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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】トルクを伝達する装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/134 20060101AFI20240104BHJP
   F16F 15/30 20060101ALI20240104BHJP
   F16F 1/12 20060101ALI20240104BHJP
   F16H 45/02 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
F16F15/134 D
F16F15/134 A
F16F15/30 U
F16F1/12 N
F16H45/02 Y
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022513313
(86)(22)【出願日】2020-08-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-31
(86)【国際出願番号】 EP2020074015
(87)【国際公開番号】W WO2021038005
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-04-22
(31)【優先権主張番号】1909569
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】503041177
【氏名又は名称】ヴァレオ アンブラヤージュ
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100210790
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大策
(72)【発明者】
【氏名】バティスト、ドリーニエール
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-075694(JP,A)
【文献】特表2015-510571(JP,A)
【文献】特開2015-161373(JP,A)
【文献】国際公開第2014/034941(WO,A1)
【文献】特開平07-098043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/134
F16F 15/30
F16F 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動シャフトに接続されるトルク入力要素(2、3、4)と、
従動シャフトに接続されるトルク出力要素(6、7、8)と、
前記トルク入力要素と前記トルク出力要素との間に装着される少なくとも2つの弾性部材(9、9)であって、前記トルク入力要素および前記トルク出力要素のうちの一方の回転に対抗作用する弾性部材(9、9)と、
位相部材(10、11、12)と、
を備える自動車用のトルクを伝達する装置(1)であって、
前記弾性部材が前記位相部材を介して直列に配置されることにより、前記弾性部材は同調して互いに変形し、
前記トルク入力要素、前記トルク出力要素、および/または前記位相部材は、前記弾性部材の圧縮を制限するように設計された少なくとも1つの当接手段(30、26、27、37)を各々備え、
前記トルク入力要素の前記当接手段、前記トルク出力要素の前記当接手段、および前記位相部材の前記当接手段の各々は、オーバートルクが生じた場合、トルクが前記駆動シャフトから前記従動シャフトに、前記弾性部材の径方向下位において前記装置を通過して流れるように構成され、
前記位相部材は、前記位相部材の前記当接手段(26、27)を形成するインサート(19)を備える、
装置。
【請求項2】
前記位相部材の前記当接手段は、上流当接要素(26)と下流当接要素(27)とを備え、
前記上流当接要素(26)は、前記トルク入力要素と協働可能であり、
前記下流当接要素(27)は、前記トルク出力要素と協働可能である、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記インサートは、対称性を有する部品である、
請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記インサートは、径方向内方において周方向の2つの反対方向に延びて上流当接手段(26)および下流当接手段(27)を形成する中央部品(23)から形成される、
請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記インサートは、焼結材料から作製される、
請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記当接手段における前記焼結材料の密度は、前記インサートの残りの部分に存在するものよりも大きい、
請求項に記載の装置。
【請求項7】
第1弾性部材(9)が、前記トルク入力要素と前記位相部材との間に装着され、
第2弾性部材(9)が、前記位相部材と前記トルク出力要素との間に装着され、
前記インサートは、前記第1弾性部材の端部のうちの1つ、および前記第2弾性部材の端部のうちの1つに対する支持部品をも形成する、
請求項のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記位相部材は、互いに回転可能に接続された2つのワッシャ(11、12)から形成され、
前記トルク出力要素は、2つの前記ワッシャの間に装着されるとともに、前記位相部材の前記当接手段と協働可能な少なくとも1つの凸部(37)を形成する、
請求項1~のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記ワッシャの各々は、外側径方向縁部から第1径方向アーム(14)を形成し、
前記トルク出力要素は、第2径方向アーム(33)を有するディスクを形成し、
前記第2径方向アームは、前記ディスクの外側径方向縁部(36)において延び、
第2弾性部材は、第1アームと第2アームとの間に装着され、
前記凸部は、前記ディスクの前記外側径方向縁部に形成される、
請求項に記載の装置。
【請求項10】
前記トルク入力要素は、弾性部材を受容可能な少なくとも1つのウィンドウ(28)を有する少なくとも1つのプレート(4、5)を形成し、
前記ウィンドウは、径方向において前記弾性部材と軸Xとの間に位置する内側周辺縁部(29)と、前記弾性部材の1つの端部を支持可能な横方向軸受面(31)と、を有し、
前記内側周辺縁部は、前記位相部材の前記当接手段と当接可能な突起(30)を有する、
請求項1~のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記トルク入力要素は、回転可能に接続された2つのプレート(4、5)であって、前記位相部材の各側に配置されたプレート(4、5)により形成される、
請求項1~1のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記弾性部材は、らせんバネである、
請求項1~1のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、デュアル・マス・ホイール(DMF)等の自動車用のトルク伝達装置の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
このような装置は、一般に、トルク入力要素と、トルク出力要素と、トルク入力要素とトルク出力要素との間に装着された弾性部材であって、前記要素のうちの一方が他方に対して回転することに対抗作用する弾性部材と、を備えている。
【0003】
LTD(Long Travel Damper)タイプの場合、トルク伝達装置は、複数のグループの弾性部材を備えている。同一グループの弾性部材は、位相部材を介して直列に配置されることにより、各グループの弾性部材は、同調して互いに変形する。
【0004】
特許出願FR2995953は、LTDタイプのダンパを備えるトルク伝達装置を開示している。このタイプのダンパでは、弾性部材は、弾性部材対として分散配置される。任意の一対の弾性部材のうちの第1弾性部材は、トルク入力要素と位相部材との間に配置され、同一対の弾性部材のうちの第2弾性部材は、位相部材とトルク出力要素との間に配置される。トルク伝達装置は、トルクが、第1弾性部材、次いで位相部材、次いで第2弾性部材を通過することにより、トルク入力要素からトルク出力要素に流れるように構成されている。
【0005】
トルク入力要素、トルク出力要素、および位相部材の各々は、径方向に延びて弾性部材の端部を支持するアームを有している。弾性部材の各々は、周方向に互いに連続する2つのアームの間に収容されている。
【0006】
フィルタリング性能を向上させるように、2つのアームの間に収容される弾性部材のサイズを大きくし得ることを目的としてこれらの同一のアームの断面を可能な限り小さくすることが提案されている。
【0007】
オーバートルク(overtorque)が生じた場合、すなわち、エンジントルクが6000~10,000Nmに達した場合、トルクは弾性部材を短絡させる(short-circuits)。すなわち、トルクは、断面の縮小された個々のアームをそのまま通過しつつ、トルク入力要素から位相部材に、そして位相部材からトルク出力要素に直接流れる。
【0008】
しかしながら、これらの小型化されたアームを理由として、このオーバートルクに連動して破損ポイントが生じる可能性がある。
【0009】
したがって、これらの破損を回避すべく、特にオーバートルクが生じた場合に破損を回避するように、アームは十分に幅広の断面を有するように作製されている。しかしながら、アームのサイズが大きければ大きいほど、バネのサイズを小さくする必要があり、これに応じてトルク伝達装置の性能が、特に振動減衰の点で低下してしまう。
【発明の概要】
【0010】
本発明の一態様は、可能な限り最大の寸法を有する弾性部材の挿入を可能とするように縮小された断面ゾーンを保持するトルク伝達装置を提案することにより、従来技術の欠点を解決するというアイデアから生まれた。
【0011】
特に、本発明は、オーバートルクが生じた場合、トルクが弾性部材の径方向下位において(radially below)流れることを可能とする。したがって、オーバートルクが生じた場合、トルクは、伝達装置の脆弱ゾーンのレベルにおいてではなく、弾性部材を支持し得ないゾーンを介して流れる。この目的のために、本発明は、オーバートルクが生じた場合にトルクが弾性部材の径方向下位において流れることを可能とするように構成された当接手段を実現する。
【0012】
一実施形態によれば、本発明は、駆動シャフトに接続されるトルク入力要素と、
従動シャフトに接続されるトルク出力要素と、
前記トルク入力要素と前記トルク出力要素との間に装着される少なくとも2つの弾性部材であって、前記トルク入力要素および前記トルク出力要素のうちの一方の回転に対抗作用する弾性部材と、
位相部材と、
を備える自動車用のトルクを伝達する装置であって、
前記弾性部材が前記位相部材を介して直列に配置されることにより、前記弾性部材は同調して(in phase)互いに変形し、
前記トルク入力要素、前記トルク出力要素、および/または前記位相部材は、前記弾性部材の圧縮を制限するように設計された少なくとも1つの当接手段を各々備え、
前記トルク入力要素の前記当接手段、前記トルク出力要素の前記当接手段、および前記位相部材の前記当接手段の各々は、オーバートルクが生じた場合、トルクが前記駆動シャフトから前記従動シャフトに、前記弾性部材の径方向下位において前記装置を通過して流れるように構成される、
装置を提供する。
【0013】
一実施形態において、前記位相部材の前記当接手段は、上流当接要素と下流当接要素とを備え、前記上流当接要素は、前記トルク入力要素と協働可能であり、前記下流当接要素は、前記トルク出力要素と協働可能である、
【0014】
一実施形態において、前記位相部材は、前記位相部材の前記当接手段を形成するインサートを備える。
【0015】
一実施形態において、前記インサートは、対称性を有する部品である。したがって、第1当接用および第2当接要素は、対称的である。
【0016】
一実施形態において、前記インサートは、径方向内方において周方向の2つの反対方向に延びて上流当接手段および下流当接手段を形成する中央部品から形成される。
【0017】
一実施形態において、前記インサートは、焼結材料から作製される。
【0018】
一実施形態において、前記当接手段における前記材料の密度は、前記インサートの残りの部分に存在するもの(present in the rest of the insert)よりも大きい。
【0019】
具体的には、インサートの組成は、トルクを伝達可能な或る個所において、インサートの残りの部分と同様に、トルクを受けない別の個所と比較して、異なり得る。
【0020】
一実施形態において、第1弾性部材が、前記トルク入力要素と前記位相部材との間に装着され、第2弾性部材が、前記位相部材と前記トルク出力要素との間に装着され、前記インサートは、前記第1弾性部材の端部のうちの1つ、および前記第2弾性部材の端部のうちの1つに対する支持部品をも形成する。
【0021】
有利には、位相部材の縮小された部分が、位相部材全体を変更する必要なく、容易に変更され得る。
【0022】
具体的には、インサートは、担うべき種々の役割を考慮して容易に製造され得る要素も形成する。インサートは、当接部として機能するだけでなく、弾性部材を保持する手段としても機能し得る。したがって、インサートの組成は、当接部を形成することが意図された第1位置において、関連する弾性部材を保持することが意図された別の位置に対して異なり得る。
【0023】
一実施形態において、前記位相部材は、互いに回転可能に接続された2つのワッシャ(washer)から形成され、前記トルク出力要素は、2つの前記ワッシャの間に装着されるとともに、前記位相部材の前記当接手段と協働可能な少なくとも1つの凸部を形成する。
【0024】
好適な例において、2つのワッシャは同一である。
【0025】
一実施形態において、前記ワッシャの各々は、外側径方向縁部から第1径方向アームを形成し、前記トルク出力要素は、第2径方向アームを有するディスクを形成し、前記第2径方向アームは、前記ディスクの外側径方向縁部において延び、第2弾性部材は、第1アームと第2アームとの間に装着され、前記凸部は、前記ディスクの前記外側径方向縁部に形成される。
【0026】
一実施形態において、前記トルク入力要素は、弾性部材を受容可能な少なくとも1つのウィンドウを有する少なくとも1つのプレートを形成し、前記ウィンドウは、径方向において前記弾性部材と軸Xとの間に位置する内側周辺縁部と、前記弾性部材の1つの端部を支持可能な横方向軸受面と、を有し、前記内側周辺縁部は、前記位相部材の前記当接手段と当接可能な突起を有する。
【0027】
一実施形態において、前記トルク入力要素は、回転可能に接続された2つのプレートであって、前記位相部材の各側に配置されたプレートにより形成される。
一実施形態において、位相部材は、回転可能に接続された2つのワッシャから形成され、第1当接要素および第2当接要素は、位相部材の2つのワッシャを軸方向に超えて延びるストリップを各々形成し、オーバートルクが生じた場合、2つのストリップのうちの少なくとも一方は、トルク入力要素の当接手段と接触し得る。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、ワッシャの各々は、外側径方向縁部を有する円形の平面を有し、第1径方向アームが外側径方向縁部から延び出し、キャビティが外側径方向縁部から第1アームの近傍に形成される。キャビティは、ストリップの上面が、対応するワッシャの外側径方向縁部と整列する、または対応するワッシャの外側径方向縁部をわずかに超えるようにストリップを受容すべく構成される。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、前記弾性部材は、らせんバネである。
【0030】
本発明は、添付図面を参照しつつ非限定的な例のみとしてなされる本発明の複数の特定の実施形態についての以下の説明から、より良く理解され、その他の目的、詳細、特徴および利点がより明瞭になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、本発明の一実施形態によるトルク伝達装置の分解斜視図である。
図2図2は、図1によるトルク伝達装置の正面図である。
図3図3は、図1によるトルク伝達装置のインサートの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
別段の指示がある場合を除き、「軸方向」とは、「装置の回転軸Xに沿って平行に」ということを意味し、「径方向」とは、「装置の回転軸を横断する横軸に沿って」ということを意味し、「角度的」または「周方向」とは、「装置の回転軸を中心として」ということを意味する。
【0033】
図1は、本発明の一実施形態によるトルク伝達装置1の全体斜視図を示す。より具体的には、このようなトルク伝達装置1は、デュアル・マス・ホイールすなわちDMFを形成している。このようなトルク伝達装置1は、クランクシャフト(図示せず)に接続され得るトルク入力要素2を備えている。このトルク入力要素2は、リベット等の接続手段(図示せず)を介して互いに回転可能に接続された2つのプレート3、4を備える一次フライホイールを形成している。エンジン側に近い第1プレート3は、スタータ・リングギア5に接続されている。第2プレート4は、第1プレート3の反対側に配置されている。
【0034】
また、トルク伝達装置1は、互いに回転可能に接続されたディスク7(またはウェブ)と二次フライホイール8とから形成されたトルク出力要素6を備えている。このトルク出力要素は、ギアボックスの入力シャフト(図示せず)に接続され得る。
【0035】
91、92等の弾性部材が、トルク入力要素2とトルク出力要素6との間に配置されている。
【0036】
これらの弾性部材91、92は、ここでは全て同一であるが、別の例においては互いに異なり得る。ここでは、これらはらせんバネを形成している。
【0037】
伝達装置1は、2つのワッシャ11および12を備える位相部材10を備えている。非限定的な本例において、これら2つのワッシャ11および12は同一であり、例えばリベット13等の接続手段により、互いに対して回転可能に接続されている。位相部材10は、浮いた態様で装着されている。特に、位相部材10は、2つの弾性部材91、92との間に挿入されるとともに、トルク入力要素2に対して、およびトルク出力要素6に対して回転移動可能である。
【0038】
弾性部材91、92の各々は、位相部材10に接触することが意図されている。特に、ワッシャ11および12の各々は、径方向の回転軸Xに対して反対方向に延びる細長材料を形成する少なくとも1つのアーム14を備えている。図1の例において、ワッシャ11および12の各々は、角度的に一定の間隔で分散配置された14等の3つのアームを備えている。ワッシャ11および12は、それらのそれぞれのアームが互いに重なるように配置されている。
【0039】
弾性部材91、92は、上流弾性部材と下流弾性部材との対で構成されている。特に、上流弾性部材91および下流弾性部材92が、位相部材10のアーム14の各々の各側に配置されている。上流弾性部材とは、トルク入力要素に接触して配置され得る弾性部材を意味する。下流弾性部材とは、トルク出力要素に接触して配置され得る弾性部材を意味する。
【0040】
上流弾性部材91の各々は、第1端部15と第2端部17とを有している。第1端部15は、位相ワッシャ10のアーム14に接触することが意図されている。第2端部17は、トルク入力要素2に接触することが意図されている。
【0041】
下流弾性部材92は、第3端部16と第4端部18とを有している。第3端部16は、位相部材10のワッシャ11および12の各々のアーム14と接触することが意図されている。第4端部18は、トルク出力要素6に、特にここではディスク7を介して接触することが意図されている。
【0042】
位相部材10は、ワッシャ11、12のうちの一方の少なくとも1つのアーム14に配置されるインサート19を備えている。本実施形態によれば、インサート19は、一部品として形成されているが、複数の部品から形成されてもよいし、アーム14との一体部品として作製されてもよい。インサート19は、本実施形態において、2つのワッシャ11および12の間に軸方向に配置されている。より正確には、インサート19は、2つのアーム14の間に、回転において固定的に配置される。
【0043】
インサート19は、上流側横方向軸受面20および下流側横方向軸受面21を画定する中央部品23を形成している。上流側横方向軸受面20および下流側横方向軸受面21は、上流弾性部材91の第1端部15および下流弾性部材92の第3端部16をそれぞれ受容することができる。これらの横方向軸受面20および21の各々は、22等のガイドスタッドを有している。ガイドスタッド22の周囲に、対応する弾性部材の端部が挿入される。これらの横方向軸受面20および21は、回転軸Xを垂直方向に、かつアーム14が延びる平面を垂直方向に横断する平面に対して傾斜した平面内に各々延びている。これらの横方向軸受面20および21は、2つのワッシャ11および12により形成される断面を覆いつつ延びている。
【0044】
中央部品23は、径方向外方において周方向の2つの反対方向に延びて、第1延長部24および第2延長部25を形成している。第1延長部24および第2延長部25は、アーム14の径方向上位において(radially above)延びている。第1延長部24は上流弾性部材91の第1端部15を保持する役割を果たし、第2延長部25は下流弾性部材92の第3端部16を保持する役割を果たす。本例において、第1延長部24および第2延長部25は、ワッシャ11および12の各々の外側径方向縁部を超えて延びている。
【0045】
中央部品23は、径方向内方においても周方向の2つの反対方向に延びて、上流当接手段26および下流当接手段27を形成している。また、上流当接手段26および下流当接手段27は、2つのワッシャ11および12の他方の断面を覆うように延びている。上流当接手段26は、オーバートルクが生じた場合に、トルク入力要素2に接触し得るように設計されている。したがって、より正確には、上流当接手段26は、トルク入力要素に最も近接していることが意図されたワッシャの断面を軸方向に少なくとも超えて延びている。本例において、トルク入力要素は第1プレート3および第2プレート4により形成されているため、上流当接手段26は、第1プレート3または対応する第2プレート4の断面を超えて延びればよい。
【0046】
好適な例では、インサート19は、対称性を有する部品である。これは、上流当接手段26および下流当接手段27が、図3における対称中心軸Yに関して同一態様で延びていることを意味する。断面とは、部品が延びる平面に対して垂直な平面に沿った部品を横断する平面に沿って作製された面を意味する。
【0047】
本発明の例において、上流当接手段26および下流当接手段27は、軸方向に延び、2つのワッシャ11および12を覆っている。
【0048】
本例において、2つのワッシャ11および12は、上流当接手段26を受容するための局所的な凹部36を有している。凹部36は、上流当接手段26がワッシャの外側縁部38と面一になるように、径方向内方に作製されている。したがって、弾性部材の設置直径は影響を受けず、このような装置のサイズを小さくするように最適化され得る。
【0049】
プレート3および4の各々は、上流弾性部材91および下流弾性部材92を各々収容するウィンドウ28を形成している。本例において、プレートの各々は、角度的に一定の間隔で分散配置された28等の3つのウィンドウを形成している。
【0050】
ウィンドウ28の各々は、上流当接手段26が接触し得る第4当接手段30を形成している。この第4当接手段30は、ショルダを形成している。ウィンドウ28の各々は、上流横方向軸受面31および下流横方向軸受面32も画定している。上流横方向面31は、上流弾性部材91に対する支持体として機能する。
【0051】
ショルダ30と位相部材10の上流当接手段26とは、ショルダ30と上流当接手段26との間で周方向に測定した距離d(図示せず)だけ互いに離間している。この距離dは、上流弾性部材91の静止状態に対応する距離d1(図示せず)と、オーバートルク状態または装置の当接前の最大許容トルク状態に対応する距離d2(図示せず)との間にある。本発明によれば、このようなオーバートルク状態または最大許容トルク状態において、上流弾性部材91は、たわみが止められている。
【0052】
ウェブ7は、ワッシャ11および12の構造に類似した構造を有している。具体的には、ウェブは、3つの径方向延長部33を有している。径方向延長部33は、角度的に一定の間隔で分散配置されるとともに、上流横方向軸受面34および下流横方向軸受面35を各々有している。下流横方向軸受面35は、下流弾性部材92の支持体として機能する。
【0053】
ウェブ7は、中心Xを有する第1円において延びる外側径方向縁部36を有する平坦なディスクを形成し、ウェブ7から3つの径方向延長部33が延び出している。37等の少なくとも1つの凸部が、外側径方向縁部36から、特に径方向延長部33のうちの1つの形成された場所の付近に形成されている。図示例によれば、37等の3つの凸部が、対応する径方向延長部33の付近に各々形成されている。
【0054】
凸部37と位相部材10の下流当接手段27とは、凸部37と下流当接手段27との間で周方向に測定した距離Dだけ互いに離間している。距離Dは、下流弾性部材92の静止状態に対応する距離D1と、装置のオーバートルク状態に対応する距離D2との間に含まれる。距離D2は、下流弾性部材92のたわみが止められた態様において得られる。
【0055】
動作において、エンジントルクは、プレート3およびプレート4から、上流弾性部材91の各々に流れ、次いでワッシャ11および12の各々の径方向アーム14の各々を通過し、次いで下流弾性部材92の各々を通過し、次いでウェブ7を通過する。
【0056】
オーバートルクが生じた場合、エンジントルクは、当接部30、26、27、37を直接通過して、装置の種々のアームを通る通路を短絡(short-circuiting)させる。種々の30、26、27、37が弾性部材91、92の径方向内側に位置しているため、アームは応力を受けず、オーバートルクによりダメージを受けるリスクがない。
図1
図2
図3