(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】アバットメント用のコンピュータモデルの作成方法およびアバットメントの製作方法
(51)【国際特許分類】
A61C 8/00 20060101AFI20240104BHJP
【FI】
A61C8/00 Z
(21)【出願番号】P 2022539452
(86)(22)【出願日】2020-09-02
(86)【国際出願番号】 AT2020060328
(87)【国際公開番号】W WO2021042149
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-04-22
(32)【優先日】2019-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】522082089
【氏名又は名称】エー・アー・ペー プロドゥクツィオーンス- ウント パテントフェアヴェルトゥングス- ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】EAP Produktions- und Patentverwertungs- GmbH
【住所又は居所原語表記】Lorettostrasse 26, 6060 Hall in Tirol, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マリオ ケアン
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-507942(JP,A)
【文献】特開2010-158301(JP,A)
【文献】特表2013-537816(JP,A)
【文献】特表2015-515901(JP,A)
【文献】特開2005-168825(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0213452(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者用の、患者に応じたデンタルインプラント(12)用アバットメント(2)の3次元コンピュータモデル(1)をコンピュータ(3)によって作成する方法であって、
前記アバットメント(2)は、少なくとも、基部(4)と、前記アバットメント(2)をピン状のデンタルインプラント(12)に接続するための接続構造体(5)と、補綴修復物を支持するための前記アバットメント(2)のプラットフォームの、冠状
のプラットフォーム表面(6)と、前記アバットメント(2)をピン状のデンタルインプラント(12)に固定するためのスクリューチャネル(7)とを有し、
前記方法は、少なくとも
・少なくとも、前記アバットメント(2)が埋入されるべき顎の領域における前記患者の顎の、前記コンピュータ(3)によって読み取り可能な3次元表現(10)を
、前記コンピュータ(3)が取得するステップと、
・プレパレーションマージンの定義を、前記アバットメント(2)が埋入されるべき、前記患者の個々の歯肉経過ラインに関連して、前記コンピュータ(3)
が取得し、またはアルゴリズムによって選択するステップと、
・
前記プレパレーションマージンの上方の前記アバットメント(2)の3次元形状を
、前記コンピュータ(3)が取得し、またはアルゴリズムによって定義するステップと、
・
前記アバットメント(2)のエマージェンスプロファイル(E)を
、前記コンピュータ(3)が取得し、またはアルゴリズムによって定義するステップと、
・前記コンピュータ(3)によって前記3次元コンピュータモデル(1)を提供するステップと、
を含み、
前記プラットフォームの前記3次元形状のための前記プレパレーションマージンの下方に、前記冠状
のプラットフォーム表面(6)のプレート状の形成を設け
、定義されたエマージェンスプロファイル(E)に基づいて
、電子メモリ(8)内に格納されてい
る設定された範囲内で選択され
た、前記アバットメント(2)の前記プラットフォームの材料の厚さ(d
1
)を、前記コンピュータ(3)が取得する
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
患者用の、患者に応じたデンタルインプラント(12)用アバットメント(2)の3次元コンピュータモデル(1)をコンピュータ(3)によって作成する方法であって、
3次元のスタートコンピュータモデル(9)はアバットメントを表しており、前記アバットメントは、基部(4)と、前記アバットメント(2)をピン状のデンタルインプラント(12)に接続するための接続構造体(5)と、補綴修復物を支持するための前記アバットメント(2)のプラットフォームの、冠状
のプラットフォーム表面(6)と、前記アバットメント(2)をピン状のデンタルインプラント(12)に固定するためのスクリューチャネル(7)とを有し、
前記方法は、少なくとも、
・前記患者に応じたアバットメント(2)の3次元のスタートコンピュータモデル(9)を
、前記コンピュータ(3)が取得するステップを有しており、前記3次元のスタートコンピュータモデル(9)は、前記アバットメント(2)の前記スクリューチャネル(7)と前記アバットメント(2)
のエマージェンスプロファイル(E)との間で放射状に延在する領域が材料で充填されているように表示されている形態を有しており、
・前記コンピュータ(3)によって変換を実行するステップを有しており、これによって前記3次元のスタートコンピュータモデル(9)から3次元コンピュータモデル(1)を取得し、前記3次元コンピュータモデルでは、前記プラットフォーム
の3次元形状のため
のプレパレーションマージンの下方に、前記冠状
のプラットフォーム表面(6)のプレート状の形成が設けられており、前記3次元コンピュータモデルは、定義されたエマージェンスプロファイル(E)に基づ
き、
かつ、電子メモリ(8)内に格納されている設定された範囲内
の、前記アバットメント(2)の前記プラットフォームの材料の厚さ(d
1)を有
する、
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
前記コンピュータ(3)
が、さらに、
電子メモリ(8)内に格納されている設定された範囲内で選択された、前記スクリューチャネル(7)の壁部の材料の厚さ(d
3)
を取得する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記コンピュータ(3)
が、
電子メモリ(8)内に格納されている設定された範囲内で選択された、前記アバットメント(2)の前記基部(4)の材料の厚さ(d
2)
を取得する、請求項1から3までの
いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記コンピュータ(3)が、電子メモリ(8)内に格納されている設定された範囲内で選択された、
前記冠状
のプラットフォーム表面(6)と前記アバットメント(2)の前記基部(4)との間の移行に対する
第1の移行半径(R
1)、および/または
前記アバットメント(2)の前記基部(4)と前記スクリューチャネル(7)の壁部との間の移行に対する
第2の移行半径(R
2)
を
取得する、
請求項1から4までの
いずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記
プラットフォームの材料の厚さ(
d
1
)の可能な選択に対す
る範囲
が、前記アバットメント(2)に使用される材料に関連
する、かつ/または前記プレパレーションマージンの上方の前記アバットメント(2)の定義された3次元形状に関
連する、請求項1から5までの
いずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記スクリューチャネル(7)の壁部の材料の厚さ(d
3
)の可能な選択に対する範囲が、前記アバットメント(2)に使用される材料に関連する、かつ/または前記プレパレーションマージンの上方の前記アバットメント(2)の定義された3次元形状に関連する、請求項3記載の方法。
【請求項8】
前記アバットメント(2)の前記基部(4)の材料の厚さ(d
2
)の可能な選択に対する範囲が、前記アバットメント(2)に使用される材料に関連する、かつ/または前記プレパレーションマージンの上方の前記アバットメント(2)の定義された3次元形状に関連する、請求項4記載の方法。
【請求項9】
前記第1の移行半径(R
1
)および/または前記第2の移行半径(R
2
)に対する範囲が、前記アバットメント(2)に使用される材料に関連する、かつ/または前記プレパレーションマージンの上方の前記アバットメント(2)の定義された3次元形状に関連する、請求項5記載の方法。
【請求項10】
請求項1から6までの
いずれか1項記載の方法に従って作成された3次元コンピュータモデル(1)を使用して
、患者に応じたデンタルインプラント(12)用アバットメント(2)を製作する方法。
【請求項11】
前記アバットメント(2)が、積層造形方法によって製作される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
プログラムがコンピュータ(3)によって実行されると、前記コンピュータ(3)に、請求項1から6までの
いずれか1項記載の方法を実施させる命令を含んでいるコンピュータプログラム製品。
【請求項13】
コンピュータ(3)によって実行されると、前記コンピュータ(3)に、請求項1から6までの
いずれか1項記載の方法を実施させる命令を含んでいるコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項14】
請求項
12記載のコンピュータプログラム製品(8)が格納されているコンピュータ可読データキャリア。
【請求項15】
請求項
12記載のコンピュータプログラム製品を伝送するデータキャリア信号。
【請求項16】
請求項1から
11までの
いずれか1項記載の方法を実施するかつ/または請求項
12記載のコンピュータプログラム製品を実行するように構成されているコンピュータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1および/または請求項2の上位概念の特徴を有する方法と、アバットメントの製作方法と、コンピュータプログラム製品と、コンピュータ可読記憶媒体と、コンピュータ可読データキャリアと、かかるコンピュータプログラム製品を伝送するデータキャリア信号と、これらの方法のうちの1つの方法を実施するためかつ/またはかかるコンピュータプログラム製品を実行するように構成されているコンピュータとに関する。
【0002】
歯科医術では、アバットメント(ドイツ語では「Aufsatz」とも称されることがある)は、ピン状のデンタルインプラントと補綴修復物(たとえば単歯修復物、ブリッジ修復物、義歯など)との間の接続要素である。補綴修復物との接続は、直接的にまたはメソ構造体を介して行われてよい。
【0003】
欧州特許第2825124号明細書にアバットメントが開示されている。この文献に示されているアバットメントは、冠(クラウン)状に見えるプラットフォーム表面のプレート状の形成を備えるプラットフォームを有しており、これは、細胞の増殖に有利であり、かつ冠状に見えるプラットフォーム表面上のメソ構造体または補綴修復物の支持を可能にする。アバットメントの後処理が可能なため、特定の患者のためのアバットメントのカスタマイズが可能である。
【0004】
エマージェンスプロファイルとは、歯科技術によるインプラント修復において、デンタルインプラントから歯肉マージンまでの冠状に延在する領域における、アバットメントが埋入されるべき歯肉の3次元的な経過ラインである。
【0005】
患者の顎の修復部位の具体的な状況に適合させるために歯科技工所において手間をかけて手作業で後処理される必要がある、事前に製作される標準的なアバットメントの他に、患者に応じたアバットメントを直接的に製作することが既に知られている。これは、製作される、患者に応じたアバットメントの、コンピュータによって読み取り可能な3次元コンピュータモデルを用いて行われる。3次元コンピュータモデルは、デジタル化される、患者の顎のアナログの顎印象を基に作成される、または直接的にデジタル形式で(たとえば口腔内スキャナまたは技工所のスキャナを用いて)提供される。
【0006】
オペレータ(たとえば歯科技工士または歯科医師)またはアルゴリズムによって、アバットメントが埋入されるべき箇所において、患者の個々の歯肉経過ラインが定義される。
【0007】
さらに、オペレータまたはアルゴリズムによって、個々の歯肉経過ラインによって設定されているプレパレーションマージンの上方のアバットメントの3次元形状が定義されるべきである。アバットメントの3次元形状の定義には、
・アバットメントをピン状のデンタルインプラントに固定するための、アバットメント内に延在しているスクリューチャネルの、通常は、ピン状のデンタルインプラントの配向に対して定義される位置の定義
・アバットメントの冠状に見えるプラットフォーム表面の幅の定義
・アバットメントの高さの定義
・スクリューチャネルを有している、アバットメントの中心隆起部の幅の定義
が含まれ得る。
【0008】
さらに、アバットメントのエマージェンスプロファイルは、コンピュータのオペレータまたはアルゴリズムによって定義される。
【0009】
エマージェンスプロファイル、すなわちピン状のデンタルインプラントまでのプレパレーションマージンの下方のアバットメントの外形形状は、これまで標準形状によって設定され、エマージェンスプロファイルとスクリューチャネルとの間の領域は充填体として定義されていたため、ここではコンピュータのオペレータには操作の余地がなかった。結果として、実際には、オペレータまたはアルゴリズムによって選択または定義され得る領域を拡張するために、それ自体が過度に深く延在するプレパレーションマージンが選択されることが多かった。これには、アバットメントと補綴修復物との間のいわゆる接着継ぎ目が、デンタルインプラント、ひいては患者の顎の骨の方向にずれ、歯肉および顎の骨に破壊的な結果をもたらすという問題が伴う。
【0010】
本発明の課題は、患者用の、患者に応じたデンタルインプラント用アバットメントの3次元コンピュータモデルをコンピュータによって作成する方法、およびかかるデンタルインプラント用アバットメントを製作する方法を提供することであって、ここではコンピュータモデルもしくはコンピュータモデルに従って製作されたアバットメントは、患者の歯肉および顎の骨とより良好に適合する。
【0011】
上述の課題は、請求項1および/または請求項2の特徴を有する方法と、請求項7の特徴を有する方法とによって解決される。
【0012】
さらに、本発明は、この方法を実施するための命令を含んでいるコンピュータプログラム製品と、かかる命令を含んでいるコンピュータ可読記憶媒体と、かかる命令を含んでいるコンピュータ可読データキャリアと、かかるコンピュータプログラム製品を伝送するデータキャリア信号と、本発明による方法のうちの1つの方法を実施する、かつ/または本発明によるコンピュータプログラム製品を実行するコンピュータとを提供する。
【0013】
上述の課題は、請求項8の特徴を有するコンピュータプログラム製品と、請求項9の特徴を有するコンピュータ可読記憶媒体と、請求項10の特徴を有するコンピュータ可読データキャリアと、請求項11の特徴を有するデータキャリア信号と、請求項12の特徴を有するコンピュータとによって解決される。
【0014】
本発明は、少なくとも、アバットメントが埋入されるべき顎の領域における、患者の顎の既存の3次元表現から始まるので、本発明による方法のステップは患者の体外で実施される。
【0015】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項において定義されている。
【0016】
本発明の第1の変形例によれば、欧州特許第2825124号明細書からそれ自体知られているように、冠状に見えるプラットフォーム表面のプレート状の形成が、プラットフォームの3次元形状のためのプレパレーションマージンの下方に設けられている。プレート状の形成はアバットメントと補綴修復物との間の、有利にはデンタルインプラントから離れて配置されている接着継ぎ目を有している。さらに、コンピュータのオペレータによって、定義されたエマージェンスプロファイルに基づいて、すなわちプレパレーションマージンの下方で、アバットメントのプラットフォームの材料の厚さが選択されることが設定されているので、コンピュータのオペレータが、自身の設計の余地を拡張するために、それ自体が過度に深く延在するプレパレーションマージンを選択する理由がなくなる。なぜなら、本発明によって、オペレータは、最初から、プレパレーションマージンの下方のアバットメントの3次元形状を設計することができるからである。ここでは、コンピュータによって提供された3次元コンピュータモデルに従って製作されたアバットメントにおいて、アバットメントの機能不全につながり得る不利な設計を回避するために、プレパレーションマージンの下方のアバットメントの3次元形状が、オペレータによって、電子メモリ内に格納されている、設定された範囲内でのみ選択可能であることが本発明において設定されている。
【0017】
それ自体では、冠状に見えるプラットフォーム表面のプレート状の形成のみで十分であろう。しかし、好ましくは、冠状方向においてアーチ状に形成されているプラットフォームの下側(材料の厚さによって、冠状に見えるプラットフォーム表面から離間したプラットフォームの表面)も設けられている。
【0018】
本発明では、少なくとも、オペレータが定義されたエマージェンスプロファイルに基づいて、アバットメントのプラットフォームの材料の厚さ(すなわち、冠状に見えるプラットフォーム表面と、冠状に見えるプラットフォーム表面とは反対側のプラットフォーム表面との間の通常の間隔)を選択することができる範囲において、プレパレーションマージンの下方のアバットメントの3次元形状がオペレータによって選択可能であることが設定されている。
【0019】
本発明では、好ましい実施例において、さらに、コンピュータのオペレータによって
・スクリューチャネルの壁部の材料の厚さ(すなわち、スクリューチャネルを定義する内壁と、この内壁とは反対側の、スクリューチャネルを有している、アバットメントの冠状に延在する領域の壁部との間の通常の間隔)および/または
・アバットメントの基部の材料の厚さ(すなわち、接続構造体に面する、アバットメントの外側と、冠状に見えるプラットフォーム表面との間の通常の間隔)および/または
・冠状に見えるプラットフォーム表面とアバットメントの基部との間の移行に対する移行半径および/またはアバットメントの基部とスクリューチャネルの壁部との間の移行に対する移行半径が、
電子メモリ内に格納されている、設定された範囲内で選択される範囲において、プレパレーションマージンの下方のアバットメントの3次元形状がオペレータによって選択可能であることが設定されている。
【0020】
アバットメントのプラットフォームの材料の厚さおよび/またはスクリューチャネルの壁部の材料の厚さおよび/またはアバットメントの基部の材料の厚さには、一定の材料の厚さが好ましいことに留意されたい。しかし基本的には、これらの材料の厚さのうちの1つまたは複数に対する経過ライン(可変の材料の厚さ)も可能である。この経過ラインは、1つまたは複数の支持点の設定によって定義されていてよい。
【0021】
好ましくは、材料の厚さの可能な選択に対する、もしくは移行半径に対する各範囲は、アバットメントに使用される材料(たとえば、セラミック、チタン、プラスチックまたはハイブリッド材料)に関連して、かつ/またはプレパレーションマージンの上方のアバットメントの定義された3次元形状に関連して選択されることが設定されている。
【0022】
電子メモリ内に格納されている、設定された範囲(この範囲には、当然、この方法の実施の間、少なくとも相応のステップの間、コンピュータがアクセスできる必要がある)はそれぞれ、経験値に基づいて、かつ/またはシミュレーションおよび/または一連の測定に基づいて決定されてよい。たとえば、
・アバットメントの基部の材料の厚さが、約0.05mm~約4mmの範囲で選択可能である
・プラットフォームの材料の厚さが、約0.05mm~約2mmの範囲で選択可能である
・スクリューチャネルの壁部の材料の厚さが、約0.05mm~約3mmの範囲で選択可能である
ことが設定されていてよい。
【0023】
好ましくは、方法と相応のコンピュータプログラムとが、コンピュータによって読み取り可能な、提供されている、患者の顎の3次元表現に基づいて、直接的に、プレート状に形成されている、冠状に見えるプラットフォーム表面を備えるアバットメント用の3次元コンピュータモデルを作成することが設定されている。コンピュータプログラムは、プログラムがコンピュータによって実行されると、コンピュータにこの方法を実施させる。
【0024】
しかし、択一的に、本発明の第2の変形例では、まずは、患者に応じたアバットメントの3次元のスタートコンピュータモデルが、従来の方法および相応のコンピュータプログラムによって作成されることが設定されていてよい。このスタートコンピュータモデルは、アバットメントのスクリューチャネルとアバットメントのエマージェンスプロファイルとの間で放射状に延在する領域が材料で充填されているように表示されている形態を有している。次に、コンピュータは、本発明による方法に相応に、または本発明による相応のコンピュータプログラムを用いて変換を実行し、これによって3次元のスタートコンピュータモデルから3次元コンピュータモデルを取得する。この3次元コンピュータモデルでは、プラットフォームの3次元形状のためのプレパレーションマージンの下方に、冠状に見えるプラットフォーム表面のプレート状の形成が設けられており、この3次元コンピュータモデルは、定義されたエマージェンスプロファイルに基づいてコンピュータのオペレータによって選択された、アバットメントのプラットフォームの材料の厚さを有している。本発明の第1の変形例に関連して説明したのと同じ、付加的な任意選択的な特徴が設定されていてよい。
【0025】
上述の実施例のうちの少なくとも1つの実施例による方法によって作成された、材料が低減される、患者に応じたアバットメントの3次元コンピュータモデルを使用して、デンタルインプラント用の本発明によるアバットメントを製作するために、好ましくは積層造形方法(たとえばレーザー焼結)が提案され、ここでは、層状粉末(たとえば、セラミック、チタン、プラスチックまたはハイブリッド材料の粉末)がエネルギ作用によって固化される。
【0026】
アバットメントを製作するための従来の機械加工(切削加工)方法または切断方法に対して、積層造形方法は、方法継続時間が短いという特徴を有している。さらに、機械加工方法または切断方法では、手間のかかる再度のセットが必要になることがよくある。積層造形方法を使用する場合でも、機械加工による後処理または切断による後処理が必要になることがある。
【0027】
すべての実施例において、スクリューチャネルは、アバットメントの接続構造体の想定された中心軸線に対して平行に、または所定の角度で延在していてよい。
【0028】
本発明の実施例を、図を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1a】本発明による方法を実施するための装置の変形例の概略図である。
【
図1b】本発明による方法を実施するための装置の変形例の概略図である。
【
図2】
図1aまたは
図1bの方法の結果を使用したアバットメントの製作方法の概略図である。
【
図3a】本発明によって製作されるアバットメントの実施例の景観である。
【
図3b】本発明によって製作されるアバットメントの実施例の景観である。
【
図3c】本発明によって製作されるアバットメントの実施例の景観である。
【
図3d】本発明によって製作されるアバットメントの実施例の断面図である。
【
図4】材料の厚さが計量された、
図3dにおける断面図である。
【
図5a】本発明による方法の過程で変換される、患者に応じたアバットメントの3次元のスタートコンピュータモデルの実施例の景観である。
【
図5b】本発明による方法の過程で変換される、患者に応じたアバットメントの3次元のスタートコンピュータモデルの実施例の景観である。
【
図5c】本発明による方法の過程で変換される、患者に応じたアバットメントの3次元のスタートコンピュータモデルの実施例の景観である。
【
図5d】本発明による方法の過程で変換される、患者に応じたアバットメントの3次元のスタートコンピュータモデルの実施例の断面図である。
【
図6】本発明によって製作されるアバットメントの実施例の断面図であり、この図では、本発明の第2の変形例において、変換が3次元のスタートコンピュータモデルに基づいてどのように行われるかを見て取ることができる。
【
図7a】アバットメントのコンピュータモデルを備えた、患者の顎の、コンピュータによって読み取り可能な3次元表現の図である。
【
図7b】アバットメントを備えていない、患者の顎の、コンピュータによって読み取り可能な3次元表現の図である。
【
図7d】クラウンの形態の補綴修復物を備える、本発明による方法に従って製作されたアバットメントの図である。
【0030】
図1aは、患者用の、患者に応じたデンタルインプラント12用アバットメント2の3次元コンピュータモデル1をコンピュータ3によって作成する方法の動作のための装置を概略的に示しており、ここではアバットメント2(
図3a~
図3dを参照されたい)は、
・基部4
・アバットメント2をピン状のデンタルインプラント12(
図7bを参照されたい)に接続するための接続構造体5
・補綴修復物を支持するためのアバットメント2のプラットフォームの、冠状に見えるプラットフォーム表面6および
・アバットメント2をピン状のデンタルインプラント12に固定するためのスクリューチャネル7
を有している。
【0031】
アバットメント2の接続構造体5の想定された中心軸線Zを見て取ることができる。
【0032】
少なくとも、アバットメント2が埋入されるべき顎の領域における患者の顎の、コンピュータ3によって読み取り可能な3次元表現10が提供される。この3次元表現は、デジタル化される、患者の顎のアナログの顎印象に基づいて、または直接的にデジタル形式で(たとえば口腔内スキャナおよび/または技工所のスキャナを用いて)、既知の様式で提供されてよい。
【0033】
既知の様式では、プレパレーションマージンの定義は、アバットメント2が埋入されるべき、患者の個々の歯肉経過ラインに関連して、コンピュータ3のオペレータによって、またはアルゴリズムによって選択される。
【0034】
コンピュータ3のオペレータによって、またはアルゴリズムによって、プレパレーションマージンの上方のアバットメント2の3次元形状の定義が行われる。アバットメント2の3次元形状の定義には、
・アバットメント2をピン状のデンタルインプラント12に固定するための、アバットメント2内に延在しているスクリューチャネル7の、通常は、ピン状のデンタルインプラント12の配向に対して定義される位置の定義
・アバットメント2の冠状に見えるプラットフォーム表面6の幅の定義
・アバットメント2の高さの定義
・スクリューチャネル7を有している、アバットメント2の中心隆起部の幅の定義
が含まれ得る。
【0035】
アバットメント2のエマージェンスプロファイルEの定義は、コンピュータ3のオペレータまたはアルゴリズムによって行われる。
【0036】
本発明によれば、冠状に見えるプラットフォーム表面6のプレート状の形成が、プラットフォームの3次元形状のためのプレパレーションマージンの下方に設定されている。
【0037】
コンピュータ3のオペレータによって、定義されたエマージェンスプロファイルEに基づいて、電子メモリ8内に格納されている、設定された範囲内で
・アバットメント2のプラットフォームの材料の厚さd
1
・アバットメント2の基部4の材料の厚さd
2および/または
・スクリューチャネル7の壁部の材料の厚さd
3および/または
・冠状に見えるプラットフォーム表面6とアバットメント2の基部4との間の移行に対する移行半径R
1
・アバットメント2の基部4とスクリューチャネル7の壁部との間の移行に対する移行半径R
2
が選択される(
図4および
図6を参照されたい)。
【0038】
たとえば、今しがた説明した方法に従って作成される3次元コンピュータモデル1を使用して、好ましくは積層造形方法によって、患者に応じたデンタルインプラント12用アバットメント2を製作するために、3次元コンピュータモデル1がコンピュータ3によって提供される。
【0039】
図1bの実施例は、次の点においてのみ、これまで説明した実施例とは異なる。すなわち、本発明の第2の変形例に相応に、まずは、顎の、提供されている3次元表現と、エマージェンスプロファイルEの定義と、プレパレーションマージンの上方のアバットメント2の3次元形状とに関連して、患者に応じたアバットメント2の3次元のスタートコンピュータモデル9が作成されるという点である。ここでは3次元のスタートコンピュータモデル9は、アバットメント2のスクリューチャネル7とアバットメント2のエマージェンスプロファイルEとの間で放射状に延在する領域が材料で充填されているように表示されている形態を有している(
図5a~
図5dを参照されたい)。この3次元のスタートコンピュータモデル9(これはそれ自体、機能するアバットメントを表している)に基づいて、コンピュータ3は、アルゴリズム(このアルゴリズムはたとえば、スクリューチャネルの角度に応じて、計算されたピーク負荷に応じた、ある程度の必要な材料の厚さを計算する)によって変換を実行し、これによって3次元のスタートコンピュータモデル9から3次元コンピュータモデル1を取得する。この3次元コンピュータモデルでは、プラットフォームの3次元形状のためのプレパレーションマージンの下方に、冠状に見えるプラットフォーム表面6のプレート状の形成が設けられており、この3次元コンピュータモデルは、定義されたエマージェンスプロファイルEに基づいてコンピュータ3のオペレータによって選択された、アバットメント2のプラットフォームの材料の厚さd
1と、説明されたさらなるパラメータとを有している。
図6では、材料で満たされているとして示されている領域(点が付けられている領域)が変換時に除去されるべき例が示されている。
【0040】
図7aは、患者に応じたアバットメント2の3次元コンピュータモデル1を備えた、患者の顎の、コンピュータ3によって読み取り可能な3次元表現10の図を示している。
【0041】
図7bでは、
図7aに示されているアバットメント2が除去されており、これによって、ピン状のデンタルインプラント12の上方の領域を見ることができる。ピン状のデンタルインプラント12のこの上方の領域に、接続構造体5を備えたアバットメント2が挿入される。
図7cは、ジンジバマスクを示している(しかし、これは、
図7aおよび
図7bにおいては設けられていない)。
【0042】
図7dは、クラウンの形態の補綴修復物を備える、本発明による方法に従って製作されたアバットメント2を示している。
【符号の説明】
【0043】
1 患者に応じたアバットメントの3次元コンピュータモデル
2 アバットメント
3 コンピュータ
4 アバットメントの基部
5 接続構造体
6 冠状に見えるプラットフォーム表面
7 スクリューチャネル
8 電子メモリ
9 患者に応じたアバットメントの3次元のスタートコンピュータモデル
10 患者の顎の3次元表現
11 製作施設
12 デンタルインプラント
E アバットメントのエマージェンスプロファイル
Z アバットメントの接続構造体の想定された中心軸線
d1 アバットメントのプラットフォームの材料の厚さ
d2 アバットメントの基部の材料の厚さ
d3 アバットメントのスクリューチャネルの壁部の材料の厚さ
R1 冠状に見えるプラットフォーム表面とアバットメントの基部との間の移行の移行半径
R2 アバットメントの基部とスクリューチャネルの壁部との間の移行の移行半径