で気相不純物の体積濃度は圧力に比例して上昇するので、例えば水素の送入圧力が50MPa(500バール)では、測定セル内の赤外吸収は0.1MPa(1バール)の送入圧力に対して500倍になる。このように測定効果が数倍になることによって、提示された廉価に実現される堅牢なIR赤外測定技術が可能となる。
【0019】
したがって図1に示された測定構成又は測定装置は、全体として方法のために設けられた赤外測定装置42を構成する。
【0020】
例えば図3の表現が示すように、図1に示す赤外測定装置42は全測定装置44の構成要素であり、ガス不純物のオンライン測定のために、例えば水素の放出タンクステーションに僅かな組付け費用で接続できる。水素ガスの供給及び排出を遮断するために、接続部16、18には電磁操作可能な2ポート2/2方向切換弁が接続されている。したがって測定装置44によって水素ガスをタンク放出導管(図示されていない)からオンラインで採取し、測定過程のために方向切換弁46を閉じた後で外キュベット10内に評価プロセスのために受容することもできる。
【0021】
この場合、赤外線エミッタ28も赤外線検出器40も相応の電気接続導線48若しくは50を介して信号処理電子装置に接続されているが、これは図3ではブラックボックスの方式で制御・計算ユニット52として再現されている。このような信号処理に相応のセンサーP、Tを通して、管部材12の内部によって形成された測定区間内のそれぞれの圧力値若しくは温度値も取り込み、決定された光学的結果の評価に併せて利用できる。信号処理制御・計算ユニット52の出口側には出力装置54も接続でき、これは例えばタンクステーションによって放出された水素の品質(不純物の不順度と種類)に関する測定記録を作成し、好ましくは必要な場合にガスの設定可能な品質パラメータを超えたらアラームを発する。
【0022】
図2に示す実施形態は、上側フランジ部分20内の連行凹部に赤外線エミッタ28も赤外線検出器40も相並んで収容されていることを条件として、図1に示す実施形態による赤外測定装置42にほぼ対応している。さらに異なるのは、やはりはんだ接合部38によってここでは赤外線を反射する鏡46が管部材12の下端で第3のフランジ部分24内に受容されている。ボルト接合部34と比較可能な詳細に図示されていないボルト接合部によって、下側の両フランジ部分24及び26も、管部材12の内部の周囲に対する圧密密封が達成されるように互いに固く結合されている。管部材12の内部の両矢の表現が示すように、鏡56に基づきエミッタ28と検出器40との間の距離測定区間は図1に示す解決策に対して2倍となり、その限りで図2に示す構成による測定装置42の測定精度は相応に高くなる。
【0023】
上述した本発明による解決策は、詳細に図示されていない水素タンクステーションで図3に示す実施例に従う全測定装置44により水素品質を監視するための方法を実施するのに用いられる。この全測定装置44は実質的に既述の高耐圧赤外キュベット10、赤外線エミッタ28、赤外線検出器40、並びに少なくとも1つの圧力センサーP及び制御・計算ユニット52からなり、測定装置44は全体として水素タンクステーションに組み込まれていて、必要な場合は周期的に弁46によって測定過程のために水素で満たされ、再び空にすることができる。このような赤外測定装置42、44によって種々異なる波長と圧力の赤外線若しくは赤外光の透過が測定され、それに基づいて特に水素中の気相不純物の濃度が計算される。決定された測定値が懸念を引き起こす場合は、設定可能な限界値を超えたら電気信号処理装置として構成された制御・計算ユニット52に接続されている出力装置54が警報を発することができる。
【0024】
好ましくは制御・計算ユニット52は、種々異なる密度で透過測定を実施し、これらを保存し、次にこれらを互いに減算する。密度を決定するために前述したように圧力センサーPによって圧力測定を行うことができ、さらに圧力測定は温度センサーTによる温度測定で補完されてよい。
【0025】
本発明による方法を実施するために、赤外線エミッタ28として好ましくは広帯域赤外線を放出するホットプレート型エミッタを用いることが特に有利であることが分かった。さらに、赤外線検出器40は波数範囲1000~4000のフィルターを有すマルチチャンネル検出器であると有利である。この場合、有利には赤外線検出器40はスペクトロメーターである。図2の表現に従い、エミッタ28と検出器40が管部材12の同じ側、即ち上側フランジ部分20内にある限り、このような部材28及び40のために唯一の共通電子装置のみ必要とする。
【0026】
以下になお詳細に説明するように、若干の不純物で検出された赤外活性帯の分布を、それぞれの不純物の種類の波数に関してプロットして示す。そうすると1000前後の波数ではアンモニアガスが不純物として見出され、2000台の波数の範囲ではギ酸、水、一酸化炭素及び二酸化炭素が不純物として見出される。3000前後の波数ではホルムアルデヒドと炭化水素、4000に近い波数では再び水である。既に説明したように、関連のある測定範囲は1000~4000波数、即ち赤外線の波長で2.5μm~10μmである。それゆえ吸光帯の位置から、前述のように物質そのものを特定することができ、赤外線が水素試料を透過する際の減衰からランベルト・ベールの法則に基づき次式によって濃度が生じる。
A=lg(I0/I1)=lg(1/T)=ε(λ)・c・d
この式において、
A 吸光度
0 入射光の強度[W/m2
1 減衰光の強度[W/m2
T=I0/I1透過度
ε(λ) (十進法による)分子吸光係数[m2/mol]
c 濃度[mol/L]
d 光線が試料を通過する距離[m]
【0027】
それゆえ吸光の波長依存性は、ランベルト・ベールの法則において分子吸光係数の波長依存性に再び見出される。
【0028】
ランベルト・ベールの法則から低い濃度を測定するための標準法が明らかである。濃度が低い場合は試料を通る赤外光線の距離dが拡大される。これはキュベット10の形をした測定セルを長くすることによって、又は図2に示す表現に従い鏡56を備える鏡装置によりキュベット10を複数回透光することによって行うことができる。しかしながら、ここで述べた応用にとって、距離dを長くすることには実用上の限界があり、図1及び図2に従い測定区間として形成された管部材12を好ましくは500mmの長さで作製すると有利であることが分かったが、100mm~1500mmの長さも全く可能である。さらに管部材10の直径は、好ましくは3~15mm、特に好適には5mmである。
【0029】
この他に、上記のランベルト・ベールの式の右辺でもう1つの影響可能な要因をなす濃度cを考察しなければならない。cは前述のように、検出しようとする物質の赤外キュベット10内における濃度をmol/Lで表す。このcの大きさは、圧力を高めることによって簡単に著しく拡大できるが、このことは水素タンクステーションの場合には特に有利である。なぜならここでは分析すべきガスは既に非常に高い圧力、例えば70MPa(700バール)~80MPa(800バール)のオーダーにあるからである。図4図6に示す赤外スペクトルから、70MPa(700バール)という非常に高い圧力では直ちに、0.1MPa(1バール)(破線で示す測定線)では見られなかった顕著な測定像(実線で示す測定線)が現れることが明らかとなる。
【0030】
図4において炭酸ガスについて濃度100ppm、圧力0.1MPa(1バール)絶対及び距離10mで測定されたIRスペクトルの吸光度約0.06は、波数2200ではなおも強度の約87%が透過されることを意味する。しかしながら規格SAEJ2719で一酸化炭素に対して定められた限界値は0.2ppm、即ち図4に示された測定値の濃度の500分の1に過ぎない。この濃度では吸光度は0.00012、透過率は99.97%である。この僅かな透過率の変化は実験室装置で検出するのは極めて困難であろう。図4に実線で示された測定線の表現に従い圧力を70MPa(700バール)に高めると、吸光度も係数700だけ上昇する。赤外キュベット10のための管部材12の長さ構成により距離dを約10mから500cmに縮小すると、吸光度は再び係数20だけ減少し、0.0042の値に達する。しかしながらこの値はまたもや透過率99.03%に相当する。このほぼ1%の減衰は、標準光学コンポーネントでも十分検出可能である。水、炭化水素、二酸化炭素(図5参照)、ホルムアルデヒド、ギ酸、アンモニア及びエタン(図6参照)について同様の評価をすると上記の考察が確証されて、決定的な要因は、タンクステーションでの水素の放出圧力によって引き起こされる高耐圧IRキュベット10内における濃度の上昇であることが示される。
【0031】
最後に図4図6が示すように、図1図3に従う上述した本発明による装置によって、高圧の水素ガスで難なく気相不純物、例えば一酸化炭素(図4)、二酸化炭素(図5)又はエタン(図6)を確実に検出することができ、設定可能な限界値を超えると水素充填過程を有利に中断できる。
また、本開示は以下の発明を含む。
第1の態様は、
タンクステーションから放出可能な気相媒質、特に水素の品質を赤外測定装置(42)によって監視するための方法であって、
前記赤外測定装置(42)は、気相の媒質がタンクステーションから出て消費機器に達する放出経路に接続されていて、種々異なる波長と圧力で赤外線の透過を測定し、それに基づいて品質に影響する不純物の濃度を計算し、少なくとも設定可能な品質パラメータを超えるとそのことが表示されるようにし、
前記放出経路に接続された弁装置(46)により試料が次々と採取されて不純物に関してチェックされ、前記タンクステーションから接続された前記消費機器への気相媒質の同時放出が中断されないように、前記赤外測定装置(42)が接続されている、方法である。
第2の態様は、
前記赤外測定装置(42)によって双極子モーメントに基づき赤外活性である不純物が検出されることを特徴とする、第1の態様における方法である。
第3の態様は、
前記赤外測定装置(42)は、赤外分光法を用いて試料の吸光帯の位置から不純物の種類を決定し、赤外線が試料を透過する際に赤外線が減衰することにも基づいてそれぞれの不純物の濃度を決定することを特徴とする、第1の態様又は第2の態様における方法である。
第4の態様は、
試料中のそれぞれの不純物の濃度を決定するためにランベルト・ベールの法則を用いることを特徴とする、第1の態様~第3の態様のいずれか1つにおける方法である。
第5の態様は、
前記赤外測定装置(42)によって試料分析を、50MPa(500バール)を超える非常に高い圧力で行うことを特徴とする、第1の態様~第4の態様のいずれか1つにおける方法である。
第6の態様は、
前記圧力は70MPa(700バール)であることを特徴とする、第5の態様における方法である。
第7の態様は、
前記赤外測定装置(42)の制御・計算ユニット(52)は、密度が種々異なるそれぞれの試料における透過測定を一時保存して、測定値の決定のために互いに減算すること、及び試料密度を決定するために圧力測定を行うことを特徴とする、第1の態様~第6の態様のいずれか1つにおける方法である。
第8の態様は、
試料密度を決定するために試料の温度測定を行うことを特徴とする、第7の態様における方法である。
第9の態様は、
第1の態様~第8の態様のいずれか1つにおける方法を実施するための装置であって、前記装置は、赤外測定装置からなり、少なくとも次のコンポーネント、即ち、
高耐圧赤外キュベット(10)、
赤外線エミッタ(28)、
赤外線検出器(40)、
圧力センサー(P)、及び、
制御・計算ユニット(52)を有することを特徴とする装置である。
第10の態様は、
前記高耐圧赤外キュベット(10)は、少なくとも次のコンポーネント、即ち、
耐圧管部材(12)、
試料の入口と出口のための接続部(16;18)、及び、
管部材(12)の内部の赤外導波管(14)を有することを特徴とする、第9の態様における装置である。
第11の態様は、
高耐圧赤外キュベット(10)の管端にある少なくとも1つのフランジ部分(22;24)は、耐圧赤外線透過窓(30)及び/又は赤外線反射鏡(56)を有することを特徴とする、第9の態様又は第10の態様における装置である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6