(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】湿式不織布及びこれを含む物品
(51)【国際特許分類】
D21H 13/24 20060101AFI20240104BHJP
B01D 39/16 20060101ALI20240104BHJP
D21H 27/20 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
D21H13/24
B01D39/16 A
D21H27/20 A
(21)【出願番号】P 2022539319
(86)(22)【出願日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 KR2020019129
(87)【国際公開番号】W WO2021133114
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-07-05
(31)【優先権主張番号】10-2019-0177039
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500254664
【氏名又は名称】トーレ アドバンスト マテリアルズ コリア インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】フィ ドン リー
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特許第7154400(JP,B2)
【文献】国際公開第2008/130019(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 13/24
B01D 39/16
D21H 27/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維長が1~30mmである第1繊維;及び
テレフタル酸を含む酸成分、及びエチレングリコールと下記化学式1で表示される化合物及び化学式2で表示される化合物を含むジオール成分が反応したエステル化化合物が重縮合されたコポリエステルを含み、
前記ジオール成分のうち化学式1で表示される化合物の含量が化学式2で表示される化合物の含量よりさらに大きく、繊維長が1~30mmである第2繊維;を含むことを特徴とする、湿式不織布。
【化1】
【化2】
【請求項2】
前記化学式1で表示される化合物と化学式2で表示される化合物の含量の総和は、前記ジオール成分のうち30~45モル%で含まれることを特徴とする、請求項1に記載の湿式不織布。
【請求項3】
前記ジオール成分のうち前記化学式1で表示される化合物は、20~40モル%、前記化学式2で表示される化合物は、0.8~10モル%で含まれることを特徴とする、請求項1に記載の湿式不織布。
【請求項4】
前記第2繊維は、下記の数学式1による繊維水分散性が0.040%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の湿式不織布。
【数1】
前記未分散繊維個数は、温度25℃である水1Lに水分率25重量%である第2繊維3gを投入した後、600rpmの条件下で10分間撹拌させた後に1分間放置した後、未分散繊維の個数を測定したものである。
【請求項5】
第1繊維は、セルロース繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維及びポリオレフィン繊維からなる群より選択された1種以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の湿式不織布。
【請求項6】
前記第1繊維及び第2繊維は、繊度がそれぞれ独立的に1~2デニールであることを特徴とする、請求項1に記載の湿式不織布。
【請求項7】
前記第2繊維は、MS300-55に基づいたアセトアルデヒド(AA)の発生量が2400ppb以下であることを特徴とする、請求項1に記載の湿式不織布。
【請求項8】
請求項1~
7のうちいずれか一項に記載の湿式不織布を含むことを特徴とする、フィルター部材。
【請求項9】
請求項1~
7のうちいずれか一項に記載の湿式不織布を含むことを特徴とする、インテリア部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式不織布に関し、より詳しくは、触感、機械的強度及び加工性が非常に優れ、優れた耐熱性により経時変化が最小化され、VOCsの放出が顕著に低減されて環境にやさしい各種物品に応用し得る湿式不織布及びこれを含む物品に関する。
【背景技術】
【0002】
湿式不織布を製造するための湿紙は、短い長さを有する繊維を水に分散させて製造されることによって乾式不織布より著しく優れた坪量、厚さ及び/又は地合(formation)均一性を発現することに有利である。しかし、水で繊維の均一分散性を高めて担保するために短い長さの繊維を使わなければならないので、前記湿式不織布は乾式不織布に比べて強度が非常に低く、このような湿式不織布は、高強度が要求されない分野に一般的に用いられている。
【0003】
前記湿式不織布は、一般的に前記湿紙をフェルトを装置した乾燥機又はヤンキーマシン(yankee machine)を通じてプレス(press)して製造するので、湿式不織布の厚さは薄いものが大部分であり、プレスにより不織布の密度は高くなるにしたがって紙のような織物の感触を有する特徴がある。
【0004】
このような湿式不織布は、多様な応用製品、例えば、フィルター、壁紙などに適用されているが、既存の湿式不織布は、強度が不足するという問題がある。これによって、最近には機械的強度を向上させるためにバインダーを付加して製造しているのが実情である。
【0005】
前記バインダーの一例として、熱接着性繊維が考えられるが、前記熱接着性繊維は、各種不織布のパッティング用途で製造するときに用いられる繊維構造物において異種の繊維を接着する目的で幅広く用いられてきた。
【0006】
例えば、熱接着が可能となるよう低い融点を有する材質として、アメリカ登録特許第4,129,675号には、テレフタル酸(terephthalic acid:TPA)とイソフタル酸(isophthalic acid:IPA)を用いて共重合された低融点ポリエステルが紹介されている。また、大韓民国登録特許第10-1216690号には、接着性を改善させるためのイソフタル酸、ジエチレングリコールを含んで具現された低融点ポリエステル繊維が開示されている。
【0007】
しかし、上のような従来の低融点ポリエステル繊維は、一定レベル以上の紡糸性及び接着性を有することができるが、剛直な改質剤の環構造によって熱接着後にかたい感じの不織布又は織物構造体を得るという問題点がある。また、バインダー特性の発現のために、低い融点や低いガラス転移温度を有する方向に開発が進行されることによって具現されたポリエステルの耐熱性が劣悪になり、夏期に40℃を超える貯蔵条件でも経時変化が顕著に発生し、貯蔵中に発生するポリエステルチップや繊維間結合が発生して、貯蔵安定性も顕著に低下するという問題がある。
【0008】
また、ポリエステルの特性上、重合工程で発生する副反応によるポリマーにより人体に有害なVOCsが生成されるという問題がある。すなわち、湿式不織布の主用途のうち一つは、エアーフィルター及びティーバッグ用途の食品フィルターであるが、ポリエステル材質の熱接着性繊維が湿式不織布に具備される場合、熱接着性繊維内に含まれたVOCsに人体が直接暴露する恐れがあり危険性がある。また、湿式不織布が壁紙などのインテリア部材として用いられる場合にもシックハウス症候群問題を誘発し得るなど適合しない場合がある。
【0009】
したがって、従来の熱接着性繊維が有する紡糸性及び接着性を維持又は改善させ得るだけはなく、顕著に改善された触感、常温及び高温での経時変化最小化及び貯蔵安定性を向上させ得、分散性に優れ、VOCsの発生量が少ない湿式不織布に対する開発が求められているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような点を勘案して案出したものであって、触感、接着強度及び加工性が非常に優れ、優れた耐熱性により経時変化が最小化され、VOCsの放出が顕著に低減されて環境にやさしいので、浄水フィルター、ティーバッグなどのフィルター部材、壁紙などのインテリア部材などに広く応用され得る湿式不織布及びこれを含む物品を提供することに目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明は、繊維長が1~30mmである第1繊維;及び
【0012】
テレフタル酸を含む酸成分、及びエチレングリコールと下記化学式1で表示される化合物及び化学式2で表示される化合物を含むジオール成分が反応したエステル化化合物が重縮合されたコポリエステルを含み、繊維長が1~30mmである第2繊維;を含む湿式不織布を提供する。
【0013】
【0014】
【0015】
本発明の一実施例によると、前記化学式1で表示される化合物と化学式2で表示される化合物の含量の総和は、前記ジオール成分のうち30~45モル%で含まれ得る。
【0016】
また、前記ジオール成分のうち化学式1で表示される化合物の含量(モル%)が化学式2で表示される化合物の含量(モル%)よりさらに大きくてもよい。
【0017】
また、前記ジオール成分は、ジエチレングリコールを含まなくてもよい。
【0018】
また、前記酸成分は、イソフタル酸を酸成分を基準として1~10モル%でさらに含むことができる。
【0019】
また、前記ジオール成分のうち前記化学式1で表示される化合物は、1~40モル%、前記化学式2で表示される化合物は、0.8~20モル%で含まれ得、より好ましくは、前記ジオール成分のうち前記化学式1で表示される化合物は、20~40モル%、前記化学式2で表示される化合物は、0.8~10モル%、さらに好ましくは、前記化学式1で表示される化合物は、30~40モル%、前記化学式2で表示される化合物は、0.8~6モル%で含まれ得る。
【0020】
また、前記コポリエステルは、ガラス転移温度が60~75℃、より好ましくは、65~72℃であってもよい。
【0021】
また、前記コポリエステルは、固有粘度が0.500~0.800dl/gであってもよい。
【0022】
また、前記第2繊維は、下記の数学式1による繊維水分散性が0.040%以下であってもよい。
【0023】
【0024】
前記未分散繊維個数は、温度25℃である水1Lに水分率25重量%である第2繊維3gを投入した後、600rpmの条件下で10分間撹拌させた後に1分間放置した後、未分散繊維の個数を測定したものである。
【0025】
また、第1繊維は、セルロース繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維及びポリオレフィン系繊維からなる群より選択された1種以上を含むことができる。
【0026】
また、前記第2繊維は、MS300-55に基づいたアセトアルデヒド(AA)発生量が2400ppb以下、より好ましくは、1950ppb以下、さらに好ましくは、1600ppb以下であってもよい。
【0027】
また、本発明は、本発明による湿式不織布を含むフィルター部材やインテリア部材を提供する。
【発明の効果】
【0028】
本発明による湿式不織布は、触感、接着強度及び加工性が非常に優れている。また、湿式不織布に具備された熱接着性繊維が優れた耐熱性を保有して経時変化が最小化される。また、VOCsの放出が顕著に低減して環境にやさしいので、浄水フィルター、ティーバッグなどのフィルター部材、壁紙などのインテリア部材などに広く応用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は本発明の一実施例に含まれる第2繊維の断面模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施例に対して本発明が属する技術分野において通常の知識を有した者が容易に実施できるように詳しく説明する。本発明は、様々な異なる形態で具現でき、ここで説明する実施例によって限定されない。
【0031】
図1を参照して説明すると、本発明による湿式不織布は、第1繊維と第2繊維を含んで具現され、より具体的には、第1繊維と第2繊維が相互に分散した状態で含まれ得る。
【0032】
前記第1繊維と第2繊維は、 繊維長がそれぞれ独立的に1~30mmであるが、これは、第1繊維と第2繊維を水に投入して分散させて湿紙を製造する過程で第1繊維と第2繊維の分散性を向上させてより均一な湿紙を収得するためであり、もし、繊維長が1mm未満である場合、湿式不織布の機械的強度が顕著に低下する恐れがあり、強度低下により工程中に抄紙移行不良の問題があり得る。また、もし、30mmを超過する場合、具現される湿式不織布の均一性、例えば、坪量、厚さ、地合(formation)のうちいずれか一つ以上の均一性が低下する恐れがある。
【0033】
前記第1繊維は、湿式不織布のベース繊維として湿式不織布の形状、強度などを具現させる繊維である。前記第1繊維は、通常的に紙や合成紙を製造するのに用いられる主材繊維である場合、制限なしに用いられ得、一例として、セルロース繊維(一例として、パルプ)、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維及びポリアミド繊維からなる群より選択された1種以上を含むことができる。
【0034】
前記第1繊維は、繊度が0.5~20デニールであってもよいが、もし、第1繊維の繊度が0.5デニール未満である場合、透気度が低下する恐れがあり、20デニールを超過する場合、湿式不織布の均一性が低下する恐れがある。
【0035】
前記第2繊維は、第1繊維と均一に分散した後、第1繊維と第2繊維の間及び/又は第2繊維の間を熱接合させる繊維であり、それ自体としても湿式不織布の形状具現及び機械的強度を担保する繊維として用いられ得る。
【0036】
前記第2繊維は、テレフタル酸を含む酸成分、及びエチレングリコールと下記化学式1で表示される化合物及び化学式2で表示される化合物を含むジオール成分が反応したエステル化化合物が重縮合されたコポリエステルを含む。
【0037】
【0038】
【0039】
まず、前記酸成分は、テレフタル酸を含み、それ以外にテレフタル酸ではない炭素数6~14の芳香族多価カルボン酸や、炭素数2~14の脂肪族多価カルボン酸及び/又はスルホン酸金属塩をさらに含むことができる。
【0040】
前記炭素数6~14の芳香族多価カルボン酸は、ポリエステルの製造のために用いられる酸成分であって、公知のものを制限なしに用いることができるが、好ましくは、ジメチルテレフタレート、イソフタル酸及びジメチルイソフタレートからなる群より選択されたいずれか一つ以上であってもよく、より好ましくは、テレフタル酸との反応安定性、取り扱い容易性及び経済的な側面からイソフタル酸であってもよい。
【0041】
また、炭素数2~14の脂肪族多価カルボン酸は、ポリエステルの製造のために用いられる酸成分であって、公知のものを制限なしに用いることができるが、これに対する例として、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、クエン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸及びヘキサデカン酸からなる群より選択されたいずれか一つ以上であってもよい。
【0042】
また、前記スルホン酸金属塩は、ソジウム3,5-ジカルボメトキシベンゼンスルホネートであってもよい。
【0043】
一方、前記酸成分としてテレフタル酸以外に具備され得る他の成分は、コポリエステルの耐熱性を低下させることができるので、好ましくは、含まない方が良い。特に、イソフタル酸、ジメチルイソフタル酸のような酸成分がさらに含まれる場合、コポリエステルの重縮合過程で発生するVOCsの含量、一例として、アセトアルデヒドの含量が増加し得る一方、コポリエステルの融点は一層低下して熱処理などを通じた後工程を通じて重合過程から発生したアセトアルデヒドを気化させて除去することも難しいので、結果的に、製造された繊維でアセトアルデヒドの含量が高いことがある。したがって、イソフタル酸をさらに含む場合、酸成分を基準として1~10モル%で具備され得、10モル%を超過して具備される場合、アセトアルデヒドの含量が過度に増加する恐れがあり、これによって、具現された熱接着性繊維は、自動車の内装材用途に適合しないことがある。
【0044】
次に、前記ジオール成分は、エチレングリコールと下記化学式1で表示される化合物及び化学式2で表示される化合物を含む。
【0045】
【0046】
【0047】
まず、前記化学式1で表示される化合物は、製造されるコポルリエステルの結晶化度、ガラス転移温度を低くして、優れた熱接着性能を発現するようにすることができる。また、繊維状に製造された後、染色工程で常圧の条件で染色を可能にして染色工程をより容易にし、染着特性に優れて洗濯堅牢度が向上し、繊維集合体の触感を向上させ得る。好ましくは、前記ジオール成分のうち前記化学式1で表示される化合物は、好ましくは、20~40モル%、より好ましくは、30~40モル%で含まれ得る。特に、化学式1で表示される化合物が20モル%以上具備される場合、後述する化学式2で表示される化合物とともに具現したコポリエステルが低温での熱接着特性が一層上昇して向上され得、コポリエステルをチップに製造するとき、乾燥時間が顕著に短縮され得、このようなコポリエステルチップに製造した第2繊維から放出されるVOCsの含量減少に上昇した効果を発現し得るという利点がある。
【0048】
もし、化学式1で表示される化合物がジオール成分を基準として20モル%未満で含まれる場合、紡糸性に優れているが、接着可能温度が高くなるか、熱接着特性が低下し、使用される用途が制限され得るという恐れがある。また、具現される熱接着性繊維から放出されるVOCsの含量が増加する恐れがある。また、もし、化学式1で表示される化合物が40モル%を超過して具備される場合、熱接着性繊維への紡糸性が良くなく商用化が難しいという問題点が発生し得、かえって結晶性が増大して熱接着特性が低下する恐れがある。また、第2繊維を製造するために行われる延伸工程など加温工程で繊維間接合が発生して最終湿式不織布で第2繊維が固まって存在することがあり、これによる強度低下、触感減少などの恐れがある。
【0049】
前記化学式2で表示される化合物は、上述した化学式1で表示される化合物と共に製造されるコポリエステルの熱接着特性をさらに向上させながらも、化学式1で表示される化合物のガラス転移温度が顕著に低下することを防止して、優れた熱的特性を発現するようにする。一例として、25℃以上の貯蔵温度、60℃以上の熱水で行われる延伸工程にもかかわらず経時変化、繊維間接合による固まり現状を最小化させ得る。また、製造された湿式不織布を高温の環境が造成される適用先の物品として活用が可能であり、貯蔵安定性を向上させ得る。一方、熱接着性と関連して化学式2で表示される化合物は、化学式1で表示される化合物との混合使用に伴って、具現されるコポリエステルを用いた熱接着性繊維に適切な収縮特性を発現させ、このような特性発現によって熱接着時に点接着力を一層増加させることによって、より上昇した熱接着特性を発現することができる。
【0050】
好ましくは、前記ジオール成分うち前記化学式2で表示される化合物は、好ましくは、0.8~10モル%、より好ましくは、0.8~6モル%で含まれ得る。
【0051】
もし、化学式2で表示される化合物がジオール成分を基準として0.8モル%未満で含まれる場合、目的とする耐熱性の向上が難しくて貯蔵安定性が良くなく、経時変化が非常に大きくなり得るという恐れがある。また、60℃以上温度の熱水で行われる延伸工程で繊維間接合が発生し得、これによって、第2繊維の分散性が低下した湿式不織布が具現される恐れがあり、第2繊維から放出されるVOCsの含量が増加する恐れがある。
【0052】
また、化学式2で表示される化合物が10モル%を超過して含まれると、上述した化学式1で表示される化合物とともに用いられることを考慮するとき、熱接着性繊維への紡糸性が良くないため、商用化が難しいという問題点が発生することがあり、場合によって、イソフタル酸まで追加で含む場合には、結晶性が十分に低下して接着性の向上が些細であり、追加されるイソフタル酸の含量が増加するとき、かえって結晶性が増大して目的とする温度での優れた熱接着特性が顕著に低下し得るなど発明の目的を達成しない恐れがある。また、繊維状に具現するとき、収縮性が顕著に大きく発現して延伸工程のような糸加工や湿式不織布への製造や加工に困難があり得る。
【0053】
本発明の好ましい一実施例によると、前記化学式1で表示される化合物と化学式2で表示される化合物の含量の総和は、前記ジオール成分のうち30~45モル%で含まれることが好ましく、より好ましくは、33~41モル%で含まれ得る。もし、30モル%未満でこれらが含まれる場合、コポリエステルの結晶性が増加して高い融点が発現したり、軟化点を低い温度で具現することが難しくなったりし、熱接着可能温度が顕著に高くなり、低い温度では優れた熱接着特性が発現しないことがあり、接合強度が低下し得る。また、具現される熱接着性繊維から放出するVOCsの含量が増加する恐れがある。
【0054】
また、もし、化学式2で表示される化合物が45モル%を超過して含まれる場合、重合反応性と紡糸性が顕著に低下する恐れがあり、製造されるコポリエステルの結晶性がむしろ増加して目的とする温度での高い熱接着特性を発現しにくいことがある。また、概ね60℃以上の温度での熱水で延伸工程後に繊維間接合が顕著であり、これによって、第2繊維が一本一本均一に分散しにくいため、優れた品質の湿式不織布を具現しにくいことがある。
【0055】
このとき、前記ジオール成分のうち上述した化学式1で表示される化合物が化学式2で表示される化合物よりさらに大きい含量(モル%)で含まれ得る。もし、化学式1で表示される化合物が化学式2で表示される化合物より少ないか同じ量で含まれる場合、目的とする熱接着特性を発現しにくく、高温で接着されなければならないので、展開される製品の用途に制限があり得る。また、過度な収縮特性の発現によって展開される製品の加工や活用が困難になる恐れがある。
【0056】
一方、前記ジオール成分は、上述した化学式1で表示される化合物、化学式2で表示される化合物及びエチレングリコール以外に他の種類のジオール成分をさらに含むことができる。
【0057】
前記他の種類のジオール成分は、ポリエステルの製造に用いられる公知のジオール成分であり得るので、本発明は、これに特に限定されないが、これに対する非制限的な例として、炭素数2~14の脂肪族ジオール成分であってもよく、具体的に、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ヘプタメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ノナメチレングリコール、デカメチレングリコール、ウンデカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール及びトリデカメチレングリコールで構成された群から選択されるいずれか一つ以上であってもよい。
【0058】
ただし、目的とするレベルの熱接着特性と同時に耐熱性を兼ね備えるために、前記他の種類のジオール成分をさらに含まないことが好ましく、特に、ジエチレングリコールは、前記ジオール成分に含まれなくてもよい。もし、ジエチレングリコールがジオール成分に含まれる場合、ガラス転移温度の急激な低下を招いて、化学式2で表示される化合物を具備する場合にも、目的とするレベルの耐熱性を達成しないことがある。また、使用中に放出するVOCsの含量が大きく増加する恐れがある。一方、前記ジオール成分にジエチレングリコールが含まれないという意味は、コポリエステルの製造のための単量体として意図的にジエチレングリコールを投入しないことを意味し、酸成分及びジオール成分のエステル化反応、重/縮合反応で副産物として発生するジエチレングリコールまで含まないことを意味しない。ジエチレングリコールは、副産物として自然発生し得るので、本発明の一実施例によれば、コポリエステルを含むチップには、コポリエステル以外に副産物として発生したジエチレングリコールが含まれ得、含まれたジエチレングリコールの含量は、コポリエステルチップ又は第2繊維内のコポリエステルの重量を基準として3重量%未満であってもよい。一方、副産物として発生するジエチレングリコールの含量が適正レベルを超過する場合、繊維へ紡糸時にパック圧を増加させ、頻繁な糸切れを誘発して紡糸性が顕著に低下し得、放出されるVOCsの含量、特に、アセトアルデヒドの放出量が顕著に増加する恐れがある。
【0059】
上述した酸成分及びジオール成分は、ポリエステル合成分野における公知の合成条件を用いてエステル化反応及び重縮合を経てコポルリエステルとして製造され得る。このとき、酸成分とジオール成分は、1:1.0~5.0、好ましくは、1:1.0~2.0のモル比で反応するように投入され得るが、これに制限されるものではない。前記モル比が、酸成分を基準としてジオール成分が1倍未満である場合、重合時に酸度が過度に高くなって副反応が促進され得、前記モル比が酸成分を基準としてジオール成分が5倍を超過する場合、重合度が高くならないことがある。
【0060】
一方、前記酸成分及びジオール成分は、上のような適正なモル比で一度に混合された後、エステル化反応及び重縮合を経てコポルリエステルに製造されるか、酸成分とジオール成分のうちエチレングリコールと化学式1で表示される化合物間のエステル化反応中に化学式2で表示される化合物を投入してエステル化反応及び重縮合を経てコポリエステルに製造され得、本発明は、これに対して特に限定しない。
【0061】
前記エステル化反応で触媒をさらに含むことができる。前記触媒は、通常、ポリエステルの製造時に用いられる触媒を用いることができ、これに対する非制限的な例として、金属アセテート触媒下で製造され得る。
【0062】
また、前記エステル化反応は、好ましくは、200~270℃の温度及び1100~1350トル(Torr)の圧力下で行われ得る。前記条件を満たさない場合、エステル化反応時間が長くなったり、反応性の低下によって重縮合反応に適合したエステル化化合物を形成できなかったりする問題が発生できる。
【0063】
また、前記重縮合反応は、250~300℃の温度及び0.3~1.0トル(Torr)の圧力下で行われ得、もし、前記条件を満たさない場合、反応時間の遅延、重合度の低下、熱分解の誘発などの問題点があり得る。また、前記重縮合反応は、反応条件によって反応時間が変動され得るが、一例として、150~240分間行われ得る。
【0064】
このとき、重縮合反応時に触媒をさらに含むことができる。前記触媒は、ポリエステル樹脂の製造に用いられる公知の触媒である場合、制限なしに用いることができる。ただし、好ましくは、チタン系重合触媒であってもよく、より具体的に、下記化学式3で表示されるチタン系重合触媒であってもよい。
【0065】
【0066】
前記化学式3で表示されるチタン系重合触媒は、水分子の存在下でも安定する。このような理由で、水が多量に副生するエステル化反応以前に添加しても失活しないので、従来より短縮された時間内にエステル化反応及び重縮合反応が進行され得、これを通じて黄変による着色を抑制することができる。前記触媒は、収得されるコポリエステルの全体重量においてチタニウム原子換算で5~40ppmになるように含まれ得、これを通じてコポリエステルの熱安定性や色調がさらに良好になって好ましい。もし、チタニウム原子換算で5ppm未満で具備される場合、エステル化反応を適切に促進させにくいことがあり、もし、40ppmを超過して具備される場合、反応性は促進されるが、着色が発生する問題点があり得る。
【0067】
一方、重縮合反応時に熱安定剤をさらに含むことができる。前記熱安定剤は、高温で熱分解を通じた色相の変色を防止するためのものであって、リン系化合物を用いることができる。前記リン系化合物は、一例として、リン酸、モノメチルリン酸、トリメチルリン酸、トリエチルリン酸などのリン酸類及びその誘導体を使用した方が良く、これらのうちでも、特にトリメチルリン酸又はトリエチルリン酸が効果に優れるので、より好ましい。前記リン系化合物の使用量は、最終的に収得されるコポリエステルの全体重量に対してリン原子換算で10~30ppmを用いることが好ましい。もし、リン系熱安定剤が10ppm未満で用いられる場合、高温熱分解を防止しにくいので、コポリエステルが変色することがあり、もし、30ppmを超過する場合、製造費用の観点から不利になり得、重縮合反応時に熱安定剤による触媒活性の抑制によって反応遅延現象が発生する問題点があり得る。
【0068】
また、コポリエステルは、補色剤をさらに含むことができる。前記補色剤は、繊維へと紡糸された後に進行される染色工程で染着される染料の色相をより強く、良くするための色調調整のためのものであって、繊維分野において公知のものを添加することができ、これに対する非制限的な例として、原着用染料、顔料、建染染料、分散染料、有機顔料などがある。ただし、好ましくは、ブルー及びレッド染料が混合されたものを用いることができる。これは、補色剤として一般的に使用されるコバルト化合物の場合、人体への有害性が大きくて好ましくないためであるのに対し、ブルー及びレッド染料が混合された補色剤は、人体に無害であるので好ましい。また、ブルー及びレッド染料を混合して使用される場合、色調を微細に制御できるという利点がある。前記ブルー染料は、一例として、solvent blue 104、solvent blue 122、solvent blue 45などがあり得、前記レッド染料は、一例として、solvent red 111、solvent red 179、solvent red 195などがあり得る。また、前記ブルー染料とレッド染料は、1:1.0~3.0の重量比で混合され得、これを通じて目的とする微細な色調制御に顕著な効果を発現するのに有利である
【0069】
前記補色剤は、コポリエステルの全体重量を基準として1~10ppmで具備され得るが、もし、1ppm未満で具備される場合、目的とするレベルの補色特性を達成しにくいことがあり、10ppmを超過する場合、L値が減少して透明性が低下し、暗い色を帯びる問題点があり得る。
【0070】
上述した方法を通じて製造されたコポリエステルは、固有粘度が0.5~0.8dl/gであってもよい。もし、固有粘度が0.5dl/g未満である場合、繊維へと紡糸された後に断面形成が容易ではなく、固有粘度が0.8dl/gを超過する場合、パック(Pack)圧力が高いため紡糸性が低下する恐れがある。
【0071】
また、前記コポリエステルは、ガラス転移温度が66.8~75℃であってもよく、これを通じて本発明の目的を達成するのにより有利であり得る。もし、ガラス転移温度が66.8℃未満である場合、第2繊維やこれを含んで具現された物品が夏期のような、例えば、40℃を超える温度条件でも経時変化が大きくなることがある。また、熱接着性繊維を製造するとき、コポリエステルチップ間の結合の発生が増加し、これによって紡糸不良を引き起こす恐れもある。ひいては、繊維などで具現された後、収縮特性が過度に発現して、かえって接合特性が低下する恐れがある。また、チップ形成後に乾燥工程、繊維への紡糸後に後加工(一例として、延伸工程)工程などに所要される熱処理の限界によって工程所要時間の長期化又は繊維間接合が発生する恐れがあり、これによって不織布内の分散均一性が低下する恐れがある。
【0072】
また、もしガラス転移温度が75℃を超過する場合、熱接合特性が顕著に低下する恐れがあり、接合工程の実行温度が高温に制限される恐れがある。
【0073】
上述した第2繊維は、コポリエステル単独で紡糸されて製造される単独繊維であるか又は
図1に示したように、第2繊維10は、芯部11及び前記芯部11を取り囲む鞘部12を含む複合繊維であってもよい。上述したコポリエステルは、前記複合繊維において鞘部12に含まれ得る。
【0074】
前記芯部11は、複合繊維の支持成分として機能し、一例として、ポリエステル系成分を含むことができる。前記ポリエステル系成分は、上述した鞘部12に具備されるコポリエステルの融点又は軟化点より高い温度を融点又は軟化点として有するポリエステル系成分である場合、制限がなく、一例として、ポリエチレンテレフタレートであってもよい。
【0075】
前記第2繊維10は、一例として、8:2~2:8の重量比で芯部11と鞘部12を複合紡糸したものであってもよいが、これに制限されるものではなく、目的に応じて割合を適切に調節して紡糸することができる。前記第2繊維10に対する紡糸条件、紡糸装置及び紡糸後の複合繊維に対する冷却、延伸などの工程は、当該技術分野における公知の条件、装置及び工程を利用したり、これを適切に変形したりして行われ得るので、本発明は、これに対して特に限定しない。また、一例として、前記第2繊維は、270~290℃の紡糸温度で紡糸されたものであってもよく、紡糸後、60℃の熱水で2.5~4.0倍延伸したものであってもよい。
【0076】
一方、本発明の一実施例によると、前記第2繊維は、熱的特性に優れるので、熱水での延伸などの後加工でも繊維間接合発生が最小化又は防止され得、これによって、下記の数学式1による繊維水分散性が0.040%以下であってもよい。
【0077】
【0078】
前記未分散繊維個数は、温度25℃である水1Lに水分率25重量%である第2繊維3gを投入した後、600rpmの条件下で10分間撹拌させた後に1分間放置した後、未分散繊維の個数を測定したものである。
【0079】
もし、数学式1による水分散性が0.040%を超過する場合、このような第2繊維で製造された湿式不織布は、機械的強度の均一性が低下し、25℃以上の温度の水に分散させるとき、固まる第2繊維の個数が著しく、これを通じて具現された抄き紙は、触感が低下し得、抄き紙内の欠点増加により製品不良の恐れがある。一方、抄き紙は、インテリア用途などに用いられ得、肉眼で観察するとき、外観の美感、触感などが非常に重要であるが、水分散性が小数点単位で変化する程度でもその欠点は顕著に増加し得るので、水分散性の小数点2桁以下への管理は製品の品質において非常に重要である。
【0080】
また、前記第2繊維は、繊度が1~20デニールであってもよいが、もし、第2繊維の繊度が1デニール未満である場合、紡糸可動性が良くないため、抄き紙内の欠点を発生させる恐れがあり、もし、繊度が20デニールを超過する場合、紡糸時の固化不良により可動性が良くないため、これも抄き紙内の欠点発生の原因となり得る。
【0081】
また、前記湿式不織布は、上述した第1繊維と第2繊維を、一例として、1:0.05~1.2重量比で含むことができるが、これに制限されるものではなく、目的によって重量比を適切に調節することができる。
【0082】
また、前記湿式不織布の製造工程に対して説明すると(1)所定の長さを有するように準備された第1繊維と第2繊維を混合して湿紙を製造する段階、(2)前記製造された湿紙を乾燥させて抄き紙を製造する段階、及び(3)前記製造された抄き紙に対して熱及び圧力のうちいずれか一つ以上を加えてカレンダー加工する段階を含んで湿式不織布が製造され得る。
【0083】
前記(1)段階は、第1繊維と第2繊維を分散媒に均一分散させて湿紙を製造する段階であって、前記分散媒は、水など公知の分散媒であってもよい。前記分散媒に混合された繊維は、均一混合のためにブレンディング過程をさらに経ることができ、分散性の向上などのためにpH調整物質、形成補助剤、界面活性剤、消泡剤などのような多様なその他物質をさらに含むことができる。
【0084】
前記湿紙の製造は、抄紙機を用いて製造し得、長網抄紙機、円網抄紙機など抄紙機の種類に限定されず目的に応じて変更して用いることができる。
【0085】
次に、(2)段階として、前記製造された湿紙を乾燥させて抄き紙を製造する段階を行う。
【0086】
前記製造された湿紙に対する乾燥過程以前に分散媒の排水過程をさらに経ることができる。また、前記排水過程以後、真空又はその他圧力により脱水過程をさらに経ることができる。排水、脱水を経た湿紙に対して乾燥機、オーブン又は紙を乾燥するために当業界において公知の類似の装置を用いて残余分散媒を蒸発させることによって抄き紙を製造することができる。
【0087】
次に、(3)段階として、前記製造された抄き紙に対して熱及び圧力のうちいずれか一つ以上を加えてカレンダー加工する段階を行う。
【0088】
前記カレンダー加工する段階以前に予備的に圧縮する段階をさらに経ることができ、前記熱及び/又は圧力は、ローラーを加熱させて圧力を加えることによって同時に行われてもよく、それぞれ他の工程として行われてもよい。ただし、熱処理は、金属ロール又はその他高温の表面に紙が触れるようにする方法によるなど任意の加熱方法を用いてもよく、赤外線又はオーブンの中で高温空気加熱のような通常的な方法を用いても達成され得る。前記加えられる熱は、第1繊維と第2繊維の種類と熱的特性を考慮して決めることができ、本発明は、これに対して特に限定しない。
【0089】
一方、上のような製造方法を通じて製造される湿式不織布に含有された第2繊維は、MS300-55に基づいたアセトアルデヒド(AA)発生量が2400ppb以下、より好ましくは、1950ppb以下、さらに好ましくは、1600ppb以下であってもよく、これを通じて壁紙などのインテリア部材やティーバッグ/浄水フィルターのようなフィルター部材に用いられても有害成分の発生量が顕著に少ないので、人体に接するか人が生活する空間内に具備される部材として広く用いられ得るという利点がある。
【0090】
また、前記湿式不織布の厚さ及び坪量は、当業界の通常的な湿式不織布の厚さ、坪量であってもよく、本発明は、これに対して特に限定しない。
【0091】
上述したフィルター部材やインテリア部材は、本発明の一実施例による湿式不織布を少なくとも1層以上具備することができる。また、機械的強度の補完のために支持体をさらに含むことができ、前記支持体は、公知のフィルター部材やインテリア部材に具備されるものであってもよい。また、前記フィルター部材やインテリア部材は、前記支持体以外に公知のフィルター部材やインテリア部材に具備されるその他構成をさらに含むことができ、本発明は、これに対して特に限定しない。
<発明の実施のための形態>
【0092】
下記の実施例を通じて本発明をより具体的に説明するが、下記実施例が本発明の範囲を制限するものではなく、これは、本発明の理解を助けるためのものと解釈されなければならない。
【0093】
<実施例1>
【0094】
ジオール成分として下記化学式1で表示される化合物38モル%と下記化学式2で表示される化合物3モル%、及び残余ジオール成分としてエチレングリコール59モル%を投入し、酸成分としてテレフタル酸100モル%を投入して、前記酸成分とジオール成分を1:1.2の割合で250℃で1140トル(torr)の圧力下でエステル化反応させてエステル反応物を得て、その反応率は、97.5%であった。形成されたエステル反応物を重縮合反応器に移送し、重縮合触媒として下記化学式3で表示される化合物15ppm(Ti元素基準)、熱安定剤としてトリエチルリン酸25ppm(P元素基準)を投入して、最終圧力0.5torrになるように徐々に減圧しつつ、285℃まで昇温して重縮合反応を行ってコポリエステルを製造し、その後、前記コポリエステルを通常の方法で横、縦、高さがそれぞれ2mm×4mm×3mmであるポリエステルチップに製造した。
【0095】
その後、前記コポリエステルを鞘部とし、固有粘度が0.65dl/gであるポリエチレンレーテフタレート(PET)を芯部とする芯鞘型複合繊維を製造するために、前記コポリエステルチップをホッパーにそれぞれ投入後に溶融させて、芯鞘型紡糸口金にそれぞれ投入した後、275℃下で1000mpmの紡糸速度で芯部と鞘部が5:5の重量比になるように複合紡糸し、60℃の熱水で3.0倍延伸して、繊維長が6mmであり、繊度が4.0deである下記表1のような芯鞘型である熱接着性の第2繊維を製造した。
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
その後、第2繊維とポリエチレンテレフタレート(PET)である第1繊維(繊維長6mm、繊度4.0de)を5:5で25℃の水に分散させた後、水を排水した後に100℃で乾燥し、再びそれぞれ120℃、140℃及び160℃の温度条件でカレンダー加工して、坪量が80g/m2である全3種類の湿式不織布を製造した。
【0100】
<実施例2~14>
【0101】
実施例1と同一に実施して製造するが、下記表1、表2又は表3のようにコポリエステルを製造するための単量体の組成比を変更させ、下記表1、表2又は表3のような芯鞘型複合繊維である第2繊維を具備した湿式不織布を製造した。
【0102】
<比較例1~4>
【0103】
実施例1と同一に実施して製造するが、下記表3のようにコポリエステルを製造するための単量体の組成比を変更させ、下記表3のようなポリエステルチップ及びこれを用いた芯鞘型複合繊維である第2繊維を具備した湿式不織布を製造した。
【0104】
<実験例1>
【0105】
実施例及び比較例によって具現された湿式不織布、及び湿式不織布の製造中に中間物であるコポリエステルチップや、芯鞘型複合繊維である第2繊維について下記の物性を評価し、その結果を下記表1~表3に示した。
【0106】
1.固有粘度
【0107】
コポリエステルチップに対してオルソクロロフェノール(Ortho-ChloroPhenol)を溶媒として110℃、2.0g/25mlの濃度で30分間溶融した後、25℃で30分間恒温して、キャノン(CANON)粘度計が連結された自動粘度測定装置から分析した。
【0108】
2.ガラス転移温度、融点
【0109】
示差熱分析装置を用いてガラス転移温度及び融点を測定し、分析条件は、昇温速度を20℃/minとした。
【0110】
3.コポリエステルチップの乾燥時間
【0111】
重縮合されたコポリエステル樹脂をチップ(chip)化した後、真空乾燥器で55℃、4時間間隔で水分率を測定し、測定の結果、水分率100ppm以下と測定されたときの時間を乾燥時間として示した。
【0112】
4.単繊維貯蔵安定性
【0113】
製造された芯鞘型複合繊維500gに対して、温度40℃、相対湿度45%のチャンバーで圧力2kgf/cm2を加えて3日間放置して、繊維間の融着状態を専門家10人が肉眼で観察し、その結果、融着が発生しない場合を10点、全部融着が発生した場合を0点として基準を定め0~10点で評価した後、平均値を計算した。その結果、平均値が9.0以上である場合、非常に優秀(◎)、7.0以上9.0未満の場合、優秀(○)、5.0以上7.0未満は、普通(△)、5.0未満は、悪い(x)で示した。
【0114】
5.紡糸作業性
【0115】
紡糸作業性は、実施例及び比較例別に同一含量で紡糸された第2繊維である芯鞘型複合繊維に対して紡糸加工中にドリップ(口金を通過する繊維ストランドが一部融着したり、糸切れ後にストランドが不規則に融着したりして形成された塊りを意味する)発生数値をドリップ感知器を用いてカウントし、実施例1でのドリップ発生数値を100として基準を定め残りの実施例及び比較例で発生したドリップ個数を相対的な百分率で表示した。
【0116】
6.染着率の評価
【0117】
芯鞘型複合繊維重量を基準として2重量%のブルー(blue)染料を含む染液に対して、浴比1:50で90℃で60分間染着工程を行った後、日本のクラボウ(KURABO)社の色彩測定システムを用いて染色された複合繊維に対する可視領域(360~740nm、10nm間隔)の分光反射率を測定した後、CIE1976規格に基づく染着量の指標であるTotal K/S値を算出して、染料の色収得率を評価した。
【0118】
7.接着強度
【0119】
3種の繊維集合体それぞれを横、縦及び厚さがそれぞれ100mm×20mm×10mmである試験片で具現して、KS M ISO 36方法に基づいてUTM(universal testing machine)を用いて接着強度を測定した。
【0120】
一方、熱処理時に過度な収縮によって形態が変形した場合、接着強度を評価せず、「形態変形」と評価した。
【0121】
8.ソフト触感
【0122】
3種の繊維集合体のうち140℃の温度条件で熱処理されて製造された繊維集合体に対して10人の同業界の専門家からなるグループによる官能検査を行い、評価の結果、8人以上がソフトであると判断する場合、優秀(◎)、6~7人は良好(○)、5~4人は普通(△)、4人未満は不良(x)に区分した。
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
表1~表3を通じて確認できるように、比較例は、乾燥時間が顕著に延長されるか(比較例1~3)、紡糸作業性が顕著に良くないか(比較例2、比較例3)、単繊維貯蔵安定性が非常に悪くなるか(比較例2、比較例3)、温度別の接着強度評価で形態が変形(比較例4)したことが確認できて、すべての物性を同時に満足させることができないことが確認できるが、実施例は、すべての物性を優れたレベルで発現していることが確認できる。
【0127】
一方、実施例においても、化学式1で表示される化合物より化学式2で表示される化合物の含量がさらに多く含まれた実施例13は、他の実施例に比べて温度別の接着強度評価で形態が変形して、目的とする物性を達成するのに適していないことが確認できる。
【0128】
<実施例15~24>
【0129】
実施例1と同一に実施して製造するが、第2繊維の組成を下記表4のように変更して下記表4のような第2繊維を具備した湿式不織布を製造した。
【0130】
<実験例2>
【0131】
実施例15~24で製造された湿式不織布内の第2繊維に対する下記物性を評価し、その結果を下記表4に示した。
【0132】
1.アセトアルデヒド(AA)の含量
【0133】
第2繊維に対してMS 300-55 Methodによって測定した。
【0134】
2.水分散性の評価
【0135】
温度25℃である水1Lに水分率25重量%である第2繊維3gを投入した後、600rpmの条件下で10分間撹拌させた後、1分間放置した後に未分散繊維の個数を測定し、下記数学式1によって計算した。
【0136】
【0137】
【0138】
表4を通じて確認できるように、本発明の実施例に具備された第2繊維は、アセトアルデヒドの放出量が2400ppb以下で、インテリア用などに用いられる湿式不織布用途に非常に適合することが分かる。
【0139】
本発明の一実施例に対して説明したが、本発明の思想は、本明細書に提示される実施例によって制限されず、本発明の思想を理解する当業者は、同一の思想の範囲内で、構成要素の付加、変更、削除、追加などにより他の実施例を容易に提案することができるが、それも本発明の思想範囲内に含まれる。