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特許7412552トレーラを後退させる方法ならびにトレーラ後退支援システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】トレーラを後退させる方法ならびにトレーラ後退支援システム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/10 20060101AFI20240104BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20240104BHJP
   B62D 115/00 20060101ALN20240104BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20240104BHJP
【FI】
B60W30/10
B62D6/00 ZYW
B62D115:00
B62D113:00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022524160
(86)(22)【出願日】2020-10-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(86)【国際出願番号】 US2020054766
(87)【国際公開番号】W WO2021080781
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2022-06-22
(31)【優先権主張番号】16/663,536
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522165131
【氏名又は名称】コンチネンタル オートノマス モビリティ ユーエス,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Continental Autonomous Mobility US, LLC
【住所又は居所原語表記】One Continental Drive, Auburn Hills, MI 48326, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ ホックリッジ クリッチリー
(72)【発明者】
【氏名】ニザール アハメド
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-34261(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0210317(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0052337(US,A1)
【文献】特開平11-353024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
B62D 6/00- 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプラを介して車両に連結されたトレーラの車両直線後退のためのトレーラ後退支援システムであって、前記車両は、操舵システムと、車両動作パラメータを検出するための車両動特性センサとを有し、前記システムは、
前記車両に対する前記トレーラの相対トレーラ角度を検出するように構成および配置されたカプラ角度検出センサと、
前記車両動特性センサおよび前記カプラ角度検出センサからの信号を受信するように構成および配置されているトレーラ後退支援モジュールであって、意図した直線暗黙経路上で前記トレーラを後退させる間に、前記車両の操舵を変化させるための前記操舵システムに関連付けられているトレーラ後退支援モジュールと、
前記車両動特性センサから信号を受信するように構成および配置されたずれ制御器であって、前記トレーラ後退支援モジュールに電気的に接続されているずれ制御器と、
を有し、
前記直線暗黙経路は、開始位置と所望の最終位置とを結ぶ仮想的な線であり、
意図した前記直線暗黙経路上で前記車両が前記トレーラを後退させているとき、かつ、前記相対トレーラ角度が実質的に0度であるとき、前記ずれ制御器は、1)前記車両動特性センサからの前記信号に基づいて、前記直線暗黙経路から前記トレーラがずれた距離を推定するように、かつ、2)閉ループフィードバック方式で、前記相対トレーラ角度の値を修正し、ひいては前記操舵システムを調整して、手動で操舵に介入することなく、前記直線暗黙経路に向かって前記トレーラを再位置合わせするために、前記トレーラ後退支援モジュールにずれ補正信号を供給するように構成および配置されている、
システム。
【請求項2】
前記カプラ角度検出センサは、カメラである、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記操舵システムをさらに有し、前記操舵システムは、
前記トレーラ後退支援モジュールに電気的に接続されている操舵モジュールと、
ステアリングホイールと、
操舵角センサと、
前記操舵モジュールに電気的に接続されておりかつ前記ステアリングホイールに関連付けられており、これにより、前記ずれ補正信号に基づいて、前記ステアリングホイールにトルクを供給して、前記直線暗黙経路に向かって前記トレーラを移動するように操舵角を変更するアクチュエータと、
を有する、請求項1または2記載のシステム。
【請求項4】
前記車両動特性センサをさらに有し、前記車両動特性センサは、操舵角、車輪回転および移動距離のうちの少なくとも1つを含む前記車両動作パラメータについての信号を取得するように構成および配置されている、請求項3記載のシステム。
【請求項5】
前記ずれ制御器は、
前記直線暗黙経路から前記トレーラがずれた距離を推定するように構成および配置された経路オフセット推定器と、
前記ずれ補正信号を供給するように構成および配置されたずれ補正モジュールと、
を有する、請求項1から4までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項6】
前記経路オフセット推定器は、プロセッサ回路である、請求項5記載のシステム。
【請求項7】
前記ずれ制御器には、比例制御器が含まれる、請求項5または6記載のシステム。
【請求項8】
前記比例制御器は、前記操舵システムに前記ずれ補正信号を供給して、ステアリングを調整させ、これにより、前記直線暗黙経路に向かい、指数関数型経路に沿って前記トレーラを再位置合わせするように構成および配置されている、請求項7記載のシステム。
【請求項9】
車両を使用し、開始位置と所望の最終位置とを結ぶ仮想的な線である直線暗黙経路に沿ってトレーラを後退させる方法であって、前記車両は、操舵システムと、前記トレーラを後退させる間に、前記車両の操舵を変化させるための、前記操舵システムに関連付けられたトレーラ後退支援モジュールと、前記車両に対する前記トレーラの相対トレーラ角度を検出するように構成および配置されたカプラ角度検出センサと、車両動作パラメータを検出するための車両動特性センサとを有し、
前記方法は、
前記カプラ角度検出センサにより、前記相対トレーラ角度を検出するステップと、
前記トレーラ後退支援モジュールにより前記相対トレーラ角度が、実質的に0度であるか否かを特定するステップと、
前記トレーラ後退支援モジュールにより、前記車両動特性センサから信号を受信するステップと、
前記トレーラ後退支援モジュールに電気的に接続されるずれ制御器により、前記車両動特性センサから前記信号を受信するステップと、
前記直線暗黙経路に沿って前記トレーラを移動させようとして前記車両が前記トレーラを後退させているとき、かつ前記トレーラ後退支援モジュールにより、前記相対トレーラ角度が実質的に0度であると特定されるとき、
記ずれ制御器により前記車両動特性センサからの前記信号に基づいて、前記トレーラが前記直線暗黙経路からずれた距離を推定するステップと、
前記ずれ制御器により、閉ループフィードバック方式で、前記トレーラ後退支援モジュールにずれ補正信号を供給して、前記相対トレーラ角度の値を再較正し、ひいては前記操舵システムを調整し、これにより、手動で操舵介入することなく、前記直線暗黙経路に向かって前記トレーラを移動させるステップと、
を有する、方法。
【請求項10】
前記ずれ制御器には、比例制御器が含まれており、前記ずれ補正信号は、前記操舵を調整させ、これにより、前記直線暗黙経路に向かい、指数関数型経路に沿って前記トレーラを移動させる、請求項9記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両トレーラ後退支援システムに関し、より詳細には、直線暗黙経路(straight line implied path)においてトレーラが後退して移動する間のトレーラのずれをリアルタイムで制御および補正するためのずれ安定化システムおよび方法に関する。
【0002】
背景技術
連結されたトレーラと共に車両を後退させることは、簡単ではなくかつ直感に反するプロセスであり、このプロセスは、消費者を苛立たせ、また窮屈な場所へとトレーラを操縦する間には消費者に難題を課すことが多い。運転者は、トレーラの方向を所望の通りに変えるために、車両のステアリングホイールをどの方向に回せばいいのかについて混乱させられてしまうことが多い。トレーラ後退支援(TRA:Trailer Reverse Assist)タイプの機能が近年追加されたことにより、後退中に運転者/オペレータが車両を用いてトレーラを直接に操舵できるようにすることによって、この状況が改善されている。しかしながら、図1を参照すると、トレーラ後退支援機能を可能にする車両10の制御システムは、トレーラ12の直線後退中に小さな誤差を生じる傾向があり、このことは結果的に、暗黙的な後退方向/予想される後退方向/所望の後退方向からのトレーラ12の大きなずれに結び付いてしまうことがある。図2を参照すると、このずれは運転者が、一定間隔を空けてかつ手動で調整しなければならず、またシステムのスムーズで直感的な動作を中断してしまうため、著しく不便である。図2では、説明を明瞭にするために、Y軸のスケールが誇張されていることに留意されたい。
【0003】
したがって、このようなずれを取り除き、またずれをさらに減じるためにTRAタイプのシステムの較正に対し、リアルタイム更新を提供することもできるシステムおよび方法を提供することが要求されている。
【0004】
概要
本発明の目的は、上述の要求を満たすことである。本発明の実施形態の原理によると、この目的は、カプラを介して車両に連結されたトレーラの車両直線後退のためのトレーラ後退支援システムを提供することによって達成される。車両は、操舵システムと、車両動作パラメータを検出するための車両動特性センサとを有する。このシステムには、車両に対するトレーラのゼロ度角度を検出するように構成および配置されたカプラ角度検出センサが含まれている。トレーラ後退支援モジュールは、車両動特性センサおよびカプラ角度検出センサからの信号を受信するように構成および配置されている。トレーラ後退支援モジュールは、意図した直線暗黙経路(intended straight line implied path)上でトレーラを後退させる間に、車両の操舵を変化させるための操舵システムに関連付けられている。ずれ制御器(drift controller)は、車両動特性センサからの信号を受信するように構成および配置されている。ずれ制御器は、トレーラ後退支援モジュールに電気的に接続されている。意図した直線暗黙経路上で車両がトレーラを後退させているとき、ゼロ度角度を検出するカプラ角度検出センサは、車両動特性センサからの信号に基づいて、完全には較正されていないことがあるため、ずれ制御器は、1)直線所望経路からトレーラがずれた距離を推定するように、かつ2)閉ループフィードバック方式で、ゼロ度角度の値を修正し、ひいては操舵システムを調整して、手動で操舵に介入することなく、直線暗黙経路に向かってトレーラを再位置合わせするために、トレーラ後退支援モジュールにずれ補正信号を供給するように構成および配置されている。
【0005】
1つの実施形態の別の態様によると、車両を使用し、直線暗黙経路に沿ってトレーラを後退させるために方法が提供される。車両は、操舵システムと、トレーラを後退させる間に、車両の操舵を変化させるための操舵システムに関連付けられたトレーラ後退支援モジュールと、車両動作パラメータを検出するための車両動特性センサとを有する。この方法には、車両に対するトレーラのゼロ度角度を検出することが含まれる。トレーラ後退支援モジュールにより、検出されたゼロ度角度が、実質的に0度であるか否かを特定する。トレーラ後退支援モジュールにより、車両動特性センサから信号を受信する。この方法により、トレーラ後退支援モジュールに電気的に接続されるずれ制御器が設けられる。ずれ制御器によって同様に、車両動特性センサからの信号を受信する。直線暗黙経路に沿ってトレーラを移動させようとして車両がトレーラを後退させているとき、かつトレーラ後退支援モジュールにより、相対トレーラ角度が実質的に0度であると特定されるとき、ゼロ度角度は、ずれ制御器によって受信される車両動特性センサからの信号に基づいて、完全には検出されないため、ずれ制御器により、トレーラが直線暗黙経路からずれた距離を推定する。閉ループフィードバック方式で、ずれ制御器により、トレーラ後退支援モジュールにずれ補正信号を供給して、ゼロ度角度の値を修正し、ひいては操舵システムを調整し、これにより、手動で操舵介入することなく、直線暗黙経路に向かってトレーラを再位置合わせする。
【0006】
本発明の他の目的、特徴および特性、また構造の関連する要素の動作の仕方および機能、複数の部分の組み合わせ、および製造の経済性は、添付の図面を参照し、すべてがこの明細書の一部を構成する次の詳細な説明および添付の特許請求の範囲を考慮すれば、より明らかになろう。
【0007】
本発明は、添付の図面と併せれば、その好ましい実施形態の次の詳細な説明からより良好に理解されよう。これらの図面では、同様の参照符号は、同様の部分を示している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】トレーラと、直線後退中に予想経路からのずれを示すTRAシステムとを備えた従来の車両の図である。
図2】目標位置に向かってずれを生じているトレーラを再位置合わせするための、一定間隔が空けられたオペレータ補正点を示す、図1の従来の車両と、トレーラと、TRAシステムとを示す図である。
図3】車両とトレーラとの間のカプラまたはヒッチにおける角度がゼロであることを示す、1つの実施形態のトレーラ後退支援システムの図である。
図4】車両操舵、ひいてはトレーラの直線後退中のそのずれを制御するための、1つの実施形態によるトレーラ後退支援システムの概略図である。
図5図4のトレーラ後退支援モジュールおよびずれ制御器への入力を示す概略図である。
図6】暗黙経路に向かってトレーラを操舵するための指数関数型経路補正アルゴリズムの適用を示す図である。
図7図6の指数関数型経路補正アルゴリズムに使用するための、図5のずれ補正モジュールのaTanモジュールを示す図である。
図8】1つの実施形態の方法のステップの流れ図である。
【0009】
例示的な実施形態の詳細な説明
図3を参照すると、カプラまたはヒッチ15を介して車両10’に連結されたトレーラ12の後退の際に車両10’を支援するための、一般に参照符号14で示されたトレーラ後退支援(TRA)システムが示されている。車両10’には、好ましくは米国特許第9248858号明細書に開示されているタイプのトレーラ後退支援(TRA)モジュール16が含まれており、この明細書の内容は、参照によって本明細書に組み込まれるものとする。図4に最もよく示されているように、TRAモジュール16は、別体の車両操舵モジュール20を含むかまたはこれに接続された電子制御ユニット(ECU:electronic control unit)である。この実施形態では、ステアリングホイールモジュール20は、TRAモジュール16の一部であるように示されている。カプラ角度検出センサ21および入力装置23は、TRAモジュール16に接続されている。センサ21および入力装置23は、既存の構成要素であってよく、車両10’に組み込まれていてよい。例えば、入力装置23は、ナビゲーション/情報システムで使用されるジョイスティックコントローラであってよい。センサ21は、車両とトレーラとの間の相対角度を表すカプラ角度またはヒッチ角度を測定するために使用可能である。センサ21は、車両10’とトレーラ12との間の相対距離を測定しまた変化した距離を使用してヒッチ角度を計算する1つまたは複数のセンサであってよい。センサ21は、距離測定において、トレーラ12の水平方向の特徴または垂直方向の特徴を使用することができる。この実施形態では、センサ21は、カメラであり、好ましくは車両10’にすでに取り付けられているカメラ、例えばバックカメラなどである。カメラ21は、画像を取り込むことができ、またヒッチ角度を計算するために画像分析が、使用可能である。明確なマーク25をトレーラ12に設定し、解析のためにカメラ21によって取り込むことができる。
【0010】
操舵モジュール20には、プロセッサ回路22が含まれ、このプロセッサ回路22は、車両運転者が車両ステアリングホイール18を介して相応する入力を与えることなく、フロントアクスルホイール24(図3)の操舵角を能動的に変化させるように構成および配置されている。操舵角は、センサ26によって検出され、操舵角は、ステアリングホイール18に連結されたシャフト29のような、操舵システム27に結合されているアクチュエータ28を介して変化させられ、これによってステアリングホイールにトルクが供給される。シャフト29は、ステアリングホイール18の一部であると考えることができる。操舵モジュール20には、リアアクスルホイールを付加的に操舵する能力も含まれていてよい。図4を参照すると、従来の車両動特性センサ34から取得される信号32(例えば、車輪回転および/または移動距離ならびにセンサ26から取得される操舵角)、入力装置23からのユーザ要求操舵信号35、ならびにセンサ21から取得される観測されたトレーラ方位信号37に基づき、プロセッサ回路22は、車両10’およびトレーラ12を相応に操縦するために、実行すべき補正アクションを計算し、操舵出力信号39を介して、操舵アクチュエータ28を起動する。操舵角センサ26を車両動特性センサの一部とみなすことができることに留意されたい。
【0011】
位置合わせされたトレーラ12(トレーラ角度は、車両軸線Aに対して約0度である)による直線後退のために、ユーザにより、TRAモジュール16に入力が供給される場合、車両10’は、それにトレーラが取り付けられておらず、運転者がステアリングホイール18を直線に保持しているかのように直線に後退すると予想される。TRAモジュール16は、その意図された目的のために良好に動作するが、実際には、システム位置合わせにおける小さな不備に起因して、トレーラ12が片側へスイングする傾向があるため、この0度の角度は維持されない。直線後退のための従来のTRAモジュール16には、トレーラ角度センサ21によってゼロ度が読み取られ続けるようとする試みにおいて、車両操舵が必要である。0度のトレーラ角度について通知された値が、(センサ21による不正確な検出に起因して)完全に較正されていない場合、このことは、小さな角度誤差でトレーラ12と車両10’を連結して後退させることにも等しい。これが発生すると、車両10’は、徐々に回転してトレーラ12に追従する。図1および図2に関連して上述したように、結果として、後退の方向は、直線暗黙経路からわずかに逸れてしまう。
【0012】
この実施形態によると、直線後退中にトレーラ12のずれを減じるために、ずれ制御器30が、TRAモジュール16の一部として設けられるか、または好ましくは、TRAモジュール16に接続される。上述したように、車両10’は,操舵角センサ26を有しており、また車両は、(センサ34を介して)それぞれの走行ホイールが移動した距離も個々に検出することができる。このデータがあれば、車両またはトレーラが、直線暗黙経路(開始位置と所望の最終位置とを結ぶ仮想的な線)から、どのくらい離れているかについての推定を特定することができる。この推定は、経路オフセット推定とみなされてよい。この経路オフセット推定は、アクチュエータ28を介してステアリングホイールにトルクを加えて、車両またはトレーラを暗黙経路上に戻すようにステアリングホイールモジュール20に指示するために使用可能である。これをずれ補正と称することができる。
【0013】
図4および図5を参照すると、この実施形態では、ずれ制御器30により、車両動特性センサ34(例えば、センサ26から取得される操舵角と共に、車輪回転および/または移動距離などの車両動作パラメータを検知する)から取得される信号32が使用されて、トレーラ12の経路オフセットまたは偏差が推定され、ユーザの介入を必要とすることなく、累積される経路誤差を埋める新しい経路(方位角)が提案される。したがって、図5に最も良く示されているように、ずれ制御器30は、TRAモジュール16を駆動するために使用されるのと同じ精度の車両動特性入力信号32を受信する。これらの入力信号32は、車両10’の初期直線位置からの車両10’の位置および方位の偏差を推定するのに十分である。この偏差は、次に、TRAモジュール16を制御するためのフィードバックとして使用されて、車両10’に、トレーラ12をその元の経路に戻すように再位置合わせさせる。
【0014】
ずれ制御器30は、操舵モジュール20を制御して操舵システム27に変化を生じさせるための、TRAモジュール16への入力として、ずれ補正信号40を送信する任意のタイプの制御器であってよい。ずれ補正モジュール(drift correction module)38は、TRAモジュール16におけるゼロ相対トレーラ角度の値を再較正または修正するためにも使用可能である。例えば、ずれ補正モジュール38は、TRAモジュール16に対する比例制御フィードバックを使用することができ、これにより、TRAモジュールへの安定した(平衡値)補正が操縦中に得られる。角度センサ21は、(角度センサから補正を固定的に減算することによって)再較正可能である。これが行われると、TRAモジュール16、ひいては操舵モジュール20は、指数関数的にゼロオフセットまで戻るように駆動される。
【0015】
図6には、単純な1次の指数関数型経路プランナが示されている。制御器38は、滑らかな経路を構成し、この滑らかな経路は、所望経路に収束し、TRAモジュール16への操舵コマンドとして容易に解釈可能であり、かつステアリングホイール18の過剰な前後行動を含まない。したがって、比例制御器38に関連する単位オフセット移動量当たりの方位角補正は、正確な解析解を有しかつ指数関数型経路である。図7を参照すると、制御器38により、勾配を角度に変換する逆正接関数42が使用される。トレーラ方位は、-atan(トレーラオフセット誤差×K)であるべきであり、トレーラ角度センサ21は、正確にこの量によって調整される0度較正値を有していてよい。
【0016】
上述した誤差を補正するために、任意の閉ループ制御方式が適用可能である。車両10’の位置を推定する1つの例示的な実施形態は、信号32を介して、センサ26からの操舵角信号と、一定の操舵比と、一定のホイールベースと組み合わせて、左および右の後輪変位を追跡することである。したがって、例えば、図8を参照すると、1つの実施形態の方法を実施するためのステップが示されている。ステップ44においてルーチンが開始されると、経路オフセットは、0であるとみなされ、かつ車両方位が直線暗黙経路に沿うとみなされて方位角θも0とみなされる。ステップ46では、TRA16により、ユーザ入力が0.0である否か、かつ(センサ21からの)トレーラ角度が実質的に0.0であるか否かを特定する。0.0でない場合にはこのルーチンは、ユーザ44に戻るが、0.0の場合にはステップ48において、ずれ制御器30(図5)により、例えば、以下、すなわち、
Ψ=操舵角/操舵比
Δs=最後のステップ以降の後輪変位の平均値
Δオフセット=Δs×sin(θ)
Δθ=(Δs/ホイールベース)×tan(Ψ)
オフセット=オフセット+Δオフセット
θ=θ+Δθ
によって経路オフセットを計算する。
【0017】
ずれ制御器30からのずれ補正信号40は、ステップ46においてTRAモジュール16にフィードバックされ、これにより、TRAモジュール16においてゼロ相対トレーラ角度の値が再較正または修正される。したがって、サイクルごとに新しいオフセットが得られる。図5に示されているように、上述の計算は、制御器30のプロセッサ回路または経路オフセット推定器36において実行され、結果は、ずれ補正モジュール38に入力され、次いでTRAモジュール16に入力される。
【0018】
したがって、ユーザが能動的な入力を供給すると、TRAモジュール16は通常のように機能し、新たなシステム14により、TRAモジュール16のそれまでの動作が無効にされ、完全な直線において車両を後退させるためのより正確な経路追従機能が可能にされる。したがって、ずれ制御器30を使用することにより、
機械的な位置合わせ不良の大きさが検出され、
フィードバックループが使用されて機械的な位置合わせ不良が補償され、
直線暗黙経路上で後退して車両が操舵されることが保証される。
【0019】
同様のフィードバック結果を達成するためには、多くの異なる仕方がある。図8のステップ48では、車両10’のリアアクスルの中心に対してオフセットを計算する。別のアプローチは、車両10’における別の点、またはトレーラ12における点(例えば、トレーラのアクスルの中心)に対して距離オフセットを計算することである。変位測定値の代わりに速度が使用可能であることに留意されたい。ヨーレートも使用可能である。慣用の4つのホイールセンサのすべてが使用可能である。操舵比は一般に一定ではないため、推定を改善するために、操舵システムとホイールスリップとのより正確な関係も、これらの幾何学形状も使用可能である。
【0020】
本明細書で説明される動作およびアルゴリズムは、説明したプロセッサ回路22および経路オフセット推定器38内の実行可能なコードとして実装可能であるか、またはスタンドアロンのコンピュータに格納可能であるか、もしくは1つ以上の集積回路を使用して実装されるプロセッサ回路によってコードを実行することに基づいて完備される機械読み取り可能な非一時的有形記憶媒体に格納可能である。開示された回路の例示的な実装形態には、プログラマブルロジックアレイ(PLA:programmable logic array)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field programmable gate array)などのようなロジックアレイに実装されるか、または特定用途向け集積回路(ASIC:application-specific integrated circuit)などのような集積回路のマスクプログラミングによって実装されるハードウェアロジックが含まれる。これらの回路のいずれも、マイクロプロセッサ回路(図示せず)などの対応する内部プロセッサ回路によって実行される、ソフトウェアベースの実行可能なリソースを使用して実装可能であり、また1つ以上の集積回路を使用して実装可能であり、この際に、内部メモリ回路に格納された実行可能なコードを実行することにより、プロセッサ回路を実装する集積回路に、アプリケーション状態変数をプロセッサメモリに格納させ、これにより、本明細書に記載された回路の動作を実行する実行可能なアプリケーションリソース(例えばアプリケーションインスタンス)が作成される。したがって、本明細書における「回路」という用語の使用は、1つ以上の集積回路を使用して実装されるハードウェアベースの回路と、記載された動作を実行するためのロジックを含むハードウェアベースの回路との両方のことか、または(1つ以上の集積回路を使用して実装される)プロセッサ回路を含むソフトウェアベースの回路のことを指し、プロセッサ回路には、実行可能なコードがプロセッサ回路によって実行されることによって変更されるアプリケーション状態データおよびアプリケーション変数を格納するためのプロセッサメモリの予約された部分が含まれる。メモリ回路は、例えば、プログラマブル読み取り専用メモリ(PROM:programmable read only memory)またはEPROMなどの不揮発性メモリ、および/またはDRAMなどの揮発性メモリを使用して実装可能である。
【0021】
上述の好ましい実施形態は、本発明の構造的かつ機能的な原理を説明するのと同様に、好ましい実施形態を使用する方法を説明するために示されかつ説明されており、このような原理から逸脱することなく変更されることがある。したがって本発明には、次の特許請求の範囲の精神内に包含されるすべての変更が含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8