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特許7412563貯蔵安定性ポリイソシアネート組成物及び調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】貯蔵安定性ポリイソシアネート組成物及び調製方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/09 20060101AFI20240104BHJP
   C08G 18/73 20060101ALI20240104BHJP
   C08G 18/75 20060101ALI20240104BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
C08G18/09
C08G18/73
C08G18/75
C08G18/10
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022536899
(86)(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-22
(86)【国際出願番号】 CN2020103413
(87)【国際公開番号】W WO2021135175
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-06-15
(31)【優先権主張番号】202010000495.3
(32)【優先日】2020-01-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516296371
【氏名又は名称】万華化学集団股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】WANHUA CHEMICAL GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】NO.17, TIANSHAN ROAD, YEDA, YANTAI CITY,SHANDONG PROVINCE, CHINA.
(73)【特許権者】
【識別番号】515153484
【氏名又は名称】万華化学(寧波)有限公司
【氏名又は名称原語表記】WANHUA CHEMICAL(NINGBO) CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Wanhua Industrial Garden Huandao North Road,Daxie Economic Development Zone Ningbo,Zhejiang 315812,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】朱智誠
(72)【発明者】
【氏名】石濱
(72)【発明者】
【氏名】厳成岳
(72)【発明者】
【氏名】鄭兵
(72)【発明者】
【氏名】李麗
(72)【発明者】
【氏名】尚永華
(72)【発明者】
【氏名】劉偉
(72)【発明者】
【氏名】李海軍
(72)【発明者】
【氏名】王暖程
(72)【発明者】
【氏名】黎源
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-226538(JP,A)
【文献】特開2003-137966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/09
C08G 18/73
C08G 18/75
C08G 18/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート組成物であって、
脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートから選ばれる1種以上のジイソシアネートとアルコール系化合物とを反応させて得られ、且つイソシアヌレート基、ウレトジオン基、ウレタン基及びアロファネート基を含み、
前記ポリイソシアネート組成物において、ウレタン基/(ウレトジオン基+イソシアヌレート基)のモル割合は0.08~0.2であり、ウレタン基/(アロファネート基+ウレタン基)のモル比は0.17~0.4である、貯蔵安定性ポリイソシアネート組成物。
【請求項2】
イソシアネート基の濃度は16~24質量%である、請求項1に記載の貯蔵安定性ポリイソシアネート組成物。
【請求項3】
ソシアネート基の濃度は20~23質量%である、請求項1に記載の貯蔵安定性ポリイソシアネート組成物。
【請求項4】
25℃での粘度は100~1500cpである、請求項に記載の貯蔵安定性ポリイソシアネート組成物。
【請求項5】
25℃での粘度は130~1000cpである、請求項4に記載の貯蔵安定性ポリイソシアネート組成物。
【請求項6】
前記アルコール系化合物の相対分子量は32~200であり、前記アルコール系化合物はメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、n-ヘキサノール、2-エチル-1-ヘキサノール、1-メトキシ-2-プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、異性化ブタンジオール、ヘキサンジオール系、オクタンジオール系、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチルペンタンジオール、グリセリン及びトリメチロールプロパンの1種又は複数種である、請求項1~5のいずれか一項に記載の貯蔵安定性ポリイソシアネート組成物。
【請求項7】
前記脂肪族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネートとは、炭素骨格にNCO基に加えて4~20個の炭素原子を含む有機ジイソシアネートを指す、請求項1~6のいずれか一項に記載の貯蔵安定性ポリイソシアネート組成物。
【請求項8】
前記有機ジイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジメチレンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート及び2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナートの1種又は複数種である、請求項7に記載の貯蔵安定性ポリイソシアネート組成物。
【請求項9】
40℃以下で6ヶ月貯蔵した時、製品の粘度変化≦10%である、請求項1~8のいずれか一項に記載の貯蔵安定性ポリイソシアネート組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の貯蔵安定性ポリイソシアネート組成物の調製方法であって、
前記ジイソシアネートをアルコール系化合物と混合反応させ、反応温度を50~160℃に制御し、反応時間を0.5~4時間に制御することと、次に三級ホスフィン触媒を加え、反応温度を60~120℃、反応時間を1~12時間に制御することとを含むか、
或いは、前記ジイソシアネートを三級ホスフィン触媒と混合反応させ、反応温度を50~150℃に制御し、反応時間を0.5~12時間に制御することと、次にアルコール系化合物を加え、反応温度を60~120℃、反応時間を1~3時間に制御することとを含む、貯蔵安定性ポリイソシアネート組成物の調製方法。
【請求項11】
前記三級ホスフィン触媒は以下の構造式を有する、請求項10に記載の貯蔵安定性ポリイソシアネート組成物の調製方法。
【化1】
(R1、R2、R3は互いに独立して脂肪族置換基又は芳香族置換基から選ばれる)。
【請求項12】
前記ジイソシアネートをアルコール系化合物と混合反応させ、反応温度を50~150℃に制御する、請求項10に記載の貯蔵安定性ポリイソシアネート組成物の調製方法。
【請求項13】
前記ジイソシアネートをアルコール系化合物と混合反応させ、反応時間を1時間に制御し、
級ホスフィン触媒を加えた後に、反応温度を60~100℃に制御し、
級ホスフィン触媒を加えた後に、反応時間を1~8時間に制御する、請求項10に記載の貯蔵安定性ポリイソシアネート組成物の調製方法。
【請求項14】
前記ジイソシアネートを三級ホスフィン触媒と混合反応させ、反応温度を50~80℃に制御し、
記ジイソシアネートを三級ホスフィン触媒と混合反応させ、反応時間を1~10時間に制御し、
ルコール系化合物を加えた後に、反応温度を80~100℃に制御し、
ルコール系化合物を加えた後に、反応時間を1~2時間に制御する、請求項10に記載の貯蔵安定性ポリイソシアネート組成物の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願はポリイソシアネート組成物に関し、例えば、イソシアネート誘導体の技術分野に属する貯蔵安定性ポリイソシアネート組成物及び調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウレトジオン基を含むイソシアネートホモポリマーは調製の初期で非常に低い粘度を有する。そのため、水性化、低溶媒、高固形分の塗料組成物に架橋剤成分として使用するときの性能に優れており、溶媒の代わりに硬化剤の希釈剤として特に広く使用されている。
【0003】
現在、触媒の存在下では、脂肪族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネートからウレトジオン基を含むポリイソシアネートを調製する方法が知られている。さまざまな二量体化触媒又は触媒系の利点や欠点が、文献で詳細に検討されている(例えば、公開文献Zur Synthese aliphatischer Polyisocyanate-Lackpolyisocyanate mit Biuret-,Isocyanurat- oder Uretdionstruktur,J.Prakt.Chem.,vol.336,pp.185-200(1994)、公開特許US5919887A、US5449775A、US8039574B2、US5502149A、US5354834A、US4994541A、CN1334264A、CN1511858A及びUS3919195Aなど)。
【0004】
CN1511858Aは、シクロアルキルホスフィンを触媒として使用し、≦40℃で反応させてウレトジオンポリイソシアネートを含む反応液を得る技術案を開示している。この技術案では、反応後に停止剤を加えず、2段蒸発器を直接使用して未反応のイソシアネートモノマーと触媒を除去することにより、ウレトジオン基を含むポリイソシアネートを調製する。未反応のモノマーを除去する過程において、触媒が存在することで、反応液が不安定になり、高重合体含有量が高くなり、且つ触媒を完全に除去することが難しく、製品の貯蔵安定性が低下し、粘度の増加が速く、下流の使用過程における製品の貯蔵期限の要求を満たすことができないことにつながる。
【0005】
CN1334264Aは、ウレトジオンポリイソシアネートの貯蔵安定性を向上させる方法を開示している。この方法は、「反応過程に置換尿素又は置換アミドを添加する」ことを採用することで、製品の貯蔵安定性を改善し、イソシアネートモノマーの増加を低減する。しかし、貯蔵過程で製品の粘度が急激に増加するなど他の問題が依然として発生する。
【0006】
CN101289427Aは、特定のホスフィンを触媒として使用して、イソシアネートを二量体化する(ウレトジオンを形成する)方法を開示している。この方法は、ホスフィンに直接結合した1つ又は2つの第三級アルキルホスフィンを触媒として使用し、得られた製品の初期粘度は低いが、長時間の貯蔵過程で粘度も著しく増加する。
【0007】
したがって、従来のプロセスで調製されたウレトジオンポリイソシアネートの主な欠点は、製品の貯蔵安定性が低下し、製品の粘度の増加が速く、下流の使用需要を満たすことができないことにある。
【発明の概要】
【0008】
以下は、本明細書で詳述される主題の概要である。本概要は特許請求の範囲を制限するためのものではない。
【0009】
本願の目的は、貯蔵安定性ポリイソシアネート組成物及び調製方法を提供することにある。ウレトジオン基を含むポリイソシアネート系におけるウレタン基と、該ウレトジオン基及びイソシアヌレート基の和とのモル割合を特定の範囲内に制御することにより、得られた製品は、従来の技術で得られた製品よりも優れた性能を有する。本方法で調製されたポリイソシアネート組成物は長期の貯蔵過程で製品の粘度がほとんど増加せず、下流の使用需要を満たす。
【0010】
上記の目的を実現するために、本願で使用される技術案は次の通りである。
貯蔵安定性ポリイソシアネート組成物は、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートから選ばれる1種以上のジイソシアネートとアルコール系化合物とを反応させて得られ、且つイソシアヌレート基、ウレトジオン基、ウレタン基及びアロファネート基を含み、
前記ポリイソシアネート組成物において、ウレタン基/(ウレトジオン基+イソシアヌレート基)のモル割合は0.01~0.2であり、好ましくは0.01~0.1である。
【0011】
本発明の実施例に係るポリイソシアネート組成物は下記の式(I)で示されるウレタン基、式(II)で示されるウレトジオン基、式(III)で示されるイソシアヌレート基を含む。
【化1】
【化2】
【化3】
【0012】
上記ウレタン基と上記ウレトジオン基及びイソシアヌレート基との含有量の比について、ウレタン基/(ウレトジオン基及びイソシアヌレート基)のモル割合で、0.01以上且つ0.2以下である。該モル割合が0.01以上であるとき、製品におけるウレトジオン及び三量体の含有量が高く、粘度が低く、また、該モル割合が0.2以下、好ましくは0.1以下であるとき、製品の貯蔵安定性がよく、貯蔵過程で白色物質が析出することはない。
【0013】
上記モル割合は
3C-NMRにより求められる。即ち、156ppm付近のウレタン基のカルボニル基の炭素原子の信号面積(C1)を測定し、149ppm付近のイソシアヌレート基のカルボニル基に由来する炭素原子の信号の面積(C2)を測定し、158ppm付近のウレトジオン基に由来する炭素原子の信号の面積(C3)を測定し、モル比の式に従って測定値を算出する。
【0014】
さらに、前記ポリイソシアネート組成物において、ウレタン基/(アロファネート基+ウレタン基)のモル比は0.01~0.4であり、好ましくは0.01~0.3である。
【0015】
本発明の実施例に係るポリイソシアネート組成物は下記の式(IV)で示されるアロファネート基を含む。
【化4】
【0016】
上記ウレタン基とアロファネート基及びウレタン基との含有量の比について、ウレタン基/(アロファネート基+ウレタン基)のモル比で、0.01以上且つ0.4以下である。上記モル比が0.4以下、好ましくは0.3以下であるとき、製品は硬化性がより良好である傾向があり、上記モル比が0.01を超えると、製品の貯蔵安定性はより良好である。前記ウレタン基はジイソシアネート基とアルコール性水酸基からなり、前記アロファネート基は上記ウレタン基とイソシアネート基からなる。即ち、ウレタン基/(アロファネート基+ウレタン基)のモル比は、ジオールに由来する水酸基構造がアロファネート基に変換されていない比率の指標を示す。アルコールに由来する水酸基構造が完全にアロファネート化されたとき、上記モル比は0である。
【0017】
上記アロファネート基とウレタン基のモル比は1H-NMRにより求められる。即ち、8.50ppm付近のアロファネート基の窒素に結合した水素原子の信号の面積(H1)と4.90ppm付近のウレタン基の窒素に結合した水素原子の信号の面積(H2)を測定することにより、上記モル比の計算式に従って計算値を得る。
【0018】
反応に使用される材料はジイソシアネートであるため、系に大量のNCO基を含み、反応後に分離された生成物は依然としてポリイソシアネート組成物であり、依然として活性NCO基を含み、さらに、前記ポリイソシアネート組成物において、イソシアネート基の濃度(NCO基の含有量)は16~24質量%、好ましくは20~23質量%である。本発明の実施例に係るポリイソシアネート組成物のイソシアネート基の濃度は16質量%以上であり、好ましくは20質量%以上である。イソシアネート基の濃度が16質量%以上であるとき、ポリイソシアネート組成物はより操作しやすい粘度を示す傾向がある。また、本発明の実施例に係るポリイソシアネート組成物のイソシアネート基の濃度が24質量%以下、好ましくは23質量%以下であるときに、塗料組成物の硬化性はより良好である傾向がある。上記イソシアネート基の濃度は後述の実施例に記載の方法に基づいて測定可能である。
【0019】
本発明の実施例に係るポリイソシアネート組成物は、BrookField DV-1 Prime粘度計で粘度が測定される。粘度は、好ましくは100~1500cp/25℃であり、より好ましくは130~1000cp/25℃である。ポリイソシアネート組成物が、この区間内にあると、材料がより操作しやすい。
【0020】
さらに、前記アルコール系化合物は、特に低分子量を含む一価又は多価脂肪アルコールは、好ましくは、相対分子量が32~200のアルコール系化合物であり、より好ましくは、前記アルコール系化合物は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、n-ヘキサノール、2-エチル-1-ヘキサノール、1-メトキシ-2-プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、異性化ブタンジオール、ヘキサンジオール系、オクタンジオール系、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチルペンタンジオール、グリセリン及びトリメチロールプロパンの1種又は複数種である。
【0021】
さらに、前記脂肪族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネートとは、炭素骨格にNCO基に加えて4~20個の炭素原子を含む有機ジイソシアネートを指す。
【0022】
さらに、前記有機ジイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキシルジメチレンジイソシアネート(HMDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HXDI)、ノルボルナンジメチレンジイソシアネート(NBDI)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)及び2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート(TMHDI)の1種又は複数種である。
【0023】
さらに、前記ポリイソシアネート組成物は40℃以下で6ヶ月貯蔵した時、製品の粘度変化≦10%である。
【0024】
以下、本願のポリイソシアネート組成物の調製方法の例を説明するが、以下に限定されない。
前記貯蔵安定性ポリイソシアネート組成物の調製方法は、具体的には、前記ジイソシアネートをアルコール系化合物と混合反応させ、反応温度を50~160℃、好ましくは50~150℃、より好ましくは50~120℃に制御し、該温度条件下ではウレタン化反応が容易に進行する傾向があり、同時に、ウレタンを形成した後に、アロファネートに変換可能であり、反応時間を0.5~4時間、好ましくは1時間に制御し、次に三級ホスフィン触媒を加え、反応温度を60~120℃、好ましくは60~100℃に制御し、反応時間を1~12時間、好ましくは1~8時間、より好ましくは1~5時間に制御する。また、アルコール系化合物はウレトジオンを含む反応液を生成する後期に加えてもよく、即ち、まず前記ジイソシアネートを三級ホスフィン触媒と混合反応させ、反応温度を50~150℃、好ましくは50~80℃に制御し、反応時間を0.5~12時間、好ましくは1~10時間に制御し、次にアルコール系化合物を加え、反応温度を60~120℃、好ましくは80~100℃に制御し、反応時間を1~3時間、好ましくは1~2時間に制御する。ウレトジオン及びイソシアヌレートの供給源はジイソシアネートを三級ホスフィン触媒の作用下で二量化及び三量化することである。
【0025】
本発明の実施例に係るアルコール系化合物を構成する濃度は特に限定されないが、好ましくは、ポリイソシアネート成分に対して0.5~3質量%である。
【0026】
さらに、前記三級ホスフィン触媒は以下の構造式を有する。
【化5】
ただし、R1、R2、R3は互いに独立して脂肪族置換基又は芳香族置換基から選ばれる。いくつかの具体的な実施形態において、前記脂肪族置換基は直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基又はシクロアルキル基から選ばれ、芳香族置換基はC7~10の芳香族置換基であり、前記脂肪族置換基は、好ましくはC1~10の直鎖アルキル基、C3~10の分岐鎖アルキル基、C3~10のシクロアルキル基であり、前記芳香族置換基は、好ましくはベンジル基である。いくつかの好ましい実施形態において、三級ホスフィン触媒は、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ-n-ブチルホスフィン、トリ-t-ブチルホスフィン、ジシクロペンチルブチルホスフィン、トリペンチルホスフィン、トリシクロペンチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリベンジルホスフィン、ベンジルジメチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ-n-オクチルホスフィンなどから選ばれ、より好ましい触媒はトリ-t-ブチルホスフィン及び/又はトリオクチルホスフィンである。
【0027】
本発明の実施例に係る方法において、系におけるイソシアネートモノマーの総質量に対する系におけるイソシアネートの消費質量の比が10~80%、好ましくは30~70%に達すると、停止剤を加えて反応を終了する。系における変換率が低いほど、系におけるウレタン含有量は高い。変換率を制御することにより、系におけるウレタンの含有量を制御する。
【0028】
使用される停止剤は、酸塩化物系(例えば、塩化ホルミル(Formyl chloride)、アセチルクロリド、ベンゾイルクロリド又はフタロイルクロリドなど)、スルホン酸エステル系(例えば、トルエンスルホン酸メチル、トルエンスルホン酸エチルなど)、アルキルフォスフェート系(例えば、リン酸モノブチル、リン酸ジブチル、リン酸モノエチル、リン酸ジエチル、リン酸ジオクチル、リン酸ジイソオクチルなど)、硫酸塩系(例えば、硫酸ジメチル、硫酸ジエチルなど)の1種又は複数種であってもよい。停止剤の使用量は、反応に使用される触媒のモル数の80~120%である。
【0029】
本発明の実施例に係る方法は、溶媒がない条件下で実施してもよく、イソシアネートに対して不活性な溶媒の存在下で実施してもよい。適切な溶媒は、酢酸ブチル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、キシレン、プロピレングリコールジアセテート、ブタノン、メチルイソアミルケトン、シクロヘキサノン、へキサン、トルエン、キシレン、ベンゼン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、炭化水素混合物、ジクロロメタンなどの一般的な塗料用溶媒を含む。しかしながら、本発明の実施例に係る反応は、溶媒を添加せずに反応することが好ましい。
【0030】
反応終了後、系における反応されていないイソシアネートモノマーを適切な分離方法(例えば、フラッシュ蒸発器、流下型薄膜蒸発器、薄膜蒸発器及びショートパス蒸発器の1種又は複数種の組み合わせ)で脱着することができる。適切な分離温度を120~160℃に制御する。得られたポリイソシアネート組成物において、未反応のイソシアネートモノマーの含有量は、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。
【0031】
本願は、さらに本発明の実施例に係る方法を用いて調製されたウレトジオン基を含むポリイソシアネートから調製されたポリウレタン塗料及びポリウレタン接着剤などの関連製品に関する。また、本発明の実施例に係る方法を用いて調製されたウレトジオン基を含むポリイソシアネートは、ブロッキング剤でブロックされた後にポリウレタン塗料及びポリウレタン接着剤などの他の関連製品を調製するために使用可能である。
【0032】
従来技術と比較して、本願は次の利点を有する。
ウレトジオンポリイソシアネートは貯蔵過程で系の粘度が著しく増加する傾向がある。本願は系におけるウレタン基/(イソシアヌレート基+ウレトジオン基)の割合を制御することにより、製品の貯蔵過程における粘度の増加を抑制し、製品の貯蔵安定性を向上させる。
【0033】
詳細な説明を読んで理解した後に、他の側面を理解できる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下の実施例は、本願に係る方法についてさらに説明しているが、本願は、列挙される実施例に限定されず、本願の特許請求の範囲内の他の公知の変更も含むべきである。本願の具体的な使用は実施例で言及される使用に限定されず、当業者が本願の構想を利用して本願に加えることができる簡単な変更は、すべて本願の保護範囲に含まれる。
【0035】
本願の実施例では次のテスト方法を使用した。
(1)GPC反応変換率の測定:
ゲルクロマトグラフィー技術(LC-20AD/RID-10A、カラムはMZ-Gel SDplus 10E3A 5μm(8.0*300mm)、MZ-Gel SDplus 500A 5μm(8.0*300mm)
、MZ-Gel SDplus 100A 5μm(8.0*300mm)直列、島津;移動相:テトラヒドロフラン;流速:1.0mL/min;分析時間:40min、カラム温度:35℃)を用いてイソシアネート原料を定量し、面積正規化法で測定系における多量体及びモノマーの面積を測定し、GPC反応変換率(%)=S(モノマーのピーク面積)/S(各成分のピーク面積の和)*100%である。
(2)イソシアネート基の濃度(NCO基の含有量)テストはGB/T 12009.4に準拠した。
(3)粘度の測定方法:動的な力学粘度はBrookField DV-I Prime粘度計でS21ローターを用いて25℃で測定した。
(4)ウレタン基/(ウレトジオン基+イソシアヌレート基)の測定:
該モル比をモル比1と記し、テスト方法は13C-NMR核磁気共鳴法を使用し、使用した機器はBruker 400MHz機器であり、サンプル濃度は50質量%(CDCl3溶液)であり、テスト条件は100MHzである。
該モル比の計算方法:モル比1=156ppm付近の信号面積/(149ppm付近の信号面積/3+158ppm付近の信号面積/2)。
(5)ウレタン基/(ウレタン+アロファネート)の測定:
該モル比をモル比2と記し、テスト方法はH-NMR核磁気共鳴法を使用し、使用した機器はBruker 400MHz機器であり、サンプル濃度は5質量%(CDCl3溶液)であり、テスト条件は400MHzである。
該モル比の計算方法:モル比2=4.9ppm付近の信号面積/(8.9ppm付近の信号面積+4.9ppm付近の信号面積)。
(6)硬化性
塗料組成物をブリキにコーティングし、15分間置き、80℃で60分間ベークし、室温で15分間置き、100グリッド法で付着力をテストし、付着力のテスト値が低いほど硬化性能がよい。
以下の各実施例で使用される原料の情報は次の通りである。
ヘキサメチレンジイソシアネート:万華科学、純度>99%;
2-エチル-1,3-ヘキサンジオール:アラジン試薬、純度>99%;
トリ-n-オクチルホスフィン:シグマ試薬、純度>95%;
リン酸ジイソオクチル:アラジン試薬、純度>99%;
トリ-n-ブチルホスフィン:アラジン試薬、純度>95%;
p-トルエンスルホン酸メチル:アラジン試薬、純度>99%。
他の原料及び試薬は、特に明記しない限り、すべて市販を通じて入手できる。
【0036】
以下の実施例及び比較例は特に明記がない場合、反応前から触媒を添加するまで及び反応の過程全体において、反応液を常に乾燥窒素の保護下にあるように保持した。特に明記しない限り、すべてのパーセンテージは質量パーセンテージである。
【実施例1】
【0037】
総質量Mが1000gのヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)に、50℃で撹拌しながら15gの2-エチル-1,3-ヘキサンジオールを加え、1時間反応させ、ウレタン化反応を行い、反応釜の温度を60℃に制御し、また2.5gのトリ-n-オクチルホスフィンを加え、ゲルクロマトグラフィーによって反応系における加えたHDIの総質量Mに対するHDIの消費質量M1の割合(即ち、GPC反応変換率)を定量的にモニタした。GPC反応変換率が30~65%になったとき、2.2gのリン酸ジイソオクチルを加えて反応を終了した。140℃の温度と0.3mbarの圧力で、2段薄膜蒸発器で蒸留して反応系における未反応のHDIを脱着し、ウレトジオン基を含むポリイソシアネート製品を得た。異なるGPC反応変換率で調製された各製品の指標をそれぞれ表1に示す。
【0038】
【表1】
【実施例2】
【0039】
総質量Mが1000gのヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)に、60℃で撹拌しながら2.5gのトリ-n-オクチルホスフィンを加え、ゲルクロマトグラフィーによって反応系における加えたHDIの総質量Mに対するHDIの消費質量M1の割合(即ち、GPC反応変換率)を定量的にモニタした。GPC反応変換率が50%になったとき、2.2gのリン酸ジイソオクチルを加えて反応を終了した。80℃まで昇温し、15gの2-エチル-1,3-ヘキサンジオールを加え、0.5~4時間反応し続けた。それぞれ140℃の温度と0.3mbarの圧力で、2段薄膜蒸発器で蒸留して反応系における未反応のHDIを脱着し、ウレトジオン基を含むポリイソシアネート製品を得た。異なる反応時間で調製された各製品の指標をそれぞれ表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
実施例2の各ポリイソシアネート組成物の硬化性能をテストし、テスト方法は次の通りである。ヒドロアクリル酸樹脂(同徳AC1100B、固形分60%、ヒドロキシル値86mg/g)をそれぞれ上記のウレトジオン基を含むポリイソシアネート組成物と、NCO/OH=1:1のモル比で調製し、酢酸ブチルの溶媒で50%に希釈し、塗膜評価を行った。性能テストの結果を下記の表に示す。
【0042】
【表3】
【実施例3】
【0043】
60℃で1000gのヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)に、5gの1,3-ブタンジオールを加え、1時間反応させ、3gのトリ-n-ブチルホスフィンを触媒として加えた。4時間の反応時間を経た後に、ゲルクロマトグラフィーによって定量的にモニタした、反応系における加えたHDIの総質量Mに対するHDIの消費質量M1の割合は55%であり、2.8gのp-トルエンスルホン酸メチルを加えて1時間加熱し、80℃に達すると反応を終了した。終了後に5gの1,3-ブタンジオールを加え、1時間反応し続けた。140℃の温度と0.3mbarの圧力で薄層蒸留し、ウレトジオン基を含むポリイソシアネート組成物の製品3-aを得て、その指標を表4に示す。
【比較例1】
【0044】
特許文献CN1334264Aにおける実施例1を参照して行い、その過程は次の通りである。60℃で1000gのヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)に、10gの1,3-ブタンジオールと3gのトリ-n-ブチルホスフィンを触媒として加えた。4時間の反応時間を経た後に、ゲルクロマトグラフィーによって定量的にモニタした、反応系における加えたHDIの総質量Mに対するHDIの消費質量M1の割合は55%であり、2.8gのp-トルエンスルホン酸メチルを加えて1時間加熱し、80℃に達すると反応を終了した。140℃の温度と0.3mbarの圧力で薄層蒸留し、ウレトジオン基を含む製品D1を得た。その指標を表4に示す。
【比較例2】
【0045】
特許文献DE-A1670720における技術案を参照して行い、具体的な方法は次の通りである。60℃で1000gのヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)に、3gのトリ-n-ブチルホスフィンを触媒として加えた。4時間の反応時間を経た後に、ゲルクロマトグラフィーによって定量的にモニタした、反応系における加えたHDIの総質量Mに対するHDIの消費質量M1の割合は55%であり、2.8gのp-トルエンスルホン酸メチルを加えて1時間加熱し、80℃に達すると反応を終了した。140℃の温度と0.3mbarの圧力で薄層蒸留し、ウレトジオン基を含む製品D2を得た。その指標を表4に示す。
【0046】
【表4】
【0047】
上記の実施例及び比較例の性能テストの結果から分かるように、
1-a、1-bのサンプルのように、低粘度系製品において、系におけるウレタンの絶対含有量が比較的高く、即ち、モル比1>0.2のとき、低粘度系の粘度の増加を抑制できるが、系におけるウレタン構造の相溶性がよくなく、貯蔵過程で系における混濁現象を引き起こしやすい。2-aのサンプルは顕著な混濁が示されていないが、モル比1が臨界値に近く、且つモル比2>0.4であるため、肉眼で見える透光性が悪く、全体が不均一である現象が現れた。
【0048】
比較例1に示すように、ウレタンの絶対含有量が比較的少なく、即ち、モル比1<0.01のとき、モル比2は要求を満たすが、系におけるウレタンの絶対量が比較的少なく、低粘度系の粘度の増加を抑制する効果が弱く、系の粘度が依然として増加しやすい。比較例2では、反応原料にアルコール系化合物を含まず、製品にウレタン構造を全く含まず、系における粘度の増加傾向がより顕著である。