(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】VI-E型及びVI-F型CRISPR-Casシステム並びにそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20240104BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240104BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240104BHJP
C12N 9/22 20060101ALI20240104BHJP
C12N 15/55 20060101ALI20240104BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240104BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240104BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20240104BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20240104BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240104BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240104BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C07K19/00 ZNA
C12N5/10
C12N9/22
C12N15/55
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N15/85 Z
A61K31/7105
A61K48/00
A61P31/00
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2022552249
(86)(22)【出願日】2020-02-28
(86)【国際出願番号】 CN2020077211
(87)【国際公開番号】W WO2021168799
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-02-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522341562
【氏名又は名称】ヒュイダジェネ・セラピューティックス・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ヒュイ
(72)【発明者】
【氏名】シェイ,チュンロン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,インシ
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,チンチュエン
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/028555(WO,A2)
【文献】国際公開第2018/170333(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
SwissProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)標的RNAにハイブリダイズすることができるスペーサー配列、及び前記スペーサー配列に対して3’側にダイレクトリピート(DR)配列を含むRNAガイド配列;並びに
(2)a)配列番号2のアミノ酸配列;又は、
b)配列番号2のアミノ酸配列に少なくとも90%同一のアミノ酸配列、
有するCRISPR関連タンパク質(Cas)、
を含む、クラスター化規則的間隔短パリンドロームリピート(CRISPR)-Cas複合体であって;
ここにおいて、前記CRISPR関連タンパク質(Cas)は、(i)前記RNAガイド配列に結合すること、且つ(ii)前記標的RNAを標的とすること、ができるが、
前記スペーサー配列は、前記複合体が配列番号2の前記Casアミノ酸配列を含む場合に、天然に存在するバクテリオファージ核酸と100%相補的でないことを条件とする、
前記CRISPR-Cas複合体。
【請求項2】
前記DR配列は、配列番号9の相補的配列によってコードされるDR配列の二次構造と実質的に同じ二次構造を有する、請求項1に記載のCRISPR-Cas複合体。
【請求項3】
前記DR配列は、配列番号9の相補的配列によってコードされている、請求項1に記載のCRISPR-Cas複合体。
【請求項4】
前記標的RNAは、真核生物DNAによってコードされている、請求項1に記載のCRISPR-Cas複合体。
【請求項5】
前記真核生物DNAは、非ヒト哺乳動物DNA、非ヒト霊長類DNA、ヒトDNA、植物DNA、昆虫DNA、鳥類DNA、爬虫類DNA、齧歯類DNA、魚類DNA、蠕虫/線虫DNA、又は酵母DNAである、請求項4に記載のCRISPR-Cas複合体。
【請求項6】
前記標的RNAはmRNAである、請求項1に記載のCRISPR-Cas複合体。
【請求項7】
前記スペーサー配列は、15~60ヌクレオチド、25~50ヌクレオチド、又は約30ヌクレオチドである、請求項1に記載のCRISPR-Cas複合体。
【請求項8】
前記スペーサー配列は、前記標的RNAと90~100%相補的である、請求項1に記載のCRISPR-Cas複合体。
【請求項9】
前記配列番号2のアミノ酸配列に少なくとも90%同一のアミノ酸配列は、配列番号2の1つ以上の残基の保存的アミノ酸置換を含む、請求項1に記載のCRISPR-Cas複合体。
【請求項10】
前記配列番号2のアミノ酸配列に少なくとも90%同一のアミノ酸配列は、保存的アミノ酸置換のみを含む、請求項9に記載のCRISPR-Cas複合体。
【請求項11】
前記配列番号2のアミノ酸配列に少なくとも90%同一のアミノ酸配列は、HEPNドメイン又はRXXXXHモチーフ内に、配列番号2の野生型Casと同一の配列を有する、請求項1に記載のCRISPR-Cas複合体。
【請求項12】
前記配列番号2のアミノ酸配列に少なくとも90%同一のアミノ酸配列は、前記RNAガイド配列が前記標的RNAにハイブリダイズする場合、前記RNAガイド配列に結合することができ、そして、
前記配列番号2のアミノ酸配列に少なくとも90%同一のアミノ酸配列は、前記CasのRNase触媒部位内の変異に起因して、RNase触媒活性を有していない、
請求項1に記載のCRISPR-Cas複合体。
【請求項13】
前記配列番号2のアミノ酸配列に少なくとも90%同一のアミノ酸配列は、RNAメチルトランスフェラーゼ、RNAデメチラーゼ、RNAスプライシング修飾子、局在化因子、又は翻訳修飾因子に融合している、請求項12に記載のCRISPR-Cas複合体。
【請求項14】
前記CRISPR関連タンパク質(Cas)は、核局在化シグナル(NLS)配列又は核外搬出シグナル(NES)に融合している、請求項1に記載のCRISPR-Cas複合体。
【請求項15】
前記標的RNAの標的化は、前記標的RNAの修飾をもたらす、請求項1に記載のCRISPR-Cas複合体。
【請求項16】
前記標的RNAの前記修飾は、前記標的RNAの切断である、請求項15に記載のCRISPR-Cas複合体。
【請求項17】
前記スペーサー配列にハイブリダイズすることができる配列を含む標的RNAをさらに含む、請求項1に記載のCRISPR-Cas複合体。
【請求項18】
(1)a)配列番号2のアミノ酸配列;又は、
b)配列番号2のアミノ酸配列に少なくとも90%同一のアミノ酸配列、
有するCRISPR関連タンパク質(Cas)、
ここにおいて、前記CRISPR関連タンパク質(Cas)は、(i
)RNAガイド配列に結合すること、且つ(ii)
標的RNAを標的とすること、ができる、
及び
(2)異種機能ドメイン
を含む、融合タンパク質。
【請求項19】
前記異種機能ドメインは:核局在化シグナル(NLS)、リポータータンパク質若しくは検出標識、局在化シグナル、タンパク質標的化部分、DNA結合ドメイン、エピトープタグ、転写活性化ドメイン、転写阻害ドメイン、ヌクレアーゼ、脱アミノ化ドメイン、メチラーゼ、デメチラーゼ、転写放出因子、HDAC、ssRNA切断活性を有するポリペプチド、dsRNA切断活性を有するポリペプチド、ssDNA切断活性を有するポリペプチド、dsDNA切断活性を有するポリペプチド、DNAリガーゼ若しくはRNAリガーゼ、又はそれらのあらゆる組合せを含む、請求項18に記載の融合タンパク質。
【請求項20】
標的RNAを修飾する
インビトロまたはエクスビボの方法であって、
前記標的RNAを、請求項1に記載のCRISPR-Cas複合体と接触させることを含み、前記スペーサー配列は、前記標的RNAの少なくとも15ヌクレオチドと相補的であり;
ここにおいて、前記CRISPR関連タンパク質(Cas)は、前記RNAガイド配列と結合して、前記複合体を形成し;前記複合体は、前記標的RNAに結合し;
前記標的RNAへの前記複合体の結合により、前記CRISPR関連タンパク質(Cas)は、前記標的RNAを修飾する、
前記方法。
【請求項21】
前記標的RNAは、前記配列番号2のアミノ酸配列に少なくとも90%同一のアミノ酸配列に融合している二本鎖RNA特異的アデノシンデアミナーゼによる脱アミノ化によって修飾される、請求項20に記載の
インビトロまたはエクスビボの方法。
【請求項22】
前記標的RNAは、mRNA、tRNA、rRNA、非コードRNA、lncRNA、又は核RNAである、請求項20に記載の
インビトロまたはエクスビボの方法。
【請求項23】
クラスター化規則的間隔短パリンドロームリピート(CRISPR)-Cas複合体を含む単離された真核細胞であって、
前記CRISPR-Cas複合体は:
(1)標的RNAにハイブリダイズすることができるスペーサー配列、及び前記スペーサー配列に対して3’側にダイレクトリピート(DR)配列を含むRNAガイド配列;並びに
(2)a)配列番号2のアミノ酸配列;又は、
b)配列番号2のアミノ酸配列に少なくとも90%同一のアミノ酸配列、
有するCRISPR関連タンパク質(Cas)、
を含み、
ここにおいて、前記CRISPR関連タンパク質(Cas)は、(i)前記RNAガイド配列に結合すること、且つ(ii)前記標的RNAを標的とすること、ができる、
前記真核細胞。
【請求項24】
容体または疾患の処置が必要な対象において容体又は疾患を処置する方法において使用される、請求項1に記載のCRISPR-Cas複合体を含む組成物であって、
ここにおいて、前記方法は、標的RNAを修飾することを含み、前記修飾は、前記標的RNAを、前記CRISPR-Cas複合体と接触させることを含み、
前記スペーサー配列は、前記標的RNAの少なくとも15ヌクレオチドと相補的であり;
ここにおいて、前記CRISPR関連タンパク質(Cas)は、前記RNAガイド配列と結合して、前記複合体を形成し;
前記複合体は、前記標的RNAに結合し;そして。
前記標的RNAへの前記複合体の結合により、前記CRISPR関連タンパク質(Cas)は、前記標的RNAを修飾する、
前記組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
CRISPR(クラスター化規則的間隔短パリンドロームリピート(clustered regularly interspaced short palindromic repeats))は、原核生物、例えば細菌及び古細菌のゲノム内に見出されるDNA配列のファミリーである。当該配列は、以前に原核生物に感染したバクテリオファージのDNA断片に由来することが理解されており、そして原核生物への以降の感染の間に、類似のバクテリオファージ由来のDNAを検出且つ破壊するのに用いられる。
【0002】
CRISPR関連システムは、一セットの相同遺伝子、又はCas遺伝子であり、それらの一部は、ヘリカーゼ及びヌクレアーゼ活性を有するCasタンパク質をコードする。Casタンパク質は、CRISPR配列(crRNA)由来のRNAをガイド配列として利用して、crRNAと相補的であるポリヌクレオチド(例えばDNA)の特定の鎖を認識して切断する酵素である。
【0003】
合わせて、CRISPR-Casシステムは、外来の病原性遺伝的要素、例えば、染色体外DNA(例えばプラスミド)及びバクテリオファージ、又は外来DNAによってコードされる外来RNA内に存在する遺伝的要素に対する耐性又は獲得免疫を付与する原始的な原核生物の「免疫系」を構成する。
【0004】
本来、CRISPR/Casシステムは、外来の遺伝的物質に対する広範囲にわたる原核生物防御機構であるようであり、配列決定された細菌ゲノムのおおよそ50%、及び配列決定された古細菌のほぼ90%において見出される。この原核生物システムは、それ以来、基礎生物学的調査、バイオテクノロジー製品の開発、及び疾患処置が挙げられる多種多様な用途において、ヒトが挙げられる多数の真核生物における広範囲にわたる使用を見出したCRISPR-Casとして知られている技術の基礎を形成するために開発されてきた。
【0005】
原核生物CRISPR-Casシステムは、タンパク質エフェクター、非コードエレメント、及び遺伝子座アーキテクチャの極めて多様な群を含んでおり、それらの一部の例が、重要なバイオテクノロジーをもたらすように操作且つ構成されている。
【0006】
CRISPR遺伝子座構造は、多くのシステムにおいて研究されてきた。当該システムにおいて、ゲノムDNA内のCRISPRアレイは典型的に、AT-リッチリーダー配列に続く、固有のスペーサー配列によって分離された短いDR配列を含む。このCRISPR DR配列は典型的に、28~37bpのサイズに及ぶが、範囲は23~55bpであり得る。DR配列には、ダイアド対称性を示すものがあり、RNAにおけるステム-ループ(「ヘアピン」)等の二次構造の形成を意味している。一方、構造化されないものもあるようである。様々なCRISPRアレイ内のスペーサーのサイズは典型的に、32~38bp(21~72bpの範囲)である。通常、CRISPRアレイ内に、50単位未満のリピート-スペーサー配列が存在する。
【0007】
cas遺伝子の小さなクラスターが、多くの場合、そのようなCRISPRリピート-スペーサーアレイの隣に見出される。これまで、同定された93個のcas遺伝子が、コードされるタンパク質の配列類似性に基づいて、35個のファミリーに分類されている。35個のファミリーのうち11個が、いわゆるcasコアを形成し、これは、タンパク質ファミリーCas1~Cas9を含む。完全CRISPR-Cas遺伝子座は、casコアに属する少なくとも1つの遺伝子を有する。
【0008】
CRISPR-Casシステムは、大まかには2つのクラスに分けることができる-クラス1システムは、複数のCasタンパク質の複合体を用いて、外来の核酸を分解する一方、クラス2システムは、同じ目的のために単一の大きなCasタンパク質を用いる。クラス2システムの単一サブユニットエフェクター組成物は、工学及びアプリケーション翻訳(application translation)に、より単純なコンポーネントセットを提供するので、これまでのところ、ゲノム工学のための、そしてそれ以上の新規の強力なプログラム可能技術の発見、工学、及び最適化の重要な源となってきた。
【0009】
クラス1システムはさらに、I型、III型、及びIV型に分けられる;クラス2システムは、II型、V型、及びVI型に分けられる。これらの6つのシステム型は加えて、19個のサブタイプに分けられる。また、分類は、存在するcas遺伝子の相補体に基づく。ほとんどのCRISPR-Casシステムは、Cas1タンパク質を有する。多くの原核生物は、複数のCRISPR-Casシステムを含有する。このことは、複数のCRISPR-Casシステムが和合性であり、且つ構成要素を共有し得ることを示唆している。
【0010】
第1の最も良く特徴付けられたCasタンパク質の1つ、Cas9は、クラス2、II型の典型的なメンバーであり、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)に由来する(SpCas9)。Cas9は、標的DNA配列及び別個のトランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)を補完する低crRNA分子によって活性化されるDNAエンドヌクレアーゼである。crRNAは、crRNAに結合するタンパク質を担うダイレクトリピート(DR)配列、及びスペーサー配列からなり、これらの配列は、所望されるあらゆる核酸標的配列と相補的であるように操作され得る。このように、CRISPRシステムは、crRNAのスペーサー配列を修飾することによって、DNA標的又はRNA標的を標的とするようにプログラムすることができる。crRNA及びtracrRNAは、より良好な実用的有用性のために、単一のガイドRNA(sgRNA)を形成するように融合されてきた。Cas9と組み合わされる場合、sgRNAは、その標的DNAとハイブリダイズして、Cas9をガイドして、標的DNAを切断する。また、S.サーモフィルス(S.thermophilus)CRISPRシステム由来のCas9が挙げられる、他の種由来の他のCas9エフェクタータンパク質が同定されており、同様に用いられている。これらのCRISPR/Cas9システムは、パン酵母(出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae))、日和見主義的な病原体カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、ゼブラフィッシュ(Danio rerio)、ミバエ(キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster))、アリ(インドクワガタアリ(Harpegnathos saltator)及びクビレハリアリ(Ooceraea biroi))、カ(ネッタイシマカ(Aedes aegypti))、線虫(Caenorhabditis elegans)、植物、マウス、サル、及びヒト胚が挙げられる多数の真核生物において、広く用いられている。
【0011】
別の最近特徴付けられたCasエフェクタータンパク質は、Cas12a(以前はCpf1として知られていた)である。Cas12aは、C2c1及びC2c3と共に、HNHヌクレアーゼを欠いているが、RuvCヌクレアーゼ活性を有するクラス2、V型Casタンパク質に属するメンバーである。Cas12aは、細菌フランシセラ・ノビシダ(Francisella novicida)のCRISPR/Cpf1システムにおいて最初に特徴付けられた。その原名は、プレボテラ(Prevotella)属及びフランシセラ(Francisella)属系統におけるそのCRISPR-Casサブタイプの保有率(prevalence)を反映している。Cas12aは、Cas9とのいくつかの主要な差異を示した:Cas9によってもたらされる「ブラント」カットとは対照的に、二本鎖DNA内の「スタガー」カットを引き起こすこと、「Tリッチ」PAM配列(Cas9に代替の標的化部位を提供する)をあてにすること、及び標的化の成功に、CRISPR RNA(crRNA)のみを必要とし、tracrRNAを必要としないことが挙げられる。Cas12aの低分子crRNAは、多重ゲノム編集について、Cas9よりも十分に適している。というのも、Cas9のsgRNAよりも多く、1つのベクター内にパッケージされ得るからである。さらに、Cas12aによって残された粘着性の5’突出部が、従来の制限酵素クローニングよりもずっと標的特異的であるDNAアセンブリに用いられ得る。最後に、Cas12aは、そのPAM部位から18~23塩基対下流側でDNAを切断する。これは、NHEJシステムによる二本鎖切断(DSB)の作出後のDNA修復の後に、ヌクレアーゼ認識配列に中断がないことで、Cas12aは、Cas9切断後の可能性がある1ラウンドとは対照的に、DNA切断の複数のラウンドを可能にすることを意味する。なぜなら、Cas9切断配列は、PAM部位の上流側に3塩基対しかなくて、NHEJ経路は典型的に、認識配列を破壊するインデル変異が生じることによって、切断のさらなるラウンドを妨げるからである。理論的には、DNA切断の反復ラウンドは、起こることが所望されるゲノム編集の見込みの増大と関連する。
【0012】
より最近になって、Cas13(別名C2c2)、Cas13b、Cas13c、及びCas13dが挙げられるいくつかのクラス2、VI型Casタンパク質が同定された。各々は、RNAガイドRNaseである(すなわち、これらのCasタンパク質は、Cas9及びCas12aにおいて、crRNAを用いて、標的DNA配列ではなく標的RNA配列を認識する)。全体として、CRISPR/Cas13システムは、従来のRNAi及びCRISPRi技術と比較して、より高いRNA消化効率を達成することができる一方、RNAiと比較して、かなり少ないオフターゲット切断を同時に示す。
【0013】
これらの現在同定されているCas13タンパク質の一欠点が、それらの比較的大きなサイズである。Cas13a、Cas13b、及びCas13cは各々、1100を超えるアミノ酸残基を有する。ゆえに、とにかく可能なら、コード配列(約3.3kb)及びsgRNAを、必要とされるあらゆるプロモータ配列及び翻訳調節配列をプラスして、特定の小さな収容能力遺伝子治療ベクター、例えば、約4.7kbのパッケージ収容能力を有するアデノ随伴ウイルス(AAV)に基づく現在の最も有効且つ最も安全な遺伝子治療ベクター中にパッケージすることは、困難である。これまでで最も小さなCas13タンパク質であるCas13dのみが、約920個のアミノ酸(すなわち、約2.8kbのコード配列)を有しており、理論的にはAAVベクター中にパッケージすることができるが、dCas13d-ADAR2DD(約3.9kbのコード配列を有する)等の単一塩基の編集機能を有するCas13dベースの融合タンパク質を用いることを頼りにしている単一塩基の編集ベースの遺伝子治療に使用が制限されている。
【0014】
さらに、現在知られているCas13タンパク質/システムは全て、crRNAベースの標的配列認識による活性化直後に、非特異的/コラテラルRNase活性を有する。この活性は、Cas13a及びCas13bにおいて特に強く、そしてCas13dにおいてなお検出可能に存在する。この特性は、核酸検出方法に有利に用いられ得る一方、これらのCas13タンパク質の非特異的/コラテラルRNase活性は、遺伝子治療の使用にとって相当な潜在的危険を構成する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様は:(1)標的RNAにハイブリダイズすることができるスペーサー配列、及びスペーサー配列に対して3’側にダイレクトリピート(DR)配列を含むRNAガイド配列;並びに(2)配列番号1~7のいずれか1つのアミノ酸配列を有するCRISPR関連タンパク質(Cas)、又は前記Casの誘導体若しくは機能断片を含み;Cas、前記Casの誘導体及び機能断片は、(i)RNAガイド配列に結合すること、且つ(ii)標的RNAを標的とすることができるが、スペーサー配列は、複合体が配列番号1~7のいずれか1つのCasを含む場合に、天然に存在するバクテリオファージ核酸と100%相補的でないことを条件とし、又は標的RNAは、真核生物DNAによってコードされている、クラスター化規則的間隔短パリンドロームリピート(CRISPR)-Cas複合体を提供する。
【0016】
特定の実施形態において、DR配列は、配列番号8~14のいずれか1つの二次構造と実質的に同じ二次構造を有する。
【0017】
特定の実施形態において、DR配列は、配列番号8~14のいずれか1つによってコードされている。
【0018】
特定の実施形態において、標的RNAは、真核生物DNAによってコードされている。
【0019】
特定の実施形態において、真核生物DNAは、非ヒト哺乳動物DNA、非ヒト霊長類DNA、ヒトDNA、植物DNA、昆虫DNA、鳥類DNA、爬虫類DNA、齧歯類DNA、魚類DNA、蠕虫/線虫DNA、酵母DNAである。
【0020】
特定の実施形態において、標的RNAはmRNAである。
【0021】
特定の実施形態において、スペーサー配列は、15~55ヌクレオチド、25~35ヌクレオチド、又は約30ヌクレオチドである。
【0022】
特定の実施形態において、スペーサー配列は、標的RNAと90~100%相補的である。
【0023】
特定の実施形態において、誘導体は、配列番号1~7のいずれか1つの、1つ以上の残基の保存的アミノ酸置換を含む。
【0024】
特定の実施形態において、誘導体は、保存的アミノ酸置換のみを含む。
【0025】
特定の実施形態において、誘導体は、HEPNドメイン又はRXXXXHモチーフ内に、配列番号1~7のいずれか1つの野生型Casと同一の配列を有する。
【0026】
特定の実施形態において、誘導体は、標的RNAにハイブリダイズするRNAガイド配列に結合することができるが、CasのRNase触媒部位内の変異に起因して、RNase触媒活性を有していない。
【0027】
特定の実施形態において、誘導体は、210残基以下のN末端欠失及び/又は180残基以下のC末端欠失を有する。
【0028】
特定の実施形態において、誘導体は、約180残基のN末端欠失及び/又は約150残基のC末端欠失を有する。
【0029】
特定の実施形態において、誘導体はさらに、RNA塩基-編集ドメインを含む。
【0030】
特定の実施形態において、RNA塩基-編集ドメインは、アデノシンデアミナーゼ、例えば二本鎖RNA特異的アデノシンデアミナーゼ(例えば、ADAR1又はADAR2);アポリポタンパク質B mRNA編集酵素;catalytic polypeptide-like(APOBEC);又は活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)である。
【0031】
特定の実施形態において、ADARは、E488Q/T375G二重変異を有するか、又はADAR2DDである。
【0032】
特定の実施形態において、塩基-編集ドメインはさらに、RNA結合ドメイン、例えばMS2に融合する。
【0033】
特定の実施形態において、誘導体はさらに、RNAメチルトランスフェラーゼ、RNAデメチラーゼ、RNAスプライシング修飾子、局在化因子、又は翻訳修飾因子を含む。
【0034】
特定の実施形態において、Cas、誘導体、又は機能断片は、核局在化シグナル(NLS)配列又は核外搬出シグナル(NES)を含む。
【0035】
特定の実施形態において、標的RNAの標的化は、標的RNAの修飾をもたらす。
【0036】
特定の実施形態において、標的RNAの修飾は、標的RNAの切断である。
【0037】
特定の実施形態において、標的RNAの修飾は、アデノシン(A)の、イノシン(I)への脱アミノ化である。
【0038】
特定の実施形態において、本発明のCRISPR-Cas複合体はさらに、スペーサー配列にハイブリダイズすることができる配列を含む標的RNAを含む。
【0039】
本発明の別の態様は、(1)本発明のCas、その誘導体、又はその機能断片、及び(2)異種機能ドメインを含む融合タンパク質を提供する。
【0040】
特定の実施形態において、異種機能ドメインは:核局在化シグナル(NLS)、リポータータンパク質若しくは検出標識(例えば、GST、HRP、CAT、GFP、HcRed、DsRed、CFP、YFP、BFP)、局在化シグナル、タンパク質標的化部分、DNA結合ドメイン(例えば、MBP、Lex A DBD、Gal4 DBD)、エピトープタグ(例えば、His、myc、V5、FLAG、HA、VSV-G、Trxその他)、転写活性化ドメイン(例えば、VP64又はVPR)、転写阻害ドメイン(例えば、KRAB部分又はSID部分)、ヌクレアーゼ(例えばFokI)、脱アミノ化ドメイン(例えば、ADAR1、ADAR2、APOBEC、AID、又はTAD)、メチラーゼ、デメチラーゼ、転写放出因子、HDAC、ssRNA切断活性を有するポリペプチド、dsRNA切断活性を有するポリペプチド、ssDNA切断活性を有するポリペプチド、dsDNA切断活性を有するポリペプチド、DNA若しくはRNAリガーゼ、又はそれらのあらゆる組合せを含む。
【0041】
特定の実施形態において、異種機能ドメインは、融合タンパク質内で、N末端に、C末端に、又は内部に融合している。
【0042】
本発明の別の態様は、(2)異種機能部分にコンジュゲートした、(1)本発明のCas、その誘導体、又はその機能断片を含むコンジュゲートを提供する。
【0043】
特定の実施形態において、異種機能部分は:核局在化シグナル(NLS)、リポータータンパク質若しくは検出標識(例えば、GST、HRP、CAT、GFP、HcRed、DsRed、CFP、YFP、BFP)、局在化シグナル、タンパク質標的化部分、DNA結合ドメイン(例えば、MBP、Lex A DBD、Gal4 DBD)、エピトープタグ(例えば、His、myc、V5、FLAG、HA、VSV-G、Trxその他)、転写活性化ドメイン(例えば、VP64又はVPR)、転写阻害ドメイン(例えば、KRAB部分又はSID部分)、ヌクレアーゼ(例えばFokI)、脱アミノ化ドメイン(例えば、ADAR1、ADAR2、APOBEC、AID、又はTAD)、メチラーゼ、デメチラーゼ、転写放出因子、HDAC、ssRNA切断活性を有するポリペプチド、dsRNA切断活性を有するポリペプチド、ssDNA切断活性を有するポリペプチド、dsDNA切断活性を有するポリペプチド、DNA若しくはRNAリガーゼ、又はそれらのあらゆる組合せを含む。
【0044】
特定の実施形態において、異種機能部分は、Cas、その誘導体、又はその機能断片に対して、N末端に、C末端に、又は内部にコンジュゲートされている。
【0045】
本発明の別の態様は、配列番号1~7のいずれか1つをコードするポリヌクレオチド、又はその誘導体、若しくはその機能断片、若しくはその融合タンパク質を提供するが、ポリヌクレオチドは、配列番号15~21のいずれでもないことを条件とする。
【0046】
特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、細胞内での発現のためにコドン最適化されている。
【0047】
特定の実施形態において、細胞は真核細胞である。
【0048】
本発明の別の態様は、配列番号8~14のいずれか1つの誘導体を含む、天然に存在しないポリヌクレオチドを提供し、前記誘導体は、(i)配列番号8~14のいずれか1つと比較して、1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個)のヌクレオチドの付加、欠失、若しくは置換を有し;(ii)配列番号8~14のいずれか1つに対して、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、若しくは97%の配列同一性を有し;(iii)配列番号8~14のいずれか1つ、若しくは(i)及び(ii)のいずれかと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし;又は(iv)(i)~(iii)のいずれかの相補体であるが、誘導体は、配列番号8~14のいずれでもないこと、そして誘導体は、配列番号8~14によってコードされるRNAのいずれかと実質的に同じ二次構造を維持しているRNAをコードする(又はRNAである)ことを条件とする。
【0049】
特定の実施形態において、誘導体は、本発明のCas、その誘導体、又はその機能断片のいずれか1つのDR配列として機能する。
【0050】
本発明の別の態様は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0051】
特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、プロモータ、及び場合によってはエンハンサーに作動可能に連結されている。
【0052】
特定の実施形態において、プロモータは、構成的プロモータ、誘導性プロモータ、ユビキタスプロモータ、又は組織特異的プロモータである。
【0053】
特定の実施形態において、ベクターはプラスミドである。
【0054】
特定の実施形態において、ベクターは、レトロウイルスベクター、ファージベクター、アデノウイルスベクター、単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクター、AAVベクター、又はレンチウイルスベクターである。
【0055】
特定の実施形態において、AAVベクターは、血清型AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAVrh74、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、又はAAV13の組換えAAVベクターである。
【0056】
本発明の別の態様は、(1)送達ビヒクル、及び(2)本発明のCRISPR-Cas複合体、本発明の融合タンパク質、本発明のコンジュゲート、本発明のポリヌクレオチド、又は本発明のベクターを含む送達システムを提供する。
【0057】
特定の実施形態において、送達ビヒクルは、ナノ粒子、リポソーム、エキソソーム、微小胞、又は遺伝子銃である。
【0058】
本発明の別の態様は、本発明のCRISPR-Cas複合体、本発明の融合タンパク質、本発明のコンジュゲート、本発明のポリヌクレオチド、又は本発明のベクターを含む細胞又はその後代を提供する。
【0059】
特定の実施形態において、細胞又はその後代は、真核細胞(例えば、非ヒト哺乳動物細胞、ヒト細胞、又は植物細胞)、又は原核細胞(例えば細菌細胞)である。
【0060】
本発明の別の態様は、本発明の細胞を含む非ヒト多細胞真核生物を提供する。
【0061】
特定の実施形態において、非ヒト多細胞真核生物は、ヒト遺伝的障害のための動物(例えば、齧歯類又は霊長類)モデルである。
【0062】
本発明の別の態様は、標的RNAを修飾する方法を提供し、当該方法は、標的RNAを、本発明のCRISPR-Cas複合体と接触させることを含み、スペーサー配列は、標的RNAの少なくとも15ヌクレオチドと相補的であり;Cas、誘導体、又は機能断片は、RNAガイド配列と結合して、複合体を形成し;複合体は、標的RNAに結合し;標的RNAへの複合体の結合により、Cas、誘導体、又は機能断片は、標的RNAを修飾する。
【0063】
特定の実施形態において、標的RNAは、Casによる切断によって修飾される。
【0064】
特定の実施形態において、標的RNAは、二本鎖RNA特異的アデノシンデアミナーゼを含む誘導体による脱アミノ化によって修飾される。
【0065】
特定の実施形態において、標的RNAは、mRNA、tRNA、rRNA、非コードRNA、lncRNA、又は核RNAである。
【0066】
特定の実施形態において、標的RNAへの複合体の結合により、Cas、誘導体、及び機能断片は、実質的な(又は検出可能な)コラテラルRNase活性を示さない。
【0067】
特定の実施形態において、標的RNAは、細胞内にある。
【0068】
特定の実施形態において、細胞は癌細胞である。
【0069】
特定の実施形態において、細胞に、感染性因子が感染する。
【0070】
特定の実施形態において、感染性因子は、ウイルス、プリオン、原虫、真菌、又は寄生虫である。
【0071】
特定の実施形態において、CRISPR-Cas複合体は、配列番号1~7のいずれか1つをコードする第1のポリヌクレオチド、又はその誘導体若しくは機能断片、並びに配列番号8~14のいずれか1つ、及び標的RNAに結合することができるスペーサーRNAをコードする配列を含む第2のポリヌクレオチドによってコードされており、第1及び第2のポリヌクレオチドは、細胞中に導入される。
【0072】
特定の実施形態において、第1及び第2のポリヌクレオチドは、同じベクターによって細胞中に導入される。
【0073】
特定の実施形態において、方法は、以下の1つ以上を引き起こす:(i)細胞の老化のインビトロ又はインビボ誘導;(ii)インビトロ又はインビボ細胞周期停止;(iii)インビトロ若しくはインビボ細胞増殖阻害及び/又は細胞増殖阻害;(iv)アネルギーのインビトロ又はインビトロ誘導;(v)アポトーシスのインビトロ又はインビトロ誘導;及び(vi)壊死のインビトロ又はインビトロ誘導。
【0074】
本発明の別の態様は、容体又は疾患の処置が必要な対象において容体又は疾患を処置する方法を提供し、当該方法は、対象に、本発明のCRISPR-Cas複合体、又はこれをコードするポリヌクレオチドを含む組成物を投与することを含み;スペーサー配列は、容体又は疾患と関連する標的RNAの少なくとも15ヌクレオチドと相補的であり;Cas、誘導体、又は機能断片は、RNAガイド配列と結合して複合体を形成し;複合体は、標的RNAに結合し;標的RNAへの複合体の結合により、Cas、誘導体、又は機能断片は、標的RNAを切断することによって、対象における容体又は疾患を処置する。
【0075】
特定の実施形態において、容体又は疾患は、癌又は感染症である。
【0076】
特定の実施形態において、癌は、ウィルムス腫瘍、ユーイング肉腫、神経内分泌腫瘍、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、黒色腫、皮膚癌、乳癌、結腸癌、直腸癌、前立腺癌、肝癌、腎癌、膵癌、肺癌、胆道癌、子宮頸癌、子宮体癌、食道癌、胃癌、頭頚部癌、髄様甲状腺癌、卵巣癌、神経膠腫、リンパ腫、白血病、骨髄腫、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、又は膀胱癌である。
【0077】
特定の実施形態において、方法は、インビトロ方法、インビボ方法、又はエクスビボ方法である。
【0078】
本発明の別の態様は、本発明の方法によって得られる細胞又はその後代を提供し、細胞及び後代は、天然に存在しない修飾(例えば、細胞/後代の転写されたRNA内の天然に存在しない修飾)を含む。
【0079】
本発明の別の態様は、標的RNAの存在を検出する方法を提供し、当該方法は、標的RNAを、本発明の融合タンパク質、又は本発明のコンジュゲート、又は融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む組成物と接触させることを含み、融合タンパク質又はコンジュゲートは、検出可能な標識(例えば、蛍光、ノーザンブロット、又はFISHによって検出され得るもの)及び標的RNAに結合することができる合成スペーサー配列を含む。
【0080】
本発明の別の態様は、クラスター化規則的間隔短パリンドロームリピート(CRISPR)-Cas複合体を含む真核細胞を提供し、前記CRISPR-Cas複合体は:(1)標的RNAにハイブリダイズすることができるスペーサー配列、及びスペーサー配列に対して3’側にダイレクトリピート(DR)配列を含むRNAガイド配列;並びに(2)配列番号1~7のいずれか1つのアミノ酸配列を有するCRISPR関連タンパク質(Cas)、又は前記Casの誘導体若しくは機能断片を含み;Cas、前記Casの誘導体及び機能断片は、(i)RNAガイド配列に結合すること、且つ(ii)標的RNAを標的とすることができる。
【0081】
実施例若しくは特許請求の範囲にのみ、又は以下の一態様/セクションにのみ記載されているものが挙げられる、本明細書中に記載される本発明のあらゆる実施形態は、明示的に否定されていなければ、又は不適切でなければ、本発明の他のあらゆる1つ以上の実施形態と組み合わせることができることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【
図1】
図1は、代表的なCas13e及びCas13fファミリーメンバーのゲノム遺伝子座の概略(縮尺なし)図である。Casコード配列(尖端を有する長いバー)に続く、複数の近くのダイレクトリピート(DR)(より短いバー)及びスペーサー配列(菱形)が示される。
【
図2】
図2は、各Cas13e及びCas13fタンパク質と関連するDR配列の推定の二次構造を示す。それらのコード配列は、左から右に、配列番号8~14によってそれぞれ表される。
【
図3】
図3は、本発明の新たに発見されたCas13e及びCas13fエフェクタータンパク質、並びに関連する以前に発見されたCas13a、Cas13b、Cas13c、及びCas13dエフェクタータンパク質についての系統樹を示す。
【
図4】
図4は、Cas13a-Cas13fタンパク質についてのドメイン構造を示す。Casタンパク質の各代表メンバーのサイズ全体、及び2つのRXXXXHモチーフの位置を示す。
【
図5】
図5は、Cas13e.1エフェクタータンパク質の予測3D構造を示す。
【
図6】
図6は、(1)Cas13eエフェクタータンパク質、(2)mCherry mRNAと相補的であり、且つCas13eエフェクタータンパク質との複合体を形成することができるガイドRNAを生成することができるガイドRNA(gRNA)のコード配列、及び(3)mCherryリポーター遺伝子をそれぞれコードする3つのプラスミドが、細胞に形質移入されて、各遺伝子産物を発現して、リポーターmCherry mRNAの分解が生じ得ることを示す概略図である。
【
図7】
図7は、蛍光顕微鏡下でのmCherry発現の引下げによって明示される、mCherry mRNAと相補的なガイドRNAによるmCherry mRNAのノックダウンを示す。ネガティブ対照としての、mCherry mRNAとハイブリダイズ/結合しない非標的化(NT)ガイドRNAは、mCherry発現をノックダウンできなかった。
【
図8】
図8は、
図6の実験において、mCherry発現の約75%のノックダウンを示す。
【
図9】
図9は、Cas13eが、(ガイドRNAの5’末端のDR配列と対照的に)3’末端にDR配列を有するガイドRNAを利用することを示す。
【
図10】
図10は、非標的化(NT)対照と比較した、スペーサー配列長と、標的RNAに対して特異的な(ガイドRNA依存性)RNase活性との相関を示す。
【
図11】
図11は、非標的化(NT)対照と比較した、スペーサー配列長と、標的RNAに対して非特異的な/コラテラルな(ガイドRNA非依存性)RNase活性との相関を示す。
【
図12】
図12は、dCas13e.1-ADAR2DD融合体が、RNA塩基編集活性を有することを示す。具体的に、(1)単一塩基RNAエディタADAR2DDに融合するdCas13e(RNaseデッド)タンパク質、(2)GからAへの点変異を有するミュータントmCherry mRNAと相補的であり、且つdCas13eエフェクタータンパク質との複合体を形成することができるガイドRNAを生成することができるガイドRNA(gRNA)のコード配列、及び(3)GからAへの点変異を有するmCherry mRNAをコードするミュータントmCherryリポーター遺伝子をそれぞれコードする3つのプラスミドが、細胞に形質移入されて、それらの各遺伝子産物を発現することができる。ミュータントmCherry mRNAは通常、点変異に起因して、蛍光mCherryタンパク質を生成することができない。ガイドRNAがミュータントmCherry mRNAに結合すると、融合ADAR2DD塩基エディタは、AをI(G等価物)に変換するので、蛍光mCherryタンパク質をコードするmRNAの能力を回復する。
【
図13】
図13は、RNA塩基編集が成功した結果としての、mCherryの発現の回復を示す。
図12の実験では、ミュータントmCherry(mCherry
*)を単独でコードするプラスミドが、蛍光mCherryを発現しなかった。dCas13e-ADAR2DD塩基エディタを単独でコードするプラスミドもまた、蛍光mCherryを発現しなかった。gRNA-1又はgRNA-2のいずれかを単独でコードするプラスミド(GFPリポーターも発現する)もまた、蛍光mCherryを発現しなかったが、GFPが傑出して発現された。しかしながら、3つ全てのプラスミドが同じ細胞中に形質移入された場合、有意な蛍光mCherry発現が(GFPリポーター発現と共に)観察された。
【
図14】
図14は、早期終止コドンTAGを有するミュータントmCherry遺伝子の関連セグメント、dCas13e-ADAR2DD RNA塩基エディタと複合体形成され得る2つのgRNAの配列、及び「補正された」TGGコドンを示す。
【
図15】
図15は、ADAR2DD RNA塩基エディタ(「ADAR2」として示す)及び他の転写制御要素に融合するdCas13e.1の一連の漸進性C末端欠失構築体を示す概略(縮尺なし)図である。
【
図16】
図16は、
図15における一連のC末端欠失ミュータントについて、野生型mCherryに戻るmCherryミュータント変換結果のパーセンテージを示す。
【
図17】
図17は、ADAR2DD RNA塩基エディタに融合するdCas13e.1の一連の漸進性C末端及び場合によってはN末端欠失構築体を示す概略(縮尺なし)図である。
【
図18】
図18は、
図17における選択されたC末端及びN末端欠失ミュータントについて、野生型mCherryに戻るmCherryミュータント変換結果のパーセンテージを示す。
【
図19】
図19は、Cas13a、Cas13b、Cas13d、Cas13e.1、及びCas13f.1、mCherryリポーター遺伝子、並びにANXA4-標的化gRNAコード配列、又は対照として非標的化gRNAをコードする一連のプラスミドを示す。
【
図20】
図20は、Cas13e.1、Cas13f.1、Cas13a、及びCas13dによるANXA4発現の有効なノックダウンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0083】
1.概説
本明細書に記載される本発明は、本明細書においてCas13e及びCas13fと呼ばれることがある、新規なクラス2、VI型Casエフェクタータンパク質を提供する。本発明の新規なCas13タンパク質は、それらが、それらのcrRNAコード配列と共に、AAVベクターなどの低容量遺伝子治療ベクター中に容易にパッケージングされ得るように、以前に発見されたCas13エフェクタータンパク質(Cas13a-Cas13d)よりはるかに小さい。さらに、Cas13a、Cas13b、及びCas13dエフェクタータンパク質と比較して、新たに発見されたCas13e及びCas13fエフェクタータンパク質は、RNA標的配列をノックダウンする際により強力であり、RNA単一塩基編集においてより効率的である一方、スペーサー配列が特定の狭い範囲(例えば、約30ヌクレオチド)内にある場合を除いて、crRNAベースの標的認識による活性化後に、ごくわずかな非特異的/コラテラルRNase活性を示す。したがって、これらの新たなCasタンパク質は、遺伝子治療に理想的に適している。
【0084】
したがって、第1の態様において、本発明は、Cas13e及びCas13fエフェクタータンパク質、例えば、配列番号1~7のアミノ酸配列を有するもの、又はそのオルソログ、ホモログ、様々な誘導体(本明細書において後述される)、機能断片(本明細書において後述される)を提供し、ここで、前記オルソログ、ホモログ、誘導体及び機能断片は、配列番号1~7のタンパク質のいずれか1つの少なくとも1つの機能を維持していた。このような機能としては、限定はされないが、本発明のガイドRNA/crRNA(本明細書において後述される)に結合して複合体を形成する能力、RNase活性、及び、標的RNAに少なくとも部分的に相補的なcrRNAの誘導の下で、特定の部位において標的RNAに結合し、それを切断する能力が挙げられる。
【0085】
特定の実施形態において、本発明のCas13e若しくはCas13fエフェクタータンパク質は、(i)配列番号1~7のいずれか1つ;(ii)配列番号1~7のいずれか1つの付加、欠失、及び/又は置換(例えば、保存された置換)の1つ以上のアミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10個の残基)を有する誘導体;又は(iii)配列番号1~7のいずれか1つと比較して、少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%のアミノ酸配列同一性を有する誘導体であり得る。
【0086】
特定の実施形態において、Cas13e及びCas13fエフェクタータンパク質、そのオルソログ、ホモログ、誘導体及び機能断片は、天然に存在せず、例えば、天然に存在する配列と比較して、少なくとも1つのアミノ酸差を有する。
【0087】
関連する態様において、本発明は、別の共有結合若しくは非共有結合されたタンパク質又はポリペプチド或いは他の分子(検出試薬又は薬剤/化学部分など)を含む、配列番号1~7のいずれか1つをベースとするさらなる誘導体Cas13e及びCas13fエフェクタータンパク質、又はその上記のオルソログ、ホモログ、誘導体及び機能断片を提供する。このような他のタンパク質/ポリペプチド/他の分子は、例えば、化学的結合、遺伝子融合、又は他の非共有結合(ビオチン-ストレプトアビジン結合など)を介して連結され得る。このような誘導タンパク質は、元のタンパク質の機能、例えば、本発明のガイドRNA/crRNA(本明細書において後述される)に結合して、複合体を形成する能力、RNase活性、及び、標的RNAに少なくとも部分的に相補的なcrRNAの誘導の下で、特定の部位において標的RNAに結合し、それを切断する能力に影響を与えない。
【0088】
このような誘導を用いて、例えば、核局在化シグナル(SV40大型T抗原NLSなどのNLS)を付加して、本発明のCas13e及びCas13fエフェクタータンパク質の、細胞核に入る能力を強化し得る。また、このような誘導を用いて、標的分子又は部分を付加して、本発明のCas13e及びCas13fエフェクタータンパク質を、特定の細胞又は細胞内位置に向けることができる。また、このような誘導を用いて、検出可能な標識を付加して、本発明のCas13e及びCas13fエフェクタータンパク質の検出、監視、又は精製を容易にすることができる。さらに、このような誘導を用いて、脱アミノ化酵素部分(アデニン又はシトシン脱アミノ化活性を有するものなど)を付加して、RNA塩基編集を容易にすることができる。
【0089】
誘導は、本発明のCas13e及びCas13fエフェクタータンパク質のN末端若しくはC末端に、又は内部に(例えば、内部融合又は内部アミノ酸の側鎖を介した結合)、さらなる部分のいずれかを付加することによって行われ得る。
【0090】
関連する第2の態様において、本発明は、配列番号1~7のいずれか1つをベースとする本発明のCas13e及びCas13fエフェクタータンパク質、又はその上記のオルソログ、ホモログ、誘導体及び機能断片のコンジュゲートを提供し、これは、他のタンパク質若しくはポリペプチド、検出可能な標識、又はそれらの組合せなどの部分とコンジュゲートされる。このようなコンジュゲート部分は、限定はされないが、局在化シグナル、レポーター遺伝子(例えば、GST、HRP、CAT、GFP、HcRed、DsRed、CFP、YFP、BFP)、標識(例えば、FITC、若しくはDAPIなどの蛍光色素)、NLS、標的化部分、DNA結合ドメイン(例えば、MBP、Lex A DBD、Gal4 DBD)、エピトープタグ(例えば、His、myc、V5、FLAG、HA、VSV-G、Trxなど)、転写活性化ドメイン(例えば、VP64又はVPR)、転写阻害ドメイン(例えば、KRAB部分又はSID部分)、ヌクレアーゼ(例えば、FokI)、脱アミノ化ドメイン(例えば、ADAR1、ADAR2、APOBEC、AID、若しくはTAD)、メチラーゼ、デメチラーゼ、転写放出因子、HDAC、ssRNA切断活性、dsRNA切断活性、ssDNA切断活性、dsDNA切断活性、DNA又はRNAリガーゼ、それらの任意の組合せなどを含み得る。
【0091】
例えば、コンジュゲートは、N末端、C末端に若しくはその付近に、内部に、又はそれらの組合せで位置し得る1つ以上のNLSを含み得る。結合は、アミノ酸(D若しくはE、又はS若しくはTなど)、アミノ酸誘導体(Ahx、β-Ala、GABA若しくはAvaなど)、又はPEG結合を介して行われ得る。
【0092】
特定の実施形態において、コンジュゲーションは、元のタンパク質の機能、例えば、本発明のガイドRNA/crRNA(本明細書において後述される)に結合して、複合体を形成する能力、RNase活性、及び、標的RNAに少なくとも部分的に相補的なcrRNAの誘導の下で、特定の部位において標的RNAに結合し、それを切断する能力に影響を与えない。
【0093】
関連する第3の態様において、本発明は、配列番号1~7のいずれか1つをベースとする本発明のCas13e及びCas13fエフェクタータンパク質、又はその上記のオルソログ、ホモログ、誘導体及び機能断片の融合を提供し、この融合は、局在化シグナル、レポーター遺伝子(例えば、GST、HRP、CAT、GFP、HcRed、DsRed、CFP、YFP、BFP)、NLS、タンパク質標的化部分、DNA結合ドメイン(例えば、MBP、Lex A DBD、Gal4 DBD)、エピトープタグ(例えば、His、myc、V5、FLAG、HA、VSV-G、Trxなど)、転写活性化ドメイン(例えば、VP64又はVPR)、転写阻害ドメイン(例えば、KRAB部分若しくはSID部分)、ヌクレアーゼ(例えば、FokI)、脱アミノ化ドメイン(例えば、ADAR1、ADAR2、APOBEC、AID、若しくはTAD)、メチラーゼ、デメチラーゼ、転写放出因子、HDAC、ssRNA切断活性、dsRNA切断活性、ssDNA切断活性、dsDNA切断活性、DNA又はRNAリガーゼ、それらの任意の組合せなどの部分との融合である。
【0094】
例えば、融合は、N末端、C末端に若しくはその付近に、内部に、又はそれらの組合せで位置し得る1つ以上のNLSを含み得る。特定の実施形態において、コンジュゲーションは、元のタンパク質の機能、例えば、本発明のガイドRNA/crRNA(本明細書において後述される)に結合して、複合体を形成する能力、RNase活性、及び、標的RNAに少なくとも部分的に相補的なcrRNAの誘導の下で、特定の部位において標的RNAに結合し、それを切断する能力に影響を与えない。
【0095】
第4の態様において、本発明は、(i)配列番号8~14のいずれか1つ;(ii)配列番号8~14のいずれか1つと比較して、欠失、付加、及び/又は置換の1、2、3、4、若しくは5つのヌクレオチドを有するポリヌクレオチド;(iii)配列番号8~14のいずれか1つと少なくとも80%、85%、90%、95%の配列同一性を共有するポリヌクレオチド;(iv)ストリンジェントな条件下で、(i)~(iii)のポリヌクレオチドのいずれか1つ又はその相補体とハイブリダイズするポリヌクレオチド;(v)(i)~(iii)のいずれかのポリヌクレオチドの相補配列を含む単離ポリヌクレオチドを提供する。
【0096】
(ii)~(iv)のいずれかのポリヌクレオチドは、元の配列番号8~14の機能を維持しており、これは、本発明のCas13e若しくはCas13fシステムにおいてcrRNAのダイレクトリピート(DR)配列をコードするためのものである。
【0097】
本明細書において使用される際、「ダイレクトリピート配列」は、CRISPR遺伝子座におけるDNAコード配列、又はcrRNAにおいてそれによってコードされるRNAを指し得る。したがって、配列番号8~14のいずれかが、crRNAなどのRNA分子の文脈において言及される場合、各Tは、Uを表すことが理解される。
【0098】
したがって、特定の実施形態において、単離ポリヌクレオチドは、本発明のCas13e及びCas13fシステムのcrRNAのためのDR配列をコードするDNAである。
【0099】
特定の他の実施形態において、単離ポリヌクレオチドは、本発明のCas13e及びCas13fシステムのcrRNAのためのDR配列であるRNAである。
【0100】
第5の態様において、本発明は、(i)本発明のCas13e若しくはCas13fエフェクタータンパク質のいずれか1つ、又はそのオルソログ、ホモログ、誘導体、コンジュゲート、機能断片、そのコンジュゲート、又はその融合であり得るタンパク質組成物;並びに(ii)本発明の第4の態様に記載される単離ポリヌクレオチド(例えば、DR配列)、及び標的RNAの少なくとも一部に相補的なスペーサー配列を含むポリヌクレオチド組成物を含む複合体を提供する。特定の実施形態において、DR配列は、スペーサー配列の3’末端にある。
【0101】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチド組成物は、tracrRNAを含まない、本発明のCas13e若しくはCas13fシステムのガイドRNA/crRNAである。
【0102】
特定の実施形態において、Cas13e及びCas13fエフェクタータンパク質、そのホモログ、オルソログ、誘導体、融合、コンジュゲート、又はRNase活性を有する機能断片と共に使用するために、スペーサー配列は、少なくとも約10ヌクレオチド、又は10~60、15~50、20~50、25~40、25~50、若しくは19~50ヌクレオチドである。特定の実施形態において、Cas13e及びCas13fエフェクタータンパク質、又はそのホモログ、オルソログ、誘導体、融合、コンジュゲート、若しくはRNase活性を有さないが、ガイドRNA及びガイドRNAに相補的な標的RNAに結合する能力を有する機能断片と共に使用するために、スペーサー配列は、少なくとも約10ヌクレオチド、又は約10~200、15~180、20~150、25~125、30~110、35~100、40~80、45~60、50~55、若しくは約50ヌクレオチドである。
【0103】
特定の実施形態において、DR配列は、15~36、20~36、22~36、又は約36ヌクレオチドである。特定の実施形態において、ガイドRNA中のDR配列は、配列番号8~14のいずれか1つのRNA形態と実質的に同じ二次構造(ステム、バルジ、及びループを含む)を有する。
【0104】
特定の実施形態において、ガイドRNAは、上記のスペーサー配列長さのいずれかより長い約36ヌクレオチド、例えば、45~96、55~86、60~86、62~86、又は63~86ヌクレオチドである。
【0105】
第6の態様において、本発明は、(i)配列番号1~7のCas13e若しくはCas13fエフェクタータンパク質のいずれか1つをコードするポリヌクレオチド、又はそのオルソログ、ホモログ、誘導体、機能断片、融合;(ii)配列番号8~14のいずれか1つのポリヌクレオチド;又は(iii)(i)及び(ii)を含むポリヌクレオチドを含む単離ポリヌクレオチドを提供する。
【0106】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号15~21などを除いて、天然でない/天然に存在しない。
【0107】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、原核生物の発現のためにコドン最適化される。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、真核生物、例えば、ヒト又はヒト細胞などにおける発現のためにコドン最適化される。
【0108】
第7の態様において、本発明は、第6の態様のポリヌクレオチドのいずれかを含むか又は包含するベクターを提供する。ベクターは、クローニングベクター、又は発現ベクターであり得る。ベクターは、ほんの数例を挙げると、プラスミド、ファージミド、又はコスミドであり得る。特定の実施形態において、ベクターは、ヒト細胞などの哺乳動物細胞内でポリヌクレオチド、配列番号1~7のCas13e若しくはCas13fエフェクタータンパク質のいずれか1つ、又はそのオルソログ、ホモログ、誘導体、機能断片、融合;又は第4の態様のポリヌクレオチドのいずれか;又は第5の態様の複合体のいずれかを発現するのに使用され得る。
【0109】
第8の態様において、本発明は、第4若しくは第6の態様のポリヌクレオチドのいずれか、及び/又は本発明の第7の態様のベクターを含む宿主細胞を提供する。宿主細胞は、大腸菌(E.coli)などの原核生物、又は酵母、昆虫、植物、動物(例えば、ヒト及びマウスを含む哺乳動物)などの真核生物に由来する細胞であり得る。宿主細胞は、単離初代細胞(生体外治療のための骨髄細胞など)、又は腫瘍細胞株、293T細胞、若しくは幹細胞、iPCなどの樹立細胞株であり得る。
【0110】
関連する態様において、本発明は、クラスター化規則的間隔短パリンドロームリピート(CRISPR)-Cas複合体を含む真核細胞を提供し、前記CRISPR-Cas複合体は、(1)標的RNAをハイブリダイズすることが可能なスペーサー配列、及びスペーサー配列に対して3’側のダイレクトリピート(DR)配列を含むRNAガイド配列;並びに、(2)配列番号1~7のいずれか1つのアミノ酸配列を有するCRISPR関連タンパク質(Cas)、又は前記Casの誘導体若しくは機能断片を含み;ここで、Cas、前記Casの誘導体、及び機能断片は、(i)RNAガイド配列に結合し、(ii)標的RNAを標的にすることが可能である。
【0111】
第9の態様において、本発明は、(i)配列番号1~7のCas13e若しくはCas13fエフェクタータンパク質のいずれか1つから選択される第1の(タンパク質)組成物、又はそのオルソログ、ホモログ、誘導体、コンジュゲート、機能断片、融合;及び(ii)ガイドRNA/crRNAを包含するRNA、特に、そのためのスペーサー配列、又はコード配列を含む第2の(ヌクレオチド)組成物を含む組成物を提供する。ガイドRNAは、DR配列、及び標的RNAを補完するか又は標的RNAとハイブリダイズし得るスペーサー配列を含み得る。ガイドRNAは、(i)の第1の(タンパク質)組成物と複合体を形成し得る。ある実施形態において、DR配列は、本発明の第4の態様のポリヌクレオチドであり得る。ある実施形態において、DR配列は、ガイドRNAの3’末端にあり得る。いくつかの実施形態において、組成物((i)及び/又は(ii)など)は、非天然であるか、又は天然組成物から修飾される。いくつかの実施形態において、組成物の少なくともある成分が、非天然であるか、又は組成物の天然成分から修飾される。いくつかの実施形態において、標的配列は、天然に存在しないRNAなどの、原核生物又は真核生物からのRNAである。標的RNAは、サイトゾル中又はオルガネラの内部などの、細胞の内部に存在し得る。いくつかの実施形態において、タンパク質組成物は、そのN末端若しくはC末端に、又は内部に位置し得るNLSを有し得る。
【0112】
第10の態様において、本発明は、本発明の第7の態様の1つ以上のベクターを含む組成物を提供し、前記1つ以上のベクターは、(i)任意に、第1の調節要素に動作可能に連結された;配列番号1~7のCas13e若しくはCas13fエフェクタータンパク質のいずれか1つ、又はそのオルソログ、ホモログ、誘導体、機能断片、融合をコードする第1のポリヌクレオチド;及び(ii)任意に、第2の調節要素に動作可能に連結された;本発明のガイドRNAをコードする第2のポリヌクレオチドを含む。第1及び第2のポリヌクレオチドは、異なるベクター上、又は同じベクター上にあり得る。ガイドRNAは、第1のポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質産物と複合体を形成し得、標的RNAに結合し/標的RNAを補完し得るDR配列(第4の態様のいずれか1つなど)及びスペーサー配列を含む。いくつかの実施形態において、第1の調節要素は、誘導性プロモータなどのプロモータである。いくつかの実施形態において、第2の調節要素は、誘導性プロモータなどのプロモータである。いくつかの実施形態において、組成物((i)及び/又は(ii)など)は、非天然であるか、又は天然組成物から修飾される。いくつかの実施形態において、組成物の少なくともある成分が、非天然であるか、又は組成物の天然成分から修飾される。いくつかの実施形態において、標的配列は、天然に存在しないRNAなどの、原核生物又は真核生物に由来するRNAである。標的RNAは、サイトゾル中又はオルガネラの内部などの、細胞の内部に存在し得る。いくつかの実施形態において、タンパク質組成物は、そのN末端若しくはC末端に、又は内部に位置し得るNLSを有し得る。
【0113】
いくつかの実施形態において、ベクターは、プラスミドである。ある実施形態において、ベクターは、レトロウイルス、複製不全レトロウイルス、アデノウイルス、複製不全アデノウイルス、又はAAVをベースとするウイルスベクターである。いくつかの実施形態において、ベクターは、宿主細胞内で自己複製可能である(例えば、細菌の複製起点配列を有する)。いくつかの実施形態において、ベクターは、宿主ゲノムに統合し得、宿主ゲノムで複製され得る。ある実施形態において、ベクターは、クローニングベクターである。ある実施形態において、ベクターは、発現ベクターである。
【0114】
本発明はさらに、本発明の第1~3の態様の配列番号1~7のCas13e若しくはCas13fエフェクタータンパク質のいずれか、又はそのオルソログ、ホモログ、誘導体、コンジュゲート、機能断片、融合;本発明の第4及び/又は第6の態様のポリヌクレオチド;本発明の第5の態様の複合体;本発明の第7の態様のベクター;本発明の第8の態様の細胞、並びに本発明の第9及び/又は第10の態様の組成物を送達するための送達組成物を提供する。送達は、リポソーム、ナノ粒子、エキソソーム、微小胞、遺伝子銃又は1つ以上のウイルスベクターなどのビヒクルを用いて、トランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーション、遺伝子銃、マイクロインジェクション、超音波処理、リン酸カルシウムトランスフェクション、カチオントランスフェクション、ウイルスベクター送達などの、当該技術分野において公知のいずれか1つによって行われ得る。
【0115】
本発明はさらに、以下のもの:本発明の第1~3の態様の配列番号1~7のCas13e若しくはCas13fエフェクタータンパク質のいずれか、又はそのオルソログ、ホモログ、誘導体、コンジュゲート、機能断片、融合;本発明の第4及び/又は第6の態様のポリヌクレオチド;本発明の第5の態様の複合体;本発明の第7の態様のベクター;本発明の第8の態様の細胞、並びに本発明の第9及び/又は第10の態様の組成物のうちのいずれか1つ以上を含むキットを提供する。いくつかの実施形態において、キットは、キットの構成要素の使用方法、及び/又はキットの構成要素と共に使用するために第三者から追加の構成要素を入手する方法についての説明書をさらに含み得る。キットのいずれの構成要素も、任意の好適な容器中に貯蔵され得る。
【0116】
本発明は、本明細書において上記に一般に説明されているが、本発明の様々な態様についてのより詳細な説明が、以下の別個の項において提供される。しかしながら、簡潔にするために及び冗長性を軽減するために、本発明の特定の実施形態が、1つの項のみに記載されるか、又は特許請求の範囲若しくは実施例のみに記載されることが理解されるべきである。したがって、特に否定されていないか又は組合せが不適切でない限り、1つの態様、項のみに、又は特許請求の範囲若しくは実施例のみに記載されるものを含む、本発明のいずれか1つの実施形態が、本発明のいずれかの他の実施形態と組み合わされ得ることも理解されるべきである。
【0117】
2.新規なクラス2、VI型CRISPR RNAガイドRNase、及びその誘導体
一態様において、本明細書に記載される本発明は、高等真核生物及び原核生物のヌクレオチド結合(HEPN)ドメインに特徴的な、2つの厳密に保存されたRX4-6H(RXXXXH)モチーフを有するCRISPRクラス2、VI型エフェクターの2つの新規なファミリーを提供する。2つのHEPNドメインを含有する同様のCRISPRクラス2、VI型エフェクターが、以前に特徴付けられており、例えば、CRISPR Cas13a(C2c2)、Cas13b、Cas13c、及びCas13dを含む。
【0118】
HEPNドメインは、RNaseドメインであり、標的RNA分子に結合し、それを切断する能力を与えることが示されている。標的RNAは、限定はされないが、mRNA、tRNA、リボソームRNA、ノンコーディングRNA、lncRNA(長鎖型ノンコーディングRNA)、及び核内RNAを含む、任意の好適な形態のRNAであり得る。例えば、いくつかの実施形態において、Casタンパク質は、オープン・リーディング・フレーム(ORF)のコード鎖に位置するRNA標的を認識し、それを切断する。
【0119】
一実施形態において、本開示は、本明細書において一般にVI-E及びVI-F型CRISPR-Casエフェクタータンパク質、Cas13e若しくはCas13fと呼ばれる、CRISPRクラス2、VI型エフェクターの2つのファミリーを提供する。VI-E及びVI-F型CRISPR-Casエフェクタータンパク質と、これらの他の系のエフェクターとの直接の比較は、VI-E及びVI-F型CRISPR-Casエフェクタータンパク質が、以前に同定された最小のVI-D型/Cas13dエフェクター(
図4を参照)よりかなり小さく(例えば、約20%少ないアミノ酸)、系統発生学的に最も近い近縁種Cas13b(
図3を参照)を含む他の以前に記載されたエフェクタータンパク質と、1対1対応の配列アラインメントで30%未満の配列類似性を有することを示す。
【0120】
CRISPRクラス2、VI型エフェクターのこれらの2つの新たに同定されたファミリーは、様々な用途に使用され得、治療用途に特に好適であるが、その理由は、それらが、他のエフェクター(例えば、CRISPR Cas13a、Cas13b、Cas13c、及びCas13dエフェクター)よりかなり小さく、それにより、AAVベクターなどの、サイズ制限を有する送達系中への、エフェクター及びそれらのガイドRNAコード配列をコードする核酸のパッケージングが可能になるためである。さらに、スペーサー配列長さの選択された範囲(約30ヌクレオチドなど、
図11を参照)における検出可能なコラテラル/非特異的RNase活性がないことにより、特異的RNase活性の活性化後、これらのCasエフェクターは、破壊されないのが望ましい標的細胞内の(免疫がない場合)潜在的に危険な全般的なオフターゲットRNA消化を起こしにくくなる。一方、約30ヌクレオチドなどの他の選択されたスペーサー長さにおいて、かなりのコラテラルRNase活性が、これらのCasエフェクターについて存在し、したがって、本発明のCasエフェクターはまた、このようなコラテラルRNase活性に依存する実用において使用され得る。
【0121】
細菌において、VI-E及びVI-F型CRISPR-Casシステムは、CRISPRアレイ(
図1を参照)にごく近接して単一のエフェクター(それぞれ、約775個の残基及び790個の残基)を含む。CRISPRアレイは、典型的に36ヌクレオチド長のダイレクトリピート(DR)配列を含み、これは、配列及び二次構造(
図2を参照)の両方において、一般に十分に保存されている。
【0122】
本明細書に示されるデータは、DR配列が成熟crRNAの3’末端において終わるように、crRNAが5’末端からプロセシングされることを実証する。
【0123】
Cas13e及びCas13f CRISPRアレイに含まれるスペーサーは、最も一般的には30ヌクレオチド長であり、長さの変動の大部分が、29~30ヌクレオチドの範囲内に含まれる。しかしながら、広範囲のスペーサー長さが、許容され得る。例えば、機能的なCas13e若しくはCas13fエフェクタータンパク質、又はそのホモログ、オルソログ、誘導体、融合、コンジュゲート、若しくは機能断片において使用するために、スペーサーは、10~60ヌクレオチド、20~50ヌクレオチド、25~45ヌクレオチド、25~35ヌクレオチド、又は約27、28、29、30、31、32、若しくは33ヌクレオチドであり得る。しかしながら、上記のいずれかのdCas形態において使用するために、スペーサーは、10~200ヌクレオチド、20~150ヌクレオチド、25~100ヌクレオチド、25~85ヌクレオチド、35~75ヌクレオチド、45~60ヌクレオチド、又は約46、47、48、49、50、51、52、53、54、若しくは55ヌクレオチドであり得る。
【0124】
例示的なVI-E及びVI-F型CRISPR-Casエフェクタータンパク質が、以下の表中に示される。
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
上記の配列において、各エフェクター中の2つのRX4-6H(RXXXXH)モチーフに二重下線が引かれている。Cas13e.1において、C末端モチーフは、モチーフに隣接するRR及びHH配列により2つの可能性を有し得る。1つ又は両方のこのようなドメインにおける変異は、Cas13e及びCas13fエフェクタータンパク質、そのホモログ、オルソログ、融合、コンジュゲート、誘導体、又は機能断片のRNaseデッド形態(又は「dCas)を生み出し得る一方、ガイドRNA及びガイドRNAに相補的な標的RNAに結合するそれらの能力を実質的に維持する。
【0129】
Casエフェクターの対応するDRコード配列が、以下に列挙される:
【0130】
【0131】
ステップ、バルジ、及びループ構造の位置及びサイズを含む、DR配列の二次構造が、このような二次構造を形成する特定のヌクレオチド配列より重要である可能性が高いため、代替的な又は誘導体DR配列がまた、これらの誘導体又は代替的なDR配列が、配列番号8~14のいずれか1つによってコードされるRNAの二次構造に実質的に類似する二次構造を有する限り、本発明のシステム及び方法において使用され得る。例えば、誘導体DR配列は、1つ又は両方のステム(
図2を参照)中に±1又は2つの塩基対を有し得、バルジ中の一本鎖のいずれか若しくは両方に±1、2、若しくは3つの塩基を有し得、及び/又はループ領域中に±1、2、3、若しくは4つの塩基を有し得る。
【0132】
いくつかの実施形態において、VI-E及びVI-F型CRISPR-Casエフェクタータンパク質は、上記の配列番号1~7のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも約80%の配列同一性(例えば、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)を有するアミノ酸配列を有する「誘導体」を含む。配列番号1~7のいずれか1つに対してかなりのタンパク質配列同一性を共有するこのような誘導体Casエフェクターは、配列番号1~7(以下を参照)のCasの機能の少なくとも1つ、例えば、配列番号8~14のDR配列の少なくとも1つを含むcrRNAに結合し、それと複合体を形成する能力を保持していた。例えば、Cas13e.1誘導体は、配列番号1、2、3、4、5、6、又は7のそれぞれに対して85%のアミノ酸配列同一性を共有し得、配列番号8、9、10、11、12、13、又は14のそれぞれのDR配列を有するcrRNAに結合し、それと複合体を形成する能力を保持する。
【0133】
いくつかの実施形態において、誘導体は、保存的アミノ酸残基置換を含む。いくつかの実施形態において、誘導体は、保存的アミノ酸残基置換のみを含む(すなわち、誘導体中の全てのアミノ酸置換が、保存された置換であり、保存されていない置換はない)。
【0134】
いくつかの実施形態において、誘導体は、配列番号1~7の野生型配列のいずれか1つの中への1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個以下のアミノ酸挿入又は欠失を含む。挿入及び/又は欠失は、野生型配列の機能の少なくとも1つが保存される限り、一緒に集められてもよく、又は配列の全長にわたって分離されてもよい。このような機能は、ガイド/crRNAに結合する能力、RNase活性、ガイド/crRNAに相補的な標的RNAに結合し、及び/又はそれを切断する能力を含み得る。いくつかの実施形態において、挿入及び/又は欠失は、RXXXXHモチーフ中、又はRXXXXHモチーフから5、10、15、若しくは20個の残基内に存在しない。
【0135】
いくつかの実施形態において、誘導体は、ガイドRNA/crRNAに結合する能力を保持していた。
【0136】
いくつかの実施形態において、誘導体は、ガイド/crRNA活性化RNase活性を保持していた。
【0137】
いくつかの実施形態において、誘導体は、配列中の、標的RNAの少なくとも一部に相補的な結合されたガイド/crRNAの存在下で、標的RNAに結合し、及び/又は標的RNAを切断する能力を保持していた。
【0138】
他の実施形態において、誘導体は、例えば、RNAガイドRNaseの1つ以上の触媒残基中の変異のため、ガイド/crRNA活性化RNase活性を完全に又は部分的に失っていた。このような誘導体は、dCas、例えば、dCas13e.1などと呼ばれることがある。
【0139】
したがって、特定の実施形態において、誘導体は、低下したヌクレアーゼ/RNase活性、例えば、対応する野生型タンパク質と比較して、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、又は100%のヌクレアーゼ不活性化を有するように修飾され得る。ヌクレアーゼ活性は、当該技術分野において公知のいくつかの方法、例えば、変異を、タンパク質のヌクレアーゼ(触媒)ドメイン中に導入することによって低下され得る。いくつかの実施形態において、ヌクレアーゼ活性のための触媒残基が同定され、これらのアミノ酸残基は、ヌクレアーゼ活性を低下させるために、様々なアミノ酸残基(例えば、グリシン又はアラニン)で置換され得る。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、保存アミノ酸置換である。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、非保存アミノ酸置換である。
【0140】
いくつかの実施形態において、修飾は、少なくとも1つのHEPNドメイン中に1つ以上の変異(例えば、アミノ酸欠失、挿入、又は置換)を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのHEPNドメイン中に1、2、3、4、5、6、7、8、9つ、又はそれ以上のアミノ酸置換がある。例えば、いくつかの実施形態において、1つ以上の変異は、配列番号1のR84、H89、R739、H744、R740、H745、又は配列番号2のR97、H102、R770、H775、又は配列番号3のR77、H82、R764、H769、又は配列番号4のR79、H84、R766A、H771、又は配列番号5のR79、H84、R766、H771、又は配列番号6のR89、H94、R773、H778、又は配列番号7のR89、H94、R777、H782に対応するアミノ酸残基における置換(例えば、アラニン置換)を含む。
【0141】
特定の実施形態において、1つ以上の変異又は2つ以上の変異は、HEPNドメイン、又はHEPNドメインと相同の触媒活性ドメインを含むエフェクタータンパク質の触媒活性ドメイン中であり得る。特定の実施形態において、エフェクタータンパク質は、以下の変異の1つ以上を含む:R84A、H89A、R739A、H744A、R740A、H745A(ここで、アミノ酸位置は、Cas13e.1のアミノ酸位置に対応する)。当業者は、異なるCas13e及びCas13fタンパク質中の対応するアミノ酸位置が、同じ効果を有するように変異され得ることを理解するであろう。特定の実施形態において、1つ以上の変異は、タンパク質の触媒活性を完全に又は部分的になくす(例えば、変化した切断速度、変化した特異性など)。
【0142】
他の例示的な(触媒)残基変異は、Cas13e.2のR97A、H102A、R770A、H775A、又はCas13f.1のR77A、H82A、R764A、H769A、又はCas13f.2のR79A、H84A、R766A、H771A、又はCas13f.3のR79A、H84A、R766A、H771A、又はCas13f.4のR89A、H94A、R773A、H778A、又はCas13f.5のR89A、H94A、R777A、H782Aを含む。特定の実施形態において、本明細書におけるR及び/又はH残基のいずれも、AではなくG、V、又はIで置換され得る。
【0143】
これらの変異の少なくとも1つの存在は、変異を欠く対応する野生型タンパク質と比較して、減少又は低下されたRNase活性を有する誘導体をもたらす。
【0144】
特定の実施形態において、本明細書に記載されるエフェクタータンパク質は、デッドCas13e若しくはCas13fエフェクタータンパク質(すなわち、dCas13e及びdCas13f)などの「デッド」エフェクタータンパク質である。特定の実施形態において、エフェクタータンパク質は、HEPNドメイン1(N末端)中の1つ以上の変異を有する。特定の実施形態において、エフェクタータンパク質は、HEPNドメイン2(C末端)中の1つ以上の変異を有する。特定の実施形態において、エフェクタータンパク質は、HEPNドメイン1及びHEPNドメイン2中の1つ以上の変異を有する。
【0145】
不活性化Cas又は誘導体又はその機能断片は、(例えば、融合タンパク質、リンカーペプチド、「GS」リンカーなどを介して)1つ以上の非相同/機能的ドメインと融合又は会合され得る。これらの機能的ドメインは、様々な活性、例えば、メチラーゼ活性、デメチラーゼ活性、転写活性化活性、転写抑制活性、転写放出因子活性、ヒストン修飾活性、RNA切断活性、DNA切断活性、核酸結合活性、塩基編集活性、及びスイッチ活性(例えば、光誘導性)を有し得る。いくつかの実施形態において、機能的ドメインは、クルペル関連ボックス(KRAB)、SID(例えばSID4X)、VP64、VPR、VP16、Fok1、P65、HSF1、MyoD1、ADAR1、ADAR2などのRNA上で作用するアデノシンデアミナーゼ、APOBEC、シチジンデアミナーゼ(AID)、TAD、ミニ-SOG、APEX、及びビオチン-APEXである。
【0146】
いくつかの実施形態において、機能的ドメインは、塩基編集ドメイン、例えば、ADAR1(E1008Qを有するか若しくは有さない、野生型又はそのADAR1DD形態を含む)、ADAR2(E488Q変異を有するか若しくは有さない、野生型又はそのADAR2DD形態を含む)、APOBEC、又はAIDである。
【0147】
いくつかの実施形態において、機能的ドメインは、1つ以上の核局在化シグナル(NLS)ドメインを含み得る。1つ以上の非相同機能的ドメインは、少なくとも2つ以上のNLSドメインを含み得る。1つ以上のNLSドメインは、エフェクタータンパク質(例えば、Cas13e/Cas13fエフェクタータンパク質)の末端に又はその付近若しくは近傍に位置してもよく、2つ以上のNLSの場合、2つのうちのそれぞれが、エフェクタータンパク質(例えば、Cas13e/Cas13fエフェクタータンパク質)の末端に又はその付近若しくは近傍に位置してもよい。
【0148】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つ以上の非相同機能的ドメインは、エフェクタータンパク質のアミノ末端又はその付近にあり得、及び/又は少なくとも1つ以上の非相同機能的ドメインが、エフェクタータンパク質のカルボキシ末端又はその付近にある。1つ以上の非相同機能的ドメインは、エフェクタータンパク質に融合され得る。1つ以上の非相同機能的ドメインは、エフェクタータンパク質にテザーされ得る。1つ以上の非相同機能的ドメインは、リンカー部分によってエフェクタータンパク質に連結され得る。
【0149】
いくつかの実施形態において、複数(例えば、2、3、4、5、6、7、8つ、又はそれ以上)の同一又は異なる機能的ドメインが存在する。
【0150】
いくつかの実施形態において、機能的ドメイン(例えば、塩基編集ドメイン)は、RNA結合ドメイン(例えば、MS2)にさらに融合される。
【0151】
いくつかの実施形態において、機能的ドメインは、リンカー配列(例えば、フレキシブルリンカー配列又は剛性リンカー配列)に会合されるか又はそれを介して融合される。例示的なリンカー配列及び機能的ドメイン配列は、以下の表中に提供される。
【0152】
【0153】
不活性化Casタンパク質における1つ以上の機能的ドメインの位置決めは、それに起因する機能的効果を標的に与えるような、機能的ドメインの適切な空間的定位を可能にするものである。例えば、機能的ドメインが、転写活性化因子(例えば、VP16、VP64、又はp65)である場合、転写活性化因子は、それが標的の転写に影響を与えるのを可能にする空間的定位に配置される。同様に、転写リプレッサが、標的の転写に影響を与えるように位置決めされ、ヌクレアーゼ(例えば、Fok1)が、標的を切断又は部分的に切断するように位置決めされる。いくつかの実施形態において、機能的ドメインは、Cas/dCasのN末端に位置決めされる。いくつかの実施形態において、機能的ドメインは、Cas/dCasのC末端に位置決めされる。いくつかの実施形態において、不活性化CRISPR関連タンパク質(dCas)は、N末端に第1の機能的ドメイン及びC末端に第2の機能的ドメインを含むように修飾される。
【0154】
1つ以上の機能的ドメインと融合される不活性化CRISPR関連タンパク質及びそれを使用する方法の様々な例が、例えば、特に、本明細書に記載される特徴に関して、全体が参照により本明細書に援用される、国際公開第2017/219027号パンフレットに記載される。
【0155】
いくつかの実施形態において、VI-E及びVI-F型CRISPR-Casエフェクタータンパク質は、上記の配列番号1~7のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、VI-E及びVI-F型CRISPR-Casエフェクタータンパク質は、上記の配列番号1~7のいずれか1つの天然アミノ酸配列を除く。
【0156】
いくつかの実施形態において、完全長野生型(配列番号1~7)又は誘導体VI-E及びVI-F型Casエフェクターを使用する代わりに、その「機能断片」が使用され得る。
【0157】
本明細書において使用される際の「機能断片」は、配列番号1~7のいずれか1つの野生型タンパク質の断片、又は完全長未満の配列を有するその誘導体を指す。機能断片中の欠失した残基は、N末端、C末端に、及び/又は内部にあり得る。機能断片は、野生型VI-E又はVI-F Casの少なくとも1つの機能、又はその誘導体の少なくとも1つの機能を保持する。したがって、機能断片は、当該機能に関して具体的に定義される。例えば、機能がcrRNA及び標的RNAに結合する能力である機能断片は、RNase機能に関して機能断片でないことがあるが、これは、Casの両端におけるRXXXXHモチーフを失うことが、crRNA及び標的RNAに結合するその能力に影響を与えることはないが、RNase活性をなくし破壊し得るためである。
【0158】
いくつかの実施形態において、完全長配列の配列番号1~7と比較して、VI-E又はVI-F型CRISPR-Casエフェクタータンパク質若しくはその誘導体又はその機能断片は、N末端から約30、60、90、120、150、又は約180個の残基を欠く。
【0159】
いくつかの実施形態において、完全長配列の配列番号1~7と比較して、VI-E又はVI-F型CRISPR-Casエフェクタータンパク質若しくはその誘導体又はその機能断片は、C末端から約30、60、90、120、又は約150個の残基を欠く。
【0160】
いくつかの実施形態において、完全長配列の配列番号1~7と比較して、VI-E又はVI-F型CRISPR-Casエフェクタータンパク質若しくはその誘導体又はその機能断片は、N末端から約30、60、90、120、150、又は約180個の残基を欠き、C末端から約30、60、90、120、又は約150個の残基を欠く。
【0161】
いくつかの実施形態において、VI-E又はVI-F型CRISPR-Casエフェクタータンパク質又はその誘導体又はその機能断片は、RNase活性、例えば、ガイド/crRNA活性化特異的RNase活性を有する。
【0162】
いくつかの実施形態において、VI-E又はVI-F型CRISPR-Casエフェクタータンパク質又はその誘導体又はその機能断片は、実質的な/検出可能なコラテラルRNase活性を有さない。
【0163】
本明細書において、「コラテラルRNase活性」は、特定の他のクラス2、VI型RNAガイドRNases、例えば、Cas13aにおいて観察される非特異的RNase活性を指す。Cas13aを含む複合体は、例えば、標的核酸(例えば、標的RNA)への結合による活性化の後、構造変化を生じ、それにより、今度は、複合体が、非特異的RNaseとして作用し、RNA分子(例えば、ssRNA又はdsRNA分子)の近くを切断及び/又は分解する(すなわち、「コラテラル」効果)。
【0164】
特定の実施形態において、(限定はされないが)VI-E又はVI-F型CRISPR-Casエフェクタータンパク質又はその誘導体又はその機能断片及びcrRNAから構成される複合体は、標的認識の後にコラテラルRNase活性を示さない。この「コラテラル効果を含まない(collateral-free)」実施形態は、野生型、操作された/誘導体エフェクタータンパク質、又はその機能断片を含み得る。
【0165】
いくつかの実施形態において、VI-E又はVI-F型CRISPR-Casエフェクタータンパク質又はその誘導体又はその機能断片は、プロトスペーサーに隣接若しくは近接するさらなる要件(すなわち、プロトスペーサー隣接モチーフ「PAM」又はプロトスペーサー近接配列「PFS」要件)なしに、標的RNAを認識し、それを切断する。
【0166】
本開示はまた、本明細書に記載されるCRISPR関連タンパク質(例えば、VI-E又はVI-F型CRISPR-Casエフェクタータンパク質)の分割形態を提供する。CRISPR関連タンパク質の分割形態は、送達のために有利であり得る。いくつかの実施形態において、CRISPR関連タンパク質は、酵素の2つの部分に分割され、それが、一緒に、機能的CRISPR関連タンパク質を実質的に含む。
【0167】
分割は、触媒ドメインが影響を受けない方法で行われ得る。CRISPR関連タンパク質は、ヌクレアーゼとして機能し得、又は不活性化酵素であり得、これは、実質的に、(例えば、その触媒ドメイン中の変異のため)ごくわずかな触媒活性を有するか又は有さないRNA結合タンパク質である。分解酵素は、例えば、全体が参照により本明細書に援用される、Wright et al.,“Rational design of a split-Cas9 enzyme complex”,Proc.Nat’l.Acad.Sci.112(10):2984-2989,2015に記載されている。
【0168】
例えば、いくつかの実施形態において、ヌクレアーゼローブ及びα-らせんローブが、別個のポリペプチドとして発現される。ローブは、それら自体で相互作用しないが、crRNAは、それらを三元複合体へと動員し、これは、完全長CRISPR関連タンパク質の活性を再現し(recapitulate)、部位特異的DNA切断を触媒する。修飾crRNAの使用は、二量化を防ぐことによって分解酵素活性をなくして、誘導性二量化系の発生を可能にする。
【0169】
いくつかの実施形態において、分割CRISPR関連タンパク質は、例えば、ラパマイシン感受性二量化ドメインを用いることによって、二量化相手に融合され得る。これは、タンパク質の活性の時間的制御のための化学的誘導性CRISPR関連タンパク質の生成を可能にする。したがって、CRISPR関連タンパク質は、2つの断片へと分割することによって化学的誘導性にされ得、ラパマイシン感受性二量化ドメインは、タンパク質の制御される再構成に使用され得る。
【0170】
分割点は、典型的に、インシリコで設計され、構築物へとクローニングされる。このプロセス中、変異が、分割CRISPR関連タンパク質中に導入され得、非機能的ドメインが除去され得る。
【0171】
いくつかの実施形態において、分割CRISPR関連タンパク質の2つの部分又は断片(すなわち、N末端及びC末端断片)は、例えば、野生型CRISPR関連タンパク質の配列の少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%を含む完全なCRISPR関連タンパク質を形成し得る。
【0172】
本明細書に記載されるCRISPR関連タンパク質(例えば、VI-E又はVI-F型CRISPR-Casエフェクタータンパク質)は、自己活性化性又は自己不活性化性であるように設計され得る。例えば、標的配列は、CRISPR関連タンパク質のコード構築物へと導入され得る。したがって、CRISPR関連タンパク質は、標的配列、並びにタンパク質をコードする構築物を切断し、それによって、それらの発現を自己不活性化し得る。自己不活性化性CRISPRシステムを構築する方法が、例えば、参照により本明細書に援用される、Epstein and Schaffer,Mol.Ther.24:S50,2016に記載されている。
【0173】
いくつかの他の実施形態において、弱いプロモータ(例えば、7SKプロモータ)の制御下で発現されるさらなるcrRNAが、CRISPR関連タンパク質をコードする核酸配列を標的として、(例えば、核酸の転写及び/又は翻訳を防ぐことによって)その発現を防止及び/又は阻止し得る。CRISPR関連タンパク質を発現するベクター、crRNA、及びCRISPR関連タンパク質をコードする核酸を標的とするcrRNAによる細胞のトランスフェクションは、CRISPR関連タンパク質をコードする核酸の効率的な破壊をもたらし、CRISPR関連タンパク質のレベルを低下させ、それによって、ゲノム編集活性を制限し得る。
【0174】
いくつかの実施形態において、CRISPR関連タンパク質のゲノム編集活性は、哺乳類細胞内の内因性RNAシグネチャ(例えば、miRNA)を介して調節され得る。CRISPR関連タンパク質スイッチは、CRISPR関連タンパク質をコードするmRNAの5’-UTRにおいてmiRNA相補配列を使用することによってなされ得る。スイッチは、標的細胞内のmiRNAに選択的に及び効率的に応答する。したがって、スイッチは、不均一な細胞集団内の内因性miRNA活性を感知することによって、ゲノム編集を異なって制御し得る。したがって、スイッチ系は、細胞内miRNA情報に基づいて、細胞型選択的ゲノム編集及び細胞工学のための枠組みを提供することができる(例えば、Hirosawa et al.,Nucl.Acids Res.45(13):e118,2017を参照)。
【0175】
CRISPR関連タンパク質(例えば、VI-E及びVI-F型CRISPR-Casエフェクタータンパク質)は、誘導的に発現され得、例えば、それらの発現は、光誘導性又は化学的誘導性であり得る。この機構は、CRISPR関連タンパク質中の機能的ドメインの活性化を可能にする。光誘導性は、当該技術分野において公知の様々な方法によって、例えば、CRY2 PHR/CIBN対合が、CRISPR関連タンパク質を分割するのに使用される融合複合体を設計することによって、達成され得る(例えば、Konermann et al.,“Optical control of mammalian endogenous transcription and epigenetic states”,Nature 500:7463,2013を参照。
【0176】
化学的誘導性は、例えば、FKBP/FRB(FK506結合タンパク質/FKBPラパマイシン結合ドメイン)対合が、CRISPR関連タンパク質を分割するのに使用される融合複合体を設計することによって、達成され得る。ラパマイシンが、融合複合体を形成するのに必要とされ、それによって、CRISPR関連タンパク質を活性化する(例えば、Zetsche et al.,“A split-Cas9 architecture for inducible genome editing and transcription modulation”,Nature Biotech.33:2:139-42,2015を参照)。
【0177】
さらに、CRISPR関連タンパク質の発現は、誘導性プロモータ、例えば、テトラサイクリン又はドキシサイクリン制御される転写活性化(Tet-On及びTet-Off発現システム)、ホルモン誘導性遺伝子発現システム(例えば、エクジソン誘導性遺伝子発現システム)、及びアラビノース誘導性遺伝子発現システムによって調節され得る。RNAとして送達されるとき、RNA標的化エフェクタータンパク質の発現は、テトラサイクリンのような小分子を感知し得るリボスイッチを介して調節され得る(例えば、Goldfless et al.,“Direct and specific chemical control of eukaryotic translation with a synthetic RNA-protein interaction”,Nucl.Acids Res.40:9:e64-e64,2012を参照)。
【0178】
誘導性CRISPR関連タンパク質及び誘導性CRISPRシステムの様々な実施形態が、例えば、それぞれ全体が参照により本明細書に援用される、米国特許第8,871,445号明細書、米国特許出願公開第2016/0208243号明細書、及び国際公開第2016/205764号パンフレットに記載されている。
【0179】
いくつかの実施形態において、CRISPR関連タンパク質は、タンパク質のN末端又はC末端に結合される少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10個)の核局在化シグナル(NLS)を含む。NLSの非限定的な例としては、以下のものに由来するNLS配列が挙げられる:アミノ酸配列PKKKRKVを有するSV40ウイルス大型T-抗原のNLS;核質に由来するNLS(例えば、配列KRPAATKKAGQAKKKKを有する核質二分(nucleoplasmin bipartite)NLS);アミノ酸配列PAAKRVKLD又はRQRRNELKRSPを有するc-myc NLS;配列NQSSNFGPMKGGNFGGRSSGPYGGGGQYFAKPRNQGGYを有するhRNPA1 M9 NLS;インポーチン-αからのIBBドメインの配列RMRIZFKNKGKDTAELRRRRVEVSVELRKAKKDEQILKRRNV;筋腫Tタンパク質の配列VSRKRPRP及びPPKKARED;ヒトp53の配列PQPKKKPL;マウスc-abl IVの配列SALIKKKKKMAP;インフルエンザウイルスNS1の配列DRLRR及びPKQKKRK;デルタ肝炎ウイルス抗原の配列RKLKKKIKKL;マウスMx1タンパク質の配列REKKKFLKRR;ヒトポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼの配列KRKGDEVDGVDEVAKKKSKK;並びにヒトグルココルチコイド受容体の配列RKCLQAGMNLEARKTKK。いくつかの実施形態において、CRISPR関連タンパク質は、タンパク質のN末端又はC末端に結合される少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個)の核外搬出シグナル(NES)を含む。好ましい実施形態において、C末端及び/又はN末端NLS又はNESは、真核細胞、例えば、ヒト細胞内で最適な発現及び核標的化のために結合される。
【0180】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるCRISPR関連タンパク質は、1つ以上の機能的活性を改変するために、1つ以上のアミノ酸残基において変異される。
【0181】
例えば、いくつかの実施形態において、CRISPR関連タンパク質は、そのヘリカーゼ活性を改変するために、1つ以上のアミノ酸残基において変異される。
【0182】
いくつかの実施形態において、CRISPR関連タンパク質は、そのヌクレアーゼ活性(例えば、エンドヌクレアーゼ活性又はエキソヌクレアーゼ活性)を改変するために、1つ以上のアミノ酸残基において変異される。
【0183】
いくつかの実施形態において、CRISPR関連タンパク質は、ガイドRNAと機能的に関連するその能力を改変するために、1つ以上のアミノ酸残基において変異される。
【0184】
いくつかの実施形態において、CRISPR関連タンパク質は、標的核酸と機能的に関連するその能力を改変するために、1つ以上のアミノ酸残基において変異される。
【0185】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるCRISPR関連タンパク質は、標的RNA分子を切断することが可能である。
【0186】
いくつかの実施形態において、CRISPR関連タンパク質は、その切断活性を改変するために、1つ以上のアミノ酸残基において変異される。例えば、いくつかの実施形態において、CRISPR関連タンパク質は、酵素が標的核酸を切断できなくする1つ以上の変異を含み得る。
【0187】
いくつかの実施形態において、CRISPR関連タンパク質は、ガイドRNAがハイブリダイズする鎖に相補的な標的核酸の鎖を切断することが可能である。
【0188】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるCRISPR関連タンパク質は、1つ以上の所望の機能的活性(例えば、ヌクレアーゼ活性及びガイドRNAと機能的に相互作用する能力)を保持しながら、酵素のサイズを減少させるために、1つ以上のアミノ酸残基中に欠失を有するように操作され得る。切断されたCRISPR関連タンパク質は、負荷限度(load limitation)を有する送達系と組み合わせて有利に使用され得る。
【0189】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるCRISPR関連タンパク質は、His-タグ、GST-タグ、V5-タグ、FLAG-タグ、HA-タグ、VSV-G-タグ、Trx-タグ、又はmyc-タグを含む1つ以上のペプチドタグに融合され得る。
【0190】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるCRISPR関連タンパク質は、GST、蛍光タンパク質(例えば、GFP、HcRed、DsRed、CFP、YFP、若しくはBFP)、又は酵素(HRP若しくはCATなど)などの検出可能な部分に融合され得る。
【0191】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるCRISPR関連タンパク質は、MBP、LexA DNA結合ドメイン、又はGal4 DNA結合ドメインに融合され得る。
【0192】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるCRISPR関連タンパク質は、FITC及びDAPIを含む、蛍光色素などの検出可能な標識に連結されるか又はそれとコンジュゲートされ得る。
【0193】
本明細書における実施形態のいずれかにおいて、本明細書に記載されるCRISPR関連タンパク質と他の部分との間の結合は、CRISPR関連タンパク質のN末端又はC末端にあり得、共有化学結合を介して内部にあることもある。結合は、ペプチド結合、D、E、S、T、又はアミノ酸誘導体などのアミノ酸の側鎖を介した結合(Ahx、β-Ala、GABA若しくはAva)、又はPEG結合などの、当該技術分野において公知の任意の化学結合によって行われ得る。
【0194】
3.ポリヌクレオチド
また、本発明は、本明細書中に記載されるタンパク質(例えば、CRISPR関連タンパク質又は付属タンパク質)及びガイドRNA(例えばcrRNA)をコードする核酸を提供する。
【0195】
一部の実施形態において、核酸は合成核酸である。一部の実施形態において、核酸はDNA分子である。一部の実施形態において、核酸はRNA分子(例えば、Cas、その誘導体又は機能断片をコードするmRNA分子)である。一部の実施形態において、mRNAはキャップされており、ポリアデニル化されており、5-メチルシチジンで置換されており、シュードウリジンで置換されており、又はこれらが組み合わされている。
【0196】
一部の実施形態において、核酸(例えばDNA)は、核酸の発現を制御するために、調節要素(例えばプロモータ)に作動可能に連結されている。一部の実施形態において、プロモータは構成的プロモータである。一部の実施形態において、プロモータは誘導性プロモータである。一部の実施形態において、プロモータは細胞特異的プロモータである。一部の実施形態において、プロモータは生物特異的プロモータである。
【0197】
適切なプロモータが当該技術において知られており、例えば、pol Iプロモータ、pol IIプロモータ、pol IIIプロモータ、T7プロモータ、U6プロモータ、H1プロモータ、レトロウイルスのラウス肉腫ウイルスLTRプロモータ、サイトメガロウイルス(CMV)プロモータ、SV40プロモータ、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモータ、及びβ-アクチンプロモータが挙げられる。例えば、U6プロモータは、本明細書中に記載されるガイドRNA分子の発現を調節するのに用いることができる。
【0198】
一部の実施形態において、核酸はベクター(例えば、ウイルスベクター又はファージ)内に存在する。ベクターは、クローニングベクター又は発現ベクターであり得る。ベクターは、プラスミド、ファージミド、コスミドその他であり得る。ベクターは、注目する細胞(例えば、細菌細胞又は哺乳動物細胞)内でのベクターの増殖を可能にする1つ以上の調節要素を含んでもよい。一部の実施形態において、ベクターは、本明細書中に記載されるCRISPR関連(Cas)システムの単一の構成要素をコードする核酸を含む。一部の実施形態において、ベクターは、複数の核酸(各々、本明細書中に記載されるCRISPR関連(Cas)システムの構成要素をコードする)を含む。
【0199】
一態様において、本開示は、本明細書中に記載される核酸配列、すなわち、配列番号8~14のDR配列を含むCasタンパク質、誘導体、機能断片、又はガイド/crRNAをコードする核酸配列と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一の核酸配列を提供する。
【0200】
別の態様において、本開示はまた、本明細書中に記載されるアミノ酸配列、例えば配列番号1~7と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一のアミノ酸配列をコードする核酸配列を提供する。
【0201】
一部の実施形態において、核酸配列は、本明細書中に記載される配列と同じ少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100ヌクレオチド、例えば、連続ヌクレオチド又は非連続ヌクレオチド)を有する。一部の実施形態において、核酸配列は、本明細書中に記載される配列と異なる少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100ヌクレオチド、例えば、連続ヌクレオチド又は非連続ヌクレオチド)を有する。
【0202】
関連する実施形態において、本発明は、本明細書中に記載される配列と同じ少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100アミノ酸残基、例えば、連続アミノ酸残基又は非連続アミノ酸残基)を有するアミノ酸配列を提供する。一部の実施形態において、アミノ酸配列は、本明細書中に記載される配列と異なる少なくとも一部(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100アミノ酸残基、例えば、連続アミノ酸残基又は非連続アミノ酸残基)を有する。
【0203】
2つのアミノ酸配列の、又は2つの核酸配列の同一性パーセントを判定するために、配列は、最適な比較目的のためにアラインされる(例えば、ギャップが、最適なアラインメントのために、第1のアミノ酸及び第2のアミノ酸の一方若しくは双方、又は第1の核酸配列及び第2の核酸配列の一方若しくは双方に導入され得、そして非相同配列が、比較目的のために、無視され得る)。一般に、比較目的のためにアラインした参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも80%であるべきであり、一部の実施形態において、参照配列の長さの少なくとも90%、95%、又は100%である。続いて、対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置のアミノ酸残基又はヌクレオチドが比較される。第1の配列における位置が、第2の配列における対応する位置と同じアミノ酸残基又はヌクレオチドによって占められている場合、分子は、その位置にて同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適なアラインメントのために導入される必要があるギャップの数、及び各ギャップの長さを考慮した、配列によって共有される同一位置の数の関数である。本開示の目的のために、2つの配列間での配列の比較及び同一性パーセントの判定は、ギャップペナルティ12、ギャップ伸長ペナルティ4、及びフレームシフトギャップペナルティ5のBlossum 62スコアリングマトリックスを用いて達成することができる。
【0204】
本明細書中に記載されるタンパク質(例えば、CRISPR関連タンパク質又は付属タンパク質)は、核酸分子又はポリペプチドとして送達且つ使用することができる。
【0205】
特定の実施形態において、CRISPR関連タンパク質をコードする核酸分子、その誘導体又は機能断片は、宿主細胞又は生物における発現のためにコドン最適化される。宿主細胞として、確立された細胞株(例えば293T細胞)又は単離された一次細胞が挙げられ得る。核酸は、注目するあらゆる生物、特にヒト細胞又は細菌での使用のためにコドン最適化され得る。例えば、核酸は、あらゆる原核生物(大腸菌(E.coli)等)、又はあらゆる真核生物、例えば、ヒト、並びに酵母、蠕虫、昆虫、植物、及び藻類(食用作物、イネ、トウモロコシ、野菜、果実、樹木、イネ科植物が挙げられる)、脊椎動物、魚類、非ヒト哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、鳥類(ニワトリ等)、家畜(ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギその他)、又は非ヒト霊長類)が挙げられる他の非ヒト真核生物のためにコドン最適化され得る。コドン使用頻度表が、例えば、www.kazusa.orjp/codon/にて入手可能な「Codon Usage Database」にて容易に利用可能であり、当該表は、いくつかの方法で構成され得る。Nakamura et al.,Nucl.Acids Res.28:292,2000(その全体が参照によって本明細書中に組み込まれる)参照。また、特定の宿主細胞における発現のために特定の配列をコドン最適化するコンピュータアルゴリズム、例えばGene Forge(Aptagen;Jacobus,Pa.)が利用可能である。
【0206】
コドン最適化された配列の例が、この場合、本明細書中で考察されるように、真核生物、例えばヒトにおける発現のために(すなわち、ヒトにおける発現のために最適化されている)、又は別の真核生物、動物、若しくは哺乳動物のために最適化されている配列である;例えば、国際公開第2014/093622号パンフレット(国際出願PCT/US2013/074667号明細書)におけるSaCas9ヒトコドン最適化配列参照。これが好まれる一方、他の例が可能であることは勿論であり、ヒト以外の宿主種のためのコドン最適化、又は特定の器官のためのコドン最適化が知られている。一般に、コドン最適化は、注目する宿主細胞内での発現の増強のために、当該宿主細胞の遺伝子においてより高頻度で、又は最も高頻度で用いられるコドンにより、本来のアミノ酸配列を維持しながら、本来の配列の少なくとも1つのコドン(例えば、約1、2、3、4、5、10、15、20、25、50個、又はそれを超えるコドン)を置換することによって核酸配列を修飾するプロセスを指す。種々の種が、特定のアミノ酸の特定のコドンについて、特定のバイアスを示す。コドンバイアス(生物間のコドン使用頻度の差異)は、多くの場合、メッセンジャーRNA(mRNA)の翻訳の効率と相関する。これは逆に、とりわけ、翻訳されることとなるコドンの特性及び特定のトランスファーRNA(tRNA)分子の利用能に依存すると考えられている。細胞内での選択されたtRNAの優位性は、通常、ペプチド合成において最も高頻度で用いられるコドンの反映である。したがって、遺伝子を、コドン最適化に基づいて、所与の生物における最適な遺伝子発現のために調整することができる。コドン使用頻度表が、例えば、http://www.kazusa.orjp/codon/にて入手可能な「Codon Usage Database」にて容易に利用可能であり、当該表は、いくつかの方法で構成され得る。Nakamura,Y.,et al.“Codon usage tabulated from the international DNA sequence databases:status for the year 2000”Nucl.Acids Res.28:292(2000)参照。また、特定の宿主細胞における発現のために特定の配列をコドン最適化するコンピュータアルゴリズム、例えばGene Forge(Aptagen;Jacobus,PA)が利用可能である。一部の実施形態において、Casをコードする配列内の1つ以上のコドン(例えば、1、2、3、4、5、10、15、20、25、50個、又はそれを超える、又は全てのコドン)は、特定のアミノ酸のために最も高頻度で使用されるコドンに相当する。
【0207】
4.RNAガイド又はcrRNA
一部の実施形態において、本明細書中に記載されるCRISPRシステムは、少なくともRNAガイド(例えば、gRNA又はcrRNA)を含む。
【0208】
複数のRNAガイドのアーキテクチャは、当該技術(例えば、国際公開第2014/093622号パンフレット及び国際公開第2015/070083号パンフレット(これらの各々の全体の内容が、参照によって本明細書に組み込まれる)参照)において知られている。
【0209】
一部の実施形態において、本明細書中に記載されるCRISPRシステムは、複数のRNAガイド(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8つ、又はそれを超えるRNAガイド)を含む。
【0210】
一部の実施形態において、RNAガイドはcrRNAを含む。一部の実施形態において、RNAガイドは、tracrRNAではなくcrRNAを含む。
【0211】
複数のCRISPRシステム由来のガイドRNAの配列は、通常、当該技術において知られている。例えば、Grissa et al.(Nucleic Acids Res.35(ウェブサーバー刊行物):W52-7,2007;Grissa et al.,BMC Bioinformatics 8:172,2007;Grissa et al.,Nucleic Acids Res.36(ウェブサーバー刊行物):W145-8,2008;及びMoller and Liang,PeerJ 5:e3788,2017;crispr.i2bc.paris-saclayfr/crispr/BLAST/CRISPRsBlast.phpでのCRISPRデータベース;及びgithub.com/molleraj/MetaCRASTにて入手可能なMetaCRAST)参照。全てが参照によって本明細書に組み込まれる。
【0212】
一部の実施形態において、crRNAは、ダイレクトリピート(DR)配列及びスペーサー配列を含む。特定の実施形態において、crRNAは、好ましくはスペーサー配列の3’末端にて、ガイド配列又はスペーサー配列に連結されたダイレクトリピート配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。
【0213】
一般に、Casタンパク質は、成熟crRNAとの複合体を形成し、スペーサー配列は、複合体を、スペーサー配列と相補的な、且つ/又はスペーサー配列にハイブリダイズする標的RNAとの配列特異的結合に導く。結果として生じた複合体は、標的RNAに結合されるCasタンパク質及び成熟crRNAを含む。
【0214】
Cas13eシステム及びCas13fシステムについてのダイレクトリピート配列は、通常、とりわけ末端にて、十分に保存されており、5’末端では、Cas13eについてはGCTG、そしてCas13fについてはGCTGTを有し、3’末端では、Cas13eについてはCAGC、そしてCas13fについてはACAGCと逆相補的である。この保存は、遺伝子座内のタンパク質と潜在的に相互作用するRNAステム-ループ構造について、強い塩基対形成を示唆している。
【0215】
一部の実施形態において、ダイレクトリピート配列は、RNAにおける場合、5’-S1a-Ba-S2a-L-S2b-Bb-S1b-3’の一般的な二次構造を含み、セグメントS1a及びS1bは、逆相補的配列であり、Cas13eにおいて4つのヌクレオチドを、そしてCas13fにおいて5つのヌクレオチドを有する第1のステム(S1)を形成し;セグメントBa及びBbは、互いに塩基対形成せずに、対称形であるか又はほぼ対称形のバルジ(B)を形成し、Cas13eにおいてそれぞれ5つのヌクレオチドを、そしてCas13fにおいてそれぞれ5つ(Ba)及び4つ(Bb)の、又は6つ(Ba)及び5つ(Bb)のヌクレオチドを有し;セグメントS2a及びS2bは、逆相補的配列であり、Cas13eにおいて5つの塩基対を、そしてCas13fにおいて6つ又は5つの塩基対を有する第2ステム(S2)を形成し;Lは、Cas13eにおいて8-ヌクレオチドループであり、そしてCas13fにおいて5-ヌクレオチドループである。
図2参照。
【0216】
特定の実施形態において、S1aは、Cas13fにおいて一連のGCUGを、そしてCas13eにおいて一連のGCUGUを有する。
【0217】
特定の実施形態において、S2aは、Cas13fにおいて一連のGCCCCを、そしてCas13eにおいて一連のA/G CCUC G/Aを有する(式中、最初のA又はGは、不在であってもよい)。
【0218】
一部の実施形態において、ダイレクトリピート配列は、配列番号8~14の核酸配列を含むか、又はそれからなる。
【0219】
本明細書中で用いられる「ダイレクトリピート配列」は、CRISPR遺伝子座内のDNAコード配列を、又はcrRNA内の同じものによってコードされるRNAを指し得る。ゆえに、配列番号8~14のいずれかが、RNA分子、例えばcrRNAの文脈において言及される場合、各TはUを表すことが理解される。
【0220】
一部の実施形態において、ダイレクトリピート配列は、配列番号8~14の最大1、2、3、4、5、6、7、又は8ヌクレオチドの欠失、挿入、又は置換を有する核酸配列を含むか、又はそれからなる。一部の実施形態において、ダイレクトリピート配列は、配列番号8~14との配列同一性が少なくとも80%、85%、90%、95%、又は97%である(例えば、配列番号8~14におけるヌクレオチドの欠失、挿入、又は置換に起因する)核酸配列を含むか、又はそれからなる。一部の実施形態において、ダイレクトリピート配列は、配列番号8~14のいずれかの1つと同一でないが、配列番号8~14のいずれか1つの相補体と、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズすることができるか、又は配列番号8~14のいずれか1つの相補体に、生理学的条件下で結合することができる核酸配列を含むか、又はそれからなる。
【0221】
特定の実施形態において、欠失、挿入、又は置換は、配列番号8~14の全体的な二次構造を変えない(例えば、ステム、バルジ、及びループの相対的な位置及び/又はサイズは、元々のステム、バルジ、及びループから大きく逸脱しない)。例えば、欠失、挿入、又は置換は、バルジ又はループ領域内に、バルジの全体的な対称性が大部分は同じままであるようにあり得る。欠失、挿入、又は置換は、ステム内に、ステムの全長が元々のステムから大きく逸脱しないようにあり得る(例えば、2つのステムの各々において1塩基対を加えること、又は欠失させることは、4つの総塩基変化に相当する)。
【0222】
特定の実施形態において、欠失、挿入、又は置換は、一方若しくは双方のステムにおいて±1若しくは2塩基対を有し得(
図2参照)、バルジ内の単鎖の一方若しくは双方のステムにおいて±1、2、若しくは3塩基を有し得、且つ/又はループ領域において±1、2、3、若しくは4塩基を有し得る派生的なDR配列をもたらす。
【0223】
特定の実施形態において、配列番号8~14のいずれか1つと異なる先のダイレクトリピート配列はいずれも、配列番号8~14のDR配列として、Cas13eタンパク質又はCas13fタンパク質内のダイレクトリピート配列として機能する能力を保持する。
【0224】
一部の実施形態において、ダイレクトリピート配列は、配列番号8~14のいずれか1つの核酸配列を有する核酸を含むか、又はそれからなり、最初の3、4、5、6、7、又は8つの3’ヌクレオチドのトランケーションがある。
【0225】
一部の実施形態において、Casタンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を含み、そしてcrRNAは、ダイレクトリピート配列を含み、ダイレクトリピート配列は、配列番号8の核酸配列を含むか、又はそれからなる。
【0226】
一部の実施形態において、Casタンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列を含み、そしてcrRNAは、ダイレクトリピート配列を含み、ダイレクトリピート配列は、配列番号9の核酸配列を含むか、又はそれからなる。
【0227】
一部の実施形態において、Casタンパク質は、配列番号3のアミノ酸配列を含み、そしてcrRNAは、ダイレクトリピート配列を含み、ダイレクトリピート配列は、配列番号10の核酸配列を含むか、又はそれからなる。
【0228】
一部の実施形態において、Casタンパク質は、配列番号4のアミノ酸配列を含み、そしてcrRNAは、ダイレクトリピート配列を含み、ダイレクトリピート配列は、配列番号11の核酸配列を含むか、又はそれからなる。
【0229】
一部の実施形態において、Casタンパク質は、配列番号5のアミノ酸配列を含み、そしてcrRNAは、ダイレクトリピート配列を含み、ダイレクトリピート配列は、配列番号12の核酸配列を含むか、又はそれからなる。
【0230】
一部の実施形態において、Casタンパク質は、配列番号6のアミノ酸配列を含み、そしてcrRNAは、ダイレクトリピート配列を含み、ダイレクトリピート配列は、配列番号13の核酸配列を含むか、又はそれからなる。
【0231】
一部の実施形態において、Casタンパク質は、配列番号7のアミノ酸配列を含み、そしてcrRNAは、ダイレクトリピート配列を含み、ダイレクトリピート配列は、配列番号14の核酸配列を含むか、又はそれからなる。
【0232】
古典的なCRISPRシステムでは、ガイド配列(例えばcrRNA)と、その対応する標的配列との相補性の程度は、約50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、97.5%、99%、又は100%であり得る。一部の実施形態において、相補性の程度は、90~100%である。
【0233】
ガイドRNAは、約5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、75、100、125、150、175、200、又はそれを超えるヌクレオチド長であり得る。例えば、機能Cas13e又はCas13fエフェクタータンパク質、又はそのホモログ、オルソログ、誘導体、融合体、コンジュゲート、若しくは機能断片に用いられるスペーサーは、10~60ヌクレオチド、20~50ヌクレオチド、25~45ヌクレオチド、25~35ヌクレオチド、又は約27、28、29、30、31、32、若しくは33ヌクレオチドであり得る。しかしながら、先のいずれかのdCasバージョンに用いられるスペーサーは、10~200ヌクレオチド、20~150ヌクレオチド、25~100ヌクレオチド、25~85ヌクレオチド、35~75ヌクレオチド、45~60ヌクレオチド、又は約46、47、48、49、50、51、52、53、54、若しくは55ヌクレオチドであり得る。
【0234】
オフターゲット相互作用を引き下げるために、例えば、相補性が低い標的配列とのガイド相互作用を引き下げるために、CRISPRシステムが、標的と、80%、85%、90%、又は95%を超える相補性を有するオフターゲット配列とを区別することができるように、変異をCRISPRシステムに導入することができる。一部の実施形態において、相補性の程度は、80%~95%、例えば、約83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、又は95%である(例えば、1、2、又は3つのミスマッチを有する18ヌクレオチドのオフターゲットから、18ヌクレオチドを有する標的を区別する)。したがって、一部の実施形態において、ガイド配列とその対応する標的配列との相補性の程度は、94.5%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.5%、又は99.9%よりも大きい。一部の実施形態において、相補性の程度は100%である。
【0235】
当該分野において、機能的であるほど十分な相補性があるならば、完全な相補性が必要とされないことが知られている。切断効率の調節は、スペーサー配列と標的配列との間で、ミスマッチ、例えば1つ又は2つのミスマッチ等の1つ以上のミスマッチの導入(スペーサー/標的に沿うミスマッチの位置を含む)によって開発することができる。ミスマッチ、例えば二重ミスマッチが、より中心(すなわち、3’又は5’末端ではない)に位置決めされる;切断効率は、より影響される。したがって、スペーサー配列に沿ってミスマッチ位置を選択することによって、切断効率を調節することができる。例えば、標的の100%未満の切断が(例えば細胞集団において)所望されるならば、スペーサーと標的配列との間の1つ又は2つのミスマッチが、スペーサー配列内に導入され得る。
【0236】
VI型CRISPR-Casエフェクターは、複数のRNAガイドを使用することで、当該エフェクター、並びにこれを含むシステム及び複合体の、複数の核酸を標的とする能力を可能にすることが実証されている。一部の実施形態において、本明細書中に記載されるCRISPRシステムは、複数の(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、又はそれを超える)RNAガイドを含む。一部の実施形態において、本明細書中に記載されるCRISPRシステムは、単RNA鎖、又は単RNA鎖をコードする核酸を含み、RNAガイドは、縦一列になって配置されている。単RNA鎖は、同じRNAガイドの複数のコピー、異なるRNAガイドの複数のコピー、又はそれらの組合せを含み得る。本明細書中に記載されるVI-E型及びVI-F型CRISPR-Casエフェクタータンパク質のプロセシング能力は、これらのエフェクターが、活性の損失なく複数の標的核酸(例えば標的RNA)を標的とすることができるのを可能にする。一部の実施形態において、VI-E型及びVI-F型CRISPR-Casエフェクタータンパク質は、異なる標的RNAに向けられる複数のRNAガイドと複合体形成されて送達され得る。一部の実施形態において、VI-E型及びVI-F型CRISPR-Casエフェクタータンパク質は、各々が異なる標的核酸に特異的である複数のRNAガイドと共に送達され得る。CRISPR関連タンパク質を用いた多重化の方法が、例えば、米国特許第9,790,490 B2号明細書及び欧州特許第3009511 B1号明細書に記載されており、これらの特許の各々の全体の内容は、参照によって本明細書に明示的に組み込まれる。
【0237】
crRNAのスペーサー長は、約10~60ヌクレオチド、例えば、15~50ヌクレオチド、20~50ヌクレオチド、25~50ヌクレオチド、又は19~50ヌクレオチドに及び得る。一部の実施形態において、ガイドRNAのスペーサー長は、少なくとも16ヌクレオチド、少なくとも17ヌクレオチド、少なくとも18ヌクレオチド、少なくとも19ヌクレオチド、少なくとも20ヌクレオチド、少なくとも21ヌクレオチド、又は少なくとも22ヌクレオチドである。一部の実施形態において、スペーサー長は、15~17ヌクレオチド(例えば、15、16、又は17ヌクレオチド)、17~20ヌクレオチド(例えば、17、18、19、又は20ヌクレオチド)、20~24ヌクレオチド(例えば、20、21、22、23、又は24ヌクレオチド)、23~25ヌクレオチド(例えば、23、24、又は25ヌクレオチド)、24~27ヌクレオチド、27~30ヌクレオチド、30~45ヌクレオチド(例えば、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、又は45ヌクレオチド)、30又は35~40ヌクレオチド、41~45ヌクレオチド、45~50ヌクレオチド(例えば、45、46、47、48、49、又は50ヌクレオチド)であり、又はそれよりも長い。一部の実施形態において、スペーサー長は、約15~約42ヌクレオチドである。
【0238】
一部の実施形態において、ガイドRNAのダイレクトリピート長は、15~36ヌクレオチドであり、少なくとも16ヌクレオチドであり、16~20ヌクレオチド(例えば、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド)であり、20~30ヌクレオチド(例えば、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30ヌクレオチド)であり、30~40ヌクレオチド(例えば、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40ヌクレオチド)であり、又は約36ヌクレオチド(例えば、33、34、35、36、37、38、又は39ヌクレオチド)である。一部の実施形態において、ガイドRNAのダイレクトリピート長は36ヌクレオチドである。
【0239】
一部の実施形態において、crRNA/ガイドRNAの全長は、本明細書中で先に記載されるスペーサー配列長のいずれか1つよりも約36ヌクレオチド長い。例えば、crRNA/ガイドRNAの全長は、45~86ヌクレオチド、60~86ヌクレオチド、62~86ヌクレオチド、又は63~86ヌクレオチドであり得る。
【0240】
crRNA配列は、crRNAとCRISPR関連タンパク質との複合体の形成及び標的への結合の成功を可能にするのと同時に、ヌクレアーゼ活性の成功を可能にしない(すなわち、ヌクレアーゼ活性なし/インデルを引き起こさない)ように修飾され得る。これらの修飾ガイド配列は、「デッドcrRNA」、「デッドガイド」、又は「デッドガイド配列」と称される。これらのデッドガイド又はデッドガイド配列は、ヌクレアーゼ活性に関して、触媒的に不活性であり得、又は高次構造的に不活性であり得る。デッドガイド配列は典型的に、活性があるRNA切断をもたらす各ガイド配列よりも短い。一部の実施形態において、デッドガイドは、ヌクレアーゼ活性を有する各ガイドRNAよりも5%、10%、20%、30%、40%、又は50%短い。ガイドRNAのデッドガイド配列は、13~15ヌクレオチド長(例えば、13、14、又は15ヌクレオチド長)、15~19ヌクレオチド長、又は17~18ヌクレオチド長(例えば、17ヌクレオチド長)であり得る。
【0241】
ゆえに、一態様において、本開示は、本明細書中に記載される機能CRISPR関連タンパク質及びcrRNAを含む、天然に存在しないか、又は操作されたCRISPRシステムを提供し、crRNAは、デッドcrRNA配列を含むことによって、crRNAは、標的配列に、検出可能なヌクレアーゼ活性(例えばRNase活性)なしで、細胞内の注目するゲノム遺伝子座にCRISPRシステムが向けられるようにハイブリダイズすることができる。
【0242】
デッドガイドの詳細な説明は、例えば、国際公開第2016/094872号パンフレットに記載されており、この出願は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0243】
ガイドRNA(例えばcrRNA)は、誘導システムの構成要素として生成することができる。システムの誘導性質は、遺伝子編集又は遺伝子発現の時空制御(spatio-temporal control)を可能にする。一部の実施形態において、誘導システム用の刺激の例として、電磁放射線、音響エネルギー、化学エネルギー、及び/又は熱エネルギーが挙げられる。
【0244】
一部の実施形態において、ガイドRNA(例えばcrRNA)の転写は、誘導性プロモータ、例えば、テトラサイクリン又はドキシサイクリン制御転写活性化(Tet-On及びTet-Off発現システム)、ホルモン誘導遺伝子発現システム(例えば、エクジソン誘導遺伝子発現システム)、及びアラビノース誘導遺伝子発現システムによって調節することができる。誘導システムの他の例として、低分子2-ハイブリッド転写活性化システム(FKBP、ABAその他)、光誘導システム(フィトクローム、LOVドメイン、又はクリプトクロム)、又は光誘導転写エフェクター(LITE)が挙げられる。これらの誘導システムは、例えば、国際公開第2016205764号パンフレット及び米国特許第8795965号明細書に記載されており、これらは双方とも、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0245】
化学修飾は、crRNAのリン酸骨格、糖、及び/又は塩基に施すことができる。ホスホロチオアート等の骨格修飾は、リン酸骨格上の電荷を修飾し、且つオリゴヌクレオチドの送達及びヌクレアーゼ耐性を補助する(例えば、Eckstein,“Phosphorothioates,essential components of therapeutic oligonucleotides”,Nucl.Acid Ther.,24,pp.374-387,2014参照);糖、例えば2’-O-メチル(2’-OMe)、2’-F、及びロック核酸(LNA)の修飾は、塩基対形成及びヌクレアーゼ耐性の双方を増強する(例えば、Allerson et al.“Fully 2’-modified oligonucleotide duplexes with improved in vitro potency and stability compared to unmodified small interfering RNA”,J.Med.Chem.48.4:901-904,2005参照)。2-チオウリジン又はN6-メチルアデノシン等の化学修飾塩基は、とりわけ、より強い、又はより弱い塩基対形成を可能にし得る(例えば、Bramsen et al.,“Development of therapeutic-grade small interfering RNAs by chemical engineering”,Front.Genet.,2012年8月20日;3:154参照)。加えて、RNAは、蛍光色素、ポリエチレングリコール、又はタンパク質が挙げられる種々の機能部分との5’及び3’末端コンジュゲーションに適用可能である。
【0246】
多種多様な修飾を、化学的に合成されたcrRNA分子に施すことができる。例えば、ヌクレアーゼ耐性を向上させるような2’-OMeによるオリゴヌクレオチドの修飾は、ワトソン-クリック塩基対形成の結合エネルギーを変えることができる。さらに、2’-OMe修飾は、細胞内の形質移入試薬、タンパク質、又は他のあらゆる分子とのオリゴヌクレオチドの相互作用の仕方に影響を与え得る。当該修飾の影響は、実験に基づく試験によって判定することができる。
【0247】
一部の実施形態において、crRNAは、1つ以上のホスホロチオアート修飾を含む。一部の実施形態において、crRNAは、塩基対形成を増強し、且つ/又はヌクレアーゼ耐性を高める目的で、1つ以上のロック核酸を含む。
【0248】
これらの化学修飾についての要約を、例えば、Kelley et al.,“Versatility of chemically synthesized guide RNAs for CRISPR-Cas9 genome editing”,J.Biotechnol.233:74-83,2016;国際公開第2016205764号パンフレット;及び米国特許第8,795,965 B2号明細書において見出すことができる;これらは各々、その全体が参照によって組み込まれる。
【0249】
本明細書中に記載されるRNAガイド(例えばcrRNA)の配列及び全長を最適化することができる。一部の実施形態において、RNAガイドの最適化された全長は、crRNAのプロセシングされた形態(すなわち成熟crRNA)を同定することによって、又はcrRNAテトラループについての実験に基づく全長研究によって判定することができる。
【0250】
また、crRNAは、1つ以上のアプタマー配列を含み得る。アプタマーはオリゴヌクレオチド分子又はペプチド分子であり、特定の三次元構造を有しており、特定の標的分子に結合することができる。アプタマーは、遺伝子エフェクター、遺伝子アクティベータ、又は遺伝子リプレッサに特異的であり得る。一部の実施形態において、アプタマーは、特定の遺伝子エフェクター、遺伝子アクティベータ、又は遺伝子リプレッサに特異的であり、且つこれを動員し、且つ/又はこれに結合するタンパク質に特異的であり得る。エフェクター、アクティベータ、又はリプレッサは、融合タンパク質の形態で存在し得る。一部の実施形態において、ガイドRNAは、同じアダプタータンパク質に特異的である2つ以上のアプタマー配列を有する。一部の実施形態において、2つ以上のアプタマー配列は、異なるアダプタータンパク質に特異的である。アダプタータンパク質の例として、MS2、PP7、Qβ、F2、GA、fr、JP501、M12、R17、BZ13、JP34、JP500、KU1、M11、MX1、TW18、VK、SP、FI、ID2、NL95、TW19、AP205、φkCb5、φkCb8r、φkCb12r、φkCb23r、7s、及びPRR1が挙げられ得る。したがって、一部の実施形態において、アプタマーは、本明細書中に記載されるアダプタータンパク質のいずれか1つに特異的に結合する結合タンパク質から選択される。一部の実施形態において、アプタマー配列は、MS2結合ループ(5’-ggcccAACAUGAGGAUCACCCAUGUCUGCAGgggcc-3’)である。一部の実施形態において、アプタマー配列は、QBeta結合ループ(5’-ggcccAUGCUGUCUAAGACAGCAUgggcc-3’)である。一部の実施形態において、アプタマー配列は、PP7結合ループ(5’-ggcccUAAGGGUUUAUAUGGAAACCCUUAgggcc-3’)である。アプタマーの詳細な説明を、例えば、Nowak et al.,“Guide RNA engineering for versatile Cas9 functionality”,Nucl.Acid.Res.,44(20):9555-9564,2016;及び国際公開第2016205764号パンフレットにおいて見出すことができ、これらは、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0251】
特定の実施形態において、方法は、化学修飾ガイドRNAを使用する。ガイドRNA化学修飾の例として、以下に限定されないが、1つ以上の末端ヌクレオチドでの2’-O-メチル(M)、2’-O-メチル3’-ホスホロチオアート(MS)、又は2’-O-メチル3’-チオPACE(MSP)の組込みが挙げられる。そのような化学修飾ガイドRNAは、非修飾ガイドRNAと比較した、安定性の増大及び活性の増大を含み得るが、オンターゲット対オフターゲットの特異性は、予測可能でない。Hendel,Nat Biotechnol.33(9):985-9,2015(参照によって組み込まれる)参照。さらに、化学修飾ガイドRNAとして、限定されないが、ホスホロチオアート結合、及びリボース環の2’炭素と4’炭素間のメチレン架橋を含むロック核酸(LNA)ヌクレオチドを有するRNAが挙げられ得る。
【0252】
また、本発明は、複数の核酸構成要素を送達する方法を包含し、各核酸構成要素は、注目する様々な標的遺伝子座に特異的であることによって、注目する複数の標的遺伝子座を修飾する。複合体の核酸構成要素は、1つ以上のタンパク質結合RNAアプタマーを含んでもよい。1つ以上のアプタマーは、バクテリオファージコートタンパク質に結合することができる。バクテリオファージコートタンパク質は、Qβ、F2、GA、fr、JP501、MS2、M12、R17、BZ13、JP34、JP500、KU1、M11、MX1、TW18、VK、SP、FI、ID2、NL95、TW19、AP205、φCb5、φCb8r、φCb12r、φCb23r、7s、及びPRR1を含む群から選択され得る。特定の実施形態において、バクテリオファージコートタンパク質はMS2である。
【0253】
5.標的RNA
標的RNAは、注目するあらゆるRNA分子であり得、天然に存在するRNA分子及び操作されたRNA分子が挙げられる。標的RNAは、mRNA、tRNA、リボソームRNA(rRNA)、マイクロRNA(miRNA)、干渉RNA(siRNA)、リボザイム、リボスイッチ、サテライトRNA、マイクロスイッチ、マイクロザイム、又はウイルスRNAであり得る。
【0254】
一部の実施形態において、標的核酸は、容体又は疾患(例えば、感染症又は癌)と関連する。
【0255】
ゆえに、一部の実施形態において、本明細書中に記載されるシステムは、これらの核酸を標的とすることによって容体又は疾患を処置するのに用いることができる。例えば、容体又は疾患と関連する標的核酸として、罹患細胞(例えば、癌又は腫瘍細胞)内で過剰発現されるRNA分子があり得る。また、標的核酸として、毒性RNA及び/又は変異RNA(例えば、スプライシング欠損又は変異を有するmRNA分子)があり得る。また、標的核酸として、特定の微生物(例えば病原性細菌)に特異的なRNAがあり得る。
【0256】
6.複合体及び細胞
本発明の一態様は、(1)本明細書中に記載されるあらゆるCas13e/Cas13fエフェクタータンパク質、そのホモログ、オルソログ、融合体、誘導体、コンジュゲート、又は機能断片、及び(2)本明細書中に記載されるあらゆるガイドRNA(各々、標的RNAに少なくとも部分的に相補的であるように設計されたスペーサー配列を含む)、及びCas13e/Cas13fエフェクタータンパク質、そのホモログ、オルソログ、融合体、誘導体、コンジュゲート、又は機能断片と和合性のDR配列を含むCRISPR/Cas13e複合体又はCRISPR/Cas13f複合体を提供する。
【0257】
特定の実施形態において、複合体はさらに、ガイドRNAによって結合される標的RNAを含む。
【0258】
特定の実施形態において、複合体は、天然に存在しない/生じない。例えば、複合体の構成要素の少なくとも1つが、天然に存在しない/生じない。特定の実施形態において、Cas13e/Cas13fエフェクタータンパク質、そのホモログ、オルソログ、融合体、誘導体、コンジュゲート、又は機能断片は、例えば、野生型タンパク質と比較して、少なくとも1つのアミノ酸変異(欠失、挿入、及び/又は置換)の存在に起因して、天然に存在しない/生じない。特定の実施形態において、DR配列は、例えば、野生型配列内の少なくとも1つのヌクレオチド塩基の付加、欠失、及び/又は置換に起因して、天然に存在しない/生じない、すなわち、配列番号8~14のいずれでもない。特定の実施形態において、スペーサー配列は、存在しないか、又は対象Cas13e若しくはCas13fが存在する原核生物の野生型CRISPR遺伝子座内に存在するあらゆるスペーサー配列によってコードされないという点で、天然に存在しない。スペーサー配列は、天然に存在するバクテリオファージ核酸と100%相補的でない場合、天然に存在し得ない。
【0259】
関連する態様において、本発明はまた、本発明の複合体のいずれかを含む細胞を提供する。
【0260】
特定の実施形態において、細胞は原核生物である。
【0261】
特定の実施形態において、細胞は真核生物である。細胞が真核生物である場合、真核細胞内の複合体は、Cas13e/Cas13fが単離される原核生物において、天然に存在するCas13e/Cas13f複合体であり得る。
【0262】
7.CRISPRシステムを用いる方法
本明細書中に記載されるCRISPRシステムは、細胞型の多重化の際に標的ポリヌクレオチド又は核酸を修飾する(例えば、欠失させる、挿入する、転座させる、不活化する、又は活性化する)ことを含む多種多様な有用性を有する。CRISPRシステムは、例えば、DNA/RNA検出(例えば、特異的高感度酵素リポーターアンロック(SHERLOCK))、核酸の追跡及び標識化、富化アッセイ(所望の配列を背景から抽出)、干渉RNA又はmiRNAの制御、循環腫瘍DNAの検出、次世代ライブラリの調製、薬物スクリーニング、疾患診断及び予測、並びに種々の遺伝的障害の処置における広範囲の用途がある。
【0263】
DNA/RNA検出
一態様において、本明細書中に記載されるCRISPRシステムは、DNA又はRNA検出に用いることができる。実施例に示されるように、本発明のCas13eタンパク質及びCas13fタンパク質は、スペーサー配列が約30ヌクレオチドである場合、そのガイドRNA依存性特異的RNase活性の活性化により、非特異的/コラテラルRNase活性を示す。ゆえに、本発明のCRISPR関連タンパク質は、CRISPR RNA(crRNAs)により再プログラム化されて、特異的RNA検知用のプラットフォームを提供することができる。特定のスペーサー配列長を選択するによって、そしてそのRNA標的の認識により、活性化されたCRISPR関連タンパク質は、直ぐ近くの非標的RNAの「コラテラル」切断に携わる。このcrRNAプログラム化コラテラル切断活性により、CRISPRシステムは、プログラム細胞死をトリガーすることによって、又は標識されたRNAの非特異的分解によって、特定のRNAの存在を検出することができる。
【0264】
SHERLOCK法(Specific High Sensitivity Enzymatic Reporter UnLOCKing)は、リポーターRNAの核酸増幅及びコラテラル切断に基づくアトモル感度でのインビトロ核酸検出プラットフォームを提供し、標的のリアルタイム検出が可能となる。シグナル検出を達成するために、検出は、様々な等温増幅工程と組み合わせることができる。例えば、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)を、T7転写とカップリングして、増幅されたDNAを、以降の検出のためにRNAに変換することができる。RPAによる増幅、増幅されたDNAの、RNAへのT7 RNAポリメラーゼ転写、及びリポーターシグナルのコラテラルRNA切断媒介放出による標的RNAの検出の組合せが、SHERLOCKと称される。SHERLOCKにCRISPRを用いる方法が、例えばGootenberg,et al.“Nucleic acid detection with CRISPR-Cas13a/C2c2”,Science,2017年4月28日;356(6336):438-442において詳細に記載されており、この文献は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0265】
CRISPR関連タンパク質を、ノーザンブロットアッセイに用いることができ、これは、電気泳動を用いて、RNAサンプルをサイズによって分離するものである。CRISPR関連タンパク質を用いて、標的RNA配列に特異的に結合させて、これを検出することができる。また、CRISPR関連タンパク質は、蛍光タンパク質(例えばGFP)に融合することができ、そしてこれを用いて、生細胞内のRNA局在化を追跡することができる。より詳細には、CRISPR関連タンパク質は、先に記載するようにRNAをもはや切断しないという点で、不活化することができる。ゆえに、CRISPR関連タンパク質を用いて、RNA又は特定のスプライスバリアントの局在化、mRNA転写産物のレベル、転写産物のアップレギュレーション又はダウンレギュレーション、及び疾患特有の診断を判定することができる。CRISPR関連タンパク質は、例えば、細胞のハイスループットスクリーニング、及びセルソーティング後の生細胞の回収を可能にする、蛍光顕微鏡観察又はフローサイトメトリー、例えば蛍光活性化セルソーティング(FACS)を用いて、(生)細胞内のRNAの視覚化に用いることができる。DNA及びRNAを如何に検出するかに関する詳細な説明を、例えば、国際公開第2017/070605号パンフレットにおいて見出すことができ、この出願は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0266】
一部の実施形態において、本明細書中に記載されるCRISPRシステムを、マルチプレックスエラーロバスト蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(MERFISH)に用いることができる。当該方法は、例えば、Chen et al.,“Spatially resolved, highly multiplexed RNA profiling in single cells”,Science,2015年4月24日;348(6233):aaa6090に記載されており、この文献はその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0267】
一部の実施形態において、本明細書に記載されるCRISPRシステムを用いて、サンプル(例えば、臨床サンプル、細胞、又は細胞溶解液)内の標的RNAを検出することができる。本明細書中に記載されるVI-E型及び/又はVI-F型CRISPR-Casエフェクタータンパク質のコラテラルRNase活性は、スペーサー配列が、特定の選択された長さ(例えば約30ヌクレオチド)のものである場合にエフェクタータンパク質が標的核酸に結合する場合、活性化される。注目する標的RNAに結合することにより、エフェクタータンパク質は、標識されたディテクタRNAを切断して、シグナル(例えば、増大したシグナル又は低下したシグナル)を生成することによって、サンプルにおける標的RNAの定性的且つ定量的な検出を可能にする。サンプル内のRNAの特異的検出及び定量化により、診断法が挙げられる多数の用途が可能となる。一部の実施形態において、方法は、サンプルを以下と接触させることを含む:i)RNAガイド(例えばcrRNA)、及び/又はRNAガイドをコードする核酸;RNAガイドは、標的RNAにハイブリダイズすることができるダイレクトリピート配列及びスペーサー配列からなる;(ii)VI-E型若しくはVI-F型CRISPR-Casエフェクタータンパク質(Cas13e又はCas13f)、及び/又はエフェクタータンパク質をコードする核酸;並びに(iii)標識されたディテクタRNA;エフェクタータンパク質は、RNAガイドと結合して、複合体を形成し;RNAガイドは、標的RNAにハイブリダイズし;複合体の、標的RNAへの結合により、エフェクタータンパク質は、コラテラルRNase活性を示して、標識されたディテクタRNAを切断する;並びにb)標識されたディテクタRNAの切断によって生成される検出シグナルを測定することであり、前記測定することは、サンプル内の一本鎖標的RNAの検出を実現する。一部の実施形態において、方法はさらに、検出シグナルを参照シグナルと比較することと、サンプル内の標的RNAの量を判定することとを含む。一部の実施形態において、測定することは、金ナノ粒子検出、蛍光偏光、コロイド相転移/分散、電気化学的検出、及び半導体ベースの検知を用いて実行される。一部の実施形態において、標識されたディテクタRNAは、蛍光発光色素対、蛍光共鳴エネルギー伝達(FRET)対、又はクエンチャ/蛍石対を含む。一部の実施形態において、エフェクタータンパク質による標識されたディテクタRNAの切断により、標識されたディテクタRNAによって生成される検出シグナルの量が、低下するか、又は増大する。一部の実施形態において、標識されたディテクタRNAは、エフェクタータンパク質による切断前の第1の検出シグナル、及びエフェクタータンパク質による切断後の第2の検出シグナルを生成する。一部の実施形態において、標識されたディテクタRNAがエフェクタータンパク質によって切断された場合に、検出シグナルが生成される。一部の実施形態において、標識されたディテクタRNAは、修飾核酸塩基、修飾糖部分、修飾核酸結合、又はそれらの組合せを含む。一部の実施形態において、方法は、複数のVIE型及び/又はVI-F型CRISPR-Cas(Cas13e及び/又はCas13f)システム(各々が異なるオーソログエフェクタータンパク質及び対応するRNAガイドを含む)を用いた、サンプル内の複数の独立した標的RNA(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、又はそれを超える標的RNA)のマルチチャンネル検出を含み、サンプル内の複数の標的RNAの分化が可能となる。一部の実施形態において、方法は、VI-E型及び/又はVI-F型CRISPR-Casシステムの複数の例(各々が、コラテラルRNase基質が区別可能なオーソログエフェクタータンパク質を含有する)を使った、サンプル内の複数の独立した標的RNAのマルチチャンネル検出を含む。CRISPR関連タンパク質を用いてサンプル内のRNAを検出する方法が、例えば、米国特許出願公開第2017/0362644号明細書に記載されており、この出願の全体の内容が、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0268】
核酸の追跡及び標識化
細胞プロセスは、タンパク質とRNAとDNA間の分子相互作用のネットワークによって決まる。タンパク質-DNA相互作用及びタンパク質-RNA相互作用の正確な検出が、そのようなプロセスを理解するための鍵である。インビトロ近接標識技術が、リポーター基、例えば、光活性化基と組み合わせた親和性タグを使用して、注目するタンパク質又はRNAの近くでポリペプチド及びRNAをインビトロ標識する。UV照射の後に、光活性化基は、タグ付けされた分子に近接するタンパク質及び他の分子と反応することによって、タグ付けされた分子を標識する。その後、標識された相互作用分子を回収して同定することができる。CRISPR関連タンパク質は、例えば、選択されたRNA配列にプローブを向けるのに用いることができる。また、当該用途は、疾患、又は培養が困難な細胞型のインビボ画像化用の動物モデルに応用することができる。核酸の追跡及び標識化の方法は、例えば、米国特許第8,795,965号明細書、国際公開第2016205764号パンフレット、及び国際公開第2017070605号パンフレットに記載されており、これらは各々、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0269】
RNAの単離、精製、富化、及び/又は枯渇
本明細書中に記載されるCRISPRシステム(例えばCRISPR関連タンパク質)を用いて、RNAを単離且つ/又は精製することができる。CRISPR関連タンパク質は、RNA-CRISPR関連タンパク質複合体を単離且つ/又は精製するのに用いることができる親和性タグに融合し得る。当該用途は、例えば、細胞内の遺伝子発現プロファイルの分析に有用である。
【0270】
一部の実施形態において、CRISPR関連タンパク質を用いて、特定の非コードRNA(ncRNA)を標的とすることによって、その活性をブロックすることができる。一部の実施形態において、CRISPR関連タンパク質を用いて、特定のRNAを特異的に富化する(安定性その他を増大させることが挙げられるが、これに限定されない)ことができるか、又は代わりに、特定のRNA(例えば、特定のスプライスバリアント、アイソフォームその他)を特異的に枯渇させることができる。
【0271】
これらの方法は、例えば、米国特許第8,795,965号明細書、国際公開第2016205764号パンフレット、及び国際公開第2017070605号パンフレットに記載されている;これらは各々、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0272】
ハイスループットスクリーニング
本明細書中に記載されるCRISPRシステムを、次世代配列決定(NGS)ライブラリを調製するのに用いることができる。例えば、対費用効果の高いNGSライブラリを生じさせるために、CRISPRシステムを用いて、標的遺伝子のコード配列を崩壊させることができ、そしてCRISPR関連タンパク質が形質移入されたクローンを、次世代配列決定(例えば、Ion Torrent PGMシステムによる)によって同時にスクリーニングすることができる。NGSライブラリを如何に調製するかに関する詳細な説明を、例えば、Bell et al.,“A high-throughput screening strategy for detecting CRISPR-Cas9 induced mutations using next-generation sequencing”,BMC Genomics,15.1(2014):1002において見出すことができ、この文献は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0273】
操作される微生物
微生物(例えば、大腸菌(E.coli)、酵母、及び微細藻類)が、合成生物学に広く用いられている。合成生物学の開発は、種々の臨床用途が挙げられる広い有用性がある。例えば、プログラム可能なCRISPRシステムを用いて、標的細胞死についての毒性ドメインのタンパク質を、例えば標的転写産物として癌関連RNAを用いて、分割することができる。さらに、タンパク質-タンパク質相互作用に関与する経路が、例えばキナーゼ又は酵素等の適切なエフェクターとの融合複合体により、合成生体系において影響され得る。
【0274】
一部の実施形態において、ファージ配列を標的とするcrRNAを、微生物中に導入することができる。ゆえに、本開示はまた、微生物(例えば生成株)へのファージ感染の接種方法を提供する。
【0275】
一部の実施形態において、本明細書中で提供されるCRISPRシステムを用いて、微生物を操作する、例えば、収量を向上させるか、又は発酵効率を向上させることができる。例えば、本明細書中に記載されるCRISPRシステムを用いて、微生物、例えば酵母を操作して、発酵性糖からバイオ燃料若しくは生体ポリマーを生成することができ、又は発酵性糖の源として農業廃棄物に由来する植物由来リグノセルロースを分解することができる。より詳細には、本明細書中に記載される方法を用いて、バイオ燃料生成に必要とされる内因性遺伝子の発現を修飾することができ、且つ/又は内因性遺伝子を修飾することができ、これらは、バイオ燃料合成に干渉し得る。微生物を操作するこれらの方法が、例えば、Verwaal et al.,“CRISPR/Cpf1 enables fast and simple genome editing of Saccharomyces cerevisiae”,Yeast doi:10.1002/yea.3278,2017;及びHlavova et al.,“Improving microalgae for biotechnology-from genetics to synthetic biology”,Biotechnol.Adv.,33:1194-203,2015に記載されており、これらの文献は双方とも、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0276】
一部の実施形態において、本明細書中で提供されるCRISPRシステムを用いて、細胞(例えば、微生物、例えば操作された微生物)の死亡又は休止状態を誘導することができる。当該方法を用いて、以下に限定されないが、哺乳動物細胞(例えば、癌細胞又は組織培養細胞)、原虫、真菌細胞、ウイルスが感染した細胞、細胞内細菌が感染した細胞、細胞内原虫が感染した細胞、プリオンが感染した細胞、細菌(例えば、病原性細菌及び非病原性細菌)、原虫、並びに単細胞寄生虫及び多細胞寄生虫が挙げられる原核細胞及び真核細胞が挙げられる多数の細胞型の休止状態又は死亡を誘導することができる。例えば、合成生物学の分野では、増殖又は伝播を妨げるように操作された微生物(例えば細菌)を制御する機構を有することが非常に所望される。本明細書中に記載されるシステムを、操作された微生物の増殖又は伝播を調節且つ/又は妨げる「キル-スイッチ」として用いることができる。さらに、現在の抗生物質処置の代替物が、当該技術において必要とされている。また、本明細書中に記載されるシステムは、特定の微生物集団(例えば細菌集団)を死滅させるか、又は制御することが所望される用途に用いることができる。例えば、本明細書中に記載されるシステムは、属、種、又は株特異的な核酸(例えばRNA)を標的とするRNAガイド(例えばcrRNA)を含んでもよく、そして細胞に送達され得る。複合体形成して標的核酸に結合すると直ぐに、VI-E型及び/又はVI-F型CRISPR-Casエフェクタータンパク質のコラテラルRNase活性が活性化されて、微生物内での非標的RNAの切断に至って、最終的に休止状態又は死亡に終わる。一部の実施形態において、方法は、細胞を、VI-E型及び/若しくはVI-F型CRISPR-Casエフェクタータンパク質、又はエフェクタータンパク質をコードする核酸、及びRNAガイド(例えばcrRNA)、又はRNAガイドをコードする核酸を含む、本明細書中に記載されるシステムと接触させることを含み、スペーサー配列は、標的核酸(例えば、属、株、又は種特異的RNAガイド)の少なくとも15ヌクレオチド(例えば、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、又はそれを超えるヌクレオチド)と相補的である。特定のいかなる理論によっても拘束されることを望むものではないが、VI-E型及び/又はVI-F型CRISPR-Casエフェクタータンパク質による非標的RNAの切断は、プログラム細胞死、細胞毒性、アポトーシス、壊死、ネクロプトーシス、細胞死、細胞周期停止、細胞アネルギー、細胞成長の引下げ、又は細胞増殖の引下げを誘導し得る。例えば、細菌において、VI-E型及び/又はVI-F型CRISPR-Casエフェクタータンパク質による非標的RNAの切断は、静菌性であっても殺菌性であってもよい。
【0277】
植物における用途
本明細書中に記載されるCRISPRシステムは、植物における多種多様の有用性がある。一部の実施形態において、CRISPRシステムを用いて、植物のゲノムを操作する(例えば、生産を向上させるか、所望の翻訳後修飾を有する生成物を製造するか、又は工業製品を生成するための遺伝子を導入する)ことができる。一部の実施形態において、CRISPRシステムを用いて、所望の形質を植物(例えば、ゲノムへの遺伝性の修飾がある、又はない)に導入するか、又は植物細胞若しくは植物全体における内因性遺伝子の発現を調節することができる。
【0278】
一部の実施形態において、CRISPRシステムを用いて、特定のタンパク質、例えば、アレルゲンタンパク質(例えば、ピーナッツ、ダイズ、レンズマメ、エンドウ、緑莢インゲン、及びヤエナリ内のアレルゲンタンパク質)をコードする遺伝子を同定し、編集し、且つ/又はサイレンシングさせることができる。タンパク質をコードする遺伝子を如何に同定し、編集し、且つ/又はサイレンシングさせるかに関する詳細な説明が、例えば、Nicolaou et al.,“Molecular diagnosis of peanut and legume allergy”,Curr.Opin.Allergy Clin.Immunol.11(3):222-8,2011、及び国際公開第2016205764 A1号パンフレットに記載されており、これらは双方とも、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0279】
遺伝子ドライブ
遺伝子ドライブは、特定の遺伝子又は遺伝子のセットの遺伝が、好都合に偏る現象である。本明細書中に記載されるCRISPRシステムを用いて、遺伝子ドライブを構築することができる。例えば、CRISPRシステムを、遺伝子の特定の対立遺伝子を標的として破壊するように設計して、これにより細胞は、第2の対立遺伝子をコピーして、配列を固定することができる。コピーのおかげで、第1の対立遺伝子は、第2の対立遺伝子に変換されて、第2の対立遺伝子が後代に伝えられる見込みが増すこととなる。本明細書中に記載されるCRISPRシステムを如何に用いて、遺伝子ドライブを構築するかに関する詳細な方法が、例えば、Hammond et al.,“A CRISPR-Cas9 gene drive system targeting female reproduction in the malaria mosquito vector Anopheles gambiae”,Nat.Biotechnol.34(1):78-83,2016に記載されており、この文献は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0280】
プールドスクリーニング
本明細書中に記載される、プールドCRISPRスクリーニングは、生物学的機構、例えば、細胞増殖、薬剤耐性、及びウイルス感染に関与する遺伝子を同定するための強力なツールである。細胞に、本明細書中に記載されるガイドRNA(gRNA)コードベクターのライブラリが大量に形質導入されて、gRNAの分布が、選択的チャレンジ(selective challenge)を施す前後に測定される。プールドCRISPRスクリーンが、細胞の生存及び増殖に影響を与える機構に上手く機能し、そして個々の遺伝子の活性を測定するために(例えば、操作されたリポーター細胞株を用いて)伸長され得る。一度に1つの遺伝子のみが標的とされる、アレイドCRISPRスクリーンにより、RNAseqをリードアウトとして用いることが可能となる。一部の実施形態において、本明細書中に記載されるCRISPRシステムを、単細胞CRISPRスクリーンに用いることができる。プールドCRISPRスクリーニングに関する詳細な記載を、例えば、Datlinger et al.,“Pooled CRISPR screening with single-cell transcriptome read-out”,Nat.Methods.14(3):297-301,2017において見出すことができ、この文献は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0281】
飽和変異誘発(バッシング)
本明細書中に記載されるCRISPRシステムを、インサイチュ飽和変異誘発に用いることができる。一部の実施形態において、プールしたガイドRNAライブラリを用いて、特定の遺伝子又は調節要素についてインサイチュ飽和変異誘発を実行することができる。そのような方法は、これらの遺伝子又は調節要素(例えばエンハンサー)の重要な最小の特徴及び別々の脆弱性を明らかにすることができる。当該方法は、例えば、Canver et al.,“BCL11A enhancer dissection by Cas9-mediated in situ saturating mutagenesis”,Nature 527(7577):192-7,2015に記載されており、この文献は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0282】
RNA関連用途
本明細書中に記載されるCRISPRシステムは、種々のRNA関連用途があり得、例えば、遺伝子発現を調節すること、RNA分子を分解すること、RNA発現を阻害すること、RNA若しくはRNA産物をスクリーニングすること、lincRNA若しくは非コードRNAの機能を判定すること、細胞休止状態を誘導すること、細胞周期停止を誘導すること、細胞成長及び/若しくは細胞増殖を引き下げること、細胞アネルギーを誘導すること、細胞アポトーシスを誘導すること、細胞壊死を誘導すること、細胞死を誘導すること、且つ/又はプログラム細胞死を誘導することがある。これらの用途の詳細な説明を、例えば、国際公開第2016/205764 A1号パンフレットにおいて見出すことができ、この出願は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。様々な実施形態において、本明細書中に記載される方法は、インビトロ、インビボ、又はエクスビボで実行することができる。
【0283】
例えば、本明細書中に記載されるCRISPRシステムは、疾患又は障害を有する対象に投与されて、罹患状態にある細胞(例えば、癌細胞、又は感染性因子に感染した細胞)を標的として細胞死を誘導することができる。例えば、一部の実施形態において、本明細書中に記載されるCRISPRシステムを用いて、癌細胞を標的として細胞死を誘導することができ、癌細胞は、ウィルムス腫瘍、ユーイング肉腫、神経内分泌腫瘍、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、黒色腫、皮膚癌、乳癌、結腸癌、直腸癌、前立腺癌、肝癌、腎癌、膵癌、肺癌、胆道癌、子宮頸癌、子宮体癌、食道癌、胃癌、頭頚部癌、髄様甲状腺癌、卵巣癌、神経膠腫、リンパ腫、白血病、骨髄腫、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、又は膀胱癌を有する対象に由来する。
【0284】
遺伝子発現を調節すること
本明細書中に記載されるCRISPRシステムを用いて、遺伝子発現を調節することができる。CRISPRシステムを、適切なガイドRNAと共に用いて、RNAプロセシングの制御を介して、遺伝子発現を標的とすることができる。RNAプロセシングの制御の例として、RNAプロセシング反応、例えばRNAスプライシング(例えば選択的スプライシング)、ウイルス複製、及びtRNA生合成が挙げられ得る。また、RNA標的タンパク質を、適切なガイドRNAと組み合わせて用いて、RNA活性化(RNAa)を制御することができる。RNA活性化は、プロモータ標的短二本鎖RNA(dsRNA)が標的遺伝子発現を転写/エピジェネティックレベルにて誘導する低分子RNAガイド及びアルゴノート(Ago)依存性遺伝子調節現象である。RNAaは、遺伝子発現の促進に至るので、遺伝子発現の制御は、RNAaの破壊又は引下げによって達成され得る。一部の実施形態において、方法は、RNA標的化CRISPRを、例えば干渉リボ核酸(例えば、siRNA、shRNA、又はdsRNA)の代替物として使用することを含む。遺伝子発現を調節する方法は、例えば、国際公開第2016205764号パンフレットに記載されており、この出願は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0285】
RNA干渉を制御すること
干渉RNA又はマイクロRNA(miRNA)の制御は、干渉RNA又はmiRNAの寿命をインビボ又はインビトロで短くすることによって、オフターゲット効果を引き下げる一助とすることができる。一部の実施形態において、標的RNAとして、干渉RNA、すなわち、RNA干渉経路に関与するRNA、例えば低分子ヘアピンRNA(shRNA)、低分子干渉(siRNA)その他が挙げられ得る。一部の実施形態において、標的RNAの例として、miRNA又は二本鎖RNA(dsRNA)が挙げられる。
【0286】
一部の実施形態において、RNA標的化タンパク質及び適切なガイドRNAは、選択的に(例えば、調節プロモータ、例えば組織又は細胞周期特異的プロモータ及び/又はエンハンサーの制御下で空間的又は時間的に)発現されるならば、細胞又はシステムを、当該細胞内でのRNA干渉(RNAi)から(インビボ又はインビトロで)保護するのに用いることができる。これは、RNAiが必要とされない隣接する組織若しくは細胞において、又はCRISPR関連タンパク質及び適切なcrRNAが発現され、そして発現されない(すなわち、それぞれ、RNAiが制御されない、そして制御される)細胞若しくは組織の比較目的で、有用であり得る。RNA標的化タンパク質を用いて、RNAを含むか、又はこれからなる分子、例えば、リボザイム、リボソーム、又はリボスイッチを制御することができるか、又はこれに結合することができる。一部の実施形態において、ガイドRNAは、RNA標的化タンパク質を当該分子に、RNA標的化タンパク質が当該分子に結合することができるように動員することができる。当該方法は、例えば、国際公開第2016205764号パンフレット及び国際公開第2017070605号パンフレットに記載されており、これらの出願は双方とも、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0287】
リボスイッチを修飾して代謝調節を制御すること
リボスイッチは、低分子に結合して、次に遺伝子発現を調節する、メッセンジャーRNAの調節セグメントである。この機構により、細胞は、当該低分子の細胞内濃度を検知することができる。特定のリボスイッチは典型的に、隣接する遺伝子の転写、翻訳、又はスプライシングを変更することによって、当該遺伝子を調節する。ゆえに、一部の実施形態において、リボスイッチ活性は、リボスイッチを標的とするのに適したガイドRNAと組み合わせてRNA標的化タンパク質を用いることによって制御することができる。これは、リボスイッチの切断、又はリボスイッチへの結合を介して達成され得る。CRISPRシステムを用いてリボスイッチを制御する方法が、例えば、国際公開第2016205764号パンフレット及び国際公開第2017070605号パンフレットに記載されており、これらの出願は双方とも、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0288】
RNA修飾
一部の実施形態において、本明細書中に記載されるCRISPR関連タンパク質は、塩基-編集ドメイン、例えば、ADAR1、ADAR2、APOBEC、又は活性化によって誘導されるシチジンデアミナーゼ(AID)に融合することができ、そしてRNA配列(例えばmRNA)を修飾するのに用いることができる。一部の実施形態において、CRISPR関連タンパク質は、1つ以上の変異を(例えば触媒ドメイン内に)含み、これによりCRISPR関連タンパク質は、RNAを切断することができない。
【0289】
一部の実施形態において、CRISPR関連タンパク質は、MS2(別名、MS2コートタンパク質)、Qbeta(別名、Qbetaコートタンパク質)、又はPP7(別名、PP7コートタンパク質)等の、RNA結合ドメインに融合する塩基-編集ドメイン(例えば、ADAR1、ADAR2、APOBEC、又はAID)を含むRNA結合融合ポリペプチドに用いることができる。RNA結合ドメインMS2、Qbeta、及びPP7のアミノ酸配列は、以下に記載される:
MS2(MS2コートタンパク質)
MASNFTQFVLVDNGGTGDVTVAPSNFANGVAEWISSNSRSQAYKVTCSVRQSSAQKRKYTIKVEVPKVATQTVGGVELPVAAWRSYLNMELTIPIFATNSDCELIVKAMQGLLKDGNPIPSAIAANSGIY
Qbeta(Qbetaコートタンパク質)
MAKLETVTLGNIGKDGKQTLVLNPRGVNPTNGVASLSQAGAVPALEKRVTVSVSQPSRNRKNYKVQVKIQNPTACTANGSCDPSVTRQAYADVTFSFTQYSTDEERAFVRTELAALLASPLLIDAIDQLNPAY
PP7(PP7コートタンパク質)
MSKTIVLSVGEATRTLTEIQSTADRQIFEEKVGPLVGRLRLTASLRQNGAKTAYRVNLKLDQADVVDCSTSVCGELPKVRYTQVWSHDVTIVANSTEASRKSLYDLTKSLVVQATSEDLVVNLVPLGR
【0290】
一部の実施形態において、RNA結合ドメインは、本明細書中に記載されるシステムのcrRNA上の特定の配列(例えばアプタマー配列)又は二次構造モチーフに結合する(例えば、crRNAがエフェクター-crRNA複合体内にある場合)ことによって、RNA結合融合ポリペプチド(これは、塩基-編集ドメインを有する)をエフェクター複合体に動員することができる。例えば、一部の実施形態において、CRISPRシステムは、CRISPR関連タンパク質、アプタマー配列(例えば、MS2結合ループ、QBeta結合ループ、又はPP7結合ループ)を有するcrRNA、及びアプタマー配列に特異的に結合するRNA結合ドメインに融合する塩基-編集ドメインを有するRNA結合融合ポリペプチドを含む。このシステムでは、CRISPR関連タンパク質は、アプタマー配列を有するcrRNAとの複合体を形成する。さらに、RNA結合融合ポリペプチドは、crRNAに(アプタマー配列を介して)結合することによって、標的RNAを修飾することができる三分子複合体(tripartite complex)を形成する。
【0291】
CRISPRシステムを塩基編集に用いる方法は、例えば、国際公開第2017/219027号パンフレットに記載されており、この出願は、その全体が、特にRNA修飾の考察に関して、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0292】
RNAスプライシング
一部の実施形態において、本明細書中に記載される不活化CRISPR関連タンパク質(例えば、触媒ドメイン内に1つ以上の変異を有するCRISPR関連タンパク質)を用いて、RNA転写産物上の特定のスプライシング部位を標的として、これに結合することができる。不活化CRISPR関連タンパク質の、RNAへの結合は、スプライセオソームの、転写産物との相互作用を立体配置的に阻害して、特定の転写産物アイソフォームの生成の頻度の改変が可能となる。そのような方法を用いて、エキソンスキッピングにより疾患を、変異を有するエキソンが、成熟タンパク質内でスキップされ得るように処置することができる。CRISPRシステムを用いてスプライシングを改変する方法が、例えば、国際公開第2017/219027号パンフレットに記載されており、この出願は、その全体が、特にRNAスプライシングの考察に関して、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0293】
治療用途
本明細書中に記載されるCRISPRシステムは、種々の治療用途があり得る。そのような用途は、対象CRISPR/Cas13e又はCas13fシステムの、以下の能力の1つ以上に、インビトロ及びインビボ双方で基づき得る:細胞の老化を誘導し、細胞周期停止を誘導し、細胞の成長及び/又は増殖を阻害し、アポトーシスを誘導し、壊死を誘導する能力その他。
【0294】
一部の実施形態において、新しいCRISPRシステムを用いて、種々の疾患及び障害、例えば、遺伝的障害(例えば単一遺伝子疾患)、ヌクレアーゼ活性(例えば、Pcsk9標的化、デュシェンヌ型筋ジストロフィ(DMD)、BCL11a標的化)によって処置することができる疾患、及び種々の癌その他を処置することができる。
【0295】
一部の実施形態において、本明細書中に記載されるCRISPRシステムを用いて、(例えば、1つ以上の核酸残基を挿入するか、欠失させるか、又は変異させることによって)標的核酸を編集して標的核酸を修飾することができる。例えば、一部の実施形態において、本明細書中に記載されるCRISPRシステムは、所望の核酸配列を含む外来ドナー鋳型核酸(例えば、DNA分子又はRNA分子)を含む。本明細書中に記載されるCRISPRシステムにより誘導される切断事象の解消(resolution)により、細胞の分子機構は、切断事象を修復且つ/又は解消するのに、外来ドナー鋳型核酸を利用することとなる。これ以外にも、細胞の分子機構は、切断事象を修復且つ/又は解消するのに、内因性鋳型を利用し得る。一部の実施形態において、本明細書中に記載されるCRISPRシステムを用いて、標的核酸を改変して、挿入、欠失、及び/又は点変異が生じ得る。一部の実施形態において、挿入は、スカーレス挿入(すなわち、切断事象の解消により、付加的な意図されない核酸配列が生じない、標的核酸中への意図される核酸配列の挿入)である。ドナー鋳型核酸は、二本鎖又は一本鎖の核酸分子(例えば、DNA又はRNA)であり得る。外来ドナー鋳型核酸を設計する方法が、例えば、国際公開第2016/094874 A1号パンフレットに記載されており、この出願の全体の内容が、参照によって本明細書に明示的に組み込まれる。
【0296】
一態様において、本明細書中に記載されるCRISPRシステムは、RNA、毒性RNA、及び/又は変異RNAの過剰発現によって引き起こされる疾患(例えば、スプライシング欠損又はトランケーション)を処置するのに用いることができる。例えば、毒性RNAの発現が、核封入体の形成、及び脳、心臓、又は骨格筋の遅発性退行性変化と関連し得る。一部の実施形態において、障害は、筋強直性ジストロフィである。筋強直性ジストロフィにおいて、毒性RNAの主要な病原性作用は、結合タンパク質を隔離(sequester)して、選択的スプライシングの調節を損なうことである(例えば、Osborne et al.,“RNA-dominant diseases”,Hum.Mol.Genet.,2009 Apr.15;18(8):1471-81参照)。筋強直性ジストロフィ(DM)は、極めて広範囲の臨床的特徴をもたらすので、遺伝学者に特に注目されている。現在DM1型(DM1)と呼ばれるDMの古典的形態は、サイトゾルプロテインキナーゼをコードする遺伝子、DMPKの3’非翻訳領域(UTR)内のCTGリピートの拡大によって引き起こされる。本明細書中に記載されるCRISPRシステムは、DM1骨格筋、心臓、又は脳内の過剰発現されたRNA又は毒性RNA、例えば、DMPK遺伝子、又はミス調節されたあらゆる選択的スプライシングを標的とすることができる。
【0297】
また、本明細書中に記載されるCRISPRシステムは、種々の疾患、例えば、プラダー・ウィリ症候群、脊髄性筋萎縮症(SMA)、及び先天性角化不全症を引き起こすRNA依存性機能に影響を与えるトランス作用変異を標的とすることができる。本明細書中に記載されるCRISPRシステムを用いて処置することができる疾患のリストが、Cooper et al.,“RNA and disease”,Cell,136.4(2009):777-793、及び国際公開第2016/205764 A1号パンフレットに要約されており、これらは双方とも、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。当業者であれば、新しいCRISPRシステムを如何に用いてこれらの疾患を処置するかを理解するであろう。
【0298】
また、本明細書中に記載されるCRISPRシステムを、例えば、一次性タウオパシー及び二次性タウオパシー、例えば原発性年齢関連タウオパシー(PART)/神経原線維錯綜(NFT)-優位型老人性痴呆症(アルツハイマー病(AD)で見られるものに類似するが、斑のないNFT)、ボクサー認知症(慢性外傷性脳症)、及び進行性核上性麻痺が挙げられる種々のタウオパシーの処置に用いることができる。タウオパシーの有用なリスト、及びこれらの疾患を処置する方法が、例えば、国際公開第2016205764号パンフレットに記載されており、この出願は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0299】
また、本明細書中に記載されるCRISPRシステムを用いて、スプライシング欠損及び疾患を引き起こし得る、シス作用スプライシングコードを破壊する変異を標的とすることができる。これらの疾患の例として、SMN1遺伝子の欠失に由来する運動ニューロン退行性疾患(例えば脊髄性筋萎縮症)、デュシェンヌ型筋ジストロフィ(DMD)、前頭側頭骨認知症、17番染色体に関連するパーキンソン症候群(FTDP-17)、及び嚢胞性線維症が挙げられる。
【0300】
本明細書中に記載されるCRISPRシステムはさらに、特にRNAウイルスに対する、抗ウイルス活性に用いることができる。CRISPR関連タンパク質は、ウイルスRNA配列を標的とするように選択された適切なガイドRNAを用いて、ウイルスRNAを標的とすることができる。
【0301】
また、本明細書中に記載されるCRISPRシステムを用いて、対象(例えばヒト対象)において癌を処置することができる。例えば、本明細書中に記載されるCRISPR関連タンパク質は、異常であり(例えば、点変異を含むか、又は代わりにスプライスされている)、且つ癌細胞内に見出されるRNA分子を標的とするcrRNAでプログラムして、癌細胞において(例えばアポトーシスを介して)細胞死を誘導することができる。
【0302】
また、本明細書中に記載されるCRISPRシステムを用いて、対象(例えばヒト対象)において自己免疫疾患又は障害を処置することができる。例えば、本明細書中に記載されるCRISPR関連タンパク質は、異常であり(例えば、点変異を含むか、又は代わりにスプライスされている)、且つ自己免疫疾患又は障害を引き起こすことを担う細胞内に見出されるRNA分子を標的とするcrRNAでプログラムすることができる。
【0303】
さらに、本明細書中に記載されるCRISPRシステムを用いて、対象において感染症を処置することもできる。例えば、本明細書中に記載されるCRISPR関連タンパク質は、感染性因子(例えば、細菌、ウイルス、寄生虫、又は原虫)によって発現されるRNA分子を標的とするcrRNAでプログラムして、感染性因子細胞を標的として、感染性因子細胞において細胞死を誘導することができる。また、CRISPRシステムを用いて、細胞内感染性因子が宿主対象の細胞に感染している疾患を処置し得る。感染性因子遺伝子によってコードされるRNA分子を標的とするようにCRISPR関連タンパク質をプログラムすることによって、感染性因子に感染した細胞を標的として、細胞死を誘導することができる。
【0304】
さらに、インビトロRNA検知アッセイを用いて、特定のRNA基質を検出することができる。CRISPR関連タンパク質を、生細胞におけるRNAベースの検知に用いることができる。用途の例として、例えば疾患特異的RNAの検知による診断法がある。
【0305】
本明細書中に記載されるCRISPRシステムの治療的用途の詳細な説明を、例えば、米国特許第8,795,965号明細書、EP3009511号明細書、国際公開第2016205764号パンフレット、及び国際公開第2017070605号パンフレットにおいて見出すことができ、これらは各々、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0306】
細胞及びその後代
特定の実施形態において、本発明の方法を用いて、本明細書中に記載されるCRISPRシステムを細胞中に導入して、細胞及び/又はその後代に、1つ以上の細胞生成物、例えば、抗体、デンプン、エタノール、又は他の所望のあらゆる生成物の生成を改変させることができる。そのような細胞及びその後代は、本発明の範囲内である。
【0307】
特定の実施形態において、本明細書中に記載される方法及び/又はCRISPRシステムは、細胞の1つ以上のRNA産物の翻訳及び/又は転写の修飾に至る。例えば、修飾は、RNA産物の転写/翻訳/発現の増大に至り得る。他の実施形態において、修飾は、RNA産物の転写/翻訳/発現の低下に至り得る。
【0308】
特定の実施形態において、細胞は原核細胞である。
【0309】
特定の実施形態において、細胞は、真核細胞、例えば、ヒト細胞(一次ヒト細胞又は確立されたヒト細胞株)が挙げられる哺乳動物細胞である。特定の実施形態において、細胞は、非ヒト哺乳動物細胞、例えば、非ヒト霊長類(例えばサル)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、イヌ、ネコ、齧歯類(例えば、ウサギ、マウス、ラット、ハムスターその他)由来の細胞である。特定の実施形態において、細胞は、魚類(例えばサケ)、鳥類(例えば、雛、カモ、ガチョウが挙げられる飼鳥類)、爬虫類、甲殻類(例えば、カキ、ハマグリ、ロブスター、エビ)、昆虫、蠕虫、酵母その他由来である。特定の実施形態において、細胞は、植物、例えば単子葉植物又は双子葉植物由来である。特定の実施形態において、植物は、食物作物、例えば、オオムギ、キャッサバ、ワタ、ラッカセイ又はピーナッツ、トウモロコシ、キビ、アブラヤシ果実、ジャガイモ、豆類、ナタネ又はキャノーラ、イネ、ライムギ、モロコシ、ダイズ、サトウキビ、テンサイ、ヒマワリ、及びコムギである。特定の実施形態において、植物は禾穀類(オオムギ、トウモロコシ、キビ、イネ、ライムギ、モロコシ、及びコムギ)である。特定の実施形態において、植物は塊茎(キャッサバ及びジャガイモ)である。特定の実施形態において、植物は糖作物(テンサイ及びサトウキビ)である。特定の実施形態において、植物は油含有作物(ダイズ、ラッカセイ又はピーナッツ、ナタネ又はキャノーラ、ヒマワリ、及びアブラヤシ果実)である。特定の実施形態において、植物は繊維作物(ワタ)である。特定の実施形態において、植物は、樹木(モモ若しくはネクタリン樹木、リンゴ若しくは西洋ナシ樹木、ナット樹木、例えば、アーモンド、クルミ、若しくはピスタチオ樹木、又は柑橘類樹木、例えば、オレンジ、グレープフルーツ、若しくはレモン樹木等)、イネ科植物、野菜、果実、又は藻類である。特定の実施形態において、植物は、ナス科植物;アブラナ(Brassica)属植物;アキノノゲシ(Lactuca)属植物;ホウレンソウ(Spinacia)属植物;トウガラシ(Capsicum)属植物;ワタ、タバコ、アスパラガス、ニンジン、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、トマト、ナス、コショウ、レタス、ホウレンソウ、ストロベリー、ブルーベリー、ラズベリー、ブラックベリー、ブドウ、コーヒー、ココアその他である。
【0310】
関連する態様は、本明細書中に記載されるCRISPRシステムを用いる本発明の方法によって修飾された細胞又はその後代を提供する。
【0311】
特定の実施形態において、細胞は、インビトロ、インビボ、又はエクスビボ修飾されている。
【0312】
特定の実施形態において、細胞は幹細胞である。
【0313】
7.送達
本開示及び当該技術における知識により、本明細書中に記載されるCRISPRシステム、又は本明細書中に記載されるそのあらゆる構成要素(Casタンパク質、その誘導体、機能断片、又は種々の融合体若しくは付加物、及びガイドRNA/crRNA)、その核酸分子、及び/又はその構成要素をコードしているか、若しくは提供する核酸分子は、当該技術における適切なあらゆる手段を用いて、ベクター、例えばプラスミドベクター及びウイルス送達ベクター等の種々の送達システムによって送達することができる。そのような方法として、エレクトロポレーション、リポフェクション、マイクロインジェクション、形質移入、超音波処理、遺伝子銃その他が挙げられる(これらに限定されない)。
【0314】
特定の実施形態において、CRISPR関連タンパク質及び/又はあらゆるRNA(例えば、ガイドRNA又はcrRNA)及び/又は付属タンパク質は、適切なベクター、例えばプラスミド又はウイルスベクター、例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レンチウイルス、アデノウイルス、レトロウイルスベクター、及び他のウイルスベクター、又はそれらの組合せを用いて送達することができる。タンパク質及び1つ以上のcrRNAを、1つ以上のベクター、例えば、プラスミド又はウイルスベクター中にパッケージすることができる。細菌の利用について、本明細書中に記載されるCRISPRシステムの構成要素のいずれかをコードする核酸は、ファージを用いて細菌に送達することができる。例示的なファージとして、T4ファージ、Mu、λファージ、T5ファージ、T7ファージ、T3ファージ、Φ29、M13、MS2、Qβ、及びΦX174が挙げられるが、これらに限定されない。
【0315】
一部の実施形態において、ベクター、例えば、プラスミド又はウイルスベクターは、例えば、筋肉内注射、静脈内投与、経皮投与、鼻腔内投与、経口投与、又は粘膜投与によって、注目する組織に送達される。そのような送達は、単回用量又は複数回用量のいずれを介してもよい。当業者であれば、本明細書中の送達されることとなる実際の投薬量は、種々の要因、例えば、ベクターの選択、標的細胞、生物、組織、処置されることとなる対象の全身状態、求められる形質転換/修飾の程度、投与経路、投与モード、求められる形質転換/修飾のタイプその他に応じて大きく変わり得ることを理解する。
【0316】
特定の実施形態において、送達は、アデノウイルスを介し、これは、少なくとも1×105粒子(粒子単位puとも称される)のアデノウイルスを含有する単回用量にてなされ得る。一部の実施形態において、用量は好ましくは、少なくとも約1×106粒子、少なくとも約1×107粒子、少なくとも約1×108粒子、少なくとも約1×109粒子のアデノウイルスである。送達方法及び用量は、例えば、国際公開第2016205764 A1号パンフレット及び米国特許第8,454,972 B2号明細書に記載されており、これらは双方とも、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0317】
一部の実施形態において、送達はプラスミドを介する。投薬量は、応答を誘発するのに十分なプラスミド数であり得る。場合によっては、プラスミド組成物中のプラスミドDNAの適切な量が、約0.1~約2mgであり得る。プラスミドは、通常、(i)プロモータ;(ii)各々がプロモータ(例えば、同じプロモータ又は異なるプロモータ)に作動可能に連結されている、核酸-標的化CRISPR関連タンパク質及び/又は付属タンパク質をコードする配列;(iii)選択マーカー;(iv)複製起点;並びに(v)(ii)の下流側に、(ii)と作動可能に連結されている転写ターミネータを含むこととなる。また、プラスミドは、CRISPR複合体のRNA構成要素をコードし得るが、これらの1つ以上が、その代わりとして、異なるベクター上にコードされていてもよい。投与の頻度は、医学実務者若しくは獣医学実務者(例えば、医師、獣医)、又は当業者の範囲内である。
【0318】
別の実施形態において、送達は、リポソーム又はリポフェクション製剤等を介し、当業者に知られている方法によって調製され得る。そのような方法が、例えば、国際公開第2016205764号パンフレット、並びに米国特許第5,593,972号明細書;米国特許第5,589,466号明細書;及び米国特許第5,580,859号明細書に記載されており、これらは各々、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0319】
一部の実施形態において、送達は、ナノ粒子又はエキソソームを介する。例えば、エキソソームは、送達RNAに特に有用であることが示されている。
【0320】
新しいCRISPRシステムの1つ以上の構成要素を細胞に導入するさらなる手段は、細胞膜透過ペプチド(CPP)を用いることによるものである。一部の実施形態において、細胞膜透過ペプチドは、CRISPR関連タンパク質に連結されている。一部の実施形態において、CRISPR関連タンパク質及び/又はガイドRNAは、1つ以上のCPPに連結されて、細胞(例えば植物プロトプラスト)の内側に効果的に運搬される。一部の実施形態において、CRISPR関連タンパク質及び/又はガイドRNAは、細胞送達用の1つ以上のCPPに連結されている1つ以上の環状又は非環状のDNA分子によってコードされている。
【0321】
CPPは、受容体から独立して細胞膜を越えて生体分子を運搬することができるタンパク質又はキメラ配列のいずれかに由来する35個未満のアミノ酸の短いペプチドである。CPPは、陽イオンペプチド、疎水性配列を有するペプチド、両親媒性ペプチド、プロリンリッチ配列及び抗微生物配列を有するペプチド、並びにキメラペプチド又は二部に分かれたペプチドであり得る。CPPの例として、Tat(HIV 1型によるウイルス複製に必要とされる核転写活性化タンパク質である)、ペネトラチン、カポジ線維芽細胞成長因子(FGF)シグナルペプチド配列、インテグリンβ3シグナルペプチド配列、ポリアルギニンペプチドArg配列、グアニンリッチ-分子トランスポータ、及びスイートアローペプチドが挙げられる。CPP及びこれを用いる方法が、例えば、Haellbrink et al.,“Prediction of cell-penetrating peptides”,Methods Mol.Biol.,2015;1324:39-58;Ramakrishna et al.,“Gene disruption by cell-penetrating peptide-mediated delivery of Cas9 protein and guide RNA”,Genome Res.,2014 June;24(6):1020-7;及び国際公開第2016205764 A1号パンフレットに記載されており、これらは各々、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0322】
また、本明細書中に記載されるCRISPRシステムの種々の送達方法が、例えば、米国特許第8,795,965号明細書、EP 3009511号明細書、国際公開第2016205764号パンフレット、及び国際公開第2017070605号パンフレットに記載されており、これらは各々、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0323】
8.キット
本発明の別の態様は、本明細書中に記載される対象CRISPR/Casシステム、例えばCas13e及びCas13fタンパク質、それらの誘導体、機能断片、又は種々の融合体若しくは付加物、ガイドRNA/crRNA、それらの複合体、これらを包含するベクター、或いはこれらを包含する宿主のいずれか2つ以上の構成要素を含むキットを提供する。
【0324】
特定の実施形態において、キットはさらに、その中に包含される構成要素の使用説明書、及び/又は他の場所で入手可能な追加的な構成要素と組み合わせるための説明書を含む。
【0325】
特定の実施形態において、キットはさらに、1つ以上のヌクレオチド、例えば、ベクター中にガイドRNAコード配列を挿入するのに有用であり、且つベクターの1つ以上の制御要素に、コード配列を作動可能に連結するものに相当するヌクレオチドを含む。
【0326】
特定の実施形態において、キットはさらに、構成要素のいずれかを溶解させ、且つ/又は構成要素の1つ以上に適した反応条件を提供するのに用いられ得る1つ以上のバッファを含む。そのようなバッファは、PBS、HEPES、トリス、MOP、Na2CO3、NaHCO3、NaBの1つ以上、又はそれらの組合せを含んでもよい。特定の実施形態において、反応条件は、適切なpH、例えば塩基性のpHを含む。特定の実施形態において、pHは7~10である。
【0327】
特定の実施形態において、キット構成要素のいずれか1つ以上が、適切なコンテナ内に貯蔵されていてもよい。
非限定的に、本発明は以下の態様を含む。
[態様1]
(1)標的RNAにハイブリダイズすることができるスペーサー配列、及び前記スペーサー配列に対して3’側にダイレクトリピート(DR)配列を含むRNAガイド配列;並びに
(2)配列番号1~7のいずれか1つのアミノ酸配列を有するCRISPR関連タンパク質(Cas)、又は前記Casの誘導体若しくは機能断片
を含む、クラスター化規則的間隔短パリンドロームリピート(CRISPR)-Cas複合体であって;
前記Cas、前記Casの前記誘導体及び前記機能断片は、(i)前記RNAガイド配列に結合すること、且つ(ii)前記標的RNAを標的とすることができるが、
前記スペーサー配列は、前記複合体が配列番号1~7のいずれか1つの前記Casを含む場合に、天然に存在するバクテリオファージ核酸と100%相補的でないことを条件とする、CRISPR-Cas複合体。
[態様2]
前記DR配列は、配列番号8~14のいずれか1つの二次構造と実質的に同じ二次構造を有する、態様1に記載のCRISPR-Cas複合体。
[態様3]
前記DR配列は、配列番号8~14のいずれか1つによってコードされている、態様1に記載のCRISPR-Cas複合体。
[態様4]
前記標的RNAは、真核生物DNAによってコードされている、態様1~3のいずれか一項に記載のCRISPR-Cas複合体。
[態様5]
前記真核生物DNAは、非ヒト哺乳動物DNA、非ヒト霊長類DNA、ヒトDNA、植物DNA、昆虫DNA、鳥類DNA、爬虫類DNA、齧歯類DNA、魚類DNA、蠕虫/線虫DNA、酵母DNAである、態様4に記載のCRISPR-Cas複合体。
[態様6]
前記標的RNAはmRNAである、態様1~5のいずれか一項に記載のCRISPR-Cas複合体。
[態様7]
前記スペーサー配列は、15~60ヌクレオチド、25~50ヌクレオチド、又は約30ヌクレオチドである、態様1~6のいずれか一項に記載のCRISPR-Cas複合体。
[態様8]
前記スペーサー配列は、前記標的RNAと90~100%相補的である、態様1~7のいずれか一項に記載のCRISPR-Cas複合体。
[態様9]
前記誘導体は、配列番号1~7のいずれか1つの、1つ以上の残基の保存的アミノ酸置換を含む、態様1~8のいずれか一項に記載のCRISPR-Cas複合体。
[態様10]
前記誘導体は、保存的アミノ酸置換のみを含む、態様9に記載のCRISPR-Cas複合体。
[態様11]
前記誘導体は、HEPNドメイン又はRXXXXHモチーフ内に、配列番号1~7のいずれか1つの野生型Casと同一の配列を有する、態様1~10のいずれか一項に記載のCRISPR-Cas複合体。
[態様12]
前記誘導体は、前記標的RNAにハイブリダイズする前記RNAガイド配列に結合することができるが、前記CasのRNase触媒部位内の変異に起因して、RNase触媒活性を有していない、態様1~9のいずれか一項に記載のCRISPR-Cas複合体。
[態様13]
前記誘導体は、210残基以下のN末端欠失及び/又は180残基以下のC末端欠失を有する、態様12に記載のCRISPR-Cas複合体。
[態様14]
前記誘導体は、約180残基のN末端欠失及び/又は約150残基のC末端欠失を有する、態様13に記載のCRISPR-Cas複合体。
[態様15]
前記誘導体はさらに、RNA塩基-編集ドメインを含む、態様12~14のいずれか一項に記載のCRISPR-Cas複合体。
[態様16]
前記RNA塩基-編集ドメインは、アデノシンデアミナーゼ、例えば二本鎖RNA特異的アデノシンデアミナーゼ(例えば、ADAR1又はADAR2);アポリポタンパク質B mRNA編集酵素;catalytic polypeptide-like(APOBEC);又は活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)である、態様15に記載のCRISPR-Cas複合体。
[態様17]
前記ADAR2は、E488Q/T375G二重変異を有するか、又はADAR2DDである、態様16に記載のCRISPR-Cas複合体。
[態様18]
前記塩基-編集ドメインはさらに、RNA結合ドメイン、例えばMS2に融合する、態様15~17のいずれか一項に記載のCRISPR-Cas複合体。
[態様19]
前記誘導体はさらに、RNAメチルトランスフェラーゼ、RNAデメチラーゼ、RNAスプライシング修飾子、局在化因子、又は翻訳修飾因子を含む、態様12~14のいずれか一項に記載のCRISPR-Cas複合体。
[態様20]
前記Cas、前記誘導体、又は前記機能断片は、核局在化シグナル(NLS)配列又は核外搬出シグナル(NES)を含む、態様1~19のいずれか一項に記載のCRISPR-Cas複合体。
[態様21]
前記標的RNAの標的化は、前記標的RNAの修飾をもたらす、態様1~20のいずれか一項に記載のCRISPR-Cas複合体。
[態様22]
前記標的RNAの前記修飾は、前記標的RNAの切断である、態様21に記載のCRISPR-Cas複合体。
[態様23]
前記標的RNAの前記修飾は、アデノシン(A)の、イノシン(I)への脱アミノ化である、態様21に記載のCRISPR-Cas複合体。
[態様24]
前記スペーサー配列にハイブリダイズすることができる配列を含む標的RNAをさらに含む、態様1~23のいずれか一項に記載のCRISPR-Cas複合体。
[態様25]
(1)態様1~24のいずれか一項に記載のCas、その誘導体、又はその機能断片、及び(2)異種機能ドメインを含む融合タンパク質。
[態様26]
前記異種機能ドメインは:核局在化シグナル(NLS)、リポータータンパク質若しくは検出標識(例えば、GST、HRP、CAT、GFP、HcRed、DsRed、CFP、YFP、BFP)、局在化シグナル、タンパク質標的化部分、DNA結合ドメイン(例えば、MBP、Lex A DBD、Gal4 DBD)、エピトープタグ(例えば、His、myc、V5、FLAG、HA、VSV-G、Trxその他)、転写活性化ドメイン(例えば、VP64又はVPR)、転写阻害ドメイン(例えば、KRAB部分又はSID部分)、ヌクレアーゼ(例えばFokI)、脱アミノ化ドメイン(例えば、ADAR1、ADAR2、APOBEC、AID、又はTAD)、メチラーゼ、デメチラーゼ、転写放出因子、HDAC、ssRNA切断活性を有するポリペプチド、dsRNA切断活性を有するポリペプチド、ssDNA切断活性を有するポリペプチド、dsDNA切断活性を有するポリペプチド、DNA若しくはRNAリガーゼ、又はそれらのあらゆる組合せを含む、態様25に記載の融合タンパク質。
[態様27]
前記異種機能ドメインは、前記融合タンパク質内で、N末端に、C末端に、又は内部に融合している、態様25又は26に記載の融合タンパク質。
[態様28]
(2)異種機能部分にコンジュゲートした、(1)態様1~24のいずれか一項に記載のCas、その誘導体、又はその機能断片を含むコンジュゲート。
[態様29]
前記異種機能部分は:核局在化シグナル(NLS)、リポータータンパク質若しくは検出標識(例えば、GST、HRP、CAT、GFP、HcRed、DsRed、CFP、YFP、BFP)、局在化シグナル、タンパク質標的化部分、DNA結合ドメイン(例えば、MBP、Lex A DBD、Gal4 DBD)、エピトープタグ(例えば、His、myc、V5、FLAG、HA、VSV-G、Trxその他)、転写活性化ドメイン(例えば、VP64又はVPR)、転写阻害ドメイン(例えば、KRAB部分又はSID部分)、ヌクレアーゼ(例えばFokI)、脱アミノ化ドメイン(例えば、ADAR1、ADAR2、APOBEC、AID、又はTAD)、メチラーゼ、デメチラーゼ、転写放出因子、HDAC、ssRNA切断活性を有するポリペプチド、dsRNA切断活性を有するポリペプチド、ssDNA切断活性を有するポリペプチド、dsDNA切断活性を有するポリペプチド、DNA若しくはRNAリガーゼ、又はそれらのあらゆる組合せを含む、態様28に記載のコンジュゲート。
[態様30]
前記異種機能部分は、前記Cas、前記その誘導体、又は前記その機能断片に対して、N末端に、C末端に、又は内部にコンジュゲートされている、態様28又は29に記載のコンジュゲート。
[態様31]
配列番号15~21のいずれでもないことを条件とする、配列番号1~7のいずれか1つをコードするポリヌクレオチド、又はその誘導体、若しくはその機能断片、若しくはその融合タンパク質。
[態様32]
細胞内での発現のためにコドン最適化されている、態様31に記載のポリヌクレオチド。
[態様33]
前記細胞は真核細胞である、態様32に記載のポリヌクレオチド。
[態様34]
配列番号8~14のいずれか1つの誘導体を含む、天然に存在しないポリヌクレオチドであって、前記誘導体は、(i)配列番号8~14のいずれか1つと比較して、1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個)のヌクレオチドの付加、欠失、若しくは置換を有し;(ii)配列番号8~14のいずれか1つに対して、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、若しくは97%の配列同一性を有し;(iii)配列番号8~14のいずれか1つ、若しくは(i)及び(ii)のいずれかと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし;又は(iv)(i)~(iii)のいずれかの相補体であるが、前記誘導体は、配列番号8~14のいずれでもないこと、及び前記誘導体は、配列番号8~14によってコードされるRNAのいずれかと実質的に同じ二次構造を維持しているRNAをコードする(又はRNAである)ことを条件とする、天然に存在しないポリヌクレオチド。
[態様35]
前記誘導体は、態様1~24のいずれか一項に記載のCas、その誘導体、又はその機能断片のいずれか1つのDR配列として機能する、態様34に記載の天然に存在しないポリヌクレオチド。
[態様36]
態様31~35のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
[態様37]
前記ポリヌクレオチドは、プロモータ、及び場合によってはエンハンサーに作動可能に連結されている、態様36に記載のベクター。
[態様38]
前記プロモータは、構成的プロモータ、誘導性プロモータ、ユビキタスプロモータ、又は組織特異的プロモータである、態様37に記載のベクター。
[態様39]
プラスミドである、態様36~38のいずれか一項に記載のベクター。
[態様40]
レトロウイルスベクター、ファージベクター、アデノウイルスベクター、単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクター、AAVベクター、又はレンチウイルスベクターである、態様36~38のいずれか一項に記載のベクター。
[態様41]
前記AAVベクターは、血清型AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAVrh74、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、又はAAV13の組換えAAVベクターである、態様40に記載のベクター。
[態様42]
(1)送達ビヒクル、及び(2)態様1~24のいずれか一項に記載のCRISPR-Cas複合体、態様25~27のいずれか一項に記載の融合タンパク質、態様28~30のいずれか一項に記載のコンジュゲート、態様31~33のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、又は態様36~41のいずれか一項に記載のベクターを含む送達システム。
[態様43]
前記送達ビヒクルは、ナノ粒子、リポソーム、エキソソーム、微小胞、又は遺伝子銃である、態様42に記載の送達システム。
[態様44]
態様1~24のいずれか一項に記載のCRISPR-Cas複合体、態様25~27のいずれか一項に記載の融合タンパク質、態様28~30のいずれか一項に記載のコンジュゲート、態様31~33のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、又は態様36~41のいずれか一項に記載のベクターを含む細胞又はその後代。
[態様45]
真核細胞(例えば、非ヒト哺乳動物細胞、ヒト細胞、又は植物細胞)、又は原核細胞(例えば細菌細胞)である、態様44に記載の細胞又はその後代。
[態様46]
態様44又は45に記載の細胞を含む非ヒト多細胞真核生物。
[態様47]
ヒト遺伝的障害のための動物(例えば、齧歯類又は霊長類)モデルである、態様46に記載の非ヒト多細胞真核生物。
[態様48]
標的RNAを修飾する方法であって、前記標的RNAを、態様1~24のいずれか一項に記載のCRISPR-Cas複合体と接触させることを含み、前記スペーサー配列は、前記標的RNAの少なくとも15ヌクレオチドと相補的であり;前記Cas、前記誘導体、又は前記機能断片は、前記RNAガイド配列と結合して、前記複合体を形成し;前記複合体は、前記標的RNAに結合し;前記標的RNAへの前記複合体の結合により、前記Cas、前記誘導体、又は前記機能断片は、前記標的RNAを修飾する、方法。
[態様49]
前記標的RNAは、前記Casによる切断によって修飾される、態様48に記載の方法。
[態様50]
前記標的RNAは、二本鎖RNA特異的アデノシンデアミナーゼを含む誘導体による脱アミノ化によって修飾される、態様48に記載の方法。
[態様51]
前記標的RNAは、mRNA、tRNA、rRNA、非コードRNA、lncRNA、又は核RNAである、態様48~50のいずれか一項に記載の方法。
[態様52]
前記標的RNAへの前記複合体の結合により、前記Cas、前記誘導体、及び前記機能断片は、実質的な(又は検出可能な)コラテラルRNase活性を示さない、態様48~51のいずれか一項に記載の方法。
[態様53]
前記標的RNAは、細胞内にある、態様48~52のいずれか一項に記載の方法。
[態様54]
前記細胞は癌細胞である、態様53に記載の方法。
[態様55]
前記細胞に、感染性因子が感染する、態様53に記載の方法。
[態様56]
前記感染性因子は、ウイルス、プリオン、原虫、真菌、又は寄生虫である、態様55に記載の方法。
[態様57]
前記CRISPR-Cas複合体は、配列番号1~7のいずれか1つをコードする第1のポリヌクレオチド、又はその誘導体若しくは機能断片、並びに配列番号8~14のいずれか1つ、及び前記標的RNAに結合することができるスペーサーRNAをコードする配列を含む第2のポリヌクレオチドによってコードされており、前記第1のポリヌクレオチド及び前記第2のポリヌクレオチドは、前記細胞中に導入される、態様53~56のいずれか一項に記載の方法。
[態様58]
前記第1のポリヌクレオチド及び前記第2のポリヌクレオチドは、同じベクターによって前記細胞中に導入される、態様57に記載の方法。
[態様59]
(i)細胞の老化のインビトロ又はインビボ誘導;(ii)インビトロ又はインビボ細胞周期停止;(iii)インビトロ若しくはインビボ細胞増殖阻害及び/又は細胞増殖阻害;(iv)アネルギーのインビトロ又はインビトロ誘導;(v)アポトーシスのインビトロ又はインビトロ誘導;及び(vi)壊死のインビトロ又はインビトロ誘導の1つ以上を引き起こす、態様53~58のいずれか一項に記載の方法。
[態様60]
容体又は疾患の処置が必要な対象において容体又は疾患を処置する方法であって、前記対象に、態様1~24のいずれか一項に記載のCRISPR-Cas複合体、又はこれをコードするポリヌクレオチドを含む組成物を投与することを含み;前記スペーサー配列は、前記容体又は疾患と関連する標的RNAの少なくとも15ヌクレオチドと相補的であり;前記Cas、前記誘導体、又は前記機能断片は、前記RNAガイド配列と結合して前記複合体を形成し;前記複合体は、前記標的RNAに結合し;前記標的RNAへの前記複合体の結合により、前記Cas、前記誘導体、又は前記機能断片は、前記標的RNAを切断することによって、前記対象における前記容体又は疾患を処置する、方法。
[態様61]
前記容体又は疾患は、癌又は感染症である、態様60に記載の方法。
[態様62]
前記癌は、ウィルムス腫瘍、ユーイング肉腫、神経内分泌腫瘍、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、黒色腫、皮膚癌、乳癌、結腸癌、直腸癌、前立腺癌、肝癌、腎癌、膵癌、肺癌、胆道癌、子宮頸癌、子宮体癌、食道癌、胃癌、頭頚部癌、髄様甲状腺癌、卵巣癌、神経膠腫、リンパ腫、白血病、骨髄腫、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、又は膀胱癌である、態様61に記載の方法。
[態様63]
インビトロ方法、インビボ方法、又はエクスビボ方法である、態様60~62のいずれか一項に記載の方法。
[態様64]
態様48~59のいずれか一項に記載の方法によって得られる細胞又はその後代であって、天然に存在しない修飾(例えば、前記細胞/後代の転写されたRNA内の天然に存在しない修飾)を含む細胞及びその後代。
[態様65]
標的RNAの存在を検出する方法であって、前記標的RNAを、態様25~27のいずれか一項に記載の融合タンパク質、又は態様28~30のいずれか一項に記載のコンジュゲート、又は前記融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む組成物と接触させることを含み、前記融合タンパク質又は前記コンジュゲートは、検出可能な標識(例えば、蛍光、ノーザンブロット、又はFISHによって検出され得るもの)及び前記標的RNAに結合することができる合成スペーサー配列を含む、方法。
[態様66]
クラスター化規則的間隔短パリンドロームリピート(CRISPR)-Cas複合体を含む真核細胞であって、前記CRISPR-Cas複合体は:
(1)標的RNAにハイブリダイズすることができるスペーサー配列、及び前記スペーサー配列に対して3’側にダイレクトリピート(DR)配列を含むRNAガイド配列;並びに
(2)配列番号1~7のいずれか1つのアミノ酸配列を有するCRISPR関連タンパク質(Cas)、又は前記Casの誘導体若しくは機能断片を含み;
前記Cas、前記Casの前記誘導体及び前記機能断片は、(i)前記RNAガイド配列に結合すること、且つ(ii)前記標的RNAを標的とすることができる、真核細胞。
【実施例】
【0328】
実施例1 新規のCas13e及びCas13fシステムの同定
コンピュータパイプラインを用いて、ゲノム源及びメタゲノム源からクラス2 CRISPR-Casシステムの拡張データベースを生成した。ゲノム配列及びメタゲノム配列を、NCBI(Benson et al.,2013;Pruitt et al.,2012)、NCBI whole genome sequencing(WGS)、及びDOE JGI Integrated Microbial Genomes(Markowitz et al.,2012)からダウンロードした。タンパク質を、少なくとも5kb長の全てのコンティグで予測して(anonモードのProdigal(Hyatt et al.,2010))、重複排除して(すなわち、同一のタンパク質配列を除去する)、完全なタンパク質データベースを構築した。600残基よりも大きなタンパク質を、ラージタンパク質(LP)とみなした。現在同定されているCas13タンパク質は、大部分が、900残基サイズよりも大きいので、算出の複雑性を減らすために、ラージタンパク質のみをさらに考慮した。
【0329】
CRISPRアレイを、全てのデフォルトパラメータを用いるPiler-CR(Edgar,PILER-CR:Fast and accurate identification of CRISPR repeats.BMC Bioinformatics 8:18,2007)を用いて同定した。CRISPRアレイから±10kb以内に位置決めされた非重複ラージタンパク質配列コードORFを、CRISPR近位ラージタンパク質コードクラスターに分類して、コードされたLPを、Cas-LPと定義した。
【0330】
最初に、BLASPを用いて、Cas-LP間のペアワイズアラインメントを実行して、Evalue<1E-10によるBLASTPアラインメント結果を得た。続いて、MCLを用いて、BLASTP結果に基づいてCas-LPをさらにクラスター化して、Casタンパク質のファミリーを生じさせた。
【0331】
次に、BLASTPを用いて、Cas-LPを全てのLPに対してアラインして、Evalue<1E-10によるBLASPアラインメント結果を得た。Cas-LPファミリーを、BLASTPアラインメント結果に従ってさらに拡張した。拡張後に二倍増以下のCas-LPファミリーを、さらなる分析のために得た。
【0332】
候補Casタンパク質の機能特性評価のために、タンパク質ファミリーデータベースPfam(Finn et al.,2014)、NRデータベース、及びNCBIにおけるCasタンパク質を用いて、候補Casタンパク質に注釈を付けた。続いて、多重配列アラインメントを、MAFFT(Katoh and Standley,2013)を用いて、候補Casエフェクタータンパク質毎に行った。続いて、JPred及びHHpredを用いて、これらのタンパク質内の保存領域を分析して、2つの保存RXXXXHモチーフを有する候補Casタンパク質/ファミリーを同定した。
【0333】
この分析により、以前に同定された全てのクラス2 CRISPR-Casシステムと異なる2つの新しいCas13ファミリーに入る7つの新規のCas13エフェクタータンパク質の同定に至った。これらとして、新しいCas13eファミリーのCas13e.1(配列番号1)及びCas13e.2(配列番号2)、並びに新しいCas13fファミリーのCas13f.1(配列番号3)、Cas13f.2(配列番号4)、Cas13f.3(配列番号5)、Cas13f.4(配列番号6)、及びCas13f.5(配列番号7)が挙げられる。
【化1】
【化2】
【化3】
【0334】
各プレcrRNA配列内の対応するダイレクトリピート(DR)配列をコードするDNAは、それぞれ配列番号8~14である。
GCTGGAGCAGCCCCCGATTTGTGGGGTGATTACAGC(配列番号8)
GCTGAAGAAGCCTCCGATTTGAGAGGTGATTACAGC(配列番号9)
GCTGTGATAGACCTCGATTTGTGGGGTAGTAACAGC(配列番号10)
GCTGTGATAGACCTCGATTTGTGGGGTAGTAACAGC(配列番号11)
GCTGTGATAGACCTCGATTTGTGGGGTAGTAACAGC(配列番号12)
GCTGTGATGGGCCTCAATTTGTGGGGAAGTAACAGC(配列番号13)
GCTGTGATAGGCCTCGATTTGTGGGGTAGTAACAGC(配列番号14)
【0335】
Cas13e.1、Cas13e.2、Cas13f.1、Cas13f.2、Cas13f.3、Cas13f.4、及びCas13f.5タンパク質の天然の(野生型)DNAコード配列は、それぞれ配列番号15~21である。
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【0336】
さらなる機能実験のために生成した7つのCas13e及びCas13fタンパク質(すなわち、Cas13e.1、Cas13e.2、Cas13f.1、Cas13f.2、Cas13f.3、Cas13f.4、及びCas13f.5)のヒトコドン最適化コード配列は、それぞれ配列番号22~28である。
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【0337】
7つのCRISPR/Cas13e及びCas13f遺伝子座構造を
図1に示した。
【0338】
プレcrRNA内の7つのDR配列のRNA二次構造のさらなる分析を、RNAfoldを用いて行った。結果を
図2に示す。全てが、非常に保存された二次構造を共有したことが明らかである。
【0339】
例えば、Cas13eファミリーにおいて、各DR配列は、4塩基対ステム(5’-GCUG-3’)に続く、5+5ヌクレオチド(4ステムヌクレオチドを除外する)の対称形のバルジ、さらにこれに続く5塩基対ステム(5’-GCC C/U C-3’)、及び末端の8塩基ループ(5’-CGAUUUGU-3’、2ステムヌクレオチドを除外する)からなる二次構造を形成する。
【0340】
同様に、Cas13fファミリー(1つの例外がある(Cas13f.4))において、各DR配列は、5塩基対ステム(5’-GCUGU3’)に続く、5+4ヌクレオチド(4ステムヌクレオチドを除外する)のほぼ対称形のバルジ、さらにこれに続く6塩基対ステム(5’A/G CCUCG3’)、及び末端の5塩基ループ(5’AUUUG3’、2ステムヌクレオチドを除外する)からなる二次構造を形成する。唯一の例外は、第2の工程が1塩基対短く、且つさらなる2塩基が第1のバルジに加えられて、大部分は対称形の6+5バルジを形成している、Cas13f.4のDRである。
【0341】
MAFFTを用いた、Cas13e及びCas13fタンパク質、並びに以前に同定されたCas13a、Cas13b、Cas13c、及びCas13dファミリータンパク質のマルチシーケンスアラインメントは、Cas13e及びCas13fタンパク質が系統樹上でCas13bタンパク質に比較的最も近いことを明らかにした(
図3)。
【0342】
さらに、Casタンパク質のN末端及びC末端に対するRXXXXHモチーフの位置に関して、Cas13e及びCas13fタンパク質、並びに比較的程度は低いがCas13bタンパク質は、RXXXXHモチーフが、Cas13a、Cas13c、及びCas13dと比較して、N末端及びC末端により近い(
図4参照)。
【0343】
続いて、I-TASSERを用いて、Cas13eタンパク質の3D構造を予測してから、PyMOLを用い予測した構造を視覚化した。2つのRXXXXHモチーフは、Cas13e.1のN末端及びC末端に非常に近く位置決めされているが、3D構造において非常に近い(
図5)。
【0344】
実施例2 Cas13eはエフェクターRNaseである
新たに同定したCas13eタンパク質が、CRISPR/Casシステムにおいて機能する有効なRNaseであることを確認するために、Cas13e.1コード配列を、ヒト発現のためにコドン最適化して(配列番号22)、GFP遺伝子を有する第1のプラスミド中にクローニングした。一方、リポーター遺伝子(mCherry)mRNAを標的とするガイドRNA(gRNA)のコード配列を、GFP遺伝子を有する第2のプラスミド中にクローニングした。gRNAは、Cas13e.1用の2つのダイレクトリピート配列が側面に位置するスペーサーコード領域からなる(配列番号29)。GFP及びmCherryリポーター遺伝子の配列は、それぞれ、配列番号30~31である。
【化14】
【0345】
HEK293T細胞を、24-ウェル組織培養プレート内で標準的なプロトコールに従って培養して、LIPOFECTAMINE(登録商標)3000及びP3000(商標)試薬を用いる三重プラスミド形質移入に用いて、Cas13e.1タンパク質、mCherry-標的化gRNA、及びmCherryコード配列をそれぞれコードする3つのプラスミドを導入した。ネガティブ対照実験では、mCherry-標的化gRNAをコードするプラスミドを用いる代わりに、非標的-gRNAをコードする対照プラスミドを用いた。GFPコード配列は、Cas13e.1及びgRNAプラスミド内に存在するので、GFPの発現を、形質移入の成功/効率についての内部対照として用いることができる。
図6の概略図参照。続いて、形質移入したHEK293T細胞を、5%CO
2下で37℃にて約24時間インキュベートしてから、細胞を蛍光顕微鏡下で試験した。
【0346】
図7に示すように、mCherry-標的化gRNAで形質移入した細胞、及び対照非標的化(NT)gRNAで形質移入した細胞は、明視野顕微鏡において、成長及び形態学が等しく、そして双方におけるGFP発現は、大部分が等しかった。しかしながら、mCherry発現由来のRFPシグナルは、フローサイトメトリー分析に基づいて、最大75%激減した(
図8)。このことは、Cas13eが、mCherry-標的化gRNAを利用して、mCherry mRNAレベル、及び結果的にmCherryタンパク質発現を効率的にノックダウンすることができることを示唆している。
【0347】
実施例3 Cas13eについてのsgRNAの有効な方向
Cas13eシステムは理論的に、DR+スペーサー(5’DR)又はスペーサー+DR(3’DR)のいずれかの向きを利用し得るので、どちらがCas13eによって利用される正確な向きであるのかを判定するために、本実験を設計した。
【0348】
実施例2と類似した三重形質移入実験設定を用いて、3’DRの向き(スペーサー+DR)だけが有意なmCherryノックダウンを支持することが見出された。このことは、Cas13eが、スペーサーの3’末端にてDR配列を有するcrRNAを利用することを実証した。
図9参照。
【0349】
DR+スペーサー(5’DR)及びスペーサー+DR(3’DR)のSgRNAは、それぞれ配列番号32及び33である。
GCTGGAGCAGCCCCCGATTTGTGGGGTGATTACAGCGGTCTTCGATATTCAAGCGTCGGAAGACCT(配列番号32)
GGTCTTCGATATTCAAGCGTCGGAAGACCTGCTGGAGCAGCCCCCGATTTGTGGGGTGATTACAGC(配列番号33)
【0350】
実施例4 Cas13e.1の特異的活性及びコラテラル活性に及ぼすスペーサー配列長の影響
Cas13e.1の特異的活性及びコラテラル活性に及ぼすスペーサー配列長の影響を研究するために、スペーサー配列長が20nt、25nt、30nt、35nt、40nt、45nt、又は50ntの、mCherryリポーター遺伝子を標的とする一セットのsgRNAを設計した(配列番号34~40)。
TTGGTGCCGCGCAGCTTCAC(配列番号34)
TTGGTGCCGCGCAGCTTCACCTTGT(配列番号35)
TTGGTGCCGCGCAGCTTCACCTTGTAGATG(配列番号36)
TTGGTGCCGCGCAGCTTCACCTTGTAGATGAACTC(配列番号37)
TTGGTGCCGCGCAGCTTCACCTTGTAGATGAACTCGCCGT(配列番号38)
TTGGTGCCGCGCAGCTTCACCTTGTAGATGAACTCGCCGTCCTGC(配列番号39)
TTGGTGCCGCGCAGCTTCACCTTGTAGATGAACTCGCCGTCCTGCAGGGA(配列番号40)
【0351】
実施例2と類似した三重形質移入実験設定を用いて、mCherry及びGFP遺伝子のノックダウン効率を、フローサイトメトリーによって分析した。
【0352】
mCherry及びGFPノックダウン実験の結果は、それぞれCas13e.1の特異的活性及び非特異的活性(コラテラル活性)を示した。Cas13e.1は、高い特異的活性を有し、スペーサー長が約30nt~約50ntであることが見出された。
図10参照。一方、Cas13e.1は、スペーサー長が約30ntである場合に最も高い非特異的活性を有する。
図11参照。
【0353】
実施例5 dCas13e.1-ADAR2DD融合を用いた単一塩基RNA編集
Cas13eをRNA単一塩基編集に用いることができるかを試験するために、2つのRXXXXHモチーフを変異させてRNase活性を排除することによって、dCas13e.1を生成した。続いて、E488Q及びT375Gの二重変異を有する高フィデリティADAR2DDミュータントを、dCas13e.1(のC末端)に融合させて、推定のAからGへの単一塩基RNAエディタを生じさせて、dCas13e.1-ADAR2DDと命名した。配列番号41内のコード配列参照。
【化15】
【0354】
推定のRNA塩基-エディタの標的として用いるために、RNA塩基エディタによってAからGに補正することなく機能mCherryタンパク質が生成されないように、野生型mCherryコード配列を変異させて、早期終止コドンTAG(配列番号42内の太字の二重下線を引いた配列参照)を生じさせた。
図12及び
図14参照。続いて、所望のAからGへの編集を生じさせるようにgRNAを設計して(
図12及び
図14)、dCas13e.1-ADAR2DD塩基エディタをコードするCX530プラスミド、sgRNAをコードするCX537/Cx538プラスミド、及び変異したmCherry遺伝子をコードするCX337プラスミドを、標準的なプロトコールを用いて、HEK293T細胞中に三重形質移入した。形質移入したHEK293T細胞を、5%CO
2下で37℃にて24時間インキュベートしてから、細胞をフローサイトメトリーにかけて、補正されたmCherry mRNAを有し、且つmCherryタンパク質を発現する細胞を単離した。
図12の解説用図面参照。フローサイトメトリー分析の結果を
図13に示した。
【0355】
gRNA-1(配列番号43)及びgRNA-2(配列番号44)は双方とも、TAG早期終止コドンを首尾よく補正して、機能mCherryタンパク質を生成することは明らかである。
【化16】
【0356】
実施例6 短dCas13e.1-ADAR2DD融合体を用いた単一塩基RNA編集
RNA単一塩基編集に用いることができるdCas13e.1の最小サイズを判定するために、各々がC末端由来の30未満の残基を有する、dCas13e.1の漸進的に大きくなるC末端欠失を発現する一連の5つの構築体を生成した(すなわち、30-、60-、90-、120-、及び150-残基の欠失)。結果として生じた構築体を用いて、各C末端にて高フィデリティadar2(ADAR2DD)と融合するdCas13e.1のコード配列を生じさせた。これらの構築体を、実施例4と類似した実験に用いるVysz15(「V15」)~Vysz-19(「V19」)プラスミド(
図15)中にクローニングした。これらの全ての構築体において、融合タンパク質を、CMVプロモータ(pCMV)、及びイントロンの直ぐ下流側にある、タンパク質発現をさらに増強するエンハンサー(eCMV)から発現させた。2つの核局在化シグナル(NLS)を、融合体のdCas13e.1部分のN末端及びC末端に配置して、ADAR2ドメイン(例えばADAR2DD)を、NLSリンカーを介してC末端NLSに融合させて、HA-タグによってC末端にタグ付けした。EFSプロモータ(pEFS)の独立制御下のEGFPコード配列が、全てのプラスミドのポリA付加配列の下流側に存在した。
【0357】
興味深いことに、漸進性C末端欠失は、絶え間なく、融合エディタ内のRNA塩基編集活性を、150C末端残基欠失(V19内)を有するエディタが最も高い塩基編集活性を示すように増大させることが見出された。
図16参照。しかしながら、C末端からの180-残基の欠失は、塩基編集活性を無効にしたように見えた。このことは、Cas13e.1のC末端からの最大の/最適な欠失は、150~180残基でありそうであることを示唆している。
【0358】
この発見に基づいて、一連のN末端欠失ミュータントを、150C末端残基欠失を有するdCas13e.1について生成した。30-、60-、90-、120-、150-、180-、及び210-残基欠失をそれぞれ有するそのような7つのN末端欠失ミュータントを生成した。
図17参照。
図18の結果は、最良のRNA編集活性が、180N末端残基欠失及び150C末端残基欠失、すなわち775-残基Cas13e.1タンパク質からの合計330-残基欠失(ADAR2DD融合体を生成するのに最適な445-残基dCas13e.1を生成)を有するミュータントにおいて観察されることを示した。
【0359】
実施例7 様々なCas13タンパク質を用いた哺乳動物内因性mRNAノックダウン効率比較
この実験は、Cas13e及びCas13fタンパク質、とりわけCas13f.1が、以前に同定されたCas13タンパク質よりも十分に、哺乳動物内因性標的mRNAをノックダウンするのに非常に有効であることを実証した。
【0360】
具体的に、各々がCas13タンパク質、すなわち、Cas13e.1(配列番号22)、Cas13f.1(配列番号23)、LwaCas13a(配列番号45)、PspCas13b(配列番号46)、及びRxCas13d(配列番号47)の1つを発現する、5つのプラスミドを構築した。また、各プラスミドは、mCherryリポーター遺伝子、及び2つの本来のDR配列が側面に位置する各Cas13タンパク質のsgRNA/crRNAコード配列をコードした。これらのsgRNAは、ANXA4 mRNAを標的とするスペーサー配列を有するように設計した。配列番号48~50参照。ネガティブ対照として、各々がANXA4-標的化sgRNA/crRNAの代わりに非標的化sgRNA/crRNAをコードする、5つの追加的なプラスミドを構築した(「対照NT構築体」)。
図19参照。
【化17】
【化18】
【化19】
【0361】
5つのCas13/sgRNA-コードプラスミドを、実施例4のように、HEK293細胞中に形質移入した。24時間培養した後に、mCherryを発現する細胞を、フローサイトメトリーによって単離して、ANXA4 mRNAの発現を、RT-PCRを用いて判定して、Cas13/NT-コードプラスミドによって形質移入した対照細胞と比較して、ノックダウン効率を評価した。
【0362】
図20は、Cas13bのみANXA4 mRNAノックダウンがぎりぎり(marginal)である一方、Cas13e.1、Cas13f.1、及びCas13dが各々、ノックダウンが標的ANXA4 mRNAの80%超であることを示した。とりわけ、Cas13e.1は、最もロバストなノックダウン効率を有するようであった。
【配列表】