(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】循環経済に有用であって、剥離可能でありかつ綺麗に剥離可能な特性を有するシリコーンエラストマーを含む、物品
(51)【国際特許分類】
C09J 183/04 20060101AFI20240104BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20240104BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240104BHJP
C09J 5/00 20060101ALI20240104BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20240104BHJP
C08L 83/07 20060101ALI20240104BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240104BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240104BHJP
H01M 10/54 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
C09J183/04
C09J11/04
C09J11/06
C09J5/00
C08L83/05
C08L83/07
C08K3/013
B32B27/00 L
B32B27/00 101
H01M10/54
(21)【出願番号】P 2022546145
(86)(22)【出願日】2021-01-28
(86)【国際出願番号】 US2021015444
(87)【国際公開番号】W WO2021154961
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-09-28
(32)【優先日】2020-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519289224
【氏名又は名称】エルケム・シリコーンズ・ユーエスエイ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】ELKEM SILICONES USA CORP.
【住所又は居所原語表記】Two Tower Center Boulevard,Suite 1601,East Brunswick,NJ 08816 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・プライス
(72)【発明者】
【氏名】ダナヤ・プラチャヤナン
(72)【発明者】
【氏名】イェン・モン
(72)【発明者】
【氏名】バージニア・オニール
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0223070(US,A1)
【文献】国際公開第2019/049950(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/021824(WO,A1)
【文献】特表2018-537142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化シリコーンエラストマーZと接触した支持体Sを含み、その硬化シリコーンエラストマーZが種々の支持体への接着性を有し、綺麗に剥離可能な特性を有して剥離可能である物品であって、
前記硬化シリコーンエラストマーZは、硬化性液体シリコーン組成物Xを混合及び硬化することにより調製され
、前記硬化性液体シリコーン組成物Xは、以下の成分を含み:
(A)ケイ素に結合したアルケニル基を1分子当たり少なくとも2個有する少なくとも1種のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンA 100重量部、
(B)少なくとも1種のジオルガノハイドロジェンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCE、
(C)ケイ素に結合した水素原子を1分子当たり少なくとも3個有する少なくとも1種の有機ケイ素架橋剤XL、
(D)少なくとも1種の付加反応触媒D、
(E)少なくとも1種の充填剤E 1~500重量部
(F)少なくとも1種の硬化速度調整剤F 0~10重量
部
前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサンA、前記ジオルガノハイドロジェンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCE、及び前記有機ケイ素架橋剤XLの量は、以下のように決定され
、前記硬化シリコーンエラストマーZの、エポキシガラス繊維板に対する180°剥離力が、1.5N~23Nの範囲である、物品。
1)比RHalk値は、1.00<RHalk<1.35であり、RHalk=nH/tAlkである、そして:
-nH=前記液体シリコーン組成物Xのケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数;
-tAlk=前記液体シリコーン組成物Xのケイ素原子に直接結合したアルケニル基のモル数;
2)%モル比RHCEは、50%≦RHCE≦98%の範囲内であり、RHCE=nHCE/(nHCE+nHXL)×100である、そして:
a)nHCEは、前記ジオルガノハイドロジェンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCEのケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数である、
b)nHXLは、前記有機ケイ素架橋剤XLのケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数である。
【請求項2】
前記比RHalk値が、1.10≦RHalk<1.25である、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記硬化シリコーンエラストマーZの、エポキシガラス繊維板に対する180°剥離力が
、3N~23Nの範囲である、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記硬化シリコーンエラストマーZの、ASTM D-412に従って測定された破断伸び値が、少なくとも300%である、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記支持体Sと前記硬化シリコーンエラストマーZとの間の前記接触は、前記硬化性液体シリコーン組成物Xを前記支持体S上にポッティング若しくはカプセル化、コーティング、塗布又は噴霧のいずれかによって実施され、次いで前記硬化性液体シリコーン組成物Xを硬化させて前記硬化シリコーンエラストマーZを得るか、
又は前記支持体Sを前記硬化性液体シリコーン組成物Xと共にポッティング又はディッピングし、次いで前記硬化性液体シリコーン組成物Xを硬化させて、前記硬化シリコーンエラストマーZを得る、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記支持体Sが、プリント回路基板の一部、電子デバイスの一部、二次電池パックの一部、及び太陽光発電パネルの一部からなる群から選択される、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
ケイ素に結合した水素原子を1分子当たり少なくとも3個有する前記有機ケイ素架橋剤XLが、各分子内に10~500個のケイ素原子を含むオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、下記比αが0.01≦α≦0.957の範囲内である、請求項1に記載の物品。
α=d/(ΣSi)であり、そして:
・d=1分子中にSi原子に直接結合したH原子の数、
・ΣSiは1分子中のケイ素原子の合計である。
【請求項8】
ケイ素に結合した水素原子を1分子当たり少なくとも3個有する前記有機ケイ素架橋剤XLが、1分子内に10~500個のケイ素原子を含むオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、
前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンが、0.45~40重量%のSiHを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項9】
前記有機ケイ素架橋剤XLが以下を含む、請求項1に記載の物品。
(i)同一であり得る又は異なり得る式(XL-1)の少なくとも3個のシロキシ単位:
(H)(Z)
eSiO
(3-e)/2 (XL-1)
式中:
-記号Hが、水素原子を表す、
-記号Zが、1~8個の炭素原子を含むアルキル基を表す、
-記号eが、0、1又は2である、
(ii)少なくとも1
個の式(XL-2)のシロキシ単位:
(Z)
gSiO
(4-g)/2 (XL-2)
式中:
-記号Zは、1~8個の炭素数を含むアルキル基を表す、
-記号gは、0、1、2又は3である、
ここで、XL-1及びXL-2中のZは、同一でもよく又は異なってもよい。
【請求項10】
前記有機ケイ素架橋剤XLが、3~60個の式(XL-1)のシロキシ単位と、1~250個の式(XL-2)のシロキシ単位とを含む、請求項7に記載の物品。
【請求項11】
ケイ素に結合した水素原子を1分子当たり少なくとも3個有する前記有機ケイ素架橋剤XLが、1分子中に10~250個のケイ素原子を含むオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、比αが0.10≦α≦0.75の範囲内である、請求項1に記載の物品。
【請求項12】
前記ジオルガノハイドロジェンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCEが、下記式(2)である、請求項1に記載の物品。
【化1】
式中:
-R及びR’’は独立しており、C
1~C
20のアルキル基から選択される、
-nは1~500の範囲の整数である。
【請求項13】
以下を更に含む、請求項1に記載の物品。
(G)少なくとも1種の増粘剤G1若しくは少なくとも1種のレオロジー調整剤G2 0~2重量部、及び/又は、
(H)少なくとも1種の添加剤H 0~10部。
【請求項14】
前記充填剤Eが、強化充填剤E1、熱伝導性充填剤E2、導電性充填剤E3、中空ガラスビーズE4及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の物品。
【請求項15】
前記硬化シリコーンエラストマーZは、中空ガラスビーズE4を含むシリコーンシンタクチックフォームである、請求項1に記載の物品。
【請求項16】
前記シリコーンシンタクチックフォーム中の前記中空ガラスビーズE4の量が、最大50体積%添加される、請求項15に記載の物品。
【請求項17】
前記硬化性液体シリコーン組成物Xは2液硬化性液体シリコーン組成物として貯蔵され、その2液硬化性液体シリコーン組成物が成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(E)、及び最終的には成分(F)を含むが、成分(D)を含まない第1の液体組成物と、成分(A)、成分(E)、及び成分(D)を含むが、成分(B)、成分(C)、及び成分(F)を含まない第2の液体組成物とを含み、
前記第1の液体組成物と前記第2の液体組成物とが別々に貯蔵される、請求項1に記載の物品。
【請求項18】
以下のステップを含む、リサイクル方法。
a)請求項1~
17のいずれか一項に記載の物品を供給するステップ、
b)前記支持体Sから前記硬化シリコーンエラストマーZを剥離するステップ、その後、
c)前記物品をリサイクルする又はリユースするステップ。
【請求項19】
前記物品は、プリント回路基板、電子デバイス、二次電池パック又は太陽光発電パネルである、請求項
18に記載のリサイクル方法。
【請求項20】
前記物品が、硬化シリコーンエラストマーZと接触した支持体Sを含む二次電池パックであり、その硬化シリコーンエラストマーZが、請求項15又は16に記載の中空ガラスビーズE4を含むシリコーンシンタクチックフォームである、請求項
18に記載のリサイクル方法。
【請求項21】
以下のステップを含む請求項
18又は
20に記載のリサイクル方法。
a)請求項15に記載の中空ガラスビーズE4を含むシリコーンシンタクチックフォームである硬化シリコーンエラストマーZと接触した支持体Sを含む二次電池パックである物品を供給するステップ、
b)前記支持体Sから前記硬化シリコーンエラストマーZを剥離するステップ、その後、
c)固定エネルギー貯蔵用の前記二次電池パックをリユースするステップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、特許協力条約に基づいて国際出願されており、2020年1月30日に出願された米国特許仮出願第62/967,984号の優先権を主張する。この仮出願の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、綺麗に剥離可能な特性(clean-releasing propeties)を有して剥離可能な硬化シリコーンエラストマーZと接触した支持体Sを含み、人の力で容易に除去することができる、循環経済に有用な物品に関する。
【0003】
また、本発明は、本発明による物品の支持体Sから硬化シリコーンエラストマーZを剥離するステップと、その後、前記物品をリサイクル又はリユースするステップを含むリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0004】
産業革命以来、世界経済モデルは、抽出から始まり、最終廃棄で終わる価値創造の線形モデルに従っていることがよく知られている。電子機器は消費者の需要が大幅に増加するにつれ人類に多大な利益をもたらし続けているが、この増加は毎年膨大な量の資源の浪費につながっていた。年間5000万トンもの電子及び電気廃棄物(一般にe-wasteと呼ばれる)が生成されると推定される。e-wasteの数多くのタイプは毒であり、環境に悪影響を及ぼすので、リサイクル及び回収プログラムが重要になる。さらに、将来、エレクトロニクス及び電気デバイス用の新しい原材料の入手及び供給について懸念している。また、e-wasteは、数多くの高い価値及び希少な材料を含んでいるので、より良い回収のための更なる必要性及びインセンティブを提供する。
【0005】
シリコーンエラストマーは、その多様で優れた特性から、電子デバイスにおいて、湿気や環境汚染物質、悪環境に対するポッティングやカプセル化、接着、シール、コーティングなど、さまざまな用途に使用可能である。他の有機エラストマーとは異なり、シリコーンエラストマーは、180℃までの連続した温度に耐え、-50℃まで可撓性を維持することができる。種々の支持体への接着性を有する硬化シリコーンエラストマーは、過酷な環境下で種々の部品、発光ダイオード(LED)、ディスプレイ、太陽電池モジュールの太陽電池ジャンクションボックス、ダイオード、半導体デバイス、リレー、センサー、自動車安定装置、自動車電子制御ユニット(ECUs)等のハイエンド精密/高感度電子デバイスや、厳しい環境下で、主に絶縁、湿気、塵、衝撃吸収のために、ポッティング又はカプセル化、シール、接着、コーティングに実際に使用されている。エレクトロニクス製造業者は、現在、種々の支持体に対して接着性を有する多様な硬化シリコーンエラストマーを必要としているが、全てが、それらのそれぞれの支持体表面に対して高い接着力を有することを目標としている。この成長技術の開発及び種々の支持体に対する接着性を有する硬化シリコーンエラストマーの必要性により、需要が増大すると予想される。しかしながら、低接着のニーズのための粘着性シリコーンゲルを使用することは可能であるが、ヤング率値が低いと、アプリケーターがそれを破壊せずに綺麗に剥離することが難しい場合が多い。接着は、水の浸入、熱、湿度、その他の汚染から保護された部品を守るため、優位である。しかしながら、大規模なOEMsには、多くのデバイスの主要な部品を回収するリワーク機能又はプロセスのいずれかが必要になり、実際、電子機器のリユースは、製品の寿命の短縮に対する前向きな革新的対応としてみなされ、これは、資源と製造の負担に対するこの大きな圧力に寄与する主要な要因の1つである。リユースは、廃棄物ではない製品又は部品を、それらが考案されたのと同じ目的で再び使用する操作として定義できる。リユースは、物品(s)が無駄になる前に行われる。一方、リサイクル性の重要な部品を回収するプロセスは、「リユースの前処理」と呼ばれることが多く、回収作業のチェック、クリーニング、又は修繕を意味し、これにより、廃棄物となった製品又は製品の部品を前処理して、他の前処理なしでリユースし得る。
【0006】
また、大規模なOEMsに対するこの新たなニーズは、強力な傾向があり、その傾向は、取得、作製及び廃棄のアプローチに基づく直線的な生産モデルを見出すが、未使用の天然資源の輸入と廃棄物や排出物の処理に依存し、ますます時代遅れになりつつある。この傾向の強さは、例えば、欧州委員会のサーキュラーエコノミーパッケージ(2015年発行)で予測されうるものであり、これは、ヨーロッパの企業と消費者が、資源がより持続可能な方法で使用される、より強力かつより循環経済に移行することを支援することを目的としている。この傾向は現在世界中に広がっており、ほとんどの先進国に影響を与えている。
【0007】
シリコーンエラストマーに硬化させたときに種々の支持体に対する接着性を有する、ポッティング又はカプセル化、シール、接着又はコーティング用途のためのシリコーン組成物は、ラップトップ、携帯電話、コンピュータ等のオーディオビジュアル電子機器からソーラーパネル、家電、自動車、航空宇宙等の大型アプリケーションに至るまでの多くの異なる機器の修繕作業(リユース)又はリサイクル(「リユースの前処理」)が必要となる場合、多くのメーカーにとって課題を引き起こす可能性がある。また、シリコーンエラストマーに硬化させたときに種々の支持体に接着性を有する、ポッティング若しくはカプセル化、シール、接着又はコーティング用途のためのシリコーン組成物は、永久的、架橋的かつ不可逆的になる傾向があることもよく知られており、機器が陳腐化したときやアップグレード又は修繕が必要になったときに特に問題が生じる。そのため、老朽化した機器を分解し、材料を再生して、更に使用したり修繕したりするための効果的な手段が急務となっている。多くの場合、永久的な(架橋された)高耐久性のシリコーンポリマーネットワークが開発される。接着破壊は、一般的に凝集破壊又は界面破壊のどちらかである。凝集破壊はシリコーン層の体積内での破壊を示し、界面破壊はシリコーンと支持体との界面で発生する。かかる界面での剥離は、シリコーンが基板から剥離したことを意味する。これはリユースやリサイクルにおける大きな課題である一方、一時的な修繕やアップグレードシナリオにおける革新のための大きな可能性を提供するソリューションでもある。
【0008】
上記課題から、種々の支持体への接着性を持つポッティングやカプセル化、シール、接着、コーティング用途でのシリコーンに対するニーズが高まっている。シリコーンエラストマーに硬化させた場合、リユースやリサイクル性の目的のために、一度硬化させたものを簡単かつ綺麗に剥離することができることが望ましい。したがって、硬化シリコーン接着エラストマーを、それが接触させられた支持体から、当該支持体に損傷を与えることなく分離する能力は、明らかに非常に望ましい。したがって、硬化したときに種々の支持体に対するかかる界面破壊特性を有する上記用途に用いられるシリコーン組成物は、リユース又はリサイクル可能な目的で非常に望ましいものである。
【0009】
リユースのニーズの別の例は、様々な有害ガスが大気中に放出される主な原因とみなされている輸送に関連している。実際、化石燃料に依存しているため、従来の内燃機関自動車は大気汚染や気候変動に大きな影響を及ぼしている。温室効果ガス(GHG)削減目標を達成するには、より大規模な輸送の電化が必要である。道路輸送部門の脱炭素化のための潜在的な解決策は、内燃機関(ICE)車から電気自動車(EVs)に移行することによって予見される。電気自動車は急速に発展しており、その普及率は世界中で高まっている。この傾向は、二次電池、特にリチウムイオン電池の多用に依存しており、これは主要なエネルギー貯蔵技術として現れ、現在、家庭用電子機器、産業、輸送、及び電力貯蔵用途の主要な技術である。それらの高い可能性のために、ハイブリッド自動車(HEVs)、電池式電気自動車(BEVs)及びプラグインハイブリッド自動車(PHEVs)などの電気自動車において、より長い走行距離と適切な加速を提供できるようになったため、エネルギー、出力密度、寿命に優れた二次電池が自動車産業において好ましい電池技術になっている。現在の自動車産業内では、リチウムイオン電池セルの種々のサイズと形状が製造されており、その後、種々の構成のパックに組み立てられている。自動車の二次電池パックは典型的に、多くの電池セルで構成されており、必要な電力と容量のニーズを満たすために数百又は数千の電池が含まれることもある。しかしながら、電気モーターの使用が高エネルギー密度、長い動作寿命、及び幅広い条件で動作する能力を備えた安価な電池の必要性につながるので、動力伝達技術におけるこの切り替えは、技術的なハードルがないわけではない。再充電式電池セルは使い捨ての電池に比べていくつかの利点があるが、このタイプの電池に欠点がないわけではない。一般的に、再充電式電池セルの欠点のほとんどは、採用された電池の化学物質に起因しており、これらの化学物質は一次電池で使用されるものよりも安定しない傾向があるためである。リチウムイオンセル等の二次電池セルは、熱管理の問題が発生しやすい傾向があり、その問題は、温度上昇が発熱反応の引き金となり、温度が更に上昇してより有害な反応を引き起こし得る場合に発生する。その際、大量の熱エネルギーが急激に放出され、セル全体が850℃又はそれを超える温度まで加熱される。この温度上昇を受けたセルの温度上昇により、電池パック内の隣接するセルの温度も上昇する。これらの隣接するセルの温度上昇を妨げることなく上昇させると、それらのセルは、セル内が極めて高温の受け入れられない状態になり、カスケード効果につながり、単一セル内での温度上昇の開始が電池パック全体に伝搬する可能性がある。その結果、電池パックからの出力は中断し、電池パックを採用している系は、損傷の規模やそれに伴う熱エネルギーの放出により、甚大な付帯的損傷を招く可能性が高くなる。最悪のシナリオでは、発熱量が大きく、電池や電池近くの材料の燃焼に至るのに十分な大きさである。
【0010】
二次電池パックを熱的に絶縁し、さらに熱暴走の伝播を最小限に抑えるためのシリコーンシンタクチックフォームの使用を含む重要かつ効率的な解決策は、Elkem Silicones USA社が出願した特許出願公開US2018223070号に記載されている。この特許出願では、シリコーンシンタクチックフォームとして提供するシリコーンポッティング製品が偉大な用途を見出している。当然ながら、自動車産業においても、EV用電池のような主要部品のリユース・リサイクルの流れは、サイクル頻度の少ない定置型エネルギー貯蔵を必要とする市場においてリユースが可能である。そのため、熱対策としてシリコーンシンタクチックフォームを使用し、リユースやリサイクルのために簡単かつ綺麗に剥離可能な二次電池のニーズも同様に高まっていくだろう。ここで、接着性を有するポッティング材や保護材として使用されるシリコーンシンタクチックフォームを、種々の支持体に損傷を与えることなく分離できることが非常に望まれる。
【0011】
したがって、種々の支持体への接着性を有する硬化シリコーンエラストマーZで、綺麗に剥離可能な特性を有して剥離可能で、かつ人の力で容易に剥離可能な界面破壊特性を有する硬化性シリコーンシンタクチックフォームは、これらの産業で拡大する修繕作業(リユース)やリサイクル(「リユースの前処理」)のギャップに対応するために有用であると考えられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下のものを提供することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、硬化シリコーンエラストマーZと接触した支持体Sを含み、その硬化シリコーンエラストマーZが種々の支持体への接着性を有し、綺麗に剥離可能な特性を有して剥離可能である物品であって、
前記硬化シリコーンエラストマーZは、硬化性液体シリコーン組成物Xを混合及び硬化することにより調製され、その硬化性液体シリコーン組成物Xは好ましくは2液硬化性液体シリコーン組成物として貯蔵され、その2液硬化性液体シリコーン組成物が成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(E)、及び最終的には成分(F)を含むが、成分(D)を含まない第1の液体組成物と、成分(A)、成分(E)、及び成分(D)を含むが、成分(B)、成分(C)、及び成分(F)を含まない第2の液体組成物とを含み、
前記第1の液体組成物と前記第2の液体組成物とが別々に貯蔵され、前記第1の液体組成物と前記第2の液体組成物とが以下の成分を含み:
(A)ケイ素に結合したアルケニル基を1分子当たり少なくとも2個有する少なくとも1種のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンA 100重量部、
(B)少なくとも1種のジオルガノハイドロジェンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCE、
(C)ケイ素に結合した水素原子を1分子当たり少なくとも3個有する少なくとも1種の有機ケイ素架橋剤XL、
(D)少なくとも1種の付加反応触媒D、及び
(E)少なくとも1種の充填剤E 1~500重量部
(F)少なくとも1種の硬化速度調整剤F 0~10重量部
成分(A)は前記第1及び第2の液体組成物中、同一でもよく又は異なってもよく、成分(E)は前記第1及び第2の液体組成物中、同一でもよく又は異なってもよく、
前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサンA、前記ジオルガノハイドロジェンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCE、及び前記有機ケイ素架橋剤XLの量は、以下のように決定される、物品。
1)比RHalk値は、1.00<RHalk<1.35であり、RHalk=nH/tAlkである、そして:
-nH=前記液体シリコーン組成物Xのケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数;
-tAlk=前記液体シリコーン組成物Xのケイ素原子に直接結合したアルケニル基のモル数;
2)%モル比RHCEは、50%≦RHCE≦98%の範囲内であり、RHCE=nHCE/(nHCE+nHXL)×100である、そして:
a)nHCEは、前記ジオルガノハイドロジェンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCEのケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数である、
b)nHXLは、前記有機ケイ素架橋剤XLのケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数である。
【0013】
本発明による硬化シリコーンエラストマーZの利点は、種々の支持体に対して接着性を有し、綺麗に剥離可能な特性を有して剥離可能な材料であり、界面破壊特性を有するため、人力により容易かつ綺麗に剥離することができ、修繕作業(リユース)やリサイクル(「リユースの前処理」)のための新しい時代を切り開くことができることである。さらに、硬化シリコーンエラストマーZの剥離力は、1.5N~23N、好ましくは3N~23Nであり、人が自分の力で剥離可能な範囲にあることが必要である。本発明によるシリコーンエラストマーZを使用して得られる界面破壊は、接着剤として使用したシリコーンエラストマーZと被着体との界面破壊に帰結する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本開示の性質、目的、及び利点の更なる理解のために、以下の図面と共に読まれる以下の詳細な説明を参照されたい(ここで、同様の参照数字は同様の要素を示す)。
【0015】
【
図1】
図1は、PCB支持体に損傷を与えることなく容易かつ綺麗に剥離される、本発明による硬化シリコーンエラストマーでコートされたプリント回路基板(PCB)の上面図を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
主題の開示がさらに説明される前に、特定の実施形態の変形がなされても、添付の特許請求の範囲内にあるので、開示は、以下に記載される開示の特定の実施形態に限定されないことを理解されたい。使用される用語は、特定の実施形態を説明することを目的とするものであり、限定することを意図するものではないことも理解されたい。代わりに、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によって確立されるであろう。
【0017】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が他に明確に指示しない限り、複数形の参照を含む。別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者に一般的に理解されているのと同じ意味を有する。
【0018】
本明細書で使用される場合、「架橋」及び「硬化」という用語は交換可能に使用され得、2液システムが組み合わされて反応し、硬化シリコーンエラストマーをもたらすときに起こる反応を指す。
【0019】
本明細書で使用される場合、「アルケニル」という用語は、少なくとも1個のオレフィン二重結合、より好ましくは単一の二重結合を有する、置換又は非置換の、不飽和の、直鎖又は分岐炭化水素鎖を意味すると理解される。好ましくは、「アルケニル」基は、2~8個、さらに好ましくは2~6個の炭素原子を有する。この炭化水素鎖は、任意選択で、O、N、Sなどの少なくとも1個のヘテロ原子を含む。「アルケニル」基の好ましい例は、ビニル、アリル及びホモアリル基であり、ビニルが特に好ましい。
【0020】
本明細書で使用される場合、「アルキル」は、好ましくは1~10個の炭素原子、例えば1~8個の炭素原子、さらに好ましくは1~4個の炭素原子を有する、置換され得る(例えば、1個以上のアルキルで)、飽和の、直鎖又は分岐炭化水素鎖を意味する。アルキル基の例は、特にメチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、tert-ブチル、イソブチル、n-ブチル、n-ペンチル、イソアミル及び1,1-ジメチルプロピルである。
【0021】
硬化シリコーンエラストマーZを得るという目的を達成するために、硬化シリコーンエラストマーZは種々の支持体に対して接着性を有し、綺麗に剥離可能な特性と界面破壊特性を有して剥離可能な材料を提供し、その結果、人の力で容易かつ綺麗に剥離することができる。出願人は、以下の本発明による硬化性液体シリコーン組成物Xを調製することにより、全く驚くべきことかつ予期せぬことを証明した。
硬化性液体シリコーン組成物Xは、(A)ケイ素に結合したアルケニル基を1分子当たり少なくとも2個有するアルケニル基含有オルガノポリシロキサンA、(B)少なくとも1種のジオルガノハイドロジェンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCE、及び(C)ケイ素に結合した水素原子を1分子当たり少なくとも3個有する少なくとも1種の有機ケイ素架橋剤XLを、次のような量で含む:
1)シリコーンエラストマー内のアルケニル基に対する水素原子のモル比(RHalk)は、1.00~1.35の間である、
2)CEとXLの両方を合わせたケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数(RHCE)のうち、CE内のケイ素原子に直接結合した水素原子の割合は50%~98%の間である。そして、従来技術によって解決されなかった問題を克服することを可能にする。
【0022】
特に、硬化性液体シリコーン組成物Xは好ましくは2液硬化性液体シリコーン組成物として貯蔵され、その2液硬化性液体シリコーン組成物が成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(E)、及び最終的には成分(F)を含むが、成分(D)を含まない第1の液体組成物と、成分(A)、成分(E)、及び成分(D)を含むが、成分(B)、成分(C)、及び成分(F)を含まない第2の液体組成物とを含み、
前記第1の液体組成物と前記第2の液体組成物とが別々に貯蔵され、前記第1の液体組成物と前記第2の液体組成物とが以下の成分を含み:
(A)ケイ素に結合したアルケニル基を1分子当たり少なくとも2個有する少なくとも1種のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンA 100重量部、
(B)少なくとも1種のジオルガノハイドロジェンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCE、
(C)ケイ素に結合した水素原子を1分子当たり少なくとも3個有する少なくとも1種の有機ケイ素架橋剤XL、
(D)少なくとも1種の付加反応触媒D、及び
(E)少なくとも1種の充填剤E 1~500重量部
(F)少なくとも1種の硬化速度調整剤F 0~10重量部
成分(A)は前記第1及び第2の液体組成物中、同一でもよく又は異なってもよく、成分(E)は前記第1及び第2の液体組成物中、同一でもよく又は異なってもよく、
前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサンA、前記ジオルガノハイドロジェンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCE、及び前記有機ケイ素架橋剤XLの量は、以下のように決定される、物品。
1)比RHalk値は、1.00<RHalk<1.35であり、RHalk=nH/tAlkである、そして:
-nH=前記液体シリコーン組成物Xのケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数;
-tAlk=前記液体シリコーン組成物Xのケイ素原子に直接結合したアルケニル基のモル数;
2)%モル比RHCEは、50%≦RHCE≦98%の範囲内であり、RHCE=nHCE/(nHCE+nHXL)×100である、そして:
a)nHCEは、前記ジオルガノハイドロジェンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCEのケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数である、
b)nHXLは、前記有機ケイ素架橋剤XLのケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数である。
【0023】
本発明による硬化シリコーンエラストマーZの利点は、種々の支持体に対して粘着性を有し、綺麗に剥離可能な特性かつ界面破壊特性を有する材料を提供することであり、その結果、人の力により容易かつ綺麗に剥離することができ、修繕作業(リユース)やリサイクル(「リユースの前処理」)にとって新しい時代を切り開くことができる。さらに、硬化シリコーンエラストマーZの剥離力は、1.5N~23N、好ましくは3N~23Nであり、それは人が自身の力で剥離可能な範囲である。
【0024】
アルケニル基含有オルガノポリシロキサンA、ジオルガノハイドロジェンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCE、及び有機ケイ素架橋剤XLは、本発明の硬化性液体シリコーン組成物に含まれるものであり、それらの量は以下に決定される:
1)シリコーンエラストマー内のアルケニル基に対する水素原子のモル比(RHalk)は、1.00~1.35の間である、
2)CEとXLの両方を合わせたケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数(RHCE)のうち、CE内のケイ素原子に直接結合した水素原子の割合は50%~98%の間である。
【0025】
アルケニル基に対する水素原子のモル比(RHalk)は、以下の式により求めることができる。
RHalk=nH/tAlk,
式中、
nH=硬化性液体シリコーン組成物Xのケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数、及び
tAlk=硬化性液体シリコーン組成物Xのケイ素原子に直接結合したアルケニル基のモル数。
【0026】
本発明の硬化性液体シリコーン組成物におけるRHalk値は1.00~1.35の間が効果的である。RHalk値が1.00以下であれば、得られる硬化組成物はゲル状構造であることが判明している。同様に、RHalk値が1.35以上であれば、得られる硬化組成物もゲル状体になる傾向がある。好ましくは、本発明の硬化性液体シリコーン組成物におけるRHalk値は、1.00<RHalk<1.35である。あるいは、本発明の硬化性液体シリコーン組成物におけるRHalk値は、1.05≦RHalk≦1.30である。別の選択肢では、本発明の硬化性液体シリコーン組成物におけるRHalk値は、1.05<RHalk<1.30である。別の選択肢では、硬化性液体シリコーン組成物におけるRHalk値は、1.10≦RHalk≦1.25であり、好ましくは1.10≦RHalk<1.25であり、より好ましくは1.10≦RHalk≦1.20である。
【0027】
いくつかの実施形態において、比RHalk値は、1.10≦RHalk<1.25である。他の実施形態では、比RHalk値は、1.10≦RHalk≦1.24である。
【0028】
RHalk値に加え、ジオルガノハイドロジェンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCEと有機ケイ素架橋剤XLの両方におけるケイ素原子に直接結合した水素原子に対する、ジオルガノハイドロジェンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCEにおけるケイ素原子に直接結合した水素原子のモル割合(すなわち、RHCE値)も、本発明の硬化性液体シリコーン組成物の重要な特徴の1つである。
【0029】
モル割合RHCEは、以下の式で求めることができる。
RHCE=nHCE/(nHCE+nHXL)×100
式中、
-nHCEは、ジオルガノハイドロジェンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCEのケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数である、
-nHXLは、有機ケイ素架橋剤XLのケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数である。
【0030】
RHCE値は、50%≦RHCE<98%の範囲内が優位である。RHCEの値が98%以上であれば、得られる硬化組成物はゲル状構造を有することが判明している。RHCEの値が50%未満であると、得られる硬化組成物が脆くなる。
【0031】
好ましい実施形態において、硬化シリコーンエラストマーZの、エポキシファイバーガラス板に対する180°剥離力は、1.5N~23Nの範囲内、好ましくは3N~23Nの範囲内である。
【0032】
別の好ましい実施形態では、硬化シリコーンエラストマーZの、ASTM D-412に従って測定された破断伸び値は、少なくとも200%、好ましくは少なくとも300%である。
【0033】
標準ASTM D412は、材料に応力がかかっていないときの試験後の挙動だけでなく、引張歪みがかかっているときの材料の弾性を測定する。ASTM D412は多くの異なる特性を測定するが、以下が最も一般的である。
-引張強度:試験片を引き伸ばして破断させる際に適用される最大引張応力。
-所定の伸びでの引張応力:試験片の均一な断面を所定の伸びまで伸ばすのに必要な応力。
-極限伸び:継続的な引張応力の適用で破断が発生する伸び。
-引張歪み:試験片を所定の方法で引き伸ばし、収縮させた後に残る伸びであり、元の長さの割合で表される。
【0034】
支持体Sは特に限定されないが、その例として、紙等のペーパーベース支持体、布や不織布等の繊維ベース支持体、各プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂等)からなるフィルム又はシート等のプラスチック支持体、及びこれらの積層体等が挙げられる。支持体は、単層の形態を有してもよく、又は、多層の形態を有してもよい。なお、支持体には、必要に応じて、裏面処理、帯電防止処理、アンダーコーティング処理等の各種処理が施されてもよい。
【0035】
適切な支持体Sの他の具体例としては、アルミニウム、アルミナ(Al2O3)、窒化アルミニウム、酸化ベリリウム(BeO)等を含むセラミック系材料等のハード/リジッドプリント配線板(PCB)材料に使用されるものが挙げられる。適切な支持体Sの他の具体例は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等のウェアラブルに有用なソフト/フレキシブルプリント回路基板(PCB)材料に使用されるものである。適切な支持体Sの他の具体例は、難燃性エポキシ樹脂で接合されたガラス繊維強化ラミネートであるFR-4等のフレックスリジッドプリント回路基板(PCB)材料で使用されるものである。
【0036】
好ましい実施形態として、支持体Sは、プリント回路基板の要素、電子デバイスの要素、二次電池パックの要素及び太陽光発電パネルの要素からなる群から選択される。
【0037】
好ましい実施形態において、支持体Sと硬化シリコーンエラストマーZとの接触により、硬化性液体シリコーン組成物Xを支持体S上にポッティング又はカプセル化、コーティング、塗布又は噴霧のいずれかによって実施され、次いでそれを硬化させて硬化シリコーンエラストマーZを得ることか、又は、支持体Sを硬化性液体シリコーン組成物Xと共にポッティング又はディッピングした後に硬化させることにより硬化シリコーンエラストマーZが前記支持体Sと接触した物品を得る。
【0038】
成分(A)が第1及び第2の液体組成物中、同一でもよく又は異なってもよい。また、成分(E)が第1及び第2の液体組成物中、同一でもよく又は異なってもよい。
【0039】
硬化性液体シリコーン組成物X内の、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンA、ジオルガノハイドロジェンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCE、及び有機ケイ素架橋剤XLの量は、以下のように決定される:
1)比RHalk値は、1.00<RHalK<1.35であり、RHalK=nH/tAlkである:
-nH=前記液体シリコーン組成物Xのケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数、
-tAlk=前記液体シリコーン組成物Xのケイ素原子に直接結合したアルケニル基のモル数、
2)%モル比RHCEは、50%≦RHCE≦98%の範囲内であり、RHCE=nHCE/(nHCE+nHXL)×100である:
a)nHCEは、ジオルガノハイドロジェンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCEのケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数である、
b)nHXL=は、有機ケイ素架橋剤XLのケイ素原子に直接結合した水素原子のモル数である。
【0040】
本発明の硬化性液体シリコーン組成物は、ケイ素に結合したアルケニル基を1分子当たり少なくとも2個有する少なくとも1種のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンAを含む。いくつかの実施形態において、本発明の硬化性液体シリコーン組成物は、ケイ素に結合したアルケニル基を1分子当たり少なくとも2個有する2種以上のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンAを含む。例えば、本発明の硬化性液体シリコーン組成物は、ケイ素に結合したアルケニル基を1分子当たり少なくとも2個有する2種のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンA(A1及びA2)それぞれを含んでもよい。
【0041】
いくつかの実施形態において、少なくとも1種のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンAは、以下のものを含む:
-式(A-1)の2個のシロキシ単位:
(Alk)(R)2SiO1/2 (A-1)
式中、
記号「Alk」は、C2~C20のアルケニル基を表し、例えばビニル基、アリル基、ヘキセニル基、デセニル基、又はテトラデセニル基等であり、好ましくはビニル基水素原子であり、記号Rは、C1~C20のアルキル基を表し、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、トリフルオロプロピル基、又はアリール基等であり、好ましくはメチル基である、
-式(A-2)の他のシロキシ単位:
(L)gSiO(4-g)/2 (A-2)
式中、
記号Lは、C1~C20のアルキル基を表し、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、トリフルオロプロピル基、又はアリール基等であり、好ましくはメチル基であり、記号gは、0、1、2又は3であり、ここでLの各例は同一でもよく又は異なってもよい。
【0042】
いくつかの好ましい実施形態において、少なくとも1種のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンAは、下記式(1)である:
【0043】
【0044】
式中、
-nは、1~1000、好ましくは50~1000の範囲内の整数である、
-Rは、C1~C20のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、トリフルオロプロピル基、又はアリール基等であり、好ましくはメチル基である、
-R’は、C2~C20のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、デセニル基、テトラデセニル基等であり、好ましくはビニル基である、
-R’’は、C1~C20のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、トリフルオロプロピル基、又はアリール基等であり、好ましくはメチル基である。
【0045】
好ましい実施形態において、少なくとも1種のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンAは、1種以上のα,ω-(ビニルジメチルシリル)ポリジメチルシロキサン(複数可)、より好ましくは1種以上の直鎖状α,ω-(ビニルジメチルシリル)ポリジメチルシロキサン(複数可)である。
【0046】
本明細書中で想定している全ての粘度は、それ自体既知である方法によって、ブルックフィールド型の装置を用いて25℃で測定された動的粘度の大きさに対応する。液体物質に関しては、本明細書中で想定している粘度は、25℃における「ニュートン」粘度と称される動的粘度、即ち、測定粘度が、速度勾配に依存しないように、充分に低い剪断速度勾配で、それ自体既知である方法により測定される動的粘度である。
【0047】
いくつかの実施形態において、少なくとも1種のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンAの粘度は、約50~約100,000mPa・s、好ましくは約100~約80,000mPa・s、より好ましくは約100~約65,000mPa・sの間である。
【0048】
いくつかの実施形態において、少なくとも1種のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンAの分子量は、約1,000g/mol~約80,000g/molの間、好ましくは約10,000g/mol~約70,000g/molの間である。
【0049】
別の好ましい実施形態では、少なくとも1種のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンAは、好ましくは直鎖状である。
【0050】
本発明の硬化性液体シリコーン組成物は、ケイ素に結合した水素原子を1分子当たり少なくとも3個有する少なくとも1種の有機ケイ素架橋剤XLを含む。いくつかの実施形態において、ケイ素に結合した水素原子を1分子当たり少なくとも3個有する有機ケイ素架橋剤XLは、各分子内に10~500個のケイ素原子、好ましくは各分子内に10~250個のケイ素原子を含むオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
【0051】
好ましい実施形態において、有機ケイ素架橋剤XLは、比α(d/(ΣSi))が0.01≦α≦0.957の範囲内となるように選択され、式中、d=1分子当たりSi原子に直接結合したH原子の数、ΣSiは1分子当たりのケイ素原子の総和である。好ましい実施形態において、比αは、0.10≦α≦0.75の範囲内である。別の好ましい実施形態において、比αは、0.10≦α≦0.30の範囲内である。
【0052】
いくつかの実施形態では、ケイ素に結合した水素原子を1分子当たり少なくとも3個有する有機ケイ素架橋剤XLは、各分子内に10~500個のケイ素原子を含むオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、比αは0.01≦α≦0.957の範囲にあり、α=d/(ΣSi)である:
-d=1分子当たりSi原子に直接結合したH原子の数、
-ΣSiは1分子当たりのケイ素原子の総和である。
【0053】
いくつかの実施形態において、ケイ素に結合した水素原子を1分子当たり少なくとも3個有する有機ケイ素架橋剤XLは、各分子内に10~250個のケイ素原子を含むオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、比αは0.10≦α≦0.75の範囲内である。
【0054】
少なくとも1種の有機ケイ素架橋剤XLは、硬化性液体シリコーン組成物に含ませることができ、該組成物の全重量に対して約0.01%~約10%、好ましくは約0.05%~約5%、好ましくは約0.1%~約4%の量である。
【0055】
いくつかの実施形態において、ケイ素に結合した水素原子を1分子当たり少なくとも3個有する有機ケイ素架橋剤XLは、0.45重量%~40重量%のSiH、より好ましくは0.5重量%~35重量%のSiH、より好ましくは0.5重量%~15重量%のSiH又は5重量%~12重量%のSiHを含むオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
【0056】
いくつかの実施形態では、有機ケイ素架橋剤XLは、以下を含む:
(i)式(XL-1)の少なくとも3個のシロキシ単位は、同一でもよく又は異なってもよい:
(H)(Z)eSiO(3-e)/2 (XL-1)
式中、
-Hは、水素原子を表す、
-Zは、1~8個の炭素数を含むアルキル基を表す、
-eは、0、1又は2であり、好ましくは1又は2である、
(ii)式(XL-2)の少なくとも1個、好ましくは1~550個のシロキシ単位:
(Z)gSiO(4-g)/2 (XL-2)
式中:
-Zは、1~8個の炭素数を含むアルキル基を表す、
-gは、0、1、2又は3であり、好ましくは2である、
Zは、XL-1及びXL-2中、同一でもよく又は異なってもよい。
【0057】
いくつかの実施形態では、記号Zは、メチル基、エチル基、プロピル基及び3,3,3-トリフルオロプロピル基、シクロアルキル基、並びにアリール基から選択される。いくつかの実施形態では、Zは、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及びシクロオクチル基から選択されるシクロアルキル基である。別の実施形態において、Zは、キシリル基、トリル基、及びフェニル基からなる群から選択されるアリール基である。別の実施形態において、Zは、メチル基である。
【0058】
好ましい実施形態において、XL-1中の記号「e」は、1又は2である。好ましい実施形態において、XL-2中の記号「g」は2である。好ましい実施形態において、有機ケイ素架橋剤XLは、式(XL-1)の3~60個のシロキシ単位及び式(XL-2)の1~250個のシロキシ単位(複数可)を含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、有機ケイ素架橋剤XLは、式(XL-1)の3~60個のシロキシ単位及び式(XL-2)の1~250個のシロキシ単位(複数可)を含む。
【0060】
本発明の硬化性液体シリコーン組成物は、少なくとも1種のジオルガノハイドロジェンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサン鎖延長剤CEをさらに含む。少なくとも1種のジオルガノハイドロジェンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサン鎖延長剤CEは、硬化性液体シリコーン組成物に含ませることができ、該組成物の全重量に対して約0.1%~約20%、好ましくは約0.5%~約15%、好ましくは約0.5%~約10%の量である。
【0061】
いくつかの実施形態において、ジオルガノハイドロジェンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCEは、下記式(2)である:
【0062】
【0063】
式中、
R及びR’’は独立してC1~C20のアルキル基であり、好ましくはR及びR’’は独立して以下の群から選ばれる:メチル基、エチル基、プロピル基、トリフルオロプロピル基及びアリール基、最も好ましくはR及びR’’はメチル基である、
nは1~500個、好ましくは2~100個、より好ましくは3~50の範囲の整数である。
【0064】
いくつかの実施形態において、少なくとも1種のジオルガノハイドロジェンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCEの粘度は、約1~約500mPa・sの間、好ましくは約2~約100mPa・sの間、より好ましくは約4~約50mPa・sの間、又は約5~約20mPa・sの間である。
【0065】
いくつかの実施形態において、少なくとも1種のジオルガノハイドロジェンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCEの分子量は、約100g/mol~約5,000g/molの間、好ましくは約250g/mol~約2,500g/molの間、より好ましくは約500g/mol~約1,000g/molの間である。
【0066】
いくつかの実施形態において、ジオルガノハイドロジェンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCEは、下記式(2)である:
【0067】
【0068】
式中、
-R及びR’’は独立して、C1~C20のアルキル基から選択される、
-nは、1~500の範囲の整数である、好ましくは、nは、2~100の範囲の整数であり、より好ましくは、nは、3~50の範囲の整数である。
【0069】
いくつかの実施形態において、R及びR’’は、メチル、エチル、プロピル、トリフルオロプロピル及びフェニルから独立して選択される。好ましくは、R及びR’’はメチルである。
【0070】
本発明の液体硬化性シリコーン組成物は、少なくとも1種の付加反応触媒Dを更に含む。付加反応触媒Dは、組成物を硬化することができる任意の量を含ませることができる。例えば、付加反応触媒Dは、ある量を含ませることができ、触媒D中の白金族元素の量が、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンAの1,000,000重量部当たり0.01~500重量部である。触媒Dは、特に白金とロジウムの化合物から選択することができる。特に、米国特許第3,159,601号、同第3,159,602号、同第3,220,972号及び欧州特許EP-A-0 057 459、EP-A-0 118 978及びEP-A-0 190 530に記載される白金錯体及び有機生成物と、米国特許第3,419,593号、同第3,715,334号、同第3,377,432号及び同第3,814,730号に記載される白金及びビニルオルガノシロキサンの錯体を使用することが可能である。
【0071】
好ましい実施形態において、付加反応触媒Dは、白金族元素含有触媒である。
【0072】
良好な物性を達成するために、充填剤Eが硬化性液体シリコーン組成物X内にある。
【0073】
いくつかの実施形態において、充填剤Eは、強化充填剤E1、熱伝導性充填剤E2、導電性充填剤E3、中空ガラスビーズE4及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0074】
適切な充填剤Eの一例は、疎水性シリカエアロゲルであり、これは、高い比表面積、高い気孔率、低い密度、低い誘電率及び優れた断熱特性を有するナノ構造材料の1種である。シリカエアロゲルは、超臨界乾燥プロセス又は大気圧乾燥技術のいずれかを介して合成され、多孔質構造が得られる。それは、現在、広く商業的に入手可能である。疎水性シリカエアロゲルは、BET法によって測定される各ケースにおいて、表面積が500~1500m2/g、代替形態として500~1200m2/gであることを特徴付けられる。疎水性シリカエアロゲルの空隙率は、80%を超える、代替形態として90%を超えることを更に特徴付けることができる。疎水性シリカエアロゲルは、レーザー光散乱法によって測定され、その平均粒径が5v~1000μm、代替形態として5μm~100μm、代替形態として5μm~25μmの範囲であってもよい。疎水性シリカエアロゲルの例は、トリメチルシリル化エアロゲルである。疎水性シリカエアロゲルは、硬化性液体シリコーンゴムの総重量に対して1~30重量%の量で硬化性液体シリコーンエラストマー組成物中にあり得る。
【0075】
適切な充填剤Eの別の例はアルミナである。分散性の高いアルミナが有利に使用され、既知の方法でドープ又はドープされない。もちろん、各種アルミナのスライスを使用することも可能である。かかるアルミナの非限定的な例として、Baikowski社のアルミナA 125、CR 125、D 65CRが参照される可能性がある。
【0076】
重量に関して、強化充填剤Eの量は、組成物の全成分を基準として、5~30重量%、好ましくは6~25重量%、より好ましくは7~20重量%を使用するとよい。
【0077】
いくつかの実施形態において、充填剤Eは、1~100重量部、1~50重量部、又は1~25重量部の量で硬化性液体シリコーン組成物X内にある。
【0078】
適切な強化充填剤E1の例はシリカであり、特に、シリカは、多くの場合0.1μm以下の微細な粒子サイズと、重量に対する比表面積の比率が高く、一般に1グラム当たり約50平方メートルから1グラム当たり300平方メートルを超えるまでの範囲内にあることとを特徴としている。このタイプのシリカは、商業的に入手可能な製品であり、接着性シリコーン組成物の製造の技術分野において周知である。これらのシリカは、コロイド状シリカ、熱分解法(燃焼又はヒュームドシリカと呼ばれるシリカ)によって調製されたシリカ又はこれらのシリカの混合物の湿式法(沈降シリカ)によって調製されたシリカでもよい。強化充填剤E1を形成できるシリカの化学的性質及び製造方法は、シリカが最終接着剤に補強作用を及ぼすことができる限り、本発明の目的にとって重要ではない。また、もちろん、種々のシリカのスライスを用いてもよい。これらのシリカ粉末の平均粒径は、一般に0.1μmに近いか等しく、このBET比表面積は、550m2/gより大きく、好ましくは50~400m2/g、特に150~350m2/gである。これらのシリカは、典型的に以下の通りである:
-少なくとも2個の基準を満たす分子のグループから選択された少なくとも1種の相溶化剤を使用して前処理される:
1)シリカ自体及び周囲のシリコーン油との水素結合の領域内に、シリカと高い相互作用を有する;
2)ガス流中、真空下で加熱することにより、それ自体又はその分解生成物が最終混合物から容易に除去され、低分子量の化合物が好ましい;
-及び/又はその場で処理:
・少なくとも1種の未処理シリカを使用した特定の方法、
・及び/又は、前処理で使用することができ、上記で定義したものと同様の性質の少なくとも1種の相溶化剤を使用することによる補完的な方法。
【0079】
その場でのシリカ充填剤の処理は、充填剤及び相溶化剤を、上記の優勢なシリコーンポリマーの少なくとも一部の存在下に置くことを意味すると理解される。相溶化剤は、処理方法(前処理又はその場)に応じて選択され、例えば、以下のものからなる群から選択されてもよい:クロロシラン、オクタメチルシクロシロキサン(D4)等のポリオルガノシクロシロキサン、シラザン、好ましくはジシラザン、又はそれらの混合物、ヘキサメチルジシラザン(HMDZ)が好ましいシラザン、ケイ素に結合したヒドロキシル基を1分子当たり1個以上有するポリオルガノシロキサン、アンモニア若しくはアルキルアミン等のアミンジエチルアミン等の低分子量の有機酸、ギ酸若しくは酢酸等の低分子量の有機酸、及びそれらの混合物。その場での処理の場合、相溶化剤は、好ましくは水の存在下で使用される。この点に関する詳細については、例えば特許FR-B-2 764 894を参照することができる。変形例として、シラザンによる早期処理(例えば、FR-A-2 320 324)又は遅延処理(例えば、EP-A-462 032)を提供する従来技術の相溶化方法を使用することが可能であるが、使用されるシリカによれば、それらの使用は、一般に、本発明による2回の処理によって得られる機械的特性、特に伸展性に関して最良の結果を得ることができないことを念頭に置いておく。
【0080】
好ましい実施形態において、相溶化剤は、ヘキサメチルジシラザン(HMDZ)である。
【0081】
本発明の硬化性液体シリコーン組成物Xに使用される微細分割シリカ又は他の強化充填剤E1の量は、少なくとも一部、硬化エラストマーに望まれる物理的特性によって決定される。本発明の硬化性液体シリコーン組成物Xは、オルガノポリシロキサンA100部ごとに、典型的に5~100部、典型的に10~60部の補強充填剤を含む。
【0082】
いくつかの実施形態において、強化充填剤E1はシリカ及び/又はアルミナから選択され、好ましくはシリカから選択される。
【0083】
熱伝導性充填剤E2の例は、限定されるものではないが、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ダイヤモンド、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、銀、金、銅、及びこれらの組み合わせを含む。他の例は、純金属、合金、金属酸化物、金属水酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属ケイ化物、炭素、軟磁性合金、及びフェライトを含む群から選択される1種類以上の粉末及び/又は繊維を含む。純金属の例は、ビスマス、鉛、錫、アンチモン、インジウム、カドミウム、亜鉛、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、鉄、金属ケイ素等である。合金の例は、ビスマス、鉛、スズ、アンチモン、インジウム、カドミウム、亜鉛、銀、アルミニウム、鉄、金属ケイ素を含む群から選ばれた2種以上の金属からなる合金である。金属酸化物の例は、アルミナ、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化クロム、又は酸化チタンである。金属水酸化物の例は、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化バリウム、又は水酸化カルシウムである。金属窒化物の例は、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、又は窒化ケイ素である。金属炭化物の例は、炭化ホウ素、炭化ケイ素、及び炭化チタンを含む。金属シリサイドの例は、チタンシリサイド、タングステンシリサイド、ジルコニウムシリサイド、タンタルシリサイド、マグネシウムシリサイド、ニオブシリサイド、クロムシリサイド及びモリブデンシリサイドを含む。炭素の例は、非晶質カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、ダイヤモンド、グラファイト、フラーレン、及び活性炭を含む。好ましい実施形態において、熱伝導性充填剤E2は、銀粉、グラファイト、酸化アルミニウム粉、酸化亜鉛粉、アルミニウム粉、窒化アルミニウム粉、及びこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0084】
導電性充填剤E3の例は、限定されるものではないが、カーボンブラック、グラファイト、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、銀及び/又は塩化銀でコートされた構造、例えばナノワイヤ、金属繊維、金属ナノ粒子、金属マイクロプレート、ガラス及び/又はシリカ微粒子、導電材料でコートされたマイクロプレート及び/又はビーズ、並びに他の任意の適切な充填剤、添加剤、調整剤及び/又はそれらの組み合わせである。粒子状及び微粒子状の導電材料は硬化シリコーンに導電性を生じさせ、その例は、金、銅、銀、ニッケル等の粉末及び微粉末、並びに前述の金属の少なくとも1種を含む合金;そして、セラミック、ガラス、石英、有機樹脂等の表面上に、金、銀、ニッケル、銅、及びそれらの合金等の金属を真空蒸着又はめっきして作製した粉末及び微粉末。上記説明に適切な充填剤の例は、銀、銀めっきアルミニウム、銀めっき銅、銀めっき固体、銀めっきセラミック、銀めっきニッケル、ニッケル、ニッケルめっき黒鉛、カーボン等である。
【0085】
中空ガラスビーズE4は、本発明による組成物に添加してもよく、硬化させるとシリコーンシンタクチックフォームになり、フォームの密度を下げることができるようになる。「シリコーンシンタクチックフォーム」とは、硬化シリコーンエラストマーからなるマトリックスであって、その中に中空ガラスビーズが分散しているものを意味する。中空ガラスビーズ、特に中空ガラス微小球は、優れた等方性圧縮強度を有することに加え、高圧縮強度シンタクティックフォームの製造に有用なあらゆる充填剤の中で最も低い密度を有するので、この目的によく適合している。高い圧縮強度と低密度の組み合わせにより、中空ガラス微小球は、本発明による多くの利点を持つ充填剤となる。一実施形態によれば、中空ガラスビーズは、ガラスバブル又はガラスマイクロバブルとしても知られている中空ホウケイ酸ガラス微小球である。別の実施形態によれば、中空ホウケイ酸ガラス微小球は、0.10グラム/立方センチメートル(g/cc)~0.65グラム/立方センチメートル(g/cc)の範囲の真密度を有する。用語「真密度」は、ガスピクノメーターで測定して、ガラスバブルのサンプルの質量を、その質量のガラスバブルの真体積で割ることによって得られる度合いである。「真体積」とは、ガラスバブル集合体の総体積のことであり、かさ体積ではない。
【0086】
好ましい実施形態によれば、本発明による物品の硬化シリコーンエラストマーZは、中空ガラスビーズE4を含むシリコーンシンタクチックフォームである。
【0087】
別の実施形態によれば、中空ガラスビーズE4の量は、シリコーンシンタクチックフォーム中又は後述する前記シリコーンシンタクチックフォームの液体架橋性シリコーン組成物の前駆体中、最大50体積%添加され、最も好ましくはシリコーンシンタクチックフォーム又は前記シリコーンシンタクチックフォームの液体硬化性シリコーン組成物前駆体の5~50体積%の間である。
【0088】
好ましい実施形態によれば、中空ガラスビーズE4は、3M社から販売される、3M(商標)Glass Bubbles Floated Series(A16/500、G18、A20/1000、H20/1000、D32/4500及びH50/10,000EPXガラスバブル製品)及び3M(商標)Glass Bubbles Series(例えば、限定されないが、K1、K15、S15、S22、K20、K25、S32、S35、K37、XLD3000、S38、S38HS、S38XHS、K46、K42HS、S42XHS、S60、S60HS、iM16K、iM30Kガラスバブル製品)から選択される。前記ガラスバブルは、1.72メガパスカル(250psi)から186.15メガパスカル(27,000psi)の範囲の種々の圧壊強度(最初の複数のガラスバブルの10体積%が圧壊)を示す。3M(商標)Glass Bubbles-Floated Series、3M(商標)Glass Bubbles-HGS Series及び表面処理を伴う3M(商標)Glass Bubbles等の3Mによって販売されている他のガラスバブルも、本発明に従って使用することができる。
【0089】
好ましい実施形態によれば、前記中空ガラスビーズE4は、最初の複数のガラスバブルの10体積%が圧壊される、1.72メガパスカル(250psi)~186.15メガパスカル(27,000psi)の範囲の圧壊強度を示すものから選択される。
【0090】
最も好ましい実施形態によれば、中空ガラスビーズは、3M(商標)Glass Bubbles Series、S15、K1、K25、iM16K、S32及びXLD3000から選択される。
【0091】
いくつかの実施形態において、硬化速度調整剤Fは、架橋抑制剤F1及び/又は架橋遅延剤F2である。いくつかの実施形態において、硬化速度調整剤Fは、0.001~5重量部、0.005~2重量部、又は0.01~0.5重量部の量である。
【0092】
いくつかの実施形態では、2液硬化性液体シリコーン組成物は、成分(複数可)をさらに含む。
(G)少なくとも1種の増粘剤G1又は少なくとも1種のレオロジー調整剤G2 0~2重量部及び/又は、
(H)少なくとも1種の添加剤H 0~10部
【0093】
いくつかの実施形態では、成分(G)及び(H)は、本発明の2液硬化性液体シリコーン組成物にない。
【0094】
本発明のシリコーンエラストマーは、少なくとも1種の硬化速度調整剤Fを含んでもよく、硬化速度調整剤Fは、例えば、架橋抑制剤F1及び/又は架橋遅延剤F2であってもよい。
【0095】
また、架橋抑制剤もよく知られている。硬化速度調整剤Fとして使用することができる架橋抑制剤F1の例としては、以下を含んでもよい:
・ポリオルガノシロキサン、有利には環状で少なくとも1個のアルケニル基で置換されたもの、特に好ましくはテトラメチルビニルテトラシロキサン、
・ピリジン、
・ホスフィン及び有機亜リン酸エステル、
・不飽和アミド、
・アルキル化マレイン酸塩、又は
・アセチレン系アルコール。
【0096】
これらのアセチレン系アルコール(FR-B-1 528 464及びFR-A-2 372 874参照)は、ヒドロシリル化反応の好ましい熱ブロッカーの一部を形成し、以下の式を有する:
R-C(R’)(OH)-C≡CH
式中、
-Rは、直鎖若しくは分岐アルキルラジカル、又はフェニルラジカルである、
-R’は、H又は直鎖若しくは分岐アルキルラジカル、又はフェニルラジカルである、
-ラジカルR、R’及び三重結合のα位に位置する炭素原子は、環を形成することができ;R及びR’に含まれる炭素原子の総数は少なくとも5であり、好ましくは9~20である。
【0097】
前記アルコールは、好ましくは、約250℃の沸点を有するものから選択される。例として、以下を挙げることができる:
・エチニル-1-シクロヘキサノール(ECH);
・メチル-3ドデシン-1オール-3;
・トリメチル-3,7,11ドデシン-1オール-3;
・ジフェニル-1,1プロピン-2オール-1
・エチル-3エチル-6ノニンオール-3;
・メチル-3ペンタデシン-1オール-3。
【0098】
これらのα-アセチレン系アルコールは市販品である。かかる調整剤は、オルガノポリシロキサンA、CE、及びXLの総重量に基づいて最大2,000ppm、好ましくは20~50ppmの量である。
【0099】
硬化速度調整剤Fとして使用できる架橋遅延剤F2の例としては、架橋反応を制御し、シリコーン組成物のポットライフを延長するためのいわゆる抑制剤を含む。硬化速度調整剤Fとして使用できる有利な架橋遅延剤F2の例としては、例えば、ビニルシロキサン、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、又はテトラビニル-テトラメチル-テトラシクロシロキサンが含まれる。他の既知の抑制剤、例えばエチニルシクロヘキサノール、3-メチルブチノール、又はマレイン酸ジメチルを使用することも可能である。
【0100】
本発明の硬化性液体シリコーン組成物はまた、以下の任意成分の1種以上、少なくとも1種の増粘剤G1又は少なくとも1種のレオロジー調整剤G2、及び/又は本発明の分野で通常使用される少なくとも1種の添加剤Hを含んでもよい。
【0101】
レオロジー調整剤G2は、レオロジー特性を改善し、成形品のより高い流動性及び滑らかな表面を提供することができる。このようなレオロジー調整剤G2は、PTFE粉末、酸化ホウ素誘導体、脂肪酸脂肪アルコール誘導体又は誘導体のような流動添加剤、エステル及びその塩、又はフルオロアルキル界面活性剤であり得る。
【0102】
使用できる添加剤Hの例には、有機染料又は顔料、熱安定性、熱風に対する耐性、復帰、高温での微量の酸又は水の攻撃下での解重合を改善するためにシリコーンエラストマーに導入された安定剤が含まれる。反応性アルケニル又はSiH基を含まない、可塑剤、放出油、又はポリジメチルシロキサン油等の疎水化油。脂肪酸誘導体や脂肪族アルコール誘導体、フルオロアルキル等の離型剤。ヒドロキシル化シリコーンオイル等の相溶化剤。有機シラン等の接着促進剤及び接着調整剤。
【0103】
2液系の第1の液体組成物と第2の液体組成物を混合すると、硬化性液体シリコーン組成物は、任意の適切な方法によって任意の適切な温度で硬化され得る。例えば、2液系の第1の液体組成物及び第2の液体組成物は、室温(約20~25℃)又はより高い温度で硬化させることができる。いくつかの実施形態において、2液系の第1の液体組成物及び第2の液体組成物は、50℃以上、80℃以上、100℃以上、120℃以上、150℃以上で硬化することができる。いくつかの実施形態では、第1の液体組成物及び第2の液体組成物は、混合後、室温で硬化する。
【0104】
第1の液体組成物と第2の液体組成物との間の硬化反応は、本発明による適切な硬化シリコーンエラストマーを得るために必要な任意の長さの時間で進行し得る。当業者は、反応の長さが他の変数の中でも特に反応温度に応じて変化し得ることを直ちに理解するであろう。いくつかの実施形態において、第1の液体組成物及び第2の液体組成物は室温で約1日間硬化される。他の実施形態において、第1の液体組成物及び第2の液体組成物は≧100℃で約10分間硬化される。
【0105】
好ましい実施形態では、本発明による硬化性シリコーン組成物Xの成分は、25℃における前記組成物の粘度が10,000mPa・s以下、好ましくは25℃で約500mPa・s~約10,000mPa・s、更に好ましくは25℃で1000mPa・s~約8,000mPa・sであるものが選択される。
【0106】
本発明の別の目的は、以下のステップを含むリサイクル方法に関する:
a)本発明及び先述した物品を供給するステップ、
b)支持体Sから硬化シリコーンエラストマーZを剥離するステップ、その後、
c)物品をリサイクルする又はリユースするステップ。
【0107】
本発明の硬化シリコーンエラストマーZは、各種支持体への接着性を有し、綺麗に剥離可能な特性及び、界面破壊性を有して剥離可能な材料であるため、人の力で容易に綺麗に剥離することができる。したがって、本発明のリサイクル方法を適用すれば、修繕作業(リユース)やリサイクル(「リユースの前処理」)を容易に行うことができる。硬化シリコーンエラストマーZの剥離力は3N~23Nであり、人が自身の力で剥離できる範囲である。
【0108】
本発明によるリサイクル方法は、大規模なOEMsに対する新たな必要性に適応した応答であり、多くのデバイスの主要なコンポーネントを回収するためのリワーク機能又はプロセスのいずれかを有する。
【0109】
本発明によるリサイクル方法の好ましい実施形態では、物品は、プリント回路基板(PCB)、電子デバイス、二次電池パック又は太陽光発電パネルである。
【0110】
好ましい実施形態では、本発明は、物品が、本発明による上述の中空ガラスビーズE4を含むシリコーンシンタクチックフォームである硬化シリコーンエラストマーZと接触した支持体Sを含む二次電池パックであるリサイクル方法に関する。
【0111】
好ましい実施形態では、本発明は、以下のステップを含むリサイクル方法に関する:
a)本発明及び先述した中空ガラスビーズE4を含むシリコーンシンタクチックフォームである硬化シリコーンエラストマーZと接触した支持体Sを含む二次電池パックである物品を供給するステップ、
b)支持体Sから硬化シリコーンエラストマーZを剥離するステップ、その後、
c)二次電池パックを固定エネルギー貯蔵用にリユースするステップ。
【0112】
本発明に記載されているリサイクル方法は、特許出願公開US2018223070号に記載されているように、熱暴走の伝播を最小限に抑えることが見出されている二次電池パックを断熱するための本発明によるシリコーンシンタクチックフォームの使用から大いに利益を得る。実際、一般的なEVリチウムイオン電池パックの最初の寿命は約250,000kmであるが、急速充電では必要な充電電流が高くなるため、電池の劣化が加速する。自動車用電池パックが初期容量の15%から20%を失うと、電池の容量が低下すると車両の加速、航続距離、及び再生能力に影響を与えるため、けん引力に適さなくなる。例えばスマートグリッドの一部として、負荷平準化、家庭用又は商用電力用のエネルギー貯蔵システム(ESS)を提供するため、自動車のライフサイクルの終わりに電池を定置型エネルギー貯蔵用にリユースする可能性は、循環経済に向けた重要なステップである。ライフサイクルの温室効果ガス排出量に対する電池のリユースの潜在的な影響と、初回及び2回目の使用における電池のエネルギー使用も、本発明によるリサイクル方法の使用に関連する重要な利点である。
【0113】
本発明によるリサイクル方法を使用することにより、本発明によるシリコーンシンタクチックフォームは、電池パックから容易かつ綺麗に剥離することができ、電池を回収し、試験インフラを通じて、元の容量の80~85%をリユースする目的に、その他をリサイクル目的に選択して、コバルト、リチウム、銅、黒鉛、ニッケル、アルミニウム、マンガン等の主要原材料を回収することができる。
【0114】
本発明によるリサイクル方法は、単結晶シリコンセル(mono-Si)及び多結晶シリコンセル(multi-Si)等の太陽光発電パネルにも適している。
【0115】
本発明によって提供される他の利点は、以下の例示的な実施例から明らかになるであろう。
【実施例】
【0116】
シリコーン組成物の調製:
以下、実施例において、下記成分が使用される:
-成分A1:ケイ素に結合したアルケニル基を1分子当たり少なくとも2個有するアルケニル基含有オルガノポリシロキサンAの25℃における粘度=500mPa・s~650mPa・s(Mn=10250g/mol)の範囲のジメチルビニルシリル末端単位を有するポリジメチルシロキサン。
-成分A2:直鎖状α,ω-ビニルポリジメチルシロキサン(平均粘度20000mPa・s、Mn=49,000g/mol)。
-成分B:ジオルガノハイドロジェンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCE=α,ω-ハイドライドポリジメチルシロキサン(H-PDMS-H)(粘度7~10mPa・s;Mn=750g/mol)。
-成分C:両方の分子末端がジメチル基で部分的にキャップされた、ジメチルシロキサンとメチルハイドロジェンシロキサンのコポリマー(粘度28~32mPa・s;SiH6.4~8.2重量%(XL))。
-成分D:白金触媒溶液:白金金属を短鎖状α,ω-ビニルポリジメチルシロキサンオイルで希釈したもの(白金中の重量%=10)。
-成分E:現場で処理した親水性ヒュームドシリカ(AEROSIL(登録商標)300をヘキサメチルジシラザン処理)。
-成分E1:中空ガラス:3M(商標)Glass Bubbles SeriesK25、3M社から販売されているガラスバブル、粒径密度0.25g/cc、静水圧破砕強さ750psi。
-成分F:ECH(1-エチニル-1-シクロヘキサノール)。
成分E2:Martoxid(商標)-3310酸化アルミニウム粉末(Huberから販売された熱伝導性充填剤)。
-成分LSRベース:63.6重量%の成分A2+26.3重量%の親水性ヒュームドシリカ(AEROSIL(登録商標)300)、2.5重量%の水及び7.6重量%のヘキサメチルジシラザン(現場で処理された親水性ヒュームドシリカ)。
-成分LSRベース2:米国特許第8,927,627号の実施例1に従って調製されたもの(「LSRベースタイプの添加剤」について記載された調製)。
-配合物ESA-7244=Elkem Siliconesから販売されたBluesil(商標) ESA 7244A&Bは、液体2成分、重付加熱硬化シリコーンエラストマーである;比:RHalk=1.24;この配合物では、ジオルガノハイドロジェンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCE鎖延長剤がない;したがって、比:RHCE(%)=0。
-配合物ESA-7242=Elkem Siliconesから販売されたBluesil(商標) ESA 7242A&Bは、液体2成分、重付加熱硬化シリコーンエラストマーである;比:RHalk=1.19;この配合物では、ジオルガノハイドロジェンシロキシ末端ポリジオルガノシロキサンCE鎖延長剤がない;そして、比はRHCE(%)=0。
-配合物ESA-6009=Elkem Siliconesから販売されたBluesil(商標) ESA 6009A&Bは、液体2成分、重付加熱硬化性シリコーンゲルである;比:RHalk=0.64;比:RHCE(%)=34。
支持体S:単に無処理ガラス繊維で構成されるプリント基板回路(PCB)
【0117】
配合物調製の手順:
partA及びpartBを1:1の重量比で混合し、以下に示す配合物を調製した。次に、得られた混合物を支持体S(PCB)上に1mm厚でそれぞれ塗布し、支持体S上に120℃で15分間硬化させ、12時間放置して冷却した。得られた硬化エラストマーでコートされた支持体Sを、ナイフカッターで幅25.4mm(1インチ)になるように切断し、合計4枚を剥離することができるようにした。各ストリップを締め付け、周囲温度で304.8mm/min(12インチ/min)の速度で引っ張り、それらを平均した力を記録した。この試験から、定量的な結果を記録し、材料が弱すぎた場合、目視で引裂を確認した。
【0118】
-引張、弾性率、及び破断伸びには、試験片の寸法がASTM D-412 Die Cの標準ASTM D-412方法を使用した。ASTM D-624 Die Aを引裂試験に使用した。ASTM D-2240を硬さ試験に使用した。
【0119】
剥離試験:ASTM D-903を参考に、剥離に使用した支持体、接着線の厚み(銅シムを使用)及び剥離力率を変更した。
【0120】
試験した各組成物のPart-AとPart-Bを重量比1:1で混合し、PCB板上に1mm厚でコーティングし、120℃で15分間硬化させ、12時間放置して冷却した後、機械的特性を測定した。
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
次に、本発明によるシリコーンエラストマーに硬化組成物でコートされた支持体Sを含む物品は、PCB支持体に対して良好な接着性を示し、該組成物を手で剥離したときに良好な接着性を示した。該組成物は綺麗に剥離可能な特性及び界面破壊特性を有して容易に剥離することができ、人の力で簡単に綺麗に剥離できることが立証された。これにより、支持体の表面の洗浄が不要となるため、修繕やリユースの目的を効率的に達成することができる。さらに、本発明による硬化シリコーンエラストマーZの剥離力は、いずれも、人が自身の力で剥離可能な範囲内である。
【0125】
【0126】
このシリコーンシンタクチックフォームは、PCB支持体に対して良好な接着を示し、人本来の力で剥離すると、綺麗に剥離する界面破壊を有し容易に剥離することができた。これにより、支持体の表面の洗浄を必要としないため、修繕やリユースの目的を効率的に達成することができる。さらに、本発明による硬化シリコーンエラストマーZの剥離力は、いずれも、人が自身の力で剥離可能な範囲内である。
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
支持体Sにコートされた本発明によるシリコーンエラストマーは、かかるPCB支持体に対して良好な接着性を示し、手で剥離すると、綺麗に剥離可能な特性を有して容易に剥離することができ、界面破壊特性は、人の力によって容易に綺麗に剥離することができることを実証された。これにより、基板表面の洗浄を必要としないため、修繕やリユースの目的を効率的に行うことができた。さらに、試験支持体にコートされた硬化シリコーンエラストマーZの剥離力の測定値は、いずれも人が自分の能力で剥離可能な範囲(1.5N~23N)内であった。さらに、本発明によるシリコーンエラストマーは、いずれも剥離後、支持体上にシリコーンエラストマーの残留物を生じさせなかった。