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特許7412540コア-シェル構造の銀コーティング銅ナノワイヤを含む伝導性ペースト組成物およびこれを含む伝導性フィルム
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  • 特許-コア-シェル構造の銀コーティング銅ナノワイヤを含む伝導性ペースト組成物およびこれを含む伝導性フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】コア-シェル構造の銀コーティング銅ナノワイヤを含む伝導性ペースト組成物およびこれを含む伝導性フィルム
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/22 20060101AFI20240104BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20240104BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240104BHJP
   C08K 9/02 20060101ALI20240104BHJP
   C08L 33/00 20060101ALI20240104BHJP
   C08L 1/00 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
H01B1/22 A
C08L83/04
C08L101/00
C08K9/02
C08L33/00
C08L1/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022514666
(86)(22)【出願日】2019-10-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(86)【国際出願番号】 KR2019014588
(87)【国際公開番号】W WO2021045307
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】10-2019-0110850
(32)【優先日】2019-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】502235773
【氏名又は名称】バイオニア コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】パク ハン オ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジェ ハ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジュン ピョ
(72)【発明者】
【氏名】ユン クグ ジン
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/084518(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0048458(KR,A)
【文献】特表2017-523306(JP,A)
【文献】特表2015-537068(JP,A)
【文献】特表2019-517625(JP,A)
【文献】特表2016-533001(JP,A)
【文献】特開2016-173983(JP,A)
【文献】特表2010-539650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/22
H01B 13/00
C08L 83/04
C08L 101/00
C08K 9/02
C08L 33/00
C08L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア-シェル構造の銀コーティングされた銅ナノワイヤ、シリコン樹脂バインダーおよび炭化水素系樹脂バインダーを含むバインダー混合物、および有機溶媒を含む、伝導性ペースト組成物であって、
前記コア-シェル構造の銀コーティングされた銅ナノワイヤ5~30重量%と、
前記シリコン樹脂バインダー3~20重量%と、
前記炭化水素系樹脂バインダー3~15重量%と、
前記有機溶媒50~90重量%と、を含む、伝導性ペースト組成物。
【請求項2】
前記バインダー混合物と前記銀コーティング銅ナノワイヤの重量比が1:0.1~1.2である、請求項1に記載の伝導性ペースト組成物。
【請求項3】
前記シリコン樹脂バインダーは、シリコン樹脂バインダーの全重量に対して、シラノール基を0.1~10重量%含有し、メチル基に対するフェニル基の比率が0.3~2.5モル比である、請求項1に記載の伝導性ペースト組成物。
【請求項4】
前記炭化水素系樹脂バインダーは、セルロース系バインダー、活性水素を含むアクリル系繰り返し単位を含むアクリル系バインダーおよびポリビニル系バインダーから選択されるいずれか一つまたは2種以上を混合して使用される、請求項に記載の伝導性ペースト組成物。
【請求項5】
前記炭化水素系樹脂バインダーと前記シリコン樹脂バインダーの重量比が1:0.8~1.8である、請求項1に記載の伝導性ペースト組成物。
【請求項6】
前記有機溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ヘキサン、シクロヘキサノン、トルエン、クロロホルム、ジクロロベンゼン、ジメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ピリジン、メチルナフタレン、ニトロメタン、アクリロニトリル、オクタデシルアミン、アニリン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールエチルエーテルおよびテルピネオールから選択されるいずれか一つまたは二つ以上である、請求項1に記載の伝導性ペースト組成物。
【請求項7】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の伝導性ペースト組成物を含む、伝導性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア-シェル構造の銀コーティング銅ナノワイヤを用いた伝導性ペースト組成物およびこれを含む伝導性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、伝導性ペーストとは、電気・電子製品や回路の配線組立に用いられる電気伝導性を有する接着剤であり、高分子樹脂などのバインダーとAg粒子などの伝導性粒子で配合・構成されたペースト(paste)を意味する。このような伝導性ペーストは、電子製品の電極、電子部品のパッケージングおよび回路インターコネクタなどとして、電気・電子分野において様々に用いられている。
【0003】
一般的に、市販の伝導性ペーストは、導電性が良好であり、安定した銀粉末を使用して製造する。銀を用いた伝導性ペーストは、所望の高い水準の伝導度を得るために、ペースト組成物の全重量に対して多くは80重量%以上の銀粒子を使用していた。この程度の分量の銀を使用しなければ、銀粒子と粒子との間に空隙が生じて電気的に連結されないか、電気的接触点が生じてもその数が非常に少なくて十分な伝導度を示すことができなかった。また、このような銀粉末素材は、電気抵抗が低い一方、その値段が高いため、導電性ペーストを製造する時に、銀の代わりに使用可能な素材を開発するか、銀の使用量を低減する方法が必要な状況である。
【0004】
したがって、本発明者らは、上記問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、コア-シェル構造の銀コーティングされた銅ナノワイヤをフィラーとして使用して伝導性ペースト組成物を製造した時に、基材への付着性に優れ、より少ない量でも伝導性を得ることができ、300℃の高温にも耐えられ、高い経済性および生産性を有するように製造することができることを見出し、本発明を完成するにいたった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】韓国登録特許第10-1789213号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、経済的であり、導電性に優れ、300℃の高い温度にも耐えられる伝導性ペースト組成物を提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、上述の伝導性ペースト組成物を含み、低い比抵抗を有する伝導性フィルムを提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一様態による伝導性ペースト組成物は、コア-シェル構造の銀コーティングされた銅ナノワイヤ、シリコン樹脂バインダーおよび炭化水素系樹脂バインダーを含むバインダー混合物、および有機溶媒を含む。
【0009】
本発明の一例において、伝導性ペースト組成物は、コア-シェル構造の銀コーティング銅ナノワイヤ5~30重量%を含むことができる。
【0010】
本発明の一例において、伝導性ペースト組成物は、シリコン樹脂バインダー3~20重量%を含むことができる。
【0011】
本発明の一例において、バインダー混合物と前記銀コーティング銅ナノワイヤの重量比が1:0.1~1.2であることができる。
【0012】
本発明の一例において、シリコン樹脂バインダーは、全100重量%に対して、シラノール基を0.1~10重量%含有し、メチル基に対するフェニル基の比率が0.3~2.5モル比であることができる。
【0013】
本発明の一例において、伝導性ペースト組成物は、炭化水素系バインダー3~15重量%を含むことができる。
【0014】
本発明の一例において、炭化水素系バインダーは、セルロース系バインダー、活性水素を含むアクリル系繰り返し単位を含むアクリル系バインダーおよびポリビニル系バインダーから選択されるいずれか一つまたは2種以上を混合して使用されることができる。
【0015】
本発明の一例において、炭化水素系バインダーとシリコン樹脂バインダーの重量比が1:0.8~1.8であることができる。
【0016】
本発明の一例において、伝導性ペースト組成物は、有機溶媒50~90重量%を含むことができる。
【0017】
本発明の一例において、有機溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ヘキサン、シクロヘキサノン、トルエン、クロロホルム、ジクロロベンゼン、ジメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ピリジン、メチルナフタレン、ニトロメタン、アクリロニトリル、オクタデシルアミン、アニリン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールエチルエーテルおよびテルピネオールから選択されるいずれか一つまたは二つ以上の伝導性ペースト組成物が使用されることができる。
【0018】
本発明は、上述の伝導性ペースト組成物を含む伝導性フィルムを含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明による伝導性ペースト組成物は、コア-シェル構造の銀コーティングされた銅ナノワイヤ、シリコン樹脂バインダーおよび炭化水素系樹脂バインダーを含むバインダー混合物、および有機溶媒を含むことで、酸化安定性および熱安定性に優れ、シリコン樹脂バインダーとの相互結合力および分散性が高く、これにより、シート抵抗および比抵抗が低いことから優れた電気伝導度を有し、300℃の高温でも安定し、これにより、優れた電極特性を実現することができるという利点がある。また、前記伝導性ペースト組成物は、これを用いて、電極、電子回路、アンテナなどの様々な分野において幅広く用いられることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態による伝導性ペーストを製造した写真である。
図2】フィラーの種類および投入量による比抵抗変化グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施形態により、本発明によるコア-シェル構造の銀コーティングされた銅ナノワイヤを含む伝導性ペースト組成物およびこれを含む伝導性フィルムについてより詳細に説明する。ただし、下記の実施形態は、本発明を詳細に説明するための参照であって、本発明は、これに制限されるものではなく、様々な形態に実現されることができる。
【0022】
また、他に定義されない限り、すべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者の一人によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本願において説明に使用される用語は、単に特定の実施形態を効果的に記述するためのものであって、本発明を制限することを意図しない。
【0023】
本発明を詳述するにあたり、特別な言及なしに不明に使用される%の単位は、重量%(w/w%;wt%)を意味する。
【0024】
本明細書において、「ナノワイヤ」は、導電性フィラーとして使用される銀コーティングされた銅ナノワイヤの直径がナノメートルの大きさを有し、その形成がワイヤのように長さが長い形状を有するフィラーを意味する。
【0025】
本明細書において、「銀コーティングされた銅ナノワイヤ」は、銅ナノワイヤからなるコア(core)および銀からなるシェル(shell)を含むコア-シェル構造のナノワイヤを意味する。
【0026】
上記目的を達成するために、本発明は、コア-シェル構造の銀コーティングされた銅ナノワイヤ、シリコン樹脂バインダー、炭化水素系バインダーおよび有機溶媒を含む伝導性ペースト組成物を提供する。
【0027】
本発明を具体的に説明すると、
本発明による前記伝導性ペースト組成物は、シリコン樹脂バインダーおよび炭化水素系バインダーの混合物(以下、バインダー混合物)を含むことで、従来の伝導性ペーストよりも少ない含量の銀コーティング銅ナノワイヤを含有することができる。
【0028】
詳細には、従来の伝導性ペーストは、48~58重量%のコア-シェル構造の銀コーティングされた銅ナノワイヤを含有する必要があったが、本発明によるコア-シェル構造の銀コーティングされた銅ナノワイヤを含む伝導性ペースト組成物は、シリコンバインダーをさらに含むことで、従来の伝導性ペーストよりも低い含量の銀コーティングされた銅ナノワイヤを含有するにもかかわらず、48~58重量%水準の銀コーティングされた銅ナノワイヤを含有する従来の伝導性ペーストと同等であるかより優れた電気的特性を有することができる。
【0029】
本発明の伝導性ペースト組成物は、コア-シェル構造の銀コーティング銅ナノワイヤを、5~30重量%、好ましくは5~15重量%を含むことができる。より好ましくは、伝導性ペーストの全含量に対して7~15重量%の範囲で銀コーティングされた銅ナノワイヤを含む場合、基材にコーティングする時に高い導電性を有することができ、組成物の高い粘度による銀コーティングされた銅ナノワイヤの不均一な分散を防止することができ、好ましい。
【0030】
本発明によるコア-シェル構造のナノワイヤは、銅ナノワイヤからなるコア(core)および銀からなるシェル(shell)を含むコア-シェル構造のナノワイヤであり、既存の銅ナノワイヤ、例えば、銀でコーティングされていない銅ナノワイヤおよび球形粒子、フレーク形状などと比較して、酸化安定性と熱安定性がさらに優れるという特性を有している。
【0031】
また、ナノワイヤの形状により、金属ナノ粒子に比べて分散性が良好であり、粒子形状またはフレーク形状に対するナノワイヤ形状の差異によって、伝導性フィルムのシート抵抗を著しく下げることができるという効果を提供することができる。また、銀ナノワイヤを使用することよりも銀コーティング銅ナノワイヤを使用することでコストダウンを図ることができる。
【0032】
前記銀コーティング銅ナノワイヤの直径は、120~350nm、具体的には、150~350nm、より具体的には、180~320nmであることがある。この際、銀コーティング銅ナノワイヤの直径が前記範囲から逸脱する場合、分散がよく起こらず適切ではない。また、前記銀コーティング銅ナノワイヤの長さは、分散が許す範囲で長いほど好ましい。したがって、前記銀コーティング銅ナノワイヤのアスペクト比は、5~25、具体的には、5~20、より具体的には、5~15であることができる。銀コーティング銅ナノワイヤの製造方法は、制限されないが、好ましい例示として、韓国登録特許KR10-1789213B1(公告日:2017.10.26)に記載の方法を使用することができる。
【0033】
一般的に、伝導性ペーストに含有されるバインダーの含量が高いほど、伝導性ペーストにより製造される伝導性フィルムは、低い光学的特性および透過度を有し、伝導性ペーストに含まれるバインダーの含量が低いほど、伝導性ペーストにより製造される伝導性フィルムは、低い機械的強度を有する。
【0034】
しかし、本発明による伝導性ペーストは、シリコン樹脂バインダーおよび炭化水素系バインダーを含むバインダー混合物を含むことで、より少ない含量の銀コーティング銅ナノワイヤを含むことができ、伝導性ペーストに含まれるバインダー混合物の全含量自体を大幅に低減することができる。
【0035】
上述の効果をよく実現する面で、本発明による伝導性ペースト組成物は、全含量に対して、前記バインダー混合物を、5~40重量%、好ましくは10~30重量%、より好ましくは10~20重量%含むことができる。
【0036】
公知のように、このような伝導性ペーストに含まれるバインダーの含量は、銀コーティング銅ナノワイヤ含量に比例して調節される一方、本発明による伝導性ペーストは、銀コーティング銅ナノワイヤの含量に比べて非常に少ない含量のバインダー混合物を含むことができる。
【0037】
上述の効果を満たす面で、前記バインダー混合物と前記銀コーティング銅ナノワイヤの重量比は、1:0.1~1.2、具体的には、1:0.3~1.1、より好ましくは1:0.5~1.0であることができる。
【0038】
したがって、本発明による伝導性ペースト組成物は、従来の伝導性ペーストより少ない含量の銀コーティング銅ナノワイヤおよびバインダーを含有していても、より向上したシート抵抗および比抵抗特性を有することができ、好ましい。
【0039】
上述の効果を満たす面で、前記バインダー混合物に含まれる炭化水素系バインダーとシリコン樹脂バインダーの重量比は、1:0.8~1.8、好ましくは1:1.0~1.8、より好ましくは1:1.2~1.6であることができる。
【0040】
本発明による伝導性ペースト組成物は、全含量に対して、3~20重量%、好ましくは3~15重量%、より好ましくは5~12重量%の範囲でシリコン樹脂バインダーを含む場合、基材にコーティングする時に基材との粘着性が高くて脱離を防止し、シリコン樹脂本来の物性を失わず、過量による導電性の低下を防止することができ、好ましい。また、シリコン樹脂バインダーを使用することで、300℃の高温でも熱的および電気的特性を維持することができる。
【0041】
一般的に、シリコン樹脂バインダーは、ケイ素(Si)原子と酸素(O)原子が交互になっているポリシロキサン主鎖を有する高分子であり、ほとんどの場合、シリコンは、それぞれのケイ素原子に普通二つのメチル、エチル、プロピルなどのアルキルまたはフェニル(-C)の有機原子団が結合している構造を有し、本発明による伝導性ペースト組成物に含まれているシリコン樹脂バインダーは、水素、ヒドロキシ基、メチル基またはフェニル基が結合したものであることができる。
【0042】
本発明の一様態によって、前記シリコン樹脂バインダーは、一例として、ジメチルシロキサン繰り返し単位を含むポリジメチルシロキサン系樹脂であることができ、メチルフェニルシロキサン繰り返し単位、エチルフェニルシロキサン繰り返し単位またはジフェニルシロキサン繰り返し単位をさらに含むポリシロキサン系樹脂であることができる。
【0043】
前記シリコンバインダーの重量平均分子量(Mw)は、5,000~1,000,000、具体的には、10,000~500,000であることができるが、これは一例示であって、これに制限されない。
【0044】
この際、前記伝導性ペースト組成物が銀コーティング銅ナノワイヤとの密着性および分散性を向上させる面で、前記シリコン樹脂バインダーは、シリコン樹脂バインダー100重量%に対して、シラノール基を、0.1~20重量%、好ましくは0.1~15重量%、より好ましくは0.1~10重量%含むことができる。シラノールの含量が前記範囲を満たす時に、優れた密着性および分散性を有し、優れた電気的特性および機械的強度を有することができる。
【0045】
ここで、前記シラノール基は、Si-OH単位を含む官能基を意味する。前記シラノール基の-OHは、銀コーティング銅ナノワイヤの表面で銀コーティング層と高い相互作用を行うことができ、銀コーティング銅ナノワイヤがバインダー混合物内で非常に高い分散性を示すことができ、熱処理過程中にも凝集されず、均一に分散されて、伝導性フィルムは、非常に低いシート抵抗および比抵抗を有することができる。
【0046】
さらに、前記伝導性ペースト組成物の熱安定性を向上させるための面で、前記シリコン樹脂バインダーに含まれているメチル基とフェニル基の比率が一定であることが好ましい。このような面で、前記メチル基に対するフェニル基の比率は、メチル基1モル比に対して、フェニル基を、0.3~2.5モル比、好ましくは0.4~2.0、より好ましくは0.8~1.5モル比で含むことができる。メチル基とフェニル基の比率が前記範囲を満たす時に、伝導性フィルムが、優れた機械的強度および耐熱性を有することができる。
【0047】
本発明による前記伝導性ペースト組成物は、炭化水素系バインダー3~15重量%、より好ましくは3~10重量%、さらに好ましくは5~8重量%の範囲を含むことができる。炭化水素系バインダーは、ペーストの粘度に関連して、塗膜の形成時に適当な厚さを形成するようにする役割を果たし、過量入れた場合には、ペースト粘度が高くなってコーティング膜が形成されず、過剰に少量入れた場合には、塗膜が薄く形成されて導電性が低下し得る。
【0048】
本発明の一様態によって、前記炭化水素系バインダーは、セルロース系バインダー、活性水素を含むアクリル系繰り返し単位を含むアクリル系バインダーおよびポリビニル系バインダーから選択されるいずれか一つまたは2種以上混合して使用されることができる。具体的には、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロースおよびニトロセルロースからなる群から選択される一つまたは二つ以上のセルロース系バインダー;活性水素を含むアクリル系繰り返し単位を含むアクリル系重合体;またはポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリ塩化ビニルからなる群から選択される一つまたは二つ以上のポリビニル系高分子;など、これらをそれぞれ単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
【0049】
ここで、前記活性水素を含むアクリル系繰り返し単位は、カルボキシル基、ヒドロキシル基などの残基を有するアクリル系繰り返し単位である。前記アクリル系繰り返し単位は、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレートが単量体から誘導されることができ、共単量体としては、ビニル系単量体を共重合して製造されたアクリル系共重合体として、前記ビニル系単量体は、アクリレート系単量体、ビニル芳香族単量体であることができる。
【0050】
前記炭化水素系バインダーの重量平均分子量(Mw)は、10,000~1、500,000、具体的には、30,000~1,300,000、より具体的には、800,000~1,000,000であることができるが、これは一例示であって、これに制限されない。
【0051】
本発明による伝導性ペースト組成物は、有機溶媒を含むことで、コーティング時に均一に塗布されることができる粘度を有することから銀コーティングされた銅ナノワイヤが均一に分散されることができ、高い伝導度を有することから向上した遮蔽特性を有することができ、好ましい。
【0052】
上述の効果を満たす面で、本発明による伝導性ペースト組成物は、有機溶媒を、50~90重量%、好ましくは60~85重量%、より好ましくは70~80重量%で含むことができる。前記有機溶媒が50重量%未満である場合には、前記伝導性ペースト組成物の粘度が高くなって基材上に均一に塗布することが難しく、前記有機溶媒が90重量%を超える場合には、前記伝導性ペースト組成物の比抵抗が著しく増加して電気伝導度が下がり得る。
【0053】
本発明の一様態によって、前記有機溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ヘキサン、シクロヘキサノン、トルエン、クロロホルム、ジクロロベンゼン、ジメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ピリジン、メチルナフタレン、ニトロメタン、アクリロニトリル、オクタデシルアミン、アニリン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールエチルエーテルおよびテルピネオールから選択されるいずれか一つまたは二つ以上であることができる。
【0054】
本発明の伝導性ペースト組成物は、基板にコーティングまたはキャスティングなどの塗布の際に均一に塗布することができ、加工性を高めるために、25℃で測定された粘度が50,000cp~400,000cp、好ましくは80,000cp~350,000cp、より好ましくは100,000~300,000cpsに製造されることができる。
【0055】
本発明の伝導性フィルムは、前記伝導性ペースト組成物を基板に塗布して熱処理したものであることができる。
【0056】
具体的に説明すると、
前記基板は、有機および無機材料、そして金属で製造された基板を使用することができ、これを具体的に説明すると、プラスチック基板、ポリマーフィルム基板、ガラス基板、石英基板、シリコンウェハ基板、金属基板およびセラミック基板などであることができる。前記基板を構成する物質の例としては、メタクリレート重合体、芳香族ポリエステル系重合体、変性ポリフェニレンオキシド系重合体(Modified Polyphenylene Oxide:MPPO)、セルロースエステル(Cellulose ester)、セルロースアセテート、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(acrylonitrile butadiene styrenecopolymer、ABS樹脂)、オレフィンマレイミド共重合体、石英(quartz)、シリコンウェハ、アルミニウム、ステンレス鋼、エポキシ樹脂、溶融シリカ、ガラス、再生セルロース(Regenerated cellulose)、トリアセチル・セルロース、フェノール樹脂、ポリジメチルシクロヘキセンテレフタレート、ポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane、PDMS)、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート(polymethylacrylate)、ポリブタジエン、ポリブチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニリデンフルオライド(Polyvinylidenfluoride)、ポリビニルアセテート、ポリスルホネート、ポリスルホン(Polysulfone)、ポリスチレン(PS)、ポリシラザン(polysilazane)、ポリシラン(polysilane)、ポリシロキサン(polysiloxane)、ポリアラミド、ポリアリレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル(Polyacrylonitrile、PAN)、ポリエステル、ポリエステルスルホン(Polyethersulfone、PES)、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalte、PEN)、ポリエチレンスルホン、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephtalate、PET)、ポリエチルメタクリレート(polyethylmetacrylate)、ポリエチルアクリレート(polyethylacrylate)、ポリエポキシド、ポリ塩化ビニル、ポリオキシエチレン、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリイミド樹脂、ポリカルボシラン(polycarbosilane)、ポリカーボネート(Polycarbonate)、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリプロピレン(PP)、AS樹脂、GaAs、MgO、シリカ、ポリビニルクロライド、ポリジメチルシクロヘキセンテレフタレート、ポリカーボン(polycarbon)などであることができるが、これに制限されるものではない。
【0057】
前記基板は、一様態によって、選択的に、ピラニア(Piranha)溶液処理、酸処理、塩基処理、プラズマ処理、常圧プラズマ処理、オゾン処理、UV処理、SAM(self assembled monolayer)処理、および高分子または単分子コーティング方法のうち少なくとも一つの方法を用いて表面処理をさらに行うことができる。
【0058】
本発明の前記熱処理は、100~300℃で10~60分間行うことであることができる。好ましくは、熱処理は、100~300℃、より好ましくは200~300℃、さらに好ましくは250~300℃で熱処理することがフィルムの物性のために好ましい。
【0059】
本発明の伝導性ペースト組成物は、基板に噴射コーティング(spray coating)、グラビアコーティング(gravure coating)、マイクログラビアコーティング(microgravurecoating)、バーコーティング(bar-coating)、ナイフコーティング(knife coating)、リバースロールコーティング(reverse roll coating)、ロールコーティング(roll coating)、カレンダーコーティング(calender coating)、カーテンコーティング(curtain coating)、押出コーティング(extrustion coating)、キャストコーティング(cast coating)、浸漬コーティング(dip coating)、エアナイフコーティング(air-knifecoating)、泡コーティング(foam coating)、スリットコーティング(slit coating)、スクリーンプリンティングなどから選択される塗布方法により、基材にコーティングすることができるが、これに制限されるものではない。
【0060】
本発明の一様態によって、前記伝導性ペースト組成物は、伝導性、屈曲性、接着力、層間接着力を向上させ、および基板に均一に塗布するために、基板に10~1,000μmの厚さで塗布されることができ、好ましくは50~500μmの厚さで塗布されることができる。
【0061】
本発明の一様態によって、前記伝導性フィルムの厚さは、伝導性フィルムの伝導力、屈曲性、接着力、層間接着力の向上のために、1~100μmの範囲であることができ、好ましくは20~80μmの範囲であることができる。
【0062】
上記の構成を有する本発明によるコア-シェル構造の銀コーティングされた銅ナノワイヤを含む伝導性ペースト組成物は、コア-シェル構造の銀コーティングされた銅ナノワイヤがシリコン樹脂バインダーとの相互結合力および分散性に優れ、且つ、正確なメカニズムは不明であるが、驚くことに比抵抗およびシート抵抗が著しく低く、高い電気伝導度を有し、基材への塗布時に導電性を著しく向上させて、優れた伝導性を有する点を特徴とする。
【0063】
したがって、本発明によるコア-シェル構造の銀コーティングされた銅ナノワイヤを含む伝導性ペースト組成物を含む伝導性フィルムのシート抵抗は、5.0×10-2~3.0Ω/sq、具体的には、9.0×10-2~2.5Ω/sq、より具体的には、1.0×10-1~2.0Ω/sqであることがある。比抵抗は、5.0×10-7~5.0×10-5Ωm、具体的には、1.0×10-6~4.5×10-5Ωm、より具体的には、5.0×10-6~4.0×10-6Ωmであることができる。
【0064】
以下、実施例により、本発明によるコア-シェル構造の銀コーティングされた銅ナノワイヤを含む伝導性ペースト組成物およびこれを含む伝導性フィルムについてより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は、本発明を詳細に説明するための一つの参照であって、本発明は、これに限定されるものではなく、様々な形態に実現されることができる。
【0065】
また、他に定義されない限り、すべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者の一人によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本願で説明に使用される用語は、単に特定の実施例を効果的に記述するためのものであって、本発明を制限することを意図しない。
【0066】
[実施例]
以下、実施例により、本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は、単に本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されるものと解釈されないことは、当業界において通常の知識を有する者にとって自明である。
【0067】
実施例に使用された装備の諸元および物性の測定方法は、以下のとおりである。
【0068】
(1)シート抵抗:電気伝導度を比較するために、下記実施例により製造されたコーティング膜のシート抵抗を4探針プローブ式シート抵抗測定器(Loresta-GP、MCP-T610、MITSUBISHI CHEMICAL ANALYTECH)を用いて測定した。4探針プローブ式シート抵抗測定器でコーティング膜のシート抵抗を測定する時に、コーティング膜を4分割して測定した後、平均値を取った。
【0069】
(2)ペーストコーティング:製造された伝導性ペーストは、バーコーター(Bar coater、ERICHSEN、Model-510)を用いて、ポリイミド(Polyimide)フィルムにコーティングした。
【0070】
(3)フィルム厚さの測定:コア-シェル構造の銀コーティング銅ナノワイヤの厚さの測定は、厚さ測定器(ERICHSEN、Foil Thickness Gauge Model 497)で測定した。
【0071】
実施例1:フィラー含量が全体の伝導性ペースト組成物のうち13.6wt%である時に銀コーティングされた銅ナノワイヤ伝導性ペースト
100mlの三角フラスコに有機溶媒であるテルピネオール(α-terpineol、Sigma-Aldrich)28.12g(全重量に対して76.8wt%)、エチルセルロース(Ethylcellulose、Sigma-Aldrich)2.36g(全重量に対して6.4wt%)を入れて、70℃のホットプレートで500rpmで撹拌してエチルセルロースを溶解する。その後、韓国登録特許KR10-1789213 B1(公告日:2017.10.26)に記載の方法にしたがって製造されたコア-シェル構造の銀コーティングされた銅ナノワイヤ5g(全重量に対して13.6wt%)を入れ、シリコン粘着剤(RSN-0806、ダウコーニング)3.16g(全重量に対して8.6wt%)を添加してからよく混合した後、3ロールミル(3-rollmill、EXAKT 50)を用いて、5回分散処理を行って伝導性ペースト組成物を製造した(図1)。
【0072】
これとは別に、100mm×100mmのポリイミドフィルム上に前記伝導性ペースト組成物を10mlの表面に投与した後、湿潤厚さ500μmの厚さでコーティングを行った。製造されたコーティング膜は、ドライオーブンで2℃/minの昇温速度で250℃まで昇温した後、250℃で30分間熱処理してコーティング膜を製造した。この際、伝導性ペーストの最終乾燥厚さは、約26μmであった。この際、シート抵抗は、2.7×10-1Ω/sqと測定され、比抵抗は、7.16×10-6Ωmと測定された(表1)。
【0073】
実施例2:フィラー含量が全体の伝導性ペースト組成物のうち8wt%である時に銀コーティングされた銅ナノワイヤ伝導性ペースト
前記実施例1で銀コーティングされた銅ナノワイヤの含量を3gで使用した以外は、同様に実施した。
【0074】
実施例2で製造された伝導性ペーストコーティング膜の最終乾燥厚さは、約21μmであった。この際、シート抵抗は1.74×10Ω/sqと測定され、比抵抗は3.65×10-5Ωmと測定された(表1)。
【0075】
比較例1:銀ナノ粒子を用いた伝導性ペースト組成物(フィラー含量:8wt%)
前記実施例2で銀コーティングされた銅ナノワイヤの代わりに銀ナノ粒子を使用した以外は、同様に実施した。
【0076】
実施例2と比較した時に、実施例2の比抵抗が3.65×10-5Ωmと示された一方、銀ナノ粒子で伝導性ペースト組成物を製造した時には、シート抵抗9.27×10Ω/sqと測定され、比抵抗が1.16×10-4Ωmと1オーダー以上増加することが分かった(表1)。これは、銀ナノ粒子より銀コーティングされた銅ナノワイヤを含む伝導性ペースト組成物で伝導性フィルムを製造した時に、より低い比抵抗を得られることを確認することができた。この結果に応じて、銀ナノ粒子を用いて伝導性ペースト組成物を製造したときよりも銀コーティングされた銅ナノワイヤを用いて伝導性ペースト組成物を製造する場合に、より少ない含量のフィラーを含有するにもかかわらず、より優れた電気的物性を有する伝導性フィルムを提供することができることを確認することができた。
【0077】
【表1】
図1
図2