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特許7412533付加製造によってコンポーネントを修復するための装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】付加製造によってコンポーネントを修復するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/85 20210101AFI20240104BHJP
   G05B 19/4093 20060101ALI20240104BHJP
   G05B 19/404 20060101ALI20240104BHJP
   B22F 12/41 20210101ALI20240104BHJP
   B22F 12/90 20210101ALI20240104BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20240104BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240104BHJP
   B33Y 40/00 20200101ALI20240104BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20240104BHJP
   B22F 10/38 20210101ALI20240104BHJP
【FI】
B22F10/85
G05B19/4093 J
G05B19/404 K
B22F12/41
B22F12/90
B33Y50/02
B33Y10/00
B33Y40/00
B22F10/28
B22F10/38
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2022509037
(86)(22)【出願日】2020-07-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-19
(86)【国際出願番号】 EP2020071274
(87)【国際公開番号】W WO2021028216
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-04-19
(31)【優先権主張番号】102019121947.7
(32)【優先日】2019-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】522055289
【氏名又は名称】ディーエムジー モリ ウルトラソニック レーザーテック ジーエムビーエイチ
【氏名又は名称原語表記】DMG MORI ULTRASONIC LASERTEC GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】アルバート デイビット
(72)【発明者】
【氏名】ディーデリヒ パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ライザッハ マルティン
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109676135(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0370221(US,A1)
【文献】国際公開第2018/154658(WO,A1)
【文献】特開2019-104981(JP,A)
【文献】特開2005-262881(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108340582(CN,A)
【文献】国際公開第2015/186751(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 10/00-12/90
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造システムでのコンポーネントの自動修復のための方法であって、
a)コンポーネントの修復されるべき表面を含む修復領域(O)を指定し、前記修復領域(O)内に、さまざまなパスポイント(PFp)を含むツールパス(PF)を設定するステップと、
b)記設定されたツールパス(PF)に沿った前記コンポーネントの表面と所望の形状との間のツール方向における前記パスポイント(PFp)での偏差、すなわちデータ値(DW)を決定することによって、測定サイクルにおいて前記修復領域(O)における前記コンポーネントの状態を決定し、それにより前記決定した偏差が、前記パスポイント(PFp)でのコンポーネントの理想的な表面に対応する、事前定義されたゼロ平面に対する、それぞれの前記パスポイント(PFp)での前記修復領域(O)の深さとなる、ステップと、
c)前記付加製造システムのツールをオン及びオフに切り替えることによって付加製造を用いて少なくとも1回の充填サイクルで、前記設定されたツールパス(PF)に沿って充填材を選択的に適用するステップであって、前記ツールパス(PF)の一部又は全部を、前記ツールが1つのパスポイント(PFp)から次のパスポイント(PFp)へ一充填サイクルにおいて移動し、前記充填材を適用するための前記付加製造システムの前記ツールが、ターゲットパスポイント(PFp)での前記データ値(DW)と事前決定可能な閾値との間の差の関数として選択的に作動する、ステップと、
を含み、
前記ツールパス(PF)が、少なくとも1回の充填サイクルにおいて前記付加製造システムの前記ツールが移動する移動経路に対応
前記設定されたツールパス(PF)が、前記付加製造システムの前記ツールの移動経路及び前記偏差を決定するための測定器の移動経路である、
前記方法。
【請求項2】
前記データ値(DW)が、前記ツール方向における前記コンポーネント表面の前記偏差を示し、前記ツール方向が、前記ツールパス(PF)がある、選択された表面に直交する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記設定されたツールパス(PF)のパスセグメント(PFs)又は前記パスポイント(PFp)についての前記決定されたデータ値(DW)が閾値以上であるとき、充填サイクルにおいて前記設定されたツールパス(PF)の前記パスセグメント(PFs)に沿って前記充填材が選択的に適用される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
2つのパスポイント(PFp)によってパスセグメント(PFs)が区切られ、前記パスセグメント(PFs)が直線で延在する、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記閾値が一充填サイクルにおいて一定である、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
複数の充填サイクルが実行され、最終表面がターゲット表面に対応する前記修復領域において達成されるまで毎回厚さ値によって前記閾値が減少し、前記厚さ値が、一充填サイクルにおいて適用される前記充填材の高さに対応する、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
ステップb)の結果が、前記決定されたデータ値(DW)からなるアレイであり、最初の充填サイクルについての前記閾値が、前記アレイの最大値又は最小値及び/又は定数に基づいて設定される、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記閾値が、さらなる充填サイクルにおいて厚さ値によって減少し、前記厚さ値が、一充填サイクルにおいて適用される前記充填材の高さに対応する、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記測定サイクルの前記決定されたデータ値(DW)が、前記充填サイクルに直接用いられる、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記決定されたデータ値(DW)が、データ変換なしで前記充填サイクルにおいて前記閾値との比較に用いられる、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記ツールパス(PF)が、前記付加製造システムの作用径(WorkDia)、特にレーザの直径を考慮に入れて画定され、前記修復領域(O)全体をカバーする、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記ツールパス(PF)が、曲折形状に構成された非重複連続ポリラインである、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記付加製造システムのツールが、前記設定されたツールパス(PF)に沿ってパスポイント(PFp)から隣接するパスポイント(PFp)へと移動し、各パスポイント(PFp)で、それぞれのパスポイント(PFp)の前記決定されたデータ値(DW)と前記閾値との比較が実行され、前記閾値を超えると前記ツールが作動する、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
少なくともステップb)及びc)を完全に自動的に実行することができる、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
ステップc)が、前記設定されたツールパス(PF)のパスポイント(PFp)に沿って前記ツールを移動させるステップを含み、
前記データ値(DW)が前記閾値より大きいパスポイント(PFp)に到達するとレーザが作動し(A)、前記データ値(DW)が前記閾値以下であるパスポイント(PFp)に到達すると前記レーザが停止し(B)、
一充填サイクルの後に、前記閾値が減少するさらなる充填サイクルが続く、
請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記設定されたツールパス(PF)が平行なセグメントを含み、隣接するセグメント間の距離がレーザの作用径に応じて画定される、請求項1~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記付加製造システムがレーザを含み、ステップc)が、
パスポイント(PFp)での前記データ値(DW)と前記閾値との間の比較の結果に応じて、前記パスポイント(PFp)で前記レーザをオン及びオフに切り替えるステップ
を含む、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
測定プローブ、光学センサ、静電容量センサ、又は誘導センサを用いて、前記偏差を決定する、請求項1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法を実行するための手段を含むデータ処理のための装置を含む付加製造システム。
【請求項20】
コンピュータによって実行されると、請求項1に記載の方法を前記コンピュータに行わせる命令を含む、コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項21】
粉末クラッディングによってコンポーネントを修復するための、請求項19に記載の付加製造システムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加製造によってコンポーネントを修復するための、特にコンポーネントにおけるくぼみを修復するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンポーネントに対する損傷の修復のため、修復部位は通常、最初のステップにおいて削り出される。さらなるステップにおいて、削り出された部分はスキャンされ、対応するコンピュータモデルが作成される。これらのデータに基づいて、構造モデルが作成され、これを削り出された部分に挿入して損傷領域を修復することができる。このような修復プロセスにより、元の表面を復元することができるように、コンポーネントの表面上の損傷領域を修復することが可能になる。挿入されるべき構造は、付加製造プロセスを用いて製造することができ、削り出された部分に組み込むことができる。
【0003】
例えば、米国特許出願公開第2017/0370221(A1)号より修復方法が知られている。この方法において、最初のステップは、修復されるべきコンポーネントから欠陥を除去することである。付加製造法を介して修復されたコンポーネントを作成することができ、そのコンポーネントは元の形状を保持することができるようになる。しかしながら、修復されるべきコンポーネントの測定データから付加製造法を用いて次いで製造することができる構造を作成するために測定データの複数のデータ変換ステップ及び処理ステップが必要であるという欠点を既知の方法は有する。これは、データは通常、処理する必要があることを意味する。この結果、計算の労力が多くなるとともにデータ量が多くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2017/0370221(A1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の先行技術に基づいて、説明した問題を解決することが本発明の目的である。特に、付加製造を用いてコンポーネントを修復するための効率的な方法及び対応する装置を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上の目的を達成するため、独立請求項の特徴が提案され、好ましい展開が従属請求項にある。
【0007】
本発明によれば、付加製造システムを用いるコンポーネントの自動修復のための方法が、欠陥のあるコンポーネントを製造システムに固定する最初のステップを含むことができる。さらなるステップにおいて、修復されるべきコンポーネントの表面を含む修復領域を画定することができる。修復領域内にツールパスを設定することもできる。ツールパスは、製造システムのツールが1サイクルで移動する移動経路に対応する。さらなるステップにおいて、修復領域におけるコンポーネントの状態を決定することができる(=測定サイクル)。このような測定サイクルにおいて、設定されたツールパスに沿ってデータ値を決定することができる。データ値は、指定された許容値からのコンポーネントの表面の偏差に対応する。特に、決定された偏差は、ある点(測定点)での損傷領域の深さ(又はその絶対値)とすることができる。さらなるステップにおいて、充填材又は充填材料の選択的適用を実行することができる。充填材は、少なくとも1回の充填サイクルで、設定されたツールパスに沿って適用することができる。一充填サイクルにおいて、ツールパスの一部又は好ましくは全体を移動することができ、パス上のデータ値と所定の閾値との差に応じて、充填材を適用するために製造システムを選択的に作動させることができる。この有利な方法により、測定サイクルから直接得られたデータを充填サイクルのための直接入力として用いることが可能になる。したがって、さまざまなパスポイント(測定ポイント)についての測定値を備えたデータアレイが測定サイクルで作成される。このデータアレイは次に充填サイクルのための入力となり、所定の閾値との比較後、充填材を適用するための製造システムの作動又は停止を決定する。
【0008】
換言すると、充填サイクルにおいて、製造システムは設定されたツールパスをパスポイントに沿って移動させる。パスポイントのそれぞれについてデータ値を決定することができ、これが閾値と比較される。パスポイントに到達すると、付加製造システムのツールヘッド、例えばレーザを作動させて材料を適用することができる。次のパスポイントに到達すると、再度比較が実行され、ツールヘッドを停止するか、作動させておくかが判断される。したがって、測定サイクルにおいて直接充填サイクルのためのプログラムを作成することが有利に可能であり、さらなるデータ変換が必要なくなり、製造システムのツールを作動又は停止させるために直接これらのデータ値が用いられるようになる。ツールパスは測定サイクルと充填サイクルの両方で同一とすることができるため、計算の労力及びデータ量をさらに削減することができる。加えて、測定サイクル及び充填サイクルを自動的に実行することができ、コンポーネントの実質的な自動修復が可能になる。コンポーネントの損傷領域を測定した結果として生じる可能性のある、測定値のポイント群の複雑でエラーが生じやすいデータ変換は必要ない。付加製造によってコンポーネントを修復するための簡素化された、同時に故障発生度が低い方法が、特に有利な方法でこのように達成される。
【0009】
ツールパスは多数のパスポイントを含むことができる。測定サイクルにおいて、コンポーネントの表面と所望の形状との間のツール方向(例えば、Z方向)の偏差をパスポイントのそれぞれで決定することができる。ツール方向は、例えば、修復領域におけるコンポーネント表面に直交する方向とすることができる。
【0010】
有利には、データ値は、ツール方向におけるコンポーネント表面の偏差を示すことができ、ツール方向は、ツールパスがワークピース表面(例えば、XY平面)に直交することができる。レーザのような、付加製造システムのツールはしたがって、ワークピース表面上をツールパスに沿って移動する。このツールパス又はワークピース表面は、例えば、偏差を決定するツール方向に直交することができる。
【0011】
充填サイクルにおいて、充填材は、設定されたツールパスのパスセグメントに沿って選択的に堆積させることができる。充填材はしたがって、1つのパスポイントから隣接するパスポイントへの移動中に適用することができる。充填材を適用するための製造システムのツールがオフに切り替えられるかどうかは、ターゲットパスポイントでのデータ値と所定の閾値との間の差の関数としてターゲットパスポイントで決定される。例えば、ツールがツールパスに沿って1つのパスポイントから次へと移動し、閾値を常に超えていれば、例えば、レーザを継続的に作動させることができ、充填材が常に適用されるようになる。例えば、粉末クラッディングは付加製造と見なすことができる。データ値が閾値未満であるパスポイントに移動中に到達すれば、レーザ又はツールヘッドをオフに切り替えることができる。関連するデータ値が再度閾値を超えるさらなるパスポイントに到達したときのみ、レーザを再度作動させる。
【0012】
2つのパスポイントによってパスセグメントを区切ることができ、パスセグメントは好ましくは直線で延在することができる。特に湾曲したセグメントが回避され、X方向及びY方向の移動のみが必要であるので、一緒にツールパスを形成する、パスセグメントのこの特に効率的で簡素な構成を介して修復方法のさらなる簡素化を達成することができる。データ値は好ましくは、セグメントのパスポイントの平均値とすることもできる。ツールはしたがって、セグメントごとに作動させることもできる。
【0013】
閾値は一充填サイクルにおいて一定とすることができる。一充填サイクルにおいて、製造システムのツールはしたがって、指定されたツールパスに沿って修復領域全体を移動することができ、データポイントのそれぞれが充填サイクルの閾値と比較される。この充填サイクルの完了後、閾値が変更されたもう1回の充填サイクルを予定することができる。充填サイクルのこの構成により、欠陥を連続的に修復することが可能になる。ツール方向に直交する平面が各充填サイクルでこのように画定される。これらの平面のそれぞれが次に、修復領域においてコンポーネントの最終表面(例えば平坦な表面)を達成することができるように最後の平面について最終的に最小の閾値が存在するまで、異なる閾値を有する。特に有利には、最小の閾値に到達した後に追加のオーバーサイズを適用することができる。例えば、最小の閾値に到達した後、1(又は2以上)の追加の充填サイクルで修復領域全体に充填材を適用することができる。
【0014】
複数の充填サイクルを実行することができ、修復領域が実質的に均一な表面になるまで毎回1つの厚さ値によって閾値を調整することができる。修復領域において、コンポーネントの元の表面形状(例えば、直線又は曲線)を復元することができる。厚さ値は、例えば、充填サイクルで適用される材料の高さに依存し得る。
【0015】
測定サイクルの結果は、決定されたデータ値のアレイとすることができる。閾値は、アレイの最大値又は最小値(極値)及び定数に基づいて、最初の充填サイクルについて設定することができる。特に、アレイの最大値は、修復領域の最も深い欠陥を見つけるために用いられる。この最も深いポイントに応じて、最初の充填サイクルで最も深い損傷領域のみが充填されるように閾値を設定することができる。後続の充填サイクルにおいて、追加の領域を充填材料で充填することができるように、減少した閾値が次に用いられる。充填サイクルを連続的につなぎ合わせることによって、損傷領域が完全に充填される。
【0016】
閾値は、さらなる充填サイクルにおいて厚さ値だけ減少させることができ、厚さ値は、特にパスポイント又はパスセグメントでの、一充填サイクルで適用される充填材の高さに対応する。このような高さは、例えば、溶接シームの高さである。
【0017】
測定サイクルの決定されたデータ値は、充填サイクルに直接用いることができる。したがって、測定サイクルの結果を変換又は変形又はデジタル化する必要がない。特に効率的で簡素な修復方法をこのように提供することができる。加えて、変換エラーが原因で通常発生する頻繁なエラーが回避される。
【0018】
データ値を用いて(データ変換なしで)充填サイクルにおいて閾値と比較することができる。したがって、測定サイクルからの未変換データ値を直接用いて、それぞれのパスポイントでの閾値との比較によって付加製造システムのツールを作動又は停止させるかどうか(すなわち、材料を挿入するかどうか)を決定する。
【0019】
この方法はしたがって有利に、修復領域に平面及び/又は曲面を作成するための方法であり得る。有利には、修復された表面形状はコンポーネントの元の表面形状に対応する。
【0020】
有利には、ツールパスは、製造システムの作用径を考慮に入れて画定することができる。付加製造システムのこのような作用径は、例えば、レーザの直径(粉末クラッディングの場合)とすることができる。この作用径を考慮に入れて、ツールパスは有利には、修復領域全体を完全にカバーすることができるように画定することができる。
【0021】
ツールパスは、非重複の、連続したポリラインとすることができる。より好ましくは、ツールパスは曲折することができる。ツールパスは線分からなることもでき、これらのそれぞれが直線で延在する。最適化されたツールパスを備えた特にエラーのない方法をこのように提供することができる。加えて、ツールパスは、修復領域の輪郭に平行に構成することができる。
【0022】
修復されるべきコンポーネントの領域を完全にカバーすることができるように、修復領域を指定することができる。したがって、この方法により、修復部位で平面(又は有利には、元のコンポーネント形状によって曲面も)を生成することができるということを達成することができる。
【0023】
最終の充填サイクルにおいて、付加製造システムのツールは有利には、設定されたツールパスを移動するときに継続的に作動させることができる。この手順により、残っている可能性のある不均一を均一にすることが可能になる。加えて、修復領域の全領域にわたってオーバーサイズを提供することができる。
【0024】
画定されたツールパスは有利には、付加製造システムのツールの移動経路と、偏差を決定するための測定器の移動経路の両方である。したがって、測定サイクルと充填サイクルとの間又はすべての充填サイクル間で移動経路又はツールパスを変換する必要がない。計算の労力をしたがってさらに削減することができ、エラー発生度を最小限に削減することができる。
【0025】
付加製造システムのツールは、設定されたツールパスに沿って1つのパスポイントから隣接するパスポイントへと移動させることができ、それぞれのパスポイントの決定されたデータ値を各パスポイントで閾値と比較することができ、閾値を超えるとツールを作動させることができる。他方、その値が閾値を下回ると、ツールを停止させることができる(又は、符号が逆のときはこの逆になる)。有利には、したがって、パスポイントでの測定値を用いて、レーザ又は付加製造システムのツールを作動又は停止させるコマンドアレイを直接提供することが可能である。
【0026】
特に有利には、測定サイクル及び後続の充填サイクルは自動的に実行され、手動の介入はしたがって要求されない。測定サイクル及びすべての後続の充填サイクルも有利には自動的に実行される。データ値はしたがってすべての充填サイクルについて同じである。あるいは、精度を向上させるため、個々の充填サイクルの後にさらなる測定サイクルを有利に提供することができる。
【0027】
この方法は、損傷領域におけるコンポーネント表面のくぼみを充填するための方法であり得る。
【0028】
この方法は有利には、設定されたツールパスのパスポイントに沿ってツールを移動させ、データ値が閾値より大きいパスポイントに到達するとレーザを作動させ、データ値が閾値以下であるパスポイントに到達するとレーザを停止させるステップを含むことができる。多数の充填サイクルを提供することができ、この場合、充填サイクルから充填サイクルへと閾値を減少させることができる。有利には、任意のデータポイントのすべてのデータ値が閾値より大きくなるように、最終の充填サイクルについての閾値が減少する。特に有利には、複数のオーバーサイズ層が修復領域に適用されるように、閾値を設定することができる。
【0029】
有利には、設定されたツールパスは平行なセグメントを含むことができ、隣接するセグメント間の距離は、レーザの作用径に応じて画定することができる。
【0030】
付加製造システムはレーザを含むことができ、パスポイントでのデータ値と閾値との間の比較の結果に応じて、パスポイントでレーザがオン及びオフに切り替えられる。
【0031】
有利には、測定サイクル(データ値を決定するための)に測定プローブ又は光学センサを用いることができる。加えて、その決定に静電容量及び/又は誘導センサを用いることができる。
【0032】
有利には、上記の方法を実行するためにデータ処理のための装置を提供することができる。加えて、コンピュータによって実行されると、コンピュータに上記の方法を実行させる命令を含むコンピュータ可読記憶媒体を提供することができる。上記の方法を実行するように構成され、この目的のための対応するコンピューティングユニットを含む付加製造システムを提供することができる。
【0033】
添付の図を参照して例を用いて本発明を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】マークされたツールパスPFで修復されるべき表面の概要を示す。
図2】ツールパスPFの詳細図を示す。
図3a】充填サイクルにおける最初の図を示す。
図3b】充填サイクルにおけるさらなる図を示す。
図3c】充填サイクルにおけるツールパスの他の図を示す。
図3d】かなり進んだ充填サイクルの図を示す。
図3e】最終の充填サイクルを示す。
図4】充填サイクルにおけるツールパスの詳細図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
例示的な実施形態の次の特徴は全体的又は部分的に組み合わせることができ、本発明は、記載された例示的な実施形態に決して限定されない。図面において、同じ又は同様の特徴を同じ参照記号で示している。
【0036】
本発明は、例えば、損傷を示すコンポーネントの自動修復のための最適化された方法に関する。このような損傷は、膨らみ、引っかき傷、溝などであり得る。コンポーネントにおけるくぼみを修復するため、計算の労力を最小限に削減することができる方法が提案されている。データ処理をしたがって最小限に削減することができると同時に、通常頻繁に起こる変換エラーを回避することができる。本発明によれば、測定サイクルからのデータが充填サイクルのための入力として直接用いられるので、修復に用いることができるモデル(例えば、CADモデル)を作成するための測定データの追加の処理が必要ない。このような充填サイクルにおいて、付加製造を用いて材料が層状にコンポーネントに適用される。本発明は、レーザに基づいて機能する付加製造法に特に有利に用いることができる。
【0037】
修復領域Oの最初の図を図1に示す。修復領域Oは、修復されるべき金属コンポーネントの表面を完全にカバーし、指定された修復領域Oの縁部は、修復されるべき表面から最小の距離にある。図1に示すように、コンポーネント上の修復されるべき損傷Dはくぼみである。このくぼみは本発明による方法を用いて完全に充填され、コンポーネントが方法の終わりに平面を有するようになる。
【0038】
例示的なツールパスPFを図1に示す。ツールパスPFは、製造システムのツールが1サイクルで移動する経路を画定する。しかしながら、ツールパスPFは、図1に示す直線構成に限定されず、湾曲したセグメントを含むこともできる。しかしながら、有利には、ツールパスPFは、計算の労力をさらに削減することができるように、線形セクションのみを含む。ツールパスPFは有利には、作用径(WorkDia)の関数として画定することもできる。例えば、図1に示すように、製造システムの直径はレーザの直径である。このレーザの直径に応じて、ツールパスPFの隣接するセグメント間の距離が決定される。特に有利には、ツールパスPFの2つの隣接する線分間の距離は、作用径の少なくとも半分プラス5%に対応する。この特に有利な距離について非常に信頼できる修復結果が得られた。
【0039】
図1に示すツールパスは、例えば、長方形の外側ツールパスPF及び曲折する内側ツールパスPFを含み、始点及び終点は互いに対向して配置されている。ツールパスは連続的なツールパスとすることができ、又は有利には、いくつかの離間したツールパスに分割することもできる。有利には、ツールパスPFの線分は重複しない。ツールパスPFは、作用径を考慮に入れて補修領域Oにおける全領域がカバーされるように設定されている。ツールパスPFは、測定サイクルと充填サイクルの両方で変更されず、計算の労力及びデータ量が追加で削減される。図1に示す図は一例としてXY平面を示し、これはここで平面である。指定された許容値からのコンポーネントの表面の偏差は、同時にデータ値DWを形成し、ツール方向(例えばZ方向)で測定される。ツール方向は、例えば、製造システムのツールが充填材を適用する方向である。
【0040】
特に有利には、ツールパスPFは、始点から終点まで連続的に延在する線の途切れないコースとすることもでき、好ましくは重複しない直線セグメントを(常に)含む。このような場合、測定サイクルにおいて生じさせられたアレイを、パスポイントに対応して、充填サイクルに直接用いることもできる。一実施形態において、曲線セグメントを用いることができる。例えば、ポリラインを線分として用いることができる。
【0041】
修復領域Oの詳細図を図2に示す。ここで、ツールパスPFはパスポイントPFpによって形成されている。これらのパスポイントは、それらの間のパスセグメントPFsでつなぎ合わされている。この例において、これらのパスセグメントPFsは直線セグメントである。隣接するパスポイントPFp間の距離は、最適なパスポイントPFpが提供されるように、ツールパスに沿って変化し得る。しかしながら、特に、パスポイントPFpは、ツールパスPF全体にわたって均一に分散させることができ、少なくとも1つのパスポイントPFpが、図2にも示すように、ツールパスPFの各コーナーに追加で提供されている。このようなコーナーポイントにおいて、例えば、ツールパスPFの方向の変化の可能性がある。
【0042】
加えて、製造システムのツール、特にレーザがツールパスPFに沿って移動する方向を示す矢印を図2に示す。損傷領域の真上にあるツールパスPFは、好ましくは、1サイクルで1方向に沿って1回横切る単一の途切れないツールパスである。例えば、ツールを取り外す又は引っ込める(例えば、ツール方向に沿って)必要があり、充填材の適用が可能でなくなると、ツールパスを中断することができる。有利なさらなる一実施形態において、ツールパスは、充填サイクルにおいて、充填材が適用されるべきセグメントのみに接近するように構成されている。このような一実施形態において、充填サイクルにおけるツールパスは測定サイクルにおけるツールパスとは異なることがある。加えて、ツールパスは充填サイクルから充填サイクルへと異なることがある。
【0043】
図2に示すように、パスポイントPFpのそれぞれについて決定されるデータ値DWが提供される。
【0044】
付加製造を用いてコンポーネントを修復する方法における最初のステップは、修復されるべきコンポーネントを製造システムにおいて固定することである。コンポーネントが製造システムに入ると、修復されるべきコンポーネント表面のすべて(又は一部だけ)をカバーする修復領域を画定することができる。ツールパスPFを次いでこの修復領域内に画定することができる。すべてのこれらのステップを初期化プロセスと見なすことができる。
【0045】
初期化後、測定サイクル及び複数の充填サイクルが、好ましくは完全に自動的に続くことができる。測定サイクルにおいて、製造システムは、ツールパスPFのすべてのパスポイントPFpでZ方向の(又は通常ツール方向の)深さ値を自動的に決定することができる。これは図2において記号Z_result[n]で示している。データ値はしたがって、例えば、パスポイントPFpでのZ方向の(又は通常ツール方向の)測定値である。特に有利な一実施形態において、これらの測定値はデータアレイに順次格納される。データアレイはしたがって、測定された深さ値の順序付けられた配置と見なすことができる。深さ値は、例えば、コンポーネントの理想的な表面深さに対応する、事前定義されたゼロ平面に関して測定することができる。
【0046】
データ値が決定され、データアレイが作成された後、最初の充填サイクルが直接続くことができ、修復領域Oにおけるコンポーネントの損傷領域が付加レーザを用いることによって選択的に充填される。このような充填サイクルを図3a~3eに示す。例示的な最初の充填サイクルにおいて、図3aに示すように、付加製造システムのツールはツールパスPF全体を移動する。到達したパスポイントPFpごとに、それぞれのデータ値が閾値と比較される。閾値は、損傷領域の決定された深さの関数として設定される。図3aに示すように、最初の充填サイクルにおいて、データアレイにおける最大値が決定され、最大値(又は好ましくはわずかに低い値、約1%程)が閾値として採用される。結果として、最初の充填サイクルにおいて、最大深さを有する損傷領域のみが充填される。損傷がそれより深くないいずれの領域も、最初の充填サイクルにおいては充填材で充填されることはない。これは図3aにも示され、作動したレーザAがツールパスPFに沿った実線として示されている。閾値に達していない又は超えていないツールパスの部分において、図3aにおいて破線によって示す、レーザは停止Bしている。図3aにおいて、損傷領域の最も内側の領域のみがしたがって、充填材料で充填される。
【0047】
後続の充填サイクルにおいて、図3bに示すように、閾値が変更される。特に、閾値は、例えば最初の充填サイクルにおいて適用されたような充填レベル(例えば計算された溶接シームの厚さ)だけ減少する。したがって、閾値がさらに減少したので、図3に示す充填サイクルにおいて損傷領域のより広い領域に充填材を適用しなければならない。レーザは、最初の充填サイクルにおいて決定されたレーザ処理領域の領域と、パスポイントのそれぞれのデータ値が閾値を超える場所を超えて延在する追加の領域の両方において作動Aする。
【0048】
同様に、図3c及び3dにおいて、充填領域が増加し、それぞれの場合において大きくなる領域においてレーザが作動Aする。
【0049】
図3eは最終の充填サイクルを示し、例えば、レーザは実質的に連続的に作動Aする。レーザは、表面品質をさらに高めるため、曲折するツールパスPFの2つの隣接する線分間の水平部分においてのみ停止Bする。
【0050】
図4は充填サイクルの詳細図を示す。レーザの移動方向において閾値を超えるパスポイントPFpに到達すると、2つの隣接するパスポイントPFp間でレーザが作動Aする。データ値が再度閾値未満であるパスポイントPFpに到達したときのみ、レーザが停止Bする。データ値が閾値未満であるすべてのパスポイントについて、レーザは停止したままであり、又は以前に作動していれば停止する。閾値を超える測定データ値の関数としてのレーザの作動及び停止をこの例示的な実施形態において説明している。しかしながら、符号を逆にすることも可能である。換言すれば、ツール方向の測定値を負の値と見なすことができる。このような構成においては、データ値が閾値を下回ると、レーザが作動する。しかしながら、データ値が閾値を超えたときにレーザを作動させるという上の説明は、例示的に、修復領域において測定された深さの絶対値に関連している。
【0051】
修復されるべきコンポーネント表面は、元の形態において湾曲していても(三次元的に湾曲していても)よい。元の湾曲した表面は、本発明による方法によって修復領域においてこのように復元することができる。測定方向は好ましくはツール方向に対応し、好ましくは、損傷領域の所望の深さを決定することができるように、測定サイクルにおいてコンポーネントの表面に直交して配置することができる。ツールパスはまた好ましくは、コンポーネントの元の(すなわち、無傷の)表面に平行な表面にあり得る。測定の絶対方向はしたがって、例えば曲面に沿って測定するとき、測定点から測定点へと変化する可能性がある。この深さは充填サイクルにおいて適宜に再充填することができる。充填サイクルにおけるツールの適用層は好ましくはツール方向に適用される。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
図4