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特許7412555半導体装置製造用接着シート及びそれを用いた半導体装置の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】半導体装置製造用接着シート及びそれを用いた半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/56 20060101AFI20240104BHJP
   H01L 23/50 20060101ALI20240104BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20240104BHJP
   C09J 109/02 20060101ALI20240104BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
H01L21/56 R
H01L23/50 G
C09J7/35
C09J109/02
C09J163/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022526934
(86)(22)【出願日】2021-05-19
(86)【国際出願番号】 JP2021018981
(87)【国際公開番号】W WO2021241359
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-08-26
(31)【優先権主張番号】P 2020091221
(32)【優先日】2020-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153591
【氏名又は名称】株式会社巴川製紙所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】水谷 大祐
(72)【発明者】
【氏名】近藤 恭史
(72)【発明者】
【氏名】付 文峰
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/156253(WO,A1)
【文献】特開2017-171814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
H01L 23/50
C09J 7/35
C09J 109/02
C09J 163/00
C09J 179/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、並びに
カルボキシル基含有アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(a)、下記構造式(1)を有するエポキシ樹脂(b)、
【化1】
マレイミド基を2個以上含有する化合物(c)、及び潜在型硬化剤(d)を含有し、該基材の一方の面に設けられた熱硬化型の接着剤層
を備えることを特徴とする、半導体装置のリードフレーム又は配線基板に剥離可能に貼着され
前記潜在型硬化剤(d)はエポキシ樹脂との反応開始温度が100℃以上の硬化剤である半導体装置製造用接着シート。
【請求項2】
前記カルボキシル基含有アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(a)は、アクリロニトリル含有量が5~50質量%で、かつ、数平均分子量から算出されるカルボキシル基当量が100~20000のカルボキシル基含有アクリロニトリル-ブタジエン共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置製造用接着シート。
【請求項3】
前記カルボキシル基含有アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(a)100質量部に対し、前記エポキシ樹脂(b)、前記マレイミド基を2個以上含有する化合物(c)、及び前記潜在型硬化剤(d)の合計が30~300質量部であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置製造用接着シート。
【請求項4】
リードフレーム又は配線基板に、請求項1に記載の半導体装置製造用接着シートを貼着する貼着工程;
前記リードフレーム又は配線基板に半導体素子を搭載するダイアタッチ工程;
前記半導体素子及び外部接続端子を導通させるワイヤボンディング工程;
前記半導体素子を封止樹脂で封止する封止工程;並びに
前記封止工程の後、半導体装置製造用接着シートをリードフレーム又は配線基板から剥離する剥離工程;
を備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、QFN(Quad Flat Non-lead)方式により半導体装置を組み立てる際にマスクテープとして好適に使用される接着シートと、それを用いた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話を始めとするIT機器の小型化、薄型化、多機能化が高まり、その要求に対応するため、半導体装置(半導体パッケージ)におけるさらなる高密度実装技術の必要性が高まっている。
この要求に応えるCSP(Chip Size Package)技術として、QFN方式が注目され(特許文献1および特許文献2参照。)、特に100ピン以下の少ピンタイプの半導体装置の製造においては広く採用されている。
【0003】
ここで、QFN方式による一般的なQFNパッケージの組立方法として、概略下記の方法が知られている。まず、貼着工程において、リードフレームの一方の面に接着シートを貼着し、次いで、ダイアタッチ工程において、リードフレームに複数形成された半導体素子搭載部(ダイパッド部)に、ICチップ等の半導体素子を各々搭載する。次に、ワイヤボンディング工程において、リードフレームの各半導体素子搭載部の外周に沿って配設された複数のリードと半導体素子とをボンディングワイヤにより電気的に接続する。次に、封止工程において、リードフレームに搭載された半導体素子を封止樹脂により封止する。
その後、剥離工程において、接着シートをリードフレームから剥離することにより、複数のQFNパッケージが配列されたQFNユニットを形成することができる。最後に、ダイシング工程において、このQFNユニットを各QFNパッケージの外周に沿ってダイシングすることにより、複数のQFNパッケージを製造できる。
【0004】
このような用途に使用される接着シートには、剥離工程の前まではリードフレームの裏面および封止樹脂の裏面から剥がれることなく十分かつ安定に貼着し、かつ、剥離工程では容易に剥離でき、リードフレームの裏面や封止樹脂の裏面に接着剤が残留する糊残りや、接着シートの破断などの不都合がないものであることが要求される。
特に近年は、半導体装置のコスト低減のために銅合金からなるリードフレームが使用されるようになっている。このような銅合金からなるリードフレームに対して接着シートを使用する場合には、リードフレームを構成する遷移金属である銅の、高分子材料に対する酸化劣化の触媒作用に起因して、テーピング工程後のQFNパッケージ組み立てに伴う熱履歴により高分子材料である接着剤が酸化劣化されやすく、リードフレームからの接着シート剥離時に重剥離及び糊残りしやすくなるという問題を呈する。
【0005】
そのため、従来使用されていた接着シートは、銅合金からなるリードフレームに使用できる実用レベルを十分に満足するものではなかった。
例えば、従来の接着シートには、耐熱性フィルムからなる基材に、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体とビスマレイミド樹脂とを含有する接着剤層が積層した形態のものがある(特許文献3参照。)。このような接着シートを使用した場合、テーピング工程後のダイアタッチキュア処理、ワイヤボンディング工程、及び樹脂封止工程で加えられる熱により、接着剤層中のアクリロニトリル-ブタジエン共重合体が劣化しやすく、剥離工程において、剥離困難となったり、接着シートが破断したり、糊残りが生じる、という問題が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-165961号公報
【文献】特開2005-142401号公報
【文献】特開2008-095014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、QFNパッケージの組み立て方法における剥離工程の前までは、QFN組み立てに伴う熱履歴を受けても、リードフレームの裏面および封止樹脂の裏面から剥がれることなく、これらに十分かつ安定に貼着し、封止樹脂の漏れもなく、しかも、剥離工程では容易に剥離でき、接着剤が残留する糊残りが生じたり破断したりしない接着シートを提供することを本発明の課題とする。さらに、斯かる接着シートを用いた、半導体装置の製造方法を提供することを本発明の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の半導体装置製造用接着シートは、基材、並びに、カルボキシル基含有アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(a)、下記構造式(1)を有するエポキシ樹脂(b)、マレイミド基を2個以上含有する化合物(c)、及び潜在型硬化剤(d)を含有し、該基材の一方の面に設けられた熱硬化型の接着剤層、を備え、半導体装置のリードフレーム又は配線基板に剥離可能に貼着され、前記潜在型硬化剤(d)はエポキシ樹脂との反応開始温度が100℃以上の硬化剤であることを特徴とする。
【0009】
【化1】
【0010】
また、前記カルボキシル基含有アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(a)は、アクリロニトリル含有量が5~50質量%で、かつ、数平均分子量から算出されるカルボキシル基当量が100~20000のカルボキシル基含有アクリロニトリル-ブタジエン共重合体であることが好ましい。
【0011】
前記カルボキシル基含有アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(a)100質量部に対し、前記エポキシ樹脂(b)、前記マレイミド基を2個以上含有する化合物(c)、及び前記潜在型硬化剤(d)の合計が30~300質量部であることが好ましい。
更に前記潜在型硬化剤(d)はエポキシ樹脂との反応開始温度が100℃以上の硬化剤であることが好ましい。
また、本発明の半導体装置の製造方法は、
リードフレーム又は配線基板に、本発明の半導体装置製造用接着シートを貼着する貼着工程;
前記リードフレーム又は配線基板に半導体素子を搭載するダイアタッチ工程;
前記半導体素子及び外部接続端子を導通させるワイヤボンディング工程;
前記半導体素子を封止樹脂で封止する封止工程;並びに
前記封止工程の後、半導体装置製造用接着シートをリードフレーム又は配線基板から剥離する剥離工程;を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、剥離工程の前までは、QFN組み立てに伴う熱履歴を受けても、リードフレームの裏面および封止樹脂の裏面から剥がれることなくこれらに十分かつ安定に貼着し、封止樹脂の漏れもなく、しかも、剥離工程では容易に剥離でき、接着剤が残留する糊残りが生じたり破断したりしない接着シートを提供することができる。本発明によれば更に、本発明の接着シートを用いた、半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の半導体装置の製造方法に用いられるリードフレームの一例を示す平面図である。
図2A】本発明の半導体装置の製造方法を説明する工程図である。
図2B】本発明の半導体装置の製造方法を説明する工程図である。
図2C】本発明の半導体装置の製造方法を説明する工程図である。
図2D】本発明の半導体装置の製造方法を説明する工程図である。
図2E】本発明の半導体装置の製造方法を説明する工程図である。
図2F】本発明の半導体装置の製造方法を説明する工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
[半導体装置製造用接着シート]
本発明の半導体装置製造用接着シート(以下、接着シートという)は、基材、及び該基材の一方の面に設けられた熱硬化型の接着剤層を備えている。本発明の接着シートは、半導体装置のリードフレーム又は配線基板に剥離可能に貼着されるものであり、前記接着剤層は、カルボキシル基含有アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(a)と、下記構造式(1)を有するエポキシ樹脂(b)と、マレイミド基を2個以上含有する化合物(c)と、潜在型硬化剤(d)とを含有するものである。本発明の接着シートは、QFN方式により半導体装置を組み立てる際にマスクテープとして使用される。
【0015】
【化2】
【0016】
本発明の接着シートを構成するカルボキシル基含有アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(a)(以下、(a)成分と呼ぶこともある)は、加熱初期における接着剤層の溶融粘度を適度に維持する役割などを果たすとともに、硬化した接着剤層に対して良好な柔軟性、接着性を付与するものである。本願発明の接着シートがこの共重合体を含有することによって、耐熱性フィルムなどからなる基材への密着性がよく、割れのない接着剤層を形成することができるものとなる。カルボキシル基含有アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(a)としては、公知のものを制限なく使用できるが、アクリロニトリル含有量が5~50質量%のものが好ましく、10~40質量%のものがより好ましい。アクリロニトリル含有量が上記範囲未満であると、溶媒への溶解性や他の成分との相溶性が低下するため、得られる接着剤層の均一性が低下する傾向がある。一方、アクリロニトリル含有量が上記範囲を超えると、得られる接着剤層はリードフレームや封止樹脂への接着性が過度となり、これを接着シートに使用した場合、剥離工程での剥離が困難となったり、接着シートが破断したりする可能性がある。
【0017】
カルボキシル基含有アクリロニトリル-ブタジエン共重合体における数平均分子量から算出されるカルボキシル基当量は100~20000の範囲のものが好ましく、200~10000のものがより好適である。カルボキシル基当量が上記範囲未満であると、他の成分との反応性が高くなりすぎ、得られる接着剤層の保存安定性が低下する傾向にある。一方、カルボキシル基当量が上記範囲を超えると、他の成分との反応性が不足するため、得られる接着剤層は、低Bステージとなりやすい。その結果、これを接着シートに使用した場合、加熱初期、すなわち接着シートの貼着工程や、ダイアタッチキュア処理などにおいて、接着シートが加熱された際に、接着剤層が低粘度化し、接着剤層で発泡を起こしたり、流れ出したりしやすく、熱安定性が低下する傾向にある。
なお、数平均分子量から算出されるカルボキシル基当量とは、数平均分子量(Mn)を1分子当たりのカルボキシル基数(官能基数)で除したものであって、下記式で示される。
カルボキシル基当量=Mn/官能基数
【0018】
エポキシ樹脂(b)(以下、(b)成分と呼ぶこともある)とマレイミド基を2個以上含有する化合物(c)は、接着剤層の熱硬化性を担うものであって、これらを併用することにより、熱安定性に優れ、しかも、剥離工程では容易に剥離でき、糊残りや破断が生じない接着剤層を形成することができる。特にエポキシ樹脂(b)は接着剤層に対して靱性を付与するものであるため、接着剤層がこれを含有することによって、剥離工程で接着剤層が割れることによる糊残りを抑えることができる。
【0019】
マレイミド基を2個以上含有する化合物(c)(以下、(c)成分と呼ぶこともある)は、接着剤層に対して熱安定性を付与するとともに、接着剤層の接着性を調整する作用を奏し、これを含有することによって、接着シートの接着性が適度に制御され、剥離工程で容易に剥離できる接着剤層を基材の表面に形成することができる。
マレイミド基を2個以上含有する化合物(c)の具体例としては、ビスマレイミド樹脂を構成する化合物が好ましく使用され、下記式(2-1)~(2-3)のものなどが挙げられるが、中でも特に下記式(2-1)または(2-3)で示される化合物が溶媒に対する溶解性の点で有用である。
【0020】
【化3】
【0021】
潜在型硬化剤(d)(以下、(d)成分と呼ぶこともある)は、接着剤層中に含有させることにより接着剤層をより低Bステージ状態に調整できるため、低温でテーピングすることができる。また、ダイアタッチキュアの工程などにおいて、接着剤が、含有する潜在型硬化剤(d)の反応開始温度以上の温度で加熱されることにより、素早く硬化反応が進み、高弾性率の状態をとることができる。
潜在型硬化剤(d)は、エポキシ樹脂との反応開始温度が100℃以上の硬化剤をいう。このような潜在型硬化剤としては、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業社製、商品名:キュアゾール 2PHZ-PW、反応開始温度:150℃)、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業社製、商品名:キュアゾール 2P4MHZ-PW、反応開始温度:130℃)などを挙げることができる。ここにおける反応開始温度とは、エポキシ樹脂と混ぜ合わせ、昇温した時に、硬化発熱がみられた温度である。DSC(示差走査熱量測定)を用いて測定した。
潜在型硬化剤(d)の含有量は、カルボキシル基含有アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(a)100質量部に対して0.05~20質量部が好ましく、より好ましくは0.1~10質量部である。潜在型硬化剤(d)の含有量が、上記範囲であれば接着剤層をより低Bステージ状態に調整できるため、低温でテーピングすることができ、なおかつ、ダイアタッチキュアなどの工程で、接着剤層を素早く硬化させることができる。
【0022】
なお、上述の(a)~(d)の各成分としては、いずれも、1種の化合物から構成されたものを使用してもよいし、2種以上の化合物の混合物を使用してもよい。
【0023】
各成分の比率は、(a)成分100質量部に対し、(b)成分と(c)成分と(d)成分との合計が30~300質量部であることが好ましく、30~200質量部がより好ましい。(b)成分と(c)成分と(d)成分の合計が上記範囲未満であると、接着剤層の反応性が低下し、加熱によっても不溶不融化が進行しにくくなり、熱安定性が低下することにより接着力が強くなる傾向がある。一方、上記範囲を超えると、加熱初期における接着剤層の溶融粘度が不足し、この接着剤層を使用した接着シートでは、テーピング工程後のダイアタッチキュア処理などで、接着剤層が流れ出したり発泡したりするおそれがある。
【0024】
さらに、(b)成分に対する(c)成分の質量比((c)/(b))は、0.1~10の範囲が好ましい。上記範囲未満では、得られる接着剤層は常温での硬化反応が進行し易くなり保存安定性が乏しくなる場合や、接着力が強くなりすぎて、これを使用した接着シートは剥離工程で剥離不能となったり、破断したりするおそれがある。一方、上記範囲を超えると、接着シートの製造時において、この接着剤層と耐熱性フィルムからなる基材との接着性が低下する場合や、接着剤層が発泡したり、得られた接着シートが糊残りしやすいものとなる傾向がある。
【0025】
本発明の半導体装置製造用接着シートにおける接着剤層には、反応性シロキサン化合物を更に含有させてもよい。反応性シロキサン化合物は、接着剤層を構成する各成分の相溶性を高めるとともに、接着剤層の封止樹脂からの剥離性を向上させるためのものである。この化合物を接着剤層に含ませることによって、接着剤層中の各成分が良好に相溶し、成分の分離、析出などの不都合のない均一な接着剤層を形成できる。その結果、接着剤層は接着強度がより均一なものとなり、部分的に接着強度の高低が生じることに起因した剥離性の低下や、糊残りなどの不都合を抑制することができる。
【0026】
反応性シロキサン化合物としては、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、メルカプト変性等の反応基により反応性が付与されたシロキサン化合物が制限なく使用できる。これらのなかでも、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、アミノプロピル末端のジメチルシロキサン4量体または8量体、ビス(3-アミノフェノキシメチル) テトラメチルジシロキサンが(b)成分および(c)成分との反応が速やかに進行する点で好適である。反応性シロキサン化合物としては、このようにシロキサン構造の両末端に反応基が結合したものを使用することが反応性の点から好ましいが、片末端のものや、末端の一方が反応性で他方が非反応性であるシランカップリング剤も使用できる。
【0027】
本発明の半導体装置製造用接着シートにおける接着剤層は、(b)成分のエポキシ基数と(c)成分のマレイミド基数との合計に対する反応性シロキサン化合物の反応基数の比が0.05~1.2であることが好ましく、より好ましくは0.1~0.8である。上記範囲未満では、接着剤層全体としての反応性が低下して、ダイアタッチキュア処理などで硬化反応が進行し難くなり、その結果、接着力が強くなりすぎる場合がある。一方、上記範囲を超えると、反応が過剰に進行しすぎて、接着剤層の調製時にゲル化などの問題が起こりやすく、接着力が弱くなりやすい。
【0028】
接着剤層には、成分(a)~成分(d)の必須成分の他に、有機過酸化物、トリフェニルホスフィン等の反応促進剤を、接着剤層の接着性に影響しない範囲で添加してもよい。これらの添加により、接着剤層の常温での状態を良好なBステージにコントロールすることも可能である。
さらに、溶融粘度のコントロール、熱伝導性向上、難燃性付与などの目的のために、平均粒径1μm以下のフィラーを、接着剤層に添加してもよい。フィラーとしては、シリカ、アルミナ、マグネシア、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化チタン、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等の無機フィラー、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の有機フィラーなどが挙げられる。フィラーを使用する場合には、その含有量は、接着剤層中、1~40質量%とすることが好ましい。
【0029】
本発明の接着シートは、基材である耐熱性フィルムの片面に、上述の接着剤層が形成されたものである。
このような接着シートを製造する場合には、まず、少なくとも上述のカルボキシル基含有アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(a)、前記構造式(1)を有するエポキシ樹脂(b)、マレイミド基を2個以上含有する化合物(c)、潜在型硬化剤(d)及び溶媒からなる接着剤塗料を調製する。ついで、この塗料を耐熱性フィルムの片面に、乾燥後の接着剤層の厚さが好ましくは1~50μm、より好ましくは3~20μmになるように塗布し、乾燥すればよい。また、接着剤層の保護のために、形成された接着剤層上には、さらに剥離性の保護フィルムを設けることが好ましく、その場合には、保護フィルム上に塗料を塗布、乾燥して接着剤層を形成し、その上に耐熱性フィルムを設ける方法で接着シートを製造してもよい。なお、保護フィルムは、接着シートの使用時には剥離されるものである。
【0030】
耐熱性フィルムとしては、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等からなる耐熱性プラスチックフィルム、エポキシ樹脂-ガラスクロス等の複合耐熱フィルム等が挙げられるが、特にポリイミドフィルムが好ましい。
ポリイミドフィルムの厚さは、12.5~125μmが好ましく、より好ましくは25~50μmである。上記範囲未満であると、接着シートのコシが不充分になって扱い難くなる傾向があり、上記範囲を超えると、QFN組み立て時のテーピング工程や剥離工程での作業が困難になる傾向がある。
【0031】
接着剤塗料に使用される溶媒としては、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エーテル類(テトラヒドロフランなど)等の有機溶剤、水等のうち1種以上を好ましく使用でき、その使用量は、塗料として適切な粘度となるように適宜調整すればよい。また、塗料の性状は、溶液、エマルジョン、サスペンジョンのいずれでもよく、使用する塗布装置および環境条件などに応じて適宜選択すればよい。
【0032】
剥離性の保護フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、フッ素系樹脂、シリコーン等のプラスチックフィルムや、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、紙等にシリコーン被覆等で剥離性を付与したものが挙げられる。
【0033】
[半導体装置の製造方法]
本発明の接着シートを用いた半導体装置の製造方法は、リードフレーム又は配線基板に接着シートを貼着する貼着工程;リードフレーム又は配線基板に半導体素子を搭載するダイアタッチ工程;半導体素子及び外部接続端子を導通させるワイヤボンディング工程;半導体素子を封止樹脂で封止する封止工程;並びに封止工程の後、接着シートをリードフレーム又は配線基板から剥離する剥離工程;を備えるものである。
【0034】
以下、本発明の接着シートを用いた半導体装置の製造方法の一例について、図1~2を参照して説明する。図1は、半導体素子を搭載する側から見たリードフレームの平面図であり、図2A~図2Fは、図1に示すリードフレームを用いてQFNパッケージを製造する方法を示す工程図であって、図1のリードフレームのA-A’断面図である。
【0035】
まず、図1に示す概略構成のリードフレーム20を用意する。リードフレーム20は、ICチップ等の半導体素子を搭載する複数の半導体素子搭載部(ダイパッド部)21がマトリックス状に形成され、各半導体素子搭載部21の外周に沿って多数のリード22(外部接続端子)が形成されたものである。
リードフレーム20の材質としては、従来公知のものが挙げられ、例えば、銅板及び銅合金板、またはこれらにストライクメッキを設けたもの、や銅合金板の表面に、ニッケルメッキ層とパラジウムメッキ層と金メッキ層とがこの順に設けられたものが挙げられる。
【0036】
図2Aに示すように、リードフレーム20の一方の面(下面)に、接着シート10を接着剤層(図示略)がリードフレーム20に当接するように貼着する(貼着工程)。接着シート10をリードフレーム20に貼着する方法としては、ラミネート法・プレス法等があるが、生産性の観点で、テーピング工程を連続的に行うことができるラミネート法が好適である。本工程における接着シート10の温度は、例えば、常温(5~35℃)から150℃とされ、60~120℃がより好ましい。150℃より高い温度で貼着するとリードフレームに反りが生じやすくなる。
本工程でリードフレーム20に反りが生じると、ダイアタッチ工程やワイヤボンディング工程での位置決めが困難になることや、加熱炉への搬送が困難になり、QFNパッケージの生産性を低下させるおそれがある。
【0037】
図2Bに示すように、リードフレーム20の半導体素子搭載部21における接着シート10が貼着されていない側に、ダイアタッチ剤(図示略)を介してICチップ等の半導体素子30を載置する。この際、リードフレーム20は、反りが抑制されているため、容易に位置決めされる。そして、半導体素子30が所定の位置に正確に載置される。その後、100~200℃程度に加熱して、ダイアタッチ剤を硬化し、半導体素子30を半導体素子搭載部21に固定して搭載する(ダイアタッチ剤硬化処理。以上、ダイアタッチ工程。)。この際、接着シート10は、接着剤層が硬化して、リードフレームに接着される。
【0038】
接着シート10やダイアタッチ剤等から発生するアウトガス成分がリードフレーム20や半導体素子30に付着していると、ワイヤボンディング工程においてワイヤの接合不良による歩留低下を生じやすい。そこで、ダイアタッチ工程の後、ワイヤボンディング工程の前に、リードフレーム20や半導体素子30にプラズマ処理を施す(プラズマクリーニング工程)。プラズマ処理としては、例えば、接着シート10が貼着され半導体素子30が搭載されたリードフレーム20(以下、仕掛品ということがある)をアルゴンガス、又はアルゴンガスと水素ガスとの混合ガス等の雰囲気でプラズマ照射する方法が挙げられる。プラズマ処理におけるプラズマの照射出力は、例えば、150~600Wとされる。また、プラズマ処理の時間は、例えば、0.1~15分間とされる。
【0039】
図2Cに示すように、半導体素子30とリードフレーム20のリード22(外部接続端子)とを金ワイヤ、銅ワイヤ、パラジウムで被覆された銅ワイヤ等のボンディングワイヤ31で電気的に導通する(ワイヤボンディング工程)。本工程は、仕掛品をヒーターブロック上で150~250℃程度に加熱しながら行われる。本工程における加熱時間は、例えば、5~60分間とされる。
ワイヤボンディング工程で仕掛品が加熱されると、接着剤層中にフッ素添加剤が含有されている場合は、フッ素添加剤が接着剤層の表面に移行するため、後述の剥離工程において接着シート10は、リードフレーム20及び封止樹脂40から剥離しやすくなる。
【0040】
図2Dに示すように、図2Cに示す仕掛品を金型内に載置し、封止樹脂(モールド材)を用いて金型内に射出して充填する。任意の量を金型内に充填した後、金型内を任意の圧力で維持することにより、半導体素子30を封止樹脂40により封止する(封止工程)。封止樹脂としては、従来公知のものが用いられ、例えば、エポキシ樹脂及び無機フィラー等の混合物が挙げられる。
図2Eに示すように、接着シート10を封止樹脂40及びリードフレーム20から剥離することにより、複数のQFNパッケージ50が配列されたQFNユニット60を得る(剥離工程)。
【0041】
図2Fに示すように、QFNユニット60を各QFNパッケージ50の外周に沿ってダイシングすることにより、複数のQFNパッケージ50を得る(ダイシング工程)。
【0042】
なお、上述の実施形態では、リードフレームを用いたQFNパッケージの製造方法を例にして説明したが、本発明はこれに限定されず、リードフレームを用いたQFNパッケージ以外の半導体装置の製造方法、配線基板を用いた半導体装置の製造方法にも適用できる。
【0043】
本発明の接着シートにおける接着剤層は、カルボキシル基含有アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(a)のカルボキシル基、及びエポキシ樹脂(b)のグリシジル基を架橋してBステージ状態(半硬化状態)をとることにより、低いガラス転移温度(10℃~50℃)とすることができる。低いガラス転移温度の接着剤層を有する接着シートは、比較的低温の加熱条件、具体的には60~150℃でロールラミネータなどによりテーピング工程を連続的に行うことができ生産性に優れる。
【0044】
また、本発明の接着シートにおける低いガラス転移温度(-30℃~50℃)の接着剤層は、加熱されたときに高弾性率の特性が得られる。近年、ワイヤボンディング工程でのコストダウンを目的として従来の金ワイヤに換わり、低コストの銅ワイヤまたはパラジウム被覆された銅ワイヤによるボンディングをした製品が普及し始めている。銅ワイヤまたはパラジウム被覆された銅ワイヤは、金より高弾性の金属のため、安定した形状を作るためには従来の金ワイヤより高荷重での加工が必要となる。
このような大きな荷重をリードフレームに加えると、リードフレーム下部に貼着されている接着シートにおける接着剤層が低弾性率であると、該接着剤層が変形しその変形された接着剤層の状態で樹脂封止される。そうすると、変形された接着剤層部分から封止樹脂の漏れが発生する。また、リードフレームから接着シートを剥離する際には、該変形された接着剤層部分から接着剤層が破断してリードフレーム表面上に接着剤が残留するという問題も生じる。加えて、ワイヤボンディング時に、接着剤が低弾性率であると、接着剤が変形してしまうことで、ワイヤ荷重が伝わりにくく、ワイヤボンディング不良も起こりやすくなる。本発明の接着シートにおける接着剤層は、上記のように高弾性率の特性を有するため、銅ワイヤまたは、パラジウム被覆された銅ワイヤを用いて、ワイヤボンディングしても、ワイヤボンディング不良や、封止樹脂の漏れや接着剤層の残留の問題が生じにくい。
【0045】
また、本発明の接着シートにおける接着剤層には、マレイミド基を2個以上含有する化合物(c)を有するため、接着シートの製造時における乾燥過程で接着剤層の硬化を適切にコントロールすることが可能で、接着剤層を高Bステージ状態とすることができる、そのため、リードフレームへの接着強度が高くなることを抑え、その結果、封止樹脂の漏れ、接着剤のリードフレームへの残留及び剥離時の接着剤層の破断を抑制することができる。
【実施例
【0046】
以下、本発明について、実施例を示して具体的に説明する。
[実施例1~4および比較例1~3]
(接着剤塗料の組成)
表1に示す質量比率で、(a)~(d)成分及びその他の成分と溶媒であるテトラヒドロフラン(THF)とを混合して、接着剤塗料を調製した。
ついで、この接着剤塗料を厚さ25μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、商品名カプトン100EN)の片面に、乾燥後の接着剤層厚さが5μmとなるよう塗布後、80℃に設定した熱風循環型オーブン中で乾燥し、接着シートを得た。
なお、使用した各成分の詳細は以下の通りである。
【0047】
・カルボキシル基含有アクリロニトリル-ブタジエン共重合体:数平均分子量より算出されるカルボキシル基当量1500、アクリロニトリル含有量27質量%
・構造式(1)を有するエポキシ樹脂:分子量630、官能基当量210g/eq
・ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド:分子量570、官能基当量285g/eq
・2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業社製、商品名:キュアゾール 2PHZ-PW、反応開始温度:150℃)
・2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業社製、商品名:キュアゾール 2P4MHZ-PW、反応開始温度:130℃)
・2-エチル-4-メチル-イミダゾール(四国化成工業社製、商品名:キュアゾール 2E4MZ、反応開始温度:90℃)
・2-ウンデシルイミダゾール(四国化成工業社製、商品名:キュアゾール C11Z、反応開始温度:90℃)
【0048】
【表1】
【0049】
上述のようにして得られた実施例及び比較例の接着シートについて、次の測定及び評価を行い、その結果を表2に示した。
【0050】
(1)Cu板に対する剥離強度
被着体:銅板(古河製125μm64タイプ)
接着シートサイズ:幅10mm×長さ50mm
加工:ロールラミネータを使用し、各例で得られた接着シートを被着体へ貼り付けたものを、試験体とした。その際のラミネート条件は、温度80℃、圧力4N/cm、圧着速度0.5m/分とした。
保存:上記で加工した接着シートを次の2つの条件で保存し、それぞれの保存後の接着シートにおける剥離強度の測定及び評価を行った。
<条件1>
上記で加工した接着シートを60℃に設定した恒温槽に120時間保存した。
<条件2>
上記で加工した接着シートを60℃に設定した恒温槽に120時間保存した後、更に40℃に設定した恒温槽に1週間保存した。
測定:万能引張試験機を使用して、試験体の90°ピール強度を常温で測定した。銅板を固定し、接着シートを垂直方向に引っ張って測定した。引張速度は50mm/分とした。
評価:剥離強度は、ラミネートでテーピングした時の量産性を考慮すると実用上15gf/cm以上が問題ない接着強度である。15gf/cm以上をAとし、15gf/cm未満をXとした。
【0051】
(2)加熱後の弾性率
加工:前記で得られた各例の接着剤塗料を厚さ38μmの離型処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)の片面に、乾燥後の接着剤層厚さが5μmとなるよう塗布後乾燥し接着シートを得た。次に該接着シートを、ダイアタッチキュア処理を想定し、通風オーブンを使用して175℃で60分間加熱した。
測定:加熱後の接着シートにおける接着剤層をPETフィルムから剥離し、引張貯蔵弾性率をDMA(DynamicMechanicalAnalyzer)を用いて測定した。DMAとしてバイブロン測定器(オリエンテック社製、RHEOVIBRONDDV-II-EP)を用いて、周波数11Hz、昇温速度10℃/min、荷重1.0gfにて測定を行った。
評価:ワイヤボンディング工程時を想定した際にかかる温度、200℃における引張貯蔵弾性率が6MPa以上のものをAとし、200℃における引張貯蔵弾性率が6MPa未満のものをXとした。
【0052】
(4)樹脂封止工程後の試験体に対する剥離強度、テープ剥離後の接着剤残留物の有無
加工・測定方法:
(i)試験体の作製と熱処理
各例で得られたポリイミドフィルム上に接着剤層を有する接着シートを幅50mm×長さ60mmに裁断した後、実際のQFNの組み立てに伴う熱履歴などを想定して、まず、下記の(a)~(d)を順次実施した。
(a)各例で得られた接着シートを幅50mm×長さ60mmに裁断し、これを50mm×100mmの外寸57.5mm×53.5mm銅合金製のテスト用リードフレーム(表面ストライクメッキ、8×8個のマトリクス配列、パッケージサイズ5mm×5mm、32ピン)に、ロールラミネータを使用して貼り付けた。その際のラミネート条件は、温度80℃、圧力4N/cm、圧着速度0.5m/分とした。
(b)接着シートが貼着された銅合金製のテスト用リードフレームを通風オーブンで175℃/60分間加熱した。これは、ダイアタッチキュア処理を想定した処理である。
(c)プラズマ照射処理:Yieldエンジニアリング社製1000Pにより、ガス種にArを使用して、450W/60秒間処理した。
(d)200℃/30分加熱:ワイヤボンディング工程を想定した処理であって、ホットプレートを使用して加熱した。
ついで、(a)~(d)の熱処理が済んだ被着体の接着シートが貼り合わされた面とは逆の銅材露出面に、モールドプレス機を用いて、175℃/3分の条件で封止樹脂を積層した(樹脂封止工程)。封止樹脂としては住友ベークライト社製のエポキシモールド樹脂(EME-G631BQ)を使用した。
【0053】
(ii)剥離強度の測定、テープ剥離後の接着剤残留物の有無
上述の樹脂封止工程後の試験体について、万能引張試験機を使用して、90°ピール強度を常温で測定した。なお、試験体を固定し、接着シートのコーナー部分を垂直方向に引っ張って測定した。引張速度は300mm/分とした。また、テープ剥離後の接着剤残留物の有無を、光学顕微鏡(キーエンス社製デジタルマイクロスコープVHX-500)を用いて、倍率100倍で確認した。
評価:
A:剥離強度が1000gf/50mm未満であって、剥離した接着シートが破断しておらず、リードフレーム材表面および封止樹脂表面に接着剤が残留していない。
B:剥離強度が1000gf/50mm以上であって、剥離した接着シートが破断しておらず、リードフレーム材表面および封止樹脂表面に接着剤が残留していない。
X:接着シートの破断が認められるか、リードフレーム材表面および封止樹脂表面に接着剤の残留が認められるかのいずれか少なくとも1つに該当する。
【0054】
【表2】
【0055】
上記の表2から明らかなように、実施例1~4の接着シートは、Cu板に対する剥離強度、加熱後の弾性率、樹脂封止工程後の試験体に対する剥離強度、テープ剥離後の接着剤残留物の有無における全ての評価において、実用上問題ない結果であった。
これに対して、比較例1及び比較例2の接着シートは、Cu板に対する接着強度が低く封止樹脂の漏れが生じやすい接着テープであった。また、比較例3の接着シートは、加熱後の弾性率が低く、銅ワイヤーにおけるワイヤボンディングにおいてワイヤ接続不良が生じやすい接着テープであり、且つ樹脂封止工程後の試験体に対する剥離強度の評価において、銅合金製のテスト用リードフレームに強固に接着されており、接着シートが裂けるという問題を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の半導体装置製造用接着シートは、QFN方式によるQFNパッケージの組み立て方法に好適に用いることが可能である。これを半導体装置製造方法において利用することにより、QFN組み立てにおける剥離工程で接着シートを容易に剥離することができ、尚且つ、接着シート上に接着剤の糊残りを生じさせたりせず、また接着シートの破断を生じさせない。
【符号の説明】
【0057】
10 半導体装置製造用接着シート
20 リードフレーム
30 半導体素子
31 ボンディングワイヤ
40 封止樹脂
50 QFNパッケージ
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F